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1 生物薬剤学講座 児玉庸夫 4年次前期 専門科目群Ⅰ (選択科目) 2単位 薬剤疫学 1回目
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3年次後期 専門科目群Ⅰ (必修科目) 2単位 臨床薬理学 10回目biopharm/20080410-1.pdfける日本と米国の比較(2) 米国 日本 1998.7 肝機能検査の強化

Jul 18, 2020

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生物薬剤学講座

児玉庸夫

4年次前期 専門科目群Ⅰ(選択科目) 2単位

薬剤疫学1回目

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講義の内容(1)

• 第1回 薬剤疫学の役割

• 第2回 最小二乗法による回帰 (小テスト)

• 第3回 帰無仮説、信頼区間(小テスト)

• 第4回 パラメトリック検定とノンパラメトリック検定、二群間の平均値の差の検定法(小テスト)

• 第5回 二群間の平均値の差の検定法、χ2検定(小テスト)

• 第6回 多重比較検定法と多変量解析(小テスト)

• 第7回 検定のまとめと演習(中間テスト)

• 第8回 臨床試験のデザイン(1) (小テスト)

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講義の内容(2)

• 第9回 臨床試験のデザイン(2) (小テスト)

• 第10回 臨床試験のバイアス (小テスト)

• 第11回 臨床試験におけるリスク因子(1) (小テスト)

• 第12回 臨床試験におけるリスク因子(2) (小テスト)

• 第13回 生存時間解析法 (小テスト)

• 第14回 演習

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薬剤疫学と薬剤師国家試験の関係(1)

医療薬学

(5.薬剤師業務)

• 解析・評価(医5I-b)

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薬剤疫学と薬剤師国家試験の関係(2)

衛生薬学

(1.健康)

• 疫学(衛1B-c)

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薬剤疫学と薬剤師国家試験の関係(3)

薬事関係法規及び薬事関係制度

(2.制度)

• 治験の取扱い(法2C-c)

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第1回 薬剤疫学の役割

• 医薬品の有効性及び安全性の評価における薬剤疫学の役割、及び生物統計の手法によりこれらの評価が行われることを説明できる。

• 薬剤師国家試験

医5I-b、解析・評価

衛1B-c、疫学

法2C-c、治験の取扱い

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疫学(Epidemiology)の種類

•臨床疫学

•環境疫学

•遺伝疫学

•分子疫学

•産業疫学

•薬剤疫学

•血清疫学

•理論疫学

•がんの疫学

•感染症の疫学

•循環器疾患の疫学

•生殖疫学

•難病の疫学

•長寿の疫学

•健康増進の疫学 など

斉藤

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製造販売前・市販後を通じた医薬品評価製造販売前

承認審査

有効性と安全性の基本的評価

毒性試験薬理試験薬物動態試験第Ⅰ相試験第Ⅱ相試験第Ⅲ相試験

再審査

使用成績調査特定使用成績調査製造販売後臨床試験

臨床的特性の明確化

再評価 医療上の評価の確立(薬剤疫学的評価?)

市販直後調査

副作用・感染症報告(企業+医療機関・薬局)(随時)

有効性・安全性

安全性

市販後

安全性定期報告(再審査期間中)

通常6年後

感染症定期報告

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薬剤疫学の事例アスピリンとライ症候群

斉藤

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ライ症候群

• 通常、インフルエンザや水痘といった急性熱性疾患に引き続いて起こる年少小児の疾患で、感染の発症後1週間以内に生じる反復性の嘔吐があり、1両日中に嘔吐が収まるか、さもなくば、脳内圧亢進を伴う昏睡に陥るのが特徴である

• 血清トランスアミラーゼが上昇している

• 脳浮腫とその結果としての脳陥入のために死亡することがある

ステッドマン医学大辞典斉藤

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アスピリンの重要な基本的注意

• サリチル酸系製剤の使用実態は我が国と異なるものの、米国においてサリチル酸系製剤とライ症候群との関連性を示す疫学調査報告があるので、本剤を15歳未満の水痘、イン

フルエンザの患者に投与しないことを原則とするが、やむを得ず投与する場合には慎重に投与し、投与後の患者の状態を十分に観察すること(アスピリン製剤の使用上の注意)

斉藤

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薬剤疫学の事例アンプル入り風邪薬による死亡

斉藤

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アンプル入り風邪薬による死亡(1)ー経緯ー

• 1965.2 日本でアンプル入り風邪薬が原因と

思われるショック死事故が報道され、大きな社会問題となった

• 調査の結果、同様の死亡事故は数年前から発生しており、1959-1965年で38名が死亡し

ていた

斉藤

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アンプル入り風邪薬とは?

