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(6) 土壌環境
① 地形・地質
ア 地形の概況
関係市町村の地形分類は図 3.2-5に、地形区分別内訳は表 3.2-16に示すとおりである。
寄居町及び小川町には低地から山地までみられるが、深谷市には台地及び低地が、東秩父
村には山地がみられる。計画地及びその周辺は、大起伏丘陵地である。
小川町及び東秩父村には活断層の疑いのあるリニアメントが存在する。
表 3.2-16 地形区分別内訳 (km2)
地形
区分
市町村名
山地 丘陵地 台地 低地 合
計中起伏 小起伏 山麗 大起伏 小起伏 砂礫ローム 扇状
地性
三角
州性
自然
堤防中位 下位
寄居町 1 14 9 10 3 6 12 4 5 - - 64
小川町 6 - 28 - 19 - - - - 1 - 60
深谷市 - - - - 3 8 5 67 34 - 7 124
東秩父村 8 29 - - - - - - - - - 37
資料:「土地分類図付属資料(埼玉県)」(国土庁土地局国土調査課監修、昭和 48 年)
イ 地質の概況
計画地周辺に分布する表層地質の状況は図 3.2-6に示すとおりである。計画地及びその
周辺は、東西に寄居石英斑岩、跡倉層・木持層・栃谷層、寄居層群下部層、金勝山石英閃
緑岩、三波川変成岩類などが幅 1km 前後で帯状に分布している。
ウ 注目すべき地形・地質
「日本の地形レッドデータブック第 1 集」(日本の地形レッドデータブック作成委員会、
平成 6 年)及び「日本の地形レッドデータブック第 2 集」(古今書院、平成 14 年)による
と、計画地及びその周辺に注目すべき地形・地質としてあげられているものはない。
② 地盤の状況
「埼玉県地盤沈下調査報告書(平成 20 年度観測成果)」(埼玉県、平成 21 年)によると、
平成 20 年 1 月 1 日より平成 21 年 1 月 1 日に至る期間の地盤沈下の平均変動量は、寄居町が
1mm、小川町が 2 ㎜上昇し、深谷市が 1mm 沈下している。東秩父村においては、観測が行わ
れていない。
③ 土壌の状況
関係市町村における土壌の状況は図 3.2-7に示すとおりである。山地帯となる東秩父村周
辺は褐色森林土が分布している。起伏の大きい丘陵地である計画地及びその周辺には、残積
性未熟土や乾性褐色森林土が分布している。荒川周辺には褐色低地土が分布している。
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< 凡 例 >
計画地 埼玉県環境整備センター 市町村界
活断層の疑のあるリニアメント 資料:「土地分類図(地形分類図)埼玉県」(埼玉県、昭和 48 年)
:「[新編]日本の活断層-分布図と資料」(活断層研究会、平成7年)
図 3.2-5 地形分類図
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< 凡 例 >
計画地 埼玉県環境整備センター 市町村界
資料:「埼玉県表層地質図」(埼玉県県政情報センター、平成 7 年)
図 3.2-6 表層地質図
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< 凡 例 >
計画地 埼玉県環境整備センター 市町村界
資料:「土地分類図(土壌図)埼玉県」(埼玉県、昭和 48 年)
図 3.2-7 土 壌 図
RG B-W B-d
B
B(Y) BL-0
A BL
AE
RG
B-d
A
BL-0
B
B-W
AE
BL
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④ 土壌汚染
ア 農用地における土壌汚染
「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」によって定められる、農用地における土壌
汚染物質の中で特に有害なものは、カドミウム、銅、砒素及びこれらの化合物である。
埼玉県では、昭和 46 年度から農用地の土壌汚染状況を把握するための調査を 5 年に 1
度行っている。土壌汚染状況調査結果は、表 3.2-17に示すとおりであり、いずれの項目に
ついても調査期間を通じて土壌の汚染に係る環境基準を達成している。
表 3.2-17 農用地における土壌汚染状況調査の分析測定結果
調査年度
調査地点の分析測定結果
土壌中(乾物) 玄米中(現物)
