Top Banner
85 (5) 韓国 韓国では、食品衛生法で規定された 29 品目の食品規格と、農林畜産食品部(Ministry of Agriculture, Food and Rural AffairsMAFRA)が存在する。一方で、国家技術標準院(Korean Agency for Technology and StandardsKATS)が策定する韓国産業規格(Korean Industrial StandardsKS)がある。 62 これは、日本の JIS 規格に該当する制度で、食品も対象となって いる。 1) KS マーク a. 概要(目的、内容) KS マークとは、産業標準化法に基づき韓国標準協会が試験を経て産業標準として認定す る製品・サービス・農水畜産物加工食品に与える法定任意認証マークである。製品の品質を 改善するだけでなく、生産工程の単純・統一化により産業標準化を確立することで経済的効 率を極大化し産業競争力向上や国家経済を発展させるために設けられた。従って KS マーク は鉱工業製品の部品・成分・材質を統一・単純化して韓国産業標準として予め定めることで、 企業は標準化された製品を生産しているかを検査、認証する一種の品質保証書で、製品の品 質を評価し一定の水準に達した製品に与えられる。 48 KS マーク 出所)KATShttp://eng ksa.or kr/ksa english/5177/subview.do2018/3/2/閲覧 b. 組織 KATS は、韓国知識経済部産業資源部に所属する機関で、韓国の代表的な国家標準化組織 として、韓国工業規格(KS)の開発、消費者製品の品質と安全性の管理。法定計量システム の運用 最先端技術・製品等の技術評価・認証管理を行っている。 62 http://www.ilsijapan.org/ILSIJapan/COM/W2015/13 Korea.pdf 2018/3/2/閲覧
12

(5) 韓国 韓国では、食品衛生法で規定された 29 品目の食品規格と … · 韓国産業技術試験院(Korea Testing Laboratory: KTL)...

Oct 01, 2020

Download

Documents

dariahiddleston
Welcome message from author
This document is posted to help you gain knowledge. Please leave a comment to let me know what you think about it! Share it to your friends and learn new things together.
Transcript
Page 1: (5) 韓国 韓国では、食品衛生法で規定された 29 品目の食品規格と … · 韓国産業技術試験院(Korea Testing Laboratory: KTL) 韓国機械電気電子試験研究院(

85

(5) 韓国

韓国では、食品衛生法で規定された 29 品目の食品規格と、農林畜産食品部(Ministry of Agriculture, Food and Rural Affairs:MAFRA)が存在する。一方で、国家技術標準院(Korean Agency for Technology and Standards:KATS)が策定する韓国産業規格(Korean Industrial Standards:KS)がある。62これは、日本の JIS 規格に該当する制度で、食品も対象となって

いる。

1) KS マーク

a. 概要(目的、内容)

KS マークとは、産業標準化法に基づき韓国標準協会が試験を経て産業標準として認定す

る製品・サービス・農水畜産物加工食品に与える法定任意認証マークである。製品の品質を

改善するだけでなく、生産工程の単純・統一化により産業標準化を確立することで経済的効

率を極大化し産業競争力向上や国家経済を発展させるために設けられた。従って KS マーク

は鉱工業製品の部品・成分・材質を統一・単純化して韓国産業標準として予め定めることで、

企業は標準化された製品を生産しているかを検査、認証する一種の品質保証書で、製品の品

質を評価し一定の水準に達した製品に与えられる。

図 48 KS マーク

出所)KATS(http://eng ksa.or kr/ksa english/5177/subview.do)2018/3/2/閲覧

b. 組織

KATS は、韓国知識経済部産業資源部に所属する機関で、韓国の代表的な国家標準化組織

として、韓国工業規格(KS)の開発、消費者製品の品質と安全性の管理。法定計量システム

の運用 最先端技術・製品等の技術評価・認証管理を行っている。

62 http://www.ilsijapan.org/ILSIJapan/COM/W2015/13 Korea.pdf 2018/3/2/閲覧

Page 2: (5) 韓国 韓国では、食品衛生法で規定された 29 品目の食品規格と … · 韓国産業技術試験院(Korea Testing Laboratory: KTL) 韓国機械電気電子試験研究院(

86

図 49 韓国国家技術標準院組織図

出所)(http://www kats.go kr/en/content.do?cmsid=398, 2018/3/15 閲覧)

c. 対象

あらゆる製品が対象となる。 KATS は、技術委員会を通じ、様々な官民の利害関係者からの意見を調整し、KS の開発

を監視しており、現在は ISO、IEC および他の国際標準開発者によって開発されたものを含

めて 2 万以上の KS がある 63。

63 https://www.standardsportal.org/usa_kr/e/standards_system/introduction.aspx(2018/3/15 閲覧)

