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- 75 - 中小企業の発展段階と管理会計システム 【論文】 中小企業の発展段階と管理会計システム Management Accounting Systems based on Life Cycle Stages of SMEs 本 橋 正 美 Masami MOTOHASHI 【キーワード】中小企業の定義、企業の寿命、優良企業(長寿企業)と管理会計システムと の関連性、管理会計の役割・機能、長寿企業(老舗企業)の比較尺度、長寿 企業の特徴、中小企業における管理会計の要否、中小企業への管理会計の適 用の限界、中小企業のライフサイクルに対応させた業績管理システム 【目 次】 1.は じ め に 2.中小企業の現状と中小企業の発展段階 (1) 「中小企業基本法」における中小企業の定義 (2) 企業の寿命(ライフサイクル) (3) 優良企業に関する企業観 3.優良企業(長寿企業)と管理会計システムとの関連性 (1) 管理会計の役割・機能 (2) 長寿企業(老舗企業)の比較尺度 (3) 長寿企業の特徴 4.中小企業における管理会計の要否 5.中小企業への管理会計の適用の限界 (1) 中小企業の発展段階および中小企業の管理会計の必要性 (2) 中小企業の管理会計・原価計算の実施および会計管理システム・ERP 導入に関する実態調査 6.中小企業のライフサイクルに対応させた業績管理システム 7.む  す  び
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中小企業の発展段階と管理会計システム Management ......Management Accounting Systems based on Life Cycle Stages of SMEs 本 橋 正 美 Masami MOTOHASHI...

Jul 27, 2020

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- 75 - 中小企業の発展段階と管理会計システム

【論文】

中小企業の発展段階と管理会計システム

Management Accounting Systems based on Life Cycle Stages of SMEs

本 橋 正 美

Masami MOTOHASHI

【キーワード】 中小企業の定義、企業の寿命、優良企業(長寿企業)と管理会計システムとの関連性、管理会計の役割・機能、長寿企業(老舗企業)の比較尺度、長寿企業の特徴、中小企業における管理会計の要否、中小企業への管理会計の適用の限界、中小企業のライフサイクルに対応させた業績管理システム

【目 次】

1.は じ め に2.中小企業の現状と中小企業の発展段階(1) 「中小企業基本法」における中小企業の定義(2) 企業の寿命(ライフサイクル)(3) 優良企業に関する企業観

3.優良企業(長寿企業)と管理会計システムとの関連性(1) 管理会計の役割・機能(2) 長寿企業(老舗企業)の比較尺度(3) 長寿企業の特徴

4.中小企業における管理会計の要否5.中小企業への管理会計の適用の限界(1) 中小企業の発展段階および中小企業の管理会計の必要性(2) 中小企業の管理会計・原価計算の実施および会計管理システム・ERP 導入に関する実態調査

6.中小企業のライフサイクルに対応させた業績管理システム7.む  す  び

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1.は じ め に

中小企業は、大企業に比べて利用できる経営資源すなわち人、金、物、情報(情報システム)に制約があり、管理会計システムの導入・運用についても制約があると考えられる。筆者は、中小企業の管理会計(管理会計システム)について論じる場合、その前段階(前提)として中小企業の発展段階を考慮する必要があると考えるのである。そして、中小企業の発展段階を踏まえて、中小企業管理会計システムの類型化が必要であることを指摘しておきたい。

本稿では、まず中小企業の現状と中小企業の発展段階に関連して「中小企業基本法」における中小企業の定義について説明し、次いで、企業の寿命(ライフサイクル)および優良企業に関する企業観について取り上げる。それらを踏まえて、優良企業(長寿企業)と管理会計システムとの関連性の論点を取り上げ、管理会計の役割・機能、長寿企業(老舗企業)の比較尺度、長寿企業の特徴 について考察する。そして、そうした考察の後に、中小企業における管理会計の要否、中小企業への管理会計の適用の限界、とりわけ中小企業の発展段階および中小企業の管理会計の必要性、中小企業の管理会計・原価計算の実施および会計管理システム・ERP 導入に関する実態調査について検討する。さらに、中小企業のライフサイクルに対応させた業績管理システムについて若干の考察を行うことにする。

2.中小企業の現状と中小企業の発展段階

(1) 「中小企業基本法」における中小企業の定義

「中小企業基本法」(1963 年制定:昭和三十八年七月二十日法律第百五十四号、最終改正:平成二八年六月三日法律第五八号)における中小企業の定義は、図表-1のように業種、資本金または従業員数によって分類されている。業種は、製造業その他、卸売業、サービス業、小売業に分類されている。資本金または従業員数は、製造業その他が 3 億円以下、300 人以下、卸売業が 1 億円以下、100 人以下、サービス業が 5,000 万円以下、100 人以下、小売業が 5,000 万円以下、50 人以下となっている。また、中小企業のうち小規模事業者は、従業員数のみによる分類であり、製造業その他が20 人以下、卸売業、サービス業、小売業が 5 人以下となっている。

図表-2は、中小企業の企業数および従業者数を大企業と比較したものであるが、企業数では大企業が 1.1 万者、中小企業が 380.9 万者、割合は大企業が 0.3%、中小企業が 99.7%、従業者数は大企業が 1,433 万人、中小企業が 3,361 万人である。このデータによれば、わが国の企業のうち99.7%すなわち殆どの企業が中小企業であることがわかる。なお、内数であるが、中小企業のうち企業数では中規模企業 55.7 万者、小規模事業者 325.2 万者、割合は中規模企業 14.6%、小規模事業者 85.1%、従業者数は中規模企業 2,234 万人、小規模事業 1,127 万人である。そして、中小企業のうち 85.1%が小規模事業者であり、中小企業の大部分は個人商店をはじめ個人で企業を経営する個人事業主などの小規模事業者であることもわかるであろう。このことからいえることは、中小企業の概念ないしカテゴリー(中小企業の範囲)が極めて広いことが理解できるのである。

上記の企業数の説明の中で『中小企業白書 2017 年版』では、会社の「社」ではなく「者」という表現が用いられているが、中小企業とりわけ小規模事業者、換言すれば個人事業主のような企業について「者」という表現を用いたため、それに合わせて大企業の方も同じ表現を用いたものと考

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えられる。なお、これらのテータの出所は、総務省統計局が毎年行っている「経済センサス(基礎調査)」の平成 26 年(現時点で最新のデータ)のものである。

