確 率 論 第1回 -- 集合と場合の数 -- 情報工学科 山本修身
確 率 論 第1回-- 集合と場合の数 --情報工学科 山本修身
講義の概要講義名:確率論時間帯:火曜日3,4限,月曜日5限(再)担当:山本修身([email protected])
URL: http://osami.s280.xrea.com/prob/
出席は毎回とります.各自授業が始まる前に学生証でカードリーダーに登録してください.出席は成績には反映しませんが,欠格となる可能性があります.座席を指定します.ほとんどの部分はプロジェクタを使う予定ですが,一部計算などは黒板(またはホワイトボード)でやります.
mailto:[email protected]:[email protected]://osami.s280.xrea.com/prob12http://osami.s280.xrea.com/prob12
受講する方々へのお願い
必ず復習をしてください.授業を漠然と聞いただけでは理解できません.
試験の直前にまとめて勉強すればよいとは思わないでください.無理です.
必ずノートを取ってください(その前にノートを用意してください).授業で見たこと,聞いたことはかならずメモしましょう.
確率論の起源
数学としての確率論はラプラス(1774-1827)によって始められた.もともと賭け事においていかに有利に試合を進めるかを決める経験則だった.現代的な確率論はコロモゴロフ(1903-1987)によって測度論の一部として形式化された.現代では,色々な分野でなくてはならないものになっている.
長さや面積や体積などを定義する理論
確率とは何か?(1)組み合わせ的確率論
場合の数を用いた定義.高校数学における確率論はこの定義による.
p =関心対象の事象に含まれる基本事象の個数
すべての可能な基本事象の個数
場合の数
個数の割合
組み合わせ的確率の例サイコロを振る.偶数の目の出る確率
50人のグループの中に同じ誕生日の人がいる確率.
p =3
6=
1
2
1 − p =365 × (365 − 1) × · · ·× (365 − 49)
365 × · · ·× 365= 0.02962
97%程度
確率とは何か?(2)幾何的確率
「矢を射たとき,円の中に入る確率」など.
関心対象の事象に対応する面積
可能性のある全事象に対応する面積p =
面積の割合
幾何的確率の例 (Buffonの針)等間隔に並んだ線と間隔と同じ長さの針を用意する.針を適当に落としたとき,平行線と交わる確率
θ
1
0 ππ/2
p =
∫π
0| cos θ|dθ
π=
2
π
θx
1x = | cos θ|
x
Buffonの針の計算積分の計算
∫ π0
| cos θ|dθ =
∫ π/20
cos θdθ +
∫ ππ/2
(− cos θ)dθ
= [sin θ]π/20
− [sin θ]ππ/2 = (1 − 0) − (0 − 1) = 2
p =2
π
-1
-0.8
-0.6
-0.4
-0.2
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
0 1 2 3 4 5 6
cos(x)0
ππ/2
Buffonの針計算機シミュレーション
n = 80, 800, 8000, 80000 について
54/80, π=2.962
531/800, π=3.013
5106/8000, π=3.133
50955/80000, π=3.140
確率とは何か?(3)相対度数の極限としての確率
n回さいころを振ったとき何回1の目が出たか? ⇒ 限りなく 1/6 に近づいていく.
p = limn→∞
pn
n
試行回数 10 100 1000 10000 100000 1000000
1の出た割合 0.100000 0.210000 0.162000 0.163800 0.165650 0.166556
1/6=0.16666
確率1/2で表が出るコインを100回振るとどうなるか?
「100回振る」という行為を1,000回ほど繰り返してみる
表の出た回数
頻度
0
10
20
30
40
50
60
70
80
30 35 40 45 50 55 60 65
確率1/2で表が出るコインを10000回振るとどうなるか?「100回振る」という行為を10,000回繰り返してみると形はきれいになってくる.
0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75
表の出た回数
頻度
確率1/2で表が出るコインを100000回振るとどうなるか?「100回振る」という行為を100,000回繰り返してみると形はきれいになってくる.
0
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5000
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7000
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25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75
表の出た回数
頻度
集合とは集合とはものの集まりを形式化したもの.
A: 集合 a ∈ A または a ∈ A
集合はすべての数学の基礎となる.
A1 = {1, 2, 3, 4}
S = {x2 | x ∈ R ∧ 3 ≤ x ≤ 8}
記法
集合の演算代表的な集合の演算
一の方法は,その集合に含まれる全要素を列挙することである.たとえば,
A1 = {1, 2, 3, 4} (6)A2 = {1, 2, . . . , 99, 100} (7)
などはそれに当たる.ただし,A2は本当にすべての要素を列挙しているのではなくて,一部省略している.この書き方では,複雑な集合を表現することができない.このために別表現方
法が用意されている.この表現では {}の中を2つの部分に分け,左に要素を表現する式,右にその要素の満たすべき条件を書く.この記号が表現する集合は与えられた条件を満たすすべての要素を集めたものと定義されるつぎに例を示す:
S = {x2 | x ∈ R かつ 3 ≤ x ≤ 8}. (8)
ただし,Rは実数の集合を表すものとする.集合はある要素がその集合に含まれるか含まれないかのみを問題とし,特殊な
含まれ方をするかどうかなどという概念は持ち込まない.具体的には,集合にある要素が「2回含まれる」というようなことはあり得ない.ある要素 aが集合Aに含まれるとき,これを
a ∈ A (9)
と書く.含まれないときは,a �∈ A (10)
と書く.集合についての演算がいくつか容易されている.
