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平成29年度産業経済研究委託事業 少子高齢社会における我が国の持続的経済成長のための 社会システムに係る調査 最終報告書 2018316経済産業省 御中 ご注意:本資料にはADL社の独自コンセプト、分析フレームや手法が 含まれており、本資料開示範囲は、貴社内およびグループ企業内 に限定させていただいております。上記以外の第3者開示は、事前 にADL社の文書による確認をお願い申しあげます。
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平成29年度産業経済研究委託事業 少子高齢社会における我が国 ... · 2018. 5. 11. · 1月 2月 task1:マクロ経済政策の在り方 •...

Sep 25, 2020

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Page 1: 平成29年度産業経済研究委託事業 少子高齢社会における我が国 ... · 2018. 5. 11. · 1月 2月 task1:マクロ経済政策の在り方 • task1-1:「経済成長/イノベーション」「財政政策」

平成29年度産業経済研究委託事業

少子高齢社会における我が国の持続的経済成長のための社会システムに係る調査

最終報告書2018年3月16日

経済産業省 御中ご注意:本資料にはADL社の独自コンセプト、分析フレームや手法が含まれており、本資料開示範囲は、貴社内およびグループ企業内に限定させていただいております。上記以外の第3者開示は、事前にADL社の文書による確認をお願い申しあげます。

Page 2: 平成29年度産業経済研究委託事業 少子高齢社会における我が国 ... · 2018. 5. 11. · 1月 2月 task1:マクロ経済政策の在り方 • task1-1:「経済成長/イノベーション」「財政政策」

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高齢者雇用の在り方

就学前教育の在り方

マクロ経済政策の在り方

B

C

D

プロジェクトの構成A

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世界に先立って少子高齢社会を経験していく我が国の持続的経済成長のために、今後の社会システムのあり方について下記視点から検討を行う。

基本方針 事業目的

• 世界に先立ち少子高齢社会を経験する我が国において、持続的に経済成長していくための社会システムの構築は喫緊の課題である。

• 少子高齢社会下における社会システムの歪みとして、様々な問題点が表面化しているところではあるが、本調査では、特に

(1)マクロ経済政策の在り方

(2)就学前教育の在り方

(3)高齢者雇用の在り方

の3つに絞って、我が国の実態把握や世界各国の最新の検討状況を踏まえた分析を進めていく。

(1)マクロ経済政策の在り方

• グローバルで議論・検討されている最先端の経済政策の理論・コンセプトや各国の取組状況等を整理・分析し、それらに基づいた我が国がとるべき「経済政策のコンセプト」、「経済成長モデル」の検討を行う。

(2)就学前教育の在り方

• 諸外国の子育て政策に係る動向を把握し、その上で就学前教育に焦点を当て、その定義、教育内容、提供・管理体制等について調査・分析を行い、我が国の就学前教育の在り方について検討を行う。

(3)高齢者雇用の在り方

• 中高齢者の社会全体での最適配置を実現するために、キャリアオーナシップの醸成や学び直しの機会の創出に向けた環境整備の在り方、パフォーマンスを最大化するための職域の特定や継続雇用の在り方、地方企業・中小企業やベンチャー企業等への労働移動環境整備の在り方などについて調査・分析を行う。

実施概要背景および目的

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それぞれ下記のような点に留意することで、実効性あるアウトプットを目指す。

基本方針 アプローチの全体像

検討タスク 詳細タスク

TASK1:マクロ経済政策の在り方

• TASK1-1:「経済成長/イノベーション」「財政政策」「金融政策/貨幣論」「産業政策の役割/官民の役割分担」で追うべきテーマ・講師設定

• TASK1-2:上記各テーマに関する動向把握

TASK2:就学前教育の在り方

• TASK2-1:諸外国における政策・施策の動向理解

• TASK2-2:日本における就学前教育の現状についての理解

• TASK2-3:今後の就学前教育の在り方とその課題の導出

TASK3:高齢者雇用の在り方

• TASK3-1:諸外国における高齢者雇用の実態調査

• TASK3-2:我が国企業における中高齢者雇用の実態調査

• TASK3-3:中高齢者のキャリアオーナシップの醸成やそのための学び直し環境の実態把握

• TASK3-4: (就学前教育とあわせた中長期まで視野に入れての)政策示唆

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事業実施計画

来年度に向けた実効性あるアウトプットを目指し、前半に重きを置いて推進した。

9月 10月 11月

キックオフ 定例会 中間報告

1月 2月

TASK1:マクロ経済政策の在り方

• TASK1-1:「経済成長/イノベーション」「財政政策」「金融政策/貨幣論」「産業政策の役割/官民の役割分担」で追うべきテーマ・講師設定

• TASK1-2:上記各テーマに関する動向把握

TASK2:就学前教育の在り方

• TASK2-1:諸外国における政策・施策の動向理解

• TASK2-2:日本における就学前教育の現状についての理解

• TASK2-3:今後の就学前教育の在り方とその課題の導出

TASK3:高齢者雇用の在り方

• TASK3-1:諸外国における高齢者雇用の実態調査

• TASK3-2:我が国企業における中高齢者雇用の実態調査

• TASK3-3:中高齢者のキャリアオーナシップの醸成やそのための学び直し環境の実態把握

• TASK3-4: (就学前教育とあわせた中長期まで視野に入れての)政策示唆

テーマ・講師ロングリスト作成

研究会準備+まとめ

海外視察(この期間のどこかで実施)

視察結果を踏まえて最終化

適宜文献調査

文献調査+インタビュー準備+初期仮説構築 インタビュー調査

文献調査+インタビュー準備+初期仮説構築 インタビュー調査

(議論中心に最終化)

初期取りまとめ

取りまとめ

12月

俯瞰調査(8か国) 深堀調査(4か国)

調査

初期仮説構築

講師へのアポイントメント取得

研究会(月1回、~3月)

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高齢者雇用の在り方

就学前教育の在り方

マクロ経済政策の在り方

B

C

D

プロジェクトの構成A

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Contents

1 高齢者雇用の在り方

1-1:サマリ

1-2:個社詳細調査結果

1-3:海外企業の人事的取り組み

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検討ステップ 検討内容 主な想定情報ソース 想定アウトプット

中高齢者の社会全体での最適配置のために、包括的な枠組みを検討する。

TASK3:中高齢者雇用の在り方に係る調査

(必要に応じ)諸外国における高齢者雇用の実態調査

• 各国に関する各種公開情報

各国の政府発表資料

• 国内有識者などへのインタビュー

• 諸外国における高齢者雇用に関する基本思想

• 周辺施策/業界との関係性の包括的整理

• 具体的な政策アクションや実情

我が国企業における中高齢者雇用の実態

調査

• (特に高付加価値側での)雇用事例およびそのための課題(企業/働き手/制度)を収集する

• 中長期的な労働需給や社会動態を勘案しながら、短中長期の雇用展望(あるべき姿)について洞察する

• 各種公開情報

経営誌、経済紙など

• 企業へのインタビュー

高齢者雇用への期待、課題、成功要件など

• (特に高付加価値側での)雇用事例一覧

• 課題や成功要件、期待に関する事業者の声

• 今後の社会動態を踏まえた短中長期の雇用展望(あるべき姿)

中高齢者のキャリアオーナシップの醸成やそのための学び直し環境の実態把握

• 仲介などのプラットフォームサービスや高齢者支援に関するテクノロジーなどの、周辺生態系の状況を俯瞰的に把握する

• それらの成果や課題を把握しながら、高齢者雇用に向けた課題実態を掘り下げる

• 各種公開情報

経営誌、経済紙など

• 仲裁サービスや再教育機関などのプレイヤへのインタビュー

• 周辺生態系の状況(プラットフォーム事業者や関連テクノロジー)

• 高齢者雇用に向けた課題実態

TASK3-1

TASK3-2

TASK3-3

• 諸外国における中高齢者雇用のありかたについて、その基本思想(福祉などとのバランスなど)やその変遷を把握する

• 産業政策や民間サービス事業者などとの関係性までを包括的に押さえながら、具体的な施策状況を掘り下げる

(就学前教育とあわせた中長期まで視野に入れての)政策示唆

• 一連の議論を踏まえて、中高齢者の社会全体での最適配置のための、包括的なエコシステムについて描出する

• 上記を実現するために関係各所がなすべきことについて提言する

• 一連の検討結果

• 貴省とのディスカッション

• 中高齢者の社会全体での最適配置のイメージ(エコシステム)

• 関係各所にとっての期待(課題とアクション)

TASK3-4

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本検討では特に、中高年層のジェネラリストが社外転進後高付加価値労働に就く、再雇用で高付加価値労働に就く、スペシャリストに転向する、といったパターンを想定。

高齢者雇用の在り方 本検討のスコープ

社内継続雇用

現役での役職 再雇用での役職

社外転進

送り出し企業での役職 受け入れ企業での役職

高付加価値労働

低付加価値労働

幹部層

ジェネラリスト

スペシャリスト

一般層

本検討のメインスコープ

本検討のスコープ外

※本検討におけるジェネラリストは特定の職種に限らず働いている方、スペシャリストは営業や技術職など特定の職種のみに従事している方を指す

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Contents

1 高齢者雇用の在り方

1-1:サマリ

1-2:個社詳細調査結果

1-3:海外企業の人事的取り組み

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「人生100年時代」の中、生涯を通じた高付加価値労働実現が必要。そのためには、個人のオーナーシップ醸成、社内外の選択肢を視野に入れたキャリア開発が必要。

「人生100年時代」に高付加価値労働主体として活躍し続ける必要性

これまで これから

就職

定年退職

社内での低付加価値労働

社内での継続的な高付加価値労働

他社への転進独立

就職キャリアオーナーシップ醸成

終身雇用が前提

キャリアは会社が

作ってくれる

定年後は再雇用しか道がない

キャリアは自分で作るもの

社外転進も視野に入れる

生涯に渡って求められる人材に

社会全体での人材最適活用

景気の悪化に対応しきれない

環境変化に耐えられる

キャリア設計を

• 定年で終わり、という意識の社員が多かった(大手化学メーカー)

• 会社がすべてを決める文化であり、社員も言われたことをやればいいと考えがち(大手化学メーカー)

• 予期せぬ社内環境変化なども怒るため、専門領域で個人の市場価値を向上させる必要性が高まっている(大手食品メーカー)

企業の声

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企業の役割も 「雇い続けることで守る」から、「社会で活躍し続けられるよう支援することで守る」に、変容が求められているのではないか。

従業員に対する企業の役割変化

「自社で雇う」ことの保障(1対1の関係性)

「社会で活躍できる」ことの保障(N対Nの関係性)

働き手

企業

定年まで仕事を与える

企業

企業

働き手

キャリア開発を支援する

社外人材を活用する

働き手

定年後も社内で継続雇用する

・・・

これまで これから

• 言われたことだけやれば定年までいられる、という意識が根付いていた(大手化学メーカー)

• 社外でも活躍できる人材を育成する必要がある(大手インフラ企業)

• 中高年への社外転進という選択肢の提示は、日本全体にとって有益(大手機械メーカー)

企業の声

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個人が活躍し続けられるよう支援するために、企業は「キャリア開発支援」「パフォーマンスの最大化」「リテンションの強化」に取り組む必要があるのではないか。

企業が従業員に向けて取り組むべき3つのポイント

企業にとって 産業/社会にとって細字は企業の声

•エンゲージメント・生産性の向上- キャリア開発施策が成長意欲や会社へのコミットメント向上に寄与等の統計結果あり(大手機械メーカー)

•事業環境変化に強い人材の育成- M&Aの増加やAIの普及など、事業環境変化に伴い事業ポートフォリオも変化するため、各個人の「対応力」強化が求められる(大手機械メーカー)

•個企業の状況に依らず働ける人材の創出- (事業環境の悪化なども含めた)急速な事業環境変化に耐えられるように、自分でキャリアを構築していける人材の育成は重視されている(大手インフラ企業)

①キャリア開発支援

•労働力不足のフォロー- 社内55歳以上の人数比率の更なる上昇が予想され、高齢者の最適活用が重要となる(大手機械メーカー)

•後継者の育成/技術・ノウハウの社内継承- 次世代育成不十分であるため、企業としても再雇用を好意的に受け止めており、必要なポストで活用している(大手化学メーカー)

•労働力不足のフォロー- 日本の企業、特に製造業の課題として、高齢社員の増加が挙げられ、有効活用が望まれる(大手機械メーカー)

•働き手の不安解消- 年金受給年齢の引き上げにより、従業員も自分の生活のために65歳まで働くことが当たり前になってきた(大手インフラ企業)

②パフォーマンスの最大化

•社外転進者を巻き込んだ広いネットワーク形成による事業拡大- 退社社員との継続的なネットワーク構築で、事業拡大に繋げている企業もあり、見習いたい(大手化学メーカー)

• 「囲い込む企業」のリピュテーションリスク回避- 社外交流促進支援が、今後は新卒採用等でのブランディングの一つとして重視されうる(大手機械メーカー)

•社会全体での人材の最適配置の実現- 社内にはあまりマッチしない人材でも、社外ではうまくはまる事例もあり、社会全体でのマッチングは重要(大手機械メーカー)

•産業全体での知見共有・成長- 日本全体での成長を考えたときには、個社ではなく産業レベルで人材を有効活用していく必要がある(大手機械メーカー)

③リテンションの強化

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社内外での研修

(キャリア自律につながる)人事制度の

整備

「キャリア開発支援」に関する取組事例(一覧)

各社社内外でのキャリア研修やスキル研修の設置に加え、人事制度の整備や、研修・他企業での修羅場体験等、多面的なキャリア開発支援も始まっている。

キャリア開発支援

(兼業・出向等)他企業での修羅場体験

35歳~「自律」に向けた生涯設計研修+各種

スキル研修

30歳から10年毎に

キャリアセミナー

「定年まで企業に依存し人生設計できない」回避の為、35歳から

約10年に1回生涯設計研修

役割・成果や能力に応じた給与・昇格設定

従業員個人が自身のキャリアプランに沿って希望部署へ直接アピール

できる制度を用意

管理職だけでなく、一般社員にも

役割成果や能力に応じた

給与・昇格設定

個人の成長に資する前向きな兼業/副業の支援

大手機器メーカー

30歳から10年毎にキャリアカウンセリング/セミナー実施+キャリアビジョンに合わせ約200種の研修講座用意

昇進昇格等での手挙げ人事採用

高島屋

30歳~キャリアプラン研修+各種

スキル研修

50歳でキャリア形成支援セミナー+以降も面談等でフォローアップ(40代に引き下げ検討)

30歳から10歳毎に自分の強みを知るキャリアプラン研修+

社外ビジネススクール・セミナー派遣や自社研修(塾)

昇進昇格等での

手挙げ人事 -

昇進昇格・異動等での

手挙げ人事採用

積水化学工業

大日本住友製薬

大手食品/飲料メーカー

若手のグループ外への1年間出向

+シニアの兼業検討

30歳から10年毎にキャリア研修・情報提供を実施+独立・開業

支援自主研修など

NEC

30代~キャリアプラン研修

「時間切れ再雇用」を避けるべく

55歳でキャリアワークショップ

入社時から定期的にキャリア教育を実施

(30代でワークショップ実施)

仕事機軸への人事制度転換

(グローバルグレード・グローバルパフォーマンスマネジメント)

高齢社員の兼業/副業への休暇・金銭的支援

富士ゼロックス

日立製作所

高齢社員のセカンドライフに向けて

兼業を認める制度(1年だが延長可能)

個人の成長や会社への価値創出に資する

前向きな兼業/副業の支援を検討

*各社いずれも二次情報やインタビューで確認できたもののみを掲載。「-」部分は必ずしも取り組みがないわけではない

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キャリア開発支援

(兼業・出向等)

他企業での修羅場体験

(キャリア自律につながる)

人事制度の整備

社内外での研修

大手食品/飲料メーカーではセミナーでのキャリア意識醸成に加え、希望異動先へのアピール制度や社外出向制度等を通じ、自律的キャリア開発を支援。

「キャリア開発支援」に関する取組事例①

キャリア開発支援の取組事例

自身のキャリアを踏まえた手挙げ異動希望者は毎年90~100名社外出向者も働くモチベーションを一層強くもてるように

希望異動先へのアピールの場用意• 従業員個人が自身のキャリアプランに沿って希望部署へ直接アピールできる制度を用意(ダイレクトアピール)

30歳からキャリアセミナー実施• 30歳から10年毎にキャリアセミナーを実施

• 他にキャリアカウンセリングやベテラン社員によるアドバイス制度も実施

若手の出向(社外武者修行)実施• グループ外に1年間出向し、仕事するプログラムを用意、他社からも受入

• 加えて、再雇用のシニアを中心に兼業解禁も検討開始

成果

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大手機器メーカーでは成果・能力を重視した評価制度を導入し、キャリアやスキルを醸成する機会も用意。更に兼業副業についても前向きに検討中。

「キャリア開発支援」に関する取組事例②

キャリア開発支援

(兼業・出向等)

他企業での修羅場体験

(キャリア自律につながる)

人事制度の整備

社内外での研修

キャリア開発支援の取組事例

(各種制度の整備を行ったばかりであり、今後成果に注目)

成果・能力を重視した評価制度• 職能資格制度から、役割・成果、能力に根差した評価に方針を転換

• 管理職だけでなく一般社員に対しても役割・能力評価を重視

キャリア研修・スキルアップ支援• 45歳でのキャリア検討、50歳でのセカンドキャリア研修を実施

• 通信教育やeラーニング受講費用補助などの自己啓発支援制度も用意

兼業副業の検討• 価値創出・個人成長に結びつくような、「前向きな」兼業副業を支援する制度を検討中

成果

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「リテンションの強化」に関する取組事例(一覧)

「リテンションの強化」では、高齢になってもモチベーション高く働き続けられる多様なコース設定、ダイバーシティマネジメント研修、50代後半でのマインドセット研修も散見。

リテンションの強化

多様なポジションの

用意

ダイバーシティマネジメントの浸透

(本人の)マインドセット変革に向けた早い段階からの面接/研修

再雇用では能力・意識等を

踏まえ柔軟に対応

大手機器メーカー

大手食品/飲料メーカー

再雇用に関し従業員の意見

を聞いてマッチング(ジョブマッチ支援制度)+コース分け検討

50代のセミナーでマインドチェンジの必要性理解を

促進

55歳研修で役割・処遇変化への意識の持ち方等を指南

NEC

再雇用では各人の状況・意向を

踏まえて、職務提示・マッチング

各自のモチベーションに合わせた

多様なコースの用意(現役と同等の目標設定+実績連動など)

40代からのライフプラン研修の実施

(定年迄に概ね3回実施)

管理職全員に対するコーチング研修の実施

55歳研修で社内外の環境認識とマインドチェンジの必要性理解を促進

富士ゼロックス

日立製作所

多様な人材マネジメントに関する研修

各自の能力・意欲に合わせた多様な再雇用コース(フル/短時間・財務/営業/技術等専門コースなど)

管理監督者に対するマネジメント研修・評定研修

の実施

50歳・55歳時のセミナーによるマインドチェンジ

の必要性に対する段階的な理解の促進

高島屋

週休数・勤務時間等に関する

複数選択肢の用意+

インセンティブの支給

57歳研修で「覚悟と働き甲斐」をテーマに65歳までを見据え

働くマインドセットを醸成

積水化学工業

50代のセミナーで現役層のシニア継続雇用への理解を促進

50代のセミナーでマインドチェンジの必要性理解を

促進

大日本住友製薬

(年上部下等)多様な人材マネジメントに関する研修

*各社いずれも二次情報やインタビューで確認できたもののみを掲載。「-」部分は必ずしも取り組みがないわけではない

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「リテンションの強化」に関する取組事例①

高島屋では、能力・意思に合わせた多様な再雇用コースを用意する一方、セミナーで働き手に再雇用時のマインドチェンジの必要性理解を促進。

多様なポジションの用意

ダイバーシティマネジメントの浸透

(本人の)

マインドセット変革に向けた面接/研修

リテンションの強化

リテンションの強化の取組事例

能力・意思に合わせた多様なコース• 各自の能力・意思に合わせた多様な再雇用コースを用意(フル/パートだけでなく、財務や営業/修理等の専門等)

• 現役時評価により選択幅が決まる

マインドチェンジの必要性説明• 50/55歳のライフプランセミナーで、定年後を含めたキャリア・ライフ分析を行い、再雇用時のマインドチェンジの必要性理解を促進

ダイバーシティマネジメント施策• お取引先の職員を含め多様な雇用形態が協働していることから、ダイバーシティマネジメントの重要性を認識し、管理監督者に対しての研修を実施

現在1,400名以上が再雇用(全体の約1.5割)、対象者の約8割が制度を活用

30歳からキャリア研修+スキル強化• 10年毎にキャリアカウンセリング実施キャリアビジョンに合わせて受講可能

• な200の研修講座(「商い塾」)

ベースとなるキャリア開発

成果

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「リテンションの強化」に関する取組事例②

富士ゼロックスは働き甲斐のある会社を目指し、モチベーションに合わせた再雇用コースを設定。働き手・受け入れ側双方の意識改革にも注力している。

多様な継続雇用ポジションの用意

ダイバーシティマネジメントの浸透

(本人の)

マインドセット変革に向けた面接/研修

リテンションの強化

社内継続雇用の取組事例

モチベーションに合ったコース設定• 各自のモチベーションに合わせたコースを選べるよう、実績連動コース等も含め広く再雇用ポジションを用意(元々は一律再雇用の形式だった)

マインドチェンジの必要性説明• 55歳研修で、社内外の環境認識と定年後

のマインドチェンジの必要性理解、会社の社員への期待理解を進めている

ダイバーシティマネジメント施策• ダイバーシティ研修やe-learningを実施• ダイバーシティWeb調査や、再雇用者の周りへのアンケート等も行っている

富士ゼロックス・関連会社で1,200人以上の定年再雇用従業員が勤務(2016年度)

年1キャリア面談+相談室の用意• これまでの経験を振り返り、強みや弱みを見つめ直し、マネージャーと次のキャリアを主体的に描く面談実施

・キャリア相談室で個別にサポート

ベースとなるキャリア開発

成果

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「新たな関係性の構築」に関する取組事例(一覧)

「新たな関係性の構築」では、転職等を行う従業員にも手厚い支援を行い、継続的に良好な関係性を維持できるような取り組みをする企業も増加。事業変化に対応するための社内新陳代謝促進効果もある。

新たな関係性の構築

業界横断での環境・

ネットワーク整備

働き手の処遇の整備

転進先の紹介・マッチング

大手機器メーカー

大手食品/飲料メーカー

--

45歳以上の早期退職者

への退職金上積み(Max3年分・独立/転職不問)

社外転進/出向の希望者に対し、上司の同意の下社内キャリアセンターによる転進先提示

富士ゼロックス

日立製作所

- -

キャリア面談の機会等に本人意向を把握・希望により

転進先等を紹介

社外転進サポートプログラムの提供とオープンな情報開示(転職・起業

準備、休暇制度+転職支援金

加算)

60歳以降のコース選択中に再就職支援会社の

利用コース用意

起業・独立への準備休職(Max2年・金銭的支援)

NEC

従業員からの要望で

45歳~転職・起業準備有休(賃金保障)+退職金上積み

転進専任のチームを設置し、転身先開拓+従業員へのアドバイス

高島屋積水化学工業

大日本住友製薬

--

同活動が社外に認知され、同業他社と求人案件

情報を共有+出向先とのネットワーク形成

45歳での早期退職希望者への退職金上積み+

50~58歳での転職先斡旋+退職金上積み

支援制度利用者に対する50~58歳での転職先斡旋(再就職支援会社)

キャリア転換準備のための休暇・支援金の支給

定年までは同社に籍を置き出向可

+「出向は褒章」の雰囲気を醸成

転進専任のチーム設置転身先開拓+マッチング

40歳以上の早期退職者への退職金上積み

40歳以上への転職先斡旋

(再就職支援会社)

*各社いずれも二次情報やインタビューで確認できたもののみを掲載。「-」部分は必ずしも取り組みがないわけではない

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「新たな関係性の構築」に関する取組事例①

大日本住友製薬では50代幹部社員を対象とする外部企業出向を円滑にすべく、セミナーのほか、出向先とのマッチング、身分保障等のサポートを実施。

転進先の紹介・マッチング

働き手の身分・立場保障

業界横断での環境・ネットワーク整備

新たな関係性の構築

新たな関係性の構築の取組事例

50歳でのキャリア形成支援セミナー• 今までの会社人生を振り 返り、定年後にグループ外で通用するキャリアを身に着けるための中長期展望を検討

ベースとなるキャリア開発定年までの身分を保証

• 定年までの間、同社に籍を置いたまま、出向先企業で働くことができる

• 経営層が出向を「報償」と紹介、社内でもプラスのものとして認識されている

年間70~80名程度が出向(全幹部社員のうち年間5%程度)・総数130社年齢層も50歳前半に引き下がっている

出向先開拓・マッチング実施• 出向のための専門部署を創設、グループ外の求人の開拓と維持に積極的に取り組んでいる社員と出向先企業マッチングも実施

成果

業界横断での活動支援• 出向支援活動は社外にも認知され、他製薬企業とも求人案件を情報共有するなど、業界全体でシニア社員の活躍の場を広げている

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各取組を進めて行く上での共通する阻害要因

各取組を企業内で進めていく上で、相互に深く連関する阻害要因が存在。それぞれの個別解決だけでなく、全体の関係性を意識したアプローチが必要。

22

取り組みの阻害要因

相互連関

相互連関

相互連関

相互連関

社会

産業・企業

個人

1. 個々人のキャリア意識の低さや視野の狭さ(と変えにくさ)

・非Job型での就労経験・新卒一括採用/終身雇用の文化

5. 流動性の低さ故の、社会システムの未整備

・社会保障面・家庭/地域環境面

3. “自社で雇い続けることで守る”を貫いてきた企業の経営姿勢

・(社会の公器としての)雇用重視・手厚い補助(労働分配)

2. 人事に関する経営意識・戦略意識の希薄さ

・短期目線や人材管理への終始・雇用前提/年功序列等の思考前提

4. 産業全体としての最適化に対するモーメンタムの弱さ

・業界内での非競争領域の少なさ・個社で最適化された業務への依存

• 「会社が全て決める」「社員は言われたことをやればいい」という文化•同じ企業に長く勤めると、汎用スキルや自身の客観評価が欠如する•昇進は自己申告制であるものの、入社年次ごとの横並び意識が目立つ•職位変化に対応できず、以前の立場の目線で周囲に接してしまう人も

•中長期的には人材余剰も課題となりえるため検討が必要だが、現在は社内が人材不足であるため高齢者を活用する面ばかりに注力している

•一定期間社外経験を積むことは重要だが、人手不足で実施できない•多くの企業は個人の評価を明確な根拠をもって行えていない

•定期人事異動もあり、特定領域の深い知見がないジェネラリストが多い•社外転進を正式に後押しすると肩たたきと捉えられかねない•会社の本音としては優秀層に会社を去られたくないが、今後は社外交流を支援できなければ、採用で優秀層を取りこぼすことにつながりうる

• 「会社の仕事は社員でやるものだ」という意識が強い•自社発展のためのネットワークとして社外転進者を活用する考えが根付いていない

•海外では同業への転職は多いが、日本では背反行為とみなされがち

•転職先の処遇等が社内残留よりも悪く、転職の妨げになる場合が多い•日本全体で制度や文化の見直しを進めることが大前提であるはずなのに、多くの人が社内課題レベルで議論してしまっている

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(参考) 「キャリア開発支援」に関するインタビューコメント

「キャリア開発支援」の阻害要因として、終身雇用や年功序列等を背景とする個人/人事両方のキャリア醸成の重要性認識の欠如などが挙げられる。

23

キャリア開発支援

• 「社員は言われたことをやればいい」という文化•昇進は自己申告制だが、横並び意識あり•長期勤務で汎用スキルや自身の客観評価が欠如•定年前に連続して考えてもらうためとはいえ、セカンドライフへの研修が遅くなってしまっている

•現在は人材不足なので高齢者を活用するが、中長期的には人材余剰も課題で何か考える必要はある

•社内に中途活躍例が少なくイメージが湧きにくい•社外に目を向ける機会の導入は課題である•兼業の必要性は感じるが労働法の観点で課題あり•一般的には社外転進に対してはレールから外れたというネガティブな印象を持たれがち

•言われたことだけやれば定年までいられる、定年で終わりという意識が根付いていた

•多くの企業は根拠をもった評価が十分できておらず、個人が自身のスキルを把握できない

• 「どんな課題を解決してきたか」ということに主眼をおいた思想の採用が不足していた

•若手が活躍する場を用意できていない企業が多い•再雇用において、事務系は汎用的なスキルがあまりなく、活用が難しい

•社外からの転身者やヘッドハント等のきっかけの少なさ(1, 5)

• M&Aや社外連携、兼業等社外接点の少なさ(1,4)

•ラダー型のキャリアパス前提の昇進システム(梯子から外れることへの忌避)(2)

•終身雇用環境下における「勤め上げ」を前提とした「定年/65歳まで残れる」という危機感のなさ(3)

• (社会全体での)標準化されたスキル・強み/弱みのものさしの欠如(4, 5)

•非Job型様式下でのスキル定義のない人事評価(2)

•能力評価よりも年功序列が問われる人事パス(2)

• (将来キャリアに)自信を持てる場の欠如(1,2)

•標準化されていない業務プロセス(属人的、現場的)が故の、汎用スキルの必要性の低さ(2)

•非Job型採用・育成に伴うキャリア意識の欠如(1)

•終身雇用前提でのキャリア思考停止 (1,2)

•横並び人事によるキャリア開発必要性不足(1,2,3)

•人事側の教育インセンティブ不在・転進リスク(2)

•目の前の課題解決にのみ注力しがちな人事(2, 5)

実現の要諦 インタビューコメント要諦を満たすために解決すべき個別課題の掘下げ

阻害要因(仮説)

キャリアオーナーシップも含めた

社会人基礎力の醸成

多様なキャリア選択肢の把握

働き手個々人の自律的なスキル把握と醸成

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「パフォーマンスの最大化」の阻害要因として、社内リソース前提での人事計画や、受け入れ・働き手両方の経験・学び直しの場の不足が挙げられる。

(参考) 「パフォーマンスの最大化」に関するインタビューコメント

24

リテンションの強化

(モチベーションを維持できる)

多様なポジションの用意

職場の意識改革

働き手の意識改革

インタビューコメント要諦を満たすために解決すべき個別課題の掘下げ

阻害要因(仮説)実現の要諦

•任用解除後の新たな役割への適応とモチベーションの維持は直近の課題

•言われたことだけやれば定年までいられる、定年で終わりという意識が根付いていた

•定年後異なる部署で若手育成にあたり、教育を学んでもらってはいるものの研修補助等は未実施

•年功序列での働き方の染みつき(1)

• 「60歳定年」をゴールと考えてしまう意識の低さ(1)

•自分の役割変化における意識改革・モチベーション維持のきっかけの不足(1)

•新たな役割を担ううえでのスキルの学び直しの場の不足(1, 5)

•再雇用等により、経験のない(年上上司も含めた)多様な人材のマネジメンが必要となった

• (社外からの転身者に対しても含めて)多様性をマネジメントする経験の不足(3)

•大きな事業変化がない中モチベーションを保てるポストを自社で全員分用意するのは難しい

• 「会社の仕事は社員でやるもの」という意識が強い•再雇用制度導入時は一律の機会を与えることが目的だったが、次第に各自の意識に会社が応えることでより働き甲斐のある会社を目指すように

•新事業の創出力の弱さや(組織改革を伴う)構造改革の弱さ(3)

•常に「社内リソースのみの前提」で解こうとしてきた人事計画(2,3,4)

•モチベーション・スキルレベルに合わせた段階的な処遇・役割設計の不足(一括管理)(2)

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「リテンションの強化」の阻害要因として、悪評や優秀層流出リスクへの恐れの他、転職先の処遇・退職金受給期間条件等の金銭面での枷が挙げられる。

(参考) 「リテンションの強化」に関するインタビューコメント

25

新たな関係性の構築

多様な転進先の提示

(送り出し)企業のメリットの最大化

働き手の社外転進の不安の解消

インタビューコメント要諦を満たすために解決すべき個別課題の掘下げ

阻害要因(仮説)実現の要諦

•転職先処遇が悪い、一定期間勤めないと企業内退職金が出ない、等が社外転進の妨げになっている

•東京に持ち家がある、子どもが小さい、親の介護がある等の理由で移住できない場合が多い

•産業別マーケットが現状、国内に存在しないため、人材流動が進んでいない

•優秀層に社外転進させインフルエンサーとすべき

•転職先の処遇が(送り出し元に比べ)低い(1,5)

•企業内退職金などの制度の枷による社外転進ハードルの存在(1, 5)

•マイホームや介護等(立地的な)社会的負担(5)

• (同業でも)企業毎に異なる働き方への懸念(3,4)

•優秀層の社外転進者事例に触れる機会の不足に伴う漠然とした不安の存在(1)

•社外転進を正式に後押しすると肩たたきと捉えられかねない

•自社発展のためのネットワークとして社外転進者を活用する考えが根付いていない

•会社の本音としては優秀層に会社を去って欲しくないため、兼業制度の広報は未実施

• 「人材輩出=リストラ」としての悪評や財務評判リスクへの恐れ(3,4)

• OBとのその後のネットワーキングの欠如(に伴う、社外接点の断線)(4)

•優秀層の流出リスクを恐れての及び腰の姿勢(と将来的な逆の流出リスクへの認識の欠如)(4)

•海外では同業他社への転職は一般的だが、日本では背反行為のように扱われがち

•自分の強みを示す実績は言えても、その強みを言語化できる人材は少ない

• (業界の非競争領域の狭さゆえの)特に同業界での転進への心理的ハードルの高さ(3,4)

•自己の能力/経験を(他所との接点を見いだせるように)抽象化して語る能力の欠如(1)

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Contents

1 高齢者雇用の在り方

1-1:サマリ

1-2:個社詳細調査結果

1-3:海外企業の人事的取り組み

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積水化学 まとめ

積水化学では定年従業員増や無年金期間への対処に向け、個人のキャリア開発と高年齢従業員の積極活用に向けた早期のキャリア意識向上に策を打っている。

企業の立場 / 企業名 送り出し企業 / 積水化学

背景・狙い

実施施策

• 定年従業員増・無年金期間への対処に向け、個々人のキャリア開発と高年齢従業員の積極活用を行うようになった。

• 2000年前後から「手を挙げる人事」をモットーに個人がキャリアを考える施策や中高齢者従業員の活用に向けた施策をとっている

• 「キャリアを自分で考える」支援に向け、30歳を皮切りにキャリアプラン描出や研修を用意しており、定年後に向けては57歳研修と59歳時面談に重きを置いている

• キャリアプラン研修は対象者の多くが受講している模様。また、際塾やオープンセミナーなどその他の研修も一定数が利用している

実施施策

成果・課題

1

2

3

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Source:ライフワークス事例、にっぽん経営サミット「個々の力を引き出す「ボート体験」」(2010.5)等各種二次情報

積水化学 背景・狙い

積水化学では組織のスリム化ニーズや定年従業員増の一方、無年金期間への対処も求められ、個々人のキャリア開発と高年齢従業員の積極活用を行うようになった。

中高年社員活用の背景

背景 狙い

個々の能力の開花・キャリア開発• 「自立と自己責任」をキーワードに、自分の能力を活かす「やる気」がある人が活躍できるようなキャリア開発を行う

高年齢従業員の積極活用• 近年は人手不足、技能伝承や後継者育成の必要性増加により、再雇用も積極活用していく方向性が強まっている

1

定年を迎える従業員の急速な増加• 2000 年前後にグループ連結の業績が赤字に陥った際、早期退職勧奨等を行なったため定年を迎える従業員の数は減ったものの、中長期的には定年到達者の増加が見込まれ、また再雇用希望者は増加傾向

無年金期間の発生• 厚生年金の支給開始年齢の引上げにともなう無年金期間の発生により、恒例の従業員への対応が必要になる

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「手を挙げる人事」を基本に据える

Source:ライフワークス事例、にっぽん経営サミット「個々の力を引き出す「ボート体験」」(2010.5)等各種二次情報

積水化学 実施施策

グループ業績の悪化を受け、2000年前後から「手を挙げる人事」をモットーに個人がキャリアを考える施策や中高齢者従業員の活用に向けた施策をとるようになった。

中高年活用施策の時系列整理

2015201020052000-1995

2013

57歳研修

2

1993

再雇用制度

2006

グループ各社に制度拡充

2001

年代別キャリアプラン研修

2000

人材公募制度

2008

志塾創設2003

変革塾創設

2000前後グループ連結業績が赤字

2007

人事部廃止(人材グループをCSR部に移管)

2015

人事部再設置

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Source:ライフワークス事例、経団連「ホワイトカラー高齢社員の活躍をめぐる 現状・課題と取組み」(2016.5)、積水化学工業ホームページ等各種二次情報

積水化学 実施施策

60歳での定年に向けては57歳研修と59歳時面談に重きを置いているものの、「キャリアを自分で考える」支援に向け、30歳を皮切りにキャリアプラン描出や研修を用意。

中高年活用施策の全体像

2

40歳

60歳

50歳

キャリアプラン研修(30/40/50歳)• 昇進昇格への自己申告制導入を受け、自分の強みを知り、キャリアプラン・キャリア棚卸しをするための研修を実施

• 30歳で「自己確立」、40歳で「市場価値」、50歳で「生涯現役」を意識するきっかけを提供

57歳研修(57歳)• 「覚悟と働き甲斐」をテーマに、65 歳までを見据えて仕事に取り組むマインドセットを醸成する

• コンピテンシーと性格特性の検査を行い、キャリアを棚卸・計画立案のうえ、上司と面談

グッドライフセミナー(55歳)• マネープランを中心に定年後の第2の人生をどのように送るのか考える機会を作っている

59歳時面談(59歳)• 再雇用意向調査票とキャリアプランシートに基づいて、社外キャリアカウンセラーと所属上長との面談を行い、60 歳以降再雇用の希望選択を行う

グループ人材公募(全社員対象)• グループ人材公募では、従業員は上長の承認を得ることなく、イントラネットに掲載されたグループ内公募案件へ、募集要件に沿って誰もが応募可能

• 1年に平均20人程度が移動

次世代幹部育成(際塾/志塾/セキスイ変革塾)(際塾は50代前半~、他二つは30代後半~40代後半)

• 経営者・起業家・パイオニアなどの養成を目的とした一定期間参加型の塾で、ビジネスリーダーとして必要な能力・スキルなどを学ぶ

他研修(希望者公募・選択)(社外ビジネススクール派遣/オープンセミナー等)

• 社外のビジネススクールでの社会人向け研修カリキュラム受講や、ビジネススキル向上に向けたグループ内セミナーなどを用意

60-65歳:再雇用

自分の強み・価値を早期に把握・研鑽したうえで、再雇用の覚悟を確認中高年活用の考え方(ADL推察)

早期退職の割増退職金 / 休暇取得制度• ある節目の年齢で転職をすれば、割り増しの退職金を与えるほか、5年ごとに全員に休暇を与える

• 但し社内の人手不足も相まって、割増退職金を現在利用している人はほぼいない

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積水化学 実施施策

キャリアプラン研修は元々社外での活躍も念頭に置いた設計だった。次世代幹部育成はリーダーシップを強化するために開設されたもの。

2

社内のアセスメントから「リーダーシップ」の強化が重要だと捉え、次世代幹部育成研修を開設

各種研修 次世代幹部育成(際塾/志塾/セキスイ変革塾)

30,40歳

• マインドチェンジ、マネジメントスキル習得を目的とした研修を実施

• 30歳研修の導入目的は自分のスキルの棚卸とキャリア形成の動機付けを行うもの

• 40歳研修の導入目的は自身の市場価値を認識させ、危機感により活躍を促すこと

50歳• 50歳以降の働き方を認識する内容で、階層を分けて実施されている

57歳研修• 自分自身の強みや働きがい、60歳以降も社会人として働く覚悟を再認識する場として実施されている

59歳時面談• 現役時代同様に65歳まで働くことを鼓舞する内容である

キャリアプラン研修

際塾 • 大学教員を講師としたビジネススクール

志塾

• 神戸大学大学院三品和広教授を講師として、企業家精神を習得する内容

• 新規事業を生み出すことを目的としている

セキスイ変革塾

• 新任役員を塾長とした塾形式で受講者が会社のDNAを学ぶ/再認識する内容

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Source: 積水化学ホームページ「自ら手をあげ挑戦する人材づくり」

積水化学 成果・課題

キャリアプラン研修は対象者の多くが受講している模様。また、際塾やオープンセミナーなどその他の研修も一定数が利用している。

キャリアプラン研修受講者数 他研修受講者数

69139

76

802

1 514

1 685

40歳(市場価値)

50歳(生涯現役)

30歳(自己確立)

2011年度

累計 144

12

37

社外ビジネススクール派遣

オープンセミナー際塾

2011年度

社員数

単独2,400人

3

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事務職の再雇用機会の確保• 再雇用において、技術職は現役時代の経験とスキルを活かして担当業務を継続したり、指導役として活躍できる場合が多いが、事務職の場合、保有する経験やスキルだけで働ける職場は限られており、今後対策が必要

事務職の能力開発• 営業などの事務系についても、スキルやノウハウをきちんと知見として持ち、現役世代の講師役としての活用幅などを広げてく

• 社内のキャリア相談・指導役などは現場の仕事経験だけではできないので、専門資格の取得を支援する施策を実施

ダイバーシティへの対応不足• 年齢・性別・多国籍だけでなく、家族に要介護者がいる人など、様々な人への対応が必ずしも十分ではない

幅広いダイバーシティマネジメントの確立

• 多様な人材が活躍できるマネジメント体制強化と働きやすい環境・仕組みづくりを推進

積水化学 成果・課題

現在の課題として、事務系のスキルがなかなか汎用化されず再雇用における高付加価値労働活用が難しいことと、ダイバーシティ対応不足が挙げられる。

現状の課題・今後想定される変化と対応方向性

現状の課題・今後想定される変化 対応方向性

3

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積水化学 20~30代社員に向けた取り組み

20~30代社員に向けたキャリア開発支援・新たな関係性の構築に関する取り組みは下記の通り。

社内外での研修

(キャリア自律につながる)人事制度の整備

(兼業・出向等)他企業での修羅場体験

働き手の処遇の整備

転進先の紹介・マッチング・独立支援

業界横断での環境・ネットワーク整備

• 2年目研修(1年間の振り返り)• 3年目研修(キャリアデザイン)• 4年目研修(~係長クラス自己研鑽計画策定)• キャリアプラン研修(30歳時)

• 新任上級社員研修(管理職登用までのキャリア計画づくり)

• ヒューマンアセスメント(新任管理職向け)• 大学派遣

• コース選択制度• キャリアインタビュー• 人事異動公募• 上位資格昇進の自己申告

• 海外トレーニー制度• グループ会社、海外子会社への出向

• 転身の準備のための休暇制度• 割増退職金の支給

(特になし)

(特になし)

キャリア開発支援

新たな関係性の構築

左記の取り組みの概要取り組み項目

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大日本住友製薬 まとめ

大日本住友製薬では中高年幹部社員の余剰に対応すべく、社外転進を促進。円滑に進めるために、セミナーや面談、研修などのプログラムを用意している。

企業の立場 / 企業名 送り出し企業 / 大日本住友製薬

背景・狙い

実施施策

• 中高年幹部社員の余剰および同社員の定年後の単身赴任忌避ニーズの高まりから、中高齢社員の社外転進の促進を推し進めている

• 50代幹部社員を対象とする外部企業出向を円滑にすべく、キャリア・ライフプランを構想するためのセミナーや面談、研修などのプログラムを用意

• 外部企業出向は「貢献してくれた人に報いる文化醸成」も目的としており、対象はハイパフォーマー、出向先は経営が安定しているような製薬企業・医薬品卸など

• 過去200名弱が130社に出向しており、年齢層も早期化。業界横断活動も進むなど順調に進んでいる

• 但し一部出向解除も発生しており、課題解決に取り組んでいる

実施施策

成果・課題

1

2

3

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Source:薬事日報「【大日本住友製薬】50歳代社員に社外出向を提案‐180人が130社で活躍中」(2016.6.29)、経団連「ホワイトカラー高齢社員の活躍をめぐる 現状・課題と取組み」(2016.5)

