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156 確率変数には飛び飛びの値をとる“りさんがた 散型のもの”と , れんぞくがた 続型のものとがあるんだよ。前章まではすべて離散型の確率変数ばかりを勉強してき たけれど, 今回は連続型の確率変数について勉強していこう ! 3.連続型の確率変数と確率密度に慣れよう ! 確率密度の意味をマスターしよう ! 離散型の確率分布 1 () に示すように, 円周上に 6 つの目盛り π , 2 π , …… , 2 π がつけてあり, この 6 点を同様に 確からしく針がカチカチ…と指す 場合を考える。これらの目盛りを 確率変数 X とおくと X π , 2 π , …… , 2 π となる確率は, 1 ( ) のようにすべて 1 となる。 これはいいね ? 連続型の確率分布 , 2 ( ) に示すように, 同じ 円周に対して針が自由にクルクル と回って, 無作為にある 1 点に止ま まず, 離散型と連続型の確率分布 の違いを例で示すよ。 ( ) ( ) ( ) 確率分布 る場合を考える。このとき, 針が X x ( 0 x 2 π ) の点を指す確率を 計算できる ? そう。今回は円周上には連続的に無限に点が並んでいる ので, X x となる確率は x の値に関わらず常に 0 ( 1 ) となるんだね。 1 () 離散型確率分布の例 ( ) 2 ( ) 連続型確率分布の例 3 3 3 3 6 確率 P X X 2 π 0 1 6 π 3 π 2 π 3 4 π 3 5 π 3 π 3 π 2 π 5 π 3 2 π 3 4 π 3 カチ, カチ, …と 針が動く ! 離散型 確率変数 ( ) 確率密度 ( ) X 0 ( 2 π ) x X x クルクル …と 針が動く ! x 2 π 0 f ( x ) f (x) 1 2 π 1 2 π f (x) 0 f (x) 0 連続型 確率変数 でも, x 0 x π の範囲に入る確率は, 60˚ 1 とすぐに求まるだろ ? 一般に連続型の確率計算では, 確率変数 X a X b の範囲 3 3 に入る 3 360 ˚ 6
14

3.連続型の確率変数と確率密度に慣れよう...156 確率変数には飛び飛びの値をとる“離 りさんがた 散型のもの”と, “連 れんぞくがた

Aug 20, 2020

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Page 1: 3.連続型の確率変数と確率密度に慣れよう...156 確率変数には飛び飛びの値をとる“離 りさんがた 散型のもの”と, “連 れんぞくがた

156

 確率変数には飛び飛びの値をとる“離り さ ん が た

散型のもの”と , “連れんぞくがた

続型のもの”

とがあるんだよ。前章まではすべて離散型の確率変数ばかりを勉強してき

たけれど , 今回は連続型の確率変数について勉強していこう !

3.連続型の確率変数と確率密度に慣れよう !

● 確率密度の意味をマスターしよう !

離散型の確率分布

図 1 (ⅰ) に示すように , 円周上に

6 つの目盛り π , 2 π , …… , 2π

がつけてあり, この 6 点を同様に

確からしく針がカチカチ…と指す

場合を考える。これらの目盛りを

確率変数 X とおくと X = π , 2 π ,

…… , 2π となる確率は, 図 1(ⅱ)

のようにすべて 1 となる。

これはいいね ?

連続型の確率分布

次 , 図 2 (ⅰ) に示すように , 同じ

円周に対して針が自由にクルクル

と回って, 無作為にある 1 点に止ま

 まず , 離散型と連続型の確率分布

の違いを例で示すよ。

(Ⅰ)

(Ⅱ)

(ⅱ) 確率分布

る場合を考える。このとき, 針が X = x (0 ≦ x < 2π ) の点を指す確率を

計算できる ? そう。今回は円周上には連続的に無限に点が並んでいる

ので, X = x となる確率は x の値に関わらず常に 0 ( = 1 ) となるんだね。∞

図 1 (Ⅰ) 離散型確率分布の例

(ⅰ)

図 2 (Ⅱ) 連続型確率分布の例

3 3

3 3

6

確率 P

X

X = 2π

0

16

π3π

2π3

4π3

5π3

π3

π

2π5π3

2π3

4π3

カチ , カチ , …と

針が動く ! 離散型

確率変数

(ⅱ) 確率密度(ⅰ)X = 0 (2π )

xX = x

クルクル …と

針が動く !

