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NanotechJapan Bulletin Vol. 6, No. 1, 2013 第 12 回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2013)開催報告 -1 第 12 回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議 nano tech 2013 は,2013 年 1 月 30 日から 2 月 1 日までの 3 日間 例年通り東京国際展示場(東京ビッグサイト)東 4 ~ 6 ホールで開催された.主催は nano tech 実行委員会,後援は内閣 府,総務省,文部科学省,農林水産省,経済産業省,アメリカ合衆国大使館を始めとする 19 カ国の大使館および政府機関, 8独立行政法人,および,2社団法人である.また,協賛は(社)応用物理学会,(社)高分子学会,(社)日本化学会,(社) 日本分析化学会,ナノ学会およびフラーレン・ナノチューブ・グラフェン学会で,さらに特別協賛として Nature Asia- Pacific が参画している. 21 世紀に入り,ナノテクノロジーが人類進歩の重要な基盤技術の一つとしてグローバルに研究開発が活発になり,そ の技術展開促進を狙って発足した国際ナノテクノロジー総合展は,今回で 12 回目を迎える.近年地球環境問題のクロー ズアップに伴い,ナノテクノロジーのこの問題への寄与,即ちグリーン化への大きな貢献が強く期待され,国際ナノテク ノロジー総合展においても,第 8 回から Green Nanotechnology が展示会テーマとなった.昨年の第 11 回から更に人々 の生活に密接に関わる医療,食品,化粧品等にもフォーカスして,テーマにライフが加わった.今年の展示会全体のテー マは,前回に引き続き「10 -9 Innovation(ナノイノベーション),"Life & Green Nanotechnology"」であった.ナノテク ノロジーが基礎研究としての社会ニーズとの結びつきを求められる段階に入ってきた今,具体的な貢献の実現を目指す目 標である. このようなシーズとニーズの結びつきの効果を高めるため,今回の展示会では,商談促進ツール「ICS ビジネスマッチ ングシステム」が導入された.事前にかな り精度の高い検索ができ,商談相手との日 時設定が自動的に行えるシステムである. 展示会場の一郭には商談用の場所も設けら れた. また,この nano tech 2013 と同時開催 の展示会は次の 11 件であり,昨年の 7 展 示会より 4 件増えている.これによる異な る専門分野間の交流が行われ,シナジー効 果が発揮され,最先端技術と製品のビジネ スマッチングを創出することが期待されて いる.各展示会とも賑わいを見せていた. "Enex 2013" "Smart Energy Japan2013" " 試作・受託加工展 2013" "Neo Ceramics2013" 先端セラミックス &機能性ガラス先進応用技術展・会議 "Inter Aqua 2013" 第 4 回 国 際 水 ソ リューション総合展 "ASTEC2013" 第 8 回国際先端表面技術 展・会議 "SURTECH2013" 表面技術要素展 "Convertech Japan 2013" " 新機能性材料展 2013" "Printable Electronics2013" " 先進印刷技術展 2013" 第 12 回 国際ナノテクノロジー総合展 ・ 技術会議(nano tech 2013)開催報告
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May 27, 2020

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NanotechJapan Bulletin Vol. 6, No. 1, 2013 第 12 回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2013)開催報告 -1

 第 12回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議 nano tech 2013 は,2013 年 1月 30 日から 2月 1日までの 3日間例年通り東京国際展示場(東京ビッグサイト)東 4~ 6ホールで開催された.主催は nano tech 実行委員会,後援は内閣府,総務省,文部科学省,農林水産省,経済産業省,アメリカ合衆国大使館を始めとする 19カ国の大使館および政府機関,8独立行政法人,および,2社団法人である.また,協賛は(社)応用物理学会,(社)高分子学会,(社)日本化学会,(社)日本分析化学会,ナノ学会およびフラーレン・ナノチューブ・グラフェン学会で,さらに特別協賛として Nature Asia-Pacifi c が参画している. 21世紀に入り,ナノテクノロジーが人類進歩の重要な基盤技術の一つとしてグローバルに研究開発が活発になり,その技術展開促進を狙って発足した国際ナノテクノロジー総合展は,今回で 12回目を迎える.近年地球環境問題のクローズアップに伴い,ナノテクノロジーのこの問題への寄与,即ちグリーン化への大きな貢献が強く期待され,国際ナノテクノロジー総合展においても,第 8回から Green Nanotechnology が展示会テーマとなった.昨年の第 11回から更に人々の生活に密接に関わる医療,食品,化粧品等にもフォーカスして,テーマにライフが加わった.今年の展示会全体のテーマは,前回に引き続き「10-9 Innovation(ナノイノベーション),"Life & Green Nanotechnology"」であった.ナノテクノロジーが基礎研究としての社会ニーズとの結びつきを求められる段階に入ってきた今,具体的な貢献の実現を目指す目標である. このようなシーズとニーズの結びつきの効果を高めるため,今回の展示会では,商談促進ツール「ICS ビジネスマッチングシステム」が導入された.事前にかなり精度の高い検索ができ,商談相手との日時設定が自動的に行えるシステムである.展示会場の一郭には商談用の場所も設けられた. また,この nano tech 2013 と同時開催の展示会は次の 11件であり,昨年の 7展示会より 4件増えている.これによる異なる専門分野間の交流が行われ,シナジー効果が発揮され,最先端技術と製品のビジネスマッチングを創出することが期待されている.各展示会とも賑わいを見せていた.

"Enex 2013""Smart Energy Japan2013"" 試作・受託加工展 2013""Neo Ceramics2013" 先端セラミックス&機能性ガラス先進応用技術展・会議"Inter Aqua 2013" 第 4 回 国 際 水 ソリューション総合展"ASTEC2013" 第 8 回国際先端表面技術展・会議"SURTECH2013" 表面技術要素展"Convertech Japan 2013"" 新機能性材料展 2013""Printable Electronics2013"" 先進印刷技術展 2013"

第 12 回 国際ナノテクノロジー総合展 ・ 技術会議(nano tech 2013)開催報告

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NanotechJapan Bulletin Vol. 6, No. 1, 2013 第 12 回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2013)開催報告 -2

1.概要

1.1 総合展出展状況と来場者数

 実行委員会報告による出展する企業・大学・公的研究機関等の数(1月 17 日時点での予定値)を昨年と比較して下表に示す.出展社・機関の数はいずれも昨年を上回っており,特に海外が増え,全体に占める海外の割合も増加している.なお海外からは 22カ国が出展している.また,3日間の総来場者数は 46,846 名と報告されており昨年の 45,024 名を上回っている.

