56 ㍿タウンニュース社 ☎045-227-5050㈹ FAX045-227-5051 中区・西区編集室・〒231-0033横浜市中区長者町2-5-14セントラルビル2F http://www.townnews.co.jp 発行責任者/宇山 知成 編 集 長/清田 義知 広告・記事のお問い合わせは☎045・227・5050中区・西区編集室へスポーツ振興・多文化共生・NPOによる地域活動と、それぞれ異なるフィールドで活躍する3人が集い10 年後の中区制100周年に向けたまちづくりについて語り合った。議論からは主体的にものごとに関わる大切さがみえてきた。(本文・敬称略)――まず、中区の10 年後のあるべき姿について、それぞれの考えや思いをお聞かせください。吉野「子どもたちに夢を与える地域主体のサッカーチームをつくりたいと、1986年にYSCCを立ち上げた。そして、25 周年の時に、子どもも高齢者も一緒に活動できる施設の実現を掲げて今に至る。土地の有効活用としても、10 年後にはスポーツを通して誰もが笑顔で1日を終われる場所があればと思う。そこが起点となってコミュニティーも生まれると考えている」角野「1990年代ごろまでは経済成長する社会状況であり、横浜もそのような経済状況を背景にまちづくりが行われてきた。しかし、パラダイムシフト(考え方や価値観の変化)が起こり、これまでのやり方での発展は難しくなってきた。市民一人ひとりがまちづくりに対する意識レベルを上げて議論し、行動する時代だ。そこで10 年後に向け、開港の地である中区として、国際的な存在感・サスティナビリティ(持続可能性)・多様なチャンス、この3つの要素についてそれぞれのレベルをいかに上げていくかが問われる。区民が将来に向けた共通したイメージを持ってまちづくりに取り組んでいるのが10 年後の理想の姿だと考えている」大藪「米国に25 年住み3年前に帰国したが、帰国後に感じるのが人権意識の希薄さだ。外国につながる住民が1割を占める中区において、私たちが人権意識を高め、一人ひとりが大切にされる社会の実現をめざすべきだと思う。また、人権意識を育てていくためには、子どもたちが自尊心をしっかりと持てるような『居場所』が必要。それはPLACE・場所という意味だけでなく、大人が子どもとしっかり向き合うことで生まれる心の拠り所でもある。この取り組みは個人レベルでもできることだと思う」問題意識持ち地道に活動――あるべき姿を実現するために、どのような取り組みが必要でしょうか。吉野「地域のサッカークラブとして、子どもたちが着の身着のままで参加できるサッカースクールも開いている。そこには、外国につながる子ども、学校生活がうまくいかず転入してきた子どもなど、参加者は多様。つまり、居場所になっている。このような取り組みを着実に続けていきたい。課題は、活動をしっかり継続するための場所がないこと。30 年活動してきたが施設面の環境は変化していない」角野「自分のまちは自分でつくろうという『市民』意識をつくっていく必要がある。まちづくりを一部の人に任せて、サービスの消費者のままではいけない。私が関わっているNPO法人『濱橋会』は、そもそも隣町の祭を知らないのはいかがなものか、という問題意識から地域同士の橋渡しを進めようと始まっている。周りの地域に関心を持ち、そこから地域づくり、まちづくりに関心を持っていくのも1つの方法だと思う」大藪「18 歳で渡った米国は個人を尊重し受け入れてくれる土壌があった。もちろん単純な比較はできないが、外国につながる人が多い中区においては、もっと受け入れる環境をつくっていく必要があると感じる。この現状を改善するには同じコミュニティーの一員という意識を、時間をかけて醸成していくしかない。10 年間は短いが、それを地道に続けていくことが大切だ」――実践していることはなんでしょうか。吉野「人に優しいまちであって欲しいというのが私の願い。サッカースクールでは多様なバックグランドを持つ子どもたちと接してきた中で、相手を理解しようと努め信頼関係を築くことを大切にしている」角野「濱橋会で、生活に密接した大岡川と中村川の水質調査をするなど水質改善に向けた取り組みを進めている。また、2つの川を通り水上交通の可能性を模索する運河パレードは4回実施。昨年は、川沿いの商店街と連携し船上ウェデイングも試みるなど、新たなビジネスとして発展できる可能性も生まれてきた」大藪「外国につながる子どもたちが撮影した横浜の写真展を今年1月に初めて開催した。彼らが見ている世界を写真というかたちで客観的に知ることで彼らが何に関心を持ち、どのような問題意識を持っているのかを読み取って相互理解につなげていきたい」――中区の魅力は。吉野「横浜開港の地としての歴史の深さ。それを学び、自分が住むまちとして発信できることは喜び」大藪「古いものの価値をしっかり認識し、これからも大切にしていこうという姿勢が魅力」角野「都市性と村性の共存。これからは生産性重視の都市性と直接的な人間関係で動く村性のバランスをいかに最適化して、サスティナビリティを担保していくかが問われると思う」全ての子どもに居場所を大藪 順子 さん 1971年 大阪生まれ。フォトジャーナ リスト。米国の新聞社専属写真家を経 て2002年よりフリーに。プロジェクト 「STAND:性暴力サバイバー達の素 顔」が反響を呼び全米で講演会と写 真展を展開。14年に帰国、中区在勤。 角野 渉 さん 1983年 山手町生まれ。一級建築 士/博士(建築学)。