x2π0

f (x )f (x)= 1

2π12π

f (x)=0f (x)=0

連続型

確率変数

 でも, x が 0 ≦ x ≦ π の範囲に入る確率は, 60˚ = 1 とすぐに求まるだろ

う ? 一般に連続型の確率計算では, 確率変数 X が a ≦ X ≦ b の範囲3 3

に入る

3 360 ˚ 6

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講義

講義

講義

123

平面ベクトル

空間ベクトル

数列

講義

4確率分布と統計的推測

確率 P(a ≦ X ≦ b) を, P(a ≦ X ≦ b) = ∫ f (x)dx の定積分3 3 3

の形で表すんだよ。

この被積分関数 f (x) のことを“確かくりつみつどかんすう

率密度関数”または“確かくりつみつど

率密度”と呼ぶ。

 図 2 の例では, 確率変数 X が, 0 ≦ X < 2π の範囲に入る確率が全確率 1 で

あり, また, この範囲内のどの点に対しても針は同様に確からしく指すはずだ

から, この確率密度 f (x) は f (x) = c ( 定数 ) と定数関数になるはずだ。よって,

 ∫ f (x) dx = c[x] = 2π c = 1 ( 全確率 ) となるね。

 ∴ c = 1 より, この確率密度 f (x) は f (x) = 1 (0 ≦ x < 2π ) となる。当然,

x<0, 2π ≦ x のとき f (x) = 0 だね。( 図 2 (ⅱ) を参照してくれ。)

それでは, 連続型確率変数と確率密度について, まとめておこう。

x

b

a

連続型確率変数 X が a ≦ X ≦ b となる確率 P (a ≦ X ≦ b ) は次式で

表される。

P(a ≦ X ≦ b ) =∫ f (x )dx (a < b )

このような関数 f (x ) が存在する

と き , f (x ) を“確率密度” と 呼

び , 確 率 変 数 X は 確 率 密 度 f (x )の連続型確率分布に従うという。

ま た, y = f (x ) の グ ラ フ を X の

分ぶんぷきょくせん

布曲線と呼ぶ。

この面積 ∫ f (x )dx

が確率 P (a ≦ X ≦ b)を表す !

b

a

ba

連続型確率変数

確率密度関数

y = f(x)

a

b

2π 2π

00

2πc

注意   連続型確率分布では , X = x のように表す場合がよくある。この

場合 , 「確率変数3 3

X が , ある値3

x である」というように考えるといいよ。

ただし , 確率密度 f (x ) では , x は変数3 3

として扱われる。このような独特

の表現法にも慣れていくことだね。

ここに等号をつけてもかまわない。どうせ X = 2π となる確率は 0 だからね。

連続型確率変数 X と確率密度 f (x )

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連続型確率分布の 4 つの性質を下に示すよ。

(ⅰ) P(X = a ) = 0  (ⅱ) f (x ) ≧ 0  (ⅲ) ∫ f (x ) dx = 1 ( 全確率 )

(ⅳ) ∫ f (x ) dx = P(a ≦ X ≦ b) = P(a < X ≦ b)

= P(a ≦ X < b) = P(a < X < b)

−∞

x = a となる

確率は 0

b

a

● 連続型確率分布の期待値と分散を押さえよう ! 確 率 密 度 f ( x ) に 従 う 確 率 変 数 X の期待値 (平均 ) m = E ( X ) と分散

σ 2 = V ( X ) と標準偏差 σ = D ( X ) の定義式と計算式を次に示す。

“シグマの 2 乗”と読む “シグマ”と読む

確率密度 f (x) に従う連続型確率変数 X の

期待値, 分散, 標準偏差は次のようになる。

(1) 期待値 m = E (X ) =∫ x f (x ) dx

(2) 分散 σ 2 = V (X ) =∫ (x − m ) 2f (x ) dx

= E (X 2) − {E (X )} 2

(3) 標準偏差 σ = D (X ) = √V (X )

−∞

−∞ m

期待値

確率密度

y = f(x)

xm −σ m +σ

離散型確率変数 X の場合のもの , すなわち ,

(1) 期待値 m = E (X ) = Σx kp k (2) 分散 σ 2 = V (X ) = Σ (x k − m) 2p k

(3) 標準偏差 σ = D (X ) = √V (X ) と対比して覚えよう !