図 1 ナノ材料・素材カテゴリーの関連技術・製品を展示する会社・機関の数

図 2 ナノ評価計測技術 / 装置カテゴリーの関連技術・製品を展示する会社・機関の数

図 3 ナノ加工技術 / 装置カテゴリーの関連技術・製品を展示する会社・機関の数

図 4 各技術カテゴリーにおける展示会社・機関の累積数

1.2 技術分野別出展数と応用分野別出展数の統計データから見た動向

 nano tech 2012 のWebSite では,出展対象のナノテクノロジー技術・製品を「ナノ材料・素材」,「ナノ評価計測技術 /装置」,「ナノ加工技術 /装置」の3技術カテゴリーに分類し,各カテゴリーの中の技術項目毎に関係ある製品展示をしている出展会社・機関を表示している.技術項目毎の関連製品出展者数を棒グラフにしたものを各技術カテゴリーに分けて図 1,図 2,図 3に示す.図では昨年の nano tech 2012 のデータと比較しているが,今回は技術項目の追加があり,そこでは前回のデータは欠如している.図 4は技術カテゴリー毎に集計して大略の動向を示している.数値の増加は分類項目に追加があったことも寄与している. 次に出展技術・製品の応用分野について,同様に出展会社・機関の数を棒グラフにした.応用分野は,「材料・素材」,「IT&エレクトロニクス」,「ナノバイオ」,「自動車」,「環境・エネルギー」,「ライフ分野」「その他」の 7分野に別けられている(図 5~図 11).図 12は応用分野毎に集計して大略の動向を示している. 図 12 で,材料・素材分野が大きく増加しているのは,応用製品項目が大きく増加したことが影響していると考えられる.いずれにしても,材料・素材分野は多く,また環境・エネルギー分野の関連技術・製品も昨年に続き出展が多い.一方,IT& エレクトロニクスと自動車分野は昨年に比較してやや減っている.

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図 10 ライフ分野の関連技術・製品を展示する会社・機関の数

図 11 その他の応用分野に関連する技術・製品を展示する会社・機関の数

図 12 各応用分野において関連技術・製品を展示する会社・機関の累積数

図 5 材料・素材分野の関連技術・製品を展示する会社・機関の数

図 6 IT &エレクトロニクス分野の関連技術・製品を展示する会社・機関の数

図 7 自動車分野の関連技術・製品を展示する会社・機関の数

図 8 環境・エネルギー分野の関連技術・製品を展示する会社・機関の数

図 9 ナノバイオ分野の関連技術・製品を展示する会社・機関の数

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1.3 展示場の出展状況概要

 展示場で圧倒的に大きな空間を占めたのは(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)であり,国内で次に大きいのが,(独)中小企業基盤整備機構,(独)産業技術総合研究所と(独)物質・材料研究機構がそれに次いでいる.その他,(独)情報通信研究機構,(独)理化学研究所などを含めてナノテクノロジーの発展を先導する公的研開発機関は連日賑わっていた.民間企業では東芝,富士フィルム,東レ,日立化成など日常親しみやすい製品でナノテクノロジーの活用を展示する企業が人気を集めており目に付いた.一方海外からのパビリオンは韓国とドイツが,日本の例えば産総研に比べてそれぞれ 4.5 倍と 3倍の面積を占め,台湾,ベルギーも産総研と同等の面積を占め,積極的な技術・製品のアピールを図っていた.ただ残念ながら言語の壁があって比較的閑散とした感じは否めなかった.各国の説明の中には,国や地域の取り組み・プロジェクトの紹介をしているところも多く,海外諸国のナノテクへの積極姿勢が窺えた. 大学の多くが,ナノテクノロジーの普及・発展のために産学官連携プロジェクトの拠点として活動しており,活動概要や成果報告をおこなっていた.その成果に期待したい.

 総合展のキーワードであるビジネスマッチングに関しては,各企業のブースでの交渉の他に商談専用の場所が会場の一郭に設けられていた.(独)中小企業基盤整備機構の中小機構ゾーンでは 30の企業が出展しゾーンの中に商談コーナーとプレゼンコーナー が設けられていた. また展示会場には,メインシアターとニーズ&シーズセミナー Aと Bの講演会場があり,メインシアターでは初日に文部科学省「ナノテクノロジープラットフォーム」(2.1 に記載あり)の紹介や最終日にはナノテク大賞の授賞式が行われ,ニーズ&シーズセミナー会場では,大学,企業,公的研究機関,外国企業による活動状況の紹介が行われ,盛況であった.

2.シーズと社会ニーズとの結合を求めて

 今回の総合展の背景として,基盤技術として成長を続けてきたナノテクノロジーをアプリケーションと結びつける方向に技術展開し,社会ニーズと結び付ける活動が顕著になってきたことが挙げられる.Life & Green はまさにそうした活動の目標である.その実現のために,産学官の共同研究開発などの組織を越え,異業種や異技術領域を融合する体制による研究開発が重要となる.総合展の中でもそうした活動の展示が多くあり,そうした観点を踏まえてまず,国を代表する大きな動きから見て行きたい.

2.1 公的組織,研究機関の展示

■ 独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) NEDOはグリーンイノベーション,ライフイノベーションなどの重要な産業技術において,企業単独ではリスクが高く実用化に至らない共通基盤技術について,各企業などが強みを有する技術力と,大学などが有する開発能力を最適に組み合わせてナショナルプロジェクトとして技術開発をおこなっており,今回の総合展においても一番広いブースを使ってその活動状況が報告された.展示プロジェクト数は 43であり,レアメタル関連が 6件,材料関係 5件,エレクトロニクス関係 8件,環境・エネリギー関係 8件に Inter Aqua2013 の水事業関係 16件を含めて5セションに分類して展示された.エレクトロニクス関係の一つのプロジェクト「次世代プリンテッドエレクトロニクス材料・プロセス基盤技術開発」はナノテク大賞のプロジェクト部門賞を獲得している.これについては後ほど紹介する.

