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3 髄王三軍量】13版 2016年(平成28年)7月29日 金曜日 j翼日 措置入院退院後ケアは 措置入院の仕組み 指定医の 自傷や他言の恐れが 診察など なくなれば 入院継続が必要 継続不要 本人の同意なし・ 家族らが同意 漢離職講書薩調音 行政lこよるフォロー終了 相模原 開き、再 「退院後のフ いため、人権侵 継続的な 「再発防止に全力を尽く さなければならない。施設 の安全確保の強化、措置入 院後のフォローアップなど 必要な対策を早急に検討し て、実行に移していきた い」。安倍賢二首相は首相 官邸で開いた関係閣僚会議 で、こう強調した。厚生労 働省は8月にも有識者会議 を立ち上げ、措置入院の解 除後もケアを続ける仕組み の検討に乗り出す。 、精神保健福祉法に基づく 措置入院は、自分や他人を 傷つける恐れがある場合に 都道府県知事や政令指定市 長が本人の同意なしに決定 できる。 植松塑容疑者(26)は職場 の障害者施設で「障害者は 生きていてもしょうがな い。安楽死させたほうがよ い」と発言。施設から相談 を受けた神奈川県馨津久井 署が相模原市に通報し、2 月19日に緊急で措置入院が 決まった。12日後には指定 医が「他害の恐れがなくな った」として措置を解除。 容疑者は退院し、その後、 凶行に及んだ。 精神保健福祉法は退院後 に行政によるフォローを義 務づける規定がなく、相模 原市は受診状況を把握して いなかったという。厚労省 は再発防止策の検討に向 け、29日にも関係した指定 医らの聞き取りを始める。 課題は、退院後にどのよ うなケアを続けるのかとい う点だ。1950年に旧精 神衛生法が成立して以来、 措置入院の仕組みはほとん ど見画されていないが、訪 問診簾や生活支援などを求 める意見が出ている。 東京工業大学の影山任佐 名誉教授(犯罪精神病理 学).は「金も人もかかる が、医嬢の中断や孤立化を 防ぐために、やれることを やらないといけない」と主 張する。念頭にあるのは、 自ら た兵庫 ム」だ。 チームは各保 置。措置入院中か 人ひとりに担当の保 らがつき、病院を訪問し り家族と連絡をとったり して退院後の生活をフォ ローする。警察や病院、行 政が参加する連絡会議も開 かれ、必要に応じて継続し た治療を受けられるように する。 措置入院を経験した男が 昨年 した同県 きっかけに で、今年4月 まった。 同じように行政が関わ 続ける仕組みを持つ国も い。厚労省によると、韓国 では知事らの判断で強制的 に入院させた場合、退院後 も一定期間、経過観察がで きる。英国では退院後の通 院を義務づける仕組みもあ り、必要に応じて病院に戻 すこともあるという。 人権侵害・差別の懸 退院後のフォローアップ の議論は、難題も抱える。 障害者問題に詳しい池原 毅和弁護士は「退院後も追 跡するといっても、人権 上、際限なく監視すること はできない。管理されるこ とを嫌って、患者本人が医 簾から遠ざかってしまう可 能性もある」と指摘する。 池原氏によると、一般的 に数ヵ月間措置入院した後 は家族や本人の同意で入院 を継続させるケースが多い という。「今回の特殊ケー スをもとに措置入院制度を 議論するのは間違い。まず は、退院した人がとんな暮 らしを送っているのか調査 し、どういうケアが必要な のかを議論すべきだ」 精神保健福祉法に退院後 のフォローアップ体制が記 されていないことについ て、厚労省幹部は「歴史 上、精神障害者の自由が制 限されてきたので、措置入 院が解除されてからも何か を義務づけることに慎重だ った」と背景を説明する。 同省は「入院医漂中心から 地域生活中心へ」を掲げ、 地域で支え合えるように在 宅で利用できるサービスを 充実させてきたが、議論し だいではこうした流れに逆 行する可能性もある。 杏林大学の長谷川利夫教 授(精神医績)は「『な ぜ、もっと長く措置入院さ せなかったのか』という論 調があることに危機感を覚 える。事件を機に『精神障 害者は病院に閉じ込めろ』 という議論に飛躍しないか 心配している」と話す。 全国精神保健福祉会連合 会は27日、ホームページ上 に嘉務局長名でこんなコメ ントを出した。 「精神障害者全体の差別 や偏見、誤った認識につな がることを危惧する。入院 は一時的な対応手段でしか ない。退院後に地域で本人 を孤立無縁にさせない、安 心して生活していける仕組 みをつくることがなければ 意味がない」 (久永隆一、井上充昌)
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措置入院退院後ケアは3 髄王三軍量】13版 2016年(平成28年)7月29日 金曜日 j翼日 日 措置入院の仕組み 措置入院退院後ケアは 指定医の

Jul 24, 2020

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Page 1: 措置入院退院後ケアは3 髄王三軍量】13版 2016年(平成28年)7月29日 金曜日 j翼日 日 措置入院の仕組み 措置入院退院後ケアは 指定医の