• 解熱鎮痛薬成分であるアミノピリンやスルピリンを主成分とし、これにビタミン剤等を加えて水溶液としてアンプルに充填したもの

• 他の剤形に比較し吸収が速く、毒性の発現が激しい(中央薬事審議会答申)

• 主成分であるアミノピリンやスルピリンの含有量が、1回分の常用量を超える製品も市販されていた

斉藤

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アンプル入り風邪薬による死亡(2)ー対策ー

• 1964.10 ショック死事故が報道される前に、アンプル型容器入り内服液の用量は、1回1容器を単位として服用できる範囲にするよう、すでに用法は限定されていた

• 1965.2 ショック死の報道。直後、厚生省は製造元に対して、広告の自粛及び製品の再試験(主成分の含有量の確認)を指示し、含有量が常用量を超えているものの販売を停止した

• 1965.3 厚生省は全製品の回収を要請したが、業界が回収に伴う経済的損失の補填を要求した(販売の継続は可能な状況であった)

• 一部の薬局では在庫品の販売が継続され、ショック死はなくならなかった

• 1965.5 厚生省はアンプル入り風邪薬(アンプル入り解熱鎮痛剤)の製造販売を禁止した

斉藤

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薬剤疫学の事例筋肉注射による

大腿四頭筋短縮症

斉藤

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大腿四頭筋短縮症(1)ー経緯ー

• 1973年 山梨県で大腿四頭筋短縮症患者の多発が社会問題化した

• その後、北海道、福島、名古屋等でも発生報告が相次ぎ、地域病の様相を呈してきた

• 「乳児23人が奇病ー歩行困難・風邪の注射が原因か」という報道

• 厚生省の調査(1975.12):

重症1,552名、軽症1,177名

斉藤

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筋短縮症・筋拘縮症とは?

• 注射の際の物理的刺激と注射剤そのものによる筋肉組織の破壊によって、外形の変化や運動機能の障害がおこる

• 筋肉が伸縮性を失い短くなった状態を示す「筋短縮症」よりは、筋肉が短くなった結果関節が可動性を失い、機能障害を生じた状態を示す「筋拘縮症」の病名が用いられる

• 注射の部位により、大腿四頭筋短縮症(太もも)、三角筋短縮症(肩)、上腕三頭筋短縮症(腕)、殿筋短縮症(尻)等の種類がある

• 子供に抗生物質や解熱剤の注射を大量・頻回に行うことにより発症

斉藤

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大腿四頭筋短縮症(2)ー原因ー

• 風邪による発熱で小児科を受診すると、抗生物質や解熱鎮痛剤を小児の上腕、大腿部、臀部等に注射していた

• 点滴技術が一般化されるまでは、小児に対する水分補給目的で、50-100mLの大量皮下注射あるいは持続大量皮下注射が行われた

• 当初は、関係学会等においても注射剤が原因であるとは認めていない

斉藤

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大腿四頭筋短縮症(3)ー対応ー

• 1976.2 日本小児科学会が、できる限り小児には注射を避けることを提言した

①注射は親の要求でなく、医師の判断により行う

②風邪(症候群)に対する注射は避ける

③経口投与で十分であれば注射を避ける

④抗生物質と他剤との混合注射は行わない

⑤皮下への大量注射は行わない

• 組織への物理的、薬理的な刺激の少ない注射剤の開発が必要である

斉藤

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薬剤疫学の事例トリグリタゾンの販売中止

斉藤

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トリグリタゾンの安全性確保対策における日本と米国の比較(1)