■ ナノテクノロジープラットフォーム ナノテクノロジープラットフォームのブースでは,平成 24年 7月にスタートした文部科学省の「ナノテクノロ

中小機構ゾーン

メインシアター(ナノテクノロジープラットフォームのセミナー開催中)

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ジープラットフォーム」事業を紹介していた.平成 23年度に終了した「ナノテクノロジーネットワーク」事業の成果を引き継ぎ,我が国のナノテクノロジーの一層の発展と普及を図り,グリーンイノベーション,ライフイノベーション実現に貢献することを狙うオープンイノベーションの新しい仕組みである. この事業では,ナノテクノロジーに関する最先端の研究設備とその活用のノウハウを有する機関が一体となって,全国的な設備の共用体制を構築することにより,イノベーション創出に向けた研究基盤(プラットフォーム)を形成する.プラットフォームは 3つの技術領域,即ち,微細構造解析,微細加工,分子・物質合成の技術領域を対象に,産学官の幅広い利用者に対して最先端の設備利用機会を,高度な技術支援と共に提供するとしている.プラットフォームには全国 25の機関が参画し,その中で微細構造解析プラットフォームは 10の機関が対応し,取りまとめる代表機関は(独)物質・材料研究機構(NIMS),微細加工プラットフォームは 16の機関が対応し代表機関は京都大学,分子・物質合成プラットフォームは 11機関が対応し代表機関は大学共同利用機関法人自然科学研究機構 分子科学研究所である.その運営は次の特徴発揮を狙っている.

 ・これら機関は連携して設備の共用化して全国どこで  も誰でもナノテク研究が可能. ・分野融合・技術の複合化による研究成果の創出 ・先端融合分野における人材の育成なお,全体のとりまとめ・調整役のセンター機関は(独)物質・材料研究機構(NIMS)と(独)科学技術振興機構(JST)である. ナノテクノロジープラットフォームのブースでは,このようなプラットフォームの仕組み,3 つのプラットフォーム各々の詳細をパネルで説明すると共に,施設の利用形態,応募と利用方法などを紹介した.なお各機関の対応については,出展している各ブースにおいても個々に説明がなされていた.

■ TIA-nano(つくばイノベーションアリーナ) TIA-nano は,産業技術総合研究所(産総研),NIMS,筑波大学が中核となり,文部科学省,経済産業省が協力して2009年からスタートした世界的なナノテクノロジー拠点である.産学官に開かれた分野融合拠点としてナノテクノロジーの産業化と人材育成を進めることを狙っている.TIA-nano は昨年の nano tech 2012 の開催状況報告でも紹介したが,今年度は高エネルギー加速器研究機

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構(KEK)が中核機関として新たに参加し,大型放射光施設や大強度陽子加速器施設など,研究インフラが充実した.TIA-nano の重点研究領域はナノエレクトロニクス,パワーエレクトロニクス,N-MEMS,ナノグリーン,カーボンナノチューブ,ナノ材料安全性評価,の 6技術領域であり,現在 22に上るナノテクノロジー研究プロジェクトが進められている.例を挙げれば, ・低炭素社会創成へ向けた次世代,第三世代 SiC パワー  デバイスの研究開発 ・革新的製造プロセス技術開発(ミニマルファブ),   EUVL リソグラフィー基盤技術開発 ・グリーンイノベーションを支える CNT の大量合成技  術の開発 ・異分野融合型次世代デバイス製造技術開発などである. TIA-nano は,4500m2 のスーパークリーンルーム,SiCクリーンルーム,N-MEMS ファンドリーを有し,民間企業との共同研究などを進めている.

■ 独立行政法人産業技術総合研究所(産総研) TIA-nano の中核拠点である産総研は,「ナノテクが開く未来のエネルギー」をテーマに掲げ,「エネルギーをつくる,ためる,つたえる」という特別展示コーナーを設けた.ハンディ燃料電池システム,低コストフレキシブル有機薄膜太陽電池,全固体型薄膜リチウムムイオン電池,高容量・低コストのリチウムイオン二次電池電極材料,等 8件の展示があった.一般展示コーナーは,「省エネ製造」「省エネ部材」「光エネ変換」「ナノテク除染」に分野別けして 17 件の展示があった.「省エネ製造」コーナーでは CNT トランジスタの印刷形成技術,印刷と射出成形技術によるMEMS製造技術など,「省エネ部材」コーナーでは撥油性に優れた透明塗膜,超高気孔率セラミックス断熱材など,「光エネ変換」コーナーでは光が当たると自己修復するゲル材料,高断熱調光ミラーガラス窓など,「ナノテク除染」コーナーでは高性能な Cs 吸着材のプルシアンブルーの量産化など,興味ある展示が並んで,賑わっていた.

■ TASC(技術研究組合 単層CNT融合新材料研究開発機構) TASC は,平成 22年 5月 24日に設立され,平成 23年度から NEDO 委託の「低炭素社会を実現する革新的 CNT複合材料開発プロジェクト」として活動している.産総研開発の eDIPS 法,スーパーグロース法により製造するCNT を使用し,単層 CNT の分離技術,金属・樹脂・ゴムなどへの複合化時における分散技術の開発,および CNTの安全性評価についての研究をおこなっている.平成 23年度からグラフェンの製造技術,用途展開の技術開発も進めている.現在の参加機関は,CNT 事業部が産総研と民間企業 5社,グラフェン事業部が産総研と民間企業 4社である.展示では,eDIPS 法により 1.5g/ 時間の大量合

成技術を開発し,CNTの直接紡糸や単層 CNT発熱シート,表面抵抗が極めて低い透明フィルムが出来ることが示された.また,スーパーグロース法による CNT で導電性と機械特性に優れた導電性ゴムが注目された.

■ 独立行政法人物質・材料研究機構(NIMS) TIA-nano の中核拠点でもある NIMS は,文部科学省委託事業において,多くの研究拠点業務に携わっており,オープンイノベーションに貢献していることがポスター展示およびミニ講演で紹介された.元素戦略プロジェクトでは元素戦略磁性材料研究拠点として希少元素に依らない大量生産可能な次世代磁石材料を実験室規模で創製し,基礎学理と技術基盤を構築することを目的として大学,公的研究機関合わせて 9機関と連携して共同研究を実施している.低炭素研究ネットワークでは低炭素化材料設計・創製ハブ拠点となっており,ネットワーク・サテライト拠点や低炭素化に関わる国内外の研究を積極的に支援している.ナノ材料科学環境拠点(GREEN)は,ナノテクノロジーを活用した環境技術開発事業の中核拠点であり,太陽電池,二次電池,燃料電池などの材料に共通する課題を対象に計算科学技術と先端的計測技術を融合して問題解決を図るべく,産学から優れた研究者を招聘し研究と人材育成を行っている.国際ナノアーキテキテクトニクス研究拠点(MANA)は「世界トップレベル研究拠点形成促進事業」の全国 6拠点の一つとして選ばれており,材料の開発に重点を置いて,制御された自己組織化,外場を利用した材料制御,化学的ナノ構造操作,新しい原子・分子操作,理論的モデル化・設計の 5つのキーテクノロジーを統合して新しい材料とシステムを創出してナノパワー分野,ナノライフ分野の技術・商品にイノベションをもたらすことを狙っている.外国人研究者が半数以上とのこと.この他に,ナノテクノロジープラットフォーム事業においてセンター機関と微細構造解析プラットフォームの代表機関に選ばれていることは既に述べた. ブースでの研究成果発表は 15件あり,色々な分野のナノ材料,デバイスの研究を報告していた.挑戦的な例として目にとまったものとして,「有機ナノファイバー励起子ポラリトンによる極微小光回路素子」「分子メモリを目指した単一電子素子」があった.前者は有機色素ナノファイバー中の励起子ポラリトンの伝搬を発見し,ナノファイバーで極微小リング発振器や極微小マッハ・ツエンダー干渉計を試作した.後者はナノスケールの均一サイズの有機分子をメモリセル用トランジスタの浮遊ゲート用量子ドットとして活用するもので,有機分子を高密度に絶縁膜中に埋め込む技術を確立し,実デバイス構造での動作に成功した.

