EY IFRS Core Tools 2014 年 3 月 31 日に終了する 会計年度に関する IFRS による 決算上の留意点 (2014 年 2 月 28 日時点で公表されているすべての 基準書及び解釈指針書を含む) IFRS アップデート
EY IFRS Core Tools
2014 年 3 月 31 日に終了する 会計年度に関する IFRS による 決算上の留意点 (2014 年 2 月 28 日時点で公表されているすべての 基準書及び解釈指針書を含む)
IFRS アップデート
1 2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点
目次
はじめに .......................................................................................................................... 2
セクション 1:2014 年 2 月 28 日時点で公表されている新規又は改訂基準書及び解釈指針書 ...... 5
「政府からの借入金」(IFRS 第 1 号「国際財務報告基準の初度適用」の改訂) ...................................................7
「金融資産と金融負債の相殺」(IFRS 第 7 号「金融商品:開示」の改訂) ...........................................................7
IFRS 第 9 号「金融商品」 .........................................................................................................................8
IFRS 第 10 号「連結財務諸表」及び IAS 第 27 号「個別財務諸表」 .............................................................. 10
投資企業(IFRS 第 10 号、IFRS 第 12 号及び IAS 第 27 号の改訂) ........................................................... 11
IFRS 第 11 号「共同契約(ジョイント・アレンジメント)」及び IAS 第 28 号「関連会社及びジョイント・ベンチャーに対する投資」 ........................................................... 12
IFRS 第 12 号「他の事業体への関与の開示」 ........................................................................................... 13
IFRS 第 13 号「公正価値測定」............................................................................................................... 14
IFRS 第 14 号「規制繰延勘定」............................................................................................................... 14
「その他の包括利益項目の表示」(IAS 第 1 号「財務諸表の表示」の改訂) ..................................................... 15
IAS 第 19 号「従業員給付」の改訂 .......................................................................................................... 16
「確定給付制度:従業員拠出」(IAS 第 19 号「従業員給付」の改訂)............................................................... 17
「金融資産と金融負債の相殺」(IAS 第 32 号「金融商品:表示」の改訂) ......................................................... 17
「非金融資産の回収可能価額の開示」(IAS 第 36 号の改訂) ....................................................................... 18
「デリバティブのノベーション(更改)とヘッジ会計の継続」(IAS 第 39 号の改訂) .............................................. 18
IFRIC 第 20 号「露天掘り鉱山の生産フェーズにおける剥土費用」 ................................................................. 19
IFRIC 第 21 号「賦課金」 ....................................................................................................................... 19
国際財務報告基準の年次改善 ................................................................................................................ 20
セクション 2:解釈指針委員会がアジェンダとして取り上げなかった項目 .................................... 21
セクション 3:IASB により今後公表される予定の基準書等 ..................................................... 21
2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点 2
IFRS に準拠して財務諸表を作成している企業は、新たに
公表される基準書や解釈指針書に継続して対応していくこ
とが求められます。
IFRS の改訂は、IFRS の基本原則に関する重要な改訂か
ら年次改善プロセスに含まれるような比較的軽微な改訂ま
で多岐にわたり、結果として、財務諸表の表示、金融商品
や従業員給付の会計処理など、さまざまな会計分野に影
響を及ぼすことになります。
こうした改訂による影響は、会計の領域にとどまらず、たと
えば、多くの企業のシステムに影響を及ぼす可能性があり、
さらに、共同契約の設計や取引の仕組みなどのように、事
業上の意思決定に影響を及ぼすことも考えられます。
したがって、財務諸表の作成者は今後の動向を常に把握
しておく必要があります。
本書の目的 本書は、主として報告期間の末日が 3 月 31 日である企業
に適用される新規又は改訂基準書及び解釈指針書につい
て、その概要を解説しています。また本書は、各トピックに
関する詳細な分析や解説を提供するものではなく、これら
の改訂の主なポイントについて概説することを目的として
います。したがって、これらの改訂に関する対応を検討し、
決定するにあたっては、必ず基準書及び解釈指針書の本
文を参照する必要があります。
本書は、以下の 3 つのセクションから構成されています。
セクション 1 では、2014 年 2 月 28 日時点で国際会計基
準審議会(以下、IASB)及び IFRS 解釈指針委員会(以下、
解釈指針委員会)により公表されており、2014 年 3 月 31日以後終了する会計年度において初めて適用されること
になる新規又は改訂基準書及び解釈指針書について、そ
の概要を説明しています。経過措置が定められている場
合にはその内容を概説するとともに、それらの改訂が企業
の財務諸表にどのような影響を及ぼしうるかについても簡
単に触れています。当該セクションでは、新規又は改訂基
準書及び解釈指針書の番号順に解説を行っています。た
だし年次改善に関しては、すべてセクション 1 の最後で解
説しています。
さらに、セクション 1 の冒頭では、期末日が各月末であった
場合の、新規又は改訂基準書等の強制適用日についてま
とめた表を掲載しています。この表では、これらの基準書
及び解釈指針書は、発効日順に記載されています。ただし、
これらの基準書及び解釈指針書の多くは、早期適用が認
められています。
すでに公表されているが未だ適用されていない基準書又
は解釈指針書については、IAS 第 8 号に従い、これら改訂
の当初適用時に財務諸表に生じ得る影響を理解するのに
役立つように、既知又は合理的に見積可能な情報を開示
することが求められます。セクション 1 の冒頭の表は、この
開示規定の範囲に含まれる新規又は改訂基準書等を特
定するのに役立ちます。
セクション 2は、2013 年 3 月以降にIFRICアップデート 1に
掲載された、適用ガイダンスの提供について検討がなされ
たものの、アジェンダとして取り上げられなかった論点に関
する棄却通知(rejection notice)の要旨をまとめたもので
す。これらの棄却通知の中には、解釈指針委員会が、その
論点に関し既に適切なガイダンスが提供されているとして、
現行の基準書又は解釈指針書に言及しているものがあり
ます。これらの棄却通知は、IFRSを適用する上で参考にな
り、IAS第 8号第 12項に述べられている「その他の会計上
の専門的文献、及び一般に認められている業界実務慣行」
に該当します。
セクション 3 は、IASB 及び解釈指針委員会により公表が予定されている新規又は改訂基準書等を示した表です。上述のとおり、財務諸表の公表が承認される日より前にこれらの基準書等が公表された場合には、企業は公表されたものの未発効の基準書等に関し、IAS 第 8 号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」に従って開示を行う必要があります。
1 IFRIC アップデートは、IASB のウェブサイト
http://www.ifrs.org/Updates/IFRIC+Updates/IFRIC+Updates.htmで入手可能である。
はじめに
3 2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点
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2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点 4
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紹介しています。 これらの公表物は、EY のウェブサイト www.ey.com/ifrs (日本語の公表物は www.shinnihon.or.jp/ifrs)からダ
ウンロードすることができます。業種別モデル財務諸表和訳版は EY の担当者にお問いあわせください。
5 2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点
新規又は改訂基準書及び解釈指針書 New pronouncement
「その他の包括利益項目の表示」(IAS 第 1 号「財務諸表の表示」の改訂) IAS 1 Presentation of Items of Other Comprehensive Income — Amendments to IAS 1
「政府からの借入金」(IFRS 第 1 号「国際財務報告基準の初度適用」の改訂) IFRS 1 Government Loans — Amendments to IFRS 1
「金融資産と金融負債の相殺」(IFRS 第 7 号「金融商品:開示」の改訂) IFRS 7 Disclosures — Offsetting Financial Assets and Financial Liabilities — Amendments to IFRS 7
