Top Banner
製品・技術紹介 73 JFE 技報 No. 45 2020 2 月)p. 73-74 Copyright © 2020 JFE Steel Corporation. All Rights Reser ved. 統合監視制御プラットフォーム JFE-SCADA Integrated Supervisory Control Platform: JFE-SCADA 1. はじめに SCADASupervisory Control And Data Acquisitionシス テムは,遠隔地にあるプラント設備情報(プロセスデータ設備状態など通信インフラをして収集・蓄積するシ ステムであるJFE エンジニアリングはガスパイプライン施設遠隔監 したオリジナル仕様SCADA ソフトウェア開発2011 年以降統合監視制御プラットフォーム JFE- SCADA をベースにシステム構築っている 12018 Windows 1 10 対応版をリリースし,監視拠点 50 局超SCADA システム構築実績がある2. JFE-SCADA システムの特徴 天然ガスを輸送するパイプライン施設SCADA システム ライフラインの安定操業のため24 時間 365 リアル タイム監視機能,ならびに広域災害時安全遮断ツール としての機能具備,高信頼性可用性要求されるJFE-SCADA システムはこれに対応した以下特徴がある1データベースサーバーの待機冗長化 データベースサーバーの二重化には図1 すと おり,待機冗長化によるホットスタンバイ方式採用。稼働系サーバーのみが通信回線経由でデータ収集 ,待機系サーバーのデータ蓄積,通信回線利用せずに稼働系サーバー経由われるこのため通信回線負荷低減ることができる2データベースの等値化処理 故障やメンテナンスにより二重化サーバーの一方停止した場合,当該サーバーの停止期間中のデータは 欠損してしまう(両サーバーのデータベースが不一致)。 データベースの等値化処理では図2 すように稼働継続していた他方のサーバーより欠損期間中データを補完することで,両サーバーのデータベースを 一致させることができる3)通信回線待機冗長化 通信回線二重化(メイン回線とバックアップ回線) には図3 すとおり,待機冗長化によるホットスタ ンバイ方式採用したメイン回線優先的活用メイン回線不通時はバックアップ回線によりデータ 収集メイン回線復旧時,優先順位いメ イン回線によるデータ収集自動復帰する2019 10 2 日受付 1Microsoft Corporation 米国およびそのにおける商標または 登録商標 図 1 データベースサーバーの待機冗長化 Fig. 1 Standby redundant system of database 図 2 等値化処理によるデータ補完 Fig. 2 Data complement by equalization processing 図 3 通信回線の待機冗長化 Fig. 3 Standby redundant system of communication line
2

統合監視制御プラットフォームJFE-SCADASCADA をベースにシステム構築を行っている1)。2018 年に はWindows*110 対応版をリリースし,監視拠点50

Jun 18, 2020

Download

Documents

dariahiddleston
Welcome message from author
This document is posted to help you gain knowledge. Please leave a comment to let me know what you think about it! Share it to your friends and learn new things together.
Transcript
Page 1: 統合監視制御プラットフォームJFE-SCADASCADA をベースにシステム構築を行っている1)。2018 年に はWindows*110 対応版をリリースし,監視拠点50

製品・技術紹介

- 73 -

JFE技報 No. 45(2020年 2月)p. 73-74

Copyright © 2020 JFE Steel Corporation. All Rights Reserved.

統合監視制御プラットフォーム JFE-SCADA

Integrated Supervisory Control Platform: JFE-SCADA

1.はじめに

SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)システムは,遠隔地にあるプラント設備の情報(プロセスデータ,設備状態など)を通信インフラを介して収集・蓄積するシステムである。

JFEエンジニアリングは,ガスパイプライン施設の遠隔監視に適したオリジナル仕様の SCADAソフトウェア開発に取り組み,2011年以降は統合監視制御プラットフォーム JFE-

SCADAをベースにシステム構築を行っている 1)。2018年にはWindows*110対応版をリリースし,監視拠点 50局超のSCADAシステム構築実績がある。

2.JFE-SCADA システムの特徴

天然ガスを輸送するパイプライン施設の SCADAシステム

は,ライフラインの安定操業のため,24時間 365日リアルタイム監視の機能,ならびに広域災害時の安全遮断ツールとしての機能を具備し,高い信頼性と可用性が要求される。JFE-SCADAシステムは,これに対応した以下の特徴がある。(1)データベースサーバーの待機冗長化