■ 独立行政法人 理化学研究所 理化学研究所の展示では基幹研究所で行っている各種

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NanotechJapan Bulletin Vol. 6, No. 1, 2013 第 12 回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2013)開催報告 -7

研究成果の報告,計算科学研究機構のスーパーコンピューター「京」の概要と産業利用,播磨研究所の X線自由電子レーザー施設 SACLA の紹介などがあった. 研究成果で目にとまったものの一つは「プラズモニック構造を用いた有機 EL」であり,発光エネルギーの 52%が表面プラズモンに移動して熱として失われるのを,金属表面に刻むナノメートルオーダーの微細な凹凸により表面プラズモンを光に変換することで,発光効率を高める発光ダイオードの開発を目指している.もう一つは,「エレクトロスプレーデポジション(EDS)法によるナノマテリアルの作製とマイクロパターニング」で,様々な材料を静電噴霧することでナノマテリアルを作製したり,帯電性マスクによる静電捕集によりナノパーティクルを均一にパターニングできる技術である. X線自由電子レーザー(XFEL)施設 SACLA については,その完成を nano tech 2012 で紹介したが,2012 年 3月から供用が開始されている.XFEL は科学・技術・産業から湧き上がる課題を原子レベルの構造や機能を理解することで解決する強力な手段であり,特に SACLA は放射光施設 SPring-8 と隣接しており XFEL と放射光を同時照射できる世界唯一の施設である.またスーパーコンピューターとの連携により大規模データ解析が可能としている.展示ブースには SACLA の各部分の構造模型が展示されていた.

2.2 大学等における拠点活動

 文部科学省のナノテクノロジーネットワーク事業(平成 19 ~ 23 年),それに続くナノテクノロジープラットフォーム事業,その他色々なプロジェクトで多くの大学がそれぞれの地域で近燐の大学や企業と連携したり共同研究をするなどの活動をしている.nano tech 2013 にそれら活動の多くが出展しており,その中の幾つかを紹介する.

■ 北海道大学 創製研究機構 北大創製研究機構は 2009 年に設立され,それ以前の2005 年から学内にあったオープンファシリティーシステムを引き継いで管理運営をしている.二つの部門があって,共用機器部門は,クリーンルームや約 60 台の機器を学内や外部企業の人達がだれでも使用でき,委託分析部門は生体成分を含む有機化合物の構造分析等を専門スタッフに委託することができる.年間の延べ利用人数は 1万人を突破した(平成 21年度)とのこと.

■ 京都環境ナノクラスターおよび京都大学ナノテクノロジーハブ拠点 文科省の地域イノベーション戦略支援プログラム(グローバル型)の中の「京都環境ナノクラスター」(中核機関:財団法人京都高度技術研究所)と,文科省の「低炭

素社会構築に向けた研究基盤ネットワークの整備」事業および「ナノテクノロジープラットフォーム」事業の「京大ナノテクノロジーハブ拠点」(京都大学学際融合教育研究推進センター)とが,それぞれのブースで出展していた.前者の成果の中には,ローム(株)との共同研究のSiC 関連のデバイス・スイッチング回路・セラミックパッケージの研究開発も見られた.後者は最新鋭微細加工装置群(70台)と 8名の専門技術職員により,研究開発環境と人的交流環境を提供している.

■ 東京大学 学内横断組織であるナノ量子情報エレクトロニクス研究機構(NanoQuine)の活動が紹介されていた.平成 18年度科学技術振興調整費 先端融合領域イノベーション創出拠点プロフラムの一つとして採択された「ナノ量子情報エレクトロニクス連携研究拠点」プロジェクト推進の中核的研究組織と位置付けられている.拠点にはシャープ,NEC,日立製作所,富士通研究所,QDレーザーの 5企業が各々の東大企業ラボを設置し,産学協同で量子ドットレーザ,単一光子光源,高性能エネルギー変換技術,有機トランジスタによる次世代フレキシブルエレクトロニクス,量子暗号通信などの研究を進めている. また,PETRA*,東大,産総研が連携する最先端研究開発支援プログラム First(内閣府)の「' フォトニクス・エレクトロニクス融合基板技術開発」プロジェクト(平成22年 3月開始)の成果として光電子融合システム LSI on Photonics 技術で作製したチップ間を接続する Si 光インターポーザーチップや,Si 基板上に InAs/GaAs 量子ドットを形成する技術などを紹介していた.

*:PETRA(技術研究組合光電子融合基板技術研究所):光電子融合による次世代デバイス・ネットワーク技術開発のための試験研究を行う組合.富士通,日立,NEC,NTT,沖が参加

■ 兵庫県立大学 同大学 高度産業技術研究所が,文科省の先端研究施設共用促進事業に提供しているニュースバル放射光施設を紹介し,産業界,研究機関,大学からの施設利用を呼び掛けていた.さらに,同施設でシンクロトロン放射光から発生する X線の活用に関して,産業用軟 X線分光分析用のビームラインや, LIGA ビームラインを構築してその利用を宣伝していた.LIGA とは,直進性の良い X線を用いて微細パターンで高アスペクト比の高精度微細構造体を作り,これをマスターとして電鋳により作った金型で製品を形成する技術である.

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3.海外パビリオン

 海外からの出展件数は年々増加してきており,グローバルにナノテクノロジーの研究,開発が盛んになっていることを反映している.海外からの出展では,国や州としてのパビリオンの纏めと共に,国や地域の取り組み・プロジェクトの紹介をしているところが多く,共同研究の呼びかけや企業誘致を行っているところもある.