米国 日本

1995.9 承認

1997.1 承認

1997.3 発売(レズリン) 発売(ノスカール)

1997.12 肝機能検査の義務化

発売6カ月目まで毎月 1回/月

1年目まで1回/2ヶ月

以降定期的

斉藤

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トリグリタゾンの安全性確保対策における日本と米国の比較(2)

米国 日本

1998.7 肝機能検査の強化

発売8カ月目まで毎月

1年目まで1回/2ヶ月

以降定期的

1999.6 肝機能検査の強化

1回/月

2000.3 自主的に販売中止

斉藤

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トリグリタゾンの安全性確保対策における問題点(1)

• 日本と米国でほぼ同時に承認され、同時に発売された

• 開発段階で「肝機能障害」の発現は既知の副作用であったが、市販後に日米ともに死亡が発生

• 肝機能検査の強化が実施され、日本では毎月1回の実施が義務化

• 米国では、日本よりゆるい義務化のため(?)、その後も死亡症例発生

• 再度、肝機能検査が強化されたが、その後も死亡が続き70例以上となったところで日米で自主的に販売中止となった

斉藤

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トリグリタゾンの安全性確保対策における問題点(2)

• 米国における適正使用上の問題点

①医師が安全性情報に関心を示さない傾向

②新医薬品について理解不十分で安易に使用される傾向

③行政責任と医療責任が日本よりも明確

• 米国における安全対策上の問題点

①医療保険制度の不備による検査の不徹底

②新医薬品が長期投与(2~3ヵ月)される

斉藤

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トリグリタゾンの安全性確保対策における問題点(3)

• 日本では薬物有害反応(副作用)に対する対応(肝機能検査の強化)がなされているにもかかわらず、販売中止に至った

• 医療制度の異なる他国(米国)における措置が日本でも実施され、結果的に患者が恩恵を受けられない事態が生じた

• 製薬企業による適正使用の確保は努力不足ではないか

• 日本で販売中止する必要性はあったのか

斉藤

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薬剤疫学(Pharmacoepidemiology)の役割市販後における医薬品の使用

安全性上の問題が発現する可能性がある疾患の治癒、軽快、不変、もしくは悪化の状況が正確に把

握できない↓

どのように使用すれば、医薬品の有効性および安全性が確保できるかの情報が必要となる

薬剤疫学に基づく臨床研究を実施する使用実態を解析し、有効性および安全性を評価する(観察的研究)臨床試験において有効性および安全性を評価する(実験的研究)

医薬品の適正使用のための情報が得られる↓

薬剤疫学は、ヒトの集団における医薬品の使用と、その効果や影響を研究する学問である

薬疫な薬疫歩

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臨床研究のデザイン・目的による分類

実験的研究 観察的研究

前向き研究

臨床試験(探索・検証) コホート研究

(要因・対照研究)

(探索・検証)

後向き研究

ケース・コントロール研究(症例・対照研究)

(記述・探索)

断面研究

断面研究(記述・探索)

