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1.はじめに
このような都市河川管理の難しさの実態を理解してもらい、多方面からのホームレス対応に対する助言をいただき今後のより良い河川管理に役立てることを目的とする。
のや端材で建物を造りブルーシートで覆うタイプが主流である。一部は単管パイプで2階建ての規模に展 開している物件もある。動物として犬,猫,ウサギ,アヒルなどを飼っている者もいる。
5)年齢構成として5~60代が圧倒的多数。次いで4~50代となっており、70代以降は少ない。極一部で はあるが20代や夫婦もいる。
写真1:”標準的”な小屋 写真2:”俺様王国的”な小屋
荒川下流部におけるホームレス対策の取り組みについて
金銭が無くなったら舞い戻ってくる者もいる。その為小屋を残すことが多い。
言う者も存在し、ひどい場合、河川敷を好き勝手に使用する者(いわゆる「俺様王国」状態)が地元住民や 利用者とトラブルを起こしている。このような事から[ホームレス=社会不適合者=悪]との若干誤った認 識を持つ河川利用者や住民がかなり増えている。
時に危険であり、このまま放置するわけにはいかない。また、河川利用者からは危険で怖い、汚く見苦しい
3)食料は前記収入で得たものから購入したり、河川という立地条件から魚,不法耕作畑などからの自給 自足も含まれる。また、宗教団体の炊き出しもある事から住みやすくなっていると思われる。
4)住環境としては不法行為と認識していることから一部を除きあまり立派な建物でなくテントを改造したも
●河川敷に住むのは違法であるという事は認識している(一部)ようであるが金銭が無く河川敷で住むしか ないと思っているようである。ただし、河川敷ホームレス生活が長引いてくると元の生活に戻りたくないと
荒川下流管内ホームレス推移(H17~H22)
2)生計は主に空き缶などの金属資源及び廃品回収の割合が高い。一部ではシジミやウナギなどを売って いる者もいる。また、働き口がある時は主に日雇いや短期で住み込みとして就職した場合、一時離れるが
2.荒川下流域ホームレスの実態
荒川下流河川事務所 小名木川出張所 大山 剛司
といった苦情も多々見受けられる。
1)基本として不況で今までの住居から退去→市街地→さらに移動して河川敷(小河川)→河川敷(荒川) になった者が多い。市街地は危険である。河川敷に行くよう言われた者も多い。
荒川下流河川事務所管内におけるホームレスについては、近年の不況並びに雇用情勢の悪化に伴い横ばいをたどっており、ホームレスを減少させることは大変難しい状況にある。一方で河川内は洪水時、高潮
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H17冬
H18夏
H18冬
H19夏
H19冬
H20夏
H20冬
H21夏
H21冬
H22夏
H22冬
岩淵 小名木川 合計
557509517 525 539 520 496 528 528 525 532
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3.事務所としての取り組み
写真4:ホームレスの”財産” 写真5:不法投棄箇所
●これらから、まずはAを実施する事になった。
A:効率的なホームレス指導(ターゲットを絞った指導)→「ホームレス対策特別巡視班」の
B:河川内ホームレスの現状について対外的に情報発信→対外的な情報発信が出来るよう
③:ホームレス対策特別巡視班の設立 1)平成22年度に荒川下流河川事務所内に発足した「荒川下流維持管理研究会」があり、4つのグル ープ〔堤防除草〕〔河川巡視〕〔ゴミ対策〕〔ホームレス対策〕から構成されている。
写真3:合同巡視状況
張しており河川管理者において速やかに処分することが難しい。また、不法耕作も同様である。
●いずれにせよ一般の河川利用者からはゴミ等が多く捨ててある。ホームレスも好き勝手に暮らしてい
2)当初のホームレス対策グループの目標
るとの認識が強い為結果的に不法投棄や不法工作の設置などの違法行為が増えてしまう要因である。
てており、ここに捨てられているのは外から捨てに来ている者だ」と主張しているが間違いなく6:4から 8:2以上でホームレスが捨てている。(目撃情報も多数)
4)洪水時に危険であると伝えても「気を付けるから大丈夫」「ここに住んでから危険になったことはない」
いるが全ては処分できず、放置した状態でいなくなっている。結果、河川管理者が維持工事等で撤去
立支援センターに入所したり、健康面に不安がある者が施設に入所したり河川敷から退去しているが、 入所基本条件が河川敷に設置してある小屋などを処分してからとなっているが、ある程度は処分して
りした前例がある。なお、高水敷に水が乗りそうな場合には河川パトロール車で退去を促すテープをか 「その時はその時」など、危機管理を意識していない。過去の例として洪水時に取り残されて救助され