Page 3: (5) 韓国 韓国では、食品衛生法で規定された 29 品目の食品規格と … · 韓国産業技術試験院(Korea Testing Laboratory: KTL) 韓国機械電気電子試験研究院(

87

2) KC マーク

a. 概要(目的、内容)

KC マーク(Korea Certification Mark) は韓国の国家統合認証マークである。韓国の電波

法・電気通信基本法、電気用品安全管理法、品質管理および工業製品安全管理法に基づきそ

れぞれの対象製品に対して適合性が検証された製品に表示されるマークである。 韓国政府は、重複認証の解消により企業の負担を軽減し、韓国の認証マークを世界的ブラ

ンドとして育成し発展させる事を目的として、2008 年 8 月 20 日に、国務総理を委員長とす

る国家標準審議会で、KC マークを導入し、13 個の法的な強制認証マークを KC マークに統

合する事を決定している。 2011 年 7 月にマークの統一が完了した。 韓国における放送機器および通信機器は国立電波研究所(RRA)管轄する KC マークは、

韓国へ輸出または製造・販売するには製品に表示しなければならない。64

図 50 KC マーク統一の図

出所)株式会社 UL Japan「韓国 KC/KCs マークの規制概要」

(http://www.seaj.or.jp/activity/documents/2015KC.pdf 2017/12/27 閲覧)

b. 組織

認証は技術標準院(Korean Agency for Technology and Standards: KATS)が指定する認証機

関が行う。電磁波を発する電気用品や放送通信機器の電磁波適合性(EMC)は、国立電波研

究院(RRA)が管轄している。

64 http://www.seaj.or.jp/activity/documents/2015KC.pdf 2018/3/2/閲覧

Page 4: (5) 韓国 韓国では、食品衛生法で規定された 29 品目の食品規格と … · 韓国産業技術試験院(Korea Testing Laboratory: KTL) 韓国機械電気電子試験研究院(

88

図 51 組織図

出所)株式会社 UL Japan「韓国 KC/KCs マークの規制概要」

(http://www.seaj.or.jp/activity/documents/2015KC.pdf 2017/12/27 閲覧)

1. 電気製品の主な認証機関 韓国産業技術試験院(Korea Testing Laboratory: KTL) 韓国機械電気電子試験研究院(Korea Testing Certification: KTC)等 2. 生活用品等の主な認証機関 韓国建設生活環境試験研究院(Korea Conformity Laboratories: KCL) FITI 試験研究院(Testing & Research Institute: FITI)等 65

図 52 管轄範囲図

出所)株式会社 UL Japan「韓国 KC/KCs マークの規制概要」

(http://www.seaj.or.jp/activity/documents/2015KC.pdf 2017/12/27 閲覧)

65 https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-011119 html 2018/3/2/閲覧

Page 5: (5) 韓国 韓国では、食品衛生法で規定された 29 品目の食品規格と … · 韓国産業技術試験院(Korea Testing Laboratory: KTL) 韓国機械電気電子試験研究院(

89

c. 対象

・ 測定・検査目的で使用される機器(オシロスコープ、ポータブル自動車診断器など) ・ 産業・科学用で使用される機器(製品の製造や生産工場の機器)

A. 産業用コンピュータ B. 産業用コンピュータで制御される産業用プラント設備 C. その他、産業・科学用で使用される機器

・ 特定用途に限定した場所で使用される機器(デジタル式運行記録計など) ・ ネットワークに影響の少ない機器 ・ 電気鉄道用機器類 ・ 高電圧設備及び付属機器類 ・ その他、適合登録機器;韓国指定ラボにて EMC 試験が必要な機器に準じる機器

3) KCs マーク、S マーク

a. 概要(目的、内容)

最低限の安全性と信頼性が確保された製品のみ製造、流通、使用されるようにすることで、

産業現場での災害を事前予防することを目的とした制度。 2013 年 3 月 1 日より、KOSHA(韓国産業安全保健公団)運営の安全認証制度により、KCs

マーク表示が必須になった。 この KOSHA 運営の認証制度には、強制と任意(Sマーク)の二つの制度が制定されてい

る。

図 53 KCs マーク、S マーク

出所)TÜV Rheinland ホームページ (https://www.tuv.com/jp/japan/about_us_jp/press_2/news_1/newscontentjp_159872 html, 2017/12/22 閲覧)

b. 組織

韓国産業安全衛生公団(KOSHA)は、韓国産業安全公団法(1987 年 5 月 30 日制定、法

律第 3931 号)の規定に従い、1987 年 12 月 9 日に設立された。本公団の目的は、労働災害

防止技術に関する研究、開発および普及、労働安全衛生技術の指導と研修の実施、および労

働者の安全衛生を促進し、事業者の災害防止施策を奨励するための、危険性のある機械の検

査である。66

66 https://www.jniosh.go.jp/icpro/jicosh-old/japanese/country/korea/organization/kosha/2000annual/2000 html#mokuteki 2018/3/2/閲覧