■ ドイツ ドイツは海外からのパビリオンで韓国に次ぐ大面積を占めており,前回と同様の 28 社・機関が出展していた.その中でフラウンホーファー研究機構関連が前回同様に積極的で 6部門が出展していた.目立ったブースとして,ザクセン州経済振興公社を紹介する.ザクセン州がハイテク産業分野ではヨーロッパで最高のビジネスロケーションであることを強調し,ビジネスへの参画を呼び掛けていた.同州のシリコン・ザクソニーはヨーロッパ最大のマイクロエレクトロニクス・クラスターであるという.また,有機&プリンテッド・エレクトロニクスクラスターもヨーロッパ最大であり,基礎研究からハイエン

ド製品まで,付加価値創造のバリューチェーン全てを網羅する約 40 社の企業と 20 の R&D 施設があるとのことであった. 民間企業の中では,カーボンナノ材料の開発製造を行う FutureCarbon(フューチュアカーボン)社が,さらに精製した幾つかの原材料を化合させて使うカーボンスーパーコンポジットと名付ける製品を販売している.このブースで特に興味深かったのはそのアプリケーション製品であった.Carbo e-Therm(カーボ・イー・サーム)と名付けた電熱性コーティングである.塗料のように簡単に塗布でき,形状無関係に加熱可能,車両電源・太陽電池等の低電圧で安全動作可能,大面積を均一に加熱などの特徴があり,そのうえヒート層は高い耐久性・硬度,耐水性,耐アルカリ性を有し,低コストである.車両用面ヒータ,床・壁暖房,測定機器の温度調整,凍結防止等,様々な用途が考えられている.また,CarboShield(カーボシールド)と名付けた電磁波からの保護を目的とするコーティングもあった.金属シールドのように反射だけでなく吸収する特徴がある.人間や動物の被爆からの保護,電磁波スパイによる情報漏出の防止などにも適するとのことであった.

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NanotechJapan Bulletin Vol. 6, No. 1, 2013 第 12 回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2013)開催報告 -9

■ ベルギー ベルギーのルーヴェン市に本部を置くマイクロエレクトロニクスの国際コンソシアム IMEC(Inter-University Microelectronics Center)がナノ医療に関する出展をしていた.進めている研究開発は,ナノ粒子のモデリングと設計,金属・酸化物・磁性材料のナノ粒子,ナノ粒子のバイオ機能化,セラノスティック応用などの分野であり,パートナーを求めていた.パートナーの条件として,ナノテクノロジーやナノファブリケーションに関する経験はあまり重要でなく,生体医療に関する R&Dや生体医学の応用知識が重要であり,医薬や診断技術に関する会社や生体医療に関する研究所などを期待している.

■ 韓国 韓国パビリオンは海外パビリオンのなかで最大の面積を占め,16 の企業が出展していた.Applied Carbon Nano Technology 社はカーボンナノチューブ(CNT)の量産による最低価格を謳っており,積極的にアプリケーションに向けた製品開発をしている.Al,Cu,Fe などの金属と CNTの複合材料では CNTを金属マトリックスの中まで侵入させるところに特徴があり,導電性重視であれば少し侵入,高強度の場合は完全に侵入,コーティング用ではその中間等に別けた製品を販売している.ポリマーと CNTの複合材料の場合は CNTと金属を複合化したものにポリマーを複合化してより良い分散性と導電性を得ている.その他,セラミックス複合材料,新しいのは CNTインク.自動車のエンジンオイルの活性剤等も販売している. KH Chemicals 社は単層 CNT を 1 トン / 年で生産しており,販売価格を3,000円/gにすると発表している.なお,KH Chemicals はフラウンホーファー生産工学自動化研究所(IPA)と用途開発,外部開発プロジェクト,マーケティングで連携してきており,ディスプレー,エレクトロニクス,ナノコンポジット,ヘルスケアなど様々な用途への CNTの開発および実用化を加速する予定である. Nano Solution 社は CNT の生産から CNT ベースの多様な機能性コーティング液へと事業を展開している.CNTの量産は問題ないが,アプリケーションの市場獲得が課題と語っていた.Solution は二つの意味を兼ねているとのことだが,自社のビジネスソリューションに苦労しているようでもあった.

■ 台湾 台湾は韓国,ドイツに次いで大きな面積を占めたパビリオンである.4つの研究センター,9の企業,そしてNANOTECHNOLOGY EDUCATION TRAINING PROJECT とINDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE(ITRI)が出展した. 4研究センターの一つTaiwan Textile Research Instituteでは,静電紡糸ポリウレタン(PU)の防水通気性ナノファ

イバー膜を展示していた.PUナノファイバー膜は静電紡糸技術(エレクトロスピニング)を用いて調製された.ファイバー径は 170 ~ 500nm で,優れた通気防水特性が確認されている. Goldred Nanobiotech 社は生体医療用の蛍光金ナノクラスターを展示した.蛍光金クラスターは胚細胞毒性実験で無毒性が確認され,細胞追跡や癌のターゲットの R&Dへの使用が可能と考えられ,動物実験に適している.また抗酸化作用があり化粧品や健康食品の添加剤として使用することができるとのことであった. その他に,Teco nanotech 社の CNT 透明導電タッチセンサー,Enerage 社のグラフェン粉末,分散剤,Akali Tecgnology 社の階層構造超疎水性ナノ塗料,Omid Technology社のガラスコーティングターンキーシステム,など多彩な出展があった.

■ フランス  フ ラ ン ス の RENATECH network は Nanofabrication Network. として材料からシステムまでをカバーし,評価,リソグラフィー,材料合成,被着,エッチング,集積化機能を持つと紹介している.フランスはナノサイエンス研究にサービスすべく,C'Nano と名付ける 6つの研究センターを結ぶ国家ネットワークを用意している.6研究センターは Paris, Eastern France, North-Western, Provence-Alpes-Cote d'Azur, Rohne-Alpes Auvergne, South-Western France と,国内各地に設置され,それぞれに多数の大学・研究所が参加している.

■ スペイン スペインはスペイン国家研究評議会(Spanish National Research Council)が 130 のセンターを抱える学際的組織として設けられ,その中の 17 のセンター,50 の研究グループでナノテクノロジーの研究を進めている.

■ オランダ オランダの NanoNextNL は 100 を越える企業,大学,研究機関,大学病院から成るコンソーシアムで,マイクロ・ナノテクノロジーの研究を通じて,高齢化社会の健全性維持,気候変動に伴う住環境保全などのオランダが抱える問題に貢献しようとしている.