期待値 m , 分散σ 2, 標準偏差 σ を求める場合 , 離散型3 3 3

のものの Σ3

計算3 3

が , 連3

続型3 3

のものでは積分計算3 3 3 3

に変わっていることに注意しよう。

k = 1

n

k = 1

n

X = a, X = b となる

確率は 0 なので, 等号はあってもなくて

も同じになる。

連続型確率分布の性質

X の期待値・分散・標準偏差

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講義

講義

講義

123

平面ベクトル

空間ベクトル

数列

講義

4確率分布と統計的推測

Y = aX + b (a , b:実数定数 ) により , Y を新たに定義すると ,

(1) 期待値 E (Y) = E (aX + b ) = aE (X ) + b

(2) 分散 V (Y) = V (aX + b ) = a 2V (X )(3) 標準偏差 D (Y) = √V (Y) = √a 2V (X ) = a √V (X ) = a D (X )

離散型のときと同様に連続型確率変数においても , E (X ) =∫ x f (x )dx と

定義すると , E (X 2) =∫ x 2 f (x )dx などとなるのは大丈夫だね。これから

(2) の分散 σ 2 も次のように変形できるんだね。

(2) σ 2 = V (X ) =∫ (x − m) 2 f (x )dx =∫ (x 2 − 2mx + m 2) f (x )dx

=∫ x 2 f (x )dx − 2m∫ x f (x )dx + m 2∫ f (x )dx

= E (X 2) − 2m 2 + m 2 = E (X 2) − m 2

= E (X 2) − {E (X )} 2 が導けた !さらに , 確率変数 X を使って , 新たな確率変数 Y を Y = aX + b (a , b:実数

定数 ) と定義したとき , Y の期待値 E (Y) , 分散 V (Y) と標準偏差 D (Y) は

次のようになる。この結果も離散型のときのものと同様だから覚えやすい

はずだ。

−∞∞

−∞

−∞

−∞

−∞

E (X 2) m = E (X ) 1 ( 性質 (ⅲ) より )

{E (X )} 2

離散型の σ 2 と同じ式だね。

(1) E(Y) = E(aX + b) =∫ (ax + b) f (x)dx = a ∫ x f (x)dx + b ∫ f (x)dx

= aE (X ) + b となる。また ,

(2) V (Y) = V (aX + b ) =∫ {(ax + b ) − (am + b )} 2 f (x )dx

= a 2∫ (x − m) 2 f (x )dx = a 2V (X ) となるのも大丈夫 ?

−∞

−∞

−∞

E (X ) 1 ( 全確率 )

Y Y の期待値 E (Y)∞

−∞

分散の定義式∞

−∞

−∞

−∞

Y の期待値・分散・標準偏差

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解答&解説

CHECK1難易度 ★★ CHECK2 CHECK3絶対暗記問題 56

確率密度 f (x )が,f (x )={ax 2 (0 ≦ x ≦ √3,a は正の定数 ) 0 (x < 0,√3 < x )      

で定義されている。

このとき, 次の各問いに答えよ。

(1) a の値を求めよ。

(2) 確率密度 f (x ) に従う確率変数 X の期待値 m = E (X ) , 分散 σ 2 = V (X ) , 標準偏差 σ = D (X ) を求めよ。

(3) X を使って新たな確率変数 Y を Y = 4X − √3 で定義するとき,

Y の期待値 E (Y), 分散 V (Y),標準偏差 D (Y) を求めよ。

     確率密度 f (x ) は , x<0 または √3 <x のとき 0 より , 0 ≦ x ≦ √3 で

のみ定義されていると考えればいい。よって, (1)では , ∫0

√3f (x )dx = 1 (全確率)

から, a の値を求めよう。(2)では , 定義式に従って , E (X ) , V (X ) , D (X ) を求

めればいい。(3)では , Y = 4X−√3 より, E (Y) = 4E (X )−√3 , V (Y) = 4 2V (X ) ,

D (Y) = √V(Y) となるんだね。正確に迅速に計算できるように練習しよう。

ヒント!