大日本住友製薬 背景・狙い

大日本住友製薬は海外進出に伴う中高年幹部社員の余剰および同社員の定年後の単身赴任忌避ニーズの高まりから、中高齢社員の社外転進の促進を推し進めている。

中高年活用の背景

背景 狙い

海外進出・技術発展に伴う中高年幹部社員の余剰

• 2007~2009年度の中計等で、海外展開推進等の事業転換を図り、若手社員の積極登用を進めた

• 更に新薬開発に関する技術発展が進む中で、若手社員の活用を進めたいという考えも強くなった

• 結果、45~50歳の幹部社員に(再雇用制度を活用しても)経験を活かす業務や待遇を十分に用意できなくなる

中高齢社員の社外転進の促進• 特に会社に貢献してきた優秀なシニア社員に対しては、役職定年を迎えた後もその経験を社内だけに限定せずに、社外でも活用してもらうという目的で社外出向施策

• 自社ではシミュレーション・ゲノム等技術発展に伴い、若手登用を望む一方、ジェネリックメーカー等は自社の中高齢者の知見・スキルを必要としているなど、活躍の幅は大きいと考えている定年後の単身赴任忌避増

• 幹部社員の半数が営業業務に従事、50 代半ば以降も単身赴任のケースが多い

• 60 歳の定年以降は自宅の近くで勤務したいとの要望が上がっている

1

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Source:薬事日報「【大日本住友製薬】50歳代社員に社外出向を提案‐180人が130社で活躍中」(2016.6.29)、経団連「ホワイトカラー高齢社員の活躍をめぐる 現状・課題と取組み」(2016.5)

大日本住友製薬 実施施策

50代幹部社員を対象とする外部企業出向を円滑にすべく、キャリア・ライフプランを構想するためのセミナーや面談、研修などのプログラムを用意。

中高年活用施策の全体像

40歳

60歳

50歳

外部企業出向(50代の幹部社員)• 定年までの間、同社に籍を置いたまま、出向先企業で本人が望む勤務地・業務で働くことができる

• 専門部署を創設、社員と出向先企業マッチング実施、出向先は製薬企業や医薬品卸、CRO、CSO等

ライフプランセミナー(53歳)• 定年後のマネープランと出向についての説明実施• 主に出向者の体験談を聴き、60 歳以降の就業希望等を「キャリアプランシート」に書き込む

フォロー面談(54歳)• ライフプランセミナーを受講した幹部社員を対象に

、キャリア開発部員との間で、1時間程度の個人面談を実施し、60 歳以降の働き方や出向に対する希望把握、出向への支援体制の理解促進を図る

キャリア形成支援セミナー(50歳)• 今までの会社人生を振り返り、残りのキャリアとライフプランの中長期展望を描く一泊二日プログラム

• 57歳役職定年や 60歳定年後にグループ内外で通

用するキャリア・マインドセットを身に着けるために、 「自身はどうあるべきか」という意識を持たせる

調剤薬局研修(50歳代の幹部社員)• 調剤薬局への出向を望む声は常に一定数あるが、若い女性が多い場合が多いため、オーナー社長の右腕になれるような経営マインドを身につけることを目的とした研修を行い、比較的スムーズな出向・移籍へとつなげる4か月の研修

2

• 40代の部門長が増えたため来年以降40代にも拡げたい

• スキルの見える化・醸成等の視点も来年以降考えたい

セカンドライフ支援制度• 年に2回手挙げ制で、最大2年分の給与を退職金積み増し

• 利用者は年間2桁前後と多くはない

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Source:薬事日報「【大日本住友製薬】50歳代社員に社外出向を提案‐180人が130社で活躍中」(2016.6.29)、経団連「ホワイトカラー高齢社員の活躍をめぐる 現状・課題と取組み」(2016.5)

大日本住友製薬 実施施策

外部企業出向は「貢献してくれた人に報いる文化醸成」も目的としており、対象はハイパフォーマーである。出向先は経営が安定しているような製薬企業・医薬品卸など。

外部企業出向の概要(2008~)

概要社員が希望し会社が認めれば、定年まで同社に籍を置いたまま、出向先企業で望む勤務地・業務で働くことができる処遇は何も変わらず、退職金なども変わらない

主体キャリア開発部が中心となって行っており、グループ外の求人の開拓と維持に積極的に取り組んでいる

対象50歳代の幹部社員(ローパフォーマーを対象とはしていない)- 社員をパフォーマンスで上から2/6/2と分けた場合、上位8割を対象にしている

目的• 社員一人ひとりの人生をより豊かにするために、社内に限定せずに活躍できる場を提供する

• 「貢献してくれた人に報いる文化」を社内に根付かせる

出向先

社員と出向先企業のマッチングを行い、製薬企業や医薬品卸、CRO、CSOなど①経営が安定している②本人の今までのキャリアを活かすことができる③原則 65 歳以上まで働ける④自社内で再雇用する場合の処遇を上回る⑤役職者としての勤務を中心に、ポジション上昇の可能性があるどなたが見てもよい企業だと思うところに紹介することが重要

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Source:経団連「ホワイトカラー高齢社員の活躍をめぐる 現状・課題と取組み」(2016.5)

大日本住友製薬 実施施策

外部企業出向に向け、社内啓蒙と出向先開拓、出向者・出向先へのフォローに気を配っている。社内啓蒙では「外部出向は優秀層への重要な施策」とメッセージを発信。

外部企業出向のポイント

出向先開拓

• 人材紹介会社を通じて候補企業を探す• 社長や役員の人脈などをたぐりながら行う• 産業雇用安定センターに出向者を送り、マッチング先を見つける- 札幌・仙台・首都圏・関西圏・広島・福岡などのセンターに、トー タルで 20 名が参与として出向しており、非常に高

い評価を得ている- 20名のほとんどが営業部門の支店長・所長経験者であり、信頼関係を醸成

• 受け入れ先企業の社長からの口コミなども多く、オープンでない求人も多数

出向者・出向先フォロー

• 出向先企業でどのような仕事をするのか、出向先・出向元・出向者の三者がそれぞれ理解し、十分なイメージを持つことで信頼感を醸成

• 出向者と出向先企業への継続的なフォローアップに注力- 出向後の個々人へのフォローアップは本人の活躍だけでなく、送り出し側としての高評価を引き出し、次の求人

にもつながる- 毎年一回、人事部キャリア開発担当が主催する出向者懇談会では、参加者同士がそれぞれの現在について懇

談するとともに、社長や役員が出席し、出向者に対する期待を表明している

社内啓蒙

• 経営層から「外部出向は優秀層への重要な施策」とのメッセージを出し続ける- 社長・人事部長メッセージで「60 歳以降の活躍を目指すなら少しでも早く準備することが重要」「有能な多くの人材を出向や転籍という形で社外に紹介」「ほとんどの方が定年前後で移籍、恵まれた処遇で仕事を続けている」等を伝える

• 幹部社員の不安をできるだけ緩和できるよう、50 代での転進は在籍出向を原則とし、定年後に転籍とする

2

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Source:経団連「ホワイトカラー高齢社員の活躍をめぐる 現状・課題と取組み」(2016.5)

大日本住友製薬 成果・課題

過去200名弱が130社に出向しており、年齢層も早期化。業界横断活動も進むなど順調に進んでいるが、一部出向解除も発生しており、課題解決に取り組んでいる。

外部企業出向の成果

出向解除ケースが一定割合で発生(少数だが)職場での人間関係・業務内容に不満を感じる場合も

出向先でのコミュニケーションの重要性を意識づけ

出向先では会社の風土、文化、組織、人などに慣れるまでかなりの努力、忍 耐を要すること、出向先から自分に 求められているものは何かを十分に理解し、業務を遂行することが重要である と

の意識づけを行う

総数180人2015 年度 78 名、2016 年度66名。

全体約 1,500 名幹部社員のうち、年間5%程度

業界横断活動の進展同活動は社外にも認知され、最近では他製薬企業とも求人案件を情報共有・業界軸でシニア社員

の活躍の場を広げる取り組みもスタート

出向者数

総数150社製薬企業や医薬品卸、CRO、CSO、人材紹介会

社、産学連携の研究機関

出向先

定性

55 歳以下比率増(半分程度)以前は58~59 歳が中心だったが早期化

• 受入企業が出向者に対して最低10年は活躍してもらいたいと望んでおり、40代ニーズもある

• 出向先でキャリアを積むなら定年を待つ必要はないと幹部社員も考える:今後40代も検討

出向者年齢

出向状況 課題と解決策

3

部門長に出向希望を伝える社員は3割程度と広く浸透、肩たたきのイメージはない

仕組みがなかったころは個々人で転身していたが、制度化によりネットワーク形成・情報共有に役立っている(出向者を集め、年1

回懇談会を実施)

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大日本住友製薬 20~30代社員に向けた取り組み

20~30代社員に向けたキャリア開発支援・新たな関係性の構築に関する取り組みは下記の通り。

社内外での研修

(キャリア自律につながる)人事制度の整備

(兼業・出向等)他企業での修羅場体験

働き手の処遇の整備

転進先の紹介・マッチング・独立支援

業界横断での環境・ネットワーク整備

(特になし)

• 自己申告制度• マネージャーとしてではなく、個人として卓越した成果を創出し続けられる人を任用するPC制度• 研究プロジェクトでの予算権・メンバーの人事評価権をもつプロジェクトリーダーへの若手登用• グループマネージャー早期選抜

• 若手社員を発展途上国に派遣し胆力強化を行う公募制海外研修• 若手研究員の海外研究機関への派遣• 海外子会社への出向

(特になし)

(特になし)

(特になし)

キャリア開発支援

新たな関係性の構築

左記の取り組みの概要取り組み項目

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富士ゼロックス まとめ

富士ゼロックスは増加する中高年社員に対し、多様な生き方・働き方を支援すべく、セカンドライフに向けての兼業・資格取得等の支援や、定年後の選択を支援するコース制プログラムを提供。

企業の立場 / 企業名 送り出し企業 / 富士ゼロックス

背景・狙い

実施施策

• 中高年社員比率増と独立・起業・転職希望者増加を踏まえ、「中高年社員の多様な生き方・働き方支援」「中高年社員の知見継承」を目指している

• 1988年ごろから「個の尊重」を念頭に置いた「New Work Way」の概念を提唱し、2000年代前半に中高年社員活用の素地を整備

• 施策の中心はセカンドライフに向けての兼業や資格取得等を目指した休職制度等と、定年後の各人の選択を支援するコース制のセカンドライフプログラム

• 再雇用コースを選択する社員が8割弱と多いものの、独自プランコースや他社への再就職支援コースを選択する社員も存在、中高年のキャリア相談室活用も増加

• 役職定年後の役割変化対応の難しさ等もあり、キャリアを考えるタイミングの遅さや、社外を含めたキャリア検討機会の促進といった課題の解決が求められる

実施施策

成果・課題

1

2

3

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Source: 企業活力研究所「シニア人材の新たな活躍に関する調査研究報告書」(2012.3)、Recruit Works Internship「ミドル の セカンドキャリア 脱後ろ向きへ新提案」、富士ゼロックスニュースリリースほか各種二次情報と、九州産業大学論文「中高齢者のセカンドキャリア支援に関する考察」より同社と推測される資料を一部参照

富士ゼロックス 背景・狙い

富士ゼロックスでは中高年社員比率増と独立・起業・転職希望者増加を踏まえ、「中高年社員の多様な生き方・働き方支援」「中高年社員の知見継承」を目指している。

背景 狙い

中高年社員活用の背景

中高年社員比率の増加• 2007年(当時)には50代が35%になる・2017年の平均年齢は44.3歳となるなど、シニア比率が大きく増加

• マネジメント職に50代がたまっており、若手教育・継承が進んでいない

中高年社員の多様な生き方・働き方支援• “女性活用”の次の課題として“中高年活用”を想定• シニア社員の活性化と多様な生き方・働き方を支援するための多様な選択肢の提供

• シニア社員が保持する技術や能力・ノウハウを企業内に継承し、企業競争力強化に貢献できる環境の整備

独立・起業・転職希望社員の増加• 2002年に50代社員を対象としたアンケートを実施した際、定年まで今の会社で勤め上げたいとする社員が75%、独立・起業・転職等を望む社員が20%

中高年社員の知見継承• シニア社員が保持する技術や能力・ノウハウを企業内に継承し、企業競争力強化に貢献できる環境の整備

1

業績の悪化• 1990年代後半から、国内の景気低迷などの影響も受けて、厳しい経営環境となった

人件費構造の再構築• 2000年ごろから年金の代行返上、人件費構造の変革、社員

の転籍の促進といった、直接的に人に関わる費用を引き下げるための施策を実施

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富士ゼロックス 実施施策

1988年ごろから「個の尊重」を念頭に置いた「New Work Way」の概念を提唱し、2000年代前半に中高年社員活用の素地を整備した。

中高年活用施策の時系列整理

2015201020052000-1995

1988

New Work Way「個の尊重」

「個人の創造性を引き出す仕事のあり方と環境づくり」

1990

家族介護休職制度

1988

育児休職制度

2001

定年再雇用制度

2002

キャリア相談室

2003

New Work

支援プログラム

2006

セカンドライフ・プログラム

2

2013

後進育成制度

2017

再雇用コース見直し

各自のモチベーションに合わせたコース選択を可能にする

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富士ゼロックス 実施施策

施策の中心はセカンドライフに向けての兼業や資格取得等を目指した休職制度等と、定年後の各人の選択を支援するコース制のセカンドライフプログラム。

中高年活用施策の全体像

40歳

60歳

50歳

キャリア開発面談(全社員)/キャリア相談室(個別)

年1回「キャリア開発シート」を作成し、これまでの経験を振

り返ったうえで、自分の強みや弱みを見つめ直し、上司と共に次のキャリアを主体的に描く

• ダブルジョブの相談員を中心にキャリア相談も実施キャリアフロンティアワークショップ(役職に関係なく全員55歳)

• 「時間切れ再雇用」を避けるべく、ライフ・キャリアのあり

方を考え、セカンドライフ・プログラムのコース選択の方向性を決めるために、社内外の環境認識とマインドチェンジの必要性理解、会社の社員への期待理解を進める

• 社外環境に関するものは外部講師により実施される

自己啓発・自己研鑽支援制度(旧New Work 支援プログラム)(50-59歳)

• 高齢社員の多様な生き方・働き方を提供するために、社内外での兼業支援や、資格取得・NPO活動等の支援に向けた休職制度などを用意している

2

セカンドライフ・プログラム(59歳時に選択)• 高齢社員の多様な働き方や生き方を支援し、企業競争力に貢献できる環境を整備すべく、定年後の再雇用やグループ内外再就職支援、独立支援等のコースを選択

コンピテンシー強化(~59歳)• (シニア向けを意識した特定のカリキュラムがあるわけではなく)社内に用意されている自己啓発メニューを選んで、自ら鍛え直す

セカンドライフプログラム説明会(58歳)• セカンドライフ・プログラムのコース選択を控え、各コースの説明と支援内容紹介や個別相談対応などを行う

後進育成制度(57歳)• 部長以上に対して実施させていた役職定年を、若手教育を主目的として課長以上に実施

• 活躍不十分なマネージャーの退任・未任用マネジャーの採用など、管理職の新陳代謝に貢献

55~60歳をセカンドキャリアの準備期間と位置付け、各研修、制度間の連続性を意識(30,40歳には社内の役割変化に焦点を

あてたステップアップ研修実施)

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Source: 企業活力研究所「シニア人材の新たな活躍に関する調査研究報告書」(2012.3)、Recruit Works Internship「ミドル の セカンドキャリア 脱後ろ向きへ新提案」、富士ゼロックスニュースリリースほか各種二次情報と、九州産業大学論文「中高齢者のセカンドキャリア支援に関する考察」より同社と推測される資料を一部参照

富士ゼロックス 実施施策

2003年に立ち上がったNew Work支援プログラムの一部を残しつつ、2006年から「再雇用」「再就職支援」「独自」等の定年後のコースを選択するプログラムを再構築。

New Work 支援プログラム/セカンドライフプログラムの概要

New Work 支援プログラム セカンドライフ・プログラム

2003 2006

活き活き公募

ダブルジョブ・プログラム

フレックス・ワーク制度

活き活き匠FA

制度

シニア・テーマ休職制度

独立支援制度

社内の新たな仕事に挑戦可能

公募により、一定期間、現職を離れずに30%

で社内兼務可能

社員の身分のまま、兼業・自己啓発のための時間確保可能(比率は40%・給与カット)1年以内だが、延長可能

専門性・経験を活かすために「匠」として希望部門とのマッチング実施可能

教育・NPO・独立準備等のテーマで休職可能(最長2年)

自社を離れて独立・起業・転職可能(休職最長1年・支援コンサル/研修あり)独立後協同組合を作り、同社とも協業

応募者が少ないもの等を除き

精選・再構築

ダブルジョブ・プログラム

フレックス・ワーク制度

シニア・テーマ休職制度

(同左)

再雇用コース在籍企業での再雇用に進む

オールFX

再就職コースグループ企業での再就職に進む

再就職支援会社利用コース

グループ以外の会社への再就職に進む

独自プランコース

自力再就職・起業・ボランティア等独自の選択に進む

シニア転進コース

定年を待たず、自己プランに着手(50歳以上→要望で45歳以上に変更)・退職金割増支給

2

現在はキャリア相談員のみ

定年前に本人と部門長が保有能力・貢献可能領域を記入

例「印刷業界への提案」「提案書の作り込み」等

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Spurce: 富士ゼロックスインタビュー

富士ゼロックス 実施施策 再雇用コース

再雇用コースでは元々再雇用の機会提供を目的としていたが、今年各自のモチベーションに合わせた働き甲斐のある会社を目指し、6つのコースに再編成した。

再雇用コース

2001

2017

概要再雇用に関するアンケート

(本人、マネージャー、同僚対象)

目的:再雇用の機会提供

目的:上記+各自の意識に応え、働き甲斐のある会社へ

A 社員と同様に働く

B 補助的役割、事務作業的仕事が主

C 単純反復作業が主

S

(今後増)専門的役割と同等の高い専門性を要する(研究開発に関わる部下育成等)

SS 特段高い専門性を要する

実績連動現役と同等の個人目標値に対する実績に応じて報酬が定まる(営業等)

全項目に対し評価はマネージャー>本人>同僚となっている

再雇用者として働くうえで、70%の人が自己成長や達成感を重視、仕事に相当する金銭的報酬は必要だが重視すると答えた人は40%に留まっている

– 現在の中高年層は会社に大事にされてきた世代であるため愛社精神が強く、定年後も会社への貢献を重視する傾向がある

– 40歳未満は社内の制度等が厳しくなった世代であるので、価値観が異なる可能性が高い

再雇用者の60%が肉体/精神的にゆとりをもって働くことを、30%は可能な限り全力で働くことを希望(どちらでもないは10%)

2

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2002年にキャリア相談室を設置して以来利用者数:のべ約4700名年齢層:50歳代が全体の4割に(2016年度)

キャリアワークショップも、仕事やお金を含む自身の今後に関係するため、真剣に取り組む社員が多い

社内でのキャリアに加え、ライフプランを見据えたキャリアの形成に関心が高まっている

Source: 富士ゼロックスホームページ「多様性への取り組み」「安定した就業への取り組み」

富士ゼロックス 成果・課題

再雇用コースを選択する社員が8割弱と多いものの、独自プランコースや他社への再就職支援コースを選択する社員も存在。中高年のキャリア相談室活用も増えている。

セカンドライフ・プログラム利用者コース内訳(2016年度・n=154)

オールFX再就職コース

29

(19%)

8

(5%)

9

(6%)

独自プランコース

再就職支援会社利用コース

108

(70%)

再雇用コース

2017年3月末現在、富士ゼロックス・関連会社で1332人の定年再雇用従業員が勤務(対前年115人増加)

キャリア相談室/キャリアワークショップ利用者

3

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Source:株式会社富士ゼロックスインタビューよりADL作成

富士ゼロックス 成果・課題

役職定年後の役割変化対応の難しさ等もあり、キャリアを考えるタイミングの遅さや、社外を含めたキャリア検討機会の促進といった課題の解決が求められる。

現状の課題・今後想定される変化と対応方向性

現状の課題・今後想定される変化 対応方向性

3

キャリアを考えるタイミングの遅さ• コース選択にあたり、自身の能力、貢献領域の認識は55

歳のキャリアフロンティアワークショップから行われるが、本気で考えるのは59歳の人が大半

• セカンドライフを意識するのが55歳の研修では遅いという意見もある

ブランディングにおける社外交流促進の必要性増加

• 社外交流促進を会社として支援することが、今後は新卒採用等でのブランディングにもつながりうる

各種研修等の早期化• セカンドライフプログラム説明会や社外転進制度の早期化の必要性が議論されている

社外転進・自己研鑽などの後押し強化• 社内で活躍し続けてもらうためにも、社外に目を向ける機会を用意する必要もあるように感じる

役職定年後の役割変化対応の難しさ• 任用解除後の新たな役割への適応とモチベーションの維持は、直近の課題となっている

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Source: SERVICE GRANTホームページ

(参考)富士ゼロックス シニア活用外部サービスの提供

富士ゼロックス総合教育研究所ではNPO法人と連携し、シニア向けプロボノ人材育成プログラムを提供。

職業上のスキルや専門的知識を生かしたボランティア活動「プロボノ」により NPO 支援活動に取り組む認定NPO法人サービスグラント(本部:東京都渋谷区、代表理事:嵯峨生馬)は、株式会社富士ゼロックス総合教育研究所との協働により、50代以降の働き方を考える、シニア層向けの異業種企業による新しい人材育成プログラム「プロボノ価値共創プログラム(シニア版)」を、11月10日(木)より開始することとなりました。

企業に勤める50代前後のシニア層に対する課題として、役職定年を迎えるタイミングでモチベーションを下げてしまう、仕事以外での社会経験

が乏しく定年後に社会とどのように関われるかイメージできないといったことが挙げられます。こうした中、「プロボノ」をキーワードに、「身近な地域や社会課題の現実に触れる」「異業種企業とコラボレーションの機会を通じて自分の強みや課題を実感する」「自らの働き方やキャリアの選択肢を考える」ことを目的としたプログラムを実施します。

「プロボノ価値共創プログラム(シニア版)」実施概要

実施日程 : 11月10日(木)、11日(金)、25日(金)、12月7日(水)の全4日間 9時〜17時参加企業 :富国生命保険相互会社、東京エレクトロン株式会社、他3社参加社員数: 5社12名支援先団体:特定非営利活動法人ジービーパートナーズ企画・運営:株式会社富士ゼロックス総合教育研究所、認定NPO法人サービスグラント

実施内容 :企業のシニア人材が、NPOの活動支援を通じ、足元で起こっている社会課題の現実に触れる。また異業種他者とのコラボ機会を通じ、自分の強みや課題を実感すると共に、自らの働き方やキャリアの選択肢を考える目指すプログラムです。

富士ゼロックス総合教育研究所:シニアのNPO活動支援

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富士ゼロックス 20~30代社員に向けた取り組み

20~30代社員に向けたキャリア開発支援・新たな関係性の構築に関する取り組みは下記の通り。

社内外での研修

(キャリア自律につながる)人事制度の整備

(兼業・出向等)他企業での修羅場体験

働き手の処遇の整備

転進先の紹介・マッチング・独立支援

業界横断での環境・ネットワーク整備

• 若手基幹人材育成プログラム(社内での一年間の課題解決型研修:公募方式)• 若手基幹人材育成プログラム(社外での異業種交流研修等・選抜方式)• 自己啓発プログラム(社内WBT・各種外部通信教育:全社員対象)

• 職務型人事制度(役割をベースとしたグレーディング/報酬/評価制度・全社員)• キャリア開発制度(年一回のキャリア開発計画登録と上司面談:全社員対象)国内外留学制度(国内外の大学院留学:公募方式)

• グループ公募(国内全グループ会社での公募異動:公募方式)

• 海外業務研修制度(海外グループ会社でのOJT:公募方式)

• ポイント制退職金制度(勤続や年功要素を廃した退職金/年金制度・全社員)• 育児等の再雇用制度(育児や介護で退職した後に再度雇用する制度・全社員)

(特になし)

• バーチャルハリウッドプログラム(自発的な組織風土変革活動を社外へも活動範囲を拡大・公募方式)

キャリア開発支援

新たな関係性の構築

左記の取り組みの概要取り組み項目

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富士通 まとめ

富士通ではグローバルな競争力維持と労務構成の高年齢化から幹部社員の社外転進等を促進。セミナー等の対象年齢を引き下げ、近年ようやく活用が進みだした。

企業の立場 / 企業名 送り出し企業 / 富士通

背景・狙い

実施施策

• グローバルな競争力維持と労務構成の高年齢化から、幹部社員の社外転進促進や、高付加価値労働への継続雇用を目指している。

• 1992年から幹部社員の社外への積極的なキャリア展開に向けた支援を行っているものの活用が進まず、様々な形で促進を図っている

• 2011年頃からは、制度による経済面での支援に加えて、マインド面の支援としてC&Lデザインセミナーを開始し、計画的に対象年齢を引き下げ。

• 一般社員・幹部社員向けのキャリア研修に約2,000名が受講し、近年50歳前半層での転身者も出てきている模様。

• 幹部社員の社外転身者のうち、約半数が会社支援によるもの。

• 高齢者に関する今後の最大の課題は、高付加価値労働での継続雇用ポジション準備。

実施施策

成果・課題

1

2

3

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Source; 経団連「ホワイトカラー高齢社員の活躍をめぐる 現状・課題と取組み」(2016.5)

富士通 背景・狙い

富士通ではグローバルな競争力維持と労務構成の高年齢化から、幹部社員の社外転進促進や、高付加価値労働への継続雇用を目指している。

中高年社員活用の背景

背景 狙い

幹部社員の社外転進の促進役職離任後は社内に限らず、社外へも積極的にキャリアを展開

できるよう後押しする

労務構成の高年齢化• 従来の事業領域を中心に、社員の高齢化が急速に進み、適正な労務構成の維持が経営課題となる

グローバルな競争力維持グローバルにITを活用したテクノロジーソリューションを中心としたサービスの提供へと主力事業のシフトを進め

る必要がある。

1

社員の高付加価値労働への継続雇用• 比率が高まる高年齢者に関して、高付加価値労働に継続してついてもらうことを考えなければならない

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Source:経団連「ホワイトカラー高齢社員の活躍をめぐる 現状・課題と取組み」(2016.5)

富士通 実施施策

富士通は1992年から幹部社員の社外への積極的なキャリア展開に向けた支援を行っているものの活用が進まず、様々な形で促進を図っている。

中高年活用施策の時系列整理

2015201020052000-1995

2011

C&L

デザインセミナー

2

1992

人材開発室設立

2006

早期退職優遇制度「セルフプロデュース

支援制度」

2011

キャリア支援専門組織による転身サポート強化

セルフプロデュース制度を導入するもあまり活用されず、専門組織による転身サポートを強化

幹部社員に役職離任後、社外転進を目指してもらうために発足

1999~2000頃キャリアデザインワークショップ

2002

FA制度

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Source:ライフワークス事例、富士通ホームページ「人材開発・キャリアデザイン」

富士通 実施施策

富士通は転進を活性化させるべく、セルフプロデュース支援やセミナーを実施。特にC&Lデザインセミナーはキャリアを考えるきっかけとして計画的に対象年齢も引き下げ。

中高年活用施策の全体像

2

40歳

60歳

50歳

役職離任前面談(解任1年前/59歳)• 役職離任後の進路についての希望確認および職務提示

ナイスライフセミナー(56歳)• 企業年金主催で実施する主に定年意向に向けたマネー・ライフセミナー

転身サポート/再就職支援会社活用(55歳頃~・幹部)• 幹部社員を対象に、転進後の定着を促進するために、転籍ありきではなく、本人の意向や出向先の要請に応じて出向後に転籍する仕組みなどを用意

C&Lデザインセミナー(50-53歳)• 社外活躍も含めて中高齢期のキャリアを考えるきっかけの場としており、2013年度に全幹部社員に必修化、年齢も53歳から50歳に段階的に引き下げ

• 役職離任後の人事制度や自身の強み等の自己理解、マインドセット変革の必要性や外部環境に対する理解の促進を目的としたプログラム+会社によるキャリア支援の説明

セルフプロデュース支援制度(45-59歳)• 「退職金加算」と資格取得等の教育費補助等を用意• 一般社員は50歳、幹部社員は55歳で加算金額が最大

キャリアデザインワークショップ• 一般社員向けキャリア研修は必修から上司推薦性にしていたが、2017年から49歳全員必修に(引き下げ予定)

• 外部委託でキャリア棚卸+価値観整理でビジョンを作る

キャリア相談• キャリアデザインに関して自ら解決していくためのきっかけを得るために、自分自身と対話をする場として、希望者に対して相談を行っている

社内募集制度・FA(フリーエージェント)制度• 強化事業分野/プロジェクトごとに、求める即戦力人材を社

内イントラネット上で公開募集する制度や、社員本人からの積極求職を可能にした制度を用意

働きがいや生きがいにつながる多様なキャリアプランの実現を後押し中高年活用の考え方(ADL推察)

60-65歳:再雇用

55歳頃:役職解任

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Source; 経団連「ホワイトカラー高齢社員の活躍をめぐる 現状・課題と取組み」(2016.5)

富士通 実施施策 キャリアデザイン支援室

富士通のキャリアデザイン支援室は、「人材ニーズ」と「各人の強み」マッチングを支援する役割を担っている。

キャリアデザイン支援室(前身:人材開発室は1992設立)

ミッション

• 「人材ニーズ」と「各人の強み」のマッチングを支援し、社員と組織双方の活力向上と持続的成長に貢献する

• あくまでも自律的なキャリア選択をしていく意思を尊重し、応援することが大切

• 発足当初から、幹部社員が「生き甲斐・やり甲斐」のある仕事を得るチャンスを提供することや、中堅・中小企業に対して成長のカギとなる人材を紹介することを見据えて取組みを推進してきている

蓄積した財産• 受入れの可能性が高い企業の求人開拓先• キャリアカウンセリングにおけるノウハウの、出向・転籍した先輩方からのアドバイスや体験談等を整理した事例集- 事例集は前述のC&Lデザインセミナーで活用

主な業務

• キャリアについての各種相談• 社外への転身の意思を固めた人に対して、求人情報の提供やキャリアの棚卸し• キャリアカウンセラーの人選・要請

- キャリア支援室に相談に来る幹部社員に対し、出身組織への理解が深いキャリアカウンセラーをアサインできるよう、各部門の幹部社員経験者からキャリアカウンセラー候補を探す

• 幹部社員がマッチしそうな企業に直接出向いて、信頼関係の構築に努めている

- 求人の開拓にあたっては独自のルートのほかに、産業雇用安定センターなどとも連携しているほか、パソナやリクルート等民間の再就職支援会社とも業務提携をしながら紹介している

- 求人情報の社内への周知については、社内イントラネットやメール配信などで幹部社員でffが確認できるようにしている

幹部社員のキャリア

カウンセリング

求人開拓・紹介

2

転進準備支援 • CVの書き方や面接の練習なども実施

まったく別の業界に転進する人も多い

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Source; 経団連「ホワイトカラー高齢社員の活躍をめぐる 現状・課題と取組み」(2016.5)、富士通ホームページ「人材開発・キャリアデザイン」、富士通インタビュー

富士通 成果・課題

富士通のキャリア支援では一般社員・幹部社員向けのキャリア研修に約1,500名が毎年参加し、近年50歳前半層での転身者も出てきている模様。

キャリア支援の効果 他研修受講者数(2016年度までの延べ人数概算)

• キャリア支援とキャリア開発室の活動に対する社内での認知度が向上している。

• 教育専門組織と連携し、幹部社員および一般社員向けに自らこれからのキャリアを考えるためのキャリア研修(C&Lデザイン

セミナー・キャリアデザインワークショップ)を実施しており、毎年約1,500名が受講している。

• 主にC&Lデザインセミナーの効果でキャリアデザイン支援室への相談者は増加傾向にあり、50 歳台前半層からの積極的な転身者も増加するなど、取組みへの意識も高まってきている。

• 50 歳で明確にキャリアビジョンを描いている幹部社員は少な

いため、これからのキャリアを考えていくことの重要性に気づき、行動に繋げていけるよう、キャリアセミナーを実施するとともに、継続的なフォローを行っていくことが重要。

• 幹部社員の社外転身者のうち、約半数が会社支援によるもの• で、元々はごくわずかであったが、C&Lセミナーを通じて倍増したという印象

• 領域としてはまったく別の業界に、という人も多い

600

社内募集制度(1993年~)

FA制度(2003年~)

3 000

3

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富士通 20~30代社員に向けた取り組み

20~30代社員に向けたキャリア開発支援・新たな関係性の構築に関する取り組みは下記の通り。

社内外での研修

(キャリア自律につながる)人事制度の整備

(兼業・出向等)他企業での修羅場体験

働き手の処遇の整備

転進先の紹介・マッチング・独立支援

業界横断での環境・ネットワーク整備

・部門の特性に合わせたキャリア教育の実施・階層別(昇格時)教育に含めたキャリア教育の実施

・年功要素を排除したコンピテンシーに基づく評価制度・社内ポスティング、FA制度

・(本人のキャリア開発を目的とした)他企業への出向・グループ会社、海外支社への出向

(転身支援を目的とした処遇の整備は特になし)

(転身支援を目的とした処遇の整備は特になし)

(転身支援を目的とした処遇の整備は特になし)

キャリア開発支援

新たな関係性の構築

左記の取り組みの概要取り組み項目

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Contents

1 高齢者雇用の在り方

1-1:サマリ

1-2:個社詳細調査結果

1-3:海外企業の人事的取り組み

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ハードを売る時代からソフトを売る時代への移行に伴い、AT&Tでもソフトウェア技術やデータサイエンスの知見を要する人材の必要性が高まってきた。

AT&Tにおいて必要とされるスキルの変化

AT&T 背景・狙い

• ハードウェア技術• 有線通信技術

• ソフトウェア技術• インターネットプロトコール、無線技術• データサイエンス能力

ハードウェア、ケーブルの販売インターネット、クラウドの構築

無線通信の提供

AT&Tが社員に求めるスキル

• AT&Tの無線ネットワーク上のデータ通信量はほぼ0

• ディレクTV(衛生テレビ)の買収(630

億円)• 2007年から2015年にかけてAT&Tの無線ネットワーク上のデータ通信量は250倍以上増加

• 2020年までに、ハードウェアの75%

をソフトウェアシステムに置き換えることを目標に掲げた(2012年)

出所:Harvard Business Review 2017/05, AT&T HP Skilled Workforce One Paper よりADL作成

2000年

ハードを売る時代2007年頃~

ソフトを売る時代業界の変化

具体例

AT&Tのビジネスモデル

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AT&Tでは現有人材の再教育により、技術需要の変化に対応してきた。大企業によるこの種の取り組みは前例がなく、業界各社から注目を集めている。

出所:Harvard Business Review 2017/05 よりADL作成

AT&T 人材育成の方針

AT&Tでは、現有人材の再教育により、技術需要を満たす人材の獲得に努めてきた

必要なスキルの持ち主を市場で調達することもできますが、技術人材の供給は限られていることをみんなが知っています。誰もがそういう人材を探しているのです。このギャップを埋めるもう一つの方法は、現有人材を再教育してレベルアップさせるよう頑張ることです

(AT&T人事オペレーション担当シニアバイスプレジデント)

業界各社、技術需要に対応できる人材を欲しているが、獲得に向けた手法は未だ模索している模様

新しいスキルを必要としているのはAT&Tだけではない。最近のデロイトの調査によれば、大企業の経営幹部の39%が、必要とする人材を「見つけられない」または「ほとんど見つけられない」と答えている

(Harvard Business Review 2017/05)

再教育により技術需要に対応した大企業の前例はなく、今後のひな型になりえるか業界各社から注目が集まっている

膨大な数のスタッフを再教育しようというAT&Tの試みは前例がない。何万という仕事、何十億ドルという株主価値、そして伝説的ともいえる企業ブランドの未来がかかっている。もし成功すれば、時代に取り残されようとするテクノロジー企業が、グーグルやアマゾン・ドットコム等のデジタルネイティブな新興企業とどう戦うかのひな型になる。しかし、もし失敗すれば、他社も内部改革に及び腰となり、グローバルな労働市場にさらなる圧力がかかるだろう

(Harvard Business Review 2017/05)

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知識の習得、共有を主軸とした現有人材の再教育を実施。最適な学習法の特定、学習意欲の向上等を前後で実施することにより、効果最大化を促す仕組みとなっている。

施策の概略と効果最大化のポイント 知識習得・共有の重要性

AT&T 再教育の施策概略

出所:Harvard Business Review 2017/05 よりADL作成

• 不足スキルの特定• 最適学習法の特定• 学習の動機づけ• 学習意欲の醸成

• 知識の習得、共有• 学習意欲の醸成

• 上司との対話• パフォーマンス評価• 学習意欲の醸成

企業の従業員の将来は知識ネットワークの構築にかかっている。この種の学習は、既に私たちのモバイルで変化する世界を反映している。今日の人びとは、本やセミナーから学ぶように、オンラインや直接対面で他者から学ぶことがわかってきた。それは、ハイテクに精通した学習者をその可能性の限界まで引き上げる、知識共有の文化を創出するのだ。

Institute for Corporate Productivity(i4cp;企業生産性研究所)のCEOKevin Oakesは、高生産性を達成している企業に対する詳細

な研究の結果、高生産性企業は低生産性の組織と比べてはるかに高い(4倍)知識共有を実現しているという結論を述べている。

このネットワークと知識の時代の中で、成功した組織は、学習とパフォーマンスの関連を認識している:AT&Tが最近発表したところによれば、同社の従業員たちは毎週5から10時間のオンライン

学習でスキルをアップデートしているそうだ、そうしなければ「自分自身を技術的に時代遅れにしてしまう」からだ。

現有人材の再教育

学習トレーニング人事

オペレーション(評価)

オンラインセルフサービスプラットフォーム

1

2

3

・ XXX:各施策の中心的な取り組み赤字:効果最大化に寄与する取り組み

凡例

出所:Tech Crunch 「知識経済の中での生き残りには、企業内教育が鍵だ」

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再教育を効果的に行うにあたり、不足スキルの特定、最適改善法の把握、計画的キャリア選択、最適な人材計画の実現を支援するプラットフォームを提供している。

オンラインセルフサービスプラットフォームの例

AT&T オンラインセルフサービスプラットフォームの事例

出所:Harvard Business Review 2017/05 よりADL作成

期待される効果セルフサービスプラットフォーム 左記の主な機能

ジョブシミュレーション

キャリアインテリジェンス

キャリアプロファイル

• 仕事に関連した現実的な状況を示すとともに、それに対する社員の反応を分析し、様々な仕事に対する適正を評価するツール

• 社内の雇用トレンドや仕事の概要(給与の幅、在籍者数等)を分析したうえで、キャリア上の意思決定をするためのツール

• 各人のスキルを定量評価するツール(コンピテンシー、ビジネス経験、資質等)

最適な人材計画の実現による知識習得意欲の向上

• 現実の状況と社員の意見を併せて、複数の仕事に対する適正評価を行えるため、最適な人材計画を模索できる

• 学習目的の設定

計画的なキャリア選択の実現による知識習得意欲の向上

• 関心を持つ職種の過去の在籍数等を把握したり、その職種の社員と連絡を取ることができる

• 学習目的の設定

不足スキルの特定、最適なトレーニングの把握

• 評価結果から能力プロファイルを作成し、新しい仕事の要件と比較し、獲得すべきスキルを把握できる

• 社内で空きのある仕事を探し、必要なコンピテンシーを伸ばすためのリソースを知れる

1

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知識の習得を大前提として、授業料払い戻しによる資金援助や修了証明による学習意欲向上、未履修者との差別化等の社員の利用を促すような工夫が施されている。

学習トレーニングの事例と実施状況

AT&T 学習トレーニングの事例

出所:Harvard Business Review 2017/05 よりADL作成

主な事例

オンライン修士号

ナノ学位

個別講座(大半はオンライン)

• ジョージア工科大学、ユダシティ、AT&Tが共同で、コンピューターサイエンスの公認修士号を授与

• 大規模オンライン講座(MOCC)を通じて提供される修士号としては初

• 当プログラムでは6600ドルで受講可(通常4.5万ドル)

• 厳選された講座を集めたプログラム• ソフトウェアエンジニアリング、コーディング、ウェブ開発等の需要の高い技術専門分野のトレーニングを実施、認定書を発行

• 年間8000ドル/人までを援助

• 月200ドルで無制限に受講でき、終了期限はない• 修了すると会社から受講料の半額が返還される• 一部講座では、修了のデジタル証明書代わりのバッジが付与される

2

左記の詳細

• 2016年初めの段階では、232人の社員がプログラムを受講中だった

• 2016年初めの段階では、1101人の社員がプログラムを受講中だった

• 2015年末までに、AT&T

は5.3万人の社員に1.7

万個のバッジを配布した

社員の参加状況

※AT&Tの従業員数は28万人

社員の利用を促す取り組みが実施されている– 授業料払い戻し等の資金援助が充実

– 修了証明による学習意欲向上、未履修者との差別化の工夫が施されている

これらのトレーニングに社員は週5

時間から10時間を費やしているとされる

更に将来の社員候補生を育てる目的で、社外向け講座を実施– ユダシティ、ジョージア工科大学と協力して、社外の人たち向けの講座も開講している

工夫と成果

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再教育を行うにあたり、社員の意欲向上を目的として、パフォーマンス指標の簡素化、評価基準及び報酬制度の再設定等の人材オペレーションの見直しを実施。

人材オペレーション見直し内容概要と見直しによる効果

AT&T 評価・報酬制度の見直し

出所:Harvard Business Review 2017/05 よりADL作成

見直し部分の概要 見直し部分の詳細 期待される効果

報酬制度の再設計

パフォーマンスに対する評価基準の再設定

パフォーマンス指標の簡素化、及び貢献度の重視

• 変動報酬部分の増加• 需要の高いスキルを重視し、変動報酬に反映

• 五段階評価において、パフォーマンスに対する評価基準を高める

(基準改定後、上位二つ、下位二つの評価を受けた人はそれぞれ5%減少、37%増加)

• 各自が事業目標にどう貢献したかをより重視

• 指標を簡素化することで、仕事の市場価値を各自に認識させる

ハイパフォーマーの意欲向上

危機感の醸成による意欲向上

市場価値の高いスキルの持ち主への好待遇による意欲向上

3

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再教育に向けた対策は充実しているが、変化に消極的な社員の反発は不可避。ただ、変化を希望する者への機会提供が目的であるため、反発は自然減として賄える想定。

懸念点に対するAT&Tの基本方針

AT&T 再教育実現に向けた懸念点とAT&Tの解釈

出所:Harvard Business Review 2017/05 よりADL作成

同僚の多くは四半世紀以上AT&Tで働いており、間もなく時代遅れになるテクノロジーをサポートしている。「我々全員が考えなければならないのは、『この機会に方向転換するか、それとも自分が得意とするテクノロジーがお払い箱になった時、いっしょに引退するか』なのです。」それでも、W2020に対する不安を表明する社員は多い。無線サービスを提供する子会社、AT&TモビリティのCEOであるグレーン・ルーリーは、たとえ制度が整備されても、長年同じポストにいて高報酬を得てきた人たちは、仕事やスキル、将来の雇用をめぐる不安に悩まされる可能性があると認める。

今回のプログラムの原則の一つは、会社を辞めたり職を失ったりする人の数を最小限に抑えるため、希望する社員全員に、会社とともに変わるチャンスを与えるというものだ。要員減は避けられないものの、大部分は自然減でまかなえるだろうと同社では見ている。ただ、「ギアチェンジ」に積極的でない社員は、いずれ会社を去る必要に迫られるだろう。この点は、古いテクノロジーが時代遅れになり、未来の機会が極めて限定されるということを考えるだけで明らかだ。

• 働き以上の報酬をもらってきた

• 長年同じポジション• 変化に消極的

再教育プログラム• 上司との対話• 不足スキルを補う教育システム

• 意欲向上システム• 評価制度

定量的に評価されることによる社内競争への嫌悪感や変化に対応できず退社

変化に積極的、中立的

変化に対応、成長し、会社に貢献

反発は不可避、あくまで自然減少の範囲内

会社と変化を希望する者への機会提供を重視

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2013年の現有社員への再教育開始以降、現在までに2.8億ドル以上投資してきた。サービス提供スピードや効率の向上が既に確認されている。

出所:Harvard Business Review 2017/05 及びAT&T HP よりADL作成

AT&T 再教育の成果

現有社員再教育の取り組み開始

年間予算

25%増加

• 昇進件数の47%

は利用者だった• 製品開発サイクル:40%短縮

• 収益を上げるまでの時間:32%削減

投資額

社員教育能力開発プグラム

学費援助

2014年 2015年 2016年2013年

2.5億ドル以上

3000万ドル以上

2.5億ドル以上

3000万ドル以上

?