■ オーストラリア オーストラリアは Australian Government's National Collaborative Research Infrastructure Strategy の 下,Australian National Fabrication Facility を 2007 年に設立し,19の機関を 8つのノードで結ぶネットワークで,企業も対象に加えてサポートを行っている.

■ 米国 USA パビリオンには NNI のブースがあり,説明者

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によると,求めに応じて研究者を紹介するということで あ っ た.NIST(National Institute of Standards and Technology) や US Department of Energy Nanoscale Science Research Center の紹介パンフレット,さらに NSF(National Science Foundation アメリカ国立科学財団)作成の「Nanotechnology Research Directions for Societal Needs in 2020 の要約」の小冊子と CDを配っていた. USA ブースの近くに,米国イリノイ州のブースがあった.そこでは,イリノイ州が企業の事業展開に有利な土地であることを宣伝して,盛んに企業誘致を行っていた.

■ 中国 中国は蘇州にナノパーク建設を開始し,その中にはNational Academy of Science, China の Nanotechnology Institute も設置されている.今年 9月までに全体の 1/4が完成する予定である. 一般企業では,Shenzhen Nanotech Port Co., Ltd がCNT パウダの年産 2000 トン,分散液も製造している.CNT 導電性ペーストは年産 1000 トンと示されていた.また,宣城晶瑞新材料有限公司はナノ粒子とナノ粒子製造装置を販売し,日本商社として(株)TRICO が入っている.99.999% 高純度酸化アルミ,5nm 超活性超分散触媒アナターゼ型酸化チタン,化粧品及び各種塗料向けナノ酸化チタン,リチウムイオン電池材料向けナノ材料,セラミック向けナノ材料を扱っているとのことであった.

■ ロシア ロシアでは,ナノ薬品の創薬開発プロジェクトに 15億 5 千万ルーブル(約 46 億円)が投じられており,NTpharma プロジェクトがナノ粒子ワクチンを開発している.RUSCHEMBIO Ltd はロシアにおける新しい事業開拓のため,300mmウェーハ MRAM. に 105 億 6千万ルーブル(約 315 億円)を投じているとのことであった.

■ スイス スイスの Empa, Materials Science and Technology はポリマ鎖(Polymer chain)からボトムアップでグラフェンを合成している.Innovation Mining & Incorporated Projects Sarl は研究テーマの位置付けなどの分析を行い,自分で研究は行うことはしない.投資家や企業の求めに応じて,プロジェクト計画を立てるところまでという珍しい事業形態のようである.Minnovarc はマイクロテクノロジーのイノベーション能力を高めるため,Franco-Swiss 地域で需要家,供給者,研究者の間でのネットワークづくりを推進し,支援すると言うコンサルティング業のようである.

■ その他 チェコの Regional Centre of Advanced Technologies and Materials は,大学からスピンアウトし,政府,大

学,企業の資金で運営する企業で,5nm鉄ナノ粒子など生産し,グラフェン,CNT に展開を開始している.デンマークから単独参加の NIL Technology ApS は 20nm 以下の高精度ナノインプリントを売り物に,ツール販売とモールド製作を行う.同様にギリシャから単独参加のONEX S.A. は CNT 反応装置を保有し,CNT各種量産可能,SWCNT,MWCNT とも製造し,98%純度で,溶媒に溶かして船舶の塗装に使う.顧客との共同開発を実施し,今後も顧客との共同開発を希望している.

4.nano tech 大賞 2013

 最終日の午後,メインシアターにおいて nano tech 大賞 2013 の発表と表彰式が行われた.この表彰は,産業促進に貢献している企業・団体・大学等を賞するとともに,ナノテクのシーズとニーズを明確化することで,一層の技術向上を図ることを目的に,出展者を選考し,顕彰するものである. 発表に先立ち,nano tech 実行委員会の馬場副委員長より,審査経緯の報告があった.審査委員会は実行委員会委員およびマスコミ,その他の外部関係者を含めた 30名の審査員で構成し,全展示を回って採点した結果を基に委員会で審議し,受賞者を決定した.なお,審査基準は,(1)先進性と独創性,(2)特許,論文発表等,(3)研究開発だけでなく商品性,市場性,経済性の 3点である. 続いて nano tech 大賞,8部門賞,および日刊工業新聞社賞の発表と表彰が行われた.次に各賞の授賞者および授賞理由,展示内容等を紹介する.

■ 大賞  帝人株式会社授賞理由:「衣料だけでなくライフサイエンス,省エネ,空気清浄や水処理フィルター,エネルギーなど,極めて広範な分野にわたるナノファイバーの出口を紹介.ナノファイバーの技術的ポテンシャルの高さ,アプリ

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ケーションの裾野の広さを強力にアッピールしたことを賞す.」展示内容:ナノフロントと称する直径 700nmの超ファインポリエステルナノファイバーを開発し,滑りにくい「グリップ性」,油膜や埃を拭き取る「ワイピング性」,通しにくい「バリア性」,ぴったり密着する「フィット性」,肌に低刺激な「スキンケア性」,あせを吸収・拡散する「クーリング性」,肌触りが良い「ソフト性」などの特長を発揮する応用展開を展示していた.グローブ,靴下,傘,帽子からワイパー,液体フィルター,エアフィルター,フェイスマスク用シート,精密研磨パッド,油取り紙などである.更に,現在開発中の新製品として,直径数百 nmの均一ナノファイバー繊維からなる多孔質構造体である耐熱性ナノファイバー不織布,高電気伝導性の炭素ナノファイバー,プリンテッドエレクトロニクス用の Si インク /ペーストなども紹介していた.

■ 材料・素材部門賞  SHJ コンソーシアム授賞理由:「カーボンナノチューブを使った大面積の布や長尺線材の量産技術を開発した.布は電気カーペットとして 2年後の製品化を目指す.金属並みに電気が流れる電線を開発中で銅線などの置き換えを目指している.ナノチューブを大量に使う応用の見通しを示した点を賞す.」展示内容:SHJ コンソーシアムは,JNC 株式会社,静岡大学,浜松カーボニクス株式会社によって設立された.開発された技術は,直径 20-50nm で長さ 0.1-2.5mmの多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を基

板から垂直に超配向して成長させ,そのMWCNTを基板上から,50m以上にわたって連続して紡績することができるもので,繊維やシートを形成できる.CNTが自動的に一方向に整列し,CNT 同士が連結するので,結合剤は不要である.今後,量産装置を開発し,2015 年 4月を目途に製造を開始する計画とのこと.