連続型確率分布の期待値・分散・標準偏差 (Ⅰ)

確率密度 f (x ) = { ax 2 (0 ≦ x ≦ √3 ) 0 (x < 0,√3 < x )

(1) 確率密度の性質より,

∫−∞

f (x )dx = 1 (全確率 ) よって,

∫0

√3ax 2dx = a [ 1 3 x 3]√3

0=

a 3 (3√3 −0) = √3 a = 1 (全確率 )

∴a =1 √3 となる。…………………………………………………………………(答)

∫−∞

0f (x )dx +∫

0

√3f (x )dx +∫

√3

f (x )dx

00

0 x

y

f (x)=0 f (x)=0

f (x )=ax 2

∫0

√3f (x )dx = 1

√3

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講義

講義

講義

123

平面ベクトル

空間ベクトル

数列

講義

4確率分布と統計的推測

(2) f (x ) に従う確率変数 X の期待値 E (X ) , 分散 V (X ) , 標準偏差 D (X ) は,

m = E (X ) =∫−∞

x・f (x )dx =∫0

√3x・ 1 √3 x 2dx =

1 √3 ∫0

√3x 3dx

=1 √3 [ 1 4 x 4]√3

0=

1 4√3 {(√3 )4−0} =9 4√3

=3√3 4 …………(答)

σ 2 = V (X ) = E (X 2)−{E (X )}2 =∫0

√3x 2・

1 √3 x 2dx−( 3√3 4 )2

=1 √3 [ 1 5 x 5]√3

0−

27 16 =(√3 )5

5√3−

27 16 =9 5 −

27 16

=9×16−27×5 80 =

144−135 80 =9 80 ……………………………(答)

σ = D (X ) =√V(X) = √ 9 80 = √32 √42×5

=3 4√5

=3√5 20 ……………………(答)

(3) X を使って定義された確率変数 Y = 4X − √3 の期待値 E (Y) , 分散 V (Y) ,

標準偏差 D (Y) を求めると,

E (Y) = E (4X − √3 ) = 4E (X ) − √3

= 4 ×3√3 4 − √3 = 3 √3 − √3 = 2 √3 …………………………………(答)

V (Y) = V (4X − √3 ) = 4 2V (X )

= 16 ×9 80 =

9 5 ………………………………………………………………(答)

D (Y) = √V(Y) = √ 9 5 =3 √5

=3√5 5 …………………………………………(答)

公式:

E (aX+b ) = aE (X )+b

9 80

3√3 4

3√3 4

9√3

公式:

V (aX+b ) = a 2V (X )

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連続型確率分布の期待値・分散・標準偏差 (Ⅱ)CHECK1難易度 ★★ CHECK2 CHECK3絶対暗記問題 57

確 率 密 度 f (x ) は x < 0, 2 < x の と き 0 よ り , 0 ≦ x ≦ 2 で の み 定

義されていると考えればいいんだよ。よって , (1) ∫ f (x )dx = 1 ( 全確率 ) か

ら , a の値が求まる。(2) E (X ) , V (X ) , D (X ) の定義式 , 計算式に従って計算し

よう。(3) 公式 E (Y) = pE (X ) + q , D (Y) = p D (X ) を使って解けばいい。

解答&解説

確率密度 f (x ) が,f (x ) = で定義されている。

このとき,次の問いに答えよ。( ただし,a は正の定数である。)(1) a の値を求めよ。

(2) 確率密度 f (x ) に従う確率変数 X の期待値 m = E (X ) , 分散 σ 2 = V (X ) , 標準偏差 σ = D (X ) を求めよ。

(3) X を使って新たな確率変数 Y を Y = pX + q (p,q:定数, p > 0) で定

義する。Y の期待値 E (Y) と標準偏差 D (Y) がそれぞれ E (Y) = 0,

D (Y) = 1 となるように p, q の値を定めよ。 ( 東京都立大* )

(0 ≦ x ≦ 2)ax (2 − x )0{ (x < 0, 2 < x)

2

0

確率密度 f (x ) =(0 ≦ x ≦ 2)a (2x − x 2)

0{ (x < 0, 2 < x)

確率密度の性質より ,

∫ f (x )dx = 1 ( 全確率 ) よって ,

∫ f (x )dx = ∫ a (2x − x 2)dx = a [x 2 − 1 x 3] = a (4 − 8 ) = 4 a = 1 ( 全確率 ) ∴ a = 3

(1)∞

−∞

3 3 4

2

0

2

0

2

0

…………(答)

∫ f (x )dx + ∫ f (x )dx + ∫ f (x )dx0

−∞

0

2

0

2

0

0 x1

f(x) = 0 f(x) = 0

y 確率密度

f (x ) = − ax (x − 2)

2

期待値 E (X )

3

a

ヒント!