?

?

?

?

?

2008年 2012年

2.5億ドル(AT&T Universityの構築)

成果

同程度以上の投資が行われている模様

利用者数• 14万人• 当時技術職の半数は利用者

具体例:175以上の市場、450以上の顧客に対するサービスへの拡張に伴う「オンデマンド」容量の開発を半年で実現( 2014年以前であれば最低1年かかったと推測される)

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米小売最大手Walmartは、NGOと協働で小売業界に従事する販売員のキャリア形成支援プログラムに550万ドルを拠出。転職支援等も視野に入れた取り組みを始めた。

Walmart:小売業界に従事する販売員のキャリア形成支援プログラム(2016.4)

Walmart キャリア形成支援プログラム

Source: sustainable japan “【アメリカ】ウォルマート基金ら、小売販売員のキャリア形成支援に550万米ドル拠出” (2016/04/25)

主体• ウォルマート基金(米小売最大手ウォルマートの財団)• アスペン・インスティテュート(リーダーシップ普及で世界的に著名なNGO)• Corporation for a Skilled Workforce(キャリア形成を支援する活動を行うNGO)

概要

規模

• 小売業界に従事する販売員の持続的なキャリア形成を支援するためのプログラムを共同で立ち上げ。• 今回のプログラムでは、キャリア形成を明確にし、スキルアップや関連職種への転職を実現できるようにしていくことで、小売販売員の満足度を上げるとともに販売の仕事に対するロイヤリティも上昇させることを目指す。

• 具体的には「Reimagine Retail」プログラムで、小売販売分野の新たなキャリア戦略を構築するための調査、戦略立案、パイロットプロジェクトの実施、ガイドラインとツールの作成を行う。

• 550万ドル(約6億円)を拠出(ウォルマート基金とアスペン・インスティテュート)• 拠出金の一部は、アスペン・インスティテュートが実施している他のイニシアチブへの支援にも充てられる。(小売・飲食業企業40社以上が集まり若者の雇用を促進する「100,000 Opportunities Initiative」、販売員のスキル向上を目指すための業界横断的ネットワーク「Upskill America」など)

背景

• 全米小売業協会によると、現在アメリカ人の4人に1人、420万人が小売業に従事、今後更に増えると予想されている。米国労働統計局も小売販売員は全米で最も数の多い職業と報告しており、重要性が高い。

• 一方、小売販売員や飲食店員は世界的に所得水準が低く、社会的格差の是正のためには無視できない状況となっている。

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マクロ経済政策の在り方

就学前教育の在り方

高齢者雇用の在り方B

C

D

プロジェクトの構成A

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Contents

1 就学前教育の在り方

1-1:日本の就学前教育強化における重要課題

1-2:課題解決に向けた想定施策

1-3:諸外国8ヵ国の取り組みに関する調査結果

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それぞれ下記のような点に留意することで、実効性あるアウトプットを目指す。

TASK2:就学前教育の在り方に係る調査

検討ステップ 検討内容 主な想定情報ソース 想定アウトプット

諸外国における政策・施策の動向理解

• 就学前教育に関する学術発表

• 各国に関する各種公開情報

各国の政府発表資料

関連団体の発表レポート

• 現地視察(3日間程度)

• 諸外国における就学前教育に関する基本思想

• 具体的な政策アクションや実情

日本における就学前教育の現状について

の理解

• 日本における就学前教育の提供形態(公的およびプライベートの両面)の状況を調査する

• 就学前教育に関する現在の議論や論点を整理する

• 就学前教育を取り巻く前提諸制度を整理する

• 各種公開情報

政府発表資料

関連団体の発表レポート

関連する報道記事や学説

• 国内有識者および(特にプライベート側の)サービス事業者へのインタビュー

• 日本における就学前教育の提供形態

• 既存の制度状況および関連する議論論点

今後の就学前教育の在り方とその課題の

導出

• 海外動向と国内状況を踏まえて、日本としてあるべき就学前教育の姿について提言する

• また、その際に議論していくべき論点や解決すべき制度課題などについてあわせて整理を行う

• TASK1-1および1-2の検討結果

• 貴省とのディスカッション

• 日本としてあるべき就学前教育の姿

• 実現に向けた制度課題

TASK2-1

TASK2-2

TASK2-3

• 各国の子育て政策の検討経緯や今後の方向性について調査する

• 特に就学前教育の定義、教育内容、提供・管理体制等についてその提供実態を含めて調査する

• なお、文献調査対象として8ヵ国程度、現地施策対象として2ヵ国程度を想定

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日本との類似性および幼児教育への注力度から、下記8ヵ国の調査を実施。特に第三者評価が優れているイギリス、ニュージーランドについては現地視察を実施。

調査対象国の選定

スウェーデン

ニュージーランド

イギリス

フランス

ドイツ

韓国

オランダ

アメリカ

俯瞰調査 詳細調査 現地視察1 2 3調査対象候補国選定理由

調査粒度

公財政支出・私費支出の合計額が大きい

公財政支出・私費支出額の中で3歳以上の幼児を象とした教育への

投資額の割合が大きい

ICT導入に注力

福祉に注力

幼保一元化の実施

3歳以上において福祉と教育のサービスが混在

教育効果の可視化に関する研究に注力多様なプログラムの実施

急速な教育政策への注力幼児教育に注力

日本と類似

二次情報調査を実施

国内有識者ヒアリング実施

現地有識者ヒアリングを実施

(✔)

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Contents

1 就学前教育の在り方

1-1:日本の就学前教育強化における重要課題

1-2:課題解決に向けた想定施策

1-3:諸外国8ヵ国の取り組みに関する調査結果

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2010年前後~

日本は、統一カリキュラムの導入、教育の無償化、教育効果の定量検証等、諸外国の就学前教育のトレンドに乗り遅れているため、今後新たな取り組みが必要。

出所;各種二次情報よりADL作成

就学前教育を取り巻くトレンド

2000年前後~

• 女性の社会進出により、子育てと育児の両立の必要性の高まり

• 保育は家庭だけで担うものではなく、社内として担うべきものであるという保育の位置づけの変化

• 21世紀の知識基盤型社会における教育の在り方への注目の高まり

• 教育無償化の議論の高まり

• 早期教育への注目度上昇• OECD, EU等による教育効果検証結果の公表

• 早期教育への投資に関する好効果の公表

• PISAショックの発生(日本、ドイツ、スウェーデン等PISAの結果が悪かった国)

• 非認知能力の重要性の高まり• ICT教育の注目度上昇

世界規模のトレンドの概要

• 格差是正を目的とした保育施設の設置、幼稚園入園権の整備

• 教育の無償化開始

• 幼保一元化、統一カリキュラムの導入

• 教育効果に関する研究結果の公表• 教育の無償化開始

• 待機児童解消を目的とした施設の設置

• 無償化対象年齢の拡大

世界の取り組み

1960年~

凡例 赤字:日本では実施が遅れている施策

就学前教育を取り巻く世界のトレンド

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近年のPISAショックや教育効果可視化の発展を背景に、就学準備型の思想を取り入れる国が増加。教育水準向上と質の担保両立のため、一元化の動きも強まっている。

諸外国における就学前教育の動向

(*)就学準備型、生活基盤型についての説明は次頁参照

幼保一元化所管官庁一元化

幼保別所管官庁複数

幼保別所管官庁一元化

就学前教育の位置づけ

保育・教育提供体制

就学準備型*

生活基盤型*

仏(注)

米英英

PISAの結果、教育効果可視化の動きを受けて、生活基盤型の一部が就学準備型の思想を取り入れた– 1990年代後半から、OECDや一部国により就学前教育の効果に関する研究が行われ、早期教育の好影響について論じられた

– 2000年以降、PISAショックにより教育政策の方向性を再考する国の発生

一方で「子供らしい時期を取り上げる」ことに繋がってしまうという懸念から、韓国では生活基盤型を重視する動きが続く– 韓国のヌリ課程では、知識概念中心の構造的な小学校教育とは差別化され、幼児の自由選択と遊び中心の統合が強調されている

国の教育水準の向上、質の一元担保・向上、さらなる効果の可視化を目的に所管官庁が一元化される動きが各国で増加– 福祉の意味合いが強かった保育においても教育が重要視されるようになり、保育所と幼稚園の区別の必要性が薄れた

– 所管を統一することで効率的に施策の実現が可能とされた

韓(今後)

日(今後)

現在 日本

スウェーデン

ニュージーランドイギリス

フランス

アメリカ

韓国 オランダ

ドイツ

xxxxxx これまで

凡例

特徴的な動向

出所:各種二次情報をもとにADL作成

(注)仏、独は年齢により使用するサービス機関が異なる傾向が強く、年齢別にみると実質幼保一元化されている状況

就学前教育の動向(調査対象8ヵ国+日本)

日(現在)

韓(現在)

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就学前教育は、就学後も使用する具体的なスキルを重視する就学準備型、子どもの興味関心に沿った生活に根差す経験を重視する生活基盤型に分類される。

出所:「保育における「領域」とは何か(天野珠路)」、その他二次情報からADL作成

(ご参考)就学準備型と生活基盤型の概要

概要

主要採用国

施策の具体例

• 学校への就学準備に向けたアカデミックな(読み書き能力や計算能力に力点を置く)教育を重視する

アメリカイギリスフランス

読み書き能力、数能力の初歩(基礎計算能力),科学的概念と推理などに関わる領域の教育

• アルファベットのブロック体、筆記体の習得(仏)• 単語が書かれたカードの並べ替えにより文章を作る練習(仏)

• 「子ども自身の周囲の世界に対する興味・関心(生活世界:意味体系・理解)を保育展開の出発点に」と考え、子どもが今ここの世界を生きることを大切にする

• 生涯学習の基盤として幼児期を位置づけ、ケア・養育・教育に対して包括的なアプローチをとる

スウェーデンドイツイタリアフィンランド

こどもが興味・関心のある日常に根差した遊びを通してえられる学び

• お店のごっこ遊びの中で教員がうまく誘導することにより、モノの名前をや買い物の仕組みやを知ったり、他の子どもとのコミュニケーションの中で他人の洞察から気づきを得る(スウェーデン、テーマ活動)

就学準備型 生活基盤型

就学前教育の分類

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各国で非認知能力の重要性は高まっており、就学基盤型は認知能力向上のために非認知を重視、生活基盤型は非認知能力を教育の出発点として重視する傾向がある。

出所:「生涯の学びを支える非認知能力をどう育てるか」ベネッセ教育総合研究所2016、その他二次情報よりADL作成

(ご参考)認知能力と非認知能力

非認知能力

思いやり、やり抜く力、協調性、自制心、社交性、勤勉性、意欲、自尊心、信頼、忍耐力など

認知能力

言語、論理、空間把握力、記憶力など

生活基盤型非認知能力を教育の出発点として重視

就学準備型認知能力向上のために非認知能力を重視

縄跳びに興味をもつ

縄跳びをする 跳べるようになる 楽しい 跳べるようになる

運動能力(認知能力)

運動能力(認知能力)

相互に高めあう

近年、世界中で注目度上昇

就学前教育の捉え方

事例

就学前教育で重視すべき能力

・・・

やり抜く力、意欲(非認知能力)

興味、意欲(非認知能力)

認知能力/非認知能力と就学準備型/生活基盤型の関係性

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就学前教育の強化において、まず量の確保、その後質の底上げ、向上という流れが一般的。今回は、量の確保実現後の課題整理と施策案に焦点を当てる。

出所:ADL作成

日本の就学前教育強化に向けた論点

日本の就学前教育の強化に向けたプロセス

施設量の確保教育の質の最低限の保証

教育の質の担保・向上

現政策のメイン

• 都市部を中心として待機児童問題解決に向けた園の増設

着手に向けた動きはある

• 文部科学省国立教育政策研究所は、幼児教育研究センターを開設

• 幼児教育研究センターで、試行調査をもとに、評価スケールの議論を実施(H27年度~)

– 質問項目の実現が改善につながるため、質の底上げに効果的とされる

• 中室牧子先生が、子ども成長と質に関する追跡調査を開始予定

ほぼ未着手

• 一部の地方自治体に幼児教育センターを設置し、大学研究者と連携した改善に向けた兆候あり

• 課題の認識・共有⇒解決の好循環の仕組みを作ることが必要

日本の取り組み状況

今回は、量の確保が整備された後に課題となること、その課題に対する施策策に焦点を当てる

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日本の就学前教育の重要課題は、継続的に機能し得る形での質の評価が行われていないこと、教育者の改善を促す仕組みが不足していることである。

出所:有識者インタビューをもとにADL作成

就学前教育の課題

教育者の改善を促す仕組みが不足

重要課題

保育所における教育準備/振り返りの時間が不足

外を知る機会が不足

改善に向けた具体的手順が不明

課題認識・解決の習慣化が困難

就学前教育の強化に向けた課題

2-1

2

保育園で教育を提供することによる課題

• (保育部分と比した際の)教育部分のガイドラインの未充足

• (幼稚園と比した際の)免許制度が幼保で異なることによる教育部分への対応力の低さ

• 教育準備時間の未確保

NA

• 課題を振り返る時間の未確保

• 研修が推奨であることによる施設間の格差の発生

• 研修時間の未確保

• 所管機関が異なることによる、幼保で財源/責任の所在の相違

• ガイドラインが抽象的なことによる、施設間の解釈差の発生

• 遊びを用いた教育における施設間の教育格差の発生

• 組合の乱立• 園長/教員の資質の施設間格差

• 監査の二重化• 質の評価の未実施

• 自園を客観視する機会の不足• 指導計画の形骸化

• 研修の形骸化• 研修機会の不足• 改善方法を相談する相手・機会の不足

幼保間共通の課題

継続的に機能しえる質の評価が未整備

就学前教育の質の向上の一般的な流れ

ガイドライン策定

ガイドラインに即した施策実施

質の評価

課題の認識・共有

改善の後押し

課題の認識・共有

改善

国/自治体 施設

2-2

2-3

2-4

1

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日本の保育所は保育時間が長いため、教育の準備時間を確保するのが困難。また、研修が義務化されておらず自腹で参加する事も多く、質向上の足かせとなっている。

出所:各種二次情報、及び有識者インタビューよりADL作成

(ご参考)日本における幼保間の違い

• 保育所の第三者評価は、質の評価というより、コンプライアンスの評価には役に立っている

• 高い評価を出してくれる第三者評価機関を利用する施設も多数存在する

• 学校関係者評価は正常に機能した場合、親の意見を取り入れるという観点から有益といえる

• 保育園において、教育計画は毎日記入するが、日々の業務に忙殺されているため、教育計画から課題を認識し、改善に繋げるには至っていない場合が多い

• 義務研修以外は施設により実施状況が大きく異なり、施設長の資質に依存している

(有識者インタビューより)

幼保間の運営上の違い

保育園幼稚園

義務研修あり• 公立幼稚園には、法廷研修として• 初任者(新規採用者)研修や10年経験者研修が定められている

• 機能させることが課題

推奨• 推奨であるため、園長の資質に依存し、自腹で参加する場合も存在

• 一人参加するだけでも人手不足なため一部の者のみ参加し、施設に戻り同僚に伝える「伝承研修」が行われる

研修

振り返り時間の確保が可能• 9時から14時までが一般的であるため、

子どもの帰宅後に教育準備や振り切りの時間を確保する事が可能

振り返り時間の確保が困難• 保育時間は7時~18時(更に延長も可)

の園が多く、保育者不足も相まって教育準備、振り返りの時間を確保できていないのが実情

保育/

教育時間

幼稚園教育要領保育園保育指針

(教育の側面が2017年に追加された)ガイドライン

幼稚園教諭免許 保育士資格資格

学校関係者評価任意の第三者評価(民間機関は自分で選べ、質の改善には貢献していない)

評価

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日本の重要課題に対し、 ニュージーランド、スウェーデン、イギリス等では先進的な取り組みが見られる。

出所:各種二次情報及び有識者インタビュー、現地インタビューよりADL作成

日本の就学前教育の課題と諸外国の先進事例

就学前教育強化に向けた重要課題と他国の先進事例

日本の重要課題 諸外国の先進事例

保育以外の時間の確保の仕組みが定められている– NZ:週に一日、保育/教育活動は行わず、成長記録の記入や、教育の準備、教育の質の振り返りの時間に充てることが可能(5人で曜日ごとに交代する)– スウェーデン:一日の労働時間の中で2時間は必ず成長記録の作成、教育準備、振り返り等の活動の時間が確保されている

保育所における教育準備/振り返りの時間が不足

各子どもの成長記録を記録し、施設の教師や保護者と共有し、課題認識を促進している– NZ:成長記録が家庭との連携ツールとして根付いている。また、スキル重視型の教育に対する防波堤の役割を果たしているため、形骸化もしていない– スウェーデン:子どもの成長を写真/動画により記録し、オンラインで親と共有することが根付いている– 英国;ポートフォリオを作成。ポートフォリオの作成状況もOfstedによる監査の内容に含まれる。また、結果の公開と民間の参入が進んでおり、市場原理が

働いているため、監査へのモチベーションは高い– 仏国:監査結果が教師の人事評価に反映されるため、監査へモチベーションは高いと推察– 米国イリノイ州:(special) educational coordinatorという公務員が地域の就学前施設(公私両方、公立は必須)を訪れ、園長、担任などから困っているこ

とや、課題を聞く制度がある

課題認識・解決の習慣化が困難

優れた施設の取り組みを国が紹介する機会を設けている– UK:優れた施設の取り組みを国のHP上で動画として配信– 仏国:政府が優れた取り組みを行う教育実験校を毎年表彰。取り組み紹介や参加学校ごとの紹介ブース等が整備されている(イノベーション大会と呼ばれ

る:イノバシオン) また年に12時間の義務研修も定められており、好きな研修を受講可能

第三者評価では改善点等のフィードバックが監査官から受けられる– UK,NZ等:第三者評価において口頭で意見交換、フィードバックをうける時間があるため、課題の認識と解決に向けた意見交換まで行われる

外を知る機会が不足

改善に向けた具体的手順が不明

国のカリキュラムに基づいた教育がなされているか評価することで、最低限の質を保証している– NZ:EROによる評価で、テファリを順守しているか評価される。順守しない場合、無償化の対象外– スウェーデン:属するコミューン以外の施設をコミューン間で監査することにより、監査の形骸化を防ぐ。また、他のコミューンの現状を知ることにも寄与

評価に保護者の意見を反映したり、結果を公開する等の形骸化防止策が取られている– UK, NZ, 韓国:評価の結果/高評価を示すマーク/補助金受給額を保護者/一般人に公表する等、市場原理が働く仕組みが取られている– スウェーデン:教育指針の中で学校長に保育者の教育を義務付けている

継続的に機能しえる質の評価が未整備

2-1

2-2

2-3

2-4

1

2

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イギリス、ニュージーランド等では質の評価を実施している。成長記録の活用による施設課題の親との共有、評価結果の公開等により形骸化を防いでいる。

出所:各国俯瞰調査結果、有識者インタビュー、現地インタビューよりADL作成

(ご参考)各国の評価制度の概要

保護者の目、日頃の学習で使用する成長記録を

評価に利用することで形骸化を防ぐ

評価結果の公開

教育者への教育

× ○ ○ ○ ○

△ ○ ○ ○ ○

保護者との意見交換

成長記録を評価に利用

××

日本 イギリス(Ofsted)

ニュージーランド(ERO)

韓国

スウェーデン

指導計画は形骸化

監査に親が立ち会うことも可能

保護者へのアンケートが行われる

成長記録について親と意見交換

• 安全性評価は実施されるが、教育の質の評価は義務付けられていない

• 高評価であることを示すマークの配布

• 優れた取り組みを行う施設の詳細紹介

• 親に評価レポートを配布

• 評価結果のWEB公開• 評価結果のWEB公開

• 電子バウチャー形態による補助金受給額の親へ通達

• 保育者への義務研修はなく、実施状況は施設/地域による

• 市場原理が働くことにより、教育者への教育が促されると推察

• 市場原理が働くことにより、保育者への教育が促されると推察

• 教育指針で、学校長の義務として定めている

• 認可取り消しとなった施設も存在

教育の質の改善

ガバナンス × ○ ○ ○ ○3,4年周期の評価制度が義務化されていない

許認可悪質施設を

教育省に通達可能交付金増減 許認可

形骸化防止

• 評価結果のWEB公開

何れの国も質の評価は機能している

評価の形骸化防止策と質改善に向けた取り組みの比較

1

施設の課題が保護者に共有される

• 保護者の目、地域での口コミが教育者への教育を促している

• 認可取り消しとなった施設も存在

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施設の状況で優先度は異なるが、4つの重要課題は互いに関係し合っている。就学前教育強化に向けて全ての改善に取り組むことが必要。

出所:ADL作成

(ご参考)各課題の相関関係

質の担保・向上に向けた各課題の関係

課題を振り返る日常的機会・習慣が不足

外の優れた取り組みを知る機会が不足

更なる質向上にむけたアドバイザーが不足

時間が無いため質向上にむけた振り返りが

こまめに行えない

振り返りの時間が不足

振り返りの時間が不足

課題を振り返りの習慣化が困難

外を知る機会が不足

改善に向けた具体的手順が不明

そもそも課題を課題として認識していない

課題は認識したが、時間が無い。解決に向けた手順も不明

最低限課題を認識・解決する力はついたが、継続は難しい

改善

改善

最低限の質の保証

改善

課題解決は習慣的に実施しているが、更に向上させる方法が分からない

改善

改善

質の向上

最低限の質は担保できており、質向上を目指す場合質の改善に無関心で最低限の質も担保できない場合

凡例

重要課題

既に満たしている可能性がある

2

2-1

2-2

2-2 2-3

2-42-1

2-3

2-4

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日本は古くから生活基盤型として遊びを重視した教育を実施。日本は東西南北で大きく文化・気候が異なるため、国が遊びを用いた施策を具体的に定めるのは適さない。

出所:有識者インタビューをもとにADL作成

(ご参考)日本におけるカリキュラムに対する考え方

地域ごとに異なる教育の例

夏野菜を育て収穫し観察してみよう!

トマトを収穫しよう!

• 日本の教育ガイドラインは諸外国と比較しても優れている

• 長年議論されて構築されたものだから、就学準備型のように具体策を例示するものになることは無いだろう

• 日本は地域、施設に具体的施策は委ね、創意工夫認めている

(有識者インタビューより)

夏野菜なんて、うちでは育てられない

トマトよりゴーヤがいいな・・・

就学準備型のように、国が教育カリキュラムを定め

その中で具体的施策を提示するのは日本には適さない

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日本は都道府県間の保育/教育格差と比較して、施設間の格差は大きい。特に保育園では他園との研修が不十分なため、格差をそもそも認識していない場合が多い。

出所:有識者インタビューをもとにADL作成

(ご参考)施設間格差

施設間での取り組み格差の例

取り組みの先進性

• プログラムにおける各種目を子どもたちで考える

• リレーでは、各チームで戦略をたて、走る順番を考える

• プログラムにおける各種目名は既に保育者が決定

• リレーでは、各チームで戦略をたて、走る順番を考える

• プログラムにおける各種目名は既に保育者が決定

• リレーにおいて、走る順番は背の順で決定

先進的 後進的

他園の取り組みを知る機会が不足しているため、

自園の取り組みが大きく劣っていることに気付いていない場合が多い

アドバイザーが定期的に客観的視点から指導することで改善が見られた (インタビューより)

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1 就学前教育の在り方

1-1:日本の就学前教育強化における重要課題

1-2:課題解決に向けた想定施策

1-3:諸外国8ヵ国の取り組みに関する調査結果

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海外好事例では、統一カリキュラムにより「質」の内容を定め、カリキュラムに即した就学前教育を行っているか第三者評価を行い、改善を後押しする流れが一般的。

出所:有識者インタビュー、二次情報、現地インタビューよりADL作成

海外好事例の一般的な流れ

海外における質向上に向けた流れ

国でナショナルカリキュラムを定めることで、「質」が指す内容を示す

最低限の質の保証(悪質施設の底上げ)

ナショナルカリキュラムに即した評価指標を設定、

評価を実施

評価で認識した課題の改善の後押し

質の向上

日本:そもそも就学前教育における「質」が何なのか他国と比して曖昧

日本:第三者評価は任意で、かつ内容も質を測るものになっていない(会計監査の側面が強い)

日本:量を補う施策や、無償化に関する議論はあるが、合同研修への参加を促す施策等の議論は不十分

海外好事例

日本

前章の課題 前章の課題1 2

統一カリキュラムを定め、それに即した評価のための統一指標を定め、第三者評価を実施するというのが海外の好事例によく見られる(英国、ニュージーランド等)

OfstedやEROの評価は国が定めたカリキュラムに沿って、指標が設定されており、カリキュラムに準拠しているかどうかが無償化の対象か否かを決める

(有識者インタビューより)

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就学準備型は生活基盤型に対し、中央が具体策を示す点は異なるが、質の評価がカリキュラムの理解を測る内容で、具体策の内容では評価しない点は類似。

出所:各種二次情報及び有識者インタビュー、現地インタビューよりADL作成

(ご参考)質の担保・向上の主な手法

質の担保・向上の先進国の分類

・・・

ERO

中央で定めるカリキュラムの中で具体策まで示す ・・・

中央で定めるカリキュラムは抽象的。具体策は施設の創意工夫に任せる

評価に関しては大きな違いは無い• 国、地方自治体は国のカリキュラムを順守した内容であるかを評価(無償化の基準である)

– イギリスはカリキュラムで具体策を示すが、カリキュラムで示す具体策を実行しているかではなく、カリキュラムを正しく理解し、発達段階に応じた正しい関わりが行われているか等について質問される

• 地方/施設で課題を認識・共有し、改善に努めることで質の向上を図る

生活基盤型就学準備型

・・・

Ofsted

最低限の質を国が保証

最低限の質を国が保証

地方自治体

施設

カリキュラムの具体化の実施

カリキュラムの大枠のみ作成

3,4年周期の評価の実施

最低限の監査のみ実施

凡例

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諸外国の就学前教育提供体系は、カリキュラム具体化/質の評価制度の実施主体、実施状況により分類可能。

出所:各種二次情報及び有識者インタビューよりADL作成

(ご参考)就学前教育提供体制の概要

施設(米、独:

市町村、施設)

所管機関

所管機関以外の政府系機関

(第三者評価機関)

地方自治体(米、独:州)

凡例

カリキュラムの具体化の実施

カリキュラムの大枠のみ作成

3,4年周期の評価の実施

最低限の監査のみ実施

・・・・・・

・・・・・・

優れた評価制度として注目されている優れた評価制度として注目されている

ERO

※自治体ごとに評価を実施

質の評価は形骸化している

・・・

Ofsted

・・・

IEN

・・・

日本、諸外国の就学前教育提供体制

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スウェーデンでは自治体間で評価し合うことにより、最低限の質を保証。保育時間とは別に教育準備時間を確保する仕組み等により、課題認識・改善を後押ししている。

出所:各種二次情報及び有識者インタビューよりADL作成

スウェーデンにおける質の担保・向上における工夫

埼玉 千葉

関東

スウェーデンにおける質の担保・向上

自分のコミューンではない施設を評価することで形骸化を防止

自治体の評価により最低限の質を保障– カリキュラムに準拠しているかを評価

– 「子どもがどれだけ発達したか」、子どもに身に付いた成果は評価せず、「教師がどのような教育を行っているか」を評価する

インスペクターによる評価結果、保護者の代表が集まり意見を出した結果はHP上で公表される

地域毎の前提に配慮し、日本でいう関東ブロック、中部ブロックのような区割り内で評価

最低限の質の保証(悪質施設の底上げ)

質の向上

自治体主導の評価により、悪質な施設を見つけ出す

• 一日の労働時間の中で、保育時間とは別に2時間は必ず成長記録の作成、教育準備、振り返り等の活動の時間を確保

• 子どもの成長を写真/動画により記録し、オンラインで親と共有することが根付いている

– ドキュメンテーションで子どもの成長を継続的に観察することができるため、教育計画作成に役立てる

ドキュメンテーション(子供の成長記録)を記入し、施設/親と共有し課題認識/改善に努める2-2

2-4

2-1

2-3

2-4

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ラーニングストーリーを親と共有。連携ツールとして定着している– 親との関係性強化NZでは重視

– ラーニングストーリーで子どもの成長を継続的に観察することができるため、教育計画作成に役立てる

– ラーニングストーリー作成がスキル重視教育に対する防波堤の役割を果たしているため、形骸化しない

Head Officeが定期的に向上策を実現できているか確認

ニュージーランドではEROが最低限の質を保証。ノンコンタクトタイムの設置、Head

Officeによる定期的な質向上策の確認により課題認識・改善を後押ししている。

出所:各種二次情報及び有識者インタビュー、及び現地インタビューよりADL作成

ニュージーランドにおける質の担保・向上における工夫

ニュージーランドにおける質の担保・向上

最低限の質の保証(悪質施設の底上げ)

質の向上

・・・

EROは現地視察により最低限の指標を満たしているかを判定。口頭で改善点を意見交換可能

– テファリキを順守しているか

(順守していれば補助金を支給)

– 安全性は担保できているか– 法廷数を順守しているか

施設毎に創意工夫ある施策を求めているため、具体的に教育の内容を評価する指標は定まっていない

評価結果の公開

EROの評価により、悪質な施設を見つけ出す

施設ごとに創意工夫のある教育を実施

保育・教育を実施 一日中、ラーニングストーリーの記入や教育の準備、振り返りを実施

曜日ごとに交代し、労働時間内に振り返り等の時間を確保*

ラーニングストーリー(子供の成長記録)を記入し、施設/親と共有し課題認識/改善に努める

2-2

2-4

2-1

2-3

2-4

2-4

*) 地域/施設により何時間ノンコンタクトタイムを設けるかは異なる。 上記はベストケースとされる

Head Office

2-4

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イギリスではOfstedが最低限の質を保証。振り返り時間確保の仕組みは無いが、民間参入により市場原理が働いているため、質向上が行われやすい環境となっている。

出所:各種二次情報及び有識者インタビュー、現地インタビューよりADL作成

イギリスにおける質の担保・向上における工夫

イギリスにおける質の担保・向上

最低限の質の保証(悪質施設の底上げ)

質の向上

・・・

Ofsted

届け出時に事前審査を受けるため、悪質施設のスクリーニングが可能

– 金銭授受の発生する子どもの預かりはOfstedに登録義務がある

現地訪問にて最低限の指標を満たしているかを判定。紙面で改善点が示される

– ナショナルカリキュラムを順守しているか(補助金支給)

– カリキュラムを正しく理解し、発達段階に応じた正しい関わりが行われているか

– 前回監査の結果– ポートフォリオの作成状況

評価結果の公開

Ofstedの評価により、悪質な施設を見つけ出す

登録、評価

質:高い20ポンド/時

質:ふつう10ポンド/時

質:低い9ポンド/時

質を向上させなければ

Bに客を取られる

Aとの比較で

優位に立つために質向上を目指す

値下げ又はハイエンドを目指す

私立A 私立B 私立C

民間参入により施設を拡充したので、市場原理が働いている。

振り返り時間の確保の仕組みは無いが、市場原理が働くため、課題認識・解決の質向上サイクルが形骸化しない

Ofstedの評価は預かり価格は考慮しない。また、預かり価格は自由に設定可能

2-4

2-2

2-3

2-4

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フランスでは教師の自主性を重んじた教育が重視されているため、質の評価においても底上げよりは、教師の発意をいかに認め支援するかという視点のものが多い。

出所:各種二次情報及び有識者インタビューよりADL作成

フランスにおける質の担保・向上における工夫

フランスにおける質の担保・向上

国主催のイノベーション大会(イノバシオン)

イノバシオンを模した教育団体主催のイノベーション大会

IENによる教師の質の評価

年12時間の義務研修

自主研修の受講

教師作成の教材等の出版

教員の自主性

• 優れた取り組みを行う教育実験校を表彰(年1回開催、次回2018年4月)

• 取り組み内容の紹介、入賞校のプレゼン、参加学校が取り組みを紹介するブースコーナーが存在

• イノバシオンに対抗して、自主性の高い教師で独自に開催• 優れた取り組みの紹介と表彰を実施

• 行政組織IENが学校を訪問し、教師を評価。評価結果は人事評価、給与査定にも反映される

• 子どものノート等から、どのような教育を行っているか、教員がどんな力を身につけているかを評価する

• どの研修を選ぶかは各自が選択可能• IENの指導主事による研修やNPO主催の自主研修等がある• 研修受講証明書により受講状況を管理

• IENの指導主事による研修やNPO主催の自主研修等を自由に受講可能• 研修を提供する民間企業はほぼ進出していない

• 教師が作成した教材等のリソースを国/州の資料センターで保管• 国が持っている出版センターから出版• 現在はネット上での教材共有も盛ん

自由参加

自由参加

義務

義務

自由参加

自由参加

取り組みの概要取り組み義務取り組み

フランスを考える上での前提として、中央で教師に求められる資質は定めているが、資質の達成具合の評価や底上げの強要は行わず、自主性を伸ばすというスタンスである点は、他国と異なる

2-2

2-2

2-2

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地方の幼児教育センターが主催し、複数の園で合同研修を定期的に実施。同じアドバイザーが継続して指導することで信頼関係の構築に成功し、改善促進に貢献している。

出訴:インタビューよりADL作成

日本における導入事例

質の向上に向けた導入事例

A系列 B系列 C系列

地方の幼児教育センター

定期的な合同研修

大学・研究者

依頼・提携

地方の幼児教育センターが主導して、複数の園で合同研修を実施

アドバイザーとして、定期的に施策に関するアドバイスを与える

他園の取り組みを知ることで、自園の取り組みが劣っていることを客観的に認識

• 合同研修に参加する園の中で、最も取り組みが遅れていた園の意識はそもそも高くはなかったが、他園の話を聞いて自園の取り組みがあまりに遅れていることを感じ、その場で自ら実施状況を聞いて回る等の意識の変化が見られた

• 質の高い教育に変わろうとするとき、何から始めればいいのか分からないため、すぐそばにいる人にアドバイスを聞けるのは良い

• 年3回すれば質は向上し、毎年やるとサイクルが定着し、その園の文化となる

• 合同研修やアドバイザーの設置を進めている地方自治体はまだまだ少なく、県、市町村レベルでも大きく異なる

導入による効果

2-2

2-2

2-4

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外部のアセッサーによる第三者評価時に、系列園同士で環境評価を実施。互いに評価し合うことで、客観的視点、改善点を受け入れる姿勢の醸成に貢献している。

出訴:インタビューよりADL作成

日本における導入事例

質の向上に向けた導入事例

アセッサー

• 質の評価の必要性を現場でも感じてはいるが、自身の教育内容を否定されることが怖い。系列園同士で第三者評価に立ち会ったことにより、施設間で励ましあいながら質の向上に努めることができた

• 他の園の第三者評価に立ち合い、質の評価を行うことにより、客観的視点が養われたり、施設間の意見交換も促進された。また、評価者側の視点の理解にも繋がるため、自身の園での評価も前向きに受け止められた

• 自身の園の譲れない部分の認識に繋がり、質の向上に対する関心が増した

• 質の評価スケールを導入することにより、課題の認識だけでなく、高評価な部分も認識できるため、質の評価に対する個々のモチベーションは向上し、好循環が生まれつつある

• 外部評価の前に自分たちでプレ評価を行う等、質の向上に対する積極的な取り組みも進んでいる

系列園 導入による効果

評価スケールに基づき第三者評価を実施

• 第三者評価を受ける様子を他の園も見学、評価を実施

• 評価を経験することで客観的な視点を醸成可能

系列園系列園同士で励まし合って改善に取り組める

系列園同士で園の取り組みの意図も理解できるため、第三者評価の結果を自分の園に置き換えて受け止めることが可能

評価項目自体が改善案となっているため具体的改善に取り掛かることが可能(項目例:テーマに沿った本を子どもの目につきやすい所に5冊おいている)

第三者評価

改善

2-2

2-2

2-4

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諸外国や国内一部地域の先進事例から、既存の自治体監査と連携した最低限の教育の質を保障する仕組みの整備、合同研修参加の義務化は日本で進めるべき。

出所:各種二次情報及び有識者インタビューよりADL作成

先進事例から考える日本における施策例

考慮すべき日本の特性・現状 就学前教育強化に向けた日本における施策例

既存の就学前教育の取り組み状況との兼ね合いは考慮が必要か

– 保育園も教育を行う場所として指針が改訂され、今後更に教員養成などの改定が進む可能性がある

– 既に会計監査は地方自治体の管轄で実施している(国、地方自治体、施設との役割分担)

– 質の評価は現状行われていないが質の評価スケールの議論は始まっており、数年後には最低限の質を保障する監査が行わる可能性がある

– 一部地方自治体には幼児教育センターを設置済。地域により設置に向けた動きが異なる状況である

貴省ではJISマーク制度を取り扱っている

・・・

研究者、現場の専門家

好事例の発信

定期的な合同研修

各地方の幼児教育センタ

一般人民間企業

凡例カリキュラムの具体化の実施

カリキュラムの大枠のみ作成

3,4年周期の評価の実施

研修等への参加

赤字:日本でも

取り組みやすい施策

想定される施策

• 自治体監査機能への第三者評価機能の追加/指定法人制度を利用した第三者評価の義務化

– 適切な評価項目、指標の構築が必要か(JIS

と関連付けることが可能か)

– 現場との対話による課題認識、改善への意見交換等の仕組みを盛り込むことが必要か

• 形骸化防止のための、自治体間の抜き打ち調査、評価結果の一般公開の義務化

• 保育者増員を目的とした、資格取得試験実施回数の増数(実施中)

• 評価者養成スキームの構築

• 好事例を発信する場(リアル/ネット)の設置

• 現場に対し、各地方自治体幼児教育センターによる他園合同研修への参加の義務化

• 地方自治体に対し、施設への継続的なアドバイザー設置の義務化

• ノーコンタクトタイム導入施設に対するインセンティブの付与

– 必要保育者数を満たすことができれば、義務化も可能か

1

関連課題No.

