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DOTSを更に発展させるために,地域と薬局が連 携した取り組みが各地で行われている。今後,外来 や薬局との連携が必須となることから「地域DOTS を円滑に進めるための指針」案について検討を行っ た。その試みとして,清瀬市薬剤師会,複十字病院 近隣の3カ所の薬局,多摩小平保健所,複十字病院(薬 剤科・病棟・外来)から薬剤師,保健師,看護師が 一堂に会し,清瀬市の外来・薬局DOTSの発展を目 指して話し合った。 平 成26年 3 月27日(木) は, 薬 局DOTS の目的と今回の検討会の経緯,複十字病院の病棟/ 外来/薬剤科のDOTSの状況,管轄保健所の薬局 DOTSの状況,地域の 3 カ所の薬局から結核患者へ の服薬について,最後に「地域DOTSを円滑に進め るための指針」案について情報共有を行った。 ①病院に近い薬局ではなく,地元の薬局 を利用している傾向がある,②薬局DOTS実施例で は,保健所から電話のみで依頼,脱落時の対応の取 り決めがなく保健所と円滑な連携ができなかった事 例がある,③DOTSノートの利用が外来DOTS/薬 局DOTSに有用(経験的事実)であることから,薬 局で使用されているお薬手帳との連携やパスとして の活用ができないか,という 3 点について,更に検 討を重ねることとなった。 保健所が薬局DOTSによる支援を導入する場合の 留意点をにまとめた。 6 月 2 日(月)では,先月 5 月の結核病 学会での薬剤師の発表の紹介,モバイルHealthの取 り組み,DOTSノートの活用と連携,薬局窓口での プライバシーの配慮,清瀬市としての薬局DOTSを どう進めていくかについて意見交換を行った。 ①結核患者の薬剤処方時に,DOTSノー トを持ってきてもらうように声をかける,②「きよ せ吸入療法研究会」(本誌;2014年 5 月No.356,p22- 23参照)で地域病薬連携を行っており薬剤師会も参 加しているので,その場を活用して10分程DOTSの 話を入れてもらう,③薬局DOTS実施事例のコホー ト検討会を行う(12月ごろ),④ITを活用した服薬 支援アプリ(患者さんが使いたくなるようなアプリ) の共同試作などを今後の予定とした。 次ページには,薬剤師と連携した秋田県と長崎県 の取り組みを紹介しています。 〈第 1 回〉 〈まとめ〉 〈第 2 回〉 〈まとめ〉 結核対策 活動紹介 地域の薬局・薬剤師との連携最前線 結核研究所対策支援部 保健看護学科 科長  永田 容子 ……本誌の薬局DOTSの掲載…… 2007年 5 月号No.315「杉並区における薬局DOTSの取 り組みについて」,2009年 5 月号No.327「調剤薬局にお けるDOTSの取り組みについて」,2009年11月No.330「中 野区における薬局DOTS」,2012年 1 月号No.342「鈴鹿 保健所における薬局DOTSの取り組みについて」などで, 保健所だけでなく,ご担当されている薬局長の方の取り 組みも含まれており,薬局との連携は患者さんの服薬継 続に大きな力となっている。 保健所が薬局DOTSによる支援を導入する場合の留意点 薬局DOTSによる支援の留意点(案) (留意点)①かかりつけ薬局の選び方(処方箋による調剤薬局と同じであること) ②DOTSの方法を確認しておく 例)来局時間の設定も患者に合わせて柔軟に対応できる方がよい ③未来局や副作用などトラブル発生時の対応方法を決めておく ④その上で,主治医への連絡や調整は,薬局もしくは保健所が行う ⑤さまざまな事例の体験を共有(コホート検討会)する ⑥DOTSにおける最終責任は薬局ではなく,保健所である 7 / 2014 複十字 No.357 8
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結核対策 地域の薬局・薬剤師との連携最前線 活動紹介 · 支援アプリ(患者さんが使いたくなるようなアプリ)...