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講義

講義

講義

123

平面ベクトル

空間ベクトル

数列

講義

4確率分布と統計的推測

f (x ) に従う確率変数 X の期待値 E (X ) , 分散 V (X ) , 標準偏差 D (X ) は ,

m = E (X ) =∫ x f (x )dx =∫ x f (x )dx = 3 ∫ (2x 2 − x 3)dx

= 3 [ 2 x 3 − 1 x 4] = 3 (16 − 4) = 3 ・ 4 = 1

σ 2 = V (X ) = E (X 2) − {E (X )} 2 = ∫ x 2 f (x )dx − 1 2

= 3 ∫ (2x 3 − x 4)dx − 1 = 3 [ 1 x 4 − 1 x 5] − 1

= 3 (8 − 32) − 1 = 3 ・ 8 − 1 = 6 − 1 = 1

σ = D (X ) = √V (X ) = √ 1 = 1 = √5

X を使って , 新たな確率変数 Y を Y = pX + q (p , q:定数 , p > 0) で定

義するとき , 期待値 E (Y) = 0, 標準偏差 D (Y) = 1 となるので ,

E (Y) = E (pX + q ) = p E (X ) + q = p + q = 0

D (Y) = D (pX + q ) = p D (X ) = p・ 1 = 1 ( ∵ p > 0)

以上より , p + q = 0, p = √5 より

p = √5 , q = − √5

(2)∞

−∞ 42

0

2

03 (2x − x 2)4

4 43 4 3 4 3 ………………(答)

分布の対称性から , 当然の結果だね。

12

03 (2x − x 2)4

42

0 4 522

0

4 5 4 5 5 5 …………………………(答)

5 √5 5 ……………………………………(答)

(3)

{1

√5

……………(答)

確率変数 X の期待値を m = E (X ) , 標準偏差を σ = D (X ) とする。

このとき , 新たな確率変数 Y を Y = X − m で定義すると ,

Y の期待値 E (Y) = 0, 標準偏差 D (Y) = 1 となることも覚えておこう。

なぜなら

E (Y) = E ( 1 X − m) = 1 ・E (X ) − m = 0

D(Y) = D ( 1 X − m) = 1 ・D (X ) = 1 ・σ = 1 ( ∵ σ > 0) となるからだ。

σ

σ σ σ

σ σ σ

σ

σ{

このように変数を変換することを変数の“標準化”という

σ

m

2

0

公式:

∫ x ndx =  1   x n + 1 + Cn + 1

を使った。

参考

Y = X − m = X − 1

= √5(X − 1) = √5X − √5 のこと

σ 1√5

p q

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4.正規分布と標準正規分布をマスターしよう !

● 正規分布の確率密度 f N(x ) をマスターしよう!

 離散型の二項分布3 3 3 3 3 3 3 3

B (n , p ) の n を大きくしていくと , 近似的に連続型の3 3 3 3

正規分布3 3 3 3

N (m , σ 2) になることがわかっている。今回は , 連続型の確率分

布の中でも最も重要なこの“正せ い き ぶ ん ぷ

規分布”と , その確率変数を標準化して得

られる“標ひょうじゅんせいきぶんぷ

準正規分布”について , 教えるつもりだ。

二項分布 B (n , p ) を表す確率分布の関数を P B(x ) とおくと ,

 P B(x ) = nC x p xq n − x (x = 0, 1 , 2 , … , n ) になるのはいいね。

この P B(x ) は , x = 0, 1 , 2 , … , n と離散的な確率変数の確率分布なんだけ

れど , ここで n を 50, 100, … と十分に大きくとり , そして x を連続的な確

率変数とみなすことにより , 次のような“正規分布”と呼ばれる確率分布

になることがわかっている。この正規分布は , その期待値 ( 平均 ) m と分

散 σ 2 を使って N (m , σ 2) と表され , その確率密度を f N(x ) とおくと , f N(x )は次のように表される。

期待値 m = E (X ) = np , 分散 σ 2 = V (X ) = npq だったね !