3  髄王三軍量】13版   2016年(平成28年)7月29日 金曜日   j翼日    日

措置入院退院後ケアは措置入院の仕組み

指定医の 自傷や他言の恐れが診察など なくなれば

入院継続が必要  継続不要

本人の同意なし・家族らが同意

漢離職講書薩調音

行政lこよるフォロー終了

相模原市の障害者施設で起きた殺傷事件を受け、政府は28日に関係閣僚会議を

開き、再発防止策の検討に入った。措置入院のあり方が焦点で、現状ではない

「退院後のフォローアップ体制」が課題となる。一方、監視にもっながりかねな

いため、人権侵害や偏見を助長する懸念もある。       ▼1両参照

継続的な体制づくり探る

「再発防止に全力を尽く

さなければならない。施設

の安全確保の強化、措置入

院後のフォローアップなど

必要な対策を早急に検討し

て、実行に移していきた

い」。安倍賢二首相は首相

官邸で開いた関係閣僚会議

で、こう強調した。厚生労

働省は8月にも有識者会議

を立ち上げ、措置入院の解

除後もケアを続ける仕組み

の検討に乗り出す。

、精神保健福祉法に基づく

措置入院は、自分や他人を

傷つける恐れがある場合に

都道府県知事や政令指定市

長が本人の同意なしに決定

できる。

植松塑容疑者(26)は職場

の障害者施設で「障害者は

生きていてもしょうがな

い。安楽死させたほうがよ

い」と発言。施設から相談

を受けた神奈川県馨津久井

署が相模原市に通報し、2

月19日に緊急で措置入院が

決まった。12日後には指定

医が「他害の恐れがなくな

った」として措置を解除。

容疑者は退院し、その後、

凶行に及んだ。

精神保健福祉法は退院後

に行政によるフォローを義

務づける規定がなく、相模

原市は受診状況を把握して

いなかったという。厚労省

は再発防止策の検討に向

け、29日にも関係した指定

医らの聞き取りを始める。

課題は、退院後にどのよ

うなケアを続けるのかとい

う点だ。1950年に旧精

神衛生法が成立して以来、

措置入院の仕組みはほとん

ど見画されていないが、訪

問診簾や生活支援などを求

める意見が出ている。

東京工業大学の影山任佐

名誉教授(犯罪精神病理

学).は「金も人もかかる

が、医嬢の中断や孤立化を

防ぐために、やれることを

やらないといけない」と主

張する。念頭にあるのは、

自ら仕組みづくりに関わっ

た兵庫県の「継続支援チー

ム」だ。

チームは各保健所に配

置。措置入院中から患者一

人ひとりに担当の保健師

らがつき、病院を訪問した

り家族と連絡をとったり

して退院後の生活をフォ

ローする。警察や病院、行

政が参加する連絡会議も開

かれ、必要に応じて継続し

た治療を受けられるように

する。措置入院を経験した男が

昨年3月に住民5人を刺殺

した同県洲本市での事件を

きっかけにできた仕組み

で、今年4月から運用が始

まった。

同じように行政が関わり

続ける仕組みを持つ国も多

い。厚労省によると、韓国

では知事らの判断で強制的

に入院させた場合、退院後

も一定期間、経過観察がで

きる。英国では退院後の通

院を義務づける仕組みもあ

り、必要に応じて病院に戻

すこともあるという。

人権侵害・差別の懸念も

退院後のフォローアップ

の議論は、難題も抱える。

障害者問題に詳しい池原

毅和弁護士は「退院後も追

跡するといっても、人権

上、際限なく監視すること

はできない。管理されるこ

とを嫌って、患者本人が医

簾から遠ざかってしまう可

能性もある」と指摘する。

池原氏によると、一般的

に数ヵ月間措置入院した後

は家族や本人の同意で入院

を継続させるケースが多い

という。「今回の特殊ケー

スをもとに措置入院制度を

議論するのは間違い。まず

は、退院した人がとんな暮

らしを送っているのか調査

し、どういうケアが必要な

のかを議論すべきだ」

精神保健福祉法に退院後

のフォローアップ体制が記

されていないことについ

て、厚労省幹部は「歴史

上、精神障害者の自由が制

限されてきたので、措置入

院が解除されてからも何か

を義務づけることに慎重だ

った」と背景を説明する。

同省は「入院医漂中心から

地域生活中心へ」を掲げ、

地域で支え合えるように在

宅で利用できるサービスを

充実させてきたが、議論し

だいではこうした流れに逆

行する可能性もある。

杏林大学の長谷川利夫教

授(精神医績)は「『な

ぜ、もっと長く措置入院さ

せなかったのか』という論

調があることに危機感を覚

える。事件を機に『精神障

害者は病院に閉じ込めろ』

という議論に飛躍しないか

心配している」と話す。

全国精神保健福祉会連合

会は27日、ホームページ上

に嘉務局長名でこんなコメ

ントを出した。

「精神障害者全体の差別

や偏見、誤った認識につな

がることを危惧する。入院

は一時的な対応手段でしか

ない。退院後に地域で本人

を孤立無縁にさせない、安

心して生活していける仕組

みをつくることがなければ

意味がない」

(久永隆一、井上充昌)