Aug 21, 2020

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Page 1: 結核対策 地域の薬局・薬剤師との連携最前線 活動紹介 · 支援アプリ(患者さんが使いたくなるようなアプリ) の共同試作などを今後の予定とした。

 DOTSを更に発展させるために,地域と薬局が連携した取り組みが各地で行われている。今後,外来や薬局との連携が必須となることから「地域DOTSを円滑に進めるための指針」案について検討を行った。その試みとして,清瀬市薬剤師会,複十字病院近隣の 3カ所の薬局,多摩小平保健所,複十字病院(薬剤科・病棟・外来)から薬剤師,保健師,看護師が一堂に会し,清瀬市の外来・薬局DOTSの発展を目指して話し合った。

     平成26年 3 月27日(木)は,薬局DOTSの目的と今回の検討会の経緯,複十字病院の病棟/外来/薬剤科のDOTSの状況,管轄保健所の薬局DOTSの状況,地域の 3カ所の薬局から結核患者への服薬について,最後に「地域DOTSを円滑に進めるための指針」案について情報共有を行った。

     ①病院に近い薬局ではなく,地元の薬局を利用している傾向がある,②薬局DOTS実施例では,保健所から電話のみで依頼,脱落時の対応の取り決めがなく保健所と円滑な連携ができなかった事例がある,③DOTSノートの利用が外来DOTS/薬局DOTSに有用(経験的事実)であることから,薬局で使用されているお薬手帳との連携やパスとしての活用ができないか,という 3点について,更に検討を重ねることとなった。

*�保健所が薬局DOTSによる支援を導入する場合の留意点を表にまとめた。

      6 月 2 日(月)では,先月 5月の結核病学会での薬剤師の発表の紹介,モバイルHealthの取り組み,DOTSノートの活用と連携,薬局窓口でのプライバシーの配慮,清瀬市としての薬局DOTSをどう進めていくかについて意見交換を行った。

     ①結核患者の薬剤処方時に,DOTSノートを持ってきてもらうように声をかける,②「きよせ吸入療法研究会」(本誌;2014年 5 月No.356,p22-23参照)で地域病薬連携を行っており薬剤師会も参加しているので,その場を活用して10分程DOTSの話を入れてもらう,③薬局DOTS実施事例のコホート検討会を行う(12月ごろ),④ITを活用した服薬支援アプリ(患者さんが使いたくなるようなアプリ)の共同試作などを今後の予定とした。

 次ページには,薬剤師と連携した秋田県と長崎県の取り組みを紹介しています。

〈第 1回〉

〈まとめ〉

〈第 2回〉

〈まとめ〉

結核対策活動紹介 地域の薬局・薬剤師との連携最前線

結核研究所対策支援部

保健看護学科 科長 永田 容子

……本誌の薬局DOTSの掲載…… 2007年 5 月号No.�315「杉並区における薬局DOTSの取り組みについて」,2009年 5 月号No.�327「調剤薬局におけるDOTSの取り組みについて」,2009年11月No.�330「中野区における薬局DOTS」,2012年 1 月号No.�342「鈴鹿保健所における薬局DOTSの取り組みについて」などで,保健所だけでなく,ご担当されている薬局長の方の取り組みも含まれており,薬局との連携は患者さんの服薬継続に大きな力となっている。

表 保健所が薬局DOTSによる支援を導入する場合の留意点

薬局DOTSによる支援の留意点(案)(留意点)①かかりつけ薬局の選び方(処方箋による調剤薬局と同じであること)     ②DOTSの方法を確認しておく      例)来局時間の設定も患者に合わせて柔軟に対応できる方がよい     ③未来局や副作用などトラブル発生時の対応方法を決めておく     ④その上で,主治医への連絡や調整は,薬局もしくは保健所が行う     ⑤さまざまな事例の体験を共有(コホート検討会)する     ⑥DOTSにおける最終責任は薬局ではなく,保健所である