IFRS 第 10 号「連結財務諸表」及び IAS 第 27 号「個別財務諸表」 IFRS 10 Consolidated Financial Statements, IAS 27 Separate Financial Statements
IFRS 第 11 号「共同契約(ジョイント・アレンジメント)」及び IAS 第 28 号「関連会社及びジョイント・ベンチャーに対する投資」 IFRS 11 Joint Arrangements, IAS 28 Investments in Associates and Joint Ventures
IFRS 第 12 号「他の事業体への関与の開示」 IFRS 12 Disclosure of Interests in Other Entities
IFRS 第 13 号「公正価値測定」 IFRS 13 Fair Value Measurement
IAS 第 19 号「従業員給付」の改訂 IAS 19 Employee Benefits (Revised)
IFRIC 第 20 号「露天掘り鉱山の生産フェーズにおける剥土費用」(2011 年 10 月公表) IFRIC 20 Stripping Costs in the Production Phase of a Surface Mine
年次改善- IFRS 第 1 号「国際財務報告基準の初度適用」 - IFRS 第 1 号の再適用 AIP IFRS 1 First-time Adoption of International Financial Reporting Standards — Repeated application of IFRS 1
年次改善- IFRS 第 1 号「国際財務報告基準の初度適用」 - 借入費用 AIP IFRS 1 First-time Adoption of International Financial Reporting Standards — Borrowing costs
年次改善- IAS 第 1 号「財務諸表の表示」 - 比較情報に関する規定の明確化 AIP IAS 1 Presentation of Financial Statements — Clarification of requirements for comparative information
年次改善- IAS 第 16 号「有形固定資産」 - 保守器具(servicing equipment)の分類 AIP IAS 16 Property, Plant and Equipment — Classification of servicing equipment
年次改善- IAS 第 32 号「金融商品:表示」 - 資本性金融商品の保有者への分配に係る法人所得税の影響
AIP IAS 32 Financial Instruments: Presentation — Tax effect of distributions to holders of equity instruments
年次改善- IAS第34号「期中財務報告」 - 資産及び負債合計に係る期中財務報告及びセグメント情報 AIP IAS 34 Interim Financial Reporting — Interim financial reporting and segment information for total assets and liabilities
投資企業(IFRS 第 10 号、IFRS 第 12 号、及び IAS 第 27 号の改訂) IFRS 10, IFRS 12 and IAS 27 Investment Entities (Amendments)
「金融資産と金融負債の相殺」(IAS 第 32 号「金融商品:表示」の改訂) IAS 32 Offsetting Financial Assets and Financial Liabilities — Amendments to IAS 32
非金融資産の回収可能価額の開示(IAS 第 36 号「資産の減損」の改訂) IAS 36 Recoverable Amount Disclosures for Non-Financial Assets — Amendments to IAS 36
デリバティブのノベーション(更改)とヘッジ会計の継続(IAS 第 39 号「金融商品:認識及び測定」の改訂) IAS 39 Novation of Derivatives and Continuation of Hedge Accounting — Amendments to IAS 39
IFRIC 第 21 号「賦課金」 IFRIC 21 Levies
「確定給付制度:従業員拠出」(IAS 第 19 号「従業員給付」の改訂) IAS 19 Defined Benefit Plans: Employee Contributions — Amendments to IAS 19
年次改善- IFRS 第 2 号「株式報酬」 - 権利確定条件に関連する定義 AIP IFRS 2 Share-based Payment — Definitions of vesting conditions
年次改善- IFRS 第 3 号「企業結合」 - 企業結合における条件付対価の会計処理 AIP IFRS 3 Business Combinations — Accounting for contingent consideration in a business combination
年次改善- IFRS 第 8 号「事業セグメント」 - 事業セグメントの集約 AIP IFRS 8 Operating Segments — Aggregation of operating segments
年次改善- IFRS 第 8 号「事業セグメント」 - 報告セグメント資産の合計額から企業の総資産への調整表
AIP IFRS 8 Operating Segments — Reconciliation of the total of the reportable segments’ assets to the entity's assets
年次改善- IFRS 第 13 号「公正価値測定」 - 短期債権及び債務 AIP IFRS 13 Fair Value Measurement — Short-term receivables and payables
年次改善- IAS 第 16 号「有形固定資産」及び IAS 第 38 号「無形資産」 - 再評価モデル「減価償却累計額の比例的修正再表示」
AIP IAS 16 Property, Plant and Equipment and IAS 38 Intangible Assets — Revaluation method — proportionate restatement of accumulated depreciation/amortisation
年次改善- IAS 第 24 号「関連当事者についての開示」 - 経営幹部 AIP IAS 24 Related Party Disclosures — Key management personnel
年次改善- IFRS 第 1 号「国際財務報告基準の初度適用」 - 有効な IFRS の意味 AIP IFRS 1 First-time Adoption of International Financial Reporting Standards — Meaning of ‘effective IFRSs’
年次改善- IFRS 第 3 号「企業結合」 - ジョイント・ベンチャーに係る適用除外規定の範囲 AIP IFRS 3 Business Combinations — Scope exceptions for joint ventures
年次改善- IFRS 第 13 号「公正価値測定」 - 第 52 項の範囲(ポートフォリオに係る例外規定の範囲) AIP IFRS 13 Fair Value Measurement — Scope of paragraph 52 (portfolio exception)
年次改善- IAS 第 40 号「投資不動産」 - IFRS 第 3 号と IAS 第 40 号の相互関係の明確化(付随的サービス)
AIP IAS 40 Investment Property — Interrelationship between IFRS 3 and IAS 40 (ancillary services)
IFRS 第 14 号「規制繰延勘定」 IFRS 14 Regulatory Deferral Accounts
IFRS 第 9 号「金融商品」 IFRS 9 Financial Instruments
セクション 1:2014 年 2 月 28 日時点で公表されている新規又は改訂基準書及び解釈指針書
2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点 6
年次改善 年次の IFRS 改善プロセス 当期から適用される新たな基準書又は解釈指針書 * 以下の日付以降に始まる会計期間に適用される 翌期から適用される新たな基準書又は解釈指針書 前期から適用されている基準書又は解釈指針書 翌々期以降に適用される新たな基準書又は解釈指針書
2014 2015 発効日* 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 ページ
2012 年 7 月 1 日 15
2013 年 1 月 1 日 7
2013 年 1 月 1 日 7
2013 年 1 月 1 日 10
2013 年 1 月 1 日 12
2013 年 1 月 1 日 13
2013 年 1 月 1 日 14
2013 年 1 月 1 日 16
2013 年 1 月 1 日 19
2013 年 1 月 1 日 20
2013 年 1 月 1 日 20
2013 年 1 月 1 日 20
2013 年 1 月 1 日 20
2013 年 1 月 1 日 21
2013 年 1 月 1 日 21
2014 年 1 月 1 日 11
2014 年 1 月 1 日 17
2014 年 1 月 1 日 18
2014 年 1 月 1 日 18
2014 年 1 月 1 日 19
2014 年 7 月 1 日 17
2014 年 7 月 1 日 21
2014 年 7 月 1 日 21
2014 年 7 月 1 日 22
2014 年 7 月 1 日 22
2014 年 7 月 1 日 22
2014 年 7 月 1 日 22
2014 年 7 月 1 日 22
2014 年 7 月 1 日 23
2014 年 7 月 1 日 23
2014 年 7 月 1 日 23
2014 年 7 月 1 日 23
2016 年 1 月 1 日 14
2018 年 1 月 1 日 8
7 2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点
「政府からの借入金」(IFRS第1号「国際財務
報告基準の初度適用」の改訂)
2013 年 1 月 1 日以後開始する事業年度から適用
主な規定 IASB は、IFRS 第 9 号「金融商品」(場合によっては IAS 第
39 号「金融商品:認識及び測定」)ならびに IAS 第 20 号
「政府補助金の会計処理及び政府援助の開示」の遡及適
用に関する例外規定を付け加えた。
これらの改訂により、初度適用企業は、IFRS 移行日時点
で存在する政府からの借入金に対して IAS第20号の規定
を将来に向かって適用しなければならない。しかし、企業
が借入金の当初の会計処理の時点で必要な情報を入手し
ている場合には、IFRS 第 9 号(場合によっては IAS 第 39号)及び IAS 第 20 号の規定を遡及適用することを選択で
きる。
この例外規定により、初度適用企業は、市場金利より低利
の政府からの借入金を遡及的に測定する必要がなくなる。
初度適用企業は、IFRS 第 9 号(場合によっては IAS 第 39号)及び IAS 第 20 号を遡及適用しない結果、市場より低
利の政府からの借入金から生じる便益を政府補助金とし
て認識する必要がなくなる。
経過措置 本改訂は早期適用が認められるが、その場合、その旨を
開示しなければならない。
影響 本改訂により、初度適用企業は、既存の IFRS 財務諸表の
作成者が IAS 第 20 号(2008 年 5 月改訂)を最初に適用
した時と同様の救済措置を受けることができるため、IFRSへの移行コストを低減させることができる。
「金融資産と金融負債の相殺」(IFRS第7号「金融商品:開示」の改訂)
