21 ヒューマン・リレーションスキル - ストレス・マネジメントスキル 筑波大学大学院人間総合科学研究科教授 宗像 恒次 概要 クライエントをとりまく環境の一部である人間関係を、SAT 気質コーチング法を用いて調整し、環境認 知の改善を図り、対人関係のストレスマネジメントを行う。 1. 目的 職場、家庭、学校などのあらゆる生活の場の人間関係の悩みやストレスを「何とかしたい」という動機 がある場合に、人間関係の改善や対人ストレスの軽減を目的として用いる。 2. 効果 人間関係とは互いの心の欲求を充足する関係であり、互いに認め愛し合えると愉しく幸せな感情反応 が生まれるが、その反対になると不満や憎しみが生まれるという原則にもとづいて人間関係を尺度化し たものが人間関係尺度である(図1)。この尺度では、互いの期待が充足したとき、図1に示すように「顔 を合わせられる(+1)」「話していて愉しい(+2)」「一緒にいたい(+3)」と関係が良くなる。他方、期待 が充足し合えないと「会うと顔を背けたくなる(-1)」「話すと不快になる(-2)」「いなくなってほしい(- 3)」と、人間関係が不良になる。 そこで、気質チェックリスト(資料)で相手の DNA 気質を調べ、気質別期待リスト(資料)を活用し、相手 の DNA 気質に合った合理的な期待ができるようになることで、無理のないつきあい方を知ることができる。 さらに、自分の DNA 気質を理解し、とくに人間関係を維持する上で必要なセルフケア行動(巻末資料)を 実施することによって、ストレスを軽減する効果がある。 また、現実の相手の行動が変わらなくても、その行動への認知が変わる可能性が高まり、人間関係 の改善を図ることができる。例えば、粘着気質の「おしつけがましい」「お節介」等のネガティブに見られ がちな面を、「愛情深さの顕れ」や「面倒見の良さ」というポジティブな意味でも見ることができるようにな ることで、相手に優しくなれたり、大目に見たり、赦せたりするということである。これらによって、人間関 係における異質性を受け入れる基盤をつくることにもつながると考えられる。 3. 活用法 人間関係のストレス問題がある場合に、気質コーチング法の中でカウンセリングに先立って行うと良 い。「人は相手そのものをとらえることができず、全て自分の小宇宙の中でとらえている」ことや、「気質概 念を知ることで、対象者への予知期待を修正する」という方法の原理を理解し学習することによって、日 常の中でも、必要時にクライエント自身がヒューマンリレーションスキル・シート(資料)を用いて一人で行 うことができるようになる。 キーワード 人間関係、気質コーチング、人間関係尺度、気質別期待リスト 参考文献 宗像恒次・小森まり子・鈴木浄美・橋本佐由理・鈴木克則:「SAT 法を学ぶ」金子書房,2007 宗像恒次:「感情と行動の大法則」日総研出版,2008 ヒューマン・リレーションスキル 241