行列補完を用いた 無線マルチキャスト符号構成アルゴリズム 相馬 輔 東大 情報理工学系研究科 D1 OR 学会春季研究発表会 ’14 1 / 12
行列補完を用いた無線マルチキャスト符号構成アルゴリズム
相馬輔
東大情報理工学系研究科 D1
OR学会春季研究発表会 ’14
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線形決定性リレーネットワーク (LDRN)
Avestimehr–Diggavi–Tse’07によって提案された無線通信モデル
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線形決定性リレーネットワーク (LDRN)
Avestimehr–Diggavi–Tse’07によって提案された無線通信モデル
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線形決定性リレーネットワーク (LDRN)
Avestimehr–Diggavi–Tse’07によって提案された無線通信モデル
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線形決定性リレーネットワーク (LDRN)
Avestimehr–Diggavi–Tse’07によって提案された無線通信モデル
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線形決定性リレーネットワーク (LDRN)
Avestimehr–Diggavi–Tse’07によって提案された無線通信モデル
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LDRN上のマルチキャスト問題単一ソース・複数シンク間の通信方法(マルチキャスト符号)を求める
• 中間ノードは受信したビットに線形変換を行うことを許す• 信号を表す有限体のサイズ >シンク数
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LDRN上のマルチキャスト問題単一ソース・複数シンク間の通信方法(マルチキャスト符号)を求める
• 中間ノードは受信したビットに線形変換を行うことを許す• 信号を表す有限体のサイズ >シンク数
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既存研究・本研究の結果
定理 (Yazdi–Savari ’13)
マルチキャスト問題に対する O(dq((nr)3 log(nr)+n2r4))時間決定性アルゴリズム.
d: シンク数, n: レイヤーごとの最大ノード数, q: レイヤー数,r : ノードあたりの受信(送信)端子数
定理 (S. ’14)
マルチキャスト問題に対する O(dq(nr)3 log(nr))時間決定性アルゴリズム.
• この計算量は (ユニキャストの現在最良の計算量)×dに一致
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既存研究・本研究の結果
定理 (Yazdi–Savari ’13)
マルチキャスト問題に対する O(dq((nr)3 log(nr)+n2r4))時間決定性アルゴリズム.
d: シンク数, n: レイヤーごとの最大ノード数, q: レイヤー数,r : ノードあたりの受信(送信)端子数
定理 (S. ’14)
マルチキャスト問題に対する O(dq(nr)3 log(nr))時間決定性アルゴリズム.
• この計算量は (ユニキャストの現在最良の計算量)×dに一致
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既存アルゴリズムとの違い既存アルゴリズム:
Step 1Goemans–Iwata–Zenklusen
アルゴリズムでユニキャストを解く
Step 2ノードの線形変換を一つずつ決定
提案アルゴリズム:
Step 1Goemans–Iwata–Zenklusen
アルゴリズムでユニキャストを解く
Step 2混合行列補完を用いて各レイヤー内のノードの線形変換を一気に決定
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既存アルゴリズムとの違い既存アルゴリズム:
Step 1Goemans–Iwata–Zenklusen
アルゴリズムでユニキャストを解く
Step 2ノードの線形変換を一つずつ決定
提案アルゴリズム:
Step 1Goemans–Iwata–Zenklusen
アルゴリズムでユニキャストを解く
Step 2混合行列補完を用いて各レイヤー内のノードの線形変換を一気に決定
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s–tフロー
1つずつ[ x
y ] 7→ [ xy ] [ x
y ] 7→ [ xx+y ] [ x
y ] 7→ [ xy ]
1 各中間ノードでフローに含まれる受信・送信端子の数は等しい2 フローに対応するレイヤー間の線形変換は正則3 最終レイヤーではフローは t の受信端子に含まれる
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s–tフロー1つずつ
[ xy ] 7→ [ x
y ] [ xy ] 7→ [ x
x+y ] [ xy ] 7→ [ x
y ]
1 各中間ノードでフローに含まれる受信・送信端子の数は等しい2 フローに対応するレイヤー間の線形変換は正則3 最終レイヤーではフローは t の受信端子に含まれる
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s–tフロー
1つずつ
[ xy ] 7→ [ x
y ] [ xy ] 7→ [ x
x+y ] [ xy ] 7→ [ x
y ]
1 各中間ノードでフローに含まれる受信・送信端子の数は等しい2 フローに対応するレイヤー間の線形変換は正則3 最終レイヤーではフローは t の受信端子に含まれる
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s–tフロー
1つずつ[ x
y ] 7→ [ xy ] [ x
y ] 7→ [ xx+y ] [ x
y ] 7→ [ xy ]
1 各中間ノードでフローに含まれる受信・送信端子の数は等しい2 フローに対応するレイヤー間の線形変換は正則3 最終レイヤーではフローは t の受信端子に含まれる
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s–tフロー
1つずつ[ x
y ] 7→ [ xy ] [ x
y ] 7→ [ xx+y ] [ x
y ] 7→ [ xy ]
定理 (Goemans–Iwata–Zenklusen ’12)
LDRNにおいて,s–t フローは O(q(nr)3 log(nr))時間で求められる.