薬8

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データ

• データとは、実験や観察などによって結果が記録されたものをいう

• データは、質的データと数量データ(計量データ)に分類される

• 質的データとは、人種による分類(白人、黒人、有色人)や治療効果による分類(有効、不変、悪化)のように、データが文字で与えられるものである

• 数量データ(計量データ)とは、体重や体温のように、データが数量で表されるものである

基医統

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バサ統薬医統

日常におけるデータのばらつき(1)ばらつきは標本データの散布度を表し、要因効果による分散と偶然に生じる誤差分散の両者が原因である

今年4月の雨日の数は平年並みか?・今年4月の雨日の概数を思い浮かべる

↓過去の4月の雨日の割合を思い起こす

↓両者を比較して、今年の雨日の数が異常かどうか判断する

今年、過去の4月の雨日の数

0 → 30日 0 → 30日

“ばらつき” とは

ばらつく ばらつかない

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バサ統薬医統

日常におけるデータのばらつき(2)ばらつきは標本データの散布度を表し、要因効果による分散と偶然に生じる誤差分散の両者が原因である

雨日の数と野菜の価格は関係あるか?・今年4月の雨日の数と野菜の価格を調査する

↓過去の4月の雨日の数と野菜の価格を調査する

↓両者を比較して、雨日の数と野菜の価格が関係あるかどうか判断する雨日の数

野菜の価格

0 → 30日 0 → 30日

“ばらつき” とは

ばらつく ばらつかない

雨日の数と野菜の価格の関係

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母集団調べる対象となる有限または無限の固体の全集合

標本母集団を調べるため、取り出した個体の集合

抽 出

統計的推測

事例1 高血圧症患者(母集団)における新薬の有効率は、従来の治療薬の有効率50%と違うと言えるか(2)

ー標本と母集団ー

薬8基医統バサ統ま臨統

新薬の標本の大きさ10名

新薬の母集団の大きさ無限大

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母集団全ての本態性高血圧患者

標本全ての本態性高血圧患者のうちの100人

抽 出

統計的推測

薬8基医統

100人の患者の測定結果は、母集団に外挿可能か?→100人の患者特性にバイアス(偏り)はないか。つまり、100人の患者特性は母集団の特性を反映しているか

本態性高血圧患者の血圧値の分布の推測に潜むバイアス(偏り)(2)

ー外挿可能性(外的妥当性)(1)ー

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母数と統計量

• 数量データは、データの真中を表す値(代表値)と、その散らばり具合を示す値(散布度)で表され、これらをデータの特性値という

• 母集団の特性値は母数(パラメータ)といい、μ(ミュー)、σ(シグマ)などのギリシャ文字で表される(母平均:μ、母分散:σ2 、母標準偏差:σ)

• 標本の特性値は統計量といい、標本平均や標本分散などがある。母数(パラメータ)に対応する値を標本から作る場合、この統計量をとくに母数の推定値という(標本平均は母平均μの推定値、標本分散は母分散σ2の推定値という)

基医統

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生物統計(差の検定)(1)

• 検定とは、例えば、2群のデータが異なるとき、群間に差がないという仮説(帰無仮説)と、群間に差があるという仮説(対立仮説)をおき、確率的にどちらが妥当か判定する手段である。

• 検定の手順は、 2群のデータに差がないという帰無仮説が確率論的に妥当か判断して行う

• 一般に、自分が主張したいことを対立仮説に設定し、自分が主張したくないことを帰無仮説に設定する

薬8バ統生応ま臨統

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統計量(標本の特性値)

• 確率変数(random variable)

• 範囲(range)

• 平均値(mean value)

• 分散(variance)

• 自由度(degrees of freedom)

• 標準偏差(SD、standard deviation)

• 標準誤差(SE、standard error)• 変動係数(CV、coefficient of variation)

• 正規分布(normal distribution)

• t分布

• 中央値(median)

• 検定統計量(test statistic)

薬8基医統ハーバ薬医統

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生物統計(群間の差の検定)ー2群の比較ー

対応するデータがある

対応のあるt検定(Two group t-test:Paired)

対応するデータがない

対応のないt検定( Two group t-test:Unpaired )

対応するデータがある

ウイルコクソン符号付順位検定(Wilcoxon signed-rank test)

対応するデータがない

マン・ホイットニー検定(Mann-Whitney’s U Test)

ウイルコクソン順位和検定(Wilcoxon rank sum test)

データの分布型を特定しない

(ノンパラメトリック検定法)

データが正規分布していると想定する

(パラメトリック検定法)

Macマま臨統ハーバ

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生物統計(群間の差の検定)ー多群の比較ー

全部の群について、平均値の差をまとめて検定する

分散分析法

(Analysis of variance、ANOVA)

全部の群のうち、異なる2つの群の平均値の差を検定する

多重比較検定

Dunnett法(ダネット法)

Tukey法(テューキー法)

全部の群について、中央値の差をまとめて検定する

クラスカル・ワーリス検定

(Kruskal-Wallis test)

各群のデータが正規分布していないか、分散が等しいと想定できない(ノンパラメトリック検定法)

