K e n s e t s u I T G u i d e 2016 BIM BIM B 89 88 B I M 実 践 ! BIMライブラリーコンソーシアムの設立 BIMライブラリーコン ソーシアムの設立 2015年10月30日にBIMライブラ リーコンソーシアム(以下、コンソーシ アム)が設立された。これは日本で初 めて統一的なBIMライブラリー構築を 目指すものであり、設立総会には、設 立発起人 6 名、申し込みされた正会員 32 社 41名、特別会員 12 団体、14 名、 参加予定社 26 社、30 名など、計 72 社、 88名の方にご参加いただき、設立総 会の会場とその後の交流会は、日本で 初めてのBIMライブラリー構築への期 待で熱気があふれていた(写真-1)。 設立総会は、建築保全センターの水 澤氏の司会により、(一財)建設業振興 基金・内田俊一理事長、(一社)IAI日 本・山下純一代表理事が設立発起人・ 来賓代表として挨拶を行い、寺本英治・ 保全技術研究所長が設立の経緯を説 明した。 その後、コンソーシアム会員の承認 を行い、(一財)建築保全センター・尾 島理事長が議長となり総会が開始され た。総会では、会員会則、4 部会長(写 真-2)と組織構成、平成 27 年度の活動 計画と予算が説明され、各々満場一致 で承認され、無事コンソーシアムがス タートした。 本稿では、コンソーシアム設立へ の 3 つの流れ、次世代公共建築研究会 IFC/BIM部会の活動、海外のBIMラ イブラリーに関する動向、建設業振興 基金からのStem等の承継、コンソー シアムの構成、平成27年度業務計画 および予算、今後の活動等を説明し、 関係者の皆さまのご理解を深めたいと 考えている。 コンソーシアム設立へ の3つの流れ コンソーシアム設立は、 ■次世代公共建築研究会IFC/BIM部 会で「誰もが容易に利用できる情報 インフラとしてのBIMライブラリー の必要性の指摘」を2013年春に行っ ていたこと ■海外ではBIMライブラリーのオブ ジェクトの標準化と構築への動き が 活 発 で、2013 年 に 英 国NB S・ RIBA がNBS BIM オブジェクト 標準の作成とBIMライブラリーをス タートさせ、2014 年にはICIS(国 際建設情報協会)から「BIMと仕様 を繋ぐプロジェクト」、「BIMライブ ラリー動向調査」の実施、2015 年 に はICISが「NBS BIM Object標 準への国ごとの地域性考慮・プロ ジェクト」を、buildingSMART Internationalが「製品データテン プレート標準の研究」をスタートし ており、オーストラリア、韓国等が 統一的BIMライブラリー構築に着手 し始める等、BIMライブラリーをめ ぐる活動が活発になってきたこと ■ (一財)建設業振興基金が実施してき たStem、BE-Bridge 等のC-CADEC の活動を2014 年度末に終了し、承 継先を模索した結果、建築保全セン ターが承継したこと の 3 つの流れが一体となり実現され たと言えるが、それを一つにしたのが、 BIMフォーラムというIAI日本の山下 代表理事の呼びかけで2014年1月に 発足した任意の組織での継続的な会 合の場であったことは注目される。 次世代公共建築研究会 IFC/BIM部会の活動 次世代公共建築研究会IFC/BIM部 会は、活発になりつつあるBIMに関す る情報交流の場づくりと、必要なツー ルを整備する場として 2010 年度にス タートした。部会長は安田幸一東京工 業大学大学院教授で参加企業は、大手 設計事務所、ゼネコン、IT関係企業 の他、オブザーバーとして、国土交通 省、I A I日本、日本建設業連合会(略称: 日建連)等が加わっている。2013 年春 に作成された第 2フェーズの成果のパ ンフレットで次の指摘をしている。 B IMを活用する上での 現状の課題 (2013 年 3 月に作成) ・発注者・受注者の間の統一的な ガイドラインがないため、作図 等の作業が効率的ではありませ ん。(その 後、2014 年 3 月に国 土交通省から「官庁営繕事業にお けるBIM モデルの作成及び利用 に関するガイドライン」が公表さ れている) ・誰でも容易に利用できる共通の 情報インフラとしての設備機器、 建築部品等のBIMライブラリー がありません。 ・材料、機器の実用的なコード体 系がないため、作図等が効率的 でなく、また、プロジェクトや 組織をまたがる情報の統合がで きません。 次世代公共建築研究会では、初め からBIMライブラリーに取り組んだの ではない。最初に着手したのは、国内 外の材料、機器のコード体系(英語で はClassification、分類)である。