2013 年 1 月 1 日以後開始する会計期間(期中会計期間
を含む)から適用
主な規定 この改訂により、企業は、相殺権(rights of set-off)及び
関連する契約(たとえば担保契約)に関する情報を開示し
なければならない。当該開示は、財務諸表の利用者が、相
殺契約が企業の財政状態に与える影響を評価する際に有
用となる情報を提供する。新たな開示は、IAS 第 32 号「金
融商品:開示」に従い相殺される認識済みのすべての金融
商品について求められる。また、IAS第32号に従い相殺さ
れたかどうかに関係なく、強制力のあるマスター・ネッティ
ング契約又は「類似の契約」の対象となる認識済みの金融
商品にも適用される。
経過措置 本改訂は、会計方針の変更に関する IAS 第 8 号の規定に
従って遡及適用される。企業が IAS 第 32 号「金融資産と
金融負債の相殺-IAS 第 32 号の改訂」を早期適用するこ
とを選択する場合は、IFRS第7号「金融資産と金融負債の
相殺-IFRS 第 7 号の改訂」で求められる開示を行う必要
がある。
影響 新たな開示を作成するために必要なデータを収集するた
めに、企業(特に銀行)は与信システムを会計システムに
連動させるなど、経営管理情報システムや内部統制を変
更する必要が生じる可能性がある。
EY のその他の公表物 本改訂に関する詳細は、Applying IFRS: Offsetting financial instruments: clarifying the amendments、及び IFRS Developments 22 「金融商品の相殺」を参照され
たい。
2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意 8
IFRS第9号「金融商品」
金融商品プロジェクトのフェーズ 1 は、金融資産に関して
新たな分類及び測定方法を定めることである。IFRS 第 9号が2009年11月に初めて公表された後、金融負債の分
類及び測定、及びヘッジ会計の規定を含めるため、それぞ
れ 2010 年 10 月と 2013 年 11 月に改訂が行われている。
IFRS 第 9号(2013 年)に関する強制適用日はいまだ定め
られていないが、早期適用は認められている。強制適用日
は、IASB が金融商品プロジェクトの減損フェーズを完了し
た時点で決定される予定である。
IASB は 2014 年 2 月の審議会で、IFRS 第 9 号の強制適
用日を 2018 年 1 月 1 日以後に開始する事業年度とする
ことを暫定的に決定している。
主な規定
金融資産の分類及び測定 ▸ すべての金融資産は、当初認識時に公正価値で測定され
る。負債性金融資産は、以下の両方の要件を満たす場
合には(公正価値オプション(FVO)を使用しない場合)、
償却原価で事後測定される
(i) 金融資産を、契約上のキャッシュ・フローを回収する
ことを目的とするビジネス・モデルに従って保有して
いる
(ii) 金融資産は契約条件に基づき、特定日に元本及び
元本残高に対する金利の支払いのみを表すキャッ
シュ・フローを生み出す
▸ 上記以外のすべての負債性金融資産は、公正価値で
事後測定される
▸ すべての資本性金融資産は、その他の包括利益(以下、
OCI)又は純損益を通じて公正価値で測定される。トレ
ーディング目的ではない資本性金融資産については、
金融資産ごとに「OCI を通じて公正価値で測定」するこ
とを選択できるが、事後的にその選択を取り消すことは
認められない。一方で、トレーディング目的保有する資
本性金融資産は、純損益を通じて公正価値で測定する
ことが求められる
金融負債の分類及び測定 ▸ FVO を使用する負債に関し、信用リスクの変動に起因
する負債の公正価値の変動額は、OCI に表示すること
になる。ただし、当該変動額を OCI に表示することによ
り会計上のミスマッチが生じる又は増幅される場合は
除かれる。それ以外の公正価値の変動額は純損益に
表示する
▸ 金融負債の分類及び測定に関する IAS第39号の他の
規定は、組込デリバティブの区分処理規定や FVO を使
用する際の要件なども含め、IFRS第9号に引き継がれ
ている。
ヘッジ会計 ▸ ヘッジの有効性判定は将来に向かってのみ行う。ヘジ
の複雑性によっては、定性的な有効性判定も可能であ
る
▸ 金融商品又は非金融商品のリスク要素は、それを個別
に識別でき、かつ信頼性をもって測定することができる
場合には、ヘッジ対象に指定することができる
▸ オプションの時間価値、フォワード契約のフォワード要
素及び外国為替ベーシス・スプレッドは、金融商品のヘ
ッジ手段の指定から除外し、ヘッジコストとして会計処
理することができる
▸ レイヤー(階層)指定や純額ポジションの指定など、
より多くの項目グループをヘッジ対象に指定すること
ができる
9 2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点
経過措置 自己の信用リスクに起因する利得及び損失の会計処理に
ついては、IFRS 第 9 号(2013 年)のその他の規定を同時
に適用することなく、早期適用を選択することができる。こ
の会計処理によれば、純損益を通じて公正価値で測定す
るように指定された非デリバティブ金融負債に係る自己の
信用リスクに起因する公正価値の変動は、OCI に表示する
ことが求められる。
現行のIFRS第 9 号(2009 年及び 2010 年)は、IFRS第 9号のすべてのフェーズが公表されるまでは、早期適用可能
である 2。
影響 完成版の IFRS 第 9 号の適用は、企業の現行の会計シス
テム及びプロセスに重大な変更をもたらす可能性が高い。
企業が新たな基準書の早期適用を検討するにあたっては、
それによりもたらされる数多くの便益や課題について検討
することが求められ、新基準への移行に際し、慎重な計画
が必要である。
2 IASB は、2014 年 2 月の会議で、予想信用損失に基づく減損規定、な
らびに分類及び測定規定への部分的改訂に関する審議を完了した。今
後、IFRS 第 9 号の早期適用は、完成版の IFRS 第 9 号(分類・測定、
減損及びヘッジ会計の規定)をすべて適用する場合に限り、認められる
ことになる。つまり、IFRS 第 9 号のその他の規定を同時に適用すること
なく、自己の信用リスクに起因する利得及び損失の会計処理のみを選
択適用できる規定は廃止される。企業による IFRS 初度適用日が完成
版の IFRS 第 9 号の公表日から 6 カ月経過後になる場合には、旧バー
ジョンの IFRS 第 9 号の早期適用は認められなくなる。
EY のその他の公表物 新たな基準書に関する詳細については、以下の刊行物を参
照されたい。
IFRS Developments 74 「IASB による予想信用損失モデルの最終審議が完了。発効日は 2018 年となる見込み」
Applying IFRS – Hedge accounting under IFRS 9
IFRS Developments 68 「新たなヘッジ会計基準の完成~IFRS 第 9 号(2013 年)の公表」
IFRS第9号フェーズ1 「金融商品の分類及び測定」の実務適用における論点
IFRS Supplement 89: IASB completes Phase 1 of IFRS 9: Financial Instruments - Classification and Measurements
IFRS Developments 12 「IFRS第9号の強制適用日を2015年に変更することを暫定決定」
IFRS Outlook 2009 年 11 月増刊号「IASB による IFRS 第 9号の公表~IAS 第 39 号の抜本改訂プロジェクト・フェーズ 1の最終化」
2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意 10
IFRS第10号「連結財務諸表」及び
IAS第27号「個別財務諸表」
2013 年 1 月 1 日以後開始する事業年度から適用
主な規定 IFRS 第 10 号は、IAS 第 27 号に定められる規定のうち、
連結財務諸表の会計処理を取り扱っている規定に置き換
わる基準書である。また、IFRS 第 10 号は、SIC 第 12 号
「連結―特別目的事業体」が取り扱っていた論点もカバー
しているため、当該新基準書の公表に伴い、SIC 第 12 号
は廃止される。改訂後の IAS 第 27号は、個別財務諸表に
おける子会社、ジョイント・ベンチャー及び関連会社に対す
る投資の会計処理のみを取り扱うこととなる。
IFRS 第 10 号では、連結方法などの連結手続に関する規
定は変更されておらず、支配の定義を改訂することにより、
ある会社が連結対象となるか否かの判断を変更するにと
どまっている。支配は、投資企業が以下のすべてを備えて
いる場合に存在する。
被投資企業に対するパワーを有している(IFRS 第 10 号で
は、投資企業が関連する活動を左右する現在の能力を有
している場合と定義されている)。
被投資企業への関与から生じる変動リターンにさらされて
いる、又は変動リターンに対する権利を有している。
投資企業のリターンの金額に影響を及ぼすべく、被投資企
業に対するパワーを行使できる。
また IFRS 第 10 号では、この新たな支配の定義の適用に
関し、以下の点をはじめとするさまざまな明瞭化が図られ
ている。
投資企業とは、被投資企業を支配している可能性のある
当事者である。そのような当事者が投資企業とみなされる
ためには、必ずしも持分投資を行っている必要はない。
投資企業が被投資企業の議決権のうち、過半数に満たな
い部分しか保有していない場合であっても、被投資企業を
支配している場合がある(「事実上の支配」と呼ばれること
がある)。
リスク及び経済価値へのエクスポージャーは、支配の指標
であるが、それ自体は支配を構成しない。
意思決定権が委譲されている、もしくは他の当事者の利益の
ために保有されている場合、支配を有しているか否かを決定
するために、意思決定者が本人又は代理人のどちらに該当
するかを判断しなければならない。
支配が一時的なものであったとしても、支配がなくなるまで
連結することが求められる。
経過措置 IFRS 第10号は遡及して適用されるが、一部例外規定が設
けられている。企業は、適用開始日(すなわち、IFRS 第 10号が初めて適用される年次報告期間の期首)に支配が存
在するかどうかを評価する必要がある。IFRS第10号と IAS第 27 号/SIC 第 12 号の間で支配の評価が同じであれば、
遡及適用は求められない。しかし、2 つの基準書での評価
が異なる場合は、遡及修正をしなければならない。複数の
比較期間を表示する場合は、1期分のみを修正再表示す
ればよいという追加的な免除規定が設けられている。
本基準書の早期適用は認められているが、その場合は
IFRS 第 11 号「共同契約(ジョイント・アレンジメント)」、
IFRS 第 12 号「他の事業体への関与の開示」、IAS 第 27号(2011 年改訂)及び IAS 第 28 号(2011 年改訂)を同
時に適用しなければならない。
影響 IFRS 第 10 号では、より幅広い支配の定義が新たに定め
られている。そのため、連結グループに変更が生じる可能
性がある(すなわち、現行の IFRSの下で連結されている企
業の数よりも多く又は少なくなる可能性がある)。
支配の有無を判断するためには、被投資企業の目的及び
事業内容、変動リターンに対する投資企業の権利及びエク
スポージャー、ならびに他の投資企業が保有する権利及
びリターンを包括的に検討しなければならない。そのため、
現場担当者や弁護士など会計以外の部門からのインプッ
トや、社外の情報が必要になる場合がある。また、事実及
び状況に関し、相当な判断が求められる。
EY のその他の公表物 この新たな基準書に関する詳細は、以下の刊行物を参照
されたい。
IFRS Developments Issue 35: 「経過措置ガイダンス:IFRS 第 10 号、第 11 号及び第 12 号の改訂」
Applying IFRS 「IFRS 第 10 号適用時の課題」
IFRS Practical Matters: What do the new consolidation, joint arrangements and disclosures accounting standards mean to you?