銅(基準値 125mg/kg) 砒素(基準値 15mg/kg) カドミウム(基準値 1mg/kg)
最高 最低 平均 調査地点 最高 最低 平均 調査地点 最高 最低 平均 調査地点
一巡目 (54~57)
全県 32.3 0.1 11.3 90 11.8 tr 1.9 90 0.37 0.02 0.11 46
二巡目 (59~62)
全県 23.6 0.1 9.0 90 5.3 tr 1.4 90 0.30 nd 0.09 48
三巡目 (元~4)
全県 21.6 0.3 9.3 90 8.0 tr 1.8 90 0.38 tr 0.09 46
四巡目 (6~9)
全県 28.7 0.2 9.4 87 13.1 tr 2.2 87 0.30 tr 0.06 31
五巡目 (11~14)
全県 30.8 0.1 11.2 180 11.3 0.1 2.0 180 0.28 tr 0.09 50
六巡目 (16~19)
全県 21.5 tr 8.9 180 6.4 0.1 1.7 180 0.31 tr 0.06 47
注)1.昭和 58 年、63 年、平成 5 年、10 年、15 年、20 年は各調査巡の取りまとめ年である。
2.nd:検出限界以下 tr:極微量検出
資料:「平成 21 年版 埼玉県環境白書」(埼玉県、平成 21 年)
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イ ダイオキシン類汚染
埼玉県では、平成 9 年度から、大気、土壌、河川水、河川底質、魚類など一般環境にお
けるダイオキシン類実態調査や小型焼却炉における実態調査、母乳中のダイオキシン類濃
度調査などを実施している。平成 12 年度からは、ダイオキシン類対策特別措置法に基づく
常時監視が始まっている。
関係市町村が行ったダイオキシン類一般環境調査の結果は表 3.2-18に示すとおりであ
り、平成 16 年度に寄居町の 3 地点において調査が実施されているが、いずれの調査地点に
おいても環境基準を達成している。
表 3.2-18 土壌中のダイオキシン類測定(一般環境把握調査)結果
調査地点 調査結果(pg-TEQ/g) 採取日
寄居町 諏訪公園 0.27 H16.12.21
菅原公園 2.8
運動公園 3.3
資料:「平成 17 年版 埼玉県環境白書」(埼玉県、平成 17 年)
(7) 動物
関係市町村はおおよそ埼玉県の中央に位置し、東の関東平野と西の山地帯の中間にあたり、
多様な地形を有している。「埼玉県レッドデータブック 2008 動物編(埼玉県、平成 20 年)」
の区分によると、関係市町村は主に台地・丘陵帯(標高 50~200m)及び低山帯(標高 200
~800m)に位置する。
「寄居町の自然 動物編」(寄居町教育委員会、昭和 56 年)及び「小川町の自然 動物編」
(小川町、平成 12 年)によると、両町とも 2,000 種を超える動物の生息が確認されており、
豊かな自然環境が存在することを示している。
また、計画地に隣接する環境整備センターとその周辺における動物相の状況については、
「彩の国資源循環工場整備事業に係る環境影響評価書」(埼玉県、平成 15 年)により平成 13
年から 14 年にかけて、「ホンダ寄居新工場建設事業環境影響評価書」(本田技研工業株式会
社、平成 19 年)により平成 18 年に現地調査が実施されている。
① 哺乳類
寄居町では 5 科 9 種の大型哺乳類の生息が確認されており、県全体の 14 種から見て種類
数は多いといえる。また、小型哺乳類は 3 科 10 種が確認されている。県全体の 36 種に比べ
少ないが、これは山地性のネズミ・コウモリが少ないためである。
小川町では 12 科 21 種の哺乳類の生息が確認されている。低山・丘陵地ではニホンリス、
ムササビ等が生息し、谷津ではカヤネズミがみられる。
「彩の国資源循環工場整備事業に係る環境影響評価書」(埼玉県、平成 15 年)では、環境
整備センターとその周辺において 5 目 6 科 11 種、の哺乳類が確認されている。確認された
種は埼玉県内の丘陵地に一般的な種であるが、キツネ、テン、イノシシ等現在分布の中心が
低山-山地にある種が確認され、環境整備センターが周辺と連続した生息環境となっている
こと、樹林等の環境が哺乳類にとって比較的良好であることが示唆された。
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「ホンダ寄居新工場建設事業環境影響評価書」(本田技研工業株式会社、平成 19 年)では、