各群のデータが正規分布していて、分散が等しいと想定する(パラメトリック検定法)

薬8薬医統Macマ

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単回帰分析(9)

データをグラフにプロットすると、点はほぼ直線上にある

↓b1=0.969、b0=-0.0005

↓回帰直線 y=-0.0005+0.969x

物質Aの濃度により吸光度を説明することができる

薬8薬医統基医統

物質Aの濃度(mg/L)

あてはめた回帰直線

0.2

0.4

0.6

0.60.40.2

吸光度

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χ2検定(1)

• χ2検定は、副作用(薬物有害反応)と医薬品の関係、食中毒と食品の関係のような、結果と要因で示されるデータ(出現度数)の検定(結果は要因による影響を受けるか)に適用することができる

• χ2検定では、 結果を2つの要因別(処理など)に集計した2×2分割表を作成し、結果に対する要因の出現確率が異なるかどうかを検定する

• 結果別の出現度数の合計を全体数で割ってそれぞれの結果の割合(出現率)を算出し、この出現率と要因別の出現度数の合計を掛けて、 2×2分割表の各マス目(セル)の期待度数を推定し、実際の値(出現度数)との差について検定する

薬8Macマ薬の統ハーバ

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χ2検定(3)

生存 死亡 合計

治療法A a 9 b 17 a+b 26

治療法B c 7 d 27 c+d 34

合計 a+c 16 b+d 44 a+b+c+d 60

事例1 ある疾患の患者を無作為に2群に分け、2つの治療法(A、B)で治療効果を検討したところ、表のような結果(単位は人)が得られた。生存率は治療法により異なるといえるか。なお、研究者は、生存率は治療法により異なると考えている

薬8Macマハーバ

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χ2検定(2)ー2×2分割表(3)ー

B(+) B(-) 合計

A(+) a (期待度数a’) b (期待度数b’) a+b

A(-) c (期待度数c’) d (期待度数d’) c+d

合計 a+c b+d a+b+c+d

dcbacaca+++

+=+ )((%))の割合(dcba

dbdb+++

+=+ )((%))( の割合薬8Macマ薬の統ハーバ

まず、全体(a+b+c+d)に対する結果別の出現度数の合計(a+cもしくはb+d)の割合(出現率)を算出する

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コホート研究(要因・対照研究)とケース・コントロール研究(症例・対照研究)

実験的研究 観察的研究

前向き研究

臨床試験(探索・検証) コホート研究

(要因・対照研究)

(探索・検証)

後向き研究

ケース・コントロール研究

(症例・対照研究)

(記述・探索)

断面研究

断面研究(記述・探索)

薬8

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コホート研究(要因・対照研究)とケース・コントロール研究(症例・対照研究)

母集団

(症例数)

情報に対するアプローチの

方向

指標

コホート研究(要因・対照研究

決まっている 服用の有無→副作用の有無

相対危険度

相対リスク

(Relative Risk)

ケース・コントロール研究(症例・対照研究)

決まっていない

副作用有無→服用の有無

オッズ比

(Odds Ratio)

斉藤

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相対危険度(相対リスク)とオッズ比

• 相対危険度(相対リスク)(RR、relative risk)は、危険因子(リスク因子)に曝露され罹患する確率(罹患率)を、危険因子(リスク因子)に曝露されず罹患する確率(罹患率)で割ることで算出される

曝露群の疾病の罹患率/非曝露群の疾病の罹患率• 相対危険度(相対リスク)は、危険因子(リスク因子)が疾患

に影響を及ぼすかどうか考察する際に重要である• 相対危険度(相対リスク)は、まれな疾患の場合にはオッズ

比(OR、odds ratio)で近似される• オッズ比(OR、odds ratio)は、罹患したグループのオッズ

(危険因子(リスク因子)に曝露した数/危険因子(リスク因子)に曝露しなかった数)を、罹患しなかったグループのオッズ(危険因子(リスク因子)に曝露した数/危険因子(リスク因子)に曝露しなかった数)で割ることで算出される