IFRS Developments 1 「IASB が 3 つの新基準書を公表 連結財務諸表、共同契約(ジョイント・アレンジメント)、及び
他の事業体に対する持分の開示」
11 2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点
投資企業(IFRS第10号、IFRS第12号及び
IAS第27号の改訂)
2014 年 1 月 1 日以降開始事業年度より適用
主な規定 投資企業に関する改訂は、投資企業の定義をみたす報
告企業が保有する子会社、ジョイント・ベンチャー及び関
連会社に対する投資に適用される。
主な改訂点は以下のとおりである。
▶ 「投資企業」は IFRS 第 10 号に定義される
▶ 投資企業に該当するためには、定義の 3 要件を満た
すと共に、4 つの典型的な特徴を有しているかどうか
を考慮しなければならない
▶ 企業は、投資企業に該当するかどうかを評価する際、
その目的や設計を含めすべての事実と状況を考慮し
なければならない
▶ 投資企業は、IFRS 第 9 号(適切であれば IAS 第 39号)に従い、子会社、ジョイント・ベンチャー及び関連会
社に対する投資を、純損益を通じて公正価値で測定す
る。ただし、投資企業の投資活動に関連するサービス
のみを提供する子会社、ジョイント・ベンチャー及び関
連会社は、連結対象とする(子会社に対する投資の場
合)か、持分法で会計処理(関連会社又はジョイント・
ベンチャーに対する投資の場合)しなければならない
▶ 投資企業は、支配している他の企業に対する投資を
公正価値で測定しなければならない
▶ 投資企業ではない企業が投資企業の親会社である場
合、子会社である当該投資企業が自らの投資対象に
適用している公正価値測定の会計処理を、連結財務
諸表に引き継ぐことは認められない
投資企業に該当しないベンチャー・キャピタル、ミューチュ
アル・ファンド、ユニット・トラスト等については、従来通り、
関連会社及びジョイント・ベンチャーに対する投資を純損
益を通じて公正価値で測定する IAS 第 28 号に規定され
る公正価値オプションが維持される
経過措置 改訂は遡及的に適用しなければならないが、一部免除規
定が定められている。
早期適用が認められ、その場合、その旨を開示しなけれ
ばならない。
影響 投資企業は、IFRS 上の新しい概念である。現在、支配して
いる投資先を連結対象とすることが要求されている投資企
業にとっては、今回の改訂は重大な変更を意味する。企業
は投資企業の定義をみたすかどうかを評価するため、事実
及び状況に関して重要な判断が必要になる可能性がある。
EY のその他の公表物 IFRS Developments Issue 44: 「投資企業 – 連結に関する例外規定の公表」を参照されたい。
2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意 12
IFRS第11号「共同契約(ジョイント・アレンジメン
ト)」及びIAS第28号「関連会社及びジョイント・
ベンチャーに対する投資」
2013 年 1 月 1 日以後開始する事業年度から適用
主な規定 IFRS 第 11 号は、現行の IAS 第 31 号「ジョイント・ベンチ
ャーに対する持分」及び SIC 第 13 号「被共同支配企業―共同支配投資企業による非貨幣性資産の拠出」に置き換
わる基準書である。IFRS 第 11 号において共同支配は、
「取決めに対する契約上合意された支配の共有をいい、
関連する活動の決定に際して支配を共有するすべての当
事者の一致した合意を必要とする場合にのみ存在する」
とされている。「共同支配」の概念に含まれる「支配」の定
義は、IFRS 第 10 号の「支配」の定義を参照している。
IAS第31号では共同契約を3つに分類していたが、IFRS第 11 号では以下の 2 つに分類している。
共同営業―共同支配を有する当事者が、取決めに係る資
産に対する権利及び負債に対する義務を有する取決め。共
同営業は、資産、負債、収益及び費用に対する各当事者の
持分、及び/又は(もしあれば)共同支配の資産、負債、収
益及び費用に対する持分相当額を表示して会計処理する。
ジョイント・ベンチャー―共同支配を有する企業が、取決
めに係る純資産に対する権利を有する取決め。ジョイン
ト・ベンチャーは、持分法を用いて会計処理される。(新た
に定義された)ジョイント・ベンチャーを比例連結により会
計処理する選択肢は廃止された。
IFRS 第 11 号では、共同契約の法的形式は共同契約を
共同営業又はジョイント・ベンチャーのいずれに分類する
かを決定する際に考慮すべき唯一の要因ではない。これ
は IAS 第31号からの変更点である。IFRS 第11号では、
当事者は、独立の事業体が存在するか否か、存在するの
であれば独立の事業体の法的形態、契約条件、その他の
事実及び状況を考慮することが求められる。
IAS 第 28 号は改訂され、ジョイント・ベンチャーに対する
投資に持分法が適用されることとなっている。
経過措置 IFRS 第 11 号は遡及して適用されるが、一部例外規定が
定められている。IFRS第10号と同様に、比較対象期間と
して 2 期以上開示している場合には、直近の比較期間の
みを修正すればよい。
IFRS 第 11 号の早期適用は認められているが、その場合
は IFRS 第 10 号、IFRS 第 12 号、IAS 第 27 号(2011 年
改訂)及び IAS 第 28号(2011 年改訂)も同時に適用しな
ければならない。
影響 被共同支配企業に対する持分を比例連結を用いて会計
処理していた企業にとって、IFRS 第 11 号の下で被共同
支配企業がジョイント・ベンチャーに分類される場合、当該
新基準への移行により重大な変更がもたらされることにな
る。一方、被共同支配企業であると考えられていた取決
めが、IFRS 第 11 号に基づき共同営業だとみなされる場
合、当該取決めが IAS 第 31 号において持分法で会計処
理されていたのか、または比例連結を用いて会計処理さ
れていたのかに係わらず、企業の会計処理に影響が及
ぶことになる。
上述の通り、共同支配における「支配」の定義は IFRS 第
10 号の新しい概念を参照しているため、IFRS 第 11 号の
下では何が共同契約とみなされるかが変更になる可能性
がある。共同支配が存在するか否かを評価し、取決めの
分類を決定するにあたり、事実及び状況に関する重要な
判断が必要になる可能性がある。
EY のその他の公表物 この新たな基準書に関する詳細は、以下の刊行物を参照
されたい。
IFRS Developments Issue 35: 「経過措置ガイダンス:IFRS 第 10 号、第 11 号及び第 12 号の改訂」
Applying IFRS 「IFRS 第 11 号適用時の課題」
IFRS Practical Matters: What do the new consolidation, joint arrangements and disclosures accounting standards mean to you? (June 2011) EYG no. AU0853.
IFRS Developments 1 「IASB が 3 つの新基準書を公表 連結財務諸表、共同契約(ジョイント・アレンジメント)、及
び他の事業体に対する持分の開示」
13 2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点
IFRS第12号「他の事業体への関与の開示」
2013 年 1 月 1 日以後開始する事業年度から適用
主な規定 IFRS 第 12 号は、子会社、共同契約、関連会社及び/又は
ストラクチャード・エンティティに対する持分を有する企業に
適用される。IFRS 第 12 号の開示規定の多くは、従来から
IAS 第 27 号、IAS 第 31 号及び IAS 第 28 号に規定され
ていたものであるが、新たな開示規定も追加されている。
新たな開示規定の目的は、財務諸表の利用者が以下につ
いて理解できるようにすることである。
▸ 他の企業に対する持分が財政状態、財務業績及びキ
ャッシュ・フローに及ぼす影響
▸ 他の企業に対する持分の性質及びそれに関連して生じ
るリスク
さらに、IFRS 第 12 号では、下記に関する定性的及び定量
的開示も求められている。
▸ 重要な非支配持分が存在する各子会社についての要
約財務情報
▸ 支配、共同支配及び重要な影響力、ならびに該当する
場合には共同契約の種類(すなわち、共同営業か又は
ジョイント・ベンチャーか)を決定するにあたり経営者が
行った重要な判断
▸ 個別に重要性があるジョイント・ベンチャー及び関連会
社に関する要約財務情報
▸ 連結対象外のストラクチャード・エンティティに対する持
分に関連して生じるリスクの性質、及びそれらのリスク
の変動
経過措置 IFRS 第 12 号は、会計方針の変更に関する IAS 第 8 号の
規定に従って遡及適用される。ただし、以下の免除規定が
定められている。
• IFRS第12号の開示規定は、当期、及び直近の比較期
間のみに適用される
• 連結対象外のストラクチャード・エンティティに関する比
較情報の開示は求められていない
企業は、IFRS 第 10 号、IFRS 第 11 号、IAS 第 27 号
(2011 年改訂)及び IAS 第 28 号(2011 年改訂)を適用
する前に IFRS 第 12 号を早期適用することができる。また、
企業は、IFRS 第 12 号の規定のすべてを適用しない場合
でも、一部の情報のみを発効日より前に任意で開示するこ
とが推奨されている。
影響 新たな開示規定により、財務諸表利用者は財務上の影響
を判断する際に、経営者が連結に関して行った判断にとら
われることなく、自身の分析に基づいた評価を行うことがで
きるようになる。追加の開示事項を作成するための情報を
収集するにあたり、手続の追加やシステムの変更が必要
になる場合がある。
EY のその他の公表物 この新たな基準書に関する詳細は、以下の刊行物を参照
されたい。
Applying IFRS 「IFRS 第 12 号-非連結のストラクチャー
ド・エンティティへの関与に関する開示例」
IFRS Developments Issue 35: 「経過措置ガイダンス:IFRS 第 10 号、第 11 号及び第 12 号の改訂」
IFRS Practical Matters: What do the new consolidation, joint arrangements and disclosures accounting standards mean to you?
IFRS Developments 1 「IASB が 3 つの新基準書を公表 連結財務諸表、共同契約(ジョイント・アレンジメント)、及び他の事業体に対する持分の開示」
2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点 14
IFRS第13号「公正価値測定」
2013 年 1 月 1 日以後開始する事業年度から適用
主な規定 IFRS第13号は、どのような場合に公正価値で測定するか
に影響を及ぼすものではなく、IFRS が公正価値測定を要