計画地及びその周辺において 6 目 9 科 12 種の哺乳類が確認されている。確認された種は関
東地方の平野部から丘陵地・低山地周辺で一般に見られるものが多く、カヤネズミ、ホンド
イタチ、アライグマなど樹林地から湿性草地などの環境を利用する種が確認され、樹林地か
ら谷津などの湿地などを含む多様な環境となっていることが示唆された。
② 鳥類
寄居町では県全体の 43%にあたる 34 科 112 種が確認されている。餌になる水草が少ない
ためか、水鳥の種類が少ない。
小川町では 31 科 84 種の生息が確認されている。森林の多い環境のためか、このうち 36
種が森林にすむ鳥である。
「彩の国資源循環工場整備事業に係る環境影響評価書」(埼玉県、平成 15 年)では、14
目 29 科 83 種の鳥類が確認されている。鳥類相は全体的に埼玉県の丘陵地の様相を呈してお
り、樹林性種が中心であるが、農耕地や水辺に生息する種も多く、丘陵の谷戸環境で見られ
る種類相を成している。なお、近年減少傾向にある猛禽類(ワシタカ類)についてはオオタ
カ、ハイタカ、サシバ等が確認され、営巣は確認されていないが、本調査地域が餌場として
利用されている可能性は高いとされている。
「ホンダ寄居新工場建設事業環境影響評価書」(本田技研工業株式会社、平成 19 年)では、
計画地及びその周辺において 14 目 33 科 81 種の鳥類が確認されている。確認種は、オオタ
カやフクロウ、アオゲラ、オオルリなどの樹林に依存する種を中心に、キジやウグイス、ホ
オジロなどの林縁や低木林、草地に依存する種、カワセミやカルガモ、キセキレイなどの水
辺に依存する種などが挙げられ、調査地域の里山的な環境を反映している。猛禽類は、水域
を生活圏とするミサゴ、森林性のハチクマ、オオタカ、ツミ及びハイタカ、里山環境を代表
するサシバ、農耕地などの開放的環境で狩りを行うノスリ、ハヤブサ、チョウゲンボウなど
が確認されている。
③ 爬虫類
寄居町、小川町ともに 5 科 11 種の生息が確認されている。埼玉県全域で普通にみられる
種で構成されているが、爬虫類を主な餌とするサシバ等のワシタカ類がよくみられたことか
ら、個体数の豊富さがうかがえる。小川町では目撃記録の少ないタカチホヘビやシロマダラ、
ヒバカリ等が確認されており、豊かな自然環境を示しているといえる。
「彩の国資源循環工場整備事業に係る環境影響評価書」(埼玉県、平成 15 年)では、トカ
ゲ、カナヘビ及びヤマカガシの 3 種が確認されている。
「ホンダ寄居新工場建設事業環境影響評価書」(本田技研工業株式会社、平成 19 年)では、
計画地及びその周辺において 1 目 3 科 7 種の爬虫類が確認されている。確認種は、アオダイ
ショウやヤマカガシ、ヒバカリなどの谷戸環境を主な生息場所としている種のほか、樹林性
のタカチホヘビや夜行性のシロマダラなども確認されている。
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④ 両生類
寄居町では 6 科 10 種、小川町では 6 科 13 種の生息が確認されている。寄居町では山地性
のカエル・サンショウウオはみられないが、小川町では山地性のヤマアカガエルと平地性の
ニホンアカガエルが混生しており、小川町の地理的特徴を示すものとなっている。
「彩の国資源循環工場整備事業に係る環境影響評価書」(埼玉県、平成 15 年)では、2 目
5 科 7 種の両生類が確認されている。谷戸環境を代表するサンショウウオ類については、湿
地環境の残存している 15 の谷戸を対象に踏査による確認調査が行われ、13 の谷戸からトウ
キョウサンショウウオが確認されている。確認された種は埼玉県の丘陵地の谷戸環境をよく
あらわす種で構成されており、谷戸ではトウキョウサンショウウオやシュレーゲルアオガエ
ル等近年減少しつつある種が確認されており、谷戸環境の両生類相が比較的保持されている
ことがうかがえる。
「ホンダ寄居新工場建設事業環境影響評価書」(本田技研工業株式会社、平成 19 年)では、
計画地及びその周辺において 2 目 5 科 8 種の両生類が確認されている。確認種は、関東地方
の平野部から丘陵地・低山地周辺で一般的に見られるものが多く、トウキョウサンショウウ
オ、アズマヒキガエル、ニホンアカガエルやヤマアカガエルの卵のうや幼生・成体が、計画