■ IT・エレクトロニクス部門賞  株式会社東芝授賞理由:「ストレージとエネルギー分野などの次世代ナノテクノロジーを紹介した.グラフェン複合透明導電フィルムは現在使われる ITO や金属電極並みの性能を実現.超伝導技術を用いる通信部品も実用化間近である.日本を代表する IT・エレクトロニクス企業のレベルの高さを賞す.」展示内容:次世代のナノテクノロジーを「トータル・ストレージ・イノベーション」「先端基盤技術」「トータル・エネルギー・イノベーション」の 3つのカテゴリーにわけて展示している. ストレージ関連では,19nmゲート長・Air Gap・薄型チップの多段積層による 128Gb の次世代 NAND 型フラッシュメモリ,薄膜化による 10nmHDD ヘッッド,グラフェンと銀ナノワイヤを積層しポリマーで支持するグラフェン複合透明導電フィルム(レアメタルフリーでかつウエットプロセスによる低コスト製造が可能)等を展示. 先端基盤技術では,電子部品・モジュールの省エネ・小型・高性能化を実現するセラミックス基板(結晶粒界制御)や,LED照明や X線検査装置などの用途に応じた発光の制御を可能にする蛍光体材料技術の他,光

大賞を授賞した帝人のブース

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触媒や熱電子電極などの新 /高機能の発現を可能にするタングステン材料技術を展示していた. エネルギー関連では,Dy(ジスプロシウム)フリーのモータ用磁石,有機薄膜太陽電池は p型膜表面を粗にして n型材料埋込み世界最高変換効率 7.7% を達成,車載用/定置用 Li イオン 2次電池 SCiB ではナノ LTO粒子を用いた負極により高入出力・長寿命を実現.Liイオン 2次電池ではすでに大容量製品を三菱自動車に,高性能製品をスズキ自動車に搭載しているが,現在の 100km走行可能距離を伸ばすための小型大容量を目指しているとのことであった.

■ 微細加工技術部門賞  バイオテンプレート研究会授賞理由:「微細で複雑な構造の微生物そのものを鋳型(テンプレート)に用いて電子部品等を作る技術を開発している.従来の微細加工技術の一部を新技術と置き換えることで大幅な省エネを実現しようとしている点を賞す.」展示内容:東京工業大学の彌田教授が JST の戦略的創造研究推進事業・総括実施型研究(ERATO)の超集積材料プロジェクトの中で推進するバイオテンプレートグループの成果を展示していた.自然界に存在する周期的ナノ・マイクロ構造をバイオテンプレートとして,人工的につくりだすことのできない高次集積型構造材料の創出を目指している.

■ 評価・計測部門賞  株式会社キーエンス授賞理由:「新原理の超高解像度デジタル顕微鏡や,高解像度観察と形状測定が 1台で可能な形状測定レーザー顕微鏡などを開発した.ナノ構造・材料の測定・分析技術の進化に貢献しようとしている点を賞す.」展示内容:超高解像度デジタル顕微鏡はブルーフィルターによる光の波長を変えて超高解像度観察が可能となる他,深い被写界深度で立体観察を実現,3軸電動制御等の特長を持つ.形状測定レーザ顕微鏡では16bit レーザカラー観察ができ,分解能 0.5nmで多彩な形状測定機能を持つ.その他,ワンショット 3D測定顕微鏡,ハイスピード顕微鏡などが展示されていた.

■ グリーンナノテクノロジー部門賞  富士フィルム株式会社授賞理由:「省エネルギーや省資源に関する独自技術を数多く展示した.フレキシブルな熱電変換モジュールは様々な場所に貼りつけて身近にある排熱を利用できる.世界最高効率の色素増感太陽電池も紹介した.持続可能な社会実現に貢献する技術を開発したことを賞す.」展示内容:環境・エネルギー関連では,上記の他に軽量高効率 CIGS 太陽電池,光波長選択反射フィルムなどがあった.次世代エレクトロニクス関連でも,ナノ

粒子分散液塗布技術による有機 EL 照明用光取り出し部材,Roll to Roll プロセスで実現した有機・無機ナノ積層構造の “ 透明 ” 高ガスバリアフィルム,ナノインプリント用ナノ構造 Ni 金型など,広い分野にナノテクノロジーを展開している.

■ ライフナノテクノロジー部門賞  日立化成株式会社授賞理由:「生体への適合性が高い原料を用いて厚さ50~ 100nmの透明なシートを開発した.接着剤を使わないで肌に貼れる.保湿用の化粧品や傷口に貼るばんそこうなどへの応用を検討中である.次に抗菌機能を加えるなどライフ分野への積極的活用を目指す点を賞す.」展示内容:開発した生体適合性薄膜形成技術は生産性の高いRoll to Roll 生産が可能,また,支持体とセパレータでナノフィルムを挟む構造で,大面積や複雑形状への簡便な貼りつけ可能である.また,ナノオーダの膜厚の制御,材料の選択,Ag 粒子や色素などの成分担持が可能などの特長をもつ.

■ 特別賞  ナノテック・タイランド授賞理由:「ナノコーティングで機能性を付与し,蚊の撃退に絶大の効果をもたらすナノテク蚊帳や,皮革や生地などを代替する環境に優しいナノバクテリア・セルロース製合成膜など,タイならではのユニークなナノテク製品を開発している点を賞す.」展示内容:上記開発は,タイの Netto Manufacturing Co., Ltd とタイ国立科学技術開発機構(NSTDA)の傘下にあるタイ国立ナノテクノロジーセンター(NANOTEC)とが共同開発したものである.その他に何種類も色が変えられるスマート・ガラスなどが展示されていた.

■ 特別賞  ナノ・マテリアル・テクノロジー(シンガポール)授賞理由:「酸化亜鉛,酸化セリウム,アンチモンすずのナノ粒子を開発.粒径分布が狭く,溶液中の分散性が極めて高いナノ粒子を製造できる独自技術を確立した点を賞す.」展示内容:これら製品を生み出すコアー技術は北京大学の Chen Jianfeng 教授が考案開発した高重力制御沈殿(HGCP)技術であり,用途が広く,連続運転により非常に高い生産性を有している.現在中国のアモイで生産しているとのことであった.これら金属酸化物の分散体は透明度が高く,例えば,酸化亜鉛の場合は,自動車,木材,日照調整コーティング /フィルム,さらにグリース/潤滑剤の安定剤等多くの用途で威力を発揮する.