Page 6: (5) 韓国 韓国では、食品衛生法で規定された 29 品目の食品規格と … · 韓国産業技術試験院(Korea Testing Laboratory: KTL) 韓国機械電気電子試験研究院(
Page 7: (5) 韓国 韓国では、食品衛生法で規定された 29 品目の食品規格と … · 韓国産業技術試験院(Korea Testing Laboratory: KTL) 韓国機械電気電子試験研究院(

91

ACCSQ(ASEAN Consultative Committee on Standards and Quality, ASEAN 標準化・品質管

理諮問評議会)は、加盟国の国家標準化組織と規制当局により構成され、加盟国の基準、相

互承認、適合性評価を行う。下部組織である Working Group を通して取り組みを実施してい

る。

図 56 ACCSQ の組織体制

出所)(http://asean.org/?static_post=accsq-structure, 2017/3/1 閲覧)

Working Group は取組別に分かれた WG1-3 と、その他分野別に分かれた 8 つから構成さ

れる。WG1-3 では分野にかかわらず、WG1 が基準と MRAs(相互認証協定)、WG2 が適合

性評価、WG3 が法定計量を担当している。その他の分野別 Working Group は以下の通り。 JSC EEE:電気・電子機器の ASEAN 分野内 MRA に関する分野横断型委員会 ACC:ASEAN 化粧品委員会 PPWG:製薬商品に関する Working Group PFPWG:調理食品に関する Working Group APWG:自動車に関する Working Group TMHSPWG:伝統医学と健康補助食品に関する Working Group MDPWG:医療機器に関する Working Group RBPWG:ゴム製品に関する Working Group

1) 食品(ACCSQ-PFPWG)

a. 組織

食品部門に関連する規制の調和と集約については、主に ACCSQ-PFPWG(ACCSQ Prepared Foodstuff Products Working Group)が取り組んでおり、調理食品の規制制度に関する加盟国

間の透明性、MRAs(相互認証協定)、技術インフラ、食品安全基準などを取り扱う。 現在 ACCSQ-PFPWG の補助として、以下の 2 つのプロジェクトチームが設置されている。 ① 調理食品の食品安全基準のハーモナイゼーションに関するプロジェクトチーム:食糧

管理制度、パッケージ済み食品のラベリングの要件、食品衛生の原則と要件などを扱

う。

Page 8: (5) 韓国 韓国では、食品衛生法で規定された 29 品目の食品規格と … · 韓国産業技術試験院(Korea Testing Laboratory: KTL) 韓国機械電気電子試験研究院(

92

② 調理食品における MRA 進展に関するプロジェクトチーム:食品安全基準や適合性評

価、GMP と HACCP の監査・認証、栄養表示や必要記載事項を含むラベル、食品生産

物や飲食施設の規制などを扱う。

図 57 ASEAN における食品安全基準のハーモナイゼーションの意思決定過程

出所)Harmonisation of Food Standards in ASEAN

b. 近年の動向

ア)昨今の課題

ASEAN における課題として以下のようなものがあげられる。 規制の不均一:基準のハーモナイゼーションとそれによる統一市場形成の課題であ

った。そのため規制の集約は重要な問題である。 輸出国の法令順守コストを減らすこと 貿易量の増加 ASEAN 加盟国における NTMs(非貿易措置)の多様性に関する情報の欠落

一方で ASEAN 地域は食糧供給源であり、かつそれによって AEC(ASEAN 経済共同体)

への利益の供給源となりうるが、食料部門においては、食糧安全性の観点から高いレベルの

規制がかけられる傾向にあり、各国の規制・基準は多様である。それゆえ NTMs の発生率が

高い。

イ)SPS、TBT による貿易への影響

図 58 はマレーシアにおける SPS(衛星植物検疫措置)と TBT(貿易の技術的障害)の発

生回数を示している。SPS に関しては食品・食物・材料への特定物質の使用とラベル要件が、

TBT に関しては製品品質・性能要件とラベル要件とが主たる課題であることが考えられる。

また ASEAN 全体としてみると、食品に関する TBT の約 27%がラベル要件によるものであ

Page 9: (5) 韓国 韓国では、食品衛生法で規定された 29 品目の食品規格と … · 韓国産業技術試験院(Korea Testing Laboratory: KTL) 韓国機械電気電子試験研究院(
Page 10: (5) 韓国 韓国では、食品衛生法で規定された 29 品目の食品規格と … · 韓国産業技術試験院(Korea Testing Laboratory: KTL) 韓国機械電気電子試験研究院(