一級建築士事 務所「角野デザインノード」代表。 「 横 浜 山 手 やってみよう会 」コー ディネーター、NPO法人「Hama Bridge濱橋会」の理事を務める。 吉野 次郎 さん 1965年 本牧 小港町生まれ。総合型 地域スポーツクラブNPO法人「 Y.S.C.C. (横浜スポーツ&カルチャー クラブ)」の理事長。運営するサッカー チームはJ3リーグに所属。子ども向け のサッカースクールなども展開する。 周年へ100 座 会 談 人づくりまちづくり右から吉野さん、大藪さん、角野さん ■2017年(平成29 年)2月中区制90 周年特別号“シビックプライド”を胸に 中区制90周年・開港記念会館100周年 横浜の中心に位置する中区は、今年10 月1日に区制90 周年を迎える。また、開港記念会館も7月に100周年とあって、今年は中区にとっては節目。記念事業実行委員会(平山正晴委員長)では、様々な取り組みを予定しており、中区全体で盛り上がりをみせる1年となりそうだ。区民をはじめ地元企業や各種団体で一昨年12 月に立ちあがった中区制90 周年・開港記念会館100周年記念事業実行委員会では、「シビックプライド(中区に対する誇りや愛着)の高揚」と「未来志向」を目的に掲げ、3月11 日と12 日の「三塔の日」をスタートに、1年を通して様々な記念事業を企画している。100 周年への契機に実行委では、区役所(行政)だけでなく、中区に関わるすべての団体・機関・企業・施設などが一緒になって90 周年を祝い、記念事業に関わっていくことで、中区に対する意識を高めていくとともに、〝地域愛〟および協働・自治意識を醸成させ、10 年後の区制100周年に向けた契機にしたいとしている。また、これからの時代をになう子どもたちが、未来に夢や希望をもてるようにと、90 周年に関わる事業に思いを込める。区民提案19 事業も実行委が手がける記念事業だけでなく、区民や中区で活動する団体からの19 におよぶ提案事業も、この1年を通して区内の各所で行われる。その1つで1月末に関内ホールで公演された吉田新田完成350周年の歴史をたどる市民ミュージカル「おさん伝説」は、大盛況となり、記念すべき90 周年の幕開けを演出した。そのほかにも、まち歩きツアーや中区の歴史をジャズや貴重な今昔映像などで振り返るイベントなど、主催団体の個性が光る事業が盛りだくさんだ。〝存在〟が大切な財産100周年を迎える開港記念会館は、その名の通り横浜開港50 周年を記念し、市民の寄付金で創建された。横浜を代表するこの建物は中区の公会堂の役割もになう。その趣は、開港の歴史を今に伝える語り部のよう。訪れる人に横浜、そして中区の魅力を伝えるとともに、区民の大切な財産でもある。実行委では、記念事業を通して一人でも多くの区民にこの「大切な財産」を伝えたいとしている。区民の協力が必要今年は、横浜の礎となった吉田新田が350周年、馬車道150周年、中区英町出身の小説家・大佛次郎生誕120周年と、様々な周年が重なる。実行委では、これらの周年と連携しながら相乗的な盛り上がりを期待する。中区連合町内会長連絡協議会会長で、記念事業実行委員会の委員長を務める平山さんは「中区をあげて盛大にお祝いをしてまいりましょう」と話し、「区民の皆さま、お勤めの皆さま、学ぶ皆さま、中区に関わる全ての皆さまのご協力をお願いいたします」と呼びかけている。中区は1927(昭和2)年10 月1日、横浜市の区制施行により誕生した5区(鶴見・神奈川・中・保土ケ谷・磯子)のうちの1つ。横浜大空襲や戦後の接収などを乗り越え、観光地・商業地として横浜の発展を支え、現在にいたる。開港記念会館は関東大震災や接収などの危機を乗り越え、89 (平成元)年に国の重要文化財に指定されている。未来へ向けて中区全体で盛り上がる1年に 歴史語り継ぐ周年の紹介吉田新田完成 350 周年 現在の中区中心部の礎となったのが「吉田新田」。350年前に釣鐘状の 入海を石材木材商・吉田勘兵衛が埋め立てた。横浜が開港の地となったのも、 この新田があったからこそ。今年は完成350周年を振り返り、これから のまちづくりを考える契機として、様々なイベントが企画されている。 馬車道 150 周年 1867(慶応3)年に 60 フィート(約 18.3m)の計画道路が整備 されたのが馬車道の始まり。開港後、現在の関内周辺は外国人の居留地 となり、外国人の要請を受けてつくられた。馬車が通るようになると「馬 車道」と呼ばれるように。昨年、馬車道商店街協同組合主催で「記念ロゴ」 コンペを実施するなど 150 周年に向け盛り上がりをみせている。 詳細は ys350 検 索 広聴強化と住民参画推進を中区三上章彦区長区制100周年に向け区は、防災・福祉・子育てなど住民生活に関わる課題に横断的に対応する機能がより一層求められていく。その機能強化のために、区民との多様なチャンネルを持ち、区民の声に耳を傾け、それらの声に対する説明責任を果たしていく必要がある。また、区民の声をくみ取り、区の政策に反映していく機能も求められていく。さらには、このような広聴機能を強化したうえで、区民が区政に参画できるような仕組みを整えることも重要だろう。2017年度は、介護・医療・生活支援など地域包括ケアシステム構築の推進や区マスタープラン(まちづくり基本方針)の素案策定に着手する重要な1年だ。一番身近な総合行政機関として区民の視点に立った区政運営に努めるとともに、区民の区政参画も進めていきたい。10年後を語る三上区長