一方、国税庁の平成 27 年度分『会社標本調査』の調査結果は以下のようになっている。この調査は、わが国の法人企業について、資本金階級別や業種別にその実態を明らかにし、併せて租税収入の見積り、税制改正及び税務行政の運営等の基礎資料とすることを目的としている。調査対象企業は、活動中の内国普通法人(一般社団・財団法人等を除く。)について、平成 27 年 4 月 1 日から平成 28 年 3 月 31 日までの間に終了した当該法人の各事業年度(この間に事業年度が 2 回以上終了した法人にあってはその全事業年度)を対象として、平成 28 年 7 月 31 日現在で取りまとめている。

図表-1 「中小企業基本法」における中小企業の定義

中 小 企 業 うち小規模事業者業   種 資本金または従業員 従 業 員

製造業その他 3 億円以下 300 人以下 20 人以下卸 売 業 1 億円以下 100 人以下 5 人以下サービス業 5,000 万円以下 100 人以下 5 人以下小 売 業 5,000 万円以下 50 人以下 5 人以下

      出所:『中小企業白書 2017 年版』www.chusho.meti.go.jp

図表-2 中小企業の企業数、従業者数

企 業 数 割  合 従業者数大 企 業 1.1 万者 0.3% 1,433 万人中 小 企 業 380.9 万者 99.7% 3,361 万人

(うち中規模企業) (55.7 万者) (14.6%) (2,234 万人)(うち小規模事業者) (325.2 万者) (85.1%) (1,127 万人)

      出所:総務省『平成 26 年経済センサス-基礎調査』再編加工。

国税庁が発表する法人数は約 258 万 6,000 社(平成 22 年)、約 259 万 6,000 社(平成 25 年)、(平成 27 年)約 264 万 1,800 社であり、その 72.8%(平成 22 年)68.2% (平成 25 年)、64.3% (169 万800 社 : 平成 27 年)が欠損法人である。その約 264 万社のうち 261 万 8,000 社すなわち約 99.1%は資本金1億円以下の中小企業である。すなわち、日本の会社の 64.3%の法人が赤字決算であり、そのほとんどが中小企業である。この国税庁の平成 27 年度分『会社標本調査』における法人数と上記の『中小企業白書 2017 年版』における企業数の数を比較すると、117 万社ほどの相違がある。かなり大きな数の相違があるが、国税庁による『会社標本調査』は税務申告から得られたデータを用いていると考えられるのに対して、『中小企業白書』では総務省統計局が行っている経済センサス(基礎調査)から得られたデータを用いていると考えられるけれども、数の相違の理由については明らかではない。

(2) 企業の寿命(ライフサイクル)

企業の寿命(ライフサイクル)については、中小企業も含まれるが企業全般についての企業の寿命(ライフサイクル)について雑誌『日経ビジネス』が年数をおいて3度、特集記事で当該テーマ

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を取り上げているので、本稿では、それについて見ておくことにしよう。まず、『日経ビジネス』(1983 年9月 19 日号)では、企業の寿命 30 年説を発表した。一般的に

企業の寿命 30 年説というのは、ある程度、理解できる年数であると思われる。それは、例えば企業の創業者が 20 ~ 30 歳頃に起業し、その企業を継続する場合、次の世代に事業承継するのは 30年ぐらいが通常であると考えられるからである。

次いで、上記の記事から 16 年後の『日経ビジネス』(1999 年 10 月4日号)では、2000 年以降は、急速なグローバル化・ネットワーク化の進展によるさまざまな分野でのイノベーションによって企業の寿命は 10 年を切り、わずか5年(繁栄期)であるとした。1990 年代のわが国では、1991 年にバブルの崩壊があり、約 10 年間にわたって不況が続いた時期であることから、繁栄期はわずか5年程度であるとしたのであろう。実際に、その記事の中で、その時期の企業の業績ランキングが毎年のように激しく入れ替わっていることからも明らかである。さらに、上記の2つ目の記事から14 年後の『日経ビジネス』(2013 年 11 月4日号)では、企業の寿命 18 年説を発表した。この企業の寿命 18 年説は、上述の 30 年説と5~ 10 年説の中間をとって 15 ~ 18 年説としたと考えることもできるが、この記事ではその理由について特に言及しておらず、また、何か決定的な根拠がある訳ではないと思われる。

いうまでもなく、企業の寿命(ライフサイクル)は、いわば個々の企業によって栄枯盛衰の状況は異なり、例えばある業種・業態、大企業、中小企業などの分類をし、それらの企業が反映した(業績が良かった)年数のデータの平均値を計算すれば、大よその数値を算出することができると思われる。しかしながら、企業の寿命(ライフサイクル)に関して重要なことは、企業(事業)の優れた状態(良好な業績)をどのようにして継続ないし持続させることができるのか、また、それを達成するためには、どのような管理システム(管理会計を含む)を導入ないし構築すべきであるかについて検討することであるのである。

上記のような企業の寿命(ライフサイクル)に関する見解を踏まえた上で、次に中小企業の発展段階に関する 17 の諸説について明らかにする。図表-3は、中小企業の発展段階に関する 17 の諸説を一覧表にまとめたものである。図表-3で取り上げた論文や記事は、中小企業の発展段階に限定して論じたものもあれば、企業全般について論じたものもあることをお断りしておく。

図表-3の最初のものは、企業のライフサイクルに関するいわば一般論であり、創業期、成長期、成熟期、衰退期の4つの発展段階に分類している。企業のライフサイクルに関する一般論における発展段階と比較すると、図表-3の諸説における表現の相違はあるけれども、中小企業の発展段階を3~5つに分類している点が共通している。図表-3の諸説について、詳細に議論することは割愛するが、図表において太字で示している D.L.Lester、小野伸一、鈴木健介の3つの説について以下で若干の説明を行う。

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図表-3 中小企業の発展段階に関する諸説企業のライフサイクル 創業期 成長期 成熟期 衰退期

N.C.Churchill 創業期 生存期 成功期 成長期 資源の成熟期

C.Gilkey 創業期 成長期 停滞期 再成長期L.E.Greiner 創造性 指 揮 委 譲 調 整 協 同D.L.Lester 創業期 生存期 成功期 再生期 衰退期M.Scott 創業期 生存期 成長期 拡大期 成熟期