地内の谷戸の休耕田、用水路、水溜まりなどの湿地で多数確認された。
⑤ 魚類
寄居町では 13 科 29 種、小川町では 13 科 33 種の生息が確認されている。小川町ではヤマ
メやウナギなどがみられる。
「彩の国資源循環工場整備事業に係る環境影響評価書」(埼玉県、平成 15 年)では、モツ
ゴ、ドジョウ及びクロヨシノボリの 3 種が確認されている。
また、「ホンダ寄居新工場建設事業環境影響評価書」(本田技研工業株式会社、平成 19 年)
では、コイ、モツゴ、ドジョウ、シマドジョウ、ホトケドジョウ、トウヨシノボリの 6 種が
確認されている。
⑥ 昆虫類
寄居町、小川町ともに多種の昆虫類の生息が確認されている。寄居町では環境省のレッド
データブックで準絶滅危惧の指定を受けている国蝶のオオムラサキが、また、埼玉県レッド
データブック 2008 動物編で絶滅危惧Ⅱ類の指定を受けているゲンジボタルは両町にそろっ
てみられる。
「彩の国資源循環工場整備事業に係る環境影響評価書」(埼玉県、平成 15 年)では、14
目 139 科 533 種の昆虫類が確認されている。昆虫相は全体的に埼玉県の丘陵地の様相を呈し
ており、樹林性種が中心で、とくに広葉樹林でもっとも多くの種が確認され、それ以外では
草地環境で多くの種がみられている。また、確認された種は埼玉県内の丘陵地に一般的な種
であるが、オオムラサキ等減少傾向にある里山の指標的種が生息するなど、本調査地域の樹
林等の環境が比較的良好であることを示唆している。
「ホンダ寄居新工場建設事業環境影響評価書」(本田技研工業株式会社、平成 19 年)では、
計画地及びその周辺において 15 目 210 科 921 種の昆虫類が確認されている。確認種は、関
東の平野部から低山地にかけて普通に見られるものが大部分を占めていた。全体としては、
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調査地域の環境を反映して、樹林性種の確認が多く、谷戸部の湿地環境には特に特徴的な昆
虫が認められるなど、計画地及びその周辺は、人の手が加わった低山地の典型的な里山環境
であることを示唆している。
⑦ 水生生物
「彩の国資源循環工場整備事業に係る環境影響評価書」(埼玉県、平成 15 年)では、スジ
エビ、ヌマエビ及びアメリカザリガニの 3 種の甲殻類が確認されている。
「ホンダ寄居新工場建設事業環境影響評価書」(本田技研工業株式会社、平成 19 年)では、
計画地及びその周辺において、24 目 75 科 154 種の底生動物が確認されている。
⑧ 動物の保全すべき種
既往の調査において確認された動物種のうち、学術的に希少な保全すべき種として抽出さ
れる種は、表 3.2-19に示す哺乳類 4 種、鳥類 26 種、爬虫類 5 種、両生類 3 種、昆虫類 29
種、魚類 2 種、甲殻類 2 種、扁形動物 1 種、軟体動物 1 種の計 73 種である。
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表 3.2-19 既往の調査において確認された動物の保全すべき種
区分 種 名 選定基準
区分 種 名 選定基準
環境省 埼玉県 環境省 埼玉県
哺乳類 カヤネズミ
(ホンドカヤネズミ)
- NT1,NT2 両生類 トウキョウサンショウウオ VU VU
ヤマアカガエル - NT2
キツネ - NT2 モリアオガエル - LP
(ホンドキツネ) 昆虫類 サラサヤンマ - NT2
テン(ホンドテン) - VU ヒメアカネ - NT2
アナグマ - VU キリギリス - NT2
(ニホンアナグマ) ヒナバッタ - DD
鳥類 アオサギ - DD ツマグロイナゴ - NT2
ミサゴ NT - クルマバッタ - NT2
ハチクマ NT □VU ヤマトフキバッタ - NT2
トビ - □DD アヤヘリハネナガウンカ - NT1
オオタカ NT □VU シリアカハネナガウンカ - NT1
○NT2 ハルゼミ - NT1
ツミ - □NT2 オオアメンボ - NT1
ハイタカ NT ○NT2 ラクダムシ - VU
ノスリ - ○NT2 ヒメカマキリモドキ - VU
サシバ VU □EN ゲンジボタル - VU
ハヤブサ VU ○VU ヘイケボタル - NT1
チョウゲンボウ - □VU スゲハムシ - NT1
ヤマシギ - ○NT2 キョウトハキリバチ - NT2
フクロウ - □VU ナンブアシブトコバチ - CR