データベースサーバーの二重化には,図 1に示すとおり,待機冗長化によるホットスタンバイ方式を採用した。稼働系サーバーのみが通信回線経由でデータ収集

を行い,待機系サーバーのデータ蓄積は,通信回線を利用せずに稼働系サーバー経由で行われる。このため,通信回線の負荷低減を図ることができる。

(2)データベースの等値化処理故障やメンテナンスにより二重化サーバーの一方が停止した場合,当該サーバーの停止期間中のデータは欠損してしまう(両サーバーのデータベースが不一致)。データベースの等値化処理では,図 2に示すように,稼働継続していた他方のサーバーより欠損期間中のデータを補完することで,両サーバーのデータベースを一致させることができる。

(3)通信回線の待機冗長化通信回線の二重化(メイン回線とバックアップ回線)

には,図 3に示すとおり,待機冗長化によるホットスタンバイ方式を採用した。メイン回線を優先的に活用し,メイン回線の不通時はバックアップ回線によりデータ収集を行う。メイン回線復旧時は,優先順位の高いメイン回線によるデータ収集に自動復帰する。

2019年 10月 2日受付

*1: Microsoft Corporationの米国およびその他の国における商標または登録商標

図1 データベースサーバーの待機冗長化

Fig. 1 Standby redundant system of database

図2 等値化処理によるデータ補完

Fig. 2 Data complement by equalization processing

図3 通信回線の待機冗長化

Fig. 3 Standby redundant system of communication line

Page 2: 統合監視制御プラットフォームJFE-SCADASCADA をベースにシステム構築を行っている1)。2018 年に はWindows*110 対応版をリリースし,監視拠点50

統合監視制御プラットフォーム JFE-SCADA

- 74 -JFE技報 No. 45(2020年 2月)Copyright © 2020 JFE Steel Corporation. All Rights Reserved. 禁無断転載

(4)通信回線の非対称冗長化JFE-SCADA で は, メ イ ン 回 線 は VPN(Virtual

Private Network)回線,バックアップ回線は衛星通信回線の利用を前提とし,各回線の性能(通信速度や通信容量など)に応じ,データ収集周期などのパラメータ設定を可能とした。図 4に示すとおり,局ごと・回線ごとのデータ収集パラメータを可変設定(非対称冗長化)することで,種別の異なる通信回線が混在した場合においても,それぞれの通信パフォーマンスを最大限に活用できる。

3.クラウド版 JFE-SCADA システム

近年の SCADAシステムはプラント設備状況の可視化にとどまらず,ビックデータや IoT(Internet of Things)を活用したデータ編集・分析により,事業運営に必要な管理者向けの情報提供が可能となった。当社の各プラント・商品に対し,クラウド上のビックデータサーバーを利用した JFE-

SCADAシステムを IoTプラットフォームとして展開し,各種データ収集機能の拡充を図っている(図 5参照)。(1)複数システムの統合監視

クラウド版 JFE-SCADAシステムは,複数の監視制御システムの統合監視を行い,遠隔地に点在する各プラント設備の情報を一元管理する。クラウド SCADAサー

バーは,VPN回線を介してオンプレスミス型 JFE-

SCADA サ ー バ ー と 通 信 接 続 す る ほ か,PLC

(Programmable Logic Controller)や DCS(Distributed

Control System)などの制御装置との通信接続に対応している。

(2)高速周期のデータ収集クラウドサーバーは,大量のデータ(ビックデータ)を収集・蓄積できる。高速データロガーユニットやエッジコンピューティング端末を利用し,設備診断(事前予測・事後解析)を目的とした高速周期(0.1~0.2秒)のデータ収集に対応している。

(3)センサーネットワークによるデータ収集バッテリー駆動の無線センサーによるセンサーネット

ワークは,ケーブル配線が不要なため,既存プラント設備の未計測データを容易かつ安価に収集できる。振動計測や温度計測用の無線センサーを既存プラントに後付けすることにより,設備診断データの収集が可能である。クラウド版 JFE-SCADAシステムは,センサーネットワークと連携したデータ収集に対応している。

4.おわりに

ビックデータやセンサーネットワークによるデータは,設備診断や異常予兆検知に活用され,プラント安定操業の一助となる。JFE-SCADAシステムにより収集・蓄積されたデータが,プラント設備の安定操業に寄与し,一層の安心安全につながることを期待している。

参考文献 1) 松下泰史,後藤満之.遠隔監視システム JFE-SCADAの現状と展望.

JFE技報.2015, no. 35, p. 48-53.

〈問い合わせ先〉JFEエンジニアリング 制御技術センター システム開発部 TEL:045-505-8758  FAX:045-505-6516

図4 通信回線の非対称冗長化

Fig. 4 Asymmetric redundant system of communication line

図5 クラウド版 JFE-SCADAシステム

Fig. 5 Cloud JFE-SCADA system