小野伸一 起 業 成 長 成 熟 経営不振(廃業) 再 生

金融庁 新 興 成 長 成 熟 成長鈍化 衰 退

商工総合研究所 企業形成期 企業成長期 新事業展開期 新事業成長期

新事業成熟期

鈴木健介 スタート期 成長期 躍進期 完成期 転換期中小企業基盤整備機構 創業期 成長期 成熟期中小企業政策審議会 創業期 拡大期 再生期

中小企業庁 創 業 成長・成熟 低迷・再生柳孝一・山本孝夫 スタートアップ期 急成長期 経営基盤確立期 新成長期 経営革新期

安田武彦 起業(誕生) 起業直後(小児期) 成長(成人期) 退出(死亡)

山本裕久 スタートアップ期 成長期 成熟期 衰退期

柳 在相 創 業 事業仕組の構築 競争優位の確立 強い企業

文化の形成出所:筆者が参考文献の資料から作成。

D.L.Lester、小野伸一、鈴木健介の3つの説とも5段階に分類している。すなわち、D.L.Lester は、図表-4のような創業期、生存期、成功期、再生期、衰退期の5段階のライフサイクル・モデルを示している。小野伸一は、図表-5のような起業、成長、成熟、経営不振(廃業)、再生の5段階のライフサイクル・モデルである。鈴木健介は、図表-6のようなスタート期、成長期、躍進期、完成期、転換期の5ステージ①~⑤ / 6ステップ (1) ~ (6) ライフサイクル・モデルを示している。

D.L.Lester のモデルは、図表-4の中の1創業期、2生存期は小企業の段階で、1創業期と2生存期を行ったり来たりしていることを示している。そして、3成功期に入ると→4再生期→5衰退期を行ったり来たりして、成功し続ける場合と、再生する場合、また、衰退する場合が考えられる。この3成功期、4再生期、5衰退期は大企業の段階としているので、2生存期から3成功期に発展するには、実際にはかなりの時間ないし年数がかかるものと思われる〔4〕。

次に、小野伸一のモデルは、図表-5のような起業、成長、成熟、経営不振(廃業)、再生という5段階の循環するライフサイクル・モデルであるといえる。起業して直ぐに廃業してしまう場合もあれば、成長、成熟へと進むが、ある時点で過剰投資、投資の失敗、経営失敗、環境変化への不適合などから経営不振(廃業)となり廃業(清算)に至る場合もある。うまく再生できれば、また、次の循環サイクルに入っていくのである〔6〕。

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さらに、鈴木健介のモデルは、図表-6のような①スタート期、②成長期、③躍進期、④完成期、⑤転換期の5ステージ①~⑤/6ステップ(1)~ (6)のライフサイクル・モデルである。このモデルは、5ステージ①~⑤の各段階で、(1) 開墾、(2) 種付、(3) 開花、(4) 結実、(5) 収穫、(6) 休息という6つのステップがあるとし、いわば作物の栽培に例えて説明している点に特徴があるといえる〔16〕。

以上、D.L.Lester、小野伸一、鈴木健介の3つのライフサイクル・モデルについて若干の説明を行った。

図表-4 5段階のライフサイクル・モデル〔Lester〕

出所: Lester, Donald L. & John A.Parnell, “The Progression of Small and Medium-Sized Enterprises (SME) through The Organizational Life Cycle, ”JBE Outstanding Paper, 2003, p.214.

図表-5 5段階のライフサイクル・モデル〔小野〕

出所: 小野伸一「企業のライフサイクルと株式価値、企業価値、経済成長:起業・ベンチャー、事業再生の視点から」『立法と調査』第 298 号、2009 年 11 月、73 頁。

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図表-6 5ステージ①~⑤ /6ステップ (1) ~ (6) ライフサイクル・モデル〔鈴木〕

出所: 鈴木健介『破産から再起した社長が教える黒字のための「5×6」の法則』光文社、2008 年、26 頁から筆者が作成。

(3) 優良企業に関する企業観

ここでは、優良企業に関する企業観として3つの見解を取り上げ、若干の考察を行う。

① エクセレント・カンパニー(~ 1980 年代)

この見解は非常に著名なもので、ピーターズ = ウォーターマン(Peters, Thomas J. & Robert H. Waterman)が提唱したもので、以下に示す8つの基本的な性質から構成されている〔28〕。

(1) 行動の重視(2) 顧客に密着する(3) 自主性と企業家精神(4) 人を通じての生産性向上(5) 価値観に基づく実践(6) 基軸から離れない(7) 単純な組織・小さな本社(8) 厳しさと緩やかさの両面を持つ

上記の8つの基本的な性質は、エクセレント・カンパニーに必要不可欠な要素であり、極めて実践的なアプローチであるといっても過言ではない。

② ビジョナリー・カンパニー(1980 ~ 1990 年代)

最初の著書は、コリンズ = ポラス (Collins,James C. & Jerry I. Porras)の共著、2冊目以降の著書はコリンズ(Collins, James C.)の単著であるが、この見解も非常に著名なものである〔12〕、〔13〕。

この見解の要点は3つあり、(1) 時を告げるのではなく、時計を作る(鐘をつく、人任せで時を

/' - ~ - -ー←一I <1)開墾 I <2)種付 I <s)開花 I (4)結実 I <s)収穫 I (6)休息

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告げるのではなく、「アイデアを持つ」、「ヒット商品を作る」、正確に時を告げる「卓越した仕組み(組織)」を作る)。(2)or(どちらか)の抑圧をはねのけ、and(両方とも)の才能を活かす(安く売る or 旨いものを売る、ではなく、安くて and 旨いものを売る)。(3) 社運を賭けた大胆な目標「基軸は理念にあり」→自分たちが熟知している業種こそ基軸ではなく、「基本理念こそ基軸」→未体験の大胆な目標を達成することである。

この見解は、人任せではなく自ら「卓越した仕組み(組織)」を作り、また、一方のことだけではなく両方とも活かす考え方で、社運を賭けた大胆な目標を持ち、そして、自分たちが熟知している業種が基軸ではなく、「基軸は理念にあり」、「基本理念こそ基軸」なのであるとする。ビジョナリー・カンパニーを目指す企業にとっては、非常に重要なことであり、論旨は明快であると思われる。

③ レジリエント・カンパニー(2000 年代~)

ピーダーセン (Pedersen,Peter David) によって提唱されたもので、レジリエント (resilient) とは、耐性、回復、復元力、柔軟性、適応力、ストレスを跳ね返す性質、打たれ強い、などの意味があり、高いレジリエンスを持った企業が優良企業であるというのである〔29〕。ピーダーセンの見解の要点は以下の3点である。(1) 拠り所があること (anchoring) →① 価値観と使命を活かす、② 信頼を積み上げること。(2)  自己変革力を持つこと (adaptiveness) →③ ダイナミックな学習、④ 創造性と革新力を引き出