• オッズ比は、疾患が危険因子(リスク因子)による影響を受けたか考察する際に重要である

薬8

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相対危険度・相対リスク(RR)とオッズ比(OR)(1)

疾病あり(ケース群)

疾病なし(コントロール群)

合計

あり(曝露) a b

d

オッズ a/c b/d

a+b

なし(非曝露) c c+d要因

コホート研究

結果(疾病)

ケース・コントロール研究

薬疫な

オッズ比(OR)a/c÷b/d=ad/bc

相対危険度・相対リスク(RR)a/(a+b)÷c/(c+d)=a(c+d)/c(a+b)

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相対危険度・相対リスク(RR)とオッズ比(OR)(2)

疾病あり(ケース群)

疾病なし(コントロール群)

合計

あり(曝露) a b

d

オッズ a/c b/d

a+b

なし(非曝露) c c+d要因

コホート研究

結果(疾病)

ケース・コントロール研究

薬疫な

オッズ比(OR)a/c÷b/d=ad/bc

相対危険度・相対リスク(RR)a/(a+b)÷c/(c+d)=a(c+d)/c(a+b)まれな副作用の場合は、a+b=b、c+d=dのため、(RR)=a/b÷c/d=ad/bcとなり、オッズ比(OR)で近似される

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外国事例1 四肢奇形はサリドマイドによる影響であるとのレンツ報告(4)

事象あり奇形児出産

事象なし正常児出産

曝露ありサリドマイド服用

a

90

b

曝露なしサリドマイド非服用

c

22

d

186

オッズ 90/22 2/186

オッズ比(OR)a/c÷b/d=ad/bc → 90/22÷2/186=380.45

(95%信頼区間は不明)斉藤

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国内事例1 妊娠初期の抗てんかん薬の服用と催奇形性(4)

事象あり奇形児出産

事象なし正常児出産

不明 合計

曝露あり抗てんかん薬服用

a

57

b

420

b

180

d

45

a+b

657

曝露なし抗てんかん薬非服用

c

d

114

c+d

162

相対危険度・相対リスク(RR) a/(a+b)÷c/(c+d)=a(c+d)/c(a+b)→ 57/(57+420+180)÷3/(3+114+45)=4.7(倍)(95%信頼区間は不明)

斉藤薬疫な

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生存時間データ(1)• 生存時間とは、基準となる時点(手術を行った時点)

からある事象(イベント)が発生するまでの時間をいい、このような特徴をもつデータは生存時間データとよばれる

• 事象(イベント)の例として、「治療効果が認められた時間」、「疾患が発症する

までの時間」、「疾患が治癒するまでの時間」、「疾患治癒後の再発までの時間」、「出生から死亡までの時間」、「臓器移植から不全に至るまでの時間」、「癌治療による寛解後、再発するまでの時間」 など

ある結果(アウトカム)が起きたことをいう薬8

薬医統基医統ハーバ

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生存時間データ(3)-事象と打ち切りの事例(1)-

時 間(日)

120

患者4

患者1

患者3

患者2

観察期間患者組み入れ期間

9060300

●は事象としての死亡を、○は打ち切りを表す

8日 20日

13日 80日

20日116日

120日

薬8

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生存時間解析(4)ーKaplan-Meier曲線(1)-

Kaplan-Meier法で算出した各時点の生存確率を基に、生存確率曲線(Kaplan-Meier曲線)を作成する

時 間(月)

0 2 4 6 8

1.0

0.8

0.6

0.4

0.2

0.0

生存確率

打ち切り例あり

薬8

事例1

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ログランク検定(4)

第1群 3.1、6.8*、9.0、9.0、11.3、16.2

第2群 8.7、9.0、10.1*、12.1*、18.7、23.1*

事例3 2群間の生存期間(月)の分布に差があるか。(*は打ち切りを示す)

なお、研究者は2群間で差があると考えているが、正しいか

薬8薬医統基医統

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薬剤疫学(Pharmacoepidemiology)の役割

市販後における医薬品の使用↓

薬剤疫学は、ヒトの集団における医薬品の使用と、その効果や影響を研究する学問

である

薬疫な薬疫歩