61 Best Practices Collection 2018 建設業製造業情報通信業運輸業・郵便業卸売業・小売業金融業・保険業教育・学校支援業宿泊業・飲食サービス業ダイバーシティ経営の背景とねらい 「1 日 100 食限定」の飲食店で仕事と家庭を両立できる働き方を目指す 株式会社 minitts(以下「同社」)は、2012 年に創業、「1 日 100 食限 定のお店」というコンセプトの飲食店を 3 店舗展開している。 創業のきっかけは、元々会社員であった社長が、会社員時代に残業や遠 方出張などの多忙な毎日を過ごすことで、妊娠・出産・子育てと仕事の両 立が出来そうにないと実感したことにある。子育ても仕事も両立できる飲 食店があまりに少ない中で、飲食店でも両立できる環境を実現したいとい う強い想いから、1 日 100 食限定のコンセプトを考え出し、夫婦で会社 員を辞めて 2012 年に起業し、「佰食屋」をオープンした。 100 食限定のお店にすることで、飲食店の長時間労働を改善すること ができると考えた。ランチタイムで 100 食売り切れれば、夕方には片付 けや翌日の仕込みが終わって帰宅することができる。そのため、現在は正 社員 9 時~17 時 45 分勤務、短時間正社員は 9 時 30 分~17 時勤務で、 全ての社員が残業無しという勤務体系を作り上げている。 SNS を活用した戦略により来客数が大幅に増えるも人材不足が課題 同社では、社長が前職で広報を経験していたことからプロモーションに 力を入れており、当時 SNS が流行り始めた時期でもあったことから、旅 行客の多い京都では SNS による口コミが重要と考え、写真映えのために、 食器、盛り付けに意識して取り組んでいた。こうした取組が功を奏し、オー プンした 2012 年 11 月 29 日(いい肉の日)から 1ヶ月後の 12 月の末に、 来店客のブログに佰食屋が紹介され、大手ポータルサイトのトップ画面に 載った。掲載された次の日から、それまで 20~30 人程度であった来店 客が 70~80 人程に一気に増えた。そのため、社員の採用が急務となり 2013 年の 1 月から採用をスタートした。 しかし、飲食店といえば「長時間労働、低賃金」「土日祝日は休めない」 「子どもの運動会や参観日に行けない」というマイナスなイメージが定着 しており、求人への応募者数が年々減少している状況や、離職率が高い状 況にあるため、そういったイメージを払しょくし、「この飲食店なら働き たい !」と思ってもらえるような抜本的改革が必要と考えた。 また、京都は外国人観光客が年々増加しており、外国人を含む全ての方々 に京都ならではのおもてなしを味わってもらうために、外国語が話せる人 材や外国人対応を得意とする人材も必要であった。 ダイバーシティ経営推進のための具体的取組 多様な人材を積極的に採用するための短時間正社員制度の導入と業務の標 準化 採用当初は、万が一ランチで売り切れない場合を考慮して、ハローワー クの求人票の就労時間を所定労働時間 8 時間(9 時~20 時、休憩 3 時間) としていたが、飲食店の中では拘束時間が短い求人に非常に人気が集まる ため、中々応募者が集まらない状況が続いた。 そんな中、アルバイトとして既に雇っていた優秀なシングルマザーの A さんが正社員になりたいという要望を持っていることを知ったことや、ア ルバイトの面接に来るシングルマザーから正社員の面接にどこも通らな かったという話を聞いたことを契機に、シングルマザーを積極的に正社員 として採用していきたいと考えた。 A さんは 18 時までのフルタイムの勤務が難しかったため、2015 年 4 月頃にアルバイトから正社員になるタイミングで 17 時までの勤務となる 短時間正社員の制度を整備した。同じタイミングで、よりシングルマザー の目に留まるようにという意味も込めて、ハローワークの求人票の就業時 間を所定労働時間 8 時間で残業無し(9 時から 18 時まで)に変更し、マ ザーズハローワークに出向いて担当者に積極的に採用するため紹介してほ しい旨を伝えると、その後は求人を止める必要があるほど応募が殺到した。 また、同社の採用基準として、境遇やスキル等は関係ない。最も重要視 していることは、配属される店舗のメンバーとの相性であり、店舗の輪が 乱れてしまうことが無いように配慮している。一方、どんな年齢、性別で あっても誰でも仕事ができるように業務を標準化している。例えば、レシ ピについてはグラム単位で規定しており、白米であってもお茶碗一杯とい うような記載はせず、スケールを置いて毎回グラムを測るようにしている 等、感覚に頼らないことで、社員が迷わないようにしている。接客につい てもメニュー表は片面写真付きで 3 種類から選ぶ形で、言語は日本語の他、 英語、中国語、韓国語を併記しているため、社員は説明しやすく、来店客 からも分かりやすい。そのため、アルバイトで出勤した当日から接客でき る形となっている。 こういった取組により、飲食店で働きたいという意志を持っているが、 時間に制約があるため働きたくても働けなかった人や、飲食店未経験者を 採用できるようになった。短時間勤務を希望する高齢者や障がい者、外国 語を話せる飲食店未経験者の採用にも繋がっている。 背 景 ・「1 日 100 食限定」の飲食店で仕事と家庭を両立できる働き方を目指す ・SNS を活用した戦略により来客数が大幅に増えるも人材不足が課題 取 組 「飲食店で働きたい」という強い想いを持ったシングルマザーや障がい 者を積極的に採用・活用するために以下の取組を推進 ・短時間正社員制度の導入 ・突発的な欠勤等に対応可能な余剰人員の確保、業務を代替可能とする ための研修、業務の標準化の実施 ・周りの社員の理解と協力を促すための仕組み作り(定期面談、社長の メッセージカードの配布等) 成 果 ・人材不足の解消 (正社員数 2013 年度 2 名→ 2018 年 2 月時点 14 名) ・売上の増加(2013 年度 3,000 万円→ 2017 年度 1 億円) ・店舗拡大の実現(2017 年 3 月に 3 店舗目をオープン) 企業概要 会社設立年 2012 年 資本金 5 百万円 本社所在地 京都市下京区船頭町 187 番地 事業概要 飲食店(定食屋) 売上高 100 百万円(2017 年 8 月期) 従業員の状況 総従業員数 28(14)人 女性 20(7)人 外国人 0(0)人 チャレンジド 1(1)人 高齢者 3(0)人 平均勤続年数 2.5 年 男性 3.0 年 女性 2.0 年 ※( )内は正規従業員数 ダイバーシティ経営推進のストーリー 株式会社 minitts 京都府 長時間労働の常態化により人材不足が深刻な飲食業界の働き方を変えるべく、「1 日 100 食限定」の飲食店を展開し、多様な人材が活躍できる環境を整備することで、人材不足の 解消・斬新な働き方・売上拡大を実現 対象女性 外国人 障がい者 高齢者 キャリア・スキル・経験 限定なし その他 取組役員層の 多様化 経営会議等への 社員参画 柔軟な働き方 の整備 評価・報酬・登用 基準の明確化 管理職の行動・ 意識改革 研修やスキル取得 環境の整備 キャリア形成意識 の醸成 資金調達や人材確保 のための情報発信 中小企業