2-2

2-4

2-1

2-2

2-3

2-4

1

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想定施策の類似策を既に行う海外事例から、各施策例に対し、現場感情と得られる効果のバランス、質と量のバランス、長期的効果の獲得可否等の議論が必要。

出所:調査結果、有識者インタビュー、及び現地インタビューよりADL作成

想定施策に対する今後議論が必要なポイント

日本の重要課題

保育所における教育準備/振り返りの時間が不足

課題認識・解決の習慣化が困難

外を知る機会が不足

改善に向けた具体的手順が不明

継続的に機能しえる質の評価が未整備

2-1

2-2

2-3

2-4

1

2

量と質のバランス• イギリス:養成時の教師の質があまり高くはないため、ナショナルカリキュラムを自分で読み

解くことができない教師もおり、園内研修で補っている状況• 韓国:実習を経験有無の差がその後の教師の質の格差拡大にも繋がっている

外注または内製化の選択• イギリス:再び外注から内製化に戻った(現場に詳しい園長やシニア教師を週に数日活動す

るするadditional inspectorとして採用することで折り合いをつけている)コスト、必要人員の確保、評価者の質の担保が関係すると推察

現場からの反感と評価による効果のバランス• イギリス:公開された評価結果が市場に影響を与えており、かつ突然訪問であるため、現場

からの反感は大きい。その一方で、閉鎖への危機感、高いスコアを取りたいというプロ意識、スコア獲得による宣伝効果への期待が質向上のモチベーションにもなっている

• ニュージーランド:ある程度予告の上で訪問する事により、現場からの反感は小さいが、一部施設に対し抜け道が発生している可能性がある。また、日々の改善のモチベーションにはあまり貢献していない(悪質施設の排除には貢献している)

継続的な向上に対するインセンティブ付与の正当性• イギリス、ニュージーランド:継続的な向上を促すために(無償化の対象となる部分を除き、)

インセンティブの付与は行っていない。ただし、そもそも税金の使用に対する効果に日本より国民が敏感であるという背景が異なる点は注意が必要

発信の仕方と具体性のバランス• 韓国:好事例を詳細に研修で扱いすぎたため、(もともとアカデミックレベルの知識を要してい

ない教員は、教育に対する自立性が失われた

十分なノーコンタクトタイムの確保が前提• ニュージーランド:ノーコンタクトタイムを設けているが、十分とはいえず、教師の負担となって

いる。(ただし、子どもの長期休暇期間を利用する等の動きが起こりつつある)

アドバイザーとなる人材の育成

• ニュージーランド:質向上策の一環として、Head Officeが毎月目標を定め、行っているかを確認するのだが、Head Officeおよび園長の質がチームのモチベーションにも影響を与える

先進事例から見る今後議論が必要なポイント

保育者増員を目的とした資格取得試験実施回数の増数

評価者養成スキームの構築

自治体監査機能への第三者評価機能の追加/指定法人制度を利用した第三者評価の義務化

形骸化防止のための、自治体間の抜き打ち調査、評価結果の一

般公開の義務化

ノーコンタクトタイム導入施設に対するインセンティブの付与

好事例を発信する場(リアル/ネット)の設置

現場に対し、各地方自治体幼児教育センターによる他園合同研

修への参加の義務化

地方自治体に対し、

施設への継続的なアドバイザー設置の義務化

想定施策例

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UK, NZはともに、悪質施設の排除に貢献する評価を実施している。ただし、UKの方が市場原理を活かした厳格な評価で、NZは現場感情に配慮した評価となっている。

出所:有識者インタビューよりADL作成

(ご参考)イギリス、ニュージーランドの評価制度の違い

イギリスとニュージーランドの比較

質の評価機関

許認可の権限の所在体制

質の評価結果の公開の有無

親が施設選びの際に重視するポイント

評価に対する現場からの印象、反感の有無

質の評価

質向上のモチベーションの源泉

ノンコンタクトタイムの実施

ICTの活用

イギリス ニュージーランド

Ofsted(独立した政府機関) ERO(独立した政府機関)

Ofsted 教育省

公開 公開

評価されているという威圧感が大きく、現場は強く嫌悪感を抱いている

合意形成を重視した議論が行われており、評価されているという威圧感は少なく、現場からの反感は小さい

高いスコアを取りたいという現場のプロ意識、宣伝効果への期待、閉鎖に対する危機感

親とのリレーションシップの構築、教員間のチームワークの構築

国や施設を取りまとめる組織が設けているわけではないため、施設により実施状況は大きく異なる。実施している園でも時間が不足している。実施有無は質の評価に直接的には反映されない

労働時間の内訳として、時間が設けられており、実施されているが、足りていないのが実情。質の評価結果に実施有無は直接的には反映されない

Ofstedがデータ提出を求める傾向にあるので、子どもの成長記録を作成する際にカリキュラムとのカテゴリ相関、安全担保の証明を効率よく行える機能への拡充が見られる

(住民票がないため)子どものマイナンバーにより、教育省が一貫して出欠状況等を把握。現場でのICT化は安全性のアピールやカリキュラムとの連携機能等への拡充は見られない

一部教員はナショナルカリキュラム自力で理解することが困難であるため、質の向上のために(Ofstedの評価に備え)、園内研修を行うことが重要

教員養成段階で実習を複数回設ける等、ナショナルカリキュラムと子どもの成長とを関連付けて考える力が養成段階で構築されている

教員の質

取り組み状況

教員の資質

(家庭から通えることを前提として)口コミ、現地の様子、 (20%程度の親は)評価結果

(家庭から通えることを前提として)口コミ、現地の様子

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イギリス、ニュージーランドともに、教師のリーダーシップ、親との良好な関係性の構築を図る視点は重要としている。

出所;現地インタビューよりADL作成

(ご参考)質の向上に貢献する重要な評価項目

質の向上に寄与する評価項目の作成における重要な視点

イギリス

ニュージーランド

質の向上に貢献すると思われる評価項目/評価の視点

インタビューコメント

• their own training and their

own professionalism

• the relationship between the

school and the

• how the setting carries out

professional development for

the staff

• good internal evaluation• self-review• good governance• good leadership• Curriculum design• good teaching and learning

along with the partnership with parents

• 子どものケアに関する部分の充実をはかることが良質な就学前教育の大前提で、そのうえで学習や能力開発に繋がっていく。更に現場はOfstedの

求める指標を満たすことで満足するのではなく、自ら考え改善に努めるプロ意識の醸成が必要

• 子どもたちが育っている環境や成長記録、親と教師のやり取り、教師のリーダーシップを培う環境の整備等を包括的に考えることが重要

• EROの評価では、good governance, good leadership, Curriculum design, good teaching and learning along with the partnership with parentsすべてを互いに関係づけながら評価することを重視している

• 自己評価を図る指標の設置とこまめな評価体制の実現により、EROが現在行っている評価より、さらに質の向上に貢献する評価になるといえる

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Contents

1 就学前教育の在り方

1-1:日本の就学前教育強化における重要課題

1-2:課題解決に向けた想定施策

1-3:諸外国8ヵ国の取り組みに関する調査結果

1-3-1:諸外国8ヵ国の取り組みのまとめ

1-3-2:諸外国8ヵ国の個別調査結果

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各施策に対し、実施主体と実施状況(実施義務有り、実施義務はないが機能している、機能していない/未実施)により分類。重要部分は次頁を参照。

出所:OECD「Starting Strong IV」、「諸外国における就学前教育の無償化制度に関する調査研究」等、各国二次情報よりADL作成

(ご参考)諸外国における就学前教育提供体系

凡例

能力目標、又は能力で定義した指標を定める場合は「能」と記載例:「10まで数を数えられる」

「具体的施策の策定」は指導計画等も該当

「具体的施策の実施」は実施主体を表す(運営責任を持つ主体ではない)

少数の事例で当てはまるだけのものは、機能していないとみなす

実施主体

実施状況

実施義務あり実施義務はないが機能している機能していない/

未実施

自治体

施設

所管機関

所管機関以外の政府機関州

米 英 仏 独 ス 蘭 ニ 韓 日

国別実施主体就学準備型 生活基盤型

能 能 能

Ofsted

IEN* ERO

(* 教育省内の行政機関)

(KMK)

質の向上・担保 報告書の管理

報告書の公表

目標、具体的施策編成

保育者の教育改善

最低基準の監査

サービスの質の評価

保育者の質の評価

カリキュラム達成度の評価子どもの発達記録作成の評価

監査

公表

評価

子どもの能力の評価

サービス標準化

具体的施策

A

B

設置、運営基準の策定

具体的施策の実施

目標の策定

大枠の策定

教育内容、狙いの策定

具体的施策の策定

カリキュラム策定

定期的な評価

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質の向上・担保 報告書の管理

報告書の公表

目標、具体的施策編成

保育者の教育改善

最低基準の監査

サービスの質の評価

保育者の質の評価

カリキュラム達成度の評価

子どもの発達の評価

監査

公表

評価

子どもの能力の評価

国/州のカリキュラムで定める具体性、質の評価が機能する仕組みの有無が日本と他国では大きく異なる。

出所:OECD「Starting Strong IV」、「諸外国における就学前教育の無償化制度に関する調査研究」等、各国二次情報よりADL作成

(ご参考)諸外国における就学前教育提供体系

サービス標準化

具体的施策

A

B

設置、運営基準の策定

具体的施策の実施

目標の策定

大枠の策定

教育内容、狙いの策定

具体的施策の策定

カリキュラム策定

定期的な評価

米 英 仏 独 ス 蘭 ニ 韓 日

国別実施主体就学準備型 生活基盤型

能 能 能

Ofsted

IEN* ERO

(* 教育省内の行政機関)

(KMK)

諸外国と異なる点

日本は幼稚園と保育所で教育指針が異なる※国が策定しており問題なく見えるが、幼保で運営基準が異なる

日本は中央側で策定した指針が抽象的である

日本では、質の評価・担保の施策がほぼ行われていない

日本では(質の評価結果が)保育者の教育に反映される仕組みがない

1

2

3

4

国または州が実施いずれかの組織が実施

前頁を規準として、下記で色塗りを実施

違いはあるが

大きな課題ではない

解決すべき課題

(1-

1章参照)

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日本は幼保一元化は未実施だが、教育部分に関しては幼保間の歩み寄りが近年見られる。韓国の例から、教員養成の幼保間の歩み寄りも今後必要と推察。

出所:各国俯瞰調査結果、有識者インタビューよりADL作成

諸外国との比較

幼保統一に向けた実施段階の比較

日本

備考

• 保育所は福祉、幼稚園は教育の意味合いが強い

• ただし、2017年の改定で保

育園にも教育を行う施設という位置づけが成された

スウェーデン

• 行政・機能ともに幼保一元化を実現した例は珍しい

• 0-2歳は保育所を、3-5歳は

幼稚園を利用するため、実質的には幼保一元化されている

フランス

• 保育所に教育ノウハウの蓄積がないこと、教員資格制度が幼保間で異なることから、同じ教育課程を用いても幼保間で格差が発生している

韓国

幼保一元化

幼保間共通教育課程

×△

×○

認定こども園でさえ一元化されていない

2017年の改訂により3~5歳の幼児教育部分は同一の記載が見られる。今後更に記載が充実する

ことが予想される

学校庁所管で一元化実現0~2歳は保育所、

3~5歳は幼稚園に通う

年齢で幼保が分かれている

目指している

ヌリ課程導入

1

• 一般に、幼保間でカリキュラムが統一されるだけでは不十分で、教員養成の統一、教育組織/組合の統一まで行う必要がある。幼保一元化といっても国により統一段階が異なる点は注意が必要

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日本では、中央側で作成した指針は抽象的。ただ、遊びを重視した教育を行うために、施設の創意工夫を重視しているため、必ずしも具体化は必要でないといえる。

出所:各国俯瞰調査結果、有識者インタビューよりADL作成

諸外国との比較

具体的施策の例示状況の比較

日本 イギリス フランス ドイツ スウェーデン(参考)

州/地域ごとのカリキュラムを統一する機関の設置 × × × ○ ×

共通カリキュラムにおける具体的施策の

例示 × ○ ○ △ ×

• 各州の文部科学大臣から成るKMKの設置

• 具体的施策の例示は無い

• 遊びを重視した教育を推奨しており、地域/施

設の創意工夫に任せている

• 各目標に対する具体的施策が例示されている

• 認知能力、非認知能力の両方に対し、遊びや他者との会話の事例等が紹介されている

• 各教育領域に対し、具体的施策が例示されている

• 子どもの行動や会話の例示は無く、具体策の概要が示されているのみ

• 連邦制のため、州によりカリキュラムは異なる

• 具体的施策の例示を行う州も存在

• 具体的施策の例示は無い

• 遊びを重視した教育を推奨しており、地域/施設の創意工夫に任せている

2

• 日本でも仮に具体例を定めた場合、気候条件、文化が地方で異なるため上手くいかない可能性がある。例えば、「夏野菜を育てよう」といっても北海道は夏野菜なんてものが無いという事態が生じる

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就学準備型の国に比べると、日本は認知能力に関する目標、指針の記述が抽象的。ただ、生活基盤型の国と比較すると記述に大差はなく、課題というほどではない。

出所:各国俯瞰調査結果、現地インタビューよりADL作成

諸外国との比較

認知能力に関する目標の記述の比較

日本アメリカ

(ヘッドスタート)フランス

ニュージーランド(参考)

スウェーデン

目標設定の例(認知能力)

• 遊びや生活の中で、数量や図形、標識や文字などに親しむ体験を重ねたり、標識や文字の役割に気付いたりし、自らの必要感に基づきこれらを活用し、興味や関心、感覚を持つようになる

• 先生や友達と心を通わせる中で、絵本や物語などに親しみながら、豊かな言葉や表現を身に付け、経験したことや考えたこと等を言葉で伝えたり、相手の話を注意して聞いたりし、言葉による伝え合いを楽しむようになる

• 大人のサポートを受けて、オブジェクトの非常に小さなコレクションの追加と削除を開始します。たとえば、先生は「あなたは3つのブドウを持っていて、更にもう1

つ持っています。」子供は3つ数え、次にもう1

つ数え、4つすべてを数えます:「1,2,3,4、私は4つもっています!」

• 見本なしで自分のファーストネームを筆記体で書く

• 30までの数字を言う

• 障害物の軌道に従って、自身の動きを調整する

• 子どもたちが、それまでに獲得した言語やコミュニケーションンレパートリーを駆使して、複雑な状況に対応している(「文字や記号を使う」領域の目標)

• 自然科学について、問題を提議して話し合ったり、識別、調査したり、言語化する能力を育てる

認知能力の向上により実現される非認知能力を用いて記述

会話例、定量情報を用いて具体的に記述

定量情報を用いて記述。ただしアメリカより具体性は下がる

認知能力の向上により実現される非認知能力を用いて記述

認知能力向上には非認知能力向上が必要となるような記述

目標設定の特徴

(認知能力)

非認知能力を用いずに認知能力を記述 非認知能力を用いて認知能力を記述非認知能力を用いて認知能力を記述

2

• ニュージーランドのナショナルカリキュラムと日本のガイドラインが似ていると、ニュージーランドに研究に来られる研究者は多い

• 2017年11月に政権交代をし、テファリキが変更され

た。変更により、(思想や就学準備型に比べると抽象的ではあるが)前回より理解・判断しやすい言葉選びになったといえる

※表内記載は改訂前のテファリキ※非認知能力の記載についても当てはまる

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日本は非認知能力に関する記述も抽象的。ただ、生活基盤型の国と比較すると記述にあまり差はなく、課題というほどではない。

出所:各国俯瞰調査結果、有識者インタビューよりADL作成

諸外国との比較

非認知能力に関する目標の記述の比較

日本アメリカ

(ヘッドスタート)フランス

ニュージーランド(参考)

スウェーデン

• 友達と関わる中で、互いの思いやりや考え等を共有し、共通の目的の実現に向けて、考えたり、工夫したり、協力したりし、充実感を持ってやり遂げるようになる

• 演劇やその他の創造的な作品で常に想像力を使用します。創造的なアイデアを他の子供や大人に伝え始めます

• 同じおもちゃを欲しがっている子供と、「なぜあなたのお友達が悲しいと思われるのですか」など、他の子供との交流中の書籍や写真の基本的な問題を認識し、説明します

• 適切な語彙を使用して自分の感情や理解を表現したり、イメージを述べたり、音楽の一部を抜粋して話す

• 身近な環境(危険な物体や行動、毒性製品)のリスクを考慮に入れる

• LLCPの活用に責任を

持つと共に、他者との関係の中で自己のリーダー性を認識する(「探求心/思考」領域の目標)

※LLCP:言語、識字、コミ

ュニケーションに関連する実施に対する観察及び聞き取り

• 話し言葉、語彙、概念を発達させ、言葉遊びをしたり、事物に関わったり、考えを表現したり、質問をしたり、他者と話し合ったり、コミュニケートする能力を育てる

• 自分や他者から定義された問題を、数学を使って、調べたり、話し合ったり、いろいろな解決策を試したりする能力を育てる

目標設定の例(非認知能力)

認知能力との相関は無し

他者との関係性を交えて具体的に記述

記述はあるが、他者との関係性については言及無し

認知能力の向上の結果非認知能力も向上するという前提に立つ

認知能力の向上の結果非認知能力も向上するという前提に立つ

目標設定の特徴

(非認知能力)

非認知能力を用いずに認知能力を記述 非認知能力を用いて認知能力を記述非認知能力を用いて認知能力を記述

2

• 非認知能力の評価研究に関してはアメリカ、イギリスの税金の使用効果に厳しい国で発達している

• ニュージーランドは税収が一時的に上がった時に、国として就学前教育への投資の重要性を掲げ、長期縦断研究に投資を行った

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日本は質の評価、評価結果を用いた教師の教育が、諸外国と比較して大きく遅れており、課題といえる。

出所:各国俯瞰調査結果、有識者インタビュー、現地インタビューよりADL作成

(再掲)諸外国との比較

評価の形骸化防止策と質改善に向けた取り組みの比較保護者の目、日頃の学習で使用する成長記録を

評価に利用することで形骸化を防ぐ

評価結果の公開

教育者への教育

× ○ ○ ○ ○

△ ○ ○ ○ ○

保護者との意見交換

成長記録を評価に利用

××

日本 イギリス(Ofsted)

ニュージーランド(ERO)

韓国

スウェーデン

監査に親が立ち会うことも可能

施設の課題が保護者に共有される

保護者へのアンケートが行われる

成長記録について親と意見交換

• 安全性評価は実施されるが、教育の質の評価は義務付けられていない

• 高評価であることを示すマークの配布

• 優れた取り組みを行う施設の詳細紹介

• 親に評価レポートを配布

• 評価結果のWEB公開• 評価結果のWEB公開

• 電子バウチャー形態による補助金受給額の親へ通達

• 保育者への義務研修はなく、実施状況は施設/地域による

• 市場原理が働くことにより、教育者への教育が促される

• 保護者の目、地域での口コミが教育者への教育を促している

• 認可取り消しとなった施設も存在

• 市場原理が働くことにより、保育者への教育が促される

• 教育指針で、学校長の義務として定めている

• 認可取り消しとなった施設も存在

教育の質の改善

ガバナンス × ○ ○ ○ ○3,4年周期の評価制度が義務化されていない

許認可悪質施設を

教育省に通達可能交付金増減 許認可

形骸化防止

• 評価結果のWEB公開

何れの国も質の評価は機能している

3

4

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サービス標準化に寄与する施策の具体例として下記が挙げられる。日本では、抽象的な部分を国が定め、具体的施策は各自治体又は施設が策定。

(ご参考:縦軸Aの説明)サービス標準化に寄与する施策の具体例

日本の就学前教育におけるサービス標準化を支える施策の事例

A

目標の策定

設置、運営基準の策定

カリキュラムの大枠の策定

教育内容、狙いの策定

具体的施策の策定

具体的施策の実施

• 各地方自治体、又は各施設で作成• 保育/教育課程の代わりに、自治体によっては就学前教育カリキュラムを作成する

• 発達に応じて経験させたい内容やねらい、目標など具体例を交えて記載(次頁参照)

日本における事例

• 各施設で指導計画に沿って施策を実施

• 学校教育法(幼稚園)、児童福祉法(保育所)の中で定められる

• 教育・保育の基本とその内容を示す• 小学校の場合、学習指導要領がこの位置づけとなる• ねらい、内容、目標などは抽象的な表現となっている

• 保育課程に沿って、実行計画(年間、月、週、日単位かは施設により異なる)を記載

• いつ、子どもにさせること、環境構成、保育者の援助などを具体的に記載(次頁参照)

• 定期的に更新する

1 1

2

3

4

2 2

1

2

1

3

4

2

サービス標準化に必要な施策

(上図:東京都教育委員会の事例)

出所:「就学前教育カリキュラム 改訂版, 東京都教育委員会」よりADL作成

自治体または施設

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国が定める指導要領は抽象的で、最終的な指導計画に近づくにしたがって具体的となる。最終的にはいつ、何をするかを1時間毎の粒度で記載する例も存在。

出所:「就学前教育カリキュラム 改訂版, 東京都教育委員会」よりADL作成

(ご参考:縦軸Aの説明)教育課程、指導計画の具体例

保育所保育指針/

幼稚園教育要領

国が定める教育・保育のねらい・内容

各自治体/施設の解

釈した教育・保育のねらい・内容

教育課程教育課程

指導計画(日ごと)

A

1 3

2

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質の向上・担保に寄与する施策の具体例として下記(ニュージーランド;政府機関ERO

の第三者評価)が挙げられる。

(ご参考:縦軸Bの説明)質の向上・担保に寄与する施策の具体例

平均して3年に1回で、評価により頻度は異なる

施設運営時の評価

教育省、ERO(政府機関)

EROの第三者評価は実施義務あり

保育の提供

第三者評価 評価結果の公表抜き打ち調査・改善命令

保育の質の担保、向上に貢献

ERO 教育省

国が定める施設開設、運営時の評価制度

• 親やEROから通報があれば、教育省が監査に入る

• 仮免許への変更、改善命令などの措置を取った例も存在

• 評価結果をwebで公表することで、保護者も閲覧でき、施設の選択や現状把握に使用可能

• 特定のテーマに関するヒアリング

• 施設の現状視察• 施設の自己評価• 施設や保護者と課

題の共有

問題発生時

男女別人種別利用者数、教員資格を持つ保育者の割合、保育者一人当たりの子どもの人数、施設の特徴的な取り組み、

今後改善が期待されること、次回評価実施時期 など

立ち上げ時の評価

教育省

義務あり

• 全国統一カリキュラム(評価基準)の作成

• 国の基準を満たしているかの監査

評価者

実施義務の有無

評価実施方法

施設を正式に認可した後は原則実施されない

実施頻度

保健衛生安全、施設や設備、運営体制などの国の基準

評価項目

• 報告書を一元管理し、親に公表• 親が積極的に見ることで悪質な施設は自然淘汰される

• 目標、具体的施策策定• 保育者の教育

法定基準の監査サービスの質を評価

出所:9/7ご報告資料のニュージーランドの質の担保の頁から引用

B

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Contents

1 就学前教育の在り方

1-1:日本の就学前教育強化における重要課題

1-2:課題解決に向けた想定施策

1-3:諸外国8ヵ国の取り組みに関する調査結果

1-3-1:諸外国8ヵ国の取り組みのまとめ

1-3-2:諸外国8ヵ国の個別調査結果

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労働と子育ての両立、小学校以降につながる教育の提供を目指し、遊びを通した学び、学びのプロセスの可視化とそれによる評価を、特徴的な活動として行ってきた。

スウェーデン

調査項目

背景・目的

スキーム・具体例

質の担保

成果

調査結果の概要

• 少子化対策と女性の高い就業率を背景に、親の労働/勉学と子育ての両立支援、小学校以降につながる質の高い教育の提供を目的とした施策を実施してきた

• 学校庁が中心となり、就学前学校の導入をはじめ、全国統一のカリキュラム策定、保育の無償化、教育の質の評価方法を明確化した新カリキュラムの導入を進めてきた

• ただし、施設運営、具体的な保育・教育内容の決定は各自治体が実施するため、各自治体ごとに具体的活動は異なるが、遊びを通した学びの実施、学びのプロセスの可視化は共通する特徴的活動である

• 保育者が施設毎の目標の達成度を評価し、教育庁に書面で提出することにより、教育の質を強化している(新カリキュラムで定められた)

• 第三者評価機関は無いが、保護者、子どもも評価に参加することが定められている点は特徴的である

• 就学前学校導入以降の施策により、就学前学校利用率は上昇• 施策の大きな目的である女性の労働/勉学と子育ての両立は実現されている模様

1

4

施策

2

3

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少子化対策と女性の高い就業率を背景に、親の労働/勉学と子育ての両立支援、小学校以降につながる質の高い教育の提供を目的とした施策を実施してきた。

出所:「スウェーデンの子育て支援と就学前教育の関連性」をもとにADL作成

就学前教育に関する施策の目的・背景1

スウェーデンにおける就学前教育に関する国の施策

背景

• 保育の受け入れ基盤が整備され、教育への需要増加

• 少子化対策として、早期教育の必要性の高まり

• 働く母親の増加により、福祉の側面が強い保育園の需要増加

• 労働/勉学と子育ての両立推進

• 教育の質向上の必要性の高まり• 実施した教育への評価による質の担保、向上の必要性の高まり

主な施策

福祉としての保育の増加 幼保一元化の実現・就学前学校の誕生

無償化導入(3歳児)

無償化導入(4,5歳児)

学校法の改訂、カリキュラムの改訂ナショナルカリキュラムの導入

1996年 2010年2003年

所管 学校庁

目的

• 早期教育による教育の質の向上• 小学校以降の教育につながる教育の提供• 事業内容の追跡調査による子どもの成長機会保証の確認及び課題抽出

• 子どもの成長の経過観察による効果促進

• より多くの子どもに質の高い教育を受けさせる

• 親の経済負担の軽減

• 幼児教育を小学校以降の教育にスムーズに繋げる

• 子どもを長時間預かることのできる保育施設を増やす

保育料の値下げ待機児童の解消 保育の質の向上

DC

X 次頁以降に詳細記載

凡例

社会庁(保育)

学校庁(幼稚園)

• 施設は再利用している模様• 学童保育が存在するが、これは始業前後に保育が必要な場合に

のみ提供される• 1998年から学童保育、就学前教育の規定を盛り込んだ改正旧学

校法が施行されたことから、行政的、サービス的観点共に一元化された模様(例外は線引きされたと解釈)

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学校庁が中心となり、就学前学校の導入をはじめ、全国統一のカリキュラム策定、保育の無償化、教育の質の評価方法を明確化したカリキュラムの改訂を進めてきた。

出所:「スウェーデンの子育て支援と就学前教育の関連性」をもとにADL作成

就学前教育に関する施策の詳細2

• 1歳から6歳までの幼児に対しても教育の側面の強い保育を実施– 保育園、幼稚園は無くなったが、就学前学校として設備、教材教具等はそのまま使用

– 運営、財政は以前同様にコミューンが担う

• 遊びを通した学び(テーマ活動)の実施

施策の詳細

• 3歳児の無償化導入– 1 日最低3 時間または週15 時間の補助

• 言語、数学などの基礎能力、環境への関心等、子どもの知的な発達を方向目標に追加

• 教育の質の評価・フォローアップ方法の明確化(新カリキュラムの追加部分)– 子どもたちの学びのプロセスを可視化し、それを用いて評価を実施し学びの改善に活かす

– 保育者だけでなく、子どもとその保護者も評価に参加することを定めた

– 小学校以降と同じ構造で継続して記録することにより、経過観察が可能

• 就学前学校に支払う上限金額の設定

• 4,5歳児の無償化教育の導入– 1 日最低3 時間または週15 時間の補助

スウェーデンにおける就学前教育に関する国の施策

• 福祉の側面の強い保育園を多数開設

1996年 2010年2003年

学校庁所管

保育料の値下げ 保育の質の向上待機児童の解消課題

主な施策

福祉としての保育の増加 幼保一元化の実現・就学前学校の誕生

無償化導入(3歳児)

無償化導入(4,5歳児)

学校法の改訂、カリキュラムの改訂ナショナルカリキュラムの導入

B

DC

DC

A

X 次頁以降に詳細記載

凡例

社会庁(保育)

学校庁(幼稚園)

コミューンは基礎自治体

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レッジョエミリアはアートを用いて自己表現することを重視した教育である。スウェーデンをはじめ、多くの生活基盤型の国の教育モデルとなっている。

出所:「レッジョ・エミリア幼児教育の紹介 佐藤朝美」、各種二次情報よりADL作成

(ご参考)スウェーデンの教育のルーツ レッジョエミリア

レッジョエミリアの主な特徴と具体例

• カメラ、テープレコーダ、スライド投影、タイプライタ、ビデオカメラ、コンピュータ等を用いて記録し、目に見える場所に掲示する(地域や保護者も見ることが可能)

具体例

• 子どもの毎日の成長を把握するために、活動の様子を記録に残す

• 子どもが発した言葉、興味を持ったこと、普段とは違った表情などを、メモや動画、録音でしっかりと記録を残す

• この成長記録に沿ってカリキュラムを考える

左記の概要

• 雨の降る前の街の様子を写真に取り、雨が降ったらどうなるかを子どもに予想させる。その後、雨期に入り雨が降りだすと、人々の歩くスピードや姿勢の変化、落ちる場所ごとの雨音の音の変化等に子どもは注目し、雨のさまざまな側面を表現する

• 数日から数ヶ月かけて、2~5人の子どもがグループで学んでいく形態

• じっくり観察したり、間違いをみつけたり、話し合ったりする

• 一度きりで保育実践を終わりにせず、何回も同じ主題を追求していくという「螺旋状の循環性」の学びを実現している

プロジェクト活動

• 例えば絵を描く際、「見えないものを描く」、「アイデアがあるなら、それを描いて見なさい」という「アイデアの表出としての描画」の指導を実施

• 三角形に3枚合わせにした鏡が置いてあり、子どもが中に入ると万華鏡の中にいる感覚が味わえる

• アトリエリスタ(美術専門家)とペダゴジスタ(幼児教育専門家)というプロのスタッフが参加し、保育士といっしょに子どもの創造的活動を支援する

• 共有スペースでは音楽(楽器含む)やお絵かきグッズなどが自由に使用できるようになっている

学習材料としてのアートの利用

ドキュメンテーション(活動記録)の作成

主な特徴

• 保育の在り方が形骸化しつつあった時に、レッジョエミリア展示会がストックホルムであり、スウェーデンの保育者に衝撃を与えた

• スウェーデンはレッジョエミリアを参考に、教育/保育の質を充実させてきた(有識者インタビューより)

2

1

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学校庁が所管し、施設運営、保育・教育内容の決定は各自治体が実施。教育内容としては、遊びを通した学びの実施、学びのプロセスの可視化が重要視されている。

出所:「スウェーデンの就学前教育における義務教育課程との評価の連続性に関する研究」よりADL作成

教育の特徴2

学校庁とコミューンの各役割 スウェーデンの教育の特徴

就学前学校における教育の特徴

• 教育理念の決定• 全国統一の大まかなカリキュラムの策定

• 国内テストの作成• 規制の策定

政府機関(学校庁)

• 就学前学校の運営• 具体的なカリキュラムとして、保育・教育内容の決定

• 評価の実施、及び書面の作成(「③質の担保」頁を参照)

自治体(コミューン)

遊びを通した学び(テーマ活動)の実施– 一つの分野を限定するのではなく、子どもの興味や身近なものから学びに繋げる(次頁の事例参照)

学びのプロセスを継続的に可視化– ドキュメンテーションを作成することにより、学びのプロセスを可視化。更に、その記録を通して評価、改善していく

– 小学校以降でも義務付けられているものと同様の構造をもつ(下図参照)ため、小学校以降も継続して成長観察が可能

出所:「基礎学校のIUPと就学前学校の個別の発達計画の内容物の比較」

B

C

A

スウェーデンの就学前教育はイタリアのレッジョエミリアの影響を受けており、子どもは自分の考えを表現する際にアート的表現が多用される

(有識者インタビューより)

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テーマ活動とは一つのテーマに基づいて多様な活動を相互に関係づけていく遊びで、保育者が子どもの興味関心を予測し、学習課題や目標を分析することが重要である。

出所:「スウェーデンの保育の今」よりADL作成

(ご参考)テーマ活動の具体例

テーマ活動の事例:「お店」をテーマとした学び

お店をテーマに選んだ理由は、子どもたち全員がそれを知っているからだ。

テーマ活動のねらいは①買い物をするとき、知っておくべき事項と、②商品を売買するときの店の運営の仕方などである。買い物客の視点と、お店の視点の両方を経験することが目標になる。(実践の初めに)子どもの知識や考え方を聞く「インタビュー」は大変大事で、一つ一つの商品がどこから来るかについて子どもたちは知っていたり、知らなかったり。想像できることもあるが、代金は何に使われるのか、値札の役割や物の値段などについては、多くの子どもが曖昧だったという。子どもの間の意見の違いを交流し、実際に商店に買い物に行って、気づきに広げて行くことを保育者は重視する。ごっこ遊びの進展の中で、棚の商品が不足し始めたときが、仕入れについて話し合うチャンスだ。この機会に商品がどこから来るか調べることもできる。売買に際して、支払いを通じて交換原理に気づき、品物に値段をつけることを通じて、仕入れ値と売値の関係に気づくこともある。袋の大きさと商品の量の関係や、量り売りのお菓子を通じて重さに気づく。

参照:「レッジョ・インスピレーションとスウェーデンの幼児教育 太田素子」

テーマ活動を効果的な学びにするポイント 実際の例

テーマ活動とは、一つのテーマに基づいて多様な活動を相互に関係づけて展開していく遊び

話し合い、インタビューで動機づけるプロセスと、活動のイメージや分担を共有するための話し合いが重要な契機となる

保育者が子どもの興味や関心をきめ細かく予測してテーマ活動を計画する

テーマ活動を通じて得られる学習の課題や目標が分析され予測されており、この活動の最終的な目標は、正確な社会認識、自然認識の獲得という点に置かれていることがわかる

2 B

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就学前学校の特徴的な教育事例として、個別の発達計画作成がある。これにより連続した学びの可視化とそれによる改善が可能となり、教育の質を向上させられる模様。

出所:「スウェーデンの就学前教育における義務教育課程との評価の連続性に関する研究」よりADL作成

(ご参考)学びのプロセスの可視化の事例2

スウェーデンの特徴的な就学前教育の事例:個別の発達計画

発達計画作成の概要と期待される効果

ドキュメンテーションの作成

発達相談分析、個別の発達計画作成

親や保育者が記入(右記の事例参照)– 子どもの個人記録

– 活動における成長記録(写真)

– 子どもの作品群

ドキュメンテーションの内容に沿って• 教師間の討議• 子どもによる自己評価• 保護者との意見交換

• 発達相談の総括

• 子どもの能力、特性の伸ばし方等について実践計画作成

• 書面化

子どもと取り巻く大人が協働して、省察,分析,フォローアップ,評価を

小学校以降で義務化されているものと同様の構成で実施

就学前から高等教育までの子どもの成長を連続的に可視化でき、同時に改善もできるため、教育の質を向上させることが可能

(教育の質の向上・担保は次頁参照)

就学前学校でのインタビュー作成風景事例

子どもが前よりもできるようになっていると教師が感じたときに撮影

「できた」ことに対して合意形成

学びのプロセスの可視化

C

スウェーデンでは保育が教育という位置づけになっても、教育だけでなく、educare(education+care)の考え方が重視されており、この点は日本と類似する (有識者インタビューより)

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保護者、子どもの意見も反映した発達計画をもとに保育者が施設毎の目標の達成度を評価し教育庁に提出することを新カリキュラムで定め、教育の質を強化している。

出所:「スウェーデンの就学前教育における義務教育課程との評価の連続性に関する研究」よりADL作成

質の担保3

教育の質の担保に関する規定

規定事項 実施者義務の有無規定大項目

保育実践の前提条件

• 一クラスあたり/保育者一人あたりの子どもの数の適正化• 有資格者の雇用• 多様な言語を使用する/特別支援を必要とする子どもへの対応• 建物と野外環境の整備

子どもの成長と学びの考え方及び

ドキュメンテーションの作成

カリキュラムの目標達成に関する評価方法

コミューン

コミューン

義務

※改訂前:推奨

推奨

教育庁への提出分析、発達計画作成発達相談

• 一年に一度は教育庁へ提出

• ただし、教育庁提出後の規定に関しては記述なし

• 子どもに成長と学びを与えているか評価

• ドキュメンテーションをもとに、カリキュラム目標、理念の達成度を評価

• 今後の目標作成• 内容の書面化

ドキュメンテーションの内容に沿って• 教師間の討議• 子どもによる自己評価

• 保護者と意見交換

ドキュメンテーション作成

• 評価の元となるドキュメンテーションを親や保育者が記入

子ども、保護者も評価に参加することが規定されている

1

2

3

現状把握、改善に活用

D

• インスペクターの評価結果、保護者の意見はホームページ上で公開され、一般人も閲覧可能。また理念を達成が見込めない園は補助金減額ではなく、閉鎖となる

• コミューンで任命された人がインスペクターのとして施設を訪問し監査が行われる。監査では会計監査は行われず、カリキュラムの理念が達成できているかが評価される

(有識者インタビューより)

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就学前学校導入以降の施策により、就学前学校利用率は上昇し、女性の労働と子育ての両立は実現されている模様。

出所:OECD Employment rate, OECD family database,

「スウェーデンの保育の今」よりADL作成

施策による成果4

スウェーデンにおける女性の労働と子育ての両立

64

7784

201120051999

単位:%

1.85

1.88

1.89

1.911.901.98

1.941.91

1.88

1.85

1.77

1.75

1.72

1.65

1.57

1.55

1.50

1.511.53

1.611.74

1.892.002.09

2.12

2.14

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

0

80

70

10

65

5

75

60

19

94

19

95

19

98

19

96

%

20

00

19

99

19

97

20

09

20

08

20

12

20

10

20

11

20

14

19

90

20

13

20

02

20

01

20

07

20

03

20

15

20

05

20

04

19

92

19

91

19

93

20

06

+20pt

女性労働率

合計特殊出生率

1~5歳児の就学前学校利用率

就学前学校利用率は増加傾向にあり、多くの子どもに保育を提供する目的の施策の成果が見られる

スウェーデンにおける合計特殊出生率、女性労働率

就学前学校導入以降、女性労働率及び、合計特殊出生率は高い値で推移しており、仕事と子育ての両立が実現されている

就学前学校の実施

質の向上スウェーデンは男女平等、子育て支援を早々に確立し、就学前教育に早期から着手した国であり、日本より先を進んでいるといえる(有識者インタビューより)

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ニュージーランド

調査項目

背景・目的

スキーム・具体例

質の担保

成果

調査結果の概要

• 一部幼稚園の無償化を背景に発生した教育格差を解消すべく、幼保一元化が実施された

• 幼保一元化を実現した後も、全ての子どもに良質な教育を受けさせることを目的とした改革が進められ、現在はICTを用いて教育効果を可視化する施策に注力している

• 政府機関である教育省が予算元、実施主体となって、幼保における施策を進めてきた

• 幼保一元化をはじめ、保育者、保護者への金銭的支援を実施。早期から第三者評価を確立してきた点、ICTを用いた教育に近年注力している点は特徴的といえる

• 代表的な導入事例としてはELIシステムが挙げられる

• 政府機関EROが全国統一の基準に沿って第三者評価を実施・公表し、保育の質に懸念が生じた場合は教育省が抜き打ち調査を行うことで、悪質施設の改善に貢献している

• 親との関係性が重視されており、親やチームとの関係性構築が日々の質の向上に貢献している

• 幼児教育・保育サービス利用率は増加傾向で、施策の成果が見られる• 教育効果可視化を目的としたICT施策は近年開始したばかりであるため、まだ成果の検証には至っていないものの、データ回収率も向上しており、今後成果が期待できる

1

4

施策

2

3

教育の質の担保のために、早期から第三者機関を設置し、近年はICT教育の積極的導入とそれを用いた効果検証に注力している点が特徴的である。

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幼保一元化を実現した後も、全ての子どもに良質な教育を受けさせることを目的とした改革が進められ、現在はICTを用いて教育効果を可視化する施策に注力している。

出所:各種二次情報をもとにADL作成

就学前教育に関する施策の目的・背景1

1986年 2011年2008年 2014年2007年2002年

ニュージーランドにおける就学前教育に関する国の施策

2012年1990年

• 保護者、保育者間の情報共有効率化

• 保育者の業務効率化

• 全ての子どもに良質な保育を平等に受けさせる

• 保育所に子供を預けない人に保育所活用を促す

目的 • 教育効果の可視化

• 教育効果の効率的な検証

• 幼児にも早期から教育を受けさせる

• 教育格差の是正• 保育者の賃金格差の是正

所管 教育省

• 小学校前教育として幼稚園は有効という社会認識が浸透

背景

• 質向上のためには、定量的に効果を検証すべきという社会認識の高まり

• 保育所普及が実現し、保育の質を上げることに重点が置かれる

• ICT教育の高まり

• 幼稚園のみ無償であるため、教育格差が発生

• 元幼稚園、元保育所の保育者間で賃金格差が発生

• 低所得者層における保育重要性の欠如

主な施策

幼保一元化の実現(全ての保育サービスに対し補助金の平等な交付。幼稚園の保育料は現在も無償)

Storypark導入

ELI**導入

一部幼稚園の無償化

20時間無償幼児教育制度開始

保育者への補助金付与

ERO*による第三者評価導入

教育格差解消 保育者の賃金格差解消 保育費の値下げ 保育の質の向上

A

C

B

ERO*) Education Review Office, ELIシステム*) The Early Learning Information system

X 次頁以降に詳細記載

凡例

所管機関は一元化されたが、

• 予算、保育者の資格、カリキュラム、設置基準等は一元化

• 幼稚園等、各サービスの特

徴や機能は保ったまま、同一の体系下で管理

社会開発省(保育)

教育省(幼稚園)

法的拘束力をもつ統一カリキュラムとしてテファリキの導入

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幼保一元化をはじめ、保育者、保護者への金銭的支援を実施。早期から第三者評価を確立してきた点、ICTを用いた教育に近年注力している点は特徴的といえる。

出所:各種二次情報をもとにADL作成

就学前教育に関する施策の詳細2

1986年 2011年2008年 2014年2007年2002年

ニュージーランドにおける就学前教育に関する国の施策

2012年1990年

保育の質の向上課題

教育格差解消 保育者の賃金格差解消

保育費の値下げ、免許取得費の確保

所管 教育省

• 一部の幼稚園のみ無償化

• 保育所への助成はほぼ無し

• 各保育施設の児童管理システムSMSを国とつなぎ、従来国が紙ベースで収集していた情報を、電子的に収集する保育情報システムの導入

• 効果検証にも利用

• 法的拘束力を持つ幼稚園、保育所の両方に共通した統一カリキュラムの導入

• 政府機関である教育省が保育所と幼稚園を一元的に所管

• 法的拘束力を持たない、幼稚園・保育所共通のカリキュラムの作成

• 保育者に対し、資格取得を支援する奨学金の付与を実施

• 「教師主導の免許保有乳幼児教育サービス」を1 日6 時間まで、週20時間まで無償で受けることを可能とする制度の開始

施策の詳細

• 保育施設と親で、子どもの学習記録をICTを用いて共有するシステムの導入– 現在では23ヵ国で利用される

主な施策

幼保一元化の実現(全ての保育サービスに対し補助金の平等な交付。幼稚園の保育料は現在も無償)

Storypark導入

ELI導入

一部幼稚園の無償化

20時間無償幼児教育制度開始

保育者への補助金付与

EROによる第三者評価導入

A

C

B

X 次頁以降に詳細記載

凡例

社会開発省(保育)

教育省(幼稚園)

ニュージーランドでは1996年に幼

保間の統一カリキュラム(テファリキという)が導入され、保育者の養成の統一、教員組合の統一を実現した(有識者インタビューより)

法的拘束力をもつ統一カリキュラムとしてテファリキの導入

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所管行政やカリキュラムは一元化されているが、幼保それぞれのサービス形態は一元化後も維持されている。評価はいずれの施設もEROが実施。

出所:現地インタビューよりADL作成

幼保一元化

ニュージーランドにおける幼保間の違い

幼稚園保育所

3~5歳児0~5歳児対象年齢

Ministry of EducationMinistry of Education

テファリキテファリキ教育課程

所管行政

EROERO評価実施主体

教育に関する項目社会福祉+教育に関する項目

評価項目

教育社会福祉(Care)+教育主な役割

8時半~14時半7時~16時預かり時間

提供サービス

評価

所管機関、実施カリキュラムが統一されているという意味で、ニュージーランドの就学前教育は幼保一元化を実現しているといわれる

幼保のサービス形態はそれぞれ維持されている

2

評価はEROが実施

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児童管理システム(SMS)にある各生徒の出席、成績、医療などの情報をELIシステムに集約

18万人の子どもの施設の利用状況を、一人ひとりの生徒番号(NSN=National Student

Number)とともに毎月ELIシステムに集約

施設の状況に関する情報をオンラインでELIシステムから教育省に常時集約する

• ペーパーレスによる情報集約の高頻度回収かつ回収効率化

• 子ども個人単位のデータの取得が可能なため、集約したデータから教育効果の検証を実施することが可能

ニュージーランドでは政府機関である教育省が予算元、実施主体となって、保育におけるICT導入を進めている。代表的な導入事例としてはELIシステム*が挙げられる。

出所:各種二次情報からADL作成

スキームと具体例2

ニュージーランドにおけるICT導入事例:ELIシステム

2

1

3

0

教育省

幼稚園・保育所

• 予算元、実施主体は教育省• ELIシステムの他にもICT導入を進める

(次頁参照)

2

1

3

教育省から各施設に紙面で配布・集約していた0

ELI

導入

得られる効果

施策

ELIシステム*) The Early Learning Information system

これまで

ともに教育省実施主体予算元

A

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ELIシステムやNational Student Indexが他の社会サービスと連携する動きは現状見られない。他の社会サービス間の連携を考慮すると今後連携が進む可能性がある。

出所:各種二次情報、現地インタビューからADL作成

教育のデータ化と社会サービスとの連携2

ニュージーランドにおけるICT導入事例:ELIシステム

2

1

3

0

教育省

幼稚園・保育所

ELIシステム*) The Early Learning Information system

A

現状はプライバシー上の配慮から、納税者番号(IRO number)や全国医療番号(NHI number)と接続しないこととなっている。将来的な動きとして、国は全国の学校の児童管理システム(SMS)にある各生徒の出席、成績、医療などの情報を一元的に集約し、さらにそこに保育施設や高等教育の情報も追加することを検討している (二次情報より)

ニュージーランドにはそもそも住民票が存在しないため、National Student Indexが子どもの就学前教育を受けているかの管理に大きな役割を果たしている– 転居の場合、 National Student Indexが確認できないと新しい園には入園できないルールとなっている

現状としてはELIシステムが医療データ等の教育以外の

データと連携する情報は発表されていないが、社会福祉サービスと医療サービスの連携は見られるので、今後に期待できると考える– It is only just recently in the last year or so that medical

service.– Social services and medical are sharing information now,

so that means you don’t lose track of a child who might be abused or in a difficult situation or something is happening with the family. Those medical and social services are now being able to share that information across services so those things are able to be identified early and we will keep track of data, but the education system is not part of it yet, so hopefully in the future.