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混合行列補完とは混合行列: 成分に変数を含む行列で,各変数が1回しか現れないもの
例
A =
[1 + x1 2 + x2
x3 0
]=
[1 20 0
]+
[x1 x2
x3 0
]
混合行列補完: 混合行列の変数に値を代入して階数を最大化する問題
例F = Q
A =
[1 + x1 2 + x2
x3 0
]−→ A ′ =
[2 21 0
](x1 := 1, x2 := 0, x3 := 1)
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混合行列補完とは混合行列: 成分に変数を含む行列で,各変数が1回しか現れないもの
例
A =
[1 + x1 2 + x2
x3 0
]=
[1 20 0
]+
[x1 x2
x3 0
]
混合行列補完: 混合行列の変数に値を代入して階数を最大化する問題
例F = Q
A =
[1 + x1 2 + x2
x3 0
]−→ A ′ =
[2 21 0
](x1 := 1, x2 := 0, x3 := 1)
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同時混合行列補完
同時混合行列補完F: 体
Input A: F上の混合行列の族(同じ変数が 2つ以上の混合行列に現れてもよい)
Find Aの全ての行列の階数が最大化されるような値の割当
例
A =
{[x1 10 x2
],
[1 + x1 0
1 x3
]}→{[
1 10 1
],
[2 01 1
]}if F = F3
定理 (Harvey–Karger–Murota ’05)
|F| > |A|ならば,同時混合行列補完は解を持ち,多項式時間で求められる.
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同時混合行列補完
同時混合行列補完F: 体
Input A: F上の混合行列の族(同じ変数が 2つ以上の混合行列に現れてもよい)
Find Aの全ての行列の階数が最大化されるような値の割当
例
A =
{[x1 10 x2
],
[1 + x1 0
1 x3
]}→{[
1 10 1
],
[2 01 1
]}if F = F3
定理 (Harvey–Karger–Murota ’05)
|F| > |A|ならば,同時混合行列補完は解を持ち,多項式時間で求められる.
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同時混合行列補完
同時混合行列補完F: 体
Input A: F上の混合行列の族(同じ変数が 2つ以上の混合行列に現れてもよい)
Find Aの全ての行列の階数が最大化されるような値の割当
例
A =
{[x1 10 x2
],
[1 + x1 0
1 x3
]}→{[
1 10 1
],
[2 01 1
]}if F = F3
→解なし if F = F2
定理 (Harvey–Karger–Murota ’05)
|F| > |A|ならば,同時混合行列補完は解を持ち,多項式時間で求められる.
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同時混合行列補完
同時混合行列補完F: 体
Input A: F上の混合行列の族(同じ変数が 2つ以上の混合行列に現れてもよい)
Find Aの全ての行列の階数が最大化されるような値の割当
例
A =
{[x1 10 x2
],
[1 + x1 0
1 x3
]}→{[
1 10 1
],
[2 01 1
]}if F = F3
→解なし if F = F2
定理 (Harvey–Karger–Murota ’05)
|F| > |A|ならば,同時混合行列補完は解を持ち,多項式時間で求められる.
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提案アルゴリズムの概要アルゴリズム
1 各シンク t に対して s–t フロー Ft を求める2 第 1レイヤーから順番に,各ノードの線形変換を決定
線形変換 A : w 7→ (Ft に対応する vi の部分ベクトル)が正則となるようにする
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提案アルゴリズムの概要アルゴリズム
1 各シンク t に対して s–t フロー Ft を求める2 第 1レイヤーから順番に,各ノードの線形変換を決定
線形変換 A : w 7→ (Ft に対応する vi の部分ベクトル)が正則となるようにする
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提案アルゴリズムの概要
vi+1 = MiXivi = MiXiPiwより,Ft に対応する vi+1の部分ベクトル = Mi[Ft ]XiPiw
(Mi[Ft ]: Ft に対応するMi の小行列)
Mi[Ft ]XiPi が正則 ⇐⇒ 混合行列[
I O PiXi I OO Mi [Ft ] O
]が正則
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提案アルゴリズムの概要
全てのシンク t に対して混合行列[
I O PiXi I OO Mi [Ft ] O
]を正則とするような Xi は
同時混合行列補完で求められる.
定理 (S. ’14)
|F| > qのとき LDRN上のマルチキャスト問題はO(dq(nr)3 log(nr))時間で解ける.
d: 受信者数, n: レイヤーごとの最大ノード数, q: レイヤー数,r : ノード容量
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まとめ
• LDRN上のマルチキャスト問題に対する,混合行列補完にもとづく組合せ的な決定性アルゴリズム
• 既存アルゴリズムにくらべて n = o(r)のとき高速
• 計算量は (ユニキャストの現在最良の計算量)×(シンク数)に一致
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