94

図 58 マレーシアにおける食品に関する SPS、TBT の発生回数

出所)http://www.unescap.org/sites/default/files/Regulatory%20Harmonization%20in%20ASEAN-Food%20sector.pdf(2018/3/15閲覧)

図 59 マレーシアにおける食品に関する TBT 措置の対応範囲

出所)http://www.unescap.org/sites/default/files/Regulatory%20Harmonization%20in%20ASEAN-Food%20sector.pdf(2018/3/15閲覧)

Page 11: (5) 韓国 韓国では、食品衛生法で規定された 29 品目の食品規格と … · 韓国産業技術試験院(Korea Testing Laboratory: KTL) 韓国機械電気電子試験研究院(

95

図 60 ASEAN における食品に関する TBT 措置に占めるラベル要件の割合

出所)http://www.unescap.org/sites/default/files/Regulatory%20Harmonization%20in%20ASEAN-Food%20sector.pdf(2018/3/15閲覧)

エ)栄養機能表示に関するハーモナイゼーション

AFBA(2014)によれば、栄養機能表示は ASEAN におけるもっとも大きな貿易障壁にな

っている。Bode(2017)によれば 1STK(Stock keeping unit)に対し、ラベルの更新に 6,000$かかっており、栄養機能表示のハーモナイゼーションの重要性がうかがえる。例えばマレーシ

アでは、遺伝子組換え食品などに関するラベル要件は多くの輸出国にとって障壁となって

いると考えられる。こうしたラベル更新の費用の低減に加え、ラベルの規定の不均一も減ら

していく必要がある。 これらの問題の原因として、食品と栄養機能表示に関して、ASEAN 各国が異なる国際基

準を参考にしているという点がある。具体的には、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、カン

ボジア、ラオスは Codex 基準に従っているのに対して、タイ、フィリピンは米国の基準に沿

っている。 また規制枠組みにおける義務基準・任意基準の各国間相違も問題である。マレーシアが

様々な分野で栄養機能表示を義務化しているのに対し、他の ASEAN 各国では、Codex 基準

に従い、義務化せず任意としている。 ほかにもビタミン、ミネラルの最小・最大許容量などにも相違がある。

Page 12: (5) 韓国 韓国では、食品衛生法で規定された 29 品目の食品規格と … · 韓国産業技術試験院(Korea Testing Laboratory: KTL) 韓国機械電気電子試験研究院(

96

図 61 各基準別のビタミン C 量

出所)http://www.unescap.org/sites/default/files/Regulatory%20Harmonization%20in%20ASEAN-Food%20sector.pdf(2018/3/15閲覧)

オ)今後の取組み

栄養機能表示の変更にかかる費用、栄養機能表示による価格・特化戦略、ASEAN で統一

されていない7成分に関するラベリングに関する適当な規制、などこれらの点について企

業レベルでの調査の実施が必要である。 基準と規制のハーモナイゼーションを進めるためには、ラベル要件のように NTMs にお

ける優先順位を明確化すること、ASEAN 内で大いに貿易可能な食品分野を特定することな

どが重要視されている。

(7) 各国の状況に関するまとめ

すべての国において、国家規格は国内または域内流通する製品の品質保持や消費者安全

の確保等を目的としており、対象国内での製品の販売・流通を実施する際には取得すること

が前提となっている。 国の標準化機関について、EU、英国、中国、韓国で共通していたのは、あらゆる分野、製

品において共通のプロセスで国家規格が策定されており、それらすべてに関してひとつの

標準化組織が担当して規格の作成や運用を管理している点である。一方で、米国は少し他国

とは異なり、食品関係については法律に基づき政府機関が所管しており、日本の JIS に該当

する ANSI が存在しているが、規格作成団体の認定を行い、規格作成団体が作成・提出する

規格を米国国家規格として指定する立場である。 特徴的な動きとしては、国家標準化機関が規格作成やコンサルティングなどのサービス

を、民間から有償で請け負っている例が見られた。英国で英国規格協会(BSI)が民間から

の委託を受けて規格作成サービスを提供していた。PAS は、BSI の豊富な経験を活かして

ISO 化にも対応している。ドイツ規格協会は、関連会社・子会社を通じて営利事業を展開し

ている。 また、近年特徴的な動きとして、中国では国家がかかわった規格としては初めて、

CHINAHACCP が GFSI ベンチマークと技術的に同等であると認められている。中国は他に

も CODEX に豆腐に関する規格を提案、地域規格化するなどの動きが見られ、国際規格化す

ることにより、国際的な存在感と影響力を打ち出していこうとしていると考えられる。