正規分布 N (m , σ 2) の確率密度 f N(x ) は

f N(x ) = 1 e …(*) であり ,

(x:連続型の確率変数 , − ∞ < x < ∞ )その期待値と分散は ,

E (X ) = m , V (X ) =σ 2 である。

初めて , 正規分布 N (m , σ 2) の確率密度 f N(x ) を見ると , ほとんどの人が

「ヒェ 〜 !」ってことになると思う。この (*) の右辺の e はネイピア数と

呼ばれる定数で,微分積分では重要な定数なんだけれど,この意味につい

ては,数学Ⅲの講義で解説しよう。今は,e は,e ≒ 2.72 の定数であるこ

とだけ頭に入れておいてくれたらいいんだよ。

−(x − m) 2

2σ 2

√2πσ

正規分布の確率密度

f N(x ) = 1 e −(x − m) 2

2σ 2

√2πσ

m −σ m +σ xmm + 2σm − 2σ

正規分布 N (m , σ 2)

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165

講義

講義

講義

123

平面ベクトル

空間ベクトル

数列

講義

4確率分布と統計的推測

 さらに , 理論的な証明は難しい

んだけれど , 平均 m , 分散 σ 2 の同

一 の 確 率 分 布 か ら 取 り 出 さ れ た

n 個の変数 X 1, X 2, … , X n の相加

平 均 を X = X 1 + X 2 + … + X n と

おくと , n が十分大きいとき , こ

の X は正規分布 N (m , σ2 ) に従

う こ と が わ か っ て い る。 これを

“中ちゅうしんきょくげんていり

心極限定理”という。

 このように正規分布 N (m , σ 2) は , 連続型の確率分布として , 非常に重要

なものなので , その確率密度 f N(x ) = 1 e を何回も自分で書いて,

頭にたたき込んでおくことを勧める。

 具体的に,正規分布 (10, 25) の確率密度 f N(x ) は,m = 10, σ 2 = 25(σ

= 5) なので , f N(x ) = 1 e  となるんだね。これで,少しは慣れ

たかな ?

図 1 中心極限定理のイメージ

平均 m , 分散 σ 2 の n 個の同一の分布

X =X 1 + X 2 + …… + X n とおくと ,

X は正規分布 N (m , σ2 ) に従う。

n

n

X 1 X 2 X n

X 1 X 2 X n

……

……

xm − σ m + σm

X の従う確率密度

√n

n

n

本 格 的 に 勉 強 し た い 人 は , 「統計学キャンパス・ゼミ」( マセマ ) を読むと い い よ。 も ち ろ ん , 大 学 に 入 っ て

からだね。

−(x − m) 2

2σ 2

√2πσ

平均 分散

√n

 でも,この正規分布 f N(x ) = 1 e のグラフは , 平均 m に関して

左右対称なキレイなすり鉢ばち

型になっており,その分散は σ 2 ( 標準偏差は σ )の確率密度関数なんだね。たとえば,たく山の学生がある数学のテストを

受けたとき,その得点分布が,この正規分布に近い形になることも,経験

的によく知られているんだね。

−(x − m) 2

2σ 2

√2πσ

−(x − 10) 2

505√2π

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166

 このように , 変数 X から , 変数 Z = X − m に変換することを , 確率変数を

“標準化”するといい , この標準化した変数 Z が従う正規分布 N (0 , 1) の

ことを特に“標準正規分布”と呼ぶ。

 これは , 確率密度の計算でも確認できる。一般の正規分布 N (m , σ 2) の

確率密度を f N(x ) , 標準正規分布 N (0 , 1) の確率密度を f S(z ) とおくよ。

まず , 確率密度 f N(x ) の重要な性質から ,

  ∫ f N(x ) = 1 ∫ e dx = 1 ( 全確率 )