(有識者インタビューより)

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ELIシステムにより各子どものマイナンバーで子ども出席状況を教育省は把握し、定期的な欠席が見られる子どもには、通園日の調整/自費通園への変更を促している。

出所:現地インタビューよりADL作成

ELIシステムの活用の具体例

こどもの出欠管理

2 A

親 教師 教育省

施設に到着すると到着を表すサイン(筆記)をする

ノンコンタクトタイムになると、教師は親のサインを元に、出欠状況をPCに記録(マイナンバーと

紐づけた所定のフォーマットに記入)

ELIシステムにより、教育省は子どもの出欠状況等をマイナンバーと紐づけて把握可能

毎週決まった曜日に欠席する、毎週必ずどこかの日は欠席する等、定期的な欠席が3か月間見られた場合、子どもの通園日の削減又は自費での通園を勧告する

主体

役割

通園していないことによる税金の無駄遣いを避ける狙いがある(NZでは無償化を実現済み)

ICTの活用は未実施 ICTの活用

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2004年以降、子どもの学習の質の向上、子どもの情報の安全管理、保育者の業務効率化、保育者、保護者、研究者間の情報共有等を目的としてICTを利用してきた。

出所:「ニュージーランドの保育におけるICTの活用とわが国への示唆 調査部 主任研究員 池本美香」よりADL作成

(ご参考)ニュージーランドにおけるICT活用例2

スマートフォン等で子どもの学習の記録を作成・閲覧・共有(Storypark)– 以前は紙媒体で記録していた– 写真、動画、音声も追加可能

「(図表2)2004年にニュージーランド教育省で検討された保育におけるICT活用の例」より抜粋

ウェブ研修による知識向上– 保育者・教員がウェブ上でディスカッション(国営サイトVirtual

Learning Network(VLN))– ウェブ上の動画でセミナーを受講(Webinar)

2004年に検討されたICT活用例 現在の代表的な活用例

ニュージーランド教育省で検討されたICT活用例

電子的に施設情報を収集– 各施設の自動管理システム(

SMS)と国をつなぐ(保育情報システムELI)

B

ラーニングストーリーは防波堤の役割や家庭との連絡ツールとしての役割があるため、一生懸命教師は取り組んでおり、形骸化はしていない (有識者インタビューより)

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ニュージーランドにおける現状のICTの活用先として、教師の業務効率化、成長記録の作成、子どものeラーニングへの利用が挙げられる。

出所:現地インタビューよりADL作成

ニュージーランドにおけるICTの主な活用シーン

教師の事務的業務の効率化

成長記録の作成の支援

eラーニングの活用

• 現場教師に一人1台のPCを支給している施設も多い• 筆記で記録したもの(子どもの出欠状況等)を入力する際の効率化に貢献している

• 役所への申請書類はデータでの提出

• 一人1台カメラを支給するケースも多い• 最近はタブレットを用いて写真・ビデオ撮影、短いコメントのその場での記入、親への送付までを通貫的に行うことで、業務効率化を図るケースもある

• ラーニングストーリーは子どもの成長の瞬間を記録するものであるため、記録の際にカリキュラムのどのカテゴリーに準拠するのか記載する必要があるが、タグ付け機能等は導入されていない

• 現場に支給されたタブレットを用いてEducational Gameを子どもが行える環境を整備している施設もある

• ただし、施設によっては自然との触れ合いを重視し、あえてEducational

Gameを導入しないケースもある

主な活用先 左記の概要左記の概要

(ご参考)ニュージーランドにおけるICT活用例 B2

2017年に再度労働党に政権交代したため、今後更にICTへの投資が活発化する可能性がある– 2004年に就学前教育のICT化を進めたのも労働党だった

タブレット等の機器は国からの支給ではなく、各施設や施設を取りまとめるHead Officeが購入している。また、親からの寄付金を使用する場合も多い

(有識者インタビューより)

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ニュージーランドではノンコンタクトタイムの確保が行われているが子どもの成長記録を書くには不足している。近年のICT化により、状況は改善されつつある。

出所:現地インタビューよりADL作成

ノンコンタクトタイム

ニュージーランドにおけるノンコンタクトタイムの実施状況

幼稚園保育所

• Head teacher:1学期に半日

• その他の現場職員:週に12.5時間(一日2.5時間)

※ただし、保育園とは異なりアドミニストレータがいないため、事務作業も時間内に行う必要がある

• 施設により大きく異なるが、週に1,2時間

教育課程

EROERO

教育に関する項目社会福祉+教育に関する項目

評価実施主体

評価項目

評価

教育社会福祉(Care)+教育主な役割

8時半~14時半7時~16時預かり時間

提供サービス

2

ノンコンタクトタイムは確保されているが、事務作業も行わなければならないため、不足している状況。研修を子どもが長期休暇の期間に行う(給与支給)等の対策は進みつつある

(現地幼稚園従事者コメント)

ノンコンタクトタイムは確保されているが、ラーニングストーリーを書くには不足している。ただし、近年ICTが進みラーニングストーリーを書く際にかなり効率化が図られてきているのは実感する。現在はタブレットで写真をとり、その場で2,3行のコメントを記入、親にも共有可能なので、まとめ直す際の記憶の再現性が高く、かつ業務効率化にも貢献している

(現地保育園従事者コメント)

ラーニングストーリーを記述しているかはERO

による評価の対象だが、ノンコンタクトタイムの実施状況は評価の対象外

(現地保育園・幼稚園従事者コメント)

保育園では、ケア部分の評価はおむつを2時間置きに交換しているか、寝ている際に5分おきに監視しているか等を紙面の記録をもとに評価される (現地保育園従事者コメント)

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平均して3年に1回で、評価により頻度は異なる(評価の分布は次頁参照)

立ち上げ時の評価 施設運営時の評価

政府機関ERO*が全国統一の基準に沿って第三者評価を実施・公表し、保育の質に懸念が生じた場合は教育省が抜き打ち調査を行う。

出所:「保育の質の向上に向けた監査・評価の在り方 調査部 主任研究員 池本美香」、有識者インタビューよりADL作成

質を担保する評価制度3

教育省 教育省、ERO(政府機関)

義務あり EROの第三者評価は実施義務あり

• 全国統一カリキュラム(評価基準)の作成

• 国の基準を満たしているかの監査

評価者

実施義務の有無

評価実施方法

保育の提供 第三者評価 評価結果の公表抜き打ち調査・改善命令

保育の質の担保、向上に貢献

ERO 教育省

国が定める施設開設、運営時の評価制度

施設を正式に認可した後は原則実施されない

実施頻度

• 親やEROから通報があれば、教育省が監査に入る

• 仮免許への変更、改善命令などの措置を取った例も存在

• 評価結果をwebで公表することで、保護者も閲覧でき、施設の選択や現状把握に使用可能

• 特定のテーマに関するヒアリング

• 施設の現状視察• 施設の自己評価• 施設や保護者と課題の共有

問題発生時

C

ERO*) Education Review Office

男女別人種別利用者数、教員資格を持つ保育者の割合、保育者一人当たりの子どもの人数、施設の特徴的な取り組み、

今後改善が期待されること、次回評価実施時期 など

保健衛生安全、施設や設備、運営体制などの国の基準

評価項目

EROの評価無くして補助金をもらうことができないため、EROの評価は機能しているといえる。EROは教育の質/

中身について評価はせず、保育の中身や教育の質は施設ごとの委員会/保育者に任せている

EROの評価は悪質な施設の排除に貢献している

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年間評価対象サービス機関約1000件に対し、EROは約150人で第三者評価を実施している。3年間で5施設の免許取り消し実績があるため、ある程度は機能している模様。

出所:「ニュージーランドにおける乳幼児保育制度,松井由佳、瓜生淑子 」、「保育の質の向上に向けた監査・評価の在り方, 池本美香」よりADL作成

(ご参考)EROの規模

EROの組織規模と取締実績

ERO組織規模 約150人が教育省から公務員として任命される

ERO任命基準

取締実績

• 評価者になる条件は、教育者としての経験があること、大学を卒業していること

• 犯罪歴等の確認通過し、国レベルでの入門研修、地方事務所での初任者研修、評価チームへのオブザーバーとしての参加を経て、活動をスタートする

2014~2016年で教育省は5施設の免許を取り消した⇒評価制度として、ある程度機能している模様

4000件以上のサービス機関のうち、2014年度は

1079施設の評価を実施(2009年時点で4123件の施設がニュージーランドに存在)

3 C

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施設名

施設名

施設名

「(図表5)ニュージーランドの幼児教育・保育施設の評価レポートの書き出し部分」より抜粋

子どもの親が各施設の問題点を知ることで、施設へ改善を促す/悪質な施設を淘汰することを目的とするため、評価シートは親にも分かりやすい工夫が施されている。

出所:「保育の質の向上に向けた監査・評価の在り方 調査部 主任研究員 池本美香」よりADL作成

(ご参考)EROによる第三者評価で使用される評価シート

施設と課題を認識し今後の方策に繋げる

レポートを公表し、子どもの親が各施設の状況、レベル、問題点を把握することで、• 施設に改善を促す• 良質な施設が選ばれ悪質な施設を淘汰する

評価シートの目的

ERO単独で評価を行うのではなく、保護者や職員とともに評価を実施することで、現状認識、今後の改善策を保護者や職員と認識を共有する

評価レポート冒頭部には、4段階評価のどの評価だったか明示されている

評価に関する基本情報や施設の基本情報も各1

ページにまとめて記載

評価方法・

評価レポートにおける工夫

ニュージーランドの幼児教育・保育施設の評価レポート

評価レポートの書き出し部分

3

注)EROの評価者による評価結果(4ページ程度)、施設の基本的な情報(1ページ程度)、ERO

の評価に関する基本的な情報(1ページ程度)から成り、上記はその冒頭部分

本第三者評価制度により教育の質を担保する効果を高めるには、EROと施設で正しく課題を認識すること、

保護者が評価レポートを見て理解できることが重要である

C

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NZはUKに比して、EROの評価結果が保護者に与える影響は小さく、子ども成長記録の作成・共有等、親やチームの良い関係性構築を重視する傾向にある。

出所:有識者インタビュー、現地インタビューよりADL作成

(ご参考)イギリスに対するニュージーランドの特徴

イギリスとニュージーランドの比較

質の評価機関

許認可の権限の所在体制

質の評価結果の公開の有無

親が施設選びの際に重視するポイント

評価に対する現場からの印象、反感の有無

質の評価

質向上のモチベーションの源泉

ノンコンタクトタイムの実施

ICTの活用

イギリス ニュージーランド

Ofsted(独立した政府機関) ERO(独立した政府機関)

Ofsted 教育省

公開 公開

(家庭から通えることを前提として)口コミ、現地の様子、 (20%程度の親は)評価結果

(家庭から通えることを前提として)口コミ、現地の様子

評価されているという威圧感が大きく、現場は強く嫌悪感を抱いている

合意形成を重視した議論が行われており、評価されているという威圧感は少なく、現場からの反感は小さい

高いスコアを取りたいという現場のプロ意識、宣伝効果への期待、閉鎖に対する危機感

親とのリレーションシップの構築、教員間のチームワークの構築

国や施設を取りまとめる組織が設けているわけではないため、施設により実施状況は大きく異なる。実施している園でも時間が不足している。実施有無は質の評価に直接的には反映されない

労働時間の内訳として、時間が設けられており、実施されているが、足りていないのが実情。質の評価結果に実施有無は直接的には反映されない

Ofstedがデータ提出を求める傾向にあるので、子どもの成長記録を作成する際にカリキュラムとのカテゴリ相関、安全担保の証明を効率よく行える機能への拡充が見られる

(住民票がないため)子どものマイナンバーにより、教育省が一貫して出欠状況等を把握。現場でのICT化は安全性のアピールやカリキュラムとの連携機能等への拡充は見られない

一部教員はナショナルカリキュラム自力で理解することが困難であるため、質の向上のために(Ofstedの評価に備え)、園内研修を行うことが重要

教員養成段階で実習を複数回設ける等、ナショナルカリキュラムと子どもの成長とを関連付けて考える力が養成段階で構築されている

教員の質

取り組み状況

教員の資質

3

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質の評価を機能させるために、保護者・地域が施設活動に関心をもち、更に評価に参画できる仕組みを作ることをニュージーランドは重視している。

出所:有識者インタビューよりADL作成

保護者、地域の施設活動への参画

形骸化している

機能している

凡例

第三者評価機関は選べない

第三者評価/

質の評価を受験

(監査含む)必要書類の提出

改善評価結果の施設への報告

保護者、地域への結果の公開

保護者も巻き込んだ施設課題の認識

第三者評価を外部組織に依頼

第三者評価を受験

監査書類の提出

改善

監査書類の提出

監査の実施

監査の実施

税金の投資効果に対する国民の関心が高い

• 施設に対する親・地域の関心・参画• 親の希望に合わなければ、親が経営者として親保育を行う場合も存在

税金の投資効果への関心から市場原理が働く

日本

ニュージーランド(E

RO

)

国とEROで役割分担が明確

施設により実施状況は異なる

課題の見える化・共有・改善が重要

評価結果の施設への報告

• 高評価を出す組織に依頼

• 二重監査で施設にとっては大きな手間

質の担保・向上のために最善な指標とはいえない(例:3-5歳児は毎月身体測定を実施するという認可基準が存在)

日本の第三者評価とEROの質の評価の違い

3

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××○

×

子どもの親が経営等の運営を行う保育施設が存在し、保育者としての資格制度の整備状況は国により異なる。ニュージーランドでは未だに利用されている。

出所:「ニュージーランドプレイセンターの特質と課題」、有識者インタビューよりADL作成

(ご参考)親保育の概要

代表国

フランス

イギリス

ニュージーランド

スウェーデン

• 親で運営を行う• 子どもの保育は正規の保育士が行う

• 資格は無くても良い

• 職員になるための職員資格をプレイグループで定める動きもあった

• 学習プログラムの受講が必須• 受講状況により、従事できる仕事が異なる(プログラムは複数存在)

• 自宅で自分の子どもを含む4人まであずかれる

• 子どもの保育は、自治体が派遣した正規の保育士が行う

資格の有無

無償化対象

親の自主管理型保育所

プレイグループ

プレイセンター

ファミリー・デイケア

施設名

• ほぼ利用されていない• 保育所(0~3歳)の定員40万人に対し親保育所の総定員数は約2500人(0~4歳)

• ほぼ利用されていない• 民間により保育所が整備されると利用者は減少した

• 都市部は減少、農村部は横ばい• 乳幼児19万4千人のうち約15,000人が利用(2011年)

• ほぼ利用されていない• 保育園入園申し込みから、3~4か月以内に席を提供することが義務

利用状況

親保育所/家庭保育の国別利用状況

親保育の提供価値の変化は次頁参照

3

2

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保育施設の国による整備が不十分な時代に親保育は発達。整備が進むと親保育は減少したが、親のニーズを実現する施設として一部の国では現在も利用されている。

出所l国内有識者インタビューよりADL作成

(ご参考)親保育の提供価値

国による保育施設の整備が不十分な時代 国による整備が実現

親保育所の提供価値

保育施設不足を補う

• 自然発生的に生まれたとされる• 親の仕事と子育ての両立を支援した

親の理想とする保育を実現する

• 公立/私立施設の整備が整った後は、親が理想とする保育を実現している施設が無い場合に、親が自ら動き、理想の保育を実現する施設として存続している

親保育の提供価値の変化

• イギリスでも1960年代以降、親保育が盛んに行われていたが、1997年の集団保育の拡大を機に、親保育は減少している

• 日本は公的施設を早期に整備したため、親保育が発展しなかったとも考えられている

• とはいえ、親保育のように、親が施設の活動に参画したり、質の評価に監査することは非常に有益である

(有識者インタビューより)

• 海外では税金の効果的な使い道に対する関心が強く子どもを預けたいと思う施設が無ければ親が実現する例も未だに存在する

• 海外では、今ある施設の中から最善の施設を選択するのではなく、自分たちで望む施設を親保育として作る動きも多くある。韓国、ニュージーランド、スウェーデンで見られる

(有識者インタビューより)

3

2

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プレイセンターでは、親が施設の運営と保育の両方を実施。保育以外のスキル獲得も可能であるため、子育てを経験した後にNPO等で活躍する親も多い。

出所:「ニュージーランドプレイセンターの特質と課題」、国内有識者インタビューよりADL作成

(ご参考)親保育の具体的事例

ニュージーランドにおけるプレイセンターの運用状況

保護者が保育とセンターの運営(経営も含む)の両方を実施。

資格システムも整備

• 「家族は共に成長する」という理念のもと、保護者が子どもの養育力を向上させながらセンターの指導者としても要請されるという独自の学習プログラムも提供

• 学習プログラムは、プレイセンターを利用する全ての保護者が受講することになっており、受講段階に応じて従事できる内容が異なる– 学習プログラムの中心的内容は、子どもの発達に関する学習、保育におけるコミュニケーション、センターを運営するために必要なリーダシップの技術、就学前教育の意義の考察等

– 最終的にはセンター指導者の資格が取得可能

(出所文献より作成)

保護者負担の軽減

• センターを利用する親の約68%が週平均3~6時間をセンターのセッションの準備、実施に割いている

• 保護者に対するインタビューでは下記の意見が存在– 多忙である– 自分の義務や役割は果たしている– 一部の親に給与が支払われていることへの不公平感がある

– 決定事項から自分が阻害されている(出所文献より抜粋)

今後の課題運用の概要 親保育のメリット

保育以外にも活かせるスキル獲得が可能

• ニュージーランドのプレイセンターは単純な子育てではなく、子育てとプラスアルファの経験をすることが重視されているため、様々なスキル獲得の機会も準備されている

• プレイセンターでは、子どもの観察の仕方やマネジメントスキルが身につくといわれる

• 自分の子どもと同じ年齢の子どもを見るとしても、同じ年齢でもできることが異なる点に注目する等の一般化可能な視点が得られる

• プレイセンターで子育てを経験した後に、企業やNPO活動ができるというブランディングに成功しており、ある程度世の中からも認められている

(有識者インタビューより)

3

2

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6 000

幼児教育・保育サービス利用率は増加傾向で、施策の成果が見られる。教育効果可視化を目的としたICT施策はデータ回収率も向上しており、今後成果が期待できる。

出所:Early childhood education me ngā kōhanga reo data summary report 2015 「Number of licensed services and playgroups, 2005-2015」, 「Percentage of children

starting school with prior ECE attendance, June 2005-2015},「Percentage of ECE returns collected through ELI, by service type, 2014 and 2015」よりADL作成

施策による成果4

就学前教育に関する施策の成果

0

3 000

98

94

0

5 000

96

2 000

7 000

1 000

4 000

92

4 299

2013

%

857

95.6

4 255

2015

96.2

4 385

887

2014

95.9

856

2012

94.6

4 310

2009

94.394.9

4 2614 435

832

2010

896

94.0

771

2008

93.6

3 872

768

2007

729

2006

93.4

819

4 119

93.6

3 740

2011

93.2

3 6533 597

838 831

2005

乳幼児教育・保育サービス利用率

Licensed

services

Playgroups

(non-licensed

services)

免許必須幼稚教育・保育サービス施設数及び利用率推移

免許必須施設を利用する子どもは増加傾向にあり、子どもに良質な教育を受けさせる施策は一定の成果が見られるといえる

41

1

21

39

93

83

5

909298

Home-basedKindergarten Education

and Care

Licensed ECEPlaycentre

20152014

注)Licensed ECEはKindergarten, Education&Care, Home-based, Playcentre,

Kohanga reoにおけるデータによる国勢調査を100%としたときの、 Kindergarten,

Education&Care, Home-based, Playcentreの回収率として定義し、算出した

ECE国勢調査のELIを介した返却率推移

2014年に開始したELIを介す回収は1年で大きく浸透しており、今後データによる教育効果の検証に期待できるといえる

単位:%

保育者の免許取得支援制度終了

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早期教育の効果検証を実施し、結果を施策に反映することで質の向上を図ってきた。また、第三者評価においては一元的な実施、親の参加を促す仕組みの導入が特徴的。

イギリス

調査項目

背景・目的

スキーム・具体例

質の担保

成果

調査結果の概要

• 政権交代や知識基盤社会での競争力強化を背景に、国の教育水準向上を目的とした施策を実施。中でも、効果検証を目的とした施策を早期から実施してきた点は特徴的

• カリキュラムの制定、無償化導入、第三者評価、施策の学習効果の調査等を実施。得られた調査結果を次の施策に反映してきたは特徴的。現在、投資効果調査も実施中

• 政府機関Ofstedが監査、第三者評価を実施し、その結果を公表することで質を担保している。地方分権ではなく、国が一元的に実施している点が特徴的といえる

• 評価指標は全国統一で、且つ評価受診施設は全ての親への評価報告書の配布が求められており、且つ親も施設選びの際に評価結果を重視する傾向にあるので、悪質な施設は淘汰され、質の向上が図られる仕組みとなっている

• イギリスでは、国を挙げて就学前教育の施策に対する学力面の成果検証が行われてきた。代表例としては、無償化による早期教育の提供が学力向上に良い影響を与える結果が得られた

1

4

施策

2

3

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政権交代や知識基盤社会での競争力強化を背景に、国の教育水準向上を目的とした施策を実施。中でも、効果検証を目的とした施策を早期から実施してきた点は特徴的。

就学前教育に関する施策の背景・目的1

イギリスにおける就学前教育に関する国の施策

背景

主な施策

行政システム2元化体制 行政システム一元化の実現

無償化導入(一部2歳児,3,4歳児)

無償化導入(3,4歳児)

DOL制定

1998年 2010年2002年

所管

保健省(保育)教育雇用省(現教育省)

目的

教育雇用省(幼児教育)

EYFS改訂ナショナルカリキュラムEYFS導入( 0~5歳児)

2014年2012年

BTM導入(3歳未満児)

• 公平に教育を提供する

• 財政投資効果を検証する

2008年

ELG制定

1996年

(注)略語は以下のように定義• DOL:Desirable Outcomes of Learning(学習の望ましい成果):教育内容に関する法的基準• ELG:Early Learning Goal(早期学習目標):教育に関する達成目標• BTM:Birth to Three Matters(3歳までが大切):教育内容カリキュラム• EYFS:Early Years Foundation Stage(早期学習基礎段階):カリキュラム

ナショナルカリキュラム導入(3,4歳児)

2000年

教育効果検証パネル調査、研究の実施 (大学等が実施)

• 小中学校向けの統一カリキュラムの導入(1988)

• 就学前教育・保育は民間機関が主に担う

• 保守党から労働党へ政権交代(1997)

• 労働党から保守党へ政権交代(2010)、緊縮財政ではあるものの、幼児教育・保育は引き続き重視

• 「社会経済的に困難な状況の家庭の子どもへの就学前教育は初等教育以降の学力向上に良い影響を及ぼす」、「困難でない家庭の場合に比べ改善効果が大きい」という研究結果の発表(社会的公正を図る側面の効果検証)

• 経済指標が改善・安定により、国際社会での優位な地位獲得志向の高まり

• 幼児教育・保育が政治の最優先課題とし、多くの財源を投入。福祉との融合も重視

• EU,OECD等による、就学前教育の初等教育以降の教育への影響の大きさを表す調査結果の発表

学力の底上げ

• 知識基盤型社会における国際競争を勝ち抜く• 初等教育以降の学力及び教育水準の向上を図る• 施策の効果を検証し、効果の高い教育を提供する

就学前教育の質の向上質の格差是正

• 学力低下を克服する• 教育水準の向上を図る

出所:「イギリスの就学前ナショナル・カリキュラムについて(埋橋玲子著) 」等、二次情報をもとにADL作成

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カリキュラムの制定、無償化導入、第三者評価、施策の学習効果の調査等を実施。得られた調査結果を次の施策に反映してきたは特徴的。現在、投資効果調査も実施中。

就学前教育に関する施策の詳細2

イギリスにおける就学前教育に関する国の施策

行政システム2元化体制 行政システム一元化の実現

無償化導入(一部2歳児,3,4歳児)

無償化導入(3,4歳児)

DOL制定

1998年 2010年2002年

保健省(保育)教育雇用省(現教育省)

教育雇用省(幼児教育)

EYFS改訂ナショナルカリキュラムEYFS導入( 0~5歳児)

2014年2012年

BTM導入(3歳未満児)

2008年

ELG制定

1996年

ナショナルカリキュラム導入(3,4歳児)

2000年

教育効果検証パネル調査、研究の実施 (大学等が実施)

施策の詳細

所管

課題

主な施策

就学前教育の質の向上 学力底上げ質の格差是正

• 低所得、社会経済的に困難な状況の家庭の2歳児を対象とした無償化導入

• 0~5歳児を対象とするナショナルカリキュラムの導入– 就学前教育を行うすべての機関に対して定めた– 質を担保するための評価方法についても言及(教育水準局が第三

者評価を実施)

• 全ての3,4歳児への無償化導入– 週15時間、年間38週間の就学前教育の無償化を開始(教育省か

ら配分)

• ナショナルカリキュラムの改訂– ページ数を大幅に削減– 5歳児における評価項目の変更

– 2歳児における「成長チェック(progress check)」の導入

• DOLの制定– 就学前教育の内容に関する法的な基準として保守

党が作成

• ELGの制定– DOLの置き換えとして、就学までに到達すべき目標

を労働党が設定

• 3,4歳児対象のナショナルカリキュラムの導入– ELGを含む目標とプロセスについて言及– 3,4歳を就学前基礎段階として定める

• 3歳未満児対象の教育の枠組みの導入– BTMでは効果的な養護と教育を行うための実践と

発達の枠組みを記載

• 小中学校に対し、ナショナルカリキュラム導入

出所:「イギリスの就学前ナショナル・カリキュラムについて(埋橋玲子著) 」等、二次情報をもとにADL作成

(注)略語は以下のように定義• DOL:Desirable Outcomes of Learning(学習の望ましい成果):教育内容に関する法的基準• ELG:Early Learning Goal(早期学習目標):教育に関する達成目標• BTM:Birth to Three Matters(3歳までが大切):教育内容カリキュラム• EYFS:Early Years Foundation Stage(早期学習基礎段階):カリキュラム

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政府機関Ofsted*が監査、第三者評価を実施し、その結果を公表することで質を担保している。地方分権ではなく、国が一元的に実施している点が特徴的といえる。

出所:「保育の質の向上に向けた監査・評価の在り方, 池本美香」、「Early Years Foundation Stage Profile, EYFS」、有識者インタビュー、現地インタビューよりADL作成

質を担保する評価制度

監査、定期的な評価の概要

3

認可 Ofstedへの登録 定期的な監査・評価評価レポート回収・集計

評価レポート公表

• 施設立ち上げにあたって施設・設備、保育者などについて一定の基準を満たすか監査しOfstedが認可を出す

• 認可された施設はOfstedへの登録が求められている

• 施設は毎年Ofstedに対して登録料を支払う

• 原則4年に1度• Ofstedの検査官の訪

問により監査・評価を受ける

• 全国統一の指標で4段階評価(評価項目は次頁参照)

• 評価の結果不適切な施設は再評価を受ける

• 運営の状況に変更があった場合、質に懸念が生じた場合には、施設を訪問してチェックを行う

• 監査・評価に子どもの親が立ち会うことも可能

• Ofstedが一元的に評価レポートを回収

• 全国の評価レポートの集計

• 教育省に集められる幼児期の成長に関する情報と併せて分析、分析結果から年次報告書も刊行

• ホームページで公表– 最高評価を得た施設のリスト

– 評価レベル別にみた施設の割合

– 全国の経年変化とあわせた施設の種類別、地域別などで、保育の質

• 優れた取り組みを行う施設は詳細に公表

• 再考評価を得た施設は、その事実を表すOfstedのロゴをホームページ等で使用可能

Ofstedが実施

(注)Ofsted*:Office for Standards in Education, Children’s

Services and Skills

(教育省から独立した機関)

Ofstedはイギリス国内8つの地域に1500人の職員、直接契約した1500人の検査官を有する(学校の監査評価も行う)。就学前教育機関に在籍する3,4歳児は2014

年時点で1,299,910 人とされる

イギリスではOfstedが認可権限を持ち、個人で小規模施設を運営する人も届け出る必要がある

Ofstedの監査官は、一時期トライバルに外注されたが、2018年から再びOfstedで内省する予定

(有識者インタビューより)

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評価指標は全国統一で、且つ評価受診施設は全ての親への評価報告書の配布が求められているため、悪質な施設は淘汰され、質の向上が図られる仕組みとなっている。

出所:「保育の質の向上に向けた監査・評価の在り方, 池本美香」、「Early Years Foundation Stage Profile, EYFS」、http://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000090116.pdf 、有識者インタビュー、現地インタビューよりADL作成

(ご参考)第三者評価レポートの概要

施設評価を子どもの親に周知する工夫

3

親にも分かりやすく、信頼性を担保する工夫がとられている– 検査官の署名入り– 4~6ページにまとめられたもの– 四つの分野それぞれと全体についての4段階評価、主なポイントを整理

評価を受けた施設にはすべての親に評価レポートを配布することが求められている

• 虐待や事故が起こっていないか等の安全確保のチェック

• 四つの分野について、4段階評価①教科指導やカリキュラム、生徒指導などの教育の質

②全国テストや資格試験の結果による児童生徒の成績及び児童生徒の社会的人格的発達

③学校の管理運営やリーダーシップ④当該校の改善課題

評価項目とその周知方法 評価報告書(評価レポート)における工夫

評価項目

評価項目の

周知方法

• Ofstedからは、これらを解説したハンドブックと、安全面のチェック方法について解説した冊子が発行されている

• 検査員が施設訪問時に親が立ち会うことも可能

悪質な施設は颯太され、質が向上する

イギリスでは保育時間内にポートフォリオの記入時間等が確保されてはいないが、ポートフォリオの作成は監査項目であり且つ、市場原理が働いているため、ポートフォリオの記入は形骸化していない

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UKはNZに比して、Ofstedが現場に与える影響力が大きく、評価結果の公開による高いスコア獲得に対する現場のプロ意識、閉鎖に対する危機感構築に寄与している。

出所:有識者インタビュー、現地インタビューよりADL作成

(ご参考)ニュージーランドに対するイギリスの特徴

イギリスとニュージーランドの比較

質の評価機関

許認可の権限の所在体制

質の評価結果の公開の有無

親が施設選びの際に重視するポイント

評価に対する現場からの印象、反感の有無

質の評価

質向上のモチベーションの源泉

ノンコンタクトタイムの実施

ICTの活用

イギリス ニュージーランド

Ofsted(独立した政府機関) ERO(独立した政府機関)

Ofsted 教育省

公開 公開

評価されているという威圧感が大きく、現場は強く嫌悪感を抱いている

合意形成を重視した議論が行われており、評価されているという威圧感は少なく、現場からの反感は小さい

高いスコアを取りたいという現場のプロ意識、宣伝効果への期待、閉鎖に対する危機感

親とのリレーションシップの構築、教員間のチームワークの構築

国や施設を取りまとめる組織が設けているわけではないため、施設により実施状況は大きく異なる。実施している園でも時間が不足している。実施有無は質の評価に直接的には反映されない

労働時間の内訳として、時間が設けられており、実施されているが、足りていないのが実情。質の評価結果に実施有無は直接的には反映されない

Ofstedがデータ提出を求める傾向にあるので、子どもの成長記録を作成する際にカリキュラムとのカテゴリ相関、安全担保の証明を効率よく行える機能への拡充が見られる

(住民票がないため)子どものマイナンバーにより、教育省が一貫して出欠状況等を把握。現場でのICT化は安全性のアピールやカリキュラムとの連携機能等への拡充は見られない

一部教員はナショナルカリキュラム自力で理解することが困難であるため、質の向上のために(Ofstedの評価に備え)、園内研修を行うことが重要

教員養成段階で実習を複数回設ける等、ナショナルカリキュラムと子どもの成長とを関連付けて考える力が養成段階で構築されている

教員の質

取り組み状況

教員の資質

3

(家庭から通えることを前提として)口コミ、現地の様子、 (20%程度の親は)評価結果

(家庭から通えることを前提として)口コミ、現地の様子

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イギリスでは、国を挙げて就学前教育の施策に対する学力面の成果検証が行われてきた。無償化による早期教育の提供が学力向上に良い影響を与える結果が得られた。

出所:「諸外国における就学前教育の無償化制度に関する調査研究」よりADL作成

施策による成果4

イギリスにおける就学前教育の成果検証に関する主な研究

ロンドン大学、オックスフォード大学など

• 3~5歳時点での就学前教育機関に在籍の有無が学力及び社会的行動に与える影響を調査

• 3~11歳時点までの追跡調査• EPPSEはEPPEの継続研究で、16

歳時点までの追跡調査

• 社会経済的に困難な状況の家庭の子どもに早期に適切な教育を与えると初等学校以降の学力向上に良い影響がある

• 家庭での学習環境と適切な保育が学力向上に影響する

• 教育及び保育の提供機関の質が重要であること

教育省

NatCen, オックスフォード大学、Frontier

Economics,

4children

EPPE/EPPSE

The Early Years

Foundation Stage

Review

SEED

Millennium cohort

studyロンドン大学

• 就学前教育における学力面及び社会公正面での成果を検証

• 社会経済的に困難な状況の家庭の子どもに対して早期に適切な教育を与えた場合、そうでない家庭の子どもよりも初等学校教育以降の学力の伸びがある

• EPPE/EPPSEの後継調査。• 社会経済的に困難な状況の家庭の

2歳児への無償教育の効果を検証• 学力面に加えて財政投資効も検証

• 2014年から実施のため研究成果はまだない

• 5歳までの教育がその子どもの将来的な経済活動に与える影響を調査

• 社会的スキルの取得が影響する

1997~2012年

~2011年

2014~2020年

2001~継続中

調査研究名 実施主体 調査内容 調査結果調査期間

ITERS, EDERSに加え、SEED独自の尺度も開発予定

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イギリスにおけるICTの活用先として、教師の業務効率化、親との情報共有、子どものeラーニングへの利用が挙げられる。

出所:現地インタビューをもとにADL作成

(ご参考)イギリスにおけるICT活用先

イギリスにおけるICTの主な活用先

教師の業務の効率化

親との情報共有

eラーニングの活用

• 役所への申請(役所への申請はデータで行われるのが一般的)• 教科書等の紙面のデータ化• 子どもの成長記録をチーム内で共有、複数の子ども間の比較を行うことで適切なケアを提供(障害を持つ子供や文化的に異なる子どもがいる場合に特に有効)

• タブレットを用いた子どもの写真やビデオ等の成長記録の共有(写真撮影、相関するカリキュラムのタグ付け、親への通知が1分以内で行えるレベルに簡単な操作となっている)

• おむつ交換の実施状況や睡眠時の監視状況の記録を全てタブレットを用いて残す(20秒程度の作業で終わる)ことで、子どもの安全性に関する情報を親と共有

• 現場に支給されたタブレットを用いてEducational Gameを子どもが行える• ただし、家庭でもスマホ等が浸透しているため、Gameとしての使用を控える施設もある

• Educational Gameの他にも、タブレットを子どもの活動のサポートに使用することもある(例:片目で焦点を合わせることが困難な子どものための虫眼鏡としての利用)

主な活用先 左記の概要左記の概要

タブレット等の機器は国からの支給ではなく、各施設や施設を取りまとめるHead Officeが購入してい

る。また、親からの寄付金を使用する場合も多い

PCの導入状況は施設により大きく異なるが、役所への申請がデータで行われるため、施設又はHead

OfficeにはPCがあるといえる

タブレットの導入を実現している園はまだ多くは無い(有識者インタビューより)

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Ofstedがデータ提出を求める動きが増加しているため、現場のICT化が加速している。ただし、カリキュラム正しい理解が前提となるので、園内研修で補っている状況。

出所:現地インタビューをもとにADL作成

(ご参考)イギリスにおけるICT活用事例

イギリスにおけるICTの活用

教師の業務の効率化

親との情報共有

eラーニングの活用

• 役所への申請(役所への申請はデータで行われるのが一般的)• 教科書等の紙面のデータ化• 子どもの成長記録をチーム内で共有、複数の子ども間の比較を行うことで適切なケアを提供(障害を持つ子供や文化的に異なる子どもがいる場合に特に有効)

• タブレットを用いた子どもの写真やビデオ等の成長記録の共有(写真撮影、相関するカリキュラムのタグ付け、クラウドによる親への共有・通知が1分以内で行えるレベルに簡単な操作となっている)

• おむつ交換の実施状況や睡眠時の監視状況の記録を全てタブレットを用いて残す(20秒程度の作業で終わる)ことで、子どもの安全性に関する情報を親と共有

• 現場に支給されたタブレットを用いてEducational Gameを子どもが行える• ただし、家庭でもスマホ等が浸透しているため、Gameとしての使用を控える施設もある

• Educational Gameの他にも、タブレットを子どもの活動のサポートに使用することもある(例:片目で焦点を合わせることが困難な子どものための虫眼鏡としての利用)

主な活用先 左記の概要左記の概要 Ofstedは近年データを重視するようになりつつあるので、ICTを用いて効率よく日々

の作業データや子供の成長記録を蓄積することは重要

記録の際に、カリキュラムのどのカテゴリーと相関するのかも合わせて記録する必要があり、カリキュラムを正しく理解しているかが重要になってくる

施設にもよるが、園内研修により、受け持つ学年に対応したカリキュラムの重要部分の理解を深める場合が見られる

– イギリスのカリキュラムは膨大でかつ改訂スピードも速い。また、教師の養成段階のレベルが高くは無いので、支援が必要

(有識者インタビューより)

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フランスでは幼稚園を教育制度の一つとして位置づけているため、無償で就学前教育が受けられる。教育内容としては就学後の基礎能力、学ぶ姿勢の習得に重きを置く。

フランス

調査項目

背景・目的

スキーム・具体例

質の担保

成果

調査結果の概要

• 早期教育の重要性の高まりを背景に、幼稚園(3~5歳児が通う)の無償化を実施してきた• 近年は0~2歳が通う保育所の待機児童の解消を目的とした施策が行われている

• 早期教育を重要視し、幼稚園を教育制度の一つと位置付け、無償化の導入、教員資格の新設による教員の質の向上を行ってきた。近年は、保育施設の拡充を実施

• 就学前教育において、就学後も使用する基礎スキルの習得や学ぶ姿勢を身に着けることに主眼が置かれており、実際3~5歳児に対し週24時間の授業が行われる

• 公立幼稚園の教員は「初等教育教員(professeur des écoles)」として採用される国家公務員で、学歴要件は修士号と定めることにより、幼稚園の教員の質及び社会的地位向上を図っている

• 教育省の出先機関である国民教育視学官(IEN)が群、市単位で管轄区域を持ち、指導助言および視察ならびに勤務評定を実施(年長クラスは小学校と同様の評価抱負を取る)

• 幼稚園での早期学習による効果を検証する研究が実施されている。具体的な成果として早期教育が学業の失敗を抑制するとの効果が示されてきた一方で、近年は就園率がほぼ100%であるため、幼稚園の影響は捉えにくく、効果について結論付けるのは難しいという意見もある

1

施策

2

出所:「諸外国における就学前教育の無償化制度に関する調査研究」、各種二次情報及び有識者インタビューよりADL作成

注:フランスは自主性を重んじた教育を実践しており、むやみに諸外国と横並びに比較することに反対してきた国である。本調査はフランスの強みといえる取り組みで日本に活かせるものを探すというスタンスであり、むやみに他国とフランスを比較する調査ではない

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早期教育の重要性の高まりを背景に、幼稚園の無償化を実施してきた。近年は0~2

歳が通う保育所の待機児童の解消を目的とした施策が行われている。

出所:「初等中等教育の学校体系に関する研究 報告書1 諸外国における就学前教育の無償化制度に関する調査研究」をもとにADL作成

就学前教育に関する施策の目的・背景1

フランスにおける就学前教育に関する国の施策

背景

• 早期教育がその後の教育に好印象を与える研究結果の発表

• 女性の労働拡大

• Xxx

主な施策

民間企業の乳幼児受け入れサービス開始の認可

学習指導要領見直し

保育施設整備

初等教育教員資格の改定

幼稚園の効果について述べる報告書発表

1990年 2014年

所管

国民教育省(幼稚園)

目的

教育の質の向上学力水準の向上

• Xxx

2009年2006年

• xxx• 幼稚園就園率はほぼ100%

• 多様な背景の子どもへの対応必要性の高まり

• xxx

2004年 2012年

雇用連帯省(保育)

幼稚園完全無償化(3~5歳、一部地域2~5歳)

• 全ての子どもに質の良い教育を提供する

• 小学校以降の学力水準を向上させる

• 0~2歳の待機児童の解消• 施策の効果検証

待機児童の解消

• 幼稚園( 3~5歳児)就園率は依然としてほぼ100%であるが、保育(0~2歳児)定員は0歳から2歳の子どもの人口全体の 16%分程度

就学前教育教員資格の改定

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早期教育を重要視し、幼稚園を教育制度の一つと位置付け、無償化の導入、教員資格の新設による教員の質の向上を行ってきた。近年は、保育施設の拡充を実施。

就学前教育に関する施策の詳細2

フランスにおける就学前教育に関する国の施策

民間企業の乳幼児受け入れサービス開始の認可

学習指導要領見直し

保育施設整備

幼稚園の効果について述べる報告書発表

1990年 2014年

国民教育省(幼稚園)

2009年2006年2004年 2012年

雇用連帯省(保育)

幼稚園完全無償化(3~5歳、一部地域2~5歳)

施策の詳細

所管

課題

主な施策

教育の質向上 待機児童の解消学力水準の向上

• 公立の幼稚園教員も小学校教員と同じく大卒レベルの養成を整備(1990)

• 2010年には幼稚園教員の資格はマスターレベルに引き上げられた(2010)

• 企業による保育所にも、公立と同じような補助を与えることになった

• 早期教育の学習効果をはかる調査の実施(1970年代から

行われているが、2006年以降国

が報告書として盛んに発表している)

• 2009年から2012

年までに、20万人分の受け皿整備を計画

• 基本計画法では幼稚園の役割を見直すことや2歳児の受入れを促進することなどが示された(2013)

• 幼稚園の役割を再検討するための議論や学習指導要領の改訂が開始された

• 幼稚園を教育制度の一つと位置付け、無償化を実施(3~5歳は希望すれば必ず入園可能)

• 一部地域は、優先的に2

歳から就園可能

出所:「初等中等教育の学校体系に関する研究 報告書1 諸外国における就学前教育の無償化制度に関する調査研究」、有識者インタビューをもとにADL作成

初等教育教員資格の改定 就学前教育教員資格の改定

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フランスでは2歳児以下は保育所に通い、3~5歳児は幼稚園に通う。就学前教育も教育の良い部分として位置付けられているため幼稚園は無償。ほぼ全ての子が通う。

出所:「諸外国における就学前教育の無償化制度に関する調査研究」、「フランス・ドイツの家族生活, 内閣府経済社会総合研究所」よりADL作成

(ご参考)主な保育・教育サービス体系

保育所は空きが足らず、認定保育ママが保育需要の7割を占める(有料)

フランスにおける年齢別保育・教育サービス体系

1

0

20

40

60

80

100

120

1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020

%

2歳

3歳

4歳

5歳

フランスにおける主な保育・教育サービス体系 フランスにおける幼稚園の在籍率推移

フランスでは0~2歳児は保育園に、3~5歳児は幼稚園(下記、保育学校に該当)に通う

幼稚園は無償であるため、3~5歳のほぼすべての子どもが幼稚園に通う

2歳児は一部地域のみ優先的に就園が認められる場合を除き、空きがあまりないため就園率は低い

フランスは幼保一元化されていないが、年齢別にみると実質幼保一元化されているともいわれる

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就学前教育において、就学後も使用する基礎スキルの習得や学ぶ姿勢を身に着けることに主眼が置かれており、実際3~5歳児に対し週24時間の授業が行われる。

