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2017.1.27 単純な手の裂創における創部感染発生のリスク

Feb 08, 2017

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Health & Medicine

syokiken
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単純な手の裂創における創部感染発生のリスク

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Background・手の外傷は ER で遭遇する疾患の中でとても common なものであり、米国においては全 ER 外傷受診の 8% を占める。しかし手の外傷は高頻度に遭遇する外傷でありながらも、いまだに単純な手の外傷処置が標準化されておらず、創部感染率及び創部感染の risk factor に関する文献も少ないのは現状である。

・また単純な手の裂創に対する予防的抗菌薬投与の必要性については consensus が得られていない。

・そこで今回の study の目的は ER での単純な手の裂創の創部感染発生率を調べることと創部感染の risk factor を同定すること。

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Method・本 study は 2010 年 7 月から 2011 年 7 月まで、アメリカの都市部にある ER (2カ所)で prospective study として行われた。

・ Inclusion criteria :単純な手の裂創を主訴に ER を受診する 13 歳以上の人。

・あらかじめ除外されたもの:免疫不全者( AIDS やケモ中)・著しく(異物、油などで)汚染された創・咬傷(動物やヒト)・挫滅創・受傷して 12 時間以上が経過している創。

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・受診した際に創部の部位・大きさ・形状・異物の有無・処置法・抗菌薬投与の有無はカルテに記載された。

・ Outcome measures: 参加者は ER での受診後 10 〜 14 日目にfollow up visit (かかりつけ医または ER )に来てもらい、その時に創部感染の有無を確認した。「創部感染」は受診した際に追加抗菌薬投与が必要とされたケース。

・また受診後 30 日目に電話による参加者自身が創部の cosmetic appearance を Visual analog scale にて評価をつけてもらった。

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Results・ 125 人が本 study に参加して、その内 112人は 2 回目の follow up ( 30 日目)まで参加した。受診時に 44 人( 35% )が予防的抗菌薬投与を受けた。 125 人中、創部感染は6 人( 4.8% )に認めらたが、予防的抗菌薬投与を受けた群( 3 人)と受けていない群( 2 人)では創部感染率の有意差を認めなかった。

・ cosmetic appearance に関しては、 VASに有意差を認め、創部非感染群のほうが創部感染群より満足度が高かった。また予防的抗菌薬投与においても有意差が認められ、非投与群のほうが、投与群よりも VAS が高かった。

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・また今回の study では予防的抗菌薬投与を受けた参加者( 44 人)と受けていない参加者( 81 人)の特徴について比較解析が行われた。予防的抗菌薬投与を受けた参加者は比較的高齢で( median age 40yo.vs 28yo. )汚染されている創であった( 6 人 vs 0 人)

・なお性別・創部の大きさ・形状・処置法及び糖尿病歴の有無においては有意差を認めなかった。

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Discussion・今回の study は ER での単純な手の裂創の創部感染発生率を調べることと創部感染のrisk factor を同定することが目的だった。

・以前に行われた study では手の裂創の創部感染発生率は 5% から 32% と幅が広く、これはそれぞれの design ・創部感染の定義基準・投与された抗菌薬・ follow up compliance などによると考えられている。今回の study も( 5% )その range に含まれている。

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・本 study では予防的抗菌薬投与を受けた参加者と受けていない参加者とに有意差を認めなったが、参加者数の多い RCT でないためこの結果のみからは抗菌薬投与の是非については言及できない。

・以前の文献によると年齢・糖尿病歴の有無・創部の大きさ・縫合糸の数、そして特に受傷時から処置までの経過時間が創部感染のrisk factor として挙げられていたが、今回は有意差を認めなかった。

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・ cosmetic appearance に関しては、創部感染群の VAS は創部非感染群より有意に低かったことは予想通りであったが、予防的抗菌薬投与を受けた群はそうでない群よりもVAS は低かった。これはそもそも予防的抗菌薬が必要と判断された創のほうが重症であったかもしれないという解釈。

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Limitations・ convenience sample であったため、医療従事者からの enrollment bias を否定できない。

・ prospective observational study ( RCTでない)であって、 sample size は小さかったため予防的抗菌薬投与の有効性について評価できなかった。同じ理由で創部感染のrisk factor をも正確に同定できなかった。

・結論として、単純な手の裂創の創部感染率は低く、創部感染が認められた場合のcosmetic appearance も比較的悪い。また予防的抗菌薬投与は case by case 。

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Take Home Message・以前に発表した「軽度の手の裂創におけるER での予防的抗菌薬投与の有効性についての RCT 」 study によると汚染創でない単純な手の外傷に対して予防的抗菌薬を投与しても、しなくても創部感染率に有意差を認めなかった。

・今回の study からも以前の study の結論を肯定して、創部感染リスクが低い症例に対して抗菌薬を投与する必要はない。

  「念のため」の抗菌薬投与を考えなお➡す。

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おまけ:形成外科処置の clinical pearls

手の外傷の診方:

・ほとんどの出血は圧迫によって止まる!

・まずは運動機能を評価して、腱断裂の有無をチェック)

・局麻の前に知覚異常の有無(指先のしびれなど)を確認する。

・よほど浅い傷でない限りは異物・骨折を評価するために XP を。

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おまけ:形成外科処置の clinical pearls

⇨腱・神経断裂 / 骨折は翌日形成受診で ok(緊急コールする必要はない)

⇨動物咬傷は局麻してからしっかり(生食100ml 以上)洗浄して、縫合処置を最低限にする。また抗生剤(オーグメンチンなど)を投与する。