A ∪B = {x|x ∈ Aまたは x ∈ B} (11)A ∩B = {x|x ∈ Aかつ x ∈ B} (12)A \ B = {x|x ∈ Aかつ x �∈ B} (13)
これらはそれぞれ,和集合 (union) ,共通部分 (intersection) ,差集合 (difference)と呼ばれる.また,現在考えているすべてを包含する集合を便宜的に定義することがあり,これを全体集合 (universe)と呼ぶ.全体集合は Ωと表記することが多い.現在考えている任意の集合はすべてΩに含まれる.また,要素が一つもない集合を 空集合 (empty set) とよび,普通 ∅という記号で表す.また,補集合(complement) とつぎのように定義する.
Ac = Ω \ A (14)
以上の演算について以下のような性質が成り立つ.
A ∪B = B ∪ A (15)
3
A B
全体集合,補集合,空集合便宜的に全体を考えたときの「全体」Ω 全体集合A = Ω \ B: AはBの補集合全体集合の補集合を空集合という:Ω\Ω= φ
Ω
BA
集合について成り立つ性質いくつかの性質が知られている
A ∩B = B ∩ A (16)A ∪ (B ∪ C) = (A ∪B) ∪ C (17)A ∩ (B ∩ C) = (A ∩B) ∩ C (18)A ∪ (B ∩ C) = (A ∪B) ∩ (A ∪ C) (19)A ∩ (B ∪ C) = (A ∩B) ∪ (A ∩ C) (20)
(A ∪B)c = Ac ∩Bc (21)(A ∩B)c = Ac ∪Bc (22)
集合 A の要素数を n(A) のように書く.集合の要素数は無限である場合もあるが,ここで要素数を考える場合には有限の要素しかもたない集合を考える.ここで要素数についてつぎの性質が成り立つ:
n(A ∪B) = n(A) + n(B)− n(A ∩B) (23)
これを包除定理と呼ぶ.3つの場合,
n(A∪B∪C) = n(A)+n(B)+n(C)−n(A∩B)−n(B∩C)−n(C∩A)+n(A+B+C)(24)
となる.集合 AとBが共通部分をもたない,すなわち A ∩B = ∅ の場合,
n(A ∪B) = n(A) + n(B) (25)
となる.これを和の法則と呼ぶ.このとき,A ∪BのことをA⊕B と書き,これを直和 (direct sum)と呼ぶ.また,A×Bと書き,x ∈ A, y ∈ Bとして (x, y)という対(順序対)を集めた集合をA, Bの直積 (direct product)と呼ぶ:
A⊗B = {(x, y) | x ∈ A, y ∈ B} (26)
直積の要素数については,つぎの性質が成り立つ:
n(A⊗B) = n(A)× n(B) (27)
これを積の法則と呼ぶ.
5 場合の数とは場合の数 (number of cases)とは,現在,注目している事柄の集合をE としたとき,n(E)のことである.この量を計算することは数え上げを基本とする古典的な確率論において基本的である.
4
包除原理(1)和集合の要素数に関する性質
A ∩B = B ∩ A (16)A ∪ (B ∪ C) = (A ∪B) ∪ C (17)A ∩ (B ∩ C) = (A ∩B) ∩ C (18)A ∪ (B ∩ C) = (A ∪B) ∩ (A ∪ C) (19)A ∩ (B ∪ C) = (A ∩B) ∪ (A ∩ C) (20)
(A ∪B)c = Ac ∩Bc (21)(A ∩B)c = Ac ∪Bc (22)
集合 A の要素数を n(A) のように書く.集合の要素数は無限である場合もあるが,ここで要素数を考える場合には有限の要素しかもたない集合を考える.ここで要素数についてつぎの性質が成り立つ:
n(A ∪B) = n(A) + n(B)− n(A ∩B) (23)
これを包除定理と呼ぶ.3つの場合,
n(A∪B∪C) = n(A)+n(B)+n(C)−n(A∩B)−n(B∩C)−n(C∩A)+n(A+B+C)(24)
となる.集合 AとBが共通部分をもたない,すなわち A ∩B = ∅ の場合,
n(A ∪B) = n(A) + n(B) (25)
となる.これを和の法則と呼ぶ.このとき,A ∪BのことをA⊕B と書き,これを直和 (direct sum)と呼ぶ.また,A×Bと書き,x ∈ A, y ∈ Bとして (x, y)という対(順序対)を集めた集合をA, Bの直積 (direct product)と呼ぶ:
A⊗B = {(x, y) | x ∈ A, y ∈ B} (26)
直積の要素数については,つぎの性質が成り立つ:
n(A⊗B) = n(A)× n(B) (27)
これを積の法則と呼ぶ.
5 場合の数とは場合の数 (number of cases)とは,現在,注目している事柄の集合をE としたとき,n(E)のことである.この量を計算することは数え上げを基本とする古典的な確率論において基本的である.
4
A B
principle of inclusion and exclusion
包除原理(2)
3つの集合について
A
B C
n(A ∪ B ∪ C) = n(A) + n(B) + n(C)
−n(A ∩ B) − n(B ∩ C) − n(C ∩ A)
+n(A ∩ B ∩ C)
2つの集合が互いに素なとき2つの集合が互いに素であるとは,共通部分が空集合であることである.確率の世界では「排反」と呼ぶ
2つの集合が排反であるとき,つぎの性質が成り立つ
n(A ∪ B) = n(A) + n(B) 和の法則
集合の直積2つの要素のペア(順序対と呼ぶ)を集めたもの.
積の法則
A × B = {(x, y) | x ∈ A, y ∈ B}
n(A × B) = n(A) × n(B)
ordered pair