す、⑤ 研究開発を一新する。(3)  社会性 (alignment) →⑥ トレードオン(企業と社会との間にトレードオフ(二律背反)関係

が続くことを許さず、経営者は常にトレードオンの実現を経営と事業の両面で、あるいは、良い企業が発展すればするほど社会や自然環境の健全な営みが促進されることを意味する)、⑦ブランディング(ブランドを作り変える)。

ピーダーセンによるこうしたレジリエント・カンパニーの考え方も極めて明快であると思われる。上記のレジリエント・カンパニーの考え方により、わが国で「『日本再興戦略:未来への投資・

生産性革命』が閣議決定され(2015 年6月 30 日)、現在、「健康経営」という考え方が国を挙げて推進されている。また、そのことと関連して、企業の持続可能性 (sustainability) や ESG「環境(environment)、社会性 (social)、ガバナンス (governance)」などの評価指標について議論されている。

3.優良企業(長寿企業)と管理会計システムとの関連性

現在では、優良企業(長寿企業)であっても常に業績が良いとは限らず、環境変化への対応が遅れたり、顧客ニーズを的確かつタイムリーに把握できなくなれば、優良企業といえども衰退することは十分にあり得る。その理由は、従来にも増して環境変化が極めて激しく、常に当該企業の業績管理に細心の注意を払わなければ、優れた業績を維持・継続していくことは困難であると思われる。

業績の維持・向上のために必要な対策を素早く行うためには、管理会計システムによって戦略や事業活動を継続的に測定・評価し、活動の可視化を行うことが極めて重要である。優良企業(長寿企業)であり続けるためには、優れた管理会計システムが必要であり、その関連性は高いと思われるのである。

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(1) 管理会計の役割・機能

管理会計の役割・機能に関して、企業の経営活動・業務活動の測定を行うことは、業績管理・業務管理・意思決定支援などのための情報提供が目的であり、その情報には財務情報・非財務情報(定量情報・定性情報)があり、活動の結果(成果)とプロセスの管理の両方が重要であることは敢えていうまでもないであろう。筆者は、管理会計とりわけ業績管理システムの発展段階は、① 実績の正確な測定・管理(経営分析も含む)→② 予算管理→③ 事業別・セグメント別管理→④ ERP・BSC などの導入・運用の順に行われるべきであると考えるのである。

(2) 長寿企業(老舗企業)の比較尺度

長寿企業(老舗企業)の比較尺度に関しては、神田良によれば長寿企業(老舗企業)の比較は、以下の5つの尺度で行うべきであると考えている〔7〕。① 年齢(創業からの年数)② 継承(何代目)③ 資本金(金額)④ 従業員数⑤ 売上高

他方、安田武彦によれば企業のライフサイクルの比較は、以下の4つの尺度で行うべきであると考えている〔32〕。① 付加価値(額)② 業績状況(収支状況)③ 売上高成長率④ 従業者数成長(増加)率

長寿企業(老舗企業)の比較尺度に関する上記の何れの見解も、確かに現実的かつ実務的な比較尺度であると思われる。創業からの経過年数、資本金額や売上高などの財務業績や従業員数などの数値を用いれば、中小企業の発展段階を4~5つ程度の尺度で簡便に比較できると思われる。さらに、業種・業態や経営者の属性(いくつかの項目に絞って)、あるいは経営分析の主要項目などを追加すれば、より詳細な比較・分析が可能となる。

(3) 長寿企業の特徴

長寿企業の特徴に関して、図表-7は日本の長寿企業ランキングをいくつかの視点からまとめたものである。すなわち、創業 1,000 年以上の長寿企業、著名企業で創業の古いもの、上場企業での長寿企業である。創業 1,000 年以上の長寿企業では、① 金剛組(建築・創業 578 年:旧社は 2006年に破産し、現在は高松建設グループとして存続)、② 慶雲館(旅館・705 年)、③ 古まん(旅館・717 年)、④ 法師(旅館・718 年:ギネスブック認定の世界最古のホテル)、⑤ 田中伊雅仏具店(仏具・885 年頃)、⑥ 中村社寺(建築・970 年)、⑦ 一和(餅・1000 年)である。

因みに、金剛組(建築)は、創業 578 年で世界最古の企業として知られている。飛鳥時代に、聖徳太子が百済から呼び寄せた3人の宮大工のうち金剛、早水、永路のうちの1人である金剛重光に

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より創業され、江戸時代に至るまで四天王寺お抱えの宮大工となっている。次に、著名企業で創業の古いものでは、① 虎屋(和菓子・1500 年代前半)、② 小西酒造(清酒・

1550 年)、③ 西川産業(寝具・1566 年)、④ 養命酒製造(薬用酒・1602 年)、⑤ 竹中工務店(建築・1610 年)である。

さらに、上場企業での長寿企業では、① 松井建設(株)(建設・1586 年:社寺建築が発祥)、② 住友金属鉱山(株)(非鉄・1590 年)、③ 養命酒製造(株)(薬用酒・1602 年)、④ 丸栄(株)(百貨店・1615 年)である。

図表-7 日本の長寿企業ランキング日本の長寿企業ランキング① 創業 1,000 年以上

① 金剛組 建築・創業 578 年:旧社は 2006 年に破産し、現在は高松建設グループとして存続

② 慶雲館 旅館・705 年③ 古まん 旅館・717 年④ 法師 旅館・718 年:ギネスブック認定の世界最

古のホテル⑤ 田中伊雅仏具店 仏具・885 年頃⑥ 中村社寺 建築・970 年⑦ 一和 餅・1000 年日本の長寿企業ランキング② 著名企業で創業の古いもの

① 虎屋 和菓子・1500 年代前半② 小西酒造 清酒・1550 年③ 西川産業 寝具・1566 年④ 養命酒製造 薬用酒・1602 年⑤ 竹中工務店 建築・1610 年日本の長寿企業ランキング③ 上場企業での長寿企業ランキング

① 松井建設(株) 建設・1586 年:社寺建築が発祥② 住友金属鉱山(株) 非鉄・1590 年③ 養命酒製造(株) 薬用酒・1602 年④ 丸栄(株) 百貨店・1615 年

出所:www.landscape.co.jp

上記の「上場企業での長寿企業ランキング」の補足説明をすれば、2005 年まで(株)駿河屋という 1461 年創業の和菓子メーカーが上場していたが、架空増資を行い上場廃止している。デパートの松阪屋(1611 年創業)も、資本変更により 2006 年に上場廃止している。わが国の場合、創業年の古い企業は、建築・旅館・仏具・菓子・酒造などが多い。16 世紀頃、味噌、醤油、清酒などの製造法が定着し、この頃以降はこれらの製造を業とする企業が多く存続している。

