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合理的個人はなぜ投票するのか83
大き
な選
挙に
おい
ては
、自
分の
一票
によ
って
選挙
結果
に変
化が
起こ
るこ
とは
ほと
んど
なく
、投
票の
利益
はゼロ
に
近いが、投票のコストは存在する。したがって、合理的行為者は常に棄権するという帰結になるが、現実の選挙で
は投票に参加する人が少なからず存在する。このことは「無投票のパラドックス」と呼ばれている。
現実の多くの人々は、投票への義務感のために投票に参加しているというモデルが初めに提唱されたが、これで
は、
選挙
結果
とは
無関
係に
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々は
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して
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こと
とな
り、
「投
資価
値の
無効
化問
題」
とも
言うべき新たな問題が起きてしまう。その後、個人的意志決定のモデルやゲーム理論的モデルが開発されたが、い
ずれも問題があり、再び個人の意志決定についての新しいモデルがいくつか報えられている。現実の投票行勘に適
用できるモデルを作るためには、自分の一粟が選蛎結果弱左右しうる主観確率Pが、どのように決定されているか
についての考慮が必要である。本舗では、合理的投票者モデルの発展の流れを紹介し、その凹趣点について検討を
一打。?◎ 合理的個人はなぜ投票するのか
「無投票のパラドックス」とモデルの発展
[キーワード]合理的選択理論投票参加 無投票のパラドックス
社会学研究第六十二号東北社会学研究会一九九五年七月
村瀬洋一