(ご参考)フランスの幼稚園の具体例

教育内容の具体例

2

時間配分は1週間24時間で週4日、もしくは半日×9回。前者は、1日の授業時間が6時間ほどと長いのが特徴だが、水曜日に休日となることが多い

• 義務教育の開始前に言葉に慣れ、文字の世界に触れる

• 座ってきちんと先生の話に耳を傾けるなど、「生徒」になるための準備をする

就学前教育の目的

教育の具体例

• サウンドアート(歌、楽器など)• 舞台芸術(ダンス、演劇など)• 視覚芸術(絵画など)• 運動(体操、三輪車)• 工作• アルファベットのブロック体、筆記体• 単語が書かれたカードの並べ替えにより文章を作る練習

• 数字を使う• 形と大きさの識別

出所:「諸外国における就学前教育の無償化制度に関する調査研究」、各種二次情報よりADL作成

義務教育ではないが、無償であること、フランスでは小学校から留年制度があることから、ほぼすべての子どもが幼稚園に通う

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アメリカは連邦制でありながら、国が介入し、教育格差是正を目的とした補助金制度、教育効果・投資効果の最大化を目的とした検証が行われてきた。

アメリカ

調査項目

背景・目的

スキーム・具体例

質の担保

成果

調査結果の概要

• 連邦の教育政策への介入を背景に、教育格差是正、教育水準向上、教育効果の検証を目的とした施策が行われてきた

• アメリカは連邦制であるため、カリキュラム策定、教育基準の設定、教育の質の評価は教育省ではなく、州、地区、民間組織により行われる

• 基本的な施策は各州で異なる。ただし、連邦の州への資金補助と引き換えに、連邦が質の向上等に寄与する施策を州に義務付けた事例も存在する

• 就学前教育は、連邦からの試験実施等はなく、州毎に質の担保を実施• 大学と連携し、今後教師になる人材の育成に取り組む州の事例が多数みられる

• 就学前教育に対する社会、経済、教育的効果の検証が行われてきた。特に無償化施策に伴い、経済的困難な家庭への投資が良い影響を与えることが検証されてきた

1

3

施策

2

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1979年1962年 2011年

連邦の教育政策への介入を背景に、教育格差是正、教育水準向上、教育効果の検証を目的とした施策が行われてきた。

出所:「諸外国における就学前教育の無償化制度に関する調査研究」をもとにADL作成

就学前教育に関する施策の目的・背景1

アメリカにおける就学前教育に関する国の施策

背景

• 連邦主義により、連保政府が外交、州が内政を管轄

• ニューディール期以降、内政分野にも連保が関与

• NCLBは連邦の介入により格差を拡大しているという批判の高まり

主な施策

2015年

所管

目的

• 州の教育政策への連邦政府の影響力増大(連邦補助金を使用する場合の連邦の州への権限拡大等)

• 連邦が教育政策へも関与

2002年

学力水準の向上

• 小学校以降の学力水準を向上させる

(注)略語は以下のように定義• ESEA:Elementary and Secondary Education Act(初等中等教育法)• NCLB:No Child Left Behind Act of 2002(落ちこぼれを作らない)• RTT-ELC:Race to the Top-Early Learning Challenge(頂点を目指す競争;就学前教育チャレンジ)• ESSA:Every Student Succeeds Act(全児童・生徒学業達成法)

1965年

学校間格差是正

• 学力レベルが低い学校の底上げを図る

学力の底上げ• 子どもの基礎学力の国際的な低下を食い止めること• 言語におけるマイノリティ、特別支援が必要な児童と恵まれた学校に通う子どもたちのギャップを埋める

教育格差是正

• 経済的・社会的に不利な子どもの学力を向上させる

教育省(幼稚園)

保健福祉省(保育)保健教育福祉省

NCLB法導入(小学校以降にも該当)

3,4歳児無償化導入(ユニバーサル・プレスクール政策;州ごとに開始時期、実施有無が異なる)

ヘッド・スタート・プロジェクトの開始

RTT-ELC政策の開始

教育効果検証(The Perry Pre-school study等)

ESEA法導入(小学校以降) ESSA法導入

【追記】各州レベルで見ても、幼保で所管が異なる場合が多い

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1979年1962年 2011年 2015年2002年1965年

連邦制であるため、基本的な施策は各州で異なる。ただし、連邦の州への資金補助と引き換えに、連邦が質の向上等に寄与する施策を州に義務付けた事例も存在する。

就学前教育に関する施策の詳細2

アメリカにおける就学前教育に関する国の施策

施策の詳細

所管

課題

主な施策

教育格差是正 学力の底上げ学力水準の向上

出所:「諸外国における就学前教育の無償化制度に関する調査研究」をもとにADL作成

NCLB法導入(小学校以降にも該当)

3,4歳児無償化導入(ユニバーサル・プレスクール政策;州ごとに開始時期、実施有無が異なる)

ヘッド・スタート・プロジェクトの開始

RTT-ELC政策の開始

教育効果検証(The Perry Pre-school study等)

ESEA法導入(小学校以降) ESSA法導入

教育省(幼稚園)

保健福祉省(保育)保健教育福祉省

学校間格差是正

• 各州毎に経済的に困難な家庭の3,4歳児への無償化の実施(州により注力の度合いは異なる)

• NCLBの改正– 学力テストが準拠する学力レベルやその評価方法の制定は州の自由裁量

– 学力の低い学校の改善計画に連邦の介入を認めない

(上記初等教育)

• NCLBの導入– 州、学区、学校に強いアカウンタビリティを求める– 学力テストの実施、判定を州に義務づけた(初等教育)– 保育福祉省、教育省が補助金を州に支給する– Early Reading Firstとして「読み」が最重要視された

• RTT-ELCの開始– 保健福祉省、教育省が共同所管する競争的資金– 3,4歳児を対象とするプレ幼稚園プログラムについて州と地方で行う体制整備を支援する

• ヘッドスタ―トの開始– 低所得層の幼児に対する補償教

育プログラムと保護者に対するエンパワメントを行う

– 保健福祉省が所管

• ESEAの導入(初等教育)– 経済的・社会的に不利な子どもが

一定レベルの学業を達成するため、州に与えられる連邦補助金制度を定めた

初等教育における学力目標を達成しなければならないという圧力が就学前教育にも及んだ

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アメリカでは、カリキュラム策定、教育基準の設定、教育が基準を満たすかの調査は教育省ではなく、州、地区、民間組織により行われる。

出所:アメリカ教育省ホームページよりADL作成

実施体制

連保政府(教育省、保健福祉省)

州/地区

• 州へのプログラム毎の資金援助(ヘッドスタート事業等)

• 資金援助プログラムの中で、学力目標設定、学力測定試験の実施を定めるものも存在(NCLB法、初等学校以上対象)

• 幼稚園/保育所の設置、管理監督• 教師及び学校管理者の資格認定• カリキュラムの開発• 州ごとの教育基準の設定• (教育基準を満たすかの試験の実施:小学校以降)

A州 B州 C地区 X州

・・・

・・・

2

連邦と州/地区/民間組織の役割分担

左記主体の役割主体

州/地区/

民間組織• 施設やプログラムの質の評価

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各州が定める教育枠組みの参考として、ヘッドスタート事務局*は習得領域、発達の節目ごとの発達過程、学習目標、目標を達成したかを測る指標を設定、公開している。

出所:https://eclkc.ohs.acf.hhs.gov/interactive-head-start-early-learning-outcomes-framework-ages-birth-five よりADL作成

ヘッド・スタート・プログラムが推奨する教育の枠組み

ヘッドスタート事務局が公開する就学前教育の大枠

2

就学前教育で習得すべき領域– 0~3,3~5歳で部分領域が示されている

就学前教育で習得すべき領域をさらに細分化– 領域「言語」の場合、「語彙」「記述」等にあたる

発達の目標– 5歳の達成目標が複数示されている

(例:声を出して読んだ本について質問し答える、独立性の成長に伴い教室内のルールに従う)

発達の節目ごとの発達過程– 0-9,8-18,16-36,36-48,48-60か月毎に示されている(例:様々な大きさ、向きの形を認識し、側面と角度を区別し始める)

発達目標を達成したかを評価する指標– 定量情報も交えて、具体的行動が示されている(例:最低でも20まで口頭で数えられる)

1

2

3

4

5

1

2

3

4 5

領域選択

上記点線部分は目標の数だけ続く

*)ヘッドスタートプログラムを担当する教育省の部門をヘッドスタート事務局と呼ぶこととする

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共通枠組みに実施義務はないため、連携を図らず独自の枠組み/カリキュラムを作成している州も存在し、州によりカリキュラム作成体制は大きく異なる模様。

出所:ウェストバージニア州教育省、カリフォルニア州教育省のホームページよりADL作成

ヘッド・スタート・プログラムが推奨する教育の枠組み

具体例

2

連携を図っている例(ウェストバージニア州) 連携を図っていない例(カリフォルニア州)

• 州独自に作成した教育枠組みとヘッドスタート事務局との対照表を公開

• 州では領域、目標のみ作成している(その他の項目は共通枠組みを再利用していると推察)

• プリスクールのカリキュラムは作成していない

州独自の枠組みの一部

対照表の一部獲得すべきコンピテンシーについて232

ページにわたり記載(出所:California Early Childhood Educator

Competencies)

更に別途、各教科ごとに教育枠組みを作成(算数だけで23ページ)– 獲得すべき概念、概念を子どもが習得したと判断できる会話・発言事例、授業上誤解が生じる部分、具体的授業事例を独自に記載している

– 会話例:「私は3頭の牛と2頭の豚を持っています。それは1つ、2つ、3つ、4つ、5つになります。 5匹の動物だ!」(数を足すという概念を理解する指標例)

(出所:Transitional Kindergarten Chapter of the Mathematics Framework for California Public Schools: Kindergarten Through Grade Twelve )

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NCLB法で義務だった小学校以降の学力試験/判定を背景に、幼稚園でも技能習得が重視されている。効果最大化のために、過剰な教育を行う事態も過去に発生していた。

出所:「NCLB 法下に見るアメリカの幼児教育」よりADL作成

アメリカの幼稚園の教育

アメリカの幼稚園の一日のスケジュールの例

フロリダ州Leon群 Sealey Elementary School (2006-2007) に付随する幼稚園(5歳対象)

NCLB法でEarly Reading Firstとして「読み」が最重要視されたこと、初等教育以降の国語と算数の学力テスト、及び学力判定を義務付けられていたことを背景に、Pre-Kindergarten

(多くは3,4歳対象),Kindergarten(5歳対象、小学校0年生とも言われる)でも、読み書きを含む言語、数・図形の習得に重きが置かれているNCLB法下の時代は、学区・州からかなりの圧力がかかり,テストに備えた授業を行うことが幼稚園にも実質求められており、カリキュラムで定める以上の過剰な教育内容になっていた幼稚園も存在したとされる

2

【ご参考】初等教育以上に対して、連邦政府は州に下記を定めていた:• 学力目標の設定• 主要教科のテストの実施• 目標を満たしていない学校に対する支援・対策

• 州全体で達成できなかった場合は、連邦政府からの補助金の減額

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アメリカではShow&Tellと呼ばれる、各自が好きなものをクラスで発表する教育手法が盛ん。技能の獲得だけでなく人前でプレゼンをする素地を養う教育が行われている。

出所:各種二次情報よりADL作成

特徴的なアメリカの教育 Show and Tell

Show and Tell の概要

アメリカの他に、カナダ、オーストラリア、イギリス、ニュージーランド等でも行われている

アメリカではプレスクール(幼稚園前の学校)や幼稚園の時に「ショウ・アンド・テル (Show and Tell)」の時間があり、おもちゃ、お土産、ペットの写真な

ど、自分が気に入っている物を持参し、皆に見せて、それについて説明する時間が設けられています。皆に見せるだけでなく、それは何か、どこで入手したか、どうやって使用するか等、みんなの前で説明する練習をします。そして、「Show and Tell」は小学校になっても続き、高校になると正式な形として、「speech」という授業になります。このように、「皆の前に立ってしゃべる」方法は、アメリカ人に小さいころから叩き込まれているのです

【実際の手順】1. 子供達はShow and Tellの日に、自分の好きなものを学校に持って行く。基本

的にはおもちゃでも何でも良いとされる。全員のShow and Tellが入れられるShow and Tellボックスの中に時間が来るまでに各自入れておく

2. 先生がShow and Tellを始める

3. ボックスの中から一つ先生が選んで、選ばれたものを持ってきた人は前に出て喋る。慣れないうちは先生が質問をして発表者が答える。慣れてくると聞き手の子供達が質問をしながら発表者が答えるという質問形式で進める

4. 喋り終わったら、一人一人に見せて回り、それに対しての感想を子供達に言ってもらう。その際ポジティブな感想を言ってもらうように子供達を促す

5. 拍手6. 先生が「〇〇ちゃん、君、ありがとう」でしめる

2

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就学前教育に対する社会、経済、教育的効果の検証が行われてきた。特に無償化施策に伴い、経済的困難な家庭への投資が良い影響を与えることが検証されてきた。

出所:「諸外国における幼児教育の投資効果に関する研究成果」、各研究機関ホームページよりADL作成

施策による成果3

アメリカにおける就学前教育の成果検証に関する主な研究

ハイスコープ教育財団等

社会・経済・労働市場に対する効果の検証

• 幼児教育プログラムへの投資効果とその利益の比率は1:7と推計されている(50歳時の追跡調査も近年実施されている)

ノースカロライナ大学チャペルヒル校

The Perry Pre-

School study

The North Carolina

Abecedarian Early

Childhood

Intervention

• 質の高い、全日の年間を通じた幼児教育への1ドルの投資は子ども、家族や税負担者に4ドルのメリットをもたらす– この幼児教育プログラムへの参加者は、非参加者よりも生涯にわたって

143,000USD収入が多かった。学校区は特別な矯正教育の必要が減ることで、子ども一人当たり11,000USDの予算節約が期待可能

1962年~現在

2003年

幼児期への投資による教育的な効果の検証

教育省

The United States

“Success for All”

study

• 「すべての子どものための成功」プログラムに参加した子どもは、小学校卒業が早く、成績がよく、落第が少なく、特別教育のニーズが少なかった。この効果を持続するには、小学校や中学校でも同様のプログラムの必要性が指摘されている

2002年

The Chicago

Child-Parent

Centres study

ミネソタ大学

• 本センターへの参加は、成績の上昇、卒業率の上昇に加え、補習教育、未成年者犯罪、児童虐待の率を低下させた。コスト・ベネフィット分析でも、経済活動にプラスになり、税収が増えるほか、犯罪に関わる裁判や処遇、被害のコストを減らすという効果も指摘されている

2002年

調査研究名 実施主体 調査内容 調査結果調査期間

The United States

National

Evaluation of

Early Head Start

保健福祉省

• ヘッドスタートプログラムは、学校での成績、家族の自立、子どもの発達に関する親の支援について、効果をもたらす

• 子どもの認知的・言語的な発達に効果があり、プログラムに参加した子どもは親との交流に積極的であり、また親が教育や職業訓練に参加することを増やし、親の自立の助けにもなっている

2003年

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ドイツは州が教育権限を保有する。2000年のPISAショックを背景に、教育水準向上を目的として共通教育枠組を策定したが、依然として完全な統一には至っていない。

ドイツ

調査項目

背景・目的

スキーム・具体例

質の担保

成果

調査結果の概要

• 東西統一を機に、全州に保育を保証することを目的とした施策を実施。その後2000年のPISAショックを背景に、教育水準向上を目的とした施策が各地で実施された

• ドイツは連邦制であるため、連邦は法が定める範囲内でのみ介入可能。保育施設の運営、教育計画の制定等の教育決定に関する権限は州が保有する

• 教育水準向上を目的として、既存3種の教育計画をもとに幼児教育に対する共通枠組みを制定した。ただし、法的拘束力はなく、依然として教育計画は州により異なる

• 州により質を担保するための教育の評価手法は異なる

• 生活基盤型を重視する状況的アプローチにおける質の評価は、内部、外部評価から成る。外部評価への主体的な参加を通して、質改善に向けて参加者・施設が成長することを重視している

• 2000年以降、PISAの成績は回復に向かっている

1

施策

2

3

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東西統一を機に、全州に保育を保証することを目的とした施策を実施。その後2000年のPISAショックを背景に、教育水準向上を目的とした施策が各地で実施された。

就学前教育に関する施策の背景・目的1

ドイツにおける就学前教育に関する国の施策

背景

主な施策

1996年 2003年

所管

目的

2007年2004年1990年 1999年

• 1970年代から幼稚園を教育制度の中に位置づけようとする動きが存在

• 東西ドイツ統一• 東西ドイツ統一時の妊娠中絶法の統一問題が勃発

• 3歳未満児のための保育の供給量不足を補う

待機児童の解消保育の保証

• 子どもを産み育てることができる環境をすべての州に対して整備する

出所:「ドイツにおける就学前教育の現状と課題, 坂野慎二」、「ドイツの保育制度 -拡充の歩みと展望-, 齋藤純子」等、二次情報をもとにADL作成

教育計画作成(各州)

保育供給率目標の設定

共通教育枠組みの制定

幼稚園入園請求権施行( 3歳児以上)

教育フォーラムの立ち上げ

社会法典第8編の制定

7つの行動領域の公表(各州教育省に共通する行動指針)

2001年

教育水準の向上

• 海外と相対比較した際に、劣らないだけの学力水準の向上• 就学前教育と初等教育における教育の質を強化し協働を高める

• 1年育児休業し、子どもが1歳になると復帰する職業継続モデルの採用(保育施設が十分に供給されていることが前提)

• 2000年のPISAの結果から、ドイツは親の所属する社会階層による学力(読解力)の格差が最も大きい国と示された

• PISAショックにより、教育的側面を重視する動きが高まる

家族・高齢者・女性・青少年省

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教育水準向上を目的として、幼児教育に対する共通枠組を制定したが、依然として教育計画は州により異なる。待機児童解消に向けた施策は全国で行われている。

就学前教育に関する施策の詳細2

ドイツにおける就学前教育に関する国の施策

施策の詳細

所管

課題

主な施策

待機児童の解消保育の保証

出所:「ドイツにおける就学前教育の現状と課題, 坂野慎二」、「ドイツの保育制度 -拡充の歩みと展望-, 齋藤純子」等、二次情報をもとにADL作成

2003年 2007年2004年1999年 2001年

家族・高齢者・女性・青少年省

教育水準の向上

• 保育施設の拡充– そもそも旧西ドイツでは

3歳未満児の育児は家族の役割とする考えが根強い

– 連邦・州・地方自治体の全国団体保育所サミットが開催された

– 2013年までに3歳児未満児の保育に対し、全国平均35%の供給率達成を目指す

• 教育フォーラムの立ち上げでは、就学前教育の重要性が強調された– 就学前教育は,重点的領域の1 つとして位置づけられ,移民の背景

を持つ子どもを中心とした言語教育の充実,就学前教育施設と基礎学校の接続改善等が提言された

• 常設各州文部大臣会議(KMK*)はPISA2000年調査の結果に対する各州教育省に共通する行動指針として7つの行動領域を公表

• 州ごとに教育計画が作成する動きが強まる中、連邦が幼児施設における幼児教育に対する共通枠組を制定– 教育計画の対象年齢、基本理念、作成時期等も州で異なる– 枠組みに従う義務はないため、現在も各州毎に教育政策は異なる

1996年1990年

教育計画作成(各州)

保育供給率目標の設定

共通教育枠組みの制定

幼稚園入園請求権施行( 3歳児以上)

教育フォーラムの立ち上げ

社会法典第8編の制定

7つの行動領域の公表(各州教育省に共通する行動指針)

• 州に対し、保育の需要に応じた施設拡充のために配慮することを定めた

• 1992年の改正では、3歳以上の児童に、幼稚園の入園請求権を規定(州法の規定を規準とする)– 実施困難な市町村も存在したことから、実施期日

1996年とされた– 1999年まで請求権の完全実現が延長されたこと

もあり、3歳以上から就学までの児童の幼稚園供給率は全国平均でほぼ9割を達成した

*KMK:Kultusministerkonferenz各州文部大臣会議

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ドイツは連邦制であるため、連邦は法が定める範囲内でのみ介入可能。保育施設の運営、教育計画の制定等の教育決定に関する権限は州が保有する。

出所:ドイツ教育省ホームページ、その他二次情報からADL作成

実施体制

連邦と州の役割分担

A州 B州 P州

・・・

・・・

2

連保政府(連邦教育研修省)

各州

KMK

教育決定を行う権限をほとんど保有しない• 憲法に規定される事項に制限されている• 保育施設の拡充や保育施設の運営に関わる州への投資(連邦法で定める範囲内実施。保育拡充設置法案、児童助成法など)

• 学術研究の振興

教育決定を行う権限を保有• 財政責任を負う• 保育施設の運営• 保育施設運営等に関する補助金の市町村への交付• 教育計画の制定• 質の評価

州間の制度的統一を図る• 各州共通の枠組みの作成(ただし、法的拘束力はない。詳細は次頁参照)

州により教育体制や学校体系が異なる– 初等教育以降では、教育課程の編成、教科書の検定も州ごとに行われる

KMK*

市町村、各施設

左記主体の役割主体

各州の文部大臣により構成

*KMK:Kultusministerkonferenz各州文部大臣会議

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KMKが定めた共通教育枠組は、既に存在した3種の教育計画をもとに作成された。法的拘束力がないため、完全統一はできておらず、各州は元の理論を維持している。

出所:「ドイツにおける就学前教育の現状と課題, 坂野慎二」よりADL作成

教育計画の分類2

3種類の教育計画の比較 ※各詳細は次頁以降参照

上記3種の教育計画をもとにKMKが共通教育枠組を策定。

法的拘束力はないため、いまだに各州で、根底理論を保った改訂が実施されている

• 教科に相当する教育領域と獲得するコンピテンシーとに関係を持たせることを重視

• 就学前教育と初等教育の協働をつよめることを重視

• プロジェクトによる活動を重視• 教育領域が先にあるのではなく,「活動ありき」が中心となっている

生活基盤型に就学準備型も取り入れた内容

生活基盤型に就学準備型も取り入れた内容

生活基盤型を重視した内容

共同構成理論による教育計画

自己形成アプローチを主とする教育計画

状況的アプローチを主とする教育計画

教育計画の分類 左記理論の特徴 就学準備型取り入れ有無

2003年頃から各州で教育計画が作成

され始めた。(根底理論はそれ以前から存在)2000年のPISAショックを背景に、一部州では就学準備型を取り入れたものになっていると思われる

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教育領域に大きな差は無いが、目指す子供像、教師への要求内容から、生活基盤型を重視する州と、生活基盤型に就学前準備型を取り入れている州とに分類できる。

出所:「ドイツにおける就学前教育の現状と課題, 坂野慎二」, 「基礎問題プロジェクト第9回教育格差是正における保育・幼児教育の役割」よりADL作成

(ご参考)教育計画の分類2

3種類の教育計画の比較

①価値志向と宗教性,情緒・社会的関係及び葛藤、②言葉とリテラシー,情報・コミュニケーション技術・メディア、③算数,理科及び技術,自然環境、④美,芸術と文化、⑤運動・リズム・ダンス・スポーツ,健康

① 価値志向的で責任のある行動をする子ども

② 言語及びメディア能力のある子ども

③ 課題を持ち探究する子ども

④ 芸術的に活動する子ども⑤ 強い子ども

① 子どもの教育活動決定への参加

② 教育プロセスの調整③ 参加と協力④ 観察,評価及び一層の発

共同構成理論による教育計画

右記事例:バイエルン州

①運動、②身体,健康,栄養、③言葉とコミュニケーション、④社会的,文化的,多文化的教育、⑤音楽・美的教育、⑥宗教と倫理、⑦算数教育、⑧自然科学・技術教育、⑨環境教育、⑩メディア

子ども達は自分で,他者と,そして多様な外的環境と対決することによって諸能力を発達させる

①開かれた学習形態、②異なる個別化された学習材と授業の提供、③学習の自己決定と寄り添われる学習との関係の考慮、④方法,学習戦略,メディアのある環境の学習による方法コンピテンシーの強化、⑤自己学習者としての子どもの巻きこみ、⑥内的及び外的多様性の可能性考慮、⑦支援の診断,計画,方策の活用、⑧支援方法に保護者の巻き込み

自己形成アプローチを主とする教育計画

右記事例:ノルトライン・ヴェストファーレン州

① 身体・運動及び健康② 社会的及び文化的世界③ コミュニケーション:言葉,

文字文化とメディア④ 造形⑤ 音楽⑥ 算数的基礎体験⑦ 理科的及び技術的体験

① 子どもが発達を自ら方向付けること

② 日常の活動における能動的部分を引き受けること

③ 社会的行為者

① 生活全体の重視② 遊びの重視③ プロジェクトによる計画作

成④ 空間の工夫⑤ 観察と記録

状況的アプローチを主とする教育計画

右記事例:ベルリン市

教育計画の分類 教育領域 目指す子供像教育する側に求められること

① 人格的② 社会的文脈にお

ける行動③ 学習方法④ 変化と負担に耐

える力

① 自己② 社会③ 事実・方法

① 自己② 社会的③ 事物④ 学習方法

コンピテンシ―

生活基盤型に

就学準備型の思想を取り入れている

生活基盤型

を重視する

上記凡例:赤:生活基盤型の思想の代表例 緑:就学準備型の思想の代表例

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共通教育枠組は、状況的アプローチを基盤とし、共同構成理論、自己形成アプローチに配慮した内容となっている。

出所:「ドイツにおける就学前教育の現状と課題, 坂野慎二」よりADL作成

(ご参考)共通教育枠組の概要

KMKが定める共通教育枠組の概略

共通教育枠組みの構成

状況的アプローチを基盤とする内容

就学前教育施設における教育プログラムは、全体的支援の原理によって特徴づけられ、教科のアプローチや学問的訓練アプローチとは異なることと整理されている。そのため、プロジェクト活動が適しており、学習内容が子ども達の生活と関わり、興味に即すること、学習形態は自己学習を支援すること、等がまとめられている。その上で、各課題領域に関わる視点として、①学習を学習する支援(学習方法コンピテンシー)、②施設における子どもの生活を決定することに発達に応じて参加すること③多文化的教育、④性を意

識した教育活動、⑤発達にリスクのある子どもや障害を持つ子どもの特別な支援、⑥特別な才能をもつ子どもの支援、の6点を指摘している

共同構成理論、自己形成アプローチによる教育計画に配慮する内容

教育(Bildung)と訓育(Erziehung)が不可分のものであり、統一的で時間的に長期的な

ものであることが述べられる。その上で「就学前教育領域における教育努力の前景には、基本的なコンピテンシーの伝達と人的資源の開発と強化があり、それは子どもを動機付け、将来の生活や学習課題を把握し、克服し、責任を持って社会生活に参加し、生涯学び続けることを準備する」と述べている

右記章の概要

2

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状況的アプローチにおける質の評価は、内部、外部評価から成る。外部評価への主体的な参加を通して、質改善に向けて参加者・施設が成長することを重視している。

出所:「状況的アプローチに基づくドイツ幼児教育とその質と評価の方法に関する一考察」よりADL作成

質の担保3

状況的アプローチにおける質の担保

施設への調査用紙

全般的観察(巡回観察)

保育者への持続的なアンケート

両親との対話

リーダーへのアンケート

運営者へのアンケート

ドキュメント分析

外部評価

内部評価

評価手法 特徴

達成度の主観的判断(自身、チーム)

成功の程度を査定(自身、チーム)

査定結果を他の参加者と議論

現取り組みの改善に対する見解を共有

改善を実現するために必要なことを議論

話し合いのプロセス

アンケート/対話

グループディスカッションの帰結への評価話し合いのプロセスを示したプロトコールの評価

取り組み評価

A

B

D

C

外部評価の査定結果よりも、各関係者が質の改善に向けた議論を主体的に行うことにより、質の刷新ができる施設に成長しているかの方が重要とされる

• 個人の判断とチームの判断の相違を議論することに重きが置かれる

• 内部評価を外部評価により保証する仕組みである

• 多様な主体の参加が標準化されている

• 外部評価は多角的な視点から判断される

• 各参加者に対し平等に参加できると同時に、責任も平等であることを意識させるため、外部評価の結果は最終的に文書化された後、公開される

A

B

D

C

D

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幼保共通教育課程の導入等、幼保一元化を進めている。評価結果の公表、電子バウチャー形態による補助金額の親への通知による質の担保が他国から注目されている。

韓国

調査項目

背景・目的

スキーム・具体例

質の担保

成果

調査結果の概要

• 合計特殊出生率の下落を背景に保育料値下げを目的とした施策が実施された。その後、幼保間の教育格差を背景に、幼保一元化を求める動きが本格化し、現在も継続

• 国は教育の無償化、評価制度の整備、幼保共通教育課程の整備を実施。所管行政の統一や幼保機能の完全な統一にはまだ至っていない

• 韓国では幼保で所管行政が異なるが、2013年の3~5歳対象の共通教育課程(ヌリ課程)の導入を機に、機能の統一を進めている

• 国は幼保それぞれに対し、第三者評価を実施。幼保で評価組織、評価の流れは異なる

• 国が、各幼稚園における施設規模や教員保有資格等の基本情報、安全点検・運営管理の評価結果、施設での作成済カリキュラム等をWEB上に公開することで質を担保。また、評価により決まる補助金額は電子バウチャー形態により親に知らされる

• 幼保共通教育課程(ヌリ課程)を導入したが、保育所における教育ノウハウ不足、教員資格制度/評価制度の不一致等による教育の質の不揃いが課題となっている

1

4

施策

2

3

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2008年1997年 2013年2012年2011年2002年

合計特殊出生率の下落を背景に保育料値下げを目的とした施策が実施された。その後、幼保間の教育格差背景に、幼保一元化を求める動きが本格化し、現在も継続。

出所:「諸外国における就学前教育の無償化制度に関する調査研究」をもとにADL作成

就学前教育に関する施策の目的・背景1

韓国における就学前教育に関する国の施策

背景

• 幼稚園の量的増大が一定の水準を満たす(80年代後半)

• 合計特殊出生率が1.3人を下回り世界最低水準に転落(01年以降)

主な施策

所管

目的

保育料の値下げ

• 養育費に対する経済的負担を軽減することで、出生率上昇を狙った

教育科学技術部(幼稚園、教育)

保健福祉部(保育所、福祉)

ヌリ課程導入(全5歳児) ヌリ課程拡張(全3~5歳児)

保育所5歳児への拡張、所得制限等撤廃、ヌリ課程の3~5歳児への拡張(2012)無償化(幼稚園5歳児)

幼稚園教育課程(幼稚園 3~5歳児)

標準教育課程(保育所 0~5歳児) 標準教育課程(保育所 0~4歳児) 標準教育課程(0~2歳児)

• 評価制度のサンプリング調査が具体化せずに終了してしまっていた(2000年頃)

• 幼児教育法の成立を機に幼稚園評価問題が再燃

教育の質の向上

• 質の評価を行うことで教育の質を向上させる

• 幼稚園では英語教育等も行われており人気があったが、教育費が高いため低所得者は幼稚園に通うことができなかった

• 幼保一元化を検討する国の動きの本格化(2013年)

教育格差是正• 施設形態に関係なく高い教育を平等に提供する

幼稚園評価制度の本格実施

保育施設評価認証制度の本格実施

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2008年1997年 2013年2012年2011年2002年

国は教育の無償化、評価制度の整備、幼保共通教育課程の整備を実施。所管行政の統一や幼保機能の完全な統一にはまだ至っていない。

就学前教育に関する施策の詳細2

韓国における就学前教育に関する国の施策

施策の詳細

所管

課題

主な施策

教育の質の向上保育料の値下げ

出所:「諸外国における就学前教育の無償化制度に関する調査研究」をもとにADL作成

教育格差是正

教育科学技術部(幼稚園、教育)

保健福祉部(保育所、福祉)

ヌリ課程導入(全5歳児) ヌリ課程拡張(全3~5歳児)

保育所5歳児への拡張、所得制限等撤廃、3,4歳児への拡張(2012)など無償化(幼稚園5歳児)

幼稚園教育課程(幼稚園 3~5歳児)

標準教育課程(保育所 0~5歳児) 標準教育課程(保育所 0~4歳児) 標準教育課程(0~2歳児)

•経済的に不利な家庭の幼稚園5歳児を対象とした教育無償化

– 養育費の経済的負担が大きいことが合計特殊出生率低下の一因と国は認識

•幼稚園、保育所に対し第三者評価制度を導入

– 書面、実地調査により評価し、評価結果はWEB上に公開される

– 幼稚園の評価は教育庁などに設置される評価委員会、保育所の評価は育児政策開発センター(国立)が実施

•幼保統合に向けて、満5歳児に対しヌリ課程の導入

– 幼稚園と保育所の教育課程を統合し共通教育課程を制定

– 幼保で教育課程が異なっていたため、教育格差が生じていた

• ヌリ課程は生活基盤型を重視している

• ヌリ課程を3~4歳児へ拡張• ヌリ課程を運営する施設に対し、3,4歳児の無償化を実施

•幼保一元化に向けたロードマップが示された

– 情報公開システム、評価制度、施設基準、教員資格等の一元化を目指す(未達成のものも有り)

幼稚園評価制度の本格実施

保育施設評価認証制度の本格実施

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韓国では幼保で所管行政が異なるが、2013年の3~5歳対象の共通教育課程の導入を機に、機能の統一を進めている。

出所:「諸外国における就学前教育の無償化制度に関する調査研究」、有識者インタビューをもとにADL作成

幼保統一の流れ

幼保統一に向けた取り組み

幼稚園保育所

3~5歳児0~5歳児

教育社会福祉

幼児教育法乳幼児保育法

教育科学技術部保健福祉部

対象年齢

主な役割

根拠法令

-標準保育課程

ヌリ課程ヌリ課程

教育課程

0-2歳児

3-5歳児

所管行政

2013年にヌリ課程を導入し、幼保統一に向けて、下記の取り組みを計画した(2017年時点で下記はほぼ未達成)

2014年達成目標:・情報公開システムや評価制度の統一・財務会計項目の一元化

2015年達成目標:・教員資格の統一・施設基準の統一・機関の利用基準の統一

2016年達成目標:

・教職員の待遇や所管庁及び財源の一元化

2

韓国では「教育課程」「教師養成」「評価システム」「運営管理」の幼保間での統一を幼保統合の柱として掲げてきた。現状としては教育課程の統一しか実現できていない状況。ただし、評価システムの統一は既に存在する幼保のそれぞれの評価の中間をとる方向で議論が進みつつある

(有識者インタビューより)

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韓国では、女性の社会進出を支援するために保育園を設置し、幼保間の格差是正のために無償化、カリキュラム統一を図ってきたが、格差是正は未達成の状況。

出所:有識者インタビューをもとにADL作成

幼保統一の流れ

幼保統一に向けた取り組みの背景と取り組みによる結果

保育所(オリニジップ)の設置 所得に依存しない無償化の実現ヌリ課程による幼保間カリキュラムの一元化、指導を補助する

教師用指針書の作成

幼稚園と保育園の教員養成課程が大きく異なるため、幼稚園と保育園での教員の質の格差が大きいことが問題視された

幼稚園に通う家庭の間では、ネイティブスピーカーの授業が受けられる施設が更に登場することで、さらに就学前教育の格差が発生していた

韓国では教育の無償化が実現されているが、韓国は未だに競争社会という意識が根強く残っているため、預かり保育の時間に特別活動を親が選択する動きが盛んで、実質的に無償化前後で親の負担は変わっていない

所得に依存しない無償化を実現した結果、むしろ貧富の差、学びの格差を助長するものとなってしまった

指針書の利用により、国家的に単一的な教育を提供するに至ってしまい、2012年に問題視された

ヌリ課程を導入後も、保育士の教員資格取得段階のベースが浅いため、保育士と幼稚園教諭間で教師の質の格差はあまり埋まっていないのが実情

一方で、悪質な施設は指針書により底上げを図ることに成功した

核家族化が進む中で、女性の社会進出を促すことを目的とした

乳幼児期の養育費負担軽減による少子高齢化からの脱却、就学前教育への投資効率の高さを表す海外研究結果から、国家次元で公的教育を支援すべきと考えた

幼保間の教育の格差の是正を目的とした

取り組み

取り組みよる結果

取り組み

の目的

1

2

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イルソン幼稚園でも、「森の体験」をはじめとする屋外での活動として、1日のうち最も多くの時間を充てます。午前中約3時間は、森や公園に出かけて自然の中でさまざまな遊びをします。森での遊びや探検、動植物観察などを通じて、集中力や探究心、想像力、創意性、社会性などを育もうというわけです。また、小学校での学びにもつながる、物理や化学の実験のような活動も取り入れられています。広い公園で自転車に乗る体験など、子どもが森以外でも達成感を得られるように、活動を工夫しています。「生態教育」の代表的な活動は、畑での野菜栽培や食育活動です。子どもが地域の高齢者と一緒に畑仕事をしたり、高齢者からキムチなどの伝統食のつくり方を学び、料理をしたりします。食育活動充実のため、子ども専用の調理室も設けられています。収穫の喜びやさまざまな食材の味を伝え、子どもの表現力や探求心、創意性を伸ばすことが、「生態教育」の目的の1つです。また、最後に部屋を退室する子どもに照明を消すよう促すなど、節約について教える活動も「生態教育」に位置づけられます。

ヌリ課程の導入により、幼稚園では読み書き等の学習に時間を割くことから、主体的に体を動かす/自然に触れる等、遊びを重視した学習を重視するようになった。

出所:韓国の保育から見た子どもの育ち-「森の体験」・「生態教育」の中で育む子どもたち- (第5回ECEC研究会講演録②2015/12/4 よりADL作成

ヌリ課程の概要

ヌリ課程導入による変化

リテラシーの重視幼稚園では読み書き等の学習に時間を割いてきた(ただし、生活基盤型の範囲内である)

遊びの重視子どもが身体を動かして主体的に遊ぶことや自然に触れることに時間を割くようになった– 午前中から3~5時間、屋外での活動を中心に実施することがヌリ課程で定められている

2

イルソン幼稚園の事例時間の割き方の変化

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幼保それぞれに対し、国は第三者評価を実施。評価はWEBで公開され、評価により決まる補助金額は電子バウチャー形態により親に知らされる。

出所:「韓国幼児教育における第三者評価に関する研究, 丹羽孝」よりADL作成

質の評価制度の流れ

幼稚園評価制度、保育施設評価認証制度の流れ

3

幼稚園 保育所

参加申請 自己点検 現場評価 認証審議認証結果発表

結果のWEB

公開

補助金額の通知

実施主体 評価委員会(教育庁などに設置される) 育児政策開発センター(保健福祉家族部に設置される)

義務 推奨(2012年末段階で認証をうけた保育所は71.6%)実施義務の有無

評価の流れ

評価認証有効期間は3年(評価認証周期4年)実施周期

• 評価認証申請と手続き

• 自己評価委員会の設置

• 自己点検の実施

• 報告書の作成

• 観察員による現場観察の実施

• 結果報告書の提出(指標は次頁参照)

• 認証審議および決定

• 認証結果発表• 認証留保の場合は再参加

• 保護者/一般人への公開

• 電子バウチャー形態により保護者に通知

悪質施設は淘汰され、質の改善/向上につながる

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幼稚園評価制度では、教育課程、教育環境、健康・安全、運営管理について評価。遊びを重視した教育を提供するための環境構成に関する項目が含まれる点は特徴的。

出所:「韓国幼児教育における第三者評価に関する研究, 丹羽孝」よりADL作成

質の評価の指標

幼稚園評価制度において国が定める共通指標

3

• 教育課程、教育環境、健康及び安全、運営管理について評価

• 各項目が点数で評価される

• 「室内外の教育環境構成と活用の適合性」の項目では、興味に合わせた教育を実施する上で必要な環境が整備されているかを評価する項目がある(韓国は生活基盤型教育である)

– 室内空間は興味領域の構成が適切で、展示・掲示が教育的か

– 室外空間には各種遊び道具をはじめ、多様な活動領域があるか

– 室内外の施設・設備が、幼児の発達水準及び幼児教育の特性にされているか

• 教育計画の作成有無だけでなく、日々の教育計画の内容について評価する項目がある

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国が、各幼稚園における施設規模や教員保有資格等の基本情報、安全点検・運営管理の評価結果、施設での作成済カリキュラム等をWEB上に公開することで質を担保。

出所:全国幼稚園情報サイト http://e-childschoolinfo.moe.go.kr/kinderMt/kinderSummary.do(서울고척小学校併設幼稚園のページ)よりADL作成

質の担保 幼稚園評価制度

幼稚園評価制度による評価結果の公表

• 実施有無について記載• 評価結果は文章で掲載– 教育課程、教育環境、幼児の健康安全、運営管理の4項目について計1ページ程度

• 各施設について、児童数/学級数/教員数や教員の保有資格についても記載されているため、施設/教員の質を客観的に評価可能

• 詳細ページでは、教員の勤続年数、職位別人数も分かる

評価に関するページ(一部を抜粋)

掲載項目 要約ページ(一部を抜粋)

• 施設基本情報、安全点検結果、施設作成カリキュラム、評価結果等を誰でも閲覧可能

• いずれの項目も過去の結果の閲覧可能

※上記抜粋画像は日本語翻訳サイト使用後のものである

3

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保育所も幼稚園と同様に、WEB上に評価結果が公開される。大項目に大きな違いは無いが、点数/定型文を用いた記載等、保育所の結果は簡略化して公開されている。

出所:全国幼稚園情報サイト http://info.childcare.go.kr/info/pnis/search/preview/SummaryInfoSlPu.jsp?flag=YJ&STCODE_POP=46150000306(가락복지관어린이집のページ)よりADL作成

質の担保 保育施設評価認証制度

保育施設評価認証制度による評価結果の公表

評価認証に関するページ(一部を抜粋)

※上記抜粋画像は日本語翻訳サイト使用後のものである

3

• 総合評価結果は点数・定型文による記載で、相対比較をしやすい作りとなっている(定型文は次頁参照)

• 幼稚園とは異なり、施設ごとの定型文以外の文書による記載はない

カリキュラムに関する項目(一部を抜粋)

• 幼稚園とは異なり、実施済カリキュラムの詳細についての記載はなく、特徴的なプログラムについてのみ箇条書きで記載されている

• 掲載大項目は幼稚園と基本的に同じ• 施設基本情報、安全点検結果の記載レベルも幼稚園と同じ• いずれの項目も過去の結果の閲覧可能

掲載項目

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保育施設評価認証制度の総合的な結果として、改善項目が点数に応じた定型文で表示される。施設により点数は異なるので、評価制度として機能していると推察。

出所:全国幼稚園情報サイト http://e-childschoolinfo.moe.go.kr/kinderMt/kinderSummary.do(서울고척小学校併設幼稚園のページ)よりADL作成

質の担保 保育施設評価認証制度

保育施設評価認証制度による結果の公開例

※右記抜粋画像は日本語翻訳サイト使用後のものである

3

4

3

21

保育環境、運営管理、保育過程、相互作用と教授法、健康と栄養、安全に関する項目からなる

改善すべき項目を記載点数に連動して改善すべき項目は変わる

「該当事項がありません」という項目は、改善すべき項目は無いことを表す

改善すべき内容を定型文で記載

1

2

3

4

(複数施設を確認した結果)施設により点数/改善内容が異なることから、評価自体は機能していると推察。また、評価制度を受験していない施設は空欄となるため、保護者の施設選抜基準ともなっていると推察

各項目の概要

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幼保共通教育課程を導入したが、保育所における教育ノウハウ不足、教員資格制度/

評価制度の不一致等による教育の質の不揃いが課題となっている。

出所:韓国の保育から見た子どもの育ち-「森の体験」・「生態教育」の中で育む子どもたち- (第5回ECEC研究会講演録②2015/12/4 、有識者インタビューよりADL作成