○NT2 ヤマトガガンボモドキ - VU
ハリオアマツバメ - □NT1* ヒメキイロコウカアブ - NT1
サンショウクイ VU □CR コバントビケラ - NT2
トラツグミ - □VU ホソバトビケラ - NT1
クロツグミ - □VU ミヤマセセリ - NT1
ヤブサメ - □VU ホソバセセリ - NT2
センダイムシクイ - □CR コムラサキ - NT1
キビタキ - □VU オオムラサキ NT NT1
オオルリ - □CR ジャノメチョウ - NT1
エナガ - □NT2 ヤママユ - NT2
ヤマガラ - □NT2 エゾヨツメ - NT2
ミヤマホオジロ - ○NT1 魚類 シマドジョウ - NT2
クロジ - ○NT2 ホトケドジョウ EN EN
ベニマシコ - ○NT2 甲殻類 スジエビ - VU
爬虫類 タカチホヘビ - VU ヌカエビ - EN
アオダイショウ - NT2 扁形動物 ナミウズムシ - LP
シロマダラ - VU 軟体動物 ミズコハクガイ VU LP*
ヒバカリ - NT2
ヤマカガシ - NT2
注)1.ナンブアシブトコバチを除く種については、「彩の国資源循環工場整備事業に係る環境影響評価書」(埼玉県、平成
15 年)により平成 13 年から 14 年にかけて、隣接する環境整備センターとその周辺において実施された現地調査の
結果及び「ホンダ寄居新工場建設事業環境影響評価書」(本田技研工業株式会社、平成 19 年)により平成 18 年に調
査地域及びその周辺で実施された現地調査の結果による。
2.ナンブアシブトコバチについては、「彩の国資源循環工場第Ⅱ期事業基本構想に係る戦略的環境影響評価報告書」(埼
玉県、平成 17 年)において、住民から本計画地周辺での生息情報があったため、上記の現地調査確認種に加えてい
る。
3.選定基準については以下のとおりである。なお、確認は種レベルであるものの、亜種レベルでは選定基準に該当する
ものについては、保全すべき種である可能性があるため、亜種名を( )内に示し、表中に記載した。
①環境省(平成 18~19 年)
・「鳥類、爬虫類、両生類及びその他無脊椎動物のレッドリストの見直しについて」、「哺乳類、汽水・淡水魚類、昆虫
類、貝類、植物 I 及び植物 II のレッドリストの見直しについて」に掲載されている種
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EN(絶滅危惧ⅠB類):絶滅の危機に瀕している種
VU(絶滅危惧 II 類):絶滅の危機が増大している種
NT(準絶滅危惧) :存続基盤が脆弱な種
②埼玉県(平成 20 年)
・「埼玉県レッドデータブック 2008 動物編」に掲載されている種(□は繁殖鳥、○は越冬鳥での選定を示す)。
カテゴリーについては、当該地域(台地・丘陵帯)のランクを適用した。
CR(絶滅危惧 IA 類):ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの
EN(絶滅危惧 IB 類):IA 類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
VU(絶滅危惧 II 類):絶滅の危険が増大している種
NT1(準絶滅危惧):環境条件の評価によって容易に絶滅危惧に移行しうる属性を本来有しているもの
NT2(準絶滅危惧):生息状況の推移から見て、種の存続への圧迫が強まっていると判断されるもの
DD(情報不足) :評価するだけの情報が不足している種
LP (地域個体群) :地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれが高いもの
* :ハリオアマツバメ・ミズコハクガイは、「埼玉県レッドデータブック 2008 動物編」の台地・丘陵帯におけるラ
ンクが示されていないため、全県のランクを示した。
(8) 植物
① 植生・植物相
ア 植生
「改訂埼玉県レッドデータブック 2005 植物編」(埼玉県、平成 17 年)によると、埼玉
県の植生は、東部の平野部から西部の山岳地にかけて、暖温帯林・中間温帯林・冷温帯林・
亜寒帯林へと変化する。
関係市町村は主に台地・丘陵帯(標高 50~200m)及び低山帯(標高 200~800m)に位
置し、植生はそれぞれ温暖帯林及び中間温帯林に属する。
台地・丘陵帯にみられる温暖帯林はシラカシを主とする常緑広葉樹林が極相林であると