求又は容認する場合に、どのように公正価値を測定すべ
きかを定めたものである。
IFRS 第13号において公正価値は、「測定日における市場
参加者間の秩序立った取引において、資産の売却により
受領する、又は負債の移転により支払う価格(すなわち、
出口価格)」と定義されている。IFRS 第 2 号「株式報酬」と
IAS 第 17 号「リース」で使われている「公正価値」は、IFRS第 13 号の適用範囲から除外されている。
IFRS 第 13 号では、以下をはじめとする多くの領域に関し
明瞭化が行われた。
「最有効使用」及び「評価の前提」の概念は、非金融資産
及び負債についてのみ適用される
▸ 測定対象となる項目の会計単位が他の IFRS から明確
ではない状況において、市場参加者は、価値を最大に
する方法で取引を行うことが前提とされる
▸ 市場の活動が低下した場合の公正価値測定方法に関
する説明
また、公正価値を測定する際に用いた評価技法及びイン
プットと、公正価値測定が純損益に及ぼす影響を利用者
が理解する上で役立つように、公正価値測定に関連して
新たな開示が求められる。
経過措置 IFRS 第 13号は将来に向かって適用される(これは会計上
の見積りの変更と同様である)。早期適用は認められるが、
その場合はその旨を開示しなければならない。
影響 最有効使用及び主要な市場に関する規定により、企業は、公正価値を算定するプロセス及び手続を再評価し、適切な専門知識を有しているか否かを評価しなければならない可能性がある。 EY のその他の公表物 この新たな基準書に関する詳細は、IFRS Developments 2 「公正価値測定に係るコンバージェンスの達成(IFRS 第13 号の公表)」、及び Applying IFRS: IFRS 13 Fair Value Measurement を参照されたい。
IFRS第14号「規制繰延勘定」
2016 年 1 月 1 日以後開始する事業年度から適用
主な規定 IFRS 第 14 号によると、料金規制の対象となる企業は、
IFRS の初度適用に際して、規制繰延勘定残高に関する従
前の会計基準の大部分を引き継ぐことができる。したがっ
て、既に IFRS による財務報告を行っている企業は、IFRS第 14 号を適用することはできない。さらに従前の会計基
準によると、料金規制資産や料金規制負債の認識を認め
られていなかった企業や、従前の会計基準に従ってそれら
を認識する方針を採用していなかった企業は、IFRS の初
度適用時に規制繰延勘定を認識することはできない。
IFRS 第 14 号を適用する企業は、規制繰延勘定残高を財
政状態計算書において個別の表示科目とし、当該勘定残
高の増減額を純損益及びその他の包括利益計算書にお
いて個別の表示科目とする。
IFRS 第 14 号によると、料金規制の内容、それに関連して
生じるリスク、料金規制が企業の財務諸表に及ぼす影響
を開示することが求められる。
経過措置 IFRS 第 14 号は遡及適用される。また、早期適用も認めら
れるが、その場合にはその旨を開示する。
影響 IFRS 第 14 号により、IFRS 初度適用企業は、IASB が料金
規制資産と料金規制負債に関する会計処理の包括的プロ
ジェクトを完了するまでは、当該資産と負債の認識を中止
する必要はなくなる。包括的な料金規制事業プロジェクト
は、IASB のアジェンダとされている。
EY のその他の公表物 本改訂に関する詳細は、IFRS Developments 72 「IASBが規制繰延勘定に関する過渡的基準として IFRS 第 14 号を公表」 を参照されたい。
15 2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点
「その他の包括利益項目の表示」(IAS第1号「財務諸表の表示」の改訂)
2012 年 7 月 1 日以後開始する事業年度から適用
主な規定 IAS 第 1 号の改訂により、OCI で表示される項目のグルー
ピングに関する規定が導入される。すなわち、将来のある
時点で(たとえば、認識が中止されたとき又は決済されたと
きに)、純損益に組替調整(リサイクル)される項目を、組替
調整されない項目(たとえば、IAS 第 16 号「有形固定資産」
と IAS 第 38 号「無形資産」の再評価モデルを適用した結
果認識される再評価剰余金の変動額)と区分して表示しな
ければならない。
この改訂により、OCI として認識されている項目の性質が
変更されるわけではなく、またこれらの項目が将来純損益
に組替調整されるかどうかを変更するものでもない。
経過措置 本改訂は、会計方針の変更に関する IAS 第 8 号「会計方
針、会計上の見積りの変更及び誤謬」の規定に従って遡
及適用される。
影響 OCI の表示の変更は、財務諸表全体という観点からは比
較的軽微であるといえるが、財務諸表利用者にとっては、
この変更により OCI 項目が将来の純損益に与える潜在的
影響をより容易に理解することが可能となる。
EY のその他の公表物 本改訂に関する詳細は、IFRS Developments 7 「その他の包括利益の表示に関する改訂(IAS 第 1 号の改訂)」 を参照されたい。
2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点 16
IAS第19号「従業員給付」の改訂
2013 年 1 月 1 日以後開始する事業年度から適用
主な規定 本改訂は、根本的な変更から、単純な明瞭化や文言の修
正に至るまで多岐にわたるものである。重要な改訂は次の
とおりである。
▸ 確定給付制度に関し、数理計算上の差異を遅延認識
すること(すなわち、回廊アプローチ)は認められず、発
生時に OCI で認識される。純損益に計上される金額は、
当期勤務費用及び過去勤務費用、清算時の利得又は
損失、純利息収益(費用)に限定される。それ以外のす
べての正味確定給付資産(負債)の変動は、OCI で認
識され、純損益にリサイクリングされることはない
▸ 制度資産の期待運用収益はもはや純損益に認識され
ない。期待運用収益は純損益に計上される利息収益に
置き換えられ、これは退職給付債務の測定に使用され
る割引率を用いて計算される
▸ 確定給付制度に関する開示目的が新基準書では明確
に定められるとともに、新たな開示規定が設けられ、従
前の開示規定が変更されている。新たな開示には、重
要な数理計算上の仮定が合理的に起こりうる範囲で変
動した場合の、確定給付制度債務の定量的感応度分
析が含まれる
▸ 解雇給付は、解雇の申し出が撤回できなくなった時点、
又は関連するリストラ費用が IAS 第 37 号「引当金、偶
発負債及び偶発資産」に基づき認識された時点のいず
れか早い時点で認識されることになる
▸ 従業員給付の長短分類は、従業員の権利発生時期で
はなく、決済が予想される時期に基づいて行われる
経過措置 改訂後の基準は、IAS 第 8 号「会計方針、会計上の見積り
の変更及び誤謬」に従い遡及適用される。
ただし、IAS 第 19 号の適用対象外である資産(たとえば、
棚卸資産や有形固定資産)に関し、改訂後基準の当初適
用日よりも前にその帳簿価額に含められていた従業員給
付費用について(基準改訂による)調整は不要であり、ま
た 2014 年 1 月 1 日よりも前に開始する事業年度の財務
諸表では、その比較期間について確定給付制度債務の感
応度分析に関する注記は不要である。本改訂の早期適用
は認められるが、その場合、その旨を開示しなければなら
ない。
影響 これらの変更は、利得及び損失を純損益の外で報告し、そ
の後リサイクルしない会計処理を規定する新基準開発へ
の道筋をつけたことになる。したがって、数理計算上の差
異が純損益に含められることはなくなる。
EY のその他の公表物 本改訂に関する詳細は、IFRS Developments 6 「従業員給付に関する重要な改訂(IAS第19号の改訂)」 を参照さ
れたい。
17 2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点
「確定給付制度:従業員拠出」(IAS第19号「従業員給付」の改訂)
2014 年 7 月 1 日以後開始する事業年度から適用
主な規定 IAS 第 19 号では、確定給付制度を会計処理する際、従業
員又は第三者による拠出の検討が求められる。そのような
拠出のうち勤務に関連するものは、負の給付として勤務期
間に帰属させる必要がある。
今回の改訂により、その拠出金額が勤務年数とは関係なく
決定される場合は、複数の勤務期間に帰属させず、勤務
が提供された期の勤務費用の減額として認識できることが
明確化された。このような拠出の例として、従業員給与に
対する固定割合による拠出、勤務期間を通じた固定額の
拠出、従業員の年齢に応じて決まる拠出が挙げられる。
経過措置 本改訂は、IAS 第 8 号「会計方針、会計上の見積りの変
更及び誤謬」に従って遡及適用される。本改訂の早期適
用は認められるが、その場合、その旨を開示しなければ
ならない。
影響 本改訂は、一定の要件を満たす従業員又は第三者からの
拠出の会計処理について、実務上の簡便法を定めている。
「金融資産と金融負債の相殺」(IAS第32号「金融商品:表示」の改訂)
2014 年 1 月 1 日以後開始する事業年度から適用
主な規定 IAS 第 32 号のこの改訂では、「現時点において法的強制
力のある相殺権を有している」の意味の明瞭化が図られて
いる。
また、本改訂では、同時にではないグロスでの決済が行わ
れる決済システム(中央清算機関など)に対する、IAS 第
32 号の相殺要件の適用についても明確にされている。
本改訂により、相殺権は、通常の事業の過程において法
的な強制力があるだけでなく、報告企業自体を含む、いず
れかの契約の当事者が、債務不履行及び破産又は支払
不能に陥った場合にも強制力がなければならないことが明
確にされている。また改訂では、相殺権は将来事象を条件
にしてはならない点も明確にされている。
IAS 第 32 号の相殺要件により、報告企業は、金融資産と金
融負債を純額で決済するか、又は金融資産の実現と金融負
債の決済を同時に行う意図を有することが要求される。本改
訂は、信用リスク及び流動性リスクを消去するか又は著しく
減じる特徴を有しており、債権と債務を単一の決済プロセス
又はサイクルにおいて処理する特徴を有するグロス決済メカ
ニズムのみが、実質的に純額決済に相当し、従って純額決
済の要件を満たすことになる点を明確にしている。
経過措置
この改訂は、会計方針の変更に関する IAS 第 8 号の規定
に従って遡及適用される。早期適用が認められるが、その
場合は、その旨を開示し、「金融資産と金融負債の相殺」
(IFRS 第 7号「金融商品:開示」の改訂)が要求する開示を
行わなければならない。
影響
企業は、法的文書や、取引のある中央清算機関が採用し
ているものを含めて、決済手続をレビューし、新たな要件
のもとでも金融商品の相殺が可能であるかを確認する必
要がある。相殺できない場合、財務諸表の表示に重要な
影響を及ぼす可能性がある。レバレッジ比率や自己資本
規制などに対する影響を検討する必要がある。
EY のその他の公表物
本改訂に関する詳細については、以下の刊行物を参照さ