後藤俊夫による 200 年以上続いている長寿企業数の国際比較(2008 年の調査:57 カ国・地域:長寿企業総数 7,212 社)では、以下のようになっている。

図表-8の①番目の日本は 3,113 社で、②番目のドイツの 1,563 社の約2倍の数があり、③番

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目のフランス 331 社、④番目のイギリス 315 社、⑤番目のオランダ 292 社、⑥番目のオーストリア 255 社の約 10 倍ないしそれ以上の数である。⑦番目以下の国では、⑪番目のアメリカは建国が1776 年で、まだ 240 年ほどしか経過していないが 88 社あり、また、⑮番目の中国は 3,600 年~ 4,000年の歴史があるといわれているが、200 年以上続いている長寿企業数は 64 社にとどまっている。また、図表-8には示されていないが、韓国は 200 年以上続いている長寿企業数はゼロである。

図表-8 200 年以上の長寿企業数の国際比較① 日 本 3,113 社② ドイツ 1,563 社③ フランス 331 社④ イギリス 315 社⑤ オランダ 292 社⑥ オーストリア 255 社⑦ イタリア 163 社⑧ ロシア 149 社⑨ スイス 130 社⑩ チェコ 97 社⑪ アメリカ 88 社⑫ ベルギー 75 社⑬ スウェーデン 74 社⑭ スペイン 68 社⑮ 中 国 64 社⑯ デンマーク 62 社

出所: 後藤俊夫『三代、100 年潰れない会社のルール:超長寿の秘訣はファミリービジネス』プレジデント社、2009 年、91 頁。

上記の 200 年以上続く長寿企業数の国際比較から考えても興味深い論点であるが、長寿を達成する企業の特徴について後藤俊夫によれば、①環境変化への対応力、②独自性と結束力、③現場型の運営、④保守的な資本運営があげられている。また、後藤俊夫は日本に長寿企業が多い理由として、以下の 4 つをあげている〔11〕。① 「家制度」の存在。

親族に適切な継承者がいない場合、血ではなく家が優先され養子などによる事業承継が積極的に行われた。② 「市場経済の継続的発展」があったこと。

長い平和の続いた江戸時代を含め、概ね安定した経済成長が続き、また第2次世界大戦後の時期を除き他国からの占領統治を受けなかった(都道府県別で老舗企業の割合が低いのは沖縄県である)。③ 「マネジメント・システム」の存在。

顧客の管理は、「富山の薬売り」の時代からあった。従業員の教育や競争原理は、丁稚から番頭に至る人事制度があった。また近江商人の「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」な

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どの企業倫理感があった。現在のリスク・マネジメントも家訓や準備金制度(埋蔵金)などがあって、現代のマネジメントとほぼ同じものが古くから定着していた。④ 「商業や職人が尊重されたこと」。

何代も商人を続けることや、手作業の仕事を卑しいとする文化を持つ国がある。例えば韓国では200 年を超える企業が1社もなく、商業を世代継承することを卑しいこととする文化が背景にある。日本の長寿企業には製造業が多く、それは職人技を継承することを尊ぶ意識があったからであるとする。

これらの後藤俊夫による指摘は、非常に優れた的確なものであると理解することができる。他方、長寿企業の成功要因に関して山下幸三によれば、「長寿企業が重視する経営要素」として、

①高い経営目標・企業理念、②顧客・社会・地域との信頼関係維持、③顧客重視の経営、④「知」の経営、⑤人的資源優先、⑥リスク・マネジメント、の6つの要素があげられている。そして、同様に山下幸三によれば、「長寿企業になった秘訣」として、①本業重視、②信頼経営、③透徹した職人精神、④血縁を超えた後継者選び、⑤保守的な企業運用、⑥外国からの侵略が少なかったこと、⑦職人を尊重する社会的雰囲気があったこと、の7つの秘訣があげられている。さらに、同じく山下幸三によれば、「長寿企業の企業観」として、①社会的責任、②長期的視点、③人材重視、④絶えざる革新、⑤質素・倹約の勧め(企業風土・企業倫理)、の5つの企業観があげられている。

これらの長寿企業の成功要因に関する山下幸三の見解は、非常に優れた論点整理がなされており、重要な指摘であると理解することができる。

4.中小企業における管理会計の要否

管理会計研究は、これまで特に限定しない限り大企業を対象としていた。そのため、どのような新たな技法、例えば戦略管理会計の技法でも企業への提案・適用が可能であった。

本稿での議論の対象である中小企業に関する実態調査・聞取調査では、管理会計技法(予算管理、原価管理、部門別管理など)が既に導入済の企業や BSC の導入事例も報告されている。しかし、中小企業にどのような管理会計技法が必要なのかについては、一概に論じることはできないであろう。また、中小企業へ BSC、ABC/ABM、原価企画、ライフサイクル・コスティングといった技法の適用は困難、または不要な場合があると思われる。どういう条件(業種・業態や要件)があれば、こうした管理会計技法の導入が可能になるのか、また、その目的、役割・機能、適用可能性などを十分に検討する必要があるのである。

中小企業管理会計の問題点については、既に筆者が指摘したものであるが、中小企業は業種・業態、個々の企業によって異なるけれども、優れた管理会計システムを構築しているとはいえないのが現状である。すなわち、中小企業における典型的な問題は、①経営資源(人、金、物、情報ないし情報システム)が十分でない、とりわけ資金繰り・資金管理に余裕がない、②予算管理などの月次ないし四半期の短いサイクルでの業績管理の仕組みが不十分であり、③正確な売上高や仕入高、売上原価などの管理がきちんと行われていない、④部門別業績管理が十分に行われていない、などの問題があるといえる〔30〕。

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5.中小企業への管理会計の適用の限界

(1) 中小企業の発展段階および中小企業の管理会計の必要性

中小企業へ管理会計技法の導入提案を行うことは可能であるが、筆者はその際に、当該企業の発展段階や必要性を考慮すべきであると考える。例えば、以下の3つの理由から BSC を全ての中小企業に一律に導入提案することはできないと思われる。① 導入・運用に関わるコスト・ベネフィットの考慮の必要性。②  導入後における BSC システム・オペレーションの操作(データ入力)とりわけ財務以外の視