は撤去後1時間後には捨てられている状態である。巡視時にホームレスに話すと「ゴミは河川敷外に捨
C:住民が求める荒川下流部自然地のあり方→別途、「荒川下流部自然地等管理検討会」で 検討を予定
試みの実施
データを収集
1)こちらが散乱しているゴミと認識してもホームレスはあくまでも廃品として売ることができる[財産]と主
もともと定期的に自治体と所轄警察の合同で平成7年から実施していたが自立支援法が策定されてか
2)合同巡視で自治体の福祉・保健部局がホームレスの自立支援や健康相談を行っており、その結果自
する事になってしまう。
3)河川敷にホームレスが住んでいる箇所は不法投棄も絶えず、維持工事等で撤去しても悪質な箇所で
けながら管内を回っている。
しているが、制約があることから相談する者は少ない。
らはホームレスの実態に関する全国調査を行うため平成15から年2回基本として所轄警察署と関係市区 及び福祉部局と合同で行い、併せて不法に設置されている小屋や放置された不要な荷物などを撤去する ように指導を行っているものである。この時に福祉部局より健康相談,施設入居や自立支援に関して活動
②:問題点と河川への影響
①:ホームレス合同巡視
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第2回ホームレス対策特別巡視班(H23.2.9)
第3回ホームレス対策特別巡視班(H23.2.24) 指導内容:2月9日に指導した者の中から可能な範囲で維持業者による片付けを実施。 ※再度前回不在だった者に確認。次回(2週間後)までに片付けることを指導。
第4回ホームレス対策特別巡視班(H23.3.11)
写真7:指導前及び指導後の状況
2)活動状況報告
第1回ホームレス対策特別巡視班(H23.1.21) 指導内容:小屋の棟数・占有面積が大きい者、ゴミ散乱がひどい者に対し、2週間後(2月4日)
1)活動エリアの設定
・自然地下流側に墨田区サッカー場等の公園施設が連なっている。
③地元自治体の協力が得られる箇所
荒川下流管内における特別巡視班エリアを以下の基準から選定した。 ①住宅地、公園に隣接している箇所 ②小屋の拡大、ゴミの散乱が見られる箇所
以上から〔小名木川出張所管内 右岸 10k付近 隅田水門下流区域〕を選定した。 現状として、 ・隅田水門下流にある自然地に約50名のホームレスが存在。
・堤防と東武鉄道を隔て住宅地が広がっている。
※片付け実施中に不在箇所調査中、東日本大震災発生により中止。
写真6:特別巡視班エリア
※指導目安は、10㎡以上(25名)の占有者。特に20㎡以上(13名)を重点指導。 までに撤去を行うよう指導。病人・高齢者への施設入寮への指導。
指導内容:1月21日に指導した者の中から可能な範囲で維持業者による片付けを実施。 ※ただし、抵抗する者については強制撤去は行わず、次回(2週間後)までに片付け ることを指導。
指導内容:2月24日に指導した者の中から可能な箇所で維持業者による片付けを実施。
4.平成22年度の成果(ホームレス対策特別巡視班)
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●新規ホームレスの流入を防ぐ
7.今後の方針
また今後は、多方面の方々よりいただいた助言を参考に、今後の河川内ホームレスの対応について検 討を行い、より良い河川管理に役立てる方針とする。
ホームレス対策は単に河川内からホームレスがいなくなれば良いというものでなく、最終的にホームレ ス自体が自立してくれることにある。その為には、関係各機関の方々と粘り強く話しを進めていくことが重 要である。(現実には非常に厳しいと思われるが....)
●ゴミ撤去費用の負担問題
●対応する職員のメンタル面の問題
●事務所全体の協力体制の確立
6.今後の課題
●「荒川下流ホームレス対策行動計画」(案)の実践
●事務所としてホームレス対策の目標を定める
行動計画(案)の内容
6月~7月・・・夏期合同巡視(自治体福祉部局に相談するよう指導) 7月~8月・・・工事箇所周囲の仮囲い・周辺草刈り 9月~10月・・・工事箇所範囲内全面草刈り・伐木 10月~11月・・・工事用バリケード設置・小屋撤去 11月~・・・自然再生本工事実施
5月・・・現地指導(秋には立ち退くよう全戸に対して実施) ◆スケジュール(案)
5.今後の予定
●平成23年度予定 平成22年度に当該エリアが自然地管理・運営検討会にて自然再生工事を実施する事になった。 そのため、本エリアのホームレスに対し、全員立ち退く様指導予定。
内 容
1.はじめに
2.目的
3.実態調査及び関係機関との協力体制のあり方について
4.合同巡視の実施について
5.重点巡視区域の設定及び特別巡視班による重点的な巡視について
6.新たなホームレスの流入対策について
7.適正な巡視・指導と不法占有区域拡大の防止について
8.関係機関からの情報収集について
9.河川管理者からの情報発信について
「荒川下流ホームレス対策行動計画」(案)