れたい。
Applying IFRS: Offsetting financial instruments: clarifying the amendments
IFRS Developments 22「金融商品の相殺」
2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点 18
「非金融資産の回収可能価額の開示」
(IAS第36号の改訂) 2014 年 1 月 1 日以後開始する事業年度から適用
主な規定
本改訂は、処分費用控除後の公正価値に関する開示規定
を明確にするものである。IASBは、IFRS第13号の公表に
伴って IAS 第 36 号「資産の減損」を当初改訂した際、減損
された資産の回収可能価額が処分費用控除後の公正価
値に基づく場合に、当該回収可能価額に関する情報の開
示を要求することを意図していた。しかし、実際には、資金
生成単位に配分されたのれん又は耐用年数を確定できな
い無形資産の帳簿価額が、企業全体ののれん又は耐用
年数を確定できない無形資産の帳簿価額に比して重要で
ある場合には、そうした資金生成単位ごとに回収可能価額
の開示が要求されるという意図せぬ結果が生じることとな
った。今回の改訂により、この開示規定が削除された。
さらに、IASB は 2 つの開示規定を追加した。
減損した資産の回収可能価額が処分費用控除後の公正
価値に基づく場合には、公正価値測定に関する追加情報
回収可能価額が、現在価値技法を用いて算定された処分
費用控除後の公正価値に基づく場合、使用された割引率
に関する情報。本改訂により、使用価値に関する開示規定
と処分費用控除後の公正価値に関する開示規定との整合
性が担保された。
経過措置
本改訂は、会計方針の変更に関する IAS 第 8 号の規定に
従い遡及適用される。IFRS 第 13 号も適用することを条件
として早期適用も認められるが、その場合にはその旨を開
示しなければならない。
影響
本改訂により、財務諸表の作成者にとって営業上の機密
性が高いと考えられる情報を開示する必要がなくなる。こ
の点は、企業が本改訂を早期適用する際の妥当な理由に
なると思われる。本改訂により追加情報の開示も求められ
るが、概して開示が求められる情報は容易に入手できる可
能性が高い。
「デリバティブのノベーション(更改)とヘッジ
会計の継続」(IAS第39号の改訂) 2014 年 1 月 1 日以後開始する事業年度から適用
主な規定 本改訂は、デリバティブを清算するために、ヘッジ手段のカ
ウンターパーティーが変更される一定の状況において、ヘ
ッジ会計の中止規定に対する例外措置を導入するもので
ある。本改訂は、以下に該当するノベーションを対象とす
る。
▸ 法律や規制により、又はその導入により生じたものである
▸ ヘッジ手段の各当事者が、単一又は複数の清算機関
(clearing counterparty)が新たなカウンターパーティ
ーとなることに同意している
▸ 清算を行う上でのカウンターパーティーの変更に直接
起因するものを除き、原デリバティブ契約に関する条件
変更が行われない
▸ この例外措置に基づきヘッジ会計を継続するためには、
上記の要件をすべて満たさなければならない。
▸ 本改訂は、カウンターパーティーを中央清算機関
(central counterparty)へ変更するノベーションだけで
なく、清算会員や清算会員の顧客などの仲介機関へ変
更するノベーションも対象となる
▸ 例外措置の要件を満たさないノベーションについては、
金融商品の認識中止要件、及びヘッジ会計の継続に
関する一般条件に照らして、ヘッジ手段の変更を評価
しなければならない
経過措置 本改訂は、会計方針の変更に関する IAS 第 8 号の規定に
従い遡及適用される。しかし、ノベーションにより過去にヘ
ッジ会計を中止した企業は、それが本改訂の適用範囲に
含まれるノベーションであったとしても、中止した従前のヘ
ッジ関係を復活させることはできない。本改訂は早期適用
が認められるが、その場合はその旨を開示しなければなら
ない。
影響 本改訂は、実質的にヘッジ会計規定からの救済措置を定
めるものであり、ノベーションに関する例外が適用される状
況でのヘッジ関係がより適切に反映されることになる。
EY のその他の公表物 本改訂に関する詳細は、IFRS Developments 62「IAS 第39 号の改訂:デリバティブのノベ―ション(更改)とヘッジ会計の継続」を参照されたい。
19 2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点
IFRIC第20号「露天掘り鉱山の生産フェーズに
おける剥土費用」
2013 年 1 月 1 日以後開始する事業年度から適用
主な規定 IFRIC 第 20 号は、露天掘り鉱山の生産フェーズにおいて
発生する廃石除去(剥土)費用に適用される。
剥土活動からの便益が棚卸資産の生産である場合、企業
は剥土活動の費用を棚卸資産の原価の一部として会計処
理することが求められる。剥土活動からの便益が鉱床へ
のアクセスの改善である場合、企業は、一定の要件が満
たされた場合にのみこれらの費用を非流動資産として認識
することになる。これは、剥土活動資産と呼ばれる。剥土
活動資産は、既存の資産への追加又はそれらを増強する
項目として会計処理される。
剥土活動資産の原価と生産された棚卸資産の原価をそれ
ぞれ個別に識別できない場合には、生産に関連する測定
値に基づいた方法により、当該 2 つの資産に原価を配分
する。
当初認識後、剥土活動資産は、剥土活動資産が含まれる
既存の資産と同じように、取得原価又は再評価額から減
価償却費/償却費及び減損損失を控除した後の金額で測
定される。
経過措置 本解釈指針書は、表示される最も早い期間の期首以降に
発生した生産段階の剥土費用に適用される。本解釈指針
書の完全遡及適用は要求されない。その代わりに、当該
日より前に発生し、資産化された剥土費用に対しては、実
務上の簡便法が定められている。
本解釈指針書の早期適用は認められる。早期適用する場
合には、その旨を開示しなければならない。
影響 IFRIC第20号の規定は、IFRSを適用している多くの鉱業・
金属業界企業で現在使用されている剥土費用の会計処理
方法である、平均ストリップ・レシオ・アプローチによる処理
を変更するものである。企業の鉱山における個別の事実
及び状況に応じて、当該変更は企業の財政状態計算書及
び包括利益計算書に影響を及ぼす可能性がある。さらに、
報告企業の業務プロセス、手続及びシステムに関しても、
変更が必要となる可能性がある。
EY のその他の公表物 本解釈指針書に関する詳細は、IFRS Developments for Mining & Metals 「廃石物除去(剥土)費用の会計処理 - IFRIC解釈指針第20号の概要」、及び IFRS Developments
13 「剥土費用の会計処理」を参照されたい。
IFRIC第21号「賦課金」
2014 年 1 月 1 日以後開始する事業年度から適用
主な規定 IFRIC 第 21 号は、他の基準書(例えば IAS 第 12 号)の
範囲に含まれる資源の流出及び法規制違反により科され
る罰課金を除く、すべての賦課金に対して適用される。
IFRIC 第 21 号において賦課金とは、法規制に従って政府
により企業に対して課される経済的便益を有する資源の
流出と定義されている。
IFRIC 第 21 号では、関連する法規制により定められた、
賦課金を支払う原因となる活動が生じた時点で、賦課金
を支払う負債を認識することが明確にされている。また、
法規制に従い、賦課金を支払う原因となる活動が一定期
間にわたって生じる場合に限り、賦課金に係る負債は活
動が行われるに応じて認識されることも明確化された。さ
らに、最小の閾値を達成した場合に支払い義務が生じる
賦課金に関しては、当該閾値が達成されるまでは賦課金
を支払う負債は認識されないことも明示されている。
IFRIC 第 21号は、賦課金を支払う負債を認識する取引の
借方側の会計処理については扱っていない。企業は関連
する基準書を参照して、賦課金を支払う負債を認識する
一方で、資産又は費用を認識するのかを判断することに
なる。
経過措置 IFRIC 第 21 号は、会計方針の変更に関する IAS 第 8号の規定に従い遡及適用される。本解釈指針は早期適
用も認められるが、その場合はその旨を開示しなけれ
ばならない。
影響 IFRIC 第 21 号は、賦課金を支払う義務に関する会計処
理について現在見られる実務上のばらつきを解消する
ことを意図したものである。企業は、IFRIC 第 21 号が自
らの財務諸表における賦課金の会計処理に影響を及ぼ
すのかどうかを検討する必要がある。
EY のその他の公表物 本解釈指針書に関する詳細は、 IFRS Developments 59 「IASB が IFRIC 解釈指針第 21 号「賦課金」を公表」を参照されたい。
。
2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点 20
国際財務報告基準の年次改善
主要な規定 IASB の年次改善プロセス(「年次改善」)では、緊急ではないが必要と判断される IFRS の改訂を取り扱っている。
2009-2011 年サイクル(2012 年 5 月公表) IASBは年次改善サイクル(2009-2011年)で、5つの基準書に対して6項目の改訂を行っている。以下にその内容を要約
している。これらの改訂は、2013 年 1 月 1 日以後開始する事業年度から適用される。早期適用は認められるが、その場
合はその旨を開示しなければならない。また、これらの改訂は会計方針の変更に関する IAS 第 8号の規定に従って遡及適
用される。
IFRS 第 1 号「国際財務
報告基準の初度適用」 IFRS 第 1 号の再適用
• この改訂では、過去に IFRS の適用を中止した企業が IFRS に基づく報告を再開するにあ
たり、以下のいずれかを選択できることが明確にされている (i) 過去の報告期間において IFRS 第 1 号を適用していたとしても、IFRS 第 1 号を再適
用する (ii) IAS 第 8 号に従い、IFRS を遡及適用する(すなわち、IFRS の適用を中止していなか
ったかのように財務諸表を修正する) • IFRS 第 1 号を再適用するか、IAS 第 8 号を適用するかに関係なく、過去に IFRS の適用
を中止し、その後 IFRS に基づく報告を再開した理由を開示しなければならない 借入費用
• この改訂では、IFRS の初度適用時に、企業が従前の GAAP に従って資産化していた借
入費用について、金額を調整することなく、移行日時点の開始財政状態計算書に繰り越
せることが明確にされている • IFRS の適用後は、移行日において建設中であった適格資産に関して発生した借入費用
も含めて、IAS 第 23 号「借入費用」に従って認識される IAS 第 1 号 「財務諸表の表示」
比較情報に関する規定の明確化
• この改訂により、自発的に追加で表示する比較情報と、最低限要求される比較情報との
違いが明確にされる。一般に、最低限要求される比較期間は前期分である • 企業は、最低限要求される比較期間に加えて、その前の期間に係る比較情報を自発的