点(顧客、内部ビジネス・プロセス、学習と成長)はプロセス指標であるため、業務の実行中にその都度データ入力が必要であること。

③  顧客データ分析が必要な場合、BSC でなくても販売管理ソフトやマーケティング・アナリティクス(ビジネス・アナリティクス:BA)で顧客情報管理は可能である。例えば日本アイ・ビー・エム ( 株 )、( 株 ) シャノン、兼松エレクトロニクス ( 株 ) のクラウド型マーケティング・ソリューション(中堅中小企業向け BA ソリューション)などを導入することも選択肢である。

(2) 中小企業の管理会計・原価計算の実施および会計管理システム・ERP 導入に関する実態調査

中小企業の管理会計・原価計算の実施および会計管理システム・ERP 導入に関する実態調査については、以下の図表-9「中小企業に必要とされる管理会計技法 実態調査①」、図表- 10「中小企業の原価計算に関する実態調査②」、図表- 11「2016 年中堅・中小企業における会計管理システム・ERP 導入の実態調査③」に示すとおりである。

図表-9「中小企業に必要とされる管理会計技法 実態調査①」および図表- 10「中小企業の原価計算に関する実態調査②」における調査対象企業は、両方とも中小企業総合研究所というコンサルティング会社からコンサルティング・サービスを受けている企業である。調査期間は 2016 年6 月~ 11 月にかけて行われたものである。そのため、有効回答数はそれぞれ 745 社、615 社であり、実態調査における有効回答数は比較的多いといえる。

図表-9の中小企業に必要とされる管理会計技法の調査結果からいえることは、従業員数が多い企業ほど予算管理(業績管理)、損益分岐点分析、部門別管理の3つの技法とも実施状況が高いことがわかる。それぞれの技法の実施状況は、予算管理(業績管理)のうち月次管理が 73.2%、予算管理が 30.1%、損益分岐点分析が 26.2%、部門別管理のうち部門別営業利益まで算出しているものが 34.2%、製品・サービス別営業利益まで算出しているものが 17.7% である。実施している業種で多い順にあげると、小売業、飲食業、不動産業、卸売業、サービス業、運輸通信 IT 業、製造業となっている。また、管理会計を導入していない企業で、その理由としては、①部門が1つしかない、②部門間に大差がない、③期末まで売り上げが読めない、④勤務時間を集計しておらず原価計算ができない、⑤固変分解の仕方が分からない、⑥経理担当者が他の業務で手一杯である、⑦現場に時間管理をする余裕がない、などがあげられている。

図表- 10 の中小企業の原価計算に関する調査結果からいえることは、やはり従業員数が多い企業ほど実施状況が高いことがわかる。部門別原価計算の実施状況は、全体の約 70% の企業で実施している。実施している業種(多い順):飲食業、小売業、建設業、製造業、卸売業(ここまでの業種が 60% 以上)、運輸通信 IT 業、サービス業、不動産業(この3つの業種が 60% 以下)であり、

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実施方法としては、税理士に依頼が約 15%、自社で市販のソフトを利用が約 35%、自社でソフト以外で実施が約 50%、そして、卸売業・小売業は、市販のソフトの利用が多い、製造業・建設業は、製品や工事別の原価計算が必要なため、市販のソフトではなく Excel や工事台帳を用いて対応しているということで、2社に1社は会計ソフトを使っていない状況である。部門別原価計算を実施していない企業の理由としては、①分からない/できない、②時間がない/人がいない、③必要ない、などである。

図表-9 中小企業に必要とされる管理会計技法 実態調査①調査対象企業:中小企業総研からサービスの提供を受けている企業調査期間:2016 年6月1日~8月3日有効回答数:745 社調査エリア:全国

(調査結果)従業員数が多い企業ほど3つの技法とも実施状況が高い「予算管理(業績管理)」→月次管理 73.2%、予算管理 30.1%「損益分岐点分析」→ 26.2%「部門別管理」→部門別営業利益 34.2%、製品・サービス別営業利益17.7%実施している業種(多い順):小売業、飲食業、不動産業、卸売業、              サービス業、運輸通信 IT 業、製造業

出所: 中小企業総合研究所「何を元に経営判断をする?:中小企業の管理会計導入実態」2016 年8月。

図表- 10 中小企業の原価計算に関する実態調査②調査対象企業:中小企業総研からサービスの提供を受けている企業調査期間:2016 年9月9日~ 11 月 24 日有効回答数:615 社調査エリア:全国

(調査結果)従業員数が多い企業ほど実施状況が高い「部門別原価計算」→全体の約 70% の企業で実施している実施している業種(多い順):飲食業、小売業、建設業、製造業、卸売業(ここまでの業種が 60% 以上)、運輸通信 IT 業、サービス業、不動産業(この3つの業種が 60% 以下)実施方法:税理士に依頼→約 15%、自社で市販のソフトを利用→約 35%、自社でソフト以外で実施→約 50%、卸売業・小売業→市販のソフトの利用が多い製造業・建設業→製品や工事別の原価計算が必要なため、市販のソフトではなく Excel や工事台帳を用いて対応:2社に1社は会計ソフトを使わず

出所: 中小企業総合研究所「2社に1社は会計ソフト使わず:中小企業の原価計算実態」2017 年1月。

一方、図表- 11 の 2016 年中堅・中小企業における会計管理システム・ERP 導入の実態調査③

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はノークリサーチ社という調査会社が毎年、いくつかのテーマについて行っている調査のうちの1つである。調査対象企業は、日本全国・全業種の 500 億円未満の中堅・中小企業であり、対象職責は「情報システムの導入や運用 / 管理の作業を担当している」、「情報システムに関する製品 / サービスの選定または決裁の権限を有している」などの権限を持つ社員である。調査実施時期は、2016年7月~8月で、有効回答数は 1,300 社である。

図表- 11 は、財務会計ソフトを使用している企業で年商 500 億円未満の企業全体のうち導入済製品・サービスの上位5社(複数回答可)を示している。

①勘定奉行(クラウド形態も含む):OBC が 16.8%、②弥生会計(クラウド形態も含む):弥生が 16.4%、③ GLOVIA SUMMIT/smart 会計 / きらら会計:富士通が 10.2%、④ OBIC7 会計情報システム:オービックが 9.1%、⑤ SMILE シリーズ:OSK(大塚商会)が 8.2% である。