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Page 2: 結核対策 地域の薬局・薬剤師との連携最前線 活動紹介 · 支援アプリ(患者さんが使いたくなるようなアプリ) の共同試作などを今後の予定とした。

【薬剤師と連携した地域DOTSモデル事業】秋田県秋田中央保健所

山本要所長,宮腰 玲子,滝本 法明,佐藤 望

 当保健所において保健師による地域DOTSと併せて薬剤師と連携した地域DOTSのモデル事業を実施したので,その概略を紹介します。 平成24年 6 月からの 9カ月間,服薬中断リスクが高くモデル事業に参加した患者 3名を対象として,退院後の通院開始から服薬終了までに飲殻と服薬管理手帳による確認と指導を行いました。そのうち就労の関係等で保健師の訪問による服薬確認ができない2名に対し薬局DOTSを実施,虚弱で外出困難な 1名に対し薬剤師による訪問DOTSを実施しましたが,3名とも服薬を中断することなく治療終了となりました。 また,モデル事業終了後に関係者による検討会を開催しましたが,この検討会を通じて事例への関わりや治療の評価について職種を越えた共通認識を持つことができました。 今回の試みでは,保健師に加えて患者の生活圏内にいる薬剤師が関与することで,薬の副作用等に対する専門性の高い助言指導ができ,その結果,患者に治療への安心感を与え,確実な服薬継続に繋がったと思われます。今後もこのモデル事業を発展させ結核対策の強化を図っていきたいと考えます。

※�この事業内容は,2013年10月日本公衆衛生学会で発表したものの概要です。

※詳細の問い合わせ先: 秋田県潟上市昭和乱橋字古開172番地 1 秋田県秋田中央保健所 健康・予防課� /電話 018-855-5170

【薬局DOTSの取り組みをはじめて】 長崎県県央保健所地域保健課

脇川 紗也香

 長崎県は結核罹患率が高く(長崎県20.3全国16.7人口10万対率2013年),保健所事業において結核対策は重要な課題です。 県央保健所は「罹患率減少のためには,治療完遂の徹底を!」と考え,服薬状況の確認や服薬中断の早期把握を可能にするために,薬局DOTS事業に取り組んでいます。 事業開始にあたって,薬剤師会と連携のもと薬剤師対象の研修会を開催。またコホート検討会への薬局薬剤師の参画によって,多職種によるコホート評価が可能となりました。その中で,協力薬局の薬剤師さんから副作用出現時の対応や対象者の選定などに関して課題や意見が出されました。

解決のヒントを求め杉並保健所に先進地視察 杉並保健所では,DOTS判定会議の中で,専門医師や保健所の意見をふまえ適切な支援計画が策定され,4カ月後,終了時など定期的に計画を評価する仕組みがあり,薬局・保健所・医療機関を結ぶ連絡体制によって,問題発生時にも迅速な対応をしておられ,長年築かれてきた薬局と保健所との強い連携体制を実感しました。

これらの学びを活かして 今年度県央保健所では,昨年に続き薬剤師対象の研修会を開催し,事業実施と並行して薬局DOTSの周知を図ります。 現在,当所の薬局DOTS実施中の方は 2名です。うち 1名は70代男性,抗結核薬 3剤以外に15種類処方され,誤薬のリスクがあり薬局DOTS対象となりました。協力薬局の薬剤師さんは対象者を顔見知りだったので「Aさんのためなら」と熱心に結核について勉強されています。対象者,家族,薬局薬剤師のご意見に耳を傾け,こまめに情報交換しながら,適時評価し,薬局DOTSの効果を見出したいと考えています。 今後、薬局DOTSを充実させ,対象者の身近なところでより専門性を活かした地域DOTSを実現して参ります。今年は協力薬局の薬剤師による実施報告を加え,薬局DOTSの効果をお伝えする予定です。 目標は,結核罹患率が低い都道府県ベスト10!

地域の薬局・薬剤師との連携最前線

結核対策へのユニークな取り組み,工夫された事業などを本誌でご紹介します。ご投稿をお待ちしています。

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