に表示する場合、当該財務諸表に関連する注記を比較情報に含めなければならない。た
だし、追加の比較期間には、完全な 1 組の財務諸表が含まれている必要はない • また、企業が会計方針を変更(遡及的修正再表示又は組替え)した結果、それが財政状
態計算書に重要な影響を及ぼす場合には、開始財政状態計算書(「第三の貸借対照表」
と呼ばれる)が表示されなければならない。開始財政状態計算書は、直前の報告期間の
期首現在で作成されることとなる。たとえば、2014年12月31日に終了する年度の直前
期間の期首は、 2013 年 1 月 1 日となる。しかし、自発的に表示する比較情報とは異な
り、関連する注記を第三の貸借対照表日時点の比較情報に含めることは要求されない IAS 第 16 号 「有形固定資産」
保守器具(servicing equipment)の分類
• この改訂により、有形固定資産の定義を満たす主要交換部品及び保守器具は、棚卸資
産に該当しないことが明確にされている
21 2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点
2010-2012 年サイクル(2013 年 12 月公表) IASBは年次改善サイクル(2010-2012年)で、6つの基準書に対して7項目の改訂を行っている。以下にその内容を要約
している。これらの改訂は、基準書の結論の根拠にのみ影響するものを除き、2014 年 7 月 1 日以後開始する事業年度か
ら適用される。早期適用は認められるが、その場合はその旨を開示しなければならない。IFRS 第 13 号の改訂は、結論の
根拠にのみ影響するため、即時に発効する。
IFRS 第 2 号「株式報酬」 権利確定条件の定義
• この改訂では、業績条件及び勤務条件が定義され、以下をはじめとするさまざまな点が
明確にされている • 業績条件には勤務条件が含まれなければならない
• 業績目標が達成されるまで相手方は勤務を提供していなければならない
• 業績目標は企業の営業や活動、もしくは同一グループ内の他の企業の営業や活動
に関連する場合がある
• 業績条件は株式市場条件又は株式市場条件以外の条件である
• 相手方が権利確定期間中に退職した場合は、その理由にかかわらず、勤務条件の
未達成とされる • この改訂は将来に向かって適用される
IFRS 第 3 号「企業結合」 企業結合における条件付対価の会計処理
• この改訂では、企業結合により生じた負債(又は資産)として分類されるすべての条件
付対価は、IFRS 第 9 号(又は場合によっては IAS 第 39 号)の適用範囲に含まれるか
否かに関係なく、純損益を通じて公正価値で事後測定すべきことが明確にされている • この改訂は将来に向かって適用される
IAS 第 34 号 「期中財務報告」
期中財務報告及び資産及び負債合計に係るセグメント情報
• この改訂では、IFRS 第 8 号「事業セグメント」の規定との整合性を高めるために、各報
告セグメントの資産及び負債合計に係るセグメント情報について、IAS 第 34 号の規定
が明確にされている • 特定の報告セグメントの資産及び負債合計は、当該金額が最高経営意思決定者に定
期的に提供されており、かつ当該報告セグメントについて前年度の財務諸表で開示さ
れていた当該合計金額から大きな変動があった場合にのみ開示する必要がある IAS 第 32 号 「金融商品:表示」
資本性金融商品の保有者への分配に係る法人所得税の影響
• この改訂により、現在 IAS 第 32 号に定められている法人所得税に係る規定が削除さ
れ、資本性金融商品の保有者への分配に起因するすべての法人所得税に IAS 第 12号の規定を適用することが求められる
2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点 22
IFRS 第 8 号 「事業セグメント」
事業セグメントの集約
• この改訂では、IFRS 第 8号第 12 項に定められる集約の要件を適用するにあたり経営者
が行った判断を開示することが明確にされている。こうした開示には、集約した事業セグ
メントに関する簡単な記述、及びセグメントが「類似」しているかどうかを判断する際に考
慮した経済的特徴(例:売上総利益率)が含まれる • この改訂は遡及適用される
報告セグメント資産の合計額から企業の総資産への調整表
• この改訂では、セグメント資産と総資産の調整表は、当該調整表が最高経営意思決定者
に報告されている場合にのみ開示が求められることが明確にされている。これは、セグメ
ント負債に関して求められている開示と同様である • この改訂は遡及適用される
IFRS 第 13 号 「公正価値測定」
短期債権及び債務
• この改訂により、表面金利が付されていない短期の債権債務については、割引の影響に
重要性がなければ請求金額で計上できることが、結論の根拠において明確にされている • この改訂は即時に発効する
IAS 第 16 号 「有形固定資産」及び
IAS 第 38号「無形資産」
再評価モデル-減価償却累計額の比例的修正再表示
• IAS 第 16 号及び IAS 第 38 号の改訂により、資産の再評価は、その帳簿価額総額又は
正味帳簿価額のいずれかに関する観察可能なデータを参照して行うことが明確にされて
いる • この改訂では、減価償却/償却費累計額は、資産の帳簿価額総額と正味帳簿価額との
差額であることも明確にされている • この改訂は遡及適用される
IAS 第 24 号「関連当事
者についての開示」 経営幹部
• この改訂により、経営管理企業(経営幹部としてのサービスを提供する企業)は、関連当
事者に該当し、関連当事者に関する開示が求められることが明確にされている。さらに、
経営管理企業を利用している企業は、経営管理サービスに係る費用を開示しなければな
らない • この改訂は遡及適用される
23 2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点
2011-2013 年サイクル(2013 年 12 月公表) IASBは年次改善サイクル(2011-2013年)で、4つの基準書に対して4項目の改訂を行っている。以下にその内容を要約
している。これらの改訂は、基準書の結論の根拠にのみ影響するものを除き、2014 年 7 月 1 日以後開始する事業年度か
ら適用される。早期適用は認められるが、その場合はその旨を開示しなければならない。IFRS 第 1 号の改訂は、結論の根
拠にのみ影響するため、即時に発効する。
IFRS 第 1 号「国際財務
報告基準の初度適用」 有効な IFRS の意味
• この改訂により、IFRS 初度適用企業は現行の基準、又はいまだ強制適用されていない
が、早期適用が認められている新基準のいずれを適用するか選択できることが、結論の
根拠において明確にされる。ただし、いずれの基準であっても最初の IFRS 財務諸表に表
示されるすべての期間に一貫して適用することが求められる • この改訂は即時に発効する
IFRS 第 3 号「企業結合」 ジョイント・ベンチャーに係る適用除外規定の範囲
• この改訂では、以下が明確にされている • ジョイント・ベンチャーのみでなく、共同契約(ジョイント・アレンジメント)も IFRS 第 3 号
の適用範囲から除かれる • 適用範囲からの除外規定は、共同契約自体の財務諸表における会計処理にのみ適
用される • この改訂は将来に向かって適用される
IFRS 第 13 号 「公正価値測定」
第 52 項の範囲(ポートフォリオに係る例外規定の範囲)
• この改訂では、IFRS 第 13 号のポートフォリオに係る例外規定は、金融資産及び金融負
債のみではなく、IFRS 第 9 号(又は IAS 第 39 号)の適用範囲に含まれるその他の契約
にも適用できることが明確にされている • この改訂は将来に向かって適用される
IAS 第 40 号 「投資不動産」
IFRS 第 3 号と IAS 第 40 号の相互関係の明確化(付随的サービス)
• IAS 第 40 号の付随的サービスに関する記述は、投資不動産と自己使用不動産(すなわ
ち有形固定資産)との区別に関するものである。この改訂では、ある取引が資産の取得
に該当するか、企業結合に該当するかの判断には、IAS 第 40 号の付随的サービスに関
する記述ではなく、IFRS 第 3 号が用いられることが明確にされている • この改訂は将来に向かって適用される
EY のその他公表物
本改訂に関する詳細は、IFRS Developments 29「IFRSの年次改善(2009-2011年サイクル)」 及び IFRS Developments 71「IASB が 2 つのサイクルの IFRS 年次改善を公表」を参照されたい。
2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点 24
解釈指針委員会が審議した一定の項目は、IASB の IFRICアップデートにおいて「解釈指針委員会アジェンダ決定」として公
表されている。アジェンダ決定には、解釈指針委員会のアジェンダとして採用されなかった項目が、その理由と併せて公表
されている。そうした項目の一部について、解釈指針委員会は関連する基準をどのように適用すべきかに関する情報を提
供している。
本ガイダンスは、解釈指針ではないが、提起された論点や、基準書及び解釈指針書をどのように適用すべきかに関する追
加情報を提供するものである。
以下の表は、2013 年 3 月 1 日から 2014 年 2 月 28 日までの期間において、解釈指針委員会がアジェンダとして取り上
げなかった項目とそれに関連するアジェンダ決定の概要をまとめたものである。解釈指針委員会により審議されたすべて
の項目とその結論の全文については、IASBのホームページ上のIFRSアップデートに掲載されている。3
最終検討日 論点 解釈指針委員会のアジェンダとして採用されなかった理由の概要
2013 年 3 月 「事業を構成しない逆
取 得 の 会 計 処 理 」
(IFRS 第 3 号「企業結
合」及び IFRS 第 2 号
「株式報酬」)
解釈指針委員会は、事業を営んでいる非上場企業(non-listed operating entity)の旧株主が、保有する株式を事業を行っていない上場企業(listed non-operating entity)の新規発行株式と交換することにより、結合後企業
の多数株主になる取引の会計処理についてガイダンスを提供するよう要請
を受けた。しかし、本取引は、事業を営んでいない上場企業が事業を行って
いる非上場企業のすべての資本を取得するように組成されている。
解釈指針委員会は、本取引には IFRS 第 3 号の逆取得に関するガイダンス
を類推適用すべきと考えた。その結果、事業を営む非上場企業が会計上の
取得企業として、事業を行っていない上場企業が会計上の被取得企業とし
て識別されることになる。事業を営んでいない上場企業が事業に該当しない
場合は、当該取引は企業結合ではなく、IFRS 第 2 号に従い会計処理される
株式報酬取引となる。
2013 年 5 月 「以前に公表した財務
諸表の再公表」(IAS 第
10 号「後発事象」)