また、ERP を導入している年商 50 億円以上~ 100 億円未満の企業のうち導入済製品・サービスの上位8社を示している。① GLOVIA smart/SUMMIT/GLOVIA ENTERPRISE:富士通が17.1%、② SAP ERP/SAP Business All-in-one:SAP ジャパンが 12.2%、③ SMILE シリーズ:OSK(大塚商会)が 12.2%、④奉行 V ERP/ 新 ERP(奉行 21/ 奉行 i を除く):OBC が 9.8%、⑤EXPLANNER:NEC が 4.9%、⑥ Future Stage(GEMPLANET):日立製作所が 4.9%、⑦ OBIC7:オービックが 2.4%、⑧ SAP Business One:SAP ジャパンが 2.4% である。

図表- 11 2016 年中堅・中小企業における会計管理システム・ERP導入の実態調査③(財務会計ソフト)年商 500 億円未満の企業全体:

導入済製品 /サービス上位5社

(複数回答可)① 勘定奉行(クラウド形態も含む):OBC 16.8%② 弥生会計(クラウド形態も含む):弥生 16.4%③ GLOVIA SUMMIT/smart 会計 / きらら会計:富士通 10.2%④ OBIC7 会計情報システム:オービック 9.1%⑤ SMILE シリーズ:OSK(大塚商会) 8.2%

(ERP)年商 50 億円以上~ 100 億円未満の企業:導入済製品 /サービス

上位8社

① GLOVIAsmart/SUMMIT/GLOVIA ENTERPRISE:富士通 17.1%② SAP ERP/SAP Business All ‐ in ‐ one:SAP ジャパン 12.2%③ SMILE シリーズ:OSK(大塚商会) 12.2%④ 奉行 V ERP/ 新 ERP(奉行 21/ 奉行 i を除く):OBC 9.8%⑤ EXPLANNER:NEC 4.9%⑥ Future Stage(GEMPLANET):日立製作所 4.9%⑦ OBIC7:オービック 2.4%⑧ SAP Business One:SAP ジャパン 2.4%

出所: (株)ノークリサーチ「2016 年中堅・中小企業における会計管理システムの導入社数シェアと今後のニーズ」2016 年 10 月。(株)ノークリサーチ「2016 年中堅・中小企業における ERP 活用の実態と今後のニーズに関する調査」2016 年 10 月。

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6.中小企業のライフサイクルに対応させた業績管理システム

中小企業のライフサイクルに対応させた業績管理システムに関して、図表- 12 はそうした中小企業のライフサイクルに対応させた業績管理システムの例を示したものである。図表- 12 から明らかなように、スタートアップ期では、月次決算も部門別損益管理も行われない。まだ創業したばかりの段階では、そのような管理を行う余裕はないものと思われる。次の急成長期になると、1か月で作成される月次決算が行われ、それは資金繰りが主目的であり、売上を集計し、費用は直接費のみで部門別損益把握が行われるとされる。そして、経営基盤確立期になると、半月(15 日程度)で作成される月次決算が行われ、予算・実績を対比させた損益管理、および間接部門費を配賦し、部門別予実管理が行われるとする。さらに、新成長期になると、10 日程度で作成される月次決算が行われ、また、それは迅速な経営意思決定に役立てられ、部門別に B/S を把握し、投資・資金を管理するとされる。最後に、経営革新期になると、1週間程度で作成される月次決算が行われ、かつ迅速な経営意思決定に役立てられ、事業部制やカンパニー制への移行などの管理責任の明確化が行われるとされている。

この中小企業のライフサイクルに対応させた業績管理システムの例は、中小企業の大よその発展段階を考慮し、月次決算と部門別損益管理の業績管理における2つの技法の観点からまとめられたもので、1つのモデルとして参考になると思われる。あくまでも例示のため、このモデルで、実際に中小企業の発展段階に対応させた業績管理システムの説明としては不十分であるといえる。既に言及したように、筆者は、中小企業の発展段階を踏まえて、中小企業管理会計システムの類型化が必要であると考えている。そうした研究や実務に適用できる実践的かつ体系的なモデルは、わが国および欧米においてもまだ開発されていない状況である。筆者は今後、研究を積み重ねて、そのような実務に適用できる実践的かつ体系的なモデルの構築を行う予定である。

なお、図表- 12 の中の月次決算の作成日数は、現在では会計のソフトウェアを使えば、もう少し短い日数で作成できると思われる。

図表- 12 中小企業のライフサイクルに対応させた業績管理システムの例

スタートアップ期

急成長期 経営基盤確立期

新成長期 経営革新期

月次決算

作 成日 数

作成しない 1か月 15 日程度 10 日程度 1週間程度

目 的 な し資金繰りが主目的

予 算・ 実 績を対比させた損益管理

迅速な経営意思決定に役立てる

迅速な経営意思決定に役立てる

部門別損益管理 行わない

売上を集計、費用は直接費のみで部門別損益把握

間接部門費を 配 賦、 部門別予実管理

部門別に B/S を把握し、投 資・ 資 金を管理

事業部制やカンパニー制への移行など管理責任の明確化

出所: 柳孝一・山本孝夫編著『ベンチャーマネジメントの変革:成長段階別の経営戦略とリスクへの対応』日本経済新聞社、1996 年、179 頁。

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7.む  す  び

本稿では、中小企業は大企業に比べて利用できる経営資源すなわち人、金、物、情報(情報システム)に制約があり、管理会計システムの導入・運用についても制約があると考える。そのため、中小企業の管理会計(管理会計システム)について論じる場合には、その前段階(前提)として中小企業の発展段階を考慮する必要があると考えるのである。そして、中小企業の発展段階を踏まえて、中小企業管理会計システムの類型化が必要である。

そうした観点から本稿では、まず中小企業の現状と中小企業の発展段階に関連して「中小企業基本法」における中小企業の定義について明らかにし、次いで、企業の寿命(ライフサイクル)および優良企業の企業観について取り上げた。そして、優良企業(長寿企業)と管理会計システムとの関連性に関して、管理会計の役割・機能、長寿企業(老舗企業)の比較尺度、長寿企業の特徴について考察した。そうした考察の後に、中小企業における管理会計の要否、中小企業への管理会計の適用の限界、とりわけ中小企業の発展段階および中小企業の管理会計の必要性、中小企業の管理会計・原価計算の実施および会計管理システム・ERP 導入に関する実態調査について検討を行い、また、中小企業のライフサイクルに対応させた業績管理システムについて若干の考察を行った。