考えられており、基本的には全域が照葉樹林の成立する植生域と考えられるが、実際は社
寺林や屋敷林として断片的に残るのみで、大規模に現存する照葉樹林は皆無といってよい。
丘陵部は植林地が比較的少なく、コナラ・クヌギ等の優占する薪炭林起源の二次林に被わ
れた地域が多い。
計画地及びその周辺における現存植生図を、図 3.2-8及び図 3.2-9に示す。
「彩の国資源循環工場整備事業に係る環境影響評価書」(埼玉県、平成 15 年)及び「ホ
ンダ寄居新工場建設事業環境影響評価書」(本田技研工業株式会社、平成 19 年)によれば、
計画地を含む寄居町は、埼玉県北西部、上武山地と外秩父山地の境界をなす荒川が北武蔵
台地に流下する、山地と台地の境界部分に位置するとされている。また、環境整備センタ
ーは寄居町の南縁部で外秩父山地の東縁に位置し、標高は 100~200m程度、ヤブツバキク
ラス域(常緑広葉樹林帯)にあたり、植生的にはシラカシ群集域にあたるが、古くからの
人為的な干渉のため、ほとんどは薪炭林起源の二次林や植林に置き換わり、自然植生は残
されていないとされている。樹林の大半はコナラ群落であり、尾根上にアカマツ群落がみ
られ、一部にヒノキ植林がみられる。
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< 凡 例 >
計画地 埼玉県環境整備センター 市町村界
資料:「第 3 回自然環境保全基礎調査(植生調査)現存植生図 寄居」(環境庁、昭和 59 年)
図 3.2-8 計画地及びその周辺の現存植生図
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< 凡 例 >
計画地
資料:「彩の国資源循環工場第Ⅱ期事業基本構想に係る戦略的環境影響評価報告書」(埼玉県、平成 17 年)
図 3.2-9 計画地の現存植生図
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116
イ 植物相
計画地に隣接する環境整備センターとその周辺における植物相については、「彩の国資
源循環工場整備事業に係る環境影響評価書」(埼玉県、平成 15 年)により平成 13 年から
14 年にかけて、「ホンダ寄居新工場建設事業環境影響評価書」(本田技研工業株式会社、平
成 19 年)により平成 18 年に現地調査が実施されている。その結果によれば、132 科 745
種の植物が確認されており、いくらかの常緑植物を含む樹林構成種が多くを占める一方で、
人為的撹乱の多い立地に適応した一年生草本や、帰化植物も多く認められ、コナラやアカ
マツを中心とした二次林に造成地が存在する相観的特徴が反映された植物相が確認されて
いる。
ウ 保全すべき種及び保全すべき群落
既往の調査において確認された植物種のうち、学術的に希少な保全すべき種として抽出
される種は、表 3.2-20に示す 37 種である。
また、保全すべき植物群落は表 3.2-21に示すとおりであり、「改訂・埼玉県レッドデー
タブック 2005 植物編」(埼玉県、平成 17 年)に希少な植物群落として掲載されている「ミ
ミカキグサとモウセンゴケ自生地(湿地植物群落)」が計画地の北側に存在する。
表 3.2-20(1) 既往の調査において確認された植物の保全すべき種
種名(科名) 選定基準
生活型 開花期 生育地 環境省 埼玉県
タニヘゴ(オシダ科) - EN 多年草 - 湿地
イヌショウマ(キンポウゲ科) - NT 多年草 8~9 月 森林
ネコノメソウ(ユキノシタ科) - VU 多年草 3~4 月 湿地
タコノアシ(ユキノシタ科) NT EN 多年草 8~10 月 湿地
クロツバラ(クロウメモドキ科) - VU 夏緑性 5~6 月 森林
アケボノスミレ(スミレ科) - NT 多年草 3~5 月 山地
ミズマツバ(ミソハギ科) VU VU 1 年草 8~10 月 沼・池・水路
アキノギンリョウソウ(イチヤクソウ科) - EN 多年草 9~10 月 腐生植物
ヌマトラノオ(サクラソウ科) - NT 多年草 7~8 月 湿地
アケボノソウ(リンドウ科) - EN 1~2 年草 9~10 月 山地草原、湿地
センブリ(リンドウ科) - VU 1~2 年草 10~11 月 草原
ホソバヨツバムグラ(アカネ科) - NT 多年草 6~8 月 湿地
ミゾコウジュ(シソ科) NT VU 2 年草 5~6 月 草地、畦
オオヒキヨモギ(ゴマノハグサ科) VU EN 1 年草 8~9 月 やや乾いた草地