だったね。ここで , z = x − m と , x から z に置換すると ,

x: − ∞→∞のとき , z: − ∞→∞となる。また

x =σ z + m より , dx =σ となる。よって , ①は ,

1 ∫ e dx = 1 ∫ e ・ dx dz

= 1 ∫ e dz = ∫ 1 e dz = 1 ( 全確率 ) となる。

これから , 標準正規分布 N (0 , 1) の確率密度 f S(z ) は

f S(z ) = 1 e

となるんだね。

どんな正規分布 N (m , σ 2) に従う変数 X も , Z = X − m と標準化すること

により , 標準正規分布 N (0 , 1) ( 確率密度 f S(z ) = 1 e ) にもち込むこ

とができる。ここで, u をある 0 以上の定数とおくよ。そして, z ≧ u となる

確率 P(z ≧ u) を α とおくと, 図 2 に示すように,

α = P(z ≧ u) = ∫ f S(z )dz = 1 ∫ e dz

となる。だけど , 残念ながら , この積分は高校

σ

−∞

−(x − m) 2

2σ 2

√2πσ……①

σ

dz

√2πσ

−∞

− 12 ・

(x − m) 2

σ 2

z 2

dz√2πσ

−∞

1 z 2

2

σ

√2π

−∞

− z 2

2

√2π

−∞

− z 2

2

f S(z ):標準正規分布 N (0 , 1) の確率密度

− z 2

2

√2π f S(z ) = 1 e と書き換えると ,

m = 0, σ 2 = 1 の N (0 , 1) になっていることがわかるね。

√2π・ 1σ

−( z − 0 ) 2

2・1

σ 2

m

σ− z 2

2√2π

u √2π

u

− z 2

2

zu0

f S(z ) 確率 α

図 2 標準正規分布における 確率 α = P(z ≧ u )

−∞

 正規分布 N (m , σ 2) に従う確率変数 X の平均は E (X ) = m , 標準偏差は

D (X ) =σ となるので , この X を使って , 新たな確率変数 Z を Z = X − m と

定義すると , Z は平均が 0, 分散が 1 ( 標準偏差が 1) の正規分布に従うこと

は大丈夫 ? つまり ,

 E (Z) = E ( 1 X − m ) = 1 E (X ) − m = m − m = 0

 V (Z) = V ( 1 X − m ) = 1 V (X ) = σ 2= 1

  ( よって , D (Z) = √V (Z) = 1) となるんだね。

● 標準正規分布N (0 , 1) は, 数表で示されている!

σ

σ σ

σ σ σ 2

σ σ σ σ

σ 2

m

σ 2

 このように , 変数 X から , 変数 Z = X − m に変換することを , 確率変数

を“標ひょうじゅんか

準化”するといい , この標準化した変数 Z が従う正規分布 N (0 , 1 )のことを特に“標

ひょうじゅんせいきぶんぷ

準正規分布”と呼ぶ。

σ

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講義

講義

講義

123

平面ベクトル

空間ベクトル

数列

講義

4確率分布と統計的推測

確率変数 X は , 正規分布 N ( 2 , 16 ) に従うので , これを標準化すると ,

Z = X − 2 となる。

X ≧ 4 となる確率 P(X ≧ 4) は , X − 2 ≧ 4 − 2, X − 2 ≧ 4 − 2 より ,

P(z ≧ 0 .5) に等しい。

よって , 表 1 より , P(z ≧ 0 .5) = 0 .3085 となる。

P(X ≧ 4) = P(z ≧ 0 .5) = 0 .3085

◆ 例題 13 ◆

確率変数 X が正規分布 N (2 , 16) に従うとき , 確率 P(X ≧ 4) を求めよ。

( ただし , 上記の表 1 を用いてよいものとする。)

数学の範囲では解けないんだね。

 でも心配は要い

らない。試験では 0 以上

の各定数 u の値に対して ,

確率 α = P(z ≧ u ) の値が表 1 に示すよう

に 与 え ら れ る の で , こ の 表 を 利 用 し て ,

実際に問題を解いていけばいいんだよ。

 では , 例題で練習してみよう !

u α = P(z ≧ u )0.0 0.50000.1 0.46020.2 0.42070.3 0.38210.4 0.34460.5 0.3085

… …

表 1 α = ∫ f S(z )dz の表∞

u

4Z = X − m

σ

m σ 2

4 4

z1

= u2

………………………………………………(答)

σ

σ

σ σ

σ σσ

ma b

σ 2

σ 2

偏 差 値 40 〜 60に 含 ま れ る 確 率

は , 約 68 .3% だ。

50 60 704030 y ( 偏差値 )

mm −σm − 2σ m + 2σm +σ

E(aX+b)=aE(X)+bV(aX+b)=a2V(X)