筆者は、中小企業における管理会計システムの構築は、大企業における管理会計システムと同じ考え方で導入・提案を行うことには限界があると考える。中小企業の発展段階(ライフサイクル)や、どのような業種・業態の企業に対して、どのような管理会計システムが適用できるか、その制約条件などを検討し、中小企業管理会計システムの類型化を行う必要があると考えるのである。その点について筆者は 10 ~ 15 程度のタイプに分類することが可能であると考えているが、本稿では、その前段階としての基礎的な論点の整理を行い、中小企業管理会計システムの類型化の検討については今後の課題とすることにしたい。

【参考文献】〔1〕Churchill, Neil C. & Virginia L.Lewis, “The Five Stages of Small Business Growth,” Harvard

Business Review, May–June 1983, pp.30-50.〔2〕Gilkey, Charlie, The Small Business Life Cycle:A No-Fluff Guide to Navigating the Five Stages of

Small Business, 2nd ed., Jetlaunch, 2014.〔3〕Greiner, Larry E., “Evolution and Revolution as Organizations Grow,” Harvard Business

Review, May–June 1998, pp.55-68.〔4〕Lester, Donald L. & John A.Parnell, “The Progression of Small and Medium-Sized

Enterprises (SME) through The Organizational Life Cycle,” JBE Outstanding Paper, 2003, pp.202-215.

〔5〕Scott, Mel & Richard Bruce, “Five Stages of Growth in Small Business,” Long Range Planning, Vol.20, No.3, 1987, pp.45-52.

〔6〕小野伸一「企業のライフサイクルと株式価値、企業価値、経済成長:起業・ベンチャー、事業再生の視点から」『立法と調査』第 298 号、2009 年 11 月、72-85 頁。

〔7〕神田良・清水聰・北出芳久・岩崎尚人・西野正浩・黒川光博『企業不老長寿の秘訣:老舗に学ぶ』白桃書房、2000 年。

〔8〕金融庁「地域金融機関による事業性評価について」2014 年 10 月、1-16 頁。

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〔9〕経済産業省中小企業庁『日本の中小企業・小規模事業者政策』経済産業省中小企業庁、2013 年。〔10〕国税庁『平成 27 年度分 会社標本調査』国税庁、2017 年。〔11〕後藤俊夫『三代、100 年潰れない会社のルール:超長寿の秘訣はファミリービジネス』プレ

ジデント社、2009 年。〔12〕コリンズ , ジェームズ C. & ジェリー I. ポラス、山岡洋一訳『ビジョナリー・カンパニー:

時代を超える生存の原則』日経 BP 出版センター、1995 年。〔13〕コリンズ , ジェームズ C., 山岡洋一訳『ビジョナリー・カンパニー②:飛躍の法則』日経 BP 社、

2001 年。〔14〕佐井吾光「100 年企業を経営する」『重点テーマ レポート』(大和総研)2016 年7月、1-15 頁。〔15〕(財)商工総合研究所『革新的中小企業の成長戦略:企業の発展段階別にみる成長の条件』

2000 年。〔16〕鈴木健介『破産から再起した社長が教える黒字のための「5×6」の法則』光文社、2008 年。〔17〕中小企業基盤整備機構 経営支援情報センター(独立行政法人)「ベンチャー企業の人材確保

に関する調査」『中小機構調査研究報告書』第3巻第6号、2011 年3月、1-129 頁。〔18〕中小企業政策審議会 基本問題小委員会金融ワーキンググループ「中小企業・小規模事業者の

事業の発展を支える持続可能な信用補完制度の確立に向けて(案)」2016 年 12 月、1-115 頁。〔19〕中小企業総合研究所「何を元に経営判断をする?:中小企業の管理会計導入実態」2016 年8月。〔20〕中小企業総合研究所「2社に1社は会計ソフト使わず:中小企業の原価計算実態」2017 年1月。〔21〕中小企業庁「中小企業・小規模事業者のライフステージにおける資金需要・リスクと信用補

完制度の意義」2016 年4月、1-21 頁。〔22〕中小企業庁『中小企業白書 2017 年版』www.chusho.meti.go.jp〔23〕「(特集)企業は永遠か:日本の百年に見る生き残りの条件」『日経ビジネス』1983 年9月 19 日号、

40-131 頁。〔24〕「(特集)新 会社の寿命:企業短命化の衝撃:盛期は5年、復活へ5法則」『日経ビジネス』

1999 年 10 月4日号、26-53 頁。〔25〕「(特集)最新版 会社の寿命:老化を防ぐ3つの処方箋」『日経ビジネス』2013 年 11 月4日号、

26-49 頁。〔26〕(株)ノークリサーチ「2016 年中堅・中小企業における ERP 活用の実態と今後のニーズに関

する調査」2016 年 10 月。〔27〕(株)ノークリサーチ「2016 年中堅・中小企業における会計管理システムの導入社数シェア

と今後のニーズ」2016 年 10 月。〔28〕ピーターズ , T.J. & R.H. ウォーターマン、大前研一訳『エクセレント・カンパニー:超優良

企業の条件』講談社、1983 年。〔29〕ピーダーセン , ピーター D.『レジリエント・カンパニー:なぜあの企業は時代を超えて勝ち残っ

たのか』東洋経済新報社、2015 年。 〔30〕本橋正美「中小企業管理会計の特質と課題」『会計論叢』(明治大学)第 10 号、2015 年2月、

51-69 頁。〔31〕本橋正美「中小企業管理会計の事例研究アプローチ」『会計論叢』第 12 号、2017 年3月、29-47 頁。〔32〕安田武彦「『企業の一生の経済学』とその課題」『中小企業のライフサイクル:日本中小企業

学会論集㉖』2007 年8月、30-41 頁。

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〔33〕柳孝一・山本孝夫編著『ベンチャーマネジメントの変革:成長段階別の経営戦略とリスクへの対応』日本経済新聞社、1996 年。

〔34〕山下幸三「長生きする日本の統治:日本の中小企業の卓越性と企業統治モデル」『JSSA 内部統制研究プロジェクト』2009 年6月。

〔35〕山下幸三、植野俊雄、宮城郁美「長生きする日本の統治:日本の中小企業の卓越性と企業統治モデル」『JSSA 内部統制研究プロジェクト』2009 年6月。

〔36〕山本裕久「技術の不連続と企業成長」『生産と技術』第 66 巻第2号,2014 年3月、75-79 頁。〔37〕柳在相「ベンチャー企業の成長プロセスと戦略についての一考察:戦略論的視点からの成

長プロセスモデルの構築」『情報文化学部紀要(社会科学編)』(新潟国際情報大学)第2号、1999 年3月、191-204 頁。