ヌリ課程導入による課題

ヌリ課程導入による課題と対策

対策

教員資格制度の幼保統一

教育の質の評価システムの幼保統一

2014年に導入予定だったが、未達成

2015年に導入予定だったが、未達成。

ただし、保育士の資格基準は強化されている

課題

幼保間でヌリ課程の実践レベルに差がある 保育所は養育を主眼としてきたため、教育に対するノウハウが不足しがち 幼保で教員資格が異なることにより、保育士が幼稚園教諭と同水準のヌリ課程を行えない

– 幼稚園教諭は短大/大学卒が最低条件

– 保育士資格は通信教育でも取得可能なため、幼稚園教諭と比較すると理論的知識や実践的学びが不足しがち

幼保の所管官庁の一元化導入時期は明言されず

ヌリ課程の財源が地方自治体に委ねられたことによる地域格差発生への危惧

韓国は所管官庁の一元化は実現されていない ヌリ課程の財源は幼稚園を所管する機関が保育所に対しても研修等を実施していたが、各地方自治体に任されることとなった

研修や教具の支給において地域格差が生じる可能性がある

(今後検討か)国の補助金目当ての施設におけるヌリ課程の形骸化

国家認定を受けようと、ヌリ課程をノルマとして行う施設が存在 形骸化した施設と熱心な施設間の格差拡大が懸念されている

4

教育政策を進めていた政権の政権交代により、実施時期が遅れている

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国による共通カリキュラムの設置は他国より遅れており、大部分は地方自治体で定めている。ただ、国の研究機関で定めたピラミッドメソッドは世界的に注目されている。

オランダ

調査項目

背景・目的

スキーム・具体例

質の担保

成果

調査結果の概要

• 国による教育内容への関与は少なかったが、小1の留年率の高さを背景に国は幼少接続を意識した施策を実施。その後、教育水準向上を目的とした施策を進めてきた

• 就学前教育への親の参加の保障、大綱的な目標の設置、具体的教育手法の提唱等、国は教育への関与を進めてきた

• 近年国により、大綱的な目標が定められたが、共通カリキュラムの設置は他国より遅れている。共通カリキュラムの大部分は地方自治体に委ねられている

• 地方自治体が幼保両方に対し、質に関する査察を実施。査察の適切性は教育査察局が確認する• NCKOやオランダ学術研究機関は、教育省の委託/支援を受け、教育の質に関する調査を実施しており、効率的な教育水準向上に貢献している

• 物質的豊かさ、健康と安全、教育、日常生活上のリスク、住居と環境の指標から評価される子どもの幸福度に関する調査(2013年)において、オランダは世界一位

1

施策

2

4

3

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1985年 1999年1994年1993年

国による教育内容への関与は少なかったが、小1の留年率の高さを背景に国は幼少接続を意識した施策を実施。その後、教育水準向上を目的とした施策を進めてきた。

出所:「諸外国における就学前教育の無償化制度に関する調査研究」をもとにADL作成

就学前教育に関する施策の目的・背景1

オランダにおける就学前教育に関する国の施策

背景

• 小1の留年率の高さを受け、幼少接続の議論が高まった(1970年代)

• 「オランダには100の学校があれば100の教育がある」といわれ、国の教育内容への関与は少なかった(1980年代まで)

主な施策

2010年

所管

目的

• 福祉が過剰に提供されてきたことへの反動として、国家による品質管理を求める声が高まった

幼少接続• 幼少接続を重視した就学前教育の提供

(注)略語は以下のように定義• Cito:オランダ政府教育評価機構

教育水準の向上

• 就学前教育に対し、国で大枠、具体的施策を提供することにより、教育水準の向上を狙った

教育科学文化省(幼稚園)

社会雇用省(保育)

Citoの民営化

基礎学校法成立

国による大綱的な目標の設定

幼保の質の評価

就学前教育への親の発言権の確立

Citoのピラミッドメソッド提唱

保育施設への親の発言権の確立への拡張

1992年 2005年

• 幼稚園と保育園は別物と考えられていた

幼保間格差是正• 幼稚園と保育園の繋がりを考え直すことで、幼保間の格差是正を狙った

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就学前教育への親の参加の保障、大綱的な目標の設置、具体的教育手法の提唱等、国は教育への関与を進めてきたが、共通カリキュラムの設置は他国より遅れている。

就学前教育に関する施策の詳細2

オランダにおける就学前教育に関する国の施策

施策の詳細

所管

課題

主な施策

教育水準の向上幼少接続

出所:「諸外国における就学前教育の無償化制度に関する調査研究」をもとにADL作成

幼保間格差是正

教育科学文化省(幼稚園)

社会雇用省(保育)

1985年 1999年1994年1993年 2010年1992年 2005年

• 基礎学校の設立– 基礎学校は、既存の幼稚園と小学校が統合されたもので、5歳から12歳まで一貫教育を行う

– 4歳までが就学前教育と位置付けられるようになった

• 国により、大綱的な目標が定められた– 日本の学習指導要領よりも大綱的であると言われる

– 現在も大部分は地方自治体に委ねられている

• Citoにより、ピラミッドメソッドが提唱された– 21世紀型の幼児教育カリキュラムとして、全オランダ国内に提唱された

– 近年は0歳からの教材やテストの作成も行っている

• 保育所に対しても、親の発言権が法的に確立された

– 幼稚園では既に認められていた– 保育への親の声が反映されることにより、質の向上が期待される

• 地方自治体が幼保両方に対し、質に関する査察を実施

– 査察の適切性は教育査察局が確認する– 以前は幼保別で行われていた

Citoの民営化

基礎学校法成立

国による大綱的な目標の設定

幼保の質の評価

就学前教育への親の発言権の確立

Citoのピラミッドメソッド提唱

保育施設への親の発言権の確立への拡張

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オランダでは、子どもの自主性を伸ばすピラミッドメソッドと呼ばれる教育手法が盛んに行われてきた。

出所:Citoホームページ、及び各種二次情報よりADL作成

教育手法の具体例:ピラミッドメソッド

ピラミッドメソッドの概要

2

保育者の主体性

距離を置くこと

子どもの主体性

寄り添うこと

ピラミッド

子ども自主性(やる気)子どもたちが自分を取り巻く世界を理解するためには、自主的な取り組みと自主性の維持が重要であるという考え

保護者の自主性(働きかけ)子どもの自主性を育むには保育者が子どもの要求を考慮した働きかけを行うことが必要という考え

寄り添うこと子どもが安心して探究活動をするために保育者と子どもとの良好な信頼関係が重要とする考え

距離を置くこと目の前にあることだけを学ぶのではなくて、目に見えないものにも焦点を合わせる学びが、子どもの発達上大切であるという考え

理論的背景

ピラミッドメソッドは下記の4つの考え方を基本とする

開発主体と実践の特徴

開発主体Cito(オランダ政府が設立した教育評価機関)

重視するポイント

自分で選択して決断できる力を養うことを重視する

• 21世紀型の幼児教育カリキュラムとして、全オランダ国内に提唱された

• 世界からの注目度も高い

手法の概要

いくつかの小さなグループを形成した保育室の中で、子どもたちはテーマ性のある遊びが準備されたコーナーに分かれて保育を受ける

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ピラミッドメソッドでは、月ごとに一つテーマを決め、毎週テーマに沿った課題が行われる。

出所:「太田和敬,オランダの学校及び保育施設における親参加」よりADL作成

(ご参考)ピラミッドメソッドの具体例

ピラミッドメソッドの具体例:「色と形」

4週目高度ごっこ遊び

玄関ホールの柱に色分けをしてつくった三角、丸、四角などの形を吊るして、子供たちと、「この色はトマトだ、この形はミカンだ」など想像を膨らませる

玄関ディスプレイを見て子どもたちの話に出てきた野菜や果物を実際に手に触ったり、においを嗅いだりする

お部屋に設けられたプロジェクトコーナーで八百屋ごっこをする。生活の中にある色や形を「遊び」を通して学ぶ

ごっこ遊びをさらに広げて一つ上のクラスのお友達や先生と さらに高度なお買いものごっこをする

3週目ごっこ遊び

2週目実際に見せる

1週目ディスプレイ

小グループに分かれて実施

各コーナーにはテーマ性のある遊びが

用意されている

2

長期的なテーマ性のある遊びを実施

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NCKOやオランダ学術研究機関は、教育省の委託/支援を受け、教育の質に関する調査を実施している。効率的な教育水準向上に貢献している。

出所:乳幼児期の保育・教育(ECEC)における政府機関と研究機関の協働(発達保育実践政策学センター)よりADL作成

教育の質の評価

教育の質の効果に関する研究

3

NCKO

(the Dutch Consortium

for Child Care)

オランダ学術研究機関

異なる種類のECEC施設への通園がもたらす短期的・長期的影響を測定(Pre-COOLと呼ばれる)

デイケア・センターやプレイ・グループのプロセスや構造の質を調査

• 教育文化科学省が財政支援を受けた• 2歳から5歳までの5000名の幼児を対象とした• COOL5-18という追跡調査を実施中

• 政府の依頼により実施• プロセスの質を測定するために、ITERS-RやECERS-Rの要素およびスケールを、オランダの文脈に合うかたちで使用

• 構造の質については、質問紙調査を行い、観察によって補完• 数年ごとに繰り返し実施しており、調査の集計結果を公表している

左記の詳細調査概要研究機関

継続的に実施されており、教育水準の効率的な向上に寄与しているといえる

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物質的豊かさ、健康と安全、教育、日常生活上のリスク、住居と環境の指標から評価される子どもの幸福度に関する調査(2013年)において、オランダは世界一位。

出所:「国立社会保障・人口問題研究所, 先進国における子供の幸福度 日本との比較 特別編集版 2013年12月」よりADL作成

成果

子どもの幸福度に関する調査

国名平均順位

物質的豊かさ 健康と安全 教育日常生活上の

リスク住居と環境

オランダ 3.25 2 5 2 3 4

フィンランド 5.0 1 3 5 10 6

アイスランド 5.0 4 1 10 5 5

ノルウェー 5.4 3 8 7 6 3

スウェーデン 6.0 5 2 12 2 9

日本 9.8 21 16 1 1 10

ドイツ 10.4 10 13 4 11 14

スイス 11.0 11 12 17 13 2

ルクセンブルク 11.4 6 4 24 16 7

ベルギー 11.6 15 11 3 17 12

フランス 12.6 9 10 15 12 17

英国 17.6 12 17 25 23 11

米国 28.0 30 26 28 29 27

順位

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

13

17

29

※上記値は全て順位を表す※韓国、ニュージーランドは多くの指標に関してデータが不足していたため、総合順位に含まれなかった

4

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高齢者雇用の在り方

就学前教育の在り方

マクロ経済政策の在り方

B

C

D

プロジェクトの構成A

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Contents

1 マクロ経済政策の在り方

1-1:研究会テーマ、講師

1-1-1:講師、講演内容

1-1-2:各回アジェンダ

1-2:(ご参考)各回の参考資料

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下記4名の講師を招き、下記の講演内容でマクロ経済研究会を実施。

出所:ADL作成

マクロ経済研究会 各回講師及びテーマ

講演者名(敬称略)

所属研究分野

(各種HPから抜粋)開催日程 講演テーマ

第一回 中園善行横浜市立大学国際総合科学部准教授

マクロ経済学、ファイナンス、応用計量経済学

10/30(月)17:00-19:00

マクロ経済全般

第二回チャールズ・ユウジ・ホリオカ

公益財団法人アジア成長研究所副所長・主席研究員

世代間移転、経済統計、経済政策、金融・ファイナンス、財政・公共経済

11/24(金)9:30-11:30

世代間移転と政策効果に関する示唆

第三回 滝澤美帆東洋大学経済学部教授

経済学, 理論経済学, マクロ経済学経済学, 応用経済学経済学, 経済政策

1/30(火)17:00-19:00

産業別労働生産性の国際比較

第四回 吉野貴晶

ニッセイアセットマネジメント投資工学開発室投資工学開発センター長

金融工学, クオンツ3/1(木)

17:00~19:00今後の株式相場や

投資指標の使い方等

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講演内容 第一回

• 本研究会では、日本経済の課題として「低成長」、「低いインフレ率(鈍い賃金の伸び)」、「中福祉・低負担」を挙げ、それぞれに対する現状と背景についてご紹介頂いた。

• 特に、長期停滞説、世界的貯蓄過剰説、安全資産の枯渇説等のマクロ経済の基礎となる既存理論にも触れながらご紹介頂いた。

• また、上記の基本的な認識のもとで、物価上昇率2%という目標の妥当性等、財政政策・金融政策が経済に与える影響と持続可能性について諸外国と比較しながら議論がなされた。

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講演内容 第二回

• 本研究会では、遺産を残す場合の動機とそこから得られる政策効果への示唆についてご講演頂いた。

• 各国、遺産動機と遺産の分配法は国によって大きく異なり、人々の遺産行動について見ることにより、実社会における家計行動の理論モデルの分類が可能。

• どの理論モデルに当てはまるか(=人々がどのような動機の元、遺産等の世代間移転を残すかどうか)は、資産格差の拡大・継承の防止策としての有効性、財政政策の有効性、高齢者を対象とした所得再分配政策の有効性等に大きく関係することをご紹介頂いた。

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第三回

• 本研究会では、生産性と無形資産に関してご講演頂いた。

• 生産性の議論に関しては、特に日本、アメリカ、ドイツ、フランスの産業毎の労働生産性水準比較についてご紹介頂いた。

• また、製造業、輸送用機械、サービス業、対事業所サービス業に対し、日本と米国の短期変動の比較結果もとに、日本の産業における相対的な労働生産性水準の低下が確認されることをご紹介頂いた。

• 無形資産については、IT投資の大きさの割にITを使いこなせている人が多くは無いこと、働き方改

革以降の一部業種での学び直しの動きが見られること等、企業の人材への投資に関する現状、課題、投資促進要因について議論がなされた。

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講演内容 第四回

• 本研究会では、株式投資指標とその有効性、景気と株価の相関性、AIを用いた投資手法、女性活躍企業と株価の相関等、幅広くご講演頂いた。

• 株式投資指標とその有効性については、ROEが注目されている理由とその背景について、伊藤レポートに対する投資家の反応も交えご紹介頂いた。

• 景気と株価の相関については、男性用インナーの売上上昇と株価上昇には正の相関が見られることを例にご説明頂いた。

• 近年話題となっているAIを用いた投資手法について、テキストマイニングを用いた手法を具体例としてご説明頂いた。

• 女性活躍企業と株価の相関については、女性活躍企業の方が株価が高いことについて実際の投資家の反応も交えてご紹介頂いた。

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Contents

1 マクロ経済政策の在り方

1-1:研究会テーマ、講師

1-1-1:講師、講演内容

1-1-2:各回アジェンダ

1-2:(ご参考)各回の参考資料

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第一回マクロ経済研究会のアジェンダは下記の通り。

出所:マクロ経済研究会の内容を元にADL作成

第一回アジェンダ

• 参加者自己紹介• ご講演

– 低成長の背景– 低インフレ率の背景– 財政政策、金融政策に関する近年の議論

• 参加者からの質疑応答、意見交換

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第二回マクロ経済研究会のアジェンダは下記の通り。

出所:マクロ経済研究会の内容を元にADL作成

第二回アジェンダ

• 参加者自己紹介• ご講演

– 世代間移転の動機による分類– 研究手法と検証結果– 資産格差に関するインプリケーション

• 参加者からの質疑応答、意見交換

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第三回マクロ経済研究会のアジェンダは下記の通り。

出所:マクロ経済研究会の内容を元にADL作成

第三回アジェンダ

• 参加者自己紹介• ご講演

– 研究の背景– 生産性の概念– 生産性に関する国際比較のデータの考察とその計測手法– 政策的合意

• 参加者からの質疑応答、意見交換

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第四回マクロ経済研究会のアジェンダは下記の通り。

出所:マクロ経済研究会の内容を元にADL作成

第四回アジェンダ

• 参加者自己紹介• ご講演

– 今後の株式相場– 物色の方向– 投資指標の使い方– AI(人工知能)運用– 女性活躍企業と株価の関係

• 参加者からの質疑応答、意見交換

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Contents

1 マクロ経済政策の在り方

1-1:研究会テーマ、講師

1-2:(ご参考)各回の参考資料

1-2-1:第一回

1-2-1-1:調査結果

1-2-1-2:参考データ

1-2-2:第二回

1-2-3:第三回

1-2-4:第四回

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2000年から2006年にかけて実施された金融政策の効果を評価。特にゼロバウンド金利下での非伝統的な金融政策やバブル発生を未然に防ぐために流れに立ち向かう政策を実施することが困難であることを示唆している。

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/1468-0106.12158/abstract

講師執筆論文アブストラクト

Stock Market Responses Under Quantitative Easing: State Dependence and Transparency in Monetary Policy

Pacific Economic Review

2016/7/26

Yoshiyuki Nakazono, Satishi Ikeda

【要旨】This paper evaluates the effects of unconventional monetary policies adopted by the Bank of Japan from the year

2001 to 2006. A new measure is proposed to identify a nontraditional monetary policy shock from policy

packages under the zero lower bound of short-term nominal interest rates during the quantitative easing period,

using data on intraday 3-month Euroyen futures rates. We find that stock markets do not react to a policy surprise

in an expected manner and negatively respond to a monetary easing surprise. Moreover, we find an asymmetric

response during a boom and a recession and a nonlinear reaction because of increasing uncertainty concerning

future inflation dynamics and the enhancement of monetary policy transparency. Our result suggests that it is

difficult to implement unconventional monetary policy to manage agents’ expectations and a ‘lean

against the wind’ policy to prevent asset bubbles, particularly at the zero bound.

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拡張金融政策により、金融政策スタンスに対する市場の認識の変化を評価。アベノミクス前後で市場の認識が大きくは変化しなかったことを示しており、今後日銀が効果的な政策を投じることの困難を示唆している。

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/14e019.pdf

講師執筆論文アブストラクト

"Policy Regime Change against Chronic Deflation? Policy Option under a Long-term Liquidity Trap," 2015, (with Ippei Fujiwara and Kozo

Ueda), Journal of the Japanese and International Economies, 37, pp.59-81.

【要旨】わが国経済は、約20年にわたり慢性的なデフレに直面してきた。こうした中、2012年末以降のいわゆるアベノミクスと呼ばれる景気刺激策は、これまでのところ、主に金融市場を中心に日本経済に大きな影響を与えてきたように窺われる。

本論文では、そのうちの第一の矢と呼ばれる拡張的金融政策に注目し、第一の矢が、期待の管理を通じて、金融政策スタンスに対する市場の認識をどのように変化させてきたかの評価を試みる。サージェント(1982)などの標準的な経済理論に従うと、慢性的なデフレを終焉させるには、期待の抜本的な変化をもたらす、大胆な政策レジーム・チェンジが必要となる。また、名目金利が実質ゼロに張り付いた状況では、エガートソン・ウッドフォード(2003)の理

論などによれば、単なる通貨供給量の増加ではなく、将来の金融緩和についてコミットするフォワード・ガイダンスが有効であることが知られている。従って、第一の矢の成否は、それがフォワード・ガイダンスの強化であると、市場の認識を抜本的に変化させたのかにかかっている。本稿では、市場参加者に将来の金利とインフレ率についての予想をサーベイしたQSSの個票データを用いて、アベノミクス前後における、市場の金融政策についての認識の変化を分析する。分析によると、第1に、市場のインフレ期待は、アベノミクス後もほとんど変化していないことがわかった。今後10年間の平均インフレ率について、回答者の予想の分布変化を示した図1によると、その中位値は1%からほとんど上昇していない。第2に、2000年代半ばより、インフレに対する中央銀行の反応が小さくなっていたと市場に認識されていることがわかった。図2は、期間を分けて、今後2

年のインフレ期待を横軸に、2年物金利の3カ月後予想を縦軸に、市場の回答を散布図として図示したものであり、インフレに対する中央銀行の反応の強

さはその傾きとして表される。図中で傾きが低下してきていることは、アベノミクス以前から、いわゆるフォワード・ガイダンスと呼ばれる、将来への緩和的金融政策へのコミットメントが、かなり強められていたことを示唆している。しかし、一方で、これまでに強められてきたフォワード・ガイダンスによって、長期金利さえも非常に低いレベルに到達し、傾きはゼロに近づいている。すなわち、長期金利も、流動性の罠に直面する可能性があるような「長期的流動性の罠」とも呼ぶことのできる状況に近づきつつある。結果として、金融政策スタンスに対する市場の認識は、アベノミクス前後でも、大きく変化することはなかった。

推定された政策レジーム変化の度合いは、エガートソン(2008)がインフレ期待を大きく変更するのに必要なものと定義した「サージェントの政策レジーム変化基準」に照らしてみると、これをクリアできるほど、劇的なものではなかったと判断される。この結果は、「長期的流動性の罠」の下では、理論的にみて、市場の期待を大きく変化させるには、どのような政策が効果的なものとして中央銀行に残されているのか、といった難題の存在を示唆している。

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経常収支をめぐる理論的展開をまとめたサーベイ論文。2000年以降顕著にみられるグローバルインバランスを生じさせる要因に関する研究を紹介している。

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/pdp/11p017.pdf

講師執筆論文アブストラクト

経常収支をめぐる理論的展開とマクロ計量モデルにおける海外部門の概要*

RIETI Policy Discussion Paper Series 11-P-017 2011 年12 月田中将吾(経済産業研究所)及川景太(経済産業研究所)奥田岳慶(経済産業省)中園善行(経済産業研究所)

【要旨】本稿は経常収支不均衡をめぐる日米間、米中間の外交交渉を整理し、経常収支をめぐる理論的展開をまとめたサーベイである。1970 年以降、日本と米国の二国間の問題として顕在化した経常収支不均衡をめぐる経済摩擦は、2000 年以降、産油国を含む新興国と米国との経常収支不均衡をめぐる経済摩擦へと変化してきた。本稿では、経常収支不均衡をめぐる日米間、米中間の経済摩擦が同じような軌跡をたどったことを振り返ったうえで、日米間の外交交渉の経験とその結果を踏まえると、国家間の外交交渉だけでは経常収支不均衡は本質的に是正されない可能性を指摘する。その上で、経常収支をめぐる理論的展開を踏まえながら、足もとで拡大を続けるグローバル・インバランスを生じさせている構造要因について、近年の研究を紹介する。また国内外の政策当局者がマクロ計量モデルによって自国の経済分析を行う際、海外部門をどのように定式化し、マクロ計量モデルに組み込んでいるのかについても紹介する。

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新たに構築したマクロ計量モデルMEAD-RIETIモデルについて解説している。簡潔な推計式、採用する変数の絞り込みにより、モデルの複雑化を回避している。

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/10j045.pdf

講師執筆論文アブストラクト

国内外におけるマクロ計量モデルとMEAD-RIETI モデルの試み

RIETI Discussion Paper Series 10-J-045 2010 年7 月福山光博、及川景太、吉原正淑、中園善行

【要旨】米国のサブプライム住宅ローン問題に端を発し、08 年9 月の米大手投資銀行の破綻から深刻化した世界的な金融危機は日本経済にも大きな影響を与えた。世界的に景気が後退し、金融資本市場が大きく変動する中で、我が国は政策対応を行ってきた。海外要因をはじめとした各種のリスクや政策効果の分析を行いつつ、将来の経済の姿を想定しながら政策運営を行っていく必要性は、これまで以上に高まっていると言えるだろう。こうした必要性の対応に当たってはマクロ計量モデルの活用が一つの手法として考えられる。各国の政府機関・中央銀行や国際機関で活用されるマクロ計量モデルにおいては、いわゆる「ルーカス批判」を受け、近年では経済理論との整合性が重視されたモデルが発展をみせている。本稿においては、最近の内外における計量モデル構築の潮流や主要なマクロモデルの体系、それらの理論的背景について紹介しつつ、筆者らが新たに構築した「MEAD-RIETI モデル」(MRM)について解説する。MRM は、四半期経済データをベースとして短期の各種リスク、政策効果の定量的評価等を目的とした計量モデルであるが、経済理論と整合的な均衡を配慮しながらデータとのフィットを重視したハイブリッド型モデルであり、SNA 統計をはじめとする主要な経済変数を包括的に扱う一方、簡潔な推計式、採用する変数の絞り込みにより、モデルの複雑化を回避した。

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各経済主体のインフレ予想のばらつきと中央銀行の目標インフレ率と民間主体の期待インフレ率の乖離に着目して分析。量的・質的緩和政策導入は日本経済はデフレから脱却でき程の影響は与えなかったことを指摘した。

http://www.boj.or.jp/en/research/wps_rev/wps_2016/data/wp16e01.pdf

講師執筆論文アブストラクト

Inflation expectations and monetary policy under disagreements

Bank of Japan Working Paper Series, 2016 年1月14日中園善行

【要旨】本稿は、日本のインフレ予想に関するサーベイデータを用いて、インフレ予想が経済主体間でばらつく現象とその背景について分析した上で、インフレ予想のばらつきが金融政策に与える含意を考察し、以下の三点を明らかにした。第一に、インフレ予想の横断面(クロス・セクション)のばらつきは、情報の硬直性によって説明可能であった。第二に、長期のインフレ予想は中央銀行と民間経済主体の間で不一致が生じていた。2013年1月に2%の物価安定の目標が設定されて以降、家計による短中期のインフレ予想は2%に向けて徐々に近づく一方、長期のインフレ予想は2%に収れんしておらず、むしろ予想のばらつきの程度は拡大していた。第三に、経済主体の金融政策に対する見方は、2013年4月に導入された質的・量的金融緩和の前後で劇的には変化していなかった。この結果は、政策レジームの変化の度合いが、日本経済を慢性的なデフレーションから脱却させるほどには大きくなかった可能性を示唆している。

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Contents

1 マクロ経済政策の在り方

1-1:研究会テーマ、講師

1-2:(ご参考)各回の参考資料

1-2-1:第一回

1-2-1-1:調査結果

1-2-1-2:参考データ

1-2-2:第二回

1-2-3:第三回

1-2-4:第四回

Page 209: 平成29年度産業経済研究委託事業 少子高齢社会における我が国 ... · 2018. 5. 11. · 1月 2月 task1:マクロ経済政策の在り方 • task1-1:「経済成長/イノベーション」「財政政策」

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政権が目指す目標としてインフレ目標値が挙げられる。日本のインフレ目標値は2%である。

出所:内閣府ホームページ http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je13/h07_fz0102.html

諸外国のインフレ目標

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生活意識に関するアンケート調査、消費動向調査、短観、ESPフォーキャスト調査等の各種サーベイにおいて、経済主体間でインフレ予想がばらつくことが確認されている。

出所:緩やかなインフレ経済への転換に向けて―企業と家計のインフレ予想の現状―(2015年3月11日)

(ご参考)インフレ予想に関する主なサーベイ

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日本、諸外国におけるインフレ率(消費者物価指数年平均値)は下記のとおり。

出所:International Monetary Fund, World Economic Outlook Database, October 2016よりADL作成

Inflation, average consumer prices (Percent change)

-2

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

22

24

26

1988

1991

1990

1989

1999

2013

2017

2010

2003

1998

1995

2005

2008

2012

2019

1996

2014

2007

1994

1981

1980

1997

2021

2018

2020

2004

1993

2000

1992

2002

2001

2016

2009

1985

2006

1983

1987

1986

1984

2011

2015

1982変化率%

Canada

Switzerland

Italy

Germany

China

France

United Kingdom

United States

Japan

※2016年以降は予想値

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212Copyright © Arthur D. Little 2018 . All rights reserved.

諸外国の失業率は下記のとおり。

出所:International Monetary Fund, World Economic Outlook Database, October 2016よりADL作成

Unemployment rate

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

2000

1994

1992

2003

1996

1993

1997

1991

1995

1999

2004

1998

2002

2001

1980

2015

2012

2016

1985

1987

2017

2021

2019

1984

2014

1988

1986

1982

2010

2018

2009

2005

2013

2007

1981

2008

2006

1990

1983

1989

2011

2020

Canada

対労働人口比%

Germany

United Kingdom

United States

Japan

France

Italy

China

Switzerland

※2016年以降は予想値

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諸外国の経常収支は下記のとおり。

出所:International Monetary Fund, World Economic Outlook Database, October 2016よりADL作成

Current account balance

2004

2002

2014

2003

250

-50

400

-150

300

-300

150

-450

-200

-250

-350

50

100

350

450

-400

200

2010

2011

2009

1982

1981

1980

1985

1984

1983

1987

1986

1988

-100 2006

2005

2008

2007

2013

2012

2021

2016

2015

2020

2022

2019

0

2017

2018

2001

1998

1996

1994

1992

1993

1995

2000

1991

1999

1989

1990

1997

-650

-800

-750

-550

-850

-500

-600

-700

Billion US$

Italy

United States

Swaziland

United Kingdom

Japan

France

Germany

China

Canada

※2016年以降は予想値

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諸外国の経常収支は下記のとおり。

出所:International Monetary Fund, World Economic Outlook Database, October 2016よりADL作成

Current account balance

-12

-9

-6

-3

0

3

6

9

12

2022

2021

2006

2000

1995

2003

1999

2004

2001

1997

1996

2007

2005

2002

1994

1998

2013

2017

2012

2010

2009

2020

2008

2011

2019

2018

2015

2016

2014

1992

1989

1985

1990

1991

1987

1986

1984

1981

1982

1988

1983

1993

1980

対GDP比%

United Kingdom

Swaziland

United States

Canada

China

Italy

France

Germany

Japan

※2016年以降は予想値

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政府支出・個人消費・民間投資等のバランスを諸外国と比較し、特異点があるのかを議論する際に使用。

世界各国の国内総支出

世界各国の国内総支出(1/4)

-18

18

20

-21

22

0

61

18

57

1

2014

23

2015

-19

16

2013

21

61

20 21

-1

15

61

21

2011

20

0

59

0 -1-16-14

21

2010

20

-17

21

15

61

15

22

2012

480,128 486,939481,773 473,777 530,545470,623

日本 イギリス アメリカ

※通貨単位:日本 10億円, ドイツ 10億ポンド, アメリカ 10億ドルで算出※政府最終輸出、民間最終消費支出、在庫品の増減及び評価減、総固定資本形成、財貨・サービスの純輸出(=輸出-輸入)の合計額(=国内総生産)を100%として算出

在庫増減及び評価減

政府最終消費支出

財貨サービスの輸入

財貨サービスの輸出

総固定資本形成

民間消費支出

-33% -34% -34% -32% -30% -29%

29% 33% 32% 30% 28% 27%

15% 14% 14% 16% 17% 17%

65% 64% 66% 65% 65% 65%

23% 22% 22% 20% 20% 19%

0%1%0%

2010 2011

1,5161,455

2012

1,565

2013

1%

1,8711,713

1%

1,816

1%

2014 2015

-16% -18% -17% -17% -17% -15%

13% 14% 14% 14% 14% 13%

15% 15% 19% 19% 20% 20%

71% 72% 69% 69% 68% 68%

18% 17% 15% 15% 14%

0%0%

16%

20112010

1%0%

2014

0% 1%

2013 20152012

17,348 18,03716,76816,24514,99114,447

出所:内閣府経済社会総合研究所ホームページ「国民経済計算年次推計(平成22~27年度)」、UN, National Accounts Main Aggregates DatabaseよりADL作成

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216Copyright © Arthur D. Little 2018 . All rights reserved.

政府支出・個人消費・民間投資等のバランスを諸外国と比較し、特異点があるのかを議論する際に使用。

世界各国の国内総支出

世界各国の国内総支出(2/4)

26% 27% 27% 29% 30%

19% 20% 20%

28%

22% 22%

58% 58% 55% 55% 55%

25% 25% 24% 24% 24%

22%

0%

58%

25%

2015

0%

-30%

2014

1%

-30%

201320112010

-30%

0%

1%

-30%

0%

-28% -31%

2012

2,114 2,1812,132

1,932

1,997 2,032

※通貨単位: フランス 10億ユーロ, ドイツ 10億ユーロ, イタリア 10億ユーロ※政府最終輸出、民間最終消費支出、在庫品の増減及び評価減、総固定資本形成、財貨・サービスの純輸出(=輸出-輸入)の合計額(=国内総生産)を100%として算出

財貨サービスの輸出

総固定資本形成

民間消費支出

政府最終消費支出

財貨サービスの輸入在庫増減及び評価減

-45%-41%

50%

-37% -40% -39% -39%

47%

18%

34%46% 46% 47%

18%

19%

20% 20% 20%

58%57%

63%56% 55% 54%

20% 19%21%

19% 19% 19%

0%

2014 2015

-1%

2013

-1%-1%0%

20112010 2012

0%

2,666 3,0332,476 2,8092,5932,916

-29% -30% -29% -26% -27%

27% 29% 30% 29%

-26%

30%

20% 20% 18% 18%

29%

17%

60% 61% 61% 61% 61% 61%

21% 21% 19% 19% 19%

17%

2014

1%

20112010

20%

0% 0%

2013

0%

0%

2012 2015

0%

1,6421,556 1,580 1,567 1,619 1,614

フランス ドイツ イタリア

出所:内閣府経済社会総合研究所ホームページ「国民経済計算年次推計(平成22~27年度)」、UN, National Accounts Main Aggregates DatabaseよりADL作成

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217Copyright © Arthur D. Little 2018 . All rights reserved.

政府支出・個人消費・民間投資等のバランスを諸外国と比較し、特異点があるのかを議論する際に使用。

世界各国の国内総支出

世界各国の国内総支出(3/4)

26% 29% 27% 25% 25% 24%

45% 46% 46% 46% 46% 44%

35%35% 36% 36% 36% 38%

13%13% 14% 14% 14% 14%

2010

-22%

3%2% 2%

2012 2015

2%

2013

2%

-23% -21%

2014

-23%

2%

2011

-26% -24%

51,894 58,66734,051 63,59147,156

58,658,80267

※通貨単位:中国 10億元, 韓国 1兆ウォン, オーストラリア 10億AUドル※政府最終輸出、民間最終消費支出、在庫品の増減及び評価減、総固定資本形成、財貨・サービスの純輸出(=輸出-輸入)の合計額(=国内総生産)を100%として算出

財貨サービスの輸出

政府最終消費支出

在庫増減及び評価減

総固定資本形成

財貨サービスの輸入

民間消費支出

53% 57%

-49%

51%

-39%

29%28% 27%

54%

29%

46%

53%54%

50%49%

15%

-50% -45%-54%-55%

57%

29%30%

51%54%

15%15%

15%16% 16%

2014

1,4851,559

2015

-1%

2012

1,272

0%

-1%

20132011

1,237

1%

2010

1,172

0%1%

1,428

-20% -20% -22% -21%

21% 22% 20%

-21% -21%

19%

27% 27% 29%

20% 21%

26%

53% 54% 54% 56% 56% 58%

18% 17% 18% 19%

27% 27%

18%

0% 0%

0%

18%

2011 201420132010 2012

1%

2015

0%

0%

1,5761,491 1,6551,6321,386 1,518

中国 韓国 オーストラリア

出所:内閣府経済社会総合研究所ホームページ「国民経済計算年次推計(平成22~27年度)」、UN, National Accounts Main Aggregates DatabaseよりADL作成

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政府支出・個人消費・民間投資等のバランスを諸外国と比較し、特異点があるのかを議論する際に使用。

世界各国の国内総支出

世界各国の国内総支出(4/4)

出所:内閣府経済社会総合研究所ホームページ「国民経済計算年次推計(平成22~27年度)」、UN, National Accounts Main Aggregates DatabaseよりADL作成

28% 23% 24% 24% 27%

24% 23% 25% 24% 26% 26%

38% 38% 40% 39% 38% 37%

10% 10% 9% 10% 10% 10%

30%

2012

390

3%

20152014

3%1%

-2%

402

2%

201320112010

1%

355 370316 342

※通貨単位: 10億シンガポールドルで算出※政府最終輸出、民間最終消費支出、在庫品の増減及び評価減、総固定資本形成、財貨・サービスの純輸出(=輸出-輸入)の合計額(=国内総生産)を100%として算出※国内総生産に統計上の不突合を含むため,内訳の合計が100にならない場合がある※シンガポールは輸出、輸入の各概数が不明だったため、純輸出のみ表示

民間消費支出 財貨・サービスの純輸出

総固定資本形成政府最終消費支出

在庫増減及び評価減

シンガポール

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諸外国の一人当たり国内総生産(名目)は下記のとおり。

出所:International Monetary Fund, World Economic Outlook Database, October 2016よりADL作成

Gross domestic product per capita, current prices

2006

2008

2002

2012

2000

2018

1998

1996

1994

2014

2004

1992

1990

2022

2020

2016

2010

1980

1988

1986

1984

1982

2024

2026

16 000

12 000

8 000

4 000

0

24 000

2028

20 000

France

Italy

Canada

United Kingdom

United States

Japan

China

Germany

Switzerland

Billion US$

6 000

20

00

19

98

19

94

19

96

2 000

19

92

19

90

19

88

19

86

19

80

19

84

19

82

20

04

20

06

4 000

1 000

0

20

20

20

18

20

16

20

02

3 000

20

22

5 000

20

14

20

12

20

10

20

08

Billion US$

United Kingdom

France

Switzerland

Italy

Series

Germany

Japan

Canada

※2016年以降は予想値

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諸外国の国内総生産(実質)は下記のとおり。

出所:International Monetary Fund, World Economic Outlook Database, October 2016よりADL作成

Gross domestic product, constant prices

-6

-3

0

3

6

9

12

15

18

1991

2004

1999

2012

2007

2015

2013

2011

2016

2021

2020

2019

2018

2017

2009

2008

2014

2006

2005

2022

2003

2002

2001

2000

2010

1987

1985

1992

1988

1984

1993

1990

1983

1982

1997

1996

1995

1986

1981

1989

1998

1994

1980

変化率%

Germany

China

Italy

Swaziland

Japan

Canada

France

United Kingdom

United States

※2016年以降は予想値

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諸外国の国内総生産(名目)は下記のとおり。

出所:International Monetary Fund, World Economic Outlook Database, October 2016よりADL作成

Gross domestic product, current prices

8 000

9 000

6 000

13 000

11 000

12 000

10 000

-1 000

1 000

20 000

2 000

4 000

5 000

3 000

23 000

22 000

21 000

24 000

15 000

14 000

16 000

7 000

2005

2007

2002

2019

2018

2006

0

2001

2016

2000

1999

2012

2022

2021

2014

2013

2010

2015

2009

2008

2017

2004

2003

2020

2011

1995

1992

1990

1988

1991

1987

1985

1980

17 000

1989

1984

1994

1986

1982

1993

1998

1996

1997

1981

1983

19 000

18 000

Billion US$

United States

United Kingdom

Swaziland

Japan

Italy

Germany

France

Canada

China

※2016年以降は予想値

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諸外国の政府総債務残高は下記のとおり。

出所:International Monetary Fund, World Economic Outlook Database, October 2016よりADL作成

General government gross debt

-10

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

160

170

180

190

200

210

220

230

240

250

2014

2017

2022

2020

2016

2015

2019

2021

2018

1984

1987

1983

1982

1988

1981

1980

1986

1985

1994

1993

1991

1997

1995

1992

1989

1999

1990

2000

1996

1998

2001

2010

2009

2007

2006

2005

2004

2003

2002

2012

2013

2011

2008

対GDP比%

United States

Swaziland

United Kingdom

Japan

Italy

Germany

France

China

Canada

※2016年以降は予想値

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諸外国のGDPデフレーターは下記のとおり。GDPデフレーターは名目(nominal)GDP

と実質(real)GDPの比を計測することで定義する。

出所:International Monetary Fund, World Economic Outlook Database, October 2016よりADL作成

Gross domestic product, deflator

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

2022

1994

2009

1992

2019

2007

2003

1995

2006

1997

2004

2002

2008

2012

2011

2001

1993

1996

2005

1990

2018

1985

1991

2017

2013

2015

2000

2014

1998

2020

2016

2021

2010

1999

1988

1986

1984

1980

1987

1981

1983

1982

1989

France

Switzerland

China

Canada

United Kingdom

Japan

Italy

Germany

United States

※2016年以降は予想値

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諸外国における消費者物価指数(年平均値)は下記のとおり。

出所:International Monetary Fund, World Economic Outlook Database, October 2016よりADL作成

Inflation, average consumer prices (Index)

0

50

100

150

200

250

300

2018

2012

2020

2016

2014

1980

1988

1982

1984

1990

1994

2006

1996

2010

2000

1992

2002

2008

1986

2022

2004

1998

Canada

France

China

Switzerland

United Kingdom

Italy

Japan

Germany

United States

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

1986

1988

1984

2004

2006

2012

2016

20

00

19

90

1992

2008

1996

2014

2018

19

80

20

10

2022

1982

1994

1998

2002

20

20

Germany

France

United Kingdom

Switzerland

Italy

Japan

Canada

China

※2016年以降は予想値

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Contents

1 マクロ経済政策の在り方

1-1:研究会テーマ、講師

1-2:(ご参考)各回の参考資料

1-2-1:第一回

1-2-2:第二回

1-2-2-1:調査結果

1-2-2-2:参考データ

1-2-3:第三回

1-2-4:第四回

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講師の執筆論文のうち、特に本研究会に関係する内容のものは下記のとおり。

執筆論文、書籍等出版物、学会・セミナー発表等

http://web.econ.keio.ac.jp/staff/masaya/dl/13thmacroc

onf/horioka-slide.pdf日本の経済政策を問い直す:政策レジームの観点から2010年11月 (過去の講演会で使用した模様)

http://shiten.agi.or.jp/shiten/201706/shiten201706.pdf日本人は特殊か?-家計貯蓄行動の例ー2017年5月

http://www.agi.or.jp/workingpapers/WP2014-14.pdfなぜ人々は遺産を残すのか?愛情からなのか、利己心からなのか?遺産動機の国際比較2014年11月

http://www.agi.or.jp/wp-

content/uploads/2014/11/magi14-20141029.pdf高齢化と貯蓄率2014年10月 (過去の講演会で使用した模様)

http://www.esri.go.jp/jp/others/kanko_sbubble/analysis

_03_08.pdf高齢化などの構造要因から見た日本の国際収支問題次期不明点(2010年以降)

http://www.nira.or.jp/pdf/0906report.pdf「市場か、福祉か」を問い直す―日本経済の展望は「リスクの社会化」で開く―

2010年3月(p.3-24)

A

B

C

D

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日本の家計貯蓄率の変化が人口学的要因・経済社会的要因により説明できることを示唆した論文。

論文の概要

-2

-1

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

16

17

2015

2010

2000

1990

2005

1995

家計貯蓄率%

Japan

日本家計貯蓄率は、昔は高かったが、近年減少している

高い水準で推移するはず・・・安定的に推移するはず・・・

国民性・社会規範に基づいて家計の貯蓄行動が決まるとすると、、、

人口学的要因・経済社会的要因により、家計貯蓄率の変化を説明した

A

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公的年金制度や貯蓄優遇措置等の政府の政策、人口の年齢構成、経済成長率等の例を用いて日本の家計貯蓄率の変化を人口学的、社会的要因により説明した。

政策との関連

人口の年齢構成

公的年金制度

消費者金融制度

• 生産年齢人口は貯蓄をし,老年人口は貯蓄を取り崩しているはずであり,生産年齢人口に対し老年人口が多ければ多い程家計部門全体の貯蓄率は低くなる

• 1980年代までは年齢構成が非常に若かった

• 日本の公的年金制度は1973 年までは未発達であった• 「福祉元年」の1973 年から公的年金制度は大幅に充実され,老後の生活に備えて自ら貯蓄をする必要性が薄れた

• 1970 年代までは,住宅ローンをはじめとする個人向け融資制度が未発達であり,人々は家や自動車,それ以外の耐久消費材を購入する前に予め貯蓄をする必要があった

• 1970 年代以降,住宅ローンやそれ以外の個人向け融資が急速に普及

左記の詳細人口学的・

経済社会的要因

政府の貯蓄推進運動

税制面の貯蓄優遇措置

経済成長率

• 戦後から1986年まで「子ども銀行」等の貯陸推進活動を実施• 日米貿易摩擦を受け,日本を貯蓄優遇・消費冷遇の社会から消費優遇・貯蓄冷遇の社会に変換しなければならないと主張する「前川レポート」が1986 年に発表されて以降,日本政府は貯蓄推進運動を大幅に縮小