ナンバンギセル(ハマウツボ科) - VU 1 年草 7~9 月 ススキ等に寄生
ツルカノコソウ(オミナエシ科) - VU 多年草 4~5 月 森林
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117
表 3.2-20(2) 既往の調査において確認された植物の保全すべき種
種名(科名) 選定基準
生活型 開花期 生育地 環境省 埼玉県
キキョウ(キキョウ科) VU EN 多年草 8~9 月 山野の草地
カワラヨモギ(キク科) - VU 多年草 8~9 月 草原
アキノハハコグサ(キク科) VU VU 1 年草 9~10 月 やや乾いた草地
オグルマ(キク科) - NT 多年草 7~10 月 草原
オオニガナ(キク科) NT EN 多年草 9~11 月 山地の湿地
ヘラオモダカ(オモダカ科) - VU 多年草 8~9 月 湿地
サジオモダカ(オモダカ科) - VU 多年草 6~10 月 湿地
ヒルムシロ(ヒルムシロ科) - VU 多年草 5~10 月 水中(湿地)
ミクリ(ミクリ科) NT EN 多年草 6~8 月 湿地
コマツカサススキ(カヤツリグサ科) - VU 多年草 8~9 月 湿地
シラン(ラン科) NT EN 多年草 5~6 月 湿った草原
エビネ(ラン科) NT EN 多年草 5~6 月 竹林-山地の林内
ササバギンラン(ラン科) - NT 多年草 5~6 月 森林
サイハイラン(ラン科) - VU 冬緑多年草 5~6 月 丘陵-山地の林内
シュンラン(ラン科) - VU 常緑多年草 3~4 月 台地-低山の林内
ミヤマウズラ(ラン科) - EN 常緑多年草 8~9 月 山地
ジガバチソウ(ラン科) - NT 多年草 6~7 月 森林
クモキリソウ(ラン科) - NT 多年草 5~6 月 森林
オオバノトンボソウ(ラン科) - VU 多年草 7~8 月 森林
ハクウンラン(ラン科) - EX 多年草 7~8 月 森林
モウセンゴケ(モウセンゴケ科) - CR 多年草 6~8 月 低地-山地の湿地
注)1.モウセンゴケを除く種については、「彩の国資源循環工場整備事業に係る環境影響評価書」(埼玉県、
平成 15 年)により平成 13 年から 14 年にかけて、隣接する環境整備センターとその周辺において実施
された現地調査の結果及び「ホンダ寄居新工場建設事業環境影響評価書」(本田技研工業株式会社、平
成 19 年)により平成 18 年に計画地及びその周辺で実施された現地調査の結果による。
2.モウセンゴケについては、「彩の国資源循環工場第Ⅱ期事業基本構想に係る戦略的環境影響評価報告
書」(埼玉県、平成 17 年)において、住民から計画地周辺での生育情報があったため、上記の現地調
査確認種に加えている。
3.選定基準については以下のとおりである。
①環境省(平成 19 年)
・「哺乳類、汽水・淡水魚類、昆虫類、貝類、植物Ⅰ及び植物Ⅱのレッドリストの見直しについて」に掲
載されている種
VU(絶滅危惧 II 類):絶滅の危機が増大している種
NT(準絶滅危惧) :存続基盤が脆弱な種
②埼玉県(平成 17 年)
・「改訂・埼玉県レッドデータブック 2005 植物編」に掲載されている種
EX (絶滅) :すでに絶滅したと考えられる種
CR(絶滅危惧 IA 類):ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
EN(絶滅危惧 IB 類):IA 類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
VU(絶滅危惧Ⅱ類) :絶滅の危機が増大している種
NT(準絶滅危惧) :存在基盤が脆弱な種
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表 3.2-21 計画地周辺の保全すべき植物群落
群落名(群落の種類) 選定基準
群落の位置 備 考 植物群落 埼玉県
ミミカキグサとモウセンゴケ
自生地(湿地植物群落)
- 危機的消
滅寸前
大里郡寄居町鉢形 県指定天然記念物
注)選定基準については以下のとおりである。
①植物群落(平成 8 年)
・「植物群落レッドデータブック」(わが国における保護上重要な植物種及び植物群落研究委員会植物群
落分科会)に掲載されている群落
②埼玉県(平成 17 年)
・「改訂・埼玉県レッドデータブック 2005 植物編」に掲載されている群落