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■ プロジェクト部門賞  NEDOプロジェクトNo.18「次世代プリンテッドエレクトロニクス材料・プロセス基盤技術開発」授賞理由:「NEDOの当該プロジェクトはこれまで約 2年の間に,産学官を結集して印刷法で電子素子を作る技術を実用化させる研究開発体制を整備した.曲げられる電子ペーパーや圧力センサーなどの開発を目指している.新市場創出に貢献する技術を生み出そうとしている活動を賞す.」展示内容:次世代プリンテッドエレクトロニクス技術研究組合が NEDO から受託した平成 22 年度~ 27 年度のプロジェクトである.電子ペーパーでは,シアン・マゼンタ・イエローの 3原色を重ねてフルカラーを実現する「積層型エレクトロクロミックディスプレイ」を開発した.圧力センサーではフレキシブルなシート上に形成した有機 TFT を信号読み取りに用いて,アクティブ圧力センサシートを実現している.

■ 日刊工業新聞社賞  かがわ健康関連製品開発地域授賞理由:「香川大学に設立されて 15年の工学部が最先端のMEMS を医療分野に活用するため医学部との共同開発を進めている.MEMS の技術を使って地域活性化と産業化に力を入れている点を賞す.」展示内容:かがわ健康関連製品開発地域は地域産学官共同研究拠点で「医工情報領域融合による健康関連分野での新産業創出」を目指している.手のひらサイズの超小型赤外分光イメージング装置,小型高感度バイオセンサ,遺伝子解析・遺伝子導入デバイス,ナノピンセット応用MEMS デバイス,さらには体内情報センシング用世界最小径の超極細同軸ケーブルなどの開発が展開されている.

5.nano tech 2013 と同時開催の展示会

 先に1.で紹介した同時開催展示会の中にはナノテクノロジー関係の展示も多数見られる.以下にはプリンタブルエレクトロニクス 2013 と新機能性材料展 2013 から目についたものを紹介する.

(1)プリンタブルエレクトロニクス 2013 この展示会には 35社・機関が出展.次世代プリンテッドエエクトロニクス技術研究組合のブースには数社が独自ブースを設け,インクジェットプリントヘッド,マテリアルプリンタ,フレキシブル熱電変換モジュール,ナノシステム分子設計などが展示されていた. 産総研のブースには,先に NanotechJapan のナノテク情報欄で紹介されたスマートデバイスバイオセンサとカーボンナノチューブ導電フィルムが展示されていた.スマートデバイスバイオセンサでは厚さ 2cmくらいで平

面積は手のひらサイズの小型分光器とこれに挿入する試料ホルダ,プラズモン共鳴を利用したバイオセンサを開発している.スマートフォンなどのスマートデバイスに分光データを送信し,スマートフォン側で解析して,分光スペクトルを表示させ,さらに内蔵データと比較して試料の同定を行うことができる.携帯機器と小型分光器の組合わせにより,持ち運び可能な分析器となっている. カーボンナノチューブ導電フィルムは,高濃度・高粘度の CNTインクを開発し,ガラス,PET, PEN などに塗布・印刷して透明導電フィルムを作製するもので,透過率は89~ 98%,表面抵抗率 68~ 240 Ω / □の高い性能を得ている.プラスチック基板を用いれば折り曲げ可能になる.このほか,高温高圧流体を利用した,塗布用インクのためのナノ粒子や有機顔料の流通式製造装置の開発などが展示されていた. また,山形大学は,フレキシブル有機 EL 照明装置などを展示していた.この照明装置は 10mm角で持ち運びできる.このほか,日本電子精機は転写微細印刷や眼球パターン検査の展示を行っていた.

(2)新機能性材料展 2013 この展示会には 50社・機関が展示し,その一つの四国産業・技術振興センターのブースには 7社が参加していた. 株式会社ダイセルは,Fe 担持可視光応答性光触媒,UV硬化型ナノインプリント樹脂,超分散ナノダイヤモンド,セルロースナノファイバー「ナノセリッシュ」などを展示していた.UV硬化型ナノインプリント樹脂は低硬化収縮による高精度転写可能,基板密着性,耐ドライエッチング性などの特徴を持ち,どの特徴を重視するかによってその目的に適する樹脂を別々に用意している.超分散ナノダイヤモンドは爆薬を密閉した容器中で爆発させることにより高温高圧下で爆薬中の炭素原子がダイヤモンド構造に変化するテトネーション法によって平均一次粒径 4~ 5nm のダイヤモンドを非晶質炭素が覆ったナノダイヤモンドができる.高硬度を活かすだけでなく,比表面の大きいナノ粒子の表面化学を制御することで種々の応用展開を期待している.期待している応用は,研磨,構造材,工学材料,複合メッキ,潤滑,医療等幅広い. 日立造船は垂直配向 CNT シート材(VA-CNT sheet)などを展示していた.このシートでは,例えば 50 μ mの金属シート基板に長さ 50μmの CNT が垂直に配向している.CNTの外径は 10~ 30nm,長さは生成条件により,5~ 1000 μ m,本数密度は 109 ~ 1011 本 /cm2 という.完全に黒く,集積・脱着可能とのこと.導電性を活かした各種電極や電波吸収体,放熱・伝熱シート,微細なチューブ構造を活かしたガス選択透過膜やセンサーなどへの応用を期待している.

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6.むすび

 今回の総合展は「10-9 Innovation(ナノイノベーション),"Life & Green Nanotechnology"」の展示会テーマであり,オープンイノベーション,ビジネスマッチングなどのキーワードにも見られる展示会の狙いが具体的展示内容にもよく反映されているように感じた. 開拓が進んでいるナノテクノロジーの基盤技術を,地球環境やライフの改善という社会ニーズにどのように結びつけるかという現在の課題に対して,国レベル,地域レベル,企業や公的機関等の色々な立場での大変多くの努力がなされていることも知ることができた.この動きは,ナノテクノロジーの開発に対して近年重点的に力を入れている諸外国の展示内容でも同様である.欧米の経済状況低迷の中にもかかわらず,海外からの出展数も増

えている.ナノテクノロジーの価値が発揮できるアプリケーションとの結びつきにたいして,この総合展への期待が高いことが分かる. ナノテクノロジーの技術,あるいは材料を開発したけれど,キラーアプリケーションがなかなか見つからないという話をこれまでよく耳にしてきた.しかしこの展示会では,極めて面白い効果を発揮するアプリケーション技術が展開されている多くの例を目の当たりにすることができた.この展示会の成果として,多くのシーズとニーズの結合や研究開発の連携が生まれ,また,得られた情報や刺激による新しい研究開発の展開が生まれることを期待したい.次回は,平成 26 年 1月 29 日から 31 日に開催されることになった.

(向井久和)