表 -1に概要をまとめる。コード体系(分 類)は、最近BIMライブラリーの一部 を構成するとの認識が示されており、 どのように材料、機器を分類するかに 直結する重要な課題である。われわれ の調査では、寺井教授(千葉工業大学) の提案する分類体系、CI-NET/CE- NE T、積算で使用されている体系、工 事標準仕様書の分類体系等が、これに 該当することに気付いた。 しかし残念ながら日本では実用的で 統一的な材料、機器の分類体系はない のが現状である。分類体系の欠如は、 直接には分類に影響するが、BIMで の表現の詳細度を示すL OD(L e v e l o f Detail、Level of Development、 L e v e l o f In f o r m a t i o n)の議論にも影 響してくる。ここに関する議論で、日 本では標準化が弱点であることに改め て気付かされている。 海外のBIMライブラ リーに関する動向 (1) NBS BIMオブジェクト標準と NB S・R IB AのB IMライブラリー 現在の代表的BIMライブラリーとし て、英国NBS・RIBAのBIMライブラ リーがある。 NBSはNational Building Sp e cific a tion( 建 築 仕 様 書 協 会 )、 RIBAはRoyal Institute of British Architects(英国王立建築家協会) で、BIMライブラリーの運用はRIBA E n t e r p r i s e s 社である。 登録オブジェクトは、ドア(412 品 目)、断熱材(196 品目)、床仕上げ材 在り方部会長 安田 幸一 東京工業大学大学院教授 建築部会長 志手 一哉 芝浦工業大学准教授 設備部会長 一ノ瀬 雅之 首都大学東京准教授 運用部会長 山本 康友 首都大学東京客員教授 写真-1 コンソーシアム設立総会 写真-2 海外の分類体系、コード体系の事例国内の分類体系、コード体系の事例OmniCLASS2 米 国 、カナダ等で主に使 用されている建 物のライフサイク ルにわたる要素の分類体系。 ISO技術レポート14177「建設 産 業における情 報 分 類 1 9 9 4 年 7月」( 後にI S O 1 2 0 0 6 - 2 (ビル建設―建設業務の情報組織―Part2 情報の階層化 のフレームワーク))に基づいて作成されている。 対象は、機能と形態での建設要素、機能と形態での空間、 製 品 、段 階 、情 報 、材 料などに関する分 類があり、多 岐にわ たっている。 コード表示例は、「23-17 13 13 11」(金属製FIX窓:23(製 品)・17(開口部等)・13(窓)・13(金属製)・11(FIX))である。 建設業振興基金・建設産業情報化推進センターが開発した コードで、元請業者と下請け業者の間の取引に使用されるこ とを目的に開発されている。 CI-NET/CE-NETともに分類(2桁)、大分類(2桁)、中 分類(3桁)、小分類(4桁)、細分類、セパレータ、スペックから 構 成されていて、C I - N E Tコードは1 4 桁 + 可 変 長 、C E - N E T コードは 2 0 桁 + 可 変 長 のも の である 。両 者 の 違 い は 、 C E - N E Tコードが土 木 、建 築 工 事を広くカバーしているのに 対し、CI-NETコードは電気設備、機械設備の機器が詳細に 分類されていることである。CI-NETコード表示例は、蛍光灯 器具密閉で[ワット数]W_[灯数]トウ1が 「40300100300009&10W_1トウ1」である。 CI-NET/ CE-NETコード 英 国 の N B S B I Mライブラリーに 使 用されている分 類 。 OmniClassと同様、 ISO12006-2に準拠している。建物要 素、活動、空間、形態での建設要素、段階等に関する分類が あり、多岐にわたっている。 コード表示例は、「Pr_35_90_93_10」(平貼り用陶磁器 質タイル製 品:P r (製品)・35(内外装材)・90(成形品)・93 (ユニット屋根材)・10(平貼り用))である。 UniCLASS 2 工事標準仕様書 公共建築工事標準仕様書には、(建築工事編)、(電気設備 工事編)、(機械設備工事編)が、公共建築改修工事標準仕 様書にも同じ3種類の工事編があり、工事内容も建築物のす べてをカバーしている。ただし分類が発行年により変化してい るため、恒久的な分類としては課題がある。 BIMライブラリーコンソーシアム 事務局長 (一財)建築保全センター 保全技術研究所長 寺本 英治 表-1 国内外の材料、機器のコード体系