• マル優制度により、ある限度額までは,銀行預金や郵便貯金,国債に対する利子所得を非課税にできた• 1987 年にマル優制度の対象が高齢者や障害者などに限定され,2003 年に高齢者がその対象から外された

• 日本では,1950 年代から1970 年代初頭まで2 桁台の高度経済成長率が続き、その間,家計所得水準もそれにともなって急上昇

• 所得が急上昇する時には消費の上昇が所得の上昇について行けず,一時的に貯蓄が増えると考えられる

A

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各国に対し、家計行動に関するどの理論モデルが成り立つのかを分析した論文。日本人、中国人の遺産行動は、アメリカ人、インド人より利己的であると述べている。

論文の概要

利己主義モデル

利他主義モデル

王朝モデル

このモデルは人々が利己的であり,自分の消費からしか効用を得ないと仮定する

このモデルは人々が子に対して世代間の利他主義(愛情)を抱いており,自分の消費のみならず,子の消費からも効用を得ると仮定する

このモデルは人々が家または家業の存続を望んでおり,家または家業が滅びる確率が最小になるよう行動すると仮定する

下記のいずれかが当てはまる•遺産を全く残さない•死期の不確実性からくる意図せざる遺産のみを残す•子が老後において世話または経済的援助をしてくれた場合にのみ遺産を残す(見返りを得るために遺産を残す)

子が老後において世話も経済的援助もしてくれず,家も家業も引き継いでくれなかったとしても,子に遺産を残す

子が家または家業を引き継いでくれた場合にのみ遺産を残す

遺産動機左記の特徴家計行動に関する理論モデル

日本

中国

アメリカ

インド

中国

該当国

B

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人々が利己的であれば、景気刺激策としての減税政策や公的年金制度の導入等は有効で、相続税による資産格差の引継ぎを阻止する必要性は大きくないといえる。

政策との関係性

減税の効果

賦課方式の公的年金の効果

相続税の効果

景気刺激策として無効減税を全額貯蓄し,遺産として残し,消費を一切増やさないため

老後の生活は豊かにならず、家計貯蓄も減少しない

次世代(子供)が負担しなければならない保険料のことを気にするため,公的年金の給付を全額貯蓄し,遺産として残すため

世代間移転が多く、資産格差が代々引き継がれる可能性があり、阻止する必要がある遺産動機が強いはずであり,人々は何の見返りがなくても子に遺産を残すはずである

景気刺激策として有効減税によって人々の現在の可処分所得が増え,人々が利己的であれば,後世への増税の負担のことを気にせず,現在の可処分所得の増加が消費の増加をもたらすため

老後の生活は豊かになり、家計貯蓄が減少する老後の生活がより豊かになり,老後に備えて自ら貯蓄をする必要性が薄れるため

世代間で資産格差が引き継がれることを阻止する必要はほぼない

利己的な人は遺産を余り残さないし,残したとしてもそれは反対方向(子から親へ)の世代間移転(子による親の世話・援助の金銭的価値)によって相殺され,親から子へのネットの世代間移転は少ないはずである

人々が利己的な場合人々が利他的な場合政策の効果

B

日本

中国

米国

インド

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政策の方向性としては、リスクの公平な分担を実現する制度や個人、企業がリスクを取ることができる環境を整えることが今後必要だとしている。

http://www.nira.or.jp/pdf/0906report.pdf

政策との関連

• 雇用契約の種類の多様化• 性別、雇用形態、年齢に関わらず、公平に働ける社会の実現

• 年金のマクロ経済スライドの見直し• 現役世代や子ども世代への投資• 現金給付ではなく、労働促進的な保育

/介護サービスの充実の優先

• 規制緩和実現による新規事業の育成• 雇用調整助成金制度の見直し• 金融機関のリスク仲介能力を高める• 贈与税、相続税を引き上げる• 倒産、破産コストを軽減する

具体的政策例

C

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人口の高齢化のタイミングは各国で異なるため、日本における人口高齢化等がもたらす貯蓄、投資、国際収支の変化は必ずしも問題ではない。

論文の概要

人口の高齢化による貯蓄の減少幅が

投資の減少幅を上回る

人口の高齢化による投資の減少により、貯蓄の減少もある程度相殺されるため、顕著にはならない

資本収支の赤字の減少経常収支の黒字の減少

日本

A国

B国

D国

C国

日本

A国

B国

D国

C国

×

ISバランス(貯蓄投資差額)が赤字に転じた場合

世界で貯蓄が不足していない限り、世界の高貯蓄国からの資本流入により補える

日本で資本収支の赤字の減少、経常収支の黒字の減少が発生した場合

世界で貯蓄が不足していない限り、世界経済全体に悪影響を与えるとは限らない

もしも・・・

D

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Contents

1 マクロ経済政策の在り方

1-1:研究会テーマ、講師

1-2:(ご参考)各回の参考資料

1-2-1:第一回

1-2-2:第二回

1-2-2-1:調査結果

1-2-2-2:参考データ

1-2-3:第三回

1-2-4:第四回

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実収入の増加に伴い社会保険料等の非消費支出も増加してきた。これは消費が伸び悩んでいる理由の一つと考えられる。

総務省「家計調査」よりADL作成

1世帯当たり年平均1か月間の収入と支出(2人以上の世帯のうち勤労者世帯)

35

45

55

0

20

30

15

25

10

5

60

50

40

1972

1973

1963

1969

1974

1971

1967

1964

1975

2003

1976

万円

2014

2012

2015

2010

2008

2007

2005

2006

2013

2009

2011

2004

2002

2001

2000

1987

1991

1995

1990

1999

1988

1986

1984

1996

1993

1983

1997

1985

1982

1981

1989

1980

1979

1998

1994

1992

1968

1970

1966

1965

1978

1977

勤労所得税(名目)

住民税+社会保険料(名目)

可処分所得(名目)

消費支出

非消費支出(名目)

実収入(名目)

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2.12.41.81.72.12.8

5.95.0

32.9

18.5

-5

0

5

10

15

20

25

30

35

1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

6.7

13.1

10.6

8.7

6.3

社会保障や税金などの負担が増えたため、賃上げ率ほど可処分所得は増加していない。

出所:厚生労働省 「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」よりADL作成

(ご参考)主要企業春季賃上げ率

可処分所得(対前年度増加比率)

主要企業春季賃上げ率

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2007年以降、政府は下記のような所得税・個人住民税と社会保険料等の改定を実施してきた。

http://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/nen/pdf/gk00.pdf

(ご参考)所得税・個人住民税と社会保険料等の改定1/2

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2007年以降、政府は下記のような所得税・個人住民税と社会保険料等の改定を実施してきた。

http://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/nen/pdf/gk00.pdf

(ご参考)所得税・個人住民税と社会保険料等の改定2/2

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高齢者、無所得世帯も含む家計全体の消費は2013年に家計全体の可処分所得を上回った。

内閣府「国民経済計算」よりADL作成

日本における貯蓄額の推移

-10

270

-15

30

10

0

50

15

0

20

60

40

315

255

300

70

285

兆円

291

貯蓄額(兆円)

293

2015

2004

2007

1996

2006

2000

2013

2002

1994

2010

2001

2014

1998

2009

2012

1999

1997

2003

1995

2008

2011

2005

可処分所得(純) 貯蓄(純)最終消費支出(個別消費支出)

※貯蓄額(純)=可処分所得+年金受給権の変動調整(受取)-最終消費支出と定義する

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日本の家計貯蓄率は世界的に見ても著しく減少しており、2013年にはマイナスを記録した。 (中国を除いたグラフは次頁参照)

OECD (2017), Household savings (indicator). 内閣府 国民経済計算により算出

世界の家計貯蓄率(1/2)

-5

0

5

10

15

20

25

30

35

40

1990 1995 2000 2005 2010 2015

Australia

Canada

Sweden

Korea

Japan

Italy

Germany

China

(People’s Republic of)

United Kingdom

United States

France

%

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日本の家計貯蓄率は世界的に見ても著しく減少しており、2013年にはマイナスを記録した。(下記は前頁の中国を除いたグラフ)

OECD (2017), Household savings (indicator). 国民経済計算により算出

世界の家計貯蓄率(2/2)

-2

-1

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

16

17

2013

2011

1998

1991

1992

1996

1993

1994

1997

1995

1999

2001

2010

2006

2002

2000

1990

2003

2004

2015

2005

2014

2009

2007

2008

2012

Italy

Sweden

France

Australia

United States

Series

Germany

Korea

United Kingdom

Canada

Japan

%

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「家計貯蓄率」は家計全体に対する貯蓄率を示し、「平均貯蓄率」は勤労世帯の1世帯当たりの貯蓄率と定義する。

https://www.ifinance.ne.jp/glossary/lifeplan/lif082.html

http://www.esri.go.jp/jp/others/kanko_sbubble/analysis_03_08.pdf

(ご参考)貯蓄率の定義

• 貯蓄:可処分所得のうち、消費せずに貯めておく分• 可処分所得:個人所得から、支払い義務のある税金や社会保険料などを差し引いた後に残る手取り収

入。個人が自由に使用できる所得の総額。• 貯蓄率:可処分所得に占める貯蓄の割合• 非消費支出:税金・社会保険料など• 消費支出:世帯を維持していくために必要な支出

• 内閣府の国民経済計算における「家計貯蓄率」:

家計全体の可処分所得から、家計全体の最終消費支出をマイナスし、年金基金準備金の増減を調整。その値を可処分所得と年金基金準備金の増減の合計で割ったもの。マクロ的な考え方によるもので、高齢者、無職世帯など、勤労所得者以外も含んでいる。

• 総務省の家計調査における「平均貯蓄率」:=貯蓄純増/可処分所得×100※貯蓄純増=(預貯金+保険料)-(預貯金引出+保険金)

• 総務省の家計調査における「黒字率」:可処分所得から消費支出をマイナスし、それを可処分所得で割ったもの。特に勤労者世帯の「黒字率」を指している事が多い。

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Contents

1 マクロ経済政策の在り方

1-1:研究会テーマ、講師

1-2:(ご参考)各回の参考資料

1-2-1:第一回

1-2-2:第二回

1-2-3:第三回

1-2-3-1:調査結果

1-2-3-2:参考データ

1-2-4:第四回

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講師の執筆論文のうち、特に本研究会に関係する内容のものは下記のとおり。

執筆論文、書籍等出版物、学会・セミナー発表等

http://www.mof.go.jp/pri/research/conference/fy2017/i

nv2017_01.pdf

日本の生産性の現状、サービス産業の生産性向上に向けた取り組み2017年9月 (過去の講演会で使用した模様)

http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/keizai

_prism/backnumber/h28pdf/201614602.pdfアベノミクスの日本経済への影響と新アベノミクスの実現可能性 2016年2月

http://www.camri.or.jp/files/libs/929/201708071226593

163.pdf日本の産業別生産性動向と経済の再生に向けた生産性向上2017年7月

NA日本経済新聞経済教室2015年10月6日

http://www.jpc-net.jp/study/sd5.pdfIT 投資の決定要因とその効果(2017年9月)

http://www.jpc-net.jp/study/sd2.pdf日米産業別労働生産性水準比較2016年12月

A

B

C

B

A

C

B

C

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本論文は、日米の労働生産性水準の差の変化とその要因について分析。生産性し表としては、労働生産性水準を使用。

http://www.camri.or.jp/files/libs/929/201708071226593163.pdf

論文の概要

下記の定義のもと要分析を実施• 労働生産性=• 実質付加価値額÷総実労働時間,

• 総実労働時間=• 従業員数×一人当たり労働時間

生産性指標として労働生産性水準を採用

業種別労働生産性の日米格差の変化を調査

日米で格差に変動が生じた要因を議論

通常、労働生産性上昇率で計算されることが多いが労働生産性水準を採用

• 通常は通貨の換算や労働生産性水準の計算に必要なデータの入手が困難なことから、労働生産性上昇率が使用される

• 「働き方改革」の実現に向けた取り組みを生産性の観点から議論するためには、労働投入1単位当たりのアウトプットとして計測される労働生産性に着目するのが適当であると考えた

※データセットに関する詳細はhttp://www.jpc-net.jp/study/sd2.pdf

を参照(p.2)

業種ごとに日米の労働生産性格差の拡大/縮小を調査

B

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生産性をインプットに対するアウトプットの割合で定義。このとき、インプットとアウトプットの絶対的な増減により生産性の向上パターンを5つに分類している。

http://www.camri.or.jp/files/libs/929/201708071226593163.pdf

生産性向上パターンの定義

Aggressive

(積極的)パターンIdeal(理想的)パターン

Passive(消極的)パターン

インプット

アウトプット

B EC DA

生産性=

生産性向上のパターン

インプット(労働生産性の場合は労働投入時間)を増やしつつ、それ以上にアウトプット(付加価値)が増加する結果として生産性が向上した場合

インプット を減らしつつもアウトプットの増

加を実現した結果として生産性の大幅な向上が達成された場合

アウトプットも減っているがそれ以上にインプットが減少しているために生産性が向上した場合

B

C

E

B

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日米の労働生産性の格差において、電気機械、金融、卸売・小売等では格差が増大、輸送機械、飲食・宿泊等では縮小している。

http://www.mof.go.jp/pri/research/conference/fy2017/inv2017_01.pdf

日米労働生産性格差の変化

どのような要因で格差が拡大、縮小したのかはそれぞれ異なる

製造業

非製造業

• 電気機械日米格差拡大

主な業種

製造業

非製造業

• 輸送機械

• 飲食・宿泊

日米格差縮小

• 運輸

• 卸売・小売

• 金融

B

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労働生産性の要素である付加価値、一人当たり労働時間、従業者数の動きは、産業でそれぞれ異なるため、各企業で変動を把握し生産性向上に努めることが重要。

http://www.mof.go.jp/pri/research/conference/fy2017/inv2017_01.pdf

日米労働生産性格差の要因分解

製造業

非製造業

• 電気機械日米格差拡大

• 付加価値、一人当たり労働時間、従業者数の動きは、産業でそれぞれ異なる• ただし、産業内での生産性のばらつき、日米における企業規模の差などHeterogeneity

(異質性)を考慮する必要がある

主な業種

C C

製造業

非製造業

• 輸送機械

• 飲食・宿泊

日米格差縮小

B

E

E

B

• 運輸 E B

• 卸売・小売 E B

• 金融×生産性低下

B

日本 米国

生産性向上のパターン

下記の用意労働生産性を要因分解する:

①労働生産性=②実質付加価値額÷③総実労働時間

③総実労働時間=④従業員数×⑤一人当たり労働時間

15432

B

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運輸業の場合、生産性向上パターンのうち、日本はPassiveパターン、米国はAggressiveパターンである。

(ご参考)労働生産性変化要因分解の例

• 日本は付加価値は減少したものの、労働投入を10%減らしたため、労働生産性は1.07倍に

• 米国は従業者数を増やす一方

で一人当たり労働時間を減らしたため、労働投入全体としては減少したが、付加価値を1.2倍に増やしたため労働生産性は1.22倍に

15432

Aggressive

(積極的)パターン

Passive(消極的)パターン

B

Page 249: 平成29年度産業経済研究委託事業 少子高齢社会における我が国 ... · 2018. 5. 11. · 1月 2月 task1:マクロ経済政策の在り方 • task1-1:「経済成長/イノベーション」「財政政策」

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本論文では、IT投資額の水準やIT投資における高い効果がどのような要因と相関しているのかを分析。

論文の概要

サービス産業における資本蓄積の問題点

国際的に有形資産への投資に偏っている

– 特に、日本はIT投資について先進国の中では一貫して低位

日本では、2002年頃から従業一人当たりのIT投資額において製造業と非製造業の格差が増大している

– 特に、非製造業では、ソフトウエア投資が鈍化傾向

時系列的に見ると、補完的な役割を果たすべき人材投資(無形資産投資の一部)が大きく低下している

– IT投資は増加しているものの、IT化を補完する人材育成投資は減少している

マクロレベルの課題の抽出

個別企業を対象として実施した IT 活用に関するアンケートデータの個票(*)を用いて下記を分析

– IT 投資額の水準がどのような要因と相関しているのか

– IT 投資がどのような環境下でより高い効果をもたらす傾向にあるのか

※2014年11月実施(国際IT財団)された「企業のIT活用の実態と効果についてのアンケート」調査を利用。アンケート質問項目等は下記を参照

http://www.ifit.or.jp/report/pdf/20150520_doc1.pdf

ミクロレベルの問題の分析を実施

本論文の論点

IT 投資と生産性の関係をデータに基

づいて理解するためには、個々の企業に関する様々な属性の影響を取り除いて分析する必要がある

C

Page 250: 平成29年度産業経済研究委託事業 少子高齢社会における我が国 ... · 2018. 5. 11. · 1月 2月 task1:マクロ経済政策の在り方 • task1-1:「経済成長/イノベーション」「財政政策」

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国際的に有形資産への投資に偏っている。日本では、従業一人当たりのIT投資額において製造業と非製造業の格差が増大している。

(ご参考)無形資産への投資推移

無形資産投資/有形資産投資の国際比較 従業員一人当たりIT(ソフト+ハード)投資額の推移

(単位:円)

C

Page 251: 平成29年度産業経済研究委託事業 少子高齢社会における我が国 ... · 2018. 5. 11. · 1月 2月 task1:マクロ経済政策の在り方 • task1-1:「経済成長/イノベーション」「財政政策」

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日本では、従業員一人当たりのIT投資額において、製造業と非製造業の間でソフトへの投資額の乖離がより顕著に見られる。

(ご参考)従業員一人当たりIT投資額推移

従業員一人当たりIT(ハード)投資額の推移 従業員一人当たりIT(ソフト)投資額の推移

(単位:円) (単位:円)

C

Page 252: 平成29年度産業経済研究委託事業 少子高齢社会における我が国 ... · 2018. 5. 11. · 1月 2月 task1:マクロ経済政策の在り方 • task1-1:「経済成長/イノベーション」「財政政策」

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日本において、IT投資額が増加している一方で、人的資本投資額は減少していることから、IT化を補完する人材育成投資は減少しているといえる。

(ご参考)従業員一人当たりの人的資本投資額の推移

従業員一人当たりの人的資本投資額の推移(単位:円)

製造業、非製造業ともにIT

投資額は増加していた(前頁より)

製造業、非製造業ともに人的資本投資額は減少している

IT化を補完する人材育成投資は減少している

C

Page 253: 平成29年度産業経済研究委託事業 少子高齢社会における我が国 ... · 2018. 5. 11. · 1月 2月 task1:マクロ経済政策の在り方 • task1-1:「経済成長/イノベーション」「財政政策」

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IT 投資が不十分な企業において、CIOの設置や専任セクションの存在、IT人材の確保等の補完的資産の存在が IT投資水準の将来見通しと正の相関があるとしている。

http://www.jpc-net.jp/study/sd5.pdf

論文の概要

IT投資の水準と相関する要因の分析結果

• 低 ICT 投資グループにおいて、「CIO の設置」や「ITシステム担当の専任部門の存在」が、将来の情報化投資額と正の相関を有している

• 低 ICT 投資グループにおいては、IT 活用の目的として「経営トップの意思決定の正確性や迅速性の向上」や「経営企画の立案と実行能力の向上」が選択されている場合において、将来の情報化投資額の見通しが高い水準となる傾向がある

• IT 投資の大小に依らず、IT 活用に伴い、IT 専門の人材を中途採用している場合において、将来の IT 投資の見通しが高い水準となっている

補完的な資産(組織資本)の有無が将来時点における IT 投資の実施と強く関係している

企業経営の根幹をなす経営判断・経営企画について、IT 投資を通じた高度化の期待が強い

IT 投資の実施に当たって、専門人材の確保が重要である

アンケート結果から得られた考察 得られた示唆

C

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IT 投資の効果を発現するためには、補完的資産の存在が必要不可欠であると結論付けている。

http://www.jpc-net.jp/study/sd5.pdf

論文の概要

IT投資の効果と相関する要因の分析結果

• 「CIO の存在」が、新市場既存市場の売上上昇、顧客開拓、企画力向上と相関している

• 「専任セクションの存在」も売上の増大や組織改革、人員削減と正の相関を有している

• 「新卒 IT 人材の導入」は生産性や効率上昇と正の相関を有する一方で、「中途 IT 人材の存在」は企画力の向上と正の相関を有している

「組織資本と IT 投資との間の正の相関」の下で進んだ組織資本と IT 資本の蓄積が、高い IT

投資効果の発現に繋がっている

IT 投資に当たって適切な組織的対応を行うことで、結果として効果的な IT 利活用が可能になる

異なる熟練度の IT 人材が異なる結果を生み出している

アンケート結果から得られた考察 得られた示唆

• 全てのアウトカム変数について、「IT 人材への研修の実」との間に正の相関がみられる施

人的資本への投資が IT の利活用にと って決定的に重要

C

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Contents

1 マクロ経済政策の在り方

1-1:研究会テーマ、講師

1-2:(ご参考)各回の参考資料

1-2-1:第一回

1-2-2:第二回

1-2-3:第三回

1-2-3-1:調査結果

1-2-3-2:参考データ

1-2-4:第四回

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経済学における生産性として、主に労働生産性と全要素生産性(TFP)が利用される。

https://www.rieti.go.jp/jp/database/JIP2015/ans.html#Q2

生産性の定義

全要素生産性(Total Factor Productivity, TFP)

労働生産性

全要素生産性=生産量 / 全生産要素投入量

労働生産性=生産物 / 労働投入

• 労働のみならず、機械設備や原材料投入も考慮した生産性指標

• 「GDPの伸び率(=生産量の伸び率-原材料投入の伸び率)=資本投入の伸び率+労働投入の伸び率++TFPの伸び率」という形で利用されることが多い

• 生産に投入された生産要素のうち、労働のみに注目した指標

• 単純で直感的にも理解しやすく、計算が容易で、かつデータも比較的入手しやすいという利点がある

定義式

特徴

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講師の執筆論文では、無形資産を下記のように分類。

http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/keizai_prism/backnumber/h28pdf/201614602.pdf

無形資産の分類

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2.12.41.81.72.12.8

5.95.0

32.9

18.5

-5

0

5

10

15

20

25

30

35

1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

6.7

13.1

10.6

8.7

6.3

社会保障や税金などの負担が増えたため、賃上げ率ほど可処分所得は増加していない。

出所:厚生労働省 「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」よりADL作成

(ご参考)主要企業春季賃上げ率

可処分所得(対前年度増加比率)

主要企業春季賃上げ率

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諸外国の国内総生産(実質)は下記のとおり。

出所:International Monetary Fund, World Economic Outlook Database, October 2016よりADL作成

(ご参考)Gross domestic product, constant prices

-6

-3

0

3

6

9

12

15

18

2019

2016

2015

2018

2012

2017

2014

2011

1996

2022

2020

2009

2013

2021

2010

2008

2004

2002

2000

2005

1994

1992

1990

1988

1985

1984

1980

1983

1997

1986

2001

1989

1991

1981

1998

1993

1987

2003

1995

1982

1999

2006

2007

変化率%

United States

United Kingdom

France

Italy

Canada

Swaziland

Japan

Germany

China

※2016年以降は予想値

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Contents

1 マクロ経済政策の在り方

1-1:研究会テーマ、講師

1-2:(ご参考)各回の参考資料

1-2-1:第一回

1-2-2:第二回

1-2-3:第三回

1-2-4:第四回

1-2-4-1:調査結果

1-2-4-2:参考データ

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講師の執筆論文のうち、特に本研究会に関係する内容のものは下記のとおり。

執筆論文、書籍等出版物、学会・セミナー発表等

http://www.camri.or.jp/files/libs/144/201703241647339

179.pdf非財務資本とエクイティ・スプレッドの同期化モデルの考察2016年

http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/keizai

_prism/backnumber/h28pdf/201614602.pdf行動ファイナンスと株式市場― 身の周りの情報と株価の深いつながり 2010年

http://www.daiwa-grp.jp/csr/publication/pdf/67.pdf均等推進表彰企業、ファミリー・フレンドリー表彰企業はパフォーマンス良好 2011年

http://president.jp/articles/-/19907?page=1女性が働きやすい企業の株価はなぜ上がるのか2016年

http://www.env.go.jp/policy/esg/kinyukondankai/02/shi

ryo_1/mat03.pdf

「企業との建設的な対話で何が求められているのか」非財務資本とエクイティスプレッドの同期化モデルinvesteeと investorのESGエンゲージメント 2018年※吉野様の共同研究者の執筆PPT

http://www.camri.or.jp/files/libs/386/201703271233181

258.pdf投資指標としてのROEの実践的な利用法に向けて2015年

A

B

C

A

C

C

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO11590840S7

A110C1000000/今年注目は「ゴジラ」と「3高」 大和証券の吉野氏2017年

B

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吉野氏は、身の回りの情報と株式相場を関係づける考察を唱えてきた。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO11590840S7A110C1000000/ 今年注目は「ゴジラ」と「3高」 大和証券の吉野氏 2017/1/13 5:30 日経新聞

身の回りの情報と株価の相関

■日本映画と株価の関係

――吉野さんは以前、株価とテレビアニメ「サザエさん」の視聴率との関係を指摘したことで有名ですが、17年はどのようなアノマリーに注目していますか。「今年は『日本映画』に着目している。かつて映画は不況に強い産業といわれたが、2000年

以降は国内の映画館入場者数が増えると日経平均株価が高くなる傾向にある。『ゴジラ』映画に関しては1950年代以降でみても興行収入が過去最高を更新した6作品のうち5作品で

翌年の日経平均株価が大幅に上昇した。映画の製作には巨額の費用がかかる。良質な国内映画が供給されるということは、(スポンサーとなる)企業の業績が好調な証拠だ。16年は『シン・ゴジラ』のほか『君の名は。』などの日本映画がヒットしており、過去のアノマリーが17年にも当てはまるのか興味深い」

――16年は英国の欧州連合(EU)離脱決定やトランプ氏の米大統領選挙の勝利が、「ゴジラ」並みの衝撃を国内の株式市場に与えました。「16年終盤のいわゆる『トランプ・ラリー』による相場上昇が17年に入ってから落ち着き、大

統領に就任した後のトランプ氏の実際の政策や実体経済がどうなるか株式市場は様子見の状況になっている。さらに3月に向けて国内株価にはやや不透明感がある。日本株を運用していた中東系の政府系ファンド(SWF)が決算を意識して日本株を売る可能性がある。SWFは債券の代替投資先としてMSCI最小分散指数などで日本株に投資してきたが、16年半ば以降のパフォーマンスは芳しくない」「ただ、足元でみると国内企業の業績は好調だ。最近の円安を受けて16年10~12月期決算は改善し、16年度決算見通しは上方修正されるだろう。1ドル=115円程度を前提とすれば17年度決算予想で2ケタ増益を予想する証券アナリストが増えてくる」

下記の様なテーマで、過去にも多数執筆– サザエさんの視聴率と株価は?– 恵比寿駅と新橋駅の年度の利用者と年度末株価は?

– 首都高の通行台数(月次)と月末の株価は?

– ハワイと株価の関係は?– 気圧と株価の関係は?– 木枯らし一号と株価の関係は?– 台風と株価の関係は?

A

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均等・両立推進で表彰された企業は、投資家から評価されて長期的に株高となったことが分かる。特に、ファミリーフレンドリー企業の方が上昇が著しい。

http://president.jp/articles/-/19907

(ご参考)女性が働きやすい企業と株価の相関

こうした国家レベルで女性の活躍が期待される一方、個々の企業に目を向けた場合に、本当に女性が活躍できる環境の企業は、成長を実現し、株式市場でも評価されているのだろうか。

そこで「均等・両立推進企業」として表彰された企業が、株式市場でも投資家から評価されて株価が上昇しているか、分析を行った結果がグラフである。グラフの青色の線が「均等・両立推進企業」表彰企業の平均株価の推移を示している。これらの企業は、表彰後に安定して株価が上昇している。均等・両立推進で表彰された企業は、投資家から評価されて長期的に株高となったというわけだ。

では、なぜこのような結果になったのか? これは女性を積極的に活用する企業風土の背後には、男女を区別せずに個人の能力や成果に基づく評価や処遇を重視する経営方針があるからだ。これが企業の経営成果として表れ、株式市場から評価されていると考えられる。均等・両立推進の表彰は、「ファミリー・フレンドリー企業部門」と「均等推進企業部門」に分かれている。

グラフでは緑色の線が「均等推進企業部門」表彰企業、赤色の線が「ファミリー・フレンドリー企業部門」表彰企業の株価の平均的な推移である。これを見ると、「均等推進企業部門」はマイナスにこそならないが、株価の上昇が鈍く、「ファミリー・フレンドリー企業部門」の一貫した上昇と比べると見劣りしてしまう。

(女性が働きやすい企業の株価はなぜ上がるのかWOMAN 2016.7.21 吉野貴晶)

※「ファミリー・フレンドリー企業」とは、厚労省の定義によると、仕事と育児・介護を両立できるようなさまざまな制度を持ち、多様で柔軟な働き方を労働者が選択できる企業。一方、「均等推進企業部門」は、女性労働者の能力発揮を促進するために積極的な取り組みをしており、女性社員比率を高めたり、女性の採用を拡大したりする企業がイメージされる。

B

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男女均等を前提として、仕事に対する多様な意識に対応することが女性の活躍においては必須。ファミリーフレンドリー企業はこれらに対応しており、実際、投資家からも評価されている。

http://president.jp/articles/-/19907

女性が働きやすい企業と株価の相関

ここで男女の均等度に関して、さらに考えてみよう。まず、女性が活躍する企業という観点で、最も基本的な基準が男女の均等度である。女性の活躍には、女性が仕事の機会を広く持てる環境であることが大前提だ。ただ、これは女性が活躍するスタート段階といえる。より高度な活躍の機会を考えるなら、仕事に対するスタンスや時間的な制約など、個々人の違いに応じた活躍の機会を提供していくことが重要だからだ。

たとえば子育てをするなかで、自分の能力を生かして社会に貢献したいという強い意識を持つ人材もいる。一方、シンプルに仕事は報酬のためと割り切る人材もいるなど、仕事に対する意識は千差万別である。さらには社員それぞれが、仕事に対する考え方、生きがいを考えるうえでの位置付けも異なるなかで、会社の業務における個人の役割が適切に与えられることが、会社にとっても個人にとっても幸せな関係になる。

このような観点も踏まえて、女性の仕事の機会をより高次元で達成できるシステムが「ファミリー・フレンドリー」なのである。ファミリー・フレンドリーは、社員の個々のスキル、仕事へのスタンス、生活における仕事の位置付けなどに応じて、企業が業務の役割を与えられるシステムがどの程度つくられているか、を見るものだからだ。実際にファミリー・フレンドリーの面で優れた企業は特に投資家から評価されているようだ。近年は女性の活躍に関しても、投資家はより高次元の活躍企業を評価する時代になってきた。

(女性が働きやすい企業の株価はなぜ上がるのかWOMAN 2016.7.21 吉野貴晶)

B

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日本のROEは国際比較で低水準となってきた。 ROEを上昇させるために、これまでは利益モメンタムを重視してきたが、近年は利益マージンを高めることへの意識が高まっている。

http://www.camri.or.jp/files/libs/386/201703271233181258.pdf

http://www.camri.or.jp/files/libs/144/201703241647339179.pdf

http://www.env.go.jp/policy/esg/kinyukondankai/02/shiryo_1/mat03.pdf

ROE向上に向けて

日本のROE推移とROE向上に向けた施策

利益モメンタム重視これまで、投資家から企業の業績パフォーマンス評価をする上でメインの視点は、伸び率に向けられていたn

C

日米欧の実績ROEの推移

事業リストラやM&Aなどにより、得意分野に特化した企業経営が注目されている

国内景気の成熟世界経済の不透明感

余剰キャッシュなどを株主還元する増配や自社株買いが注目されている

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アベノミクス相場が始まって以来、ROEを長期的なスタンスに関する尺度と捉えられている点はこれまでと大きく異なる。今後ROEを拡張した投資手法が注目を集めるとしている。

http://www.camri.or.jp/files/libs/386/201703271233181258.pdf

http://www.camri.or.jp/files/libs/144/201703241647339179.pdf

http://www.env.go.jp/policy/esg/kinyukondankai/02/shiryo_1/mat03.pdf

ROE向上に向けて

政策面でのROE向上に向けた取り組み

C

ROEが重視される局面とその反動が繰り返されるパターン

目先の収益性を測るためにROEが用いられてきた

ROEを重視するコーポレートガバナンスコードの登場など、長期的にROEを高めていく企業を評価する流れがある

企業の経営姿勢などの長期的なスタンスに関連する尺度と捉えられている

⇒今後ROEは投資指標として重要性を高める。ただし業績の平均回帰性やバリュエ-ションの観点を加える必要から、ROEを拡張した指標を利用すべき

Page 267: 平成29年度産業経済研究委託事業 少子高齢社会における我が国 ... · 2018. 5. 11. · 1月 2月 task1:マクロ経済政策の在り方 • task1-1:「経済成長/イノベーション」「財政政策」

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Contents

1 マクロ経済政策の在り方

1-1:研究会テーマ、講師

1-2:(ご参考)各回の参考資料

1-2-1:第一回

1-2-2:第二回

1-2-3:第三回

1-2-4:第四回

1-2-4-1:調査結果

1-2-4-2:参考データ

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投資者が注文を行う際には、成行注文と指値注文がある。東京証券取引所の売買では、「板寄せ方式」「ザラバ方式」が用いられている。

http://www.jpx.co.jp/learning/basics/equities/04.html

売買のルール

成行注文

指値注文

いくらでもよいから、買いたい/売りたいとする注文

指値注文より優先されますが、思わぬ値段で約定する可能性がある

○円以下なら買いたい/○円以上なら売りたいとする注文

– たとえば100円の買指値注文の場合は、「100円以下なら買いたいが、100円より高い値段では買いたくない」という意思表示になります。この場合、100円はあくまで限度価格なので、99円で買えることもありえます。現在の値段が101円なら101円で買うことはせず、値段が100円以下になるまで待つことになる

実施時

• 立会開始時

• 立会終了時

• 売買中断後の再開時

• 特別気配・連続約定気配の表示時

• 左記以外

• (寄付と引けの間=

ザラバ等)

約定価格

• 売注文と買注文から、合致する値段を求め、その値段が単一の約定値段となる

• 価格優先の原則、時間優先の原則に従い、合致したものから順に約定する

板寄せ方式 ザラバ方式

注文方法 売買方式

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板寄せ方式は、売呼値と買呼値を優先順位の高いものから順次対当させながら、数量的に合致する値段を求め、その値段を単一の約定値段(始値)として、売買契約を締結させる方法。

http://www.jpx.co.jp/learning/basics/equities/04.html

売買方式:板寄せ方式

板寄せ方式の概要と事例

概要始値を決定する場合の売買システムの「板」の状態をみますと、第1図のように、売呼値と買呼値が交錯し、買

呼値より低い値段の売呼値や、売呼値より高い値段の買呼値があり、また、成行(なりゆき)の売呼値や成行の買呼値がある事例が多くみられます。

板寄せ方式は、このような状態のなかで、売呼値と買呼値を優先順位の高いものから順次対当させながら、数量的に合致する値段を求め、その値段を単一の約定値段(始値)として、売買契約を締結させる方法です。

なお、始値が決定されるまでの呼値については、すべて同時に行われたものとみなされ、時間優先の原則は適用されません。また、後場始値決定前や売買中断後の最初の約定値段決定前等には、前場中やザラ場中に発注された注文も含めて、それまでに発注された注文は、すべて同時注文として取扱います。

事例まず、成行の売呼値 600株(H200株、I400株)と、成行の買呼値 400株(K100株、M300株)を対当させます。この時点では、成行の売呼値が200株残ります。次に、始値を500円と仮定して、成行の売呼値の残りの200株及び499円以下の売呼値 600株(S200株、R400株)と、501円以上の買呼値800 株(P500株、N200株、T100株)を対当させます。以上の結果、売呼値が1,200株、買呼値が1,200株で、株数が合致します。最後に、500円の売呼値 300株(E 100株、F 100株、G 100株)と、500円の買呼値1,000株(A400株、B300株、C200株、D100株)を対当させます。しかし、売呼値が300株、買呼値が 1,000株ですから、株数が合致しません。

このような場合には、売呼値又は買呼値のいずれか一方の全部の数量が執行されれば、売買は成立します。したがって、500円の売呼値の全部 300株と、500円の買呼値を行っているA、B、C取引参加者の呼値について各100株、合計300株とを対当させます。この際、500円の買呼値の数量を取引参加者ごとに合計して多い順から順番を付け対当させます。この場合、A,B,C、Dの順となりますので、Dには始値での約定はありません。板寄せが行われた場合、上記の順番に従って、各取引参加者に1単位ずつ順次割当を行っていきます。この結果、始値が500円に決定され、その値段で合計1,500株の売買契約が締結されることになります。

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ザラバ方式は、始値が決定された後に、売買立会時間中継続して個別に行われる売買契約の締結方法。

http://www.jpx.co.jp/learning/basics/equities/04.html

売買方式:ザラバ方式

ザラバ方式の概要と事例

概要ザラバ方式は、始値が決定された後に、売買立会時間中継続して個別に行われる売買契約の締結方法です。ザラバとは、始値と終値との間に行われる継続売買のことをいいます。

事例例えば、売買システムの「板」の状態が第2図のような場合に、Mが500円で200株買いたいという呼値をしますと、Aの500円の売呼値300株のうち200株と対当させて売買契約が締結されます。次いで、Nが1,000株の成行の買呼値をしますと、まず、Aの500円の売呼値の残り100株及びBの500円の売呼値300株と対当させて売買契約が締結され、次に、Cの501円の売呼値 400株及びDの501円の売呼値 200株を対当させて売買契約が締結されます。

その後、Kが499円で500株の売呼値をしますと、499円の買呼値をしているFの 300株及びGの200株を対当させて売買契約が締結されます。

この結果、右記のような売買契約が締結されたことになります。

このように、売買立会時間中、間断なく呼値が行われ、値段が合致しますと、つぎつぎに売買契約が締結されてゆくことになるわけです。

第3図 第二図の事例における契約結果

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日本の現物株市場には4つの取引所がある。特に、多くの有名企業は東京証券取引所の1部市場に上場。

http://diamond.jp/articles/-/77773

(ご参考)日本の証券市場

東京証券取引所

名古屋証券取引所

福岡証券取引所

札幌証券取引所

東証一部

東証二部

東証マザーズ

東証JASDAQ

第一部

第二部

セントレックス

市場部

Q-Board

市場部

アンビシャス

PTS(私設取引システム)

日本の現物株市場

※2015年8月17日時点、マネックス証券のスクリーニングによる。PTSはSBI証券で取引できるSBIジャパンネクストの例

1897

547

212

821

146

36

16

3650

取引所名 市場 銘柄数

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企業の割安度を測る指標としてPER, PER等が挙げられる。特に、PBRと配当利回りは基本的な指標とされる。

http://www.jfssa.jp/taikai/2010/docs/yoshino.pdf 「行動ファイナンスと株式市場 -身の回りの情報と株価の深いつながり- 吉野貴晶 」書籍「No.1アナリストがいつも使っている投資指標の本当の見方 吉野貴晶著」

代表的な投資指標

PBR

(予)配当利回り

(予)PER

(予)PCFR

(予)EV/EBITDA

(予)PSR

ネットキャッシュ

時価総額

=株価

一株当たりの純資産(自己資本)

=一株当たりの予想配当金

株価

=株価

一株当たりの予想純利益

=時価総額

予想純利益+予想減価償却費

=時価総額+有利子負債-現金・同等物

予想営業利益+予想減価償却費

=時価総額

予想売上高

=現金・同等物-有利子負債

時価総額

• 景気や相場が調整する場面では、予想業績よりも資産価値の評価額の信頼性が高いため効果が高い

• 資産価値が急落する場面では、企業の株主資本簿価の信頼性が低下して厳しい

• 景気後退色が強く、株式市場が下落するなかで、投資家が実際に毎年手にできることが見込まれる金額が評価される

• 利益に成長がないという前提で、株価が利益の何倍まで買われているか?株主の利益の回収年限を表す指標

• 景気や企業業績が順調に回復する環境では効果が大きい• ①将来の利益が不透明である、②足元の利益予想が不確かである時は有効性が厳しい

• 景気がやや厳しくなってきた場面で利益よりもキャッシュフローで価値を評価する

• 買収価値を測る• 何年たてば買収金額を回収できるかを表す指標

• 景気回復初期に、利益と比べて企業の評価手段として信頼性が高まり効果が高まる• 景気の回復が大きく、市場全体のパイが拡大するなかで、売り上げが注目されて、効果が

高まる• 売り上げ自体が株主の利益と直接繋がらないため、通常の環境では有効性が高くない

• 「キャッシュ÷総資産」が株主還元の余力を見るための指標であるのに対し、本指標は景気や相場の下値不安が高まった時に、会社の保有する現金から見て、会社が割安かを測る指標

低い方

高い方

低い方

低い方

低い方

低い方

高い方

企業の割安度を測る指標

企業の割安度を測る

出所欄参考図書の中では、業種ごとに差があるのかを比較している

指標 定義式 指標の特徴 魅力度大

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企業の成長性を測る指標として、ROEや経常総益率が挙げられ、特にROEが近年注目されている。財務安全性を測る指標としては、自己資本比率等がある。

http://www.jfssa.jp/taikai/2010/docs/yoshino.pdf 「行動ファイナンスと株式市場 -身の回りの情報と株価の深いつながり- 吉野貴晶 」書籍「No.1アナリストがいつも使っている投資指標の本当の見方 吉野貴晶著」

代表的な投資指標

企業の成長、財務安全性を測る指標

(予)ROE

(予)ROA

(予)経常増益率

リビジョン

増収率

自己資本比率

キャッシュ

総資産

=予想純利益

自己資本

=予想営業利益

総資産

=予想経常利益-実績経常利益

実績経常利益

=今回の予想経常利益-前回の予想経常利益

前回の予想経常利益

=予想売上高-実績売上高

実績売上高

=自己資本

総資産

=現金・同等物

総資産

• 投下した株主資本に対してどの程度、企業が効率的に利益を得ているかを測る指標• 特に景気が後退する場面などの資本の効率性が注目され高まる• 2012年のアベノミクス相場以降、特に重視されてきた

• 株主に対する収益性を表すと同時に、負債部分も含んだ総資産の全体に対する収益性を見る指標

• ROAとROEはレバレッジでつながっており、レバレッジは自己資本比率と関係する指標であるため、自己資本比率が業種別に下から2割未満に入らないという条件で代替可能

• 将来の業績の成長予想を表す

• 近年、投資家が企業業績の行方に注目を高めたため、1997年付近から効果が高まった• 特に景気が順調に回復していく場面ではリビジョンが業績のモメンタムを的確に示すと期待

されて効果が高まる

• 買将来の業績の成長予想を表す

• 会社を運営するために集められたお金の中で、ある決まった時期に返さなければならないお金ではなく、返さなくてもよいお金(株主からの出資)がどの程度あるかを見る指標

• 髙ければ、高いほど良い物でもなく、業種別に下から2割未満に入らなければよい

• 株主還元の余力を見るための指標• 業種内で上から3割以内にあると良いとされる

高い方

高い方

高い方

高い方

高い方

高い方

高い方

企業の成長を測る

企業の財務安

定性を測る

出所欄参考図書の中では、業種ごとに差があるのかを比較している

指標 定義式 指標の特徴 魅力度大

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