N (50, 10 2)の確率密度

N(m, σ 2) に従う変数 X を

Y=10(X−m)

+50 と変換すると,

E(Y)=E( 10 X− 10m+50 )=10 E(X) − 10m+50=50

V(Y)=V(10X−10m+50)=100 V(X) =100

D(Y)=√V(Y)=10 となる。得点 X を上記の

ように Y に変換すると, Y は平均 50, 標準偏差

10 となって, 俗にいう偏差値になる。

参考

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168

標準正規分布における確率 (Ⅰ)CHECK1難易度 ★ CHECK2 CHECK3絶対暗記問題 58

確 率 変 数 X を 標 準 化 し て Z =X − m

と お く と , P(2 ≦ X ≦ 4) は ,

P(0 .5 ≦ z ≦ 1 .5) で求められることがわかるはずだ。

解答&解説

確 率 変 数 X が , 正 規 分 布 N (1 , 4)に従うとき , 確率 P(2 ≦ X ≦ 4) を

求めよ。ただし , 右の標準正規分

布表を使ってよい。

確率変数 X は , 正規分布 N ( 1 , 4 ) , すなわち平均 m = 1, 標準偏差 σ = 2

の正規分布に従うことがわかる。X を標準化して Z で表すと ,

Z = X − 1 となる。

ここで , 2 ≦ X ≦ 4 となる確率 P(2 ≦ X ≦ 4) は ,

2 − 1 ≦ X − 1 ≦ 4 − 1, 2 − 1 ≦ X − 1 ≦ 4 − 1 より ,

0 .5 ≦ z ≦ 1.5 となる確率 P(0 .5 ≦ z ≦ 1.5) に等しい。

∴ P(2 ≦ X ≦ 4) = P(0 .5 ≦ z ≦ 1.5)

= P(z ≧ 0.5) − P(z ≧ 1.5)

= 0.3085 − 0.0668

= 0.2417

α = ∫ f S(z )dz∞

u標準正規分布表

u α

0.5 0.30851.5 0.0668

σ

m σ 2

2Z = X − m

σ

2

z

2 2

…………………………………………………………(答)

[     ][    ]

z0.5 1.5

−z z0.5 1.5

ヒント!

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講義

講義

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123

平面ベクトル

空間ベクトル

数列

講義

4確率分布と統計的推測

標準正規分布における確率 (Ⅱ)CHECK1難易度 ★ CHECK2 CHECK3絶対暗記問題 59

確率変数 X を標準化した変数 Z を用いると, P(0 ≦ X ≦ 10) =

P( − 0.3 ≦ z ≦ 0.7) となる。今回は, 標準正規分布表を使うとき, 標準正規分布の

グラフの対称性を利用することがポイントとなるんだよ。

解答&解説

確率変数 X が , 正規分布 N (3 , 100)に従うとき , 確率 P(0 ≦ X ≦ 10) を

求めよ。ただし , 右の標準正規分布

表を使ってよい。

確率変数 X は , 正規分布 N ( 3 , 100 ) , すなわち平均 m = 3, 標準偏差 σ =

10 の正規分布に従うことがわかる。X を標準化して Z で表すと ,

Z = X − 3 となる。

ここで , 0 ≦ X ≦ 10 となる確率 P(0 ≦ X ≦ 10) は ,

0 − 3 ≦ X − 3 ≦ 10 − 3, 0 − 3 ≦ X − 3 ≦ 10 − 3 より ,

− 0.3 ≦ z ≦ 0.7 となる確率 P( − 0.3 ≦ z ≦ 0.7) に等しい。

∴ P(0 ≦ X ≦ 10) = P( − 0.3 ≦ z ≦ 0.7)

= 1 − P(z ≧ 0.3) − P(z ≧ 0.7)

= 1 − 0.3821 − 0.2420 = 0.3759

α = ∫ f S(z )dz∞

u標準正規分布表

u α

0.3 0.38210.7 0.2420

m σ 2

10Z = X − m

σ

10

z

10 10

……………………………………………(答)

[     ][    ]

z−0.3 0.7

−z z0.3

注意   表で , u は 0 以上の値に対してしか , 確率 α の値を与えてはいな

いが , 標準正規分布は , 直線 z = 0 に関して左右対称なグラフになって

いるので , 上記のような計算ができるんだね。工夫が大切だ !

0.7 z

ヒント!