解釈指針委員会は、以前に公表した財務諸表が目論見書に関連して再公
表される場合に、IAS 第 10 号を適用することによる会計上の影響を明確に
するよう要請を受けた。
解釈指針委員会は、IAS 第 10 号の適用範囲は、後発事象に関する会計処理
及び開示であり、同基準書の目的は以下を定めることであると述べた。
• 企業は後発事象について、どのような場合に財務諸表を修正しなけれ
ばならないか
• 財務諸表の公表が承認された日及び後発事象に関して、企業が行わ
なければならない開示
さらに、解釈指針委員会は、IAS 第 10 号に従い作成された財務諸表には、
財務諸表の公表が承認される日までの、修正を要する及び修正を要しない
後発事象のすべてが反映されなければならない点を指摘した。
解釈指針委員会は、IAS 第 10 号は、当初公表した財務諸表が取り下げられ
ていないが、規制上の要請に従って目論見書において再公表財務諸表が補
足情報として又は当初の財務諸表の再表示として提供される場合における、
目論見書に含まれる再公表財務諸表の表示を扱うものではないと述べた。
3 IFRIC Update については IASB のウェブサイトを参照されたい。http://www.ifrs.org/Updates/IFRIC+Updates/IFRIC+Updates.htm.
セクション2:解釈指針委員会がアジェンダとして
取り上げなかった項目
25 2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点
最終検討日 論点 解釈指針委員会のアジェンダとして採用されなかった理由の概要
2013 年 5 月 「現金同等物の特定」
(IAS 第 7 号「キャッシ
ュ・フロー計算書」)
解釈指針委員会は、IAS 第 7 号に従い金融資産を現金同等物として分類す
る際の基礎について検討するよう要請を受けた。特に、この関係者は、取得
日から満期までの期間に着目する現行規定よりも、貸借対照表日時点にお
ける満期までの残存期間を基礎として、投資を現金同等物に分類した方が、
より首尾一貫した分類につながると提案した。
解釈指針委員会は、IAS第 7号第7項に基づき、現金同等物は投資等の目
的ではなく、短期の現金支払債務に充てるために保有される点に言及した。
さらに、同項では、投資は取得日からの満期が短期の場合にのみ、現金同
等物として分類されると述べられている。解釈指針委員会は、IAS 第 7 号第
7 項は現金同等物の分類に関する企業間の整合性を高めており、同項の規
定は明確であると考えた。
2013 年 7 月 「税引前又は税引後の
割引率」(IAS 第 19 号
「従業員給付」)
解釈指針委員会は、IAS 第 19 号上、確定給付制度債務を算定する際に用
いる割引率は、税引前又は税引後のいずれであるべきかを明確にするよう
要請を受けた。
解釈指針委員会は、確定給付制度債務の算定に用いる割引率は、税引前
の割引率であるべきと述べた。
2013 年 9 月 「防御的な権利が支配
の評価に及ぼす影響」
(IFRS 第 10 号「連結財
務諸表」)
解釈指針委員会は、これまで防御的と判断されていた権利が(借手が債務
不履行に陥るような借入契約の財務制限条項違反を生じさせたのを契機
に)変化することによって、事実及び状況に変更が生じた場合、これまでの
支配の評価を見直すべきか、それとも事実及び状況が変化した場合でも、こ
れまで防御的と判断されていた権利は、支配の再評価にあたって考慮すべ
きではないかを明確にするよう要請を受けた。
解釈指針委員会は、事実及び状況に変化が生じた場合には、支配の評価
に関するこれまでの結論を再検討すべきであると述べた。
2013 年 11 月 「減損、外国為替及び
借入費用に関する経過
措置」(IFRS 第 10 号
「連結財務諸表」及び
IFRS 第 11 号「共同契
約(ジョイント・アレンジ
メント)」)
解釈指針委員会は、IFRS 第 10 号及び IFRS 第 11 号の公表により、IAS 第
21 号「外国為替レート変動の影響」、IAS 第 23 号「借入費用」及び IAS 第
36 号「資産の減損」に関して必要となる会計処理の変更の遡及適用につ
き、IFRS 第 10 号及び IFRS 第 11 号の経過措置が適用されるかを明確に
するよう要請を受けた。
解釈指針委員会は、IFRS 第 10 号が遡及適用される場合に必要となる、そ
の他の基準書に関する会計処理の変更は、IFRS 第 10 号の経過措置に従
い遡及適用しなければならないと述べた。
ただし、その他の基準書に関する会計処理の変更を遡及適用することが実
務上不可能なために、IFRS 第 10 号の遡及適用が実務上不可能な場合に
は、IFRS 第 10 号は遡及適用の免除を認めているとした。
さらに、解釈指針委員会は IFRS 第 11 号を初めて適用する場合、その他の基
準書に関する会計処理の変更を遡及適用することについて、ほとんどの場合
には問題が生じないと述べた。
2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点 26
最終検討日 論点 解釈指針委員会のアジェンダとして採用されなかった理由の概要
2013 年 11 月 「非支配持分に属する
プット可能な金融商品
の分類」(IFRS 第 10 号
「連結財務諸表」)
解釈指針委員会は、子会社が発行したプット可能な金融商品であるが、親会社
が(直接又は間接的に)保有していないものを、グループの連結財務諸表にお
いてどのように分類すべきかに関するガイダンスを提供するよう要請を受けた。
解釈指針委員会は、プット可能な金融商品は、すべての関連する要件を満
たす場合に限り、金融負債の定義の例外として、子会社の財務諸表におい
ては資本に分類されることを指摘した。
したがって、こうした金融商品は親会社の連結財務諸表においては金融負
債に分類すべきであると述べた。
2013 年 11 月 「数理計算上の仮定:
割引率」(IAS 第 19 号
「従業員給付」)
解釈指針委員会は、金融危機の影響から AAA 及び AA に格付けされる社
債の数が著しく減少している状況において、退職後給付債務の割引率を決
定するにあたり、AA 格より低い格付けの社債を「優良社債」とみなすことが
できるかを明確にするよう要請を受けた。
解釈指針委員会は、IAS 第 19 号第 83 項で使用されている「優良」とは、社
債の一定母集団と比較した場合の相対的な信用度ではなく、絶対的な信用
度を反映するものであり、「優良」の概念は時の経過に応じて変化するもの
ではなく、優良社債の数が減少したことのみをもって、「優良」の概念に変更
が生じることはないとした。解釈指針委員会は、優良社債の利回りを反映し
た、割引率を算定する際に企業が用いる方法や技法は、毎期著しく変動す
ることは予想されないとした。
2014 年 1 月 「恒常購買力単位で測
定される貨幣資本維持
の概念の適用可能性」
(IAS 第 29 号「超インフ
レ経済下における財務
報告」)
解釈指針委員会は、企業の機能通貨が IAS 第 29 号で説明される超インフ
レ経済の通貨ではない場合、「財務報告に関する概念フレームワーク(以
下、概念フレームワーク)」に記述される、恒常購買力単位の観点で定義さ
れた貨幣資本維持の概念を使用することができるかどうかを明確にするよう
要請を受けた。
解釈指針委員会は、概念フレームワークにおける特定の資本維持概念の使
用に関するガイダンスは、各基準書の規定に優先して適用することはでき
ず、特定の基準を適用する場合に、現行の規定と矛盾する資本維持概念を
適用することは認められないと述べた。
27 2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点
最終検討日 論点 解釈指針委員会のアジェンダとして採用されなかった理由の概要
2014 年 1 月 「キャップとフロアーの
範囲内で変動数量の株
式に強制的に転換され
るが、発行体が最大数
量(固定数量)の株式を
引き渡すことで償還で
きる権利が付与されて
いる金融商品」(IAS 第
32 号「金融商品:表
示」)
解釈指針委員会は、金融商品に定められている特定の期限前償還権の実
質を、発行体が IAS 第 32 号に従ってどのように評価すべきかを明確にする
よう要請を受けた。
解釈指針委員会は、金融商品の契約条件が実質的でない場合には、金融
商品の分類を評価する際に当該契約条件を考慮してはならないと述べた。
期限前償還権が実質的かを判断する際には、発行体が当該権利を行使す
ると見込まれる実際の経済性や、その他の事業上の理由の有無を理解する
必要がある。この理解にあたっては、以下のような要因を検討する。
• 仮に契約条件に発行体の期限前償還権が織り込まれなかった場合、
金融商品の価格は変更されていたかどうか
• 金融商品の契約期間
• キャップとフロアーの範囲
• 発行体の株価
• 株価のボラティリティ
2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点 28
IASB は現在、様々なプロジェクト及び解釈指針の策定に着手しており、その一部は 2014 年末までに公表され
る予定である。
公表されているが、いまだ発効していない基準書又は解釈指針書について、IAS 第 8 号に従い開示を行う必要があ
るかどうか検討しなければならない。こうした開示には、公表された基準書又は解釈指針書が企業の財務諸表に及
ぼすと予想される既知又は合理的に見積られた影響が含まれる。生じうる影響がいまだ識別されていないか、又は
合理的に見積ることができない場合は、その旨を開示しなければならない。したがって、本刊行物を利用する際は、
2014 年 2 月 28 日から財務諸表の公表承認日までに行われた IFRS の改訂について留意する必要がある。
下記の表は、2014 年 3 月 26 日現在で進行中の IASB プロジェクトに関するスケジュールである。
詳細はIASBのウェブサイトで閲覧可能である。4
A 主要プロジェクト
ED 公開草案 DP ディスカッション・ペーパー IFRS 最終基準書
4 最新のスケジュールは IASB のウェブサイトで閲覧可能である。www.iasb.org/Current+Projects/IASB+Projects/IASB+Work+Plan.htm
5 IASB と米国財務会計基準審議会(FASB)との共同プロジェクトである。
6 IASB と米国財務会計基準審議会(FASB)との共同プロジェクトである。
プロジェクト名 (主要関連基準)
直近の 公表物
予定公表時期
2014 年
1 月-3 月(Q1) 4 月-6 月(Q2) 7 月-9 月(Q3) 10 月-12 月(Q4)
金融商品(IFRS 第 9 号)
分類及び測定(部分的な改訂) ED IFRS
減損 ED
追加資料 IFRS
マクロ・ヘッジ会計 DP 保険契約(IFRS4) 再 ED 再審議
リース 5 再 ED 再審議 料金規制事業 情報募集 DP 収益認識 6 再 ED IFRS
セクション3:IASBにより今後公表される予定の基準書等
29 2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点
B その他のプロジェクト
プロジェクト名(主要関連基準) 直近の 公表物
予定公表時期
2014 年
1 月-3 月(Q1) 4 月-6 月(Q2) 7 月-9 月(Q3) 10 月-12 月(Q4)
(部分的な範囲における改訂)
共同支配事業に対する持分の取得(IFRS第 11 号の改訂) ED IFRS
年次改善(2012-2014 年) ED 再審議
年次改善(2013-2015 年)
ED
果実生成型の植物(IAS 第 41 号の改訂) ED IFRS 減価償却及び償却の許容される方法の明
確化(IAS 第 16 号と IAS 第 38 号の改訂) ED IFRS
負債の分類(IAS 第 1 号の改訂) ED
開示改善イニシアティブ(IAS 第 1 号「財務
諸表の表示」の改訂) ED
企業とその関連会社/共同支配企業の間で
行われた取引から生じた利益又は損失の
消去(IAS 第 28 号の改訂) ED
持分法会計:その他の純資産変動の会計
処理(同上) ED IFRS
公正価値測定(会計単位) ED 投資企業:投資企業に対する持分の会計
処理及び連結免除の適用の明確化(IFRS第 10 号と IAS 第 28 号の改訂) ED
非支配持分に関する売建プット・オプション
(IAS 第 32 号の改訂) ED 次段階を 後日決定
未実現損失に係る繰延税金資産の認識
(IAS 第 12 号の改訂) ED
投資者とその関連会社/共同支配企業間で
行われる資産の売却又は拠出(IFRS 第 10号及び IAS 第 28 号の改訂)
ED IFRS
個別財務諸表における持分法(IAS 第 27号の改訂) ED 再審議
2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点 30
B その他のプロジェクト(続き)
プロジェクト名 (主要関連基準)
直近の 公表物
予定公表時期
2014 年
1 月-3 月(Q1) 4 月-6 月(Q2) 7 月-9 月(Q3) 10 月-12 月(Q4)
(適用後レビュー)
IFRS 第 3 号「企業結合」 パブリック・コン
サルテーション
(概念フレームワーク) DP
ED
(アジェンダ・コンサルテーション) 次回コンサルテーション 2015 年を予定
フィードバック・
ステートメント
プロジェクト名 (主要関連基準)
直近の 公表物
予定公表時期
2014 年 H2 2015 年 H1 2015 年 H2 2016 年
(中小規模(SME)向け IFRS)
包括レビュー (2012 年-2014 年) 意見募集文書 改訂中小企業向 IFRS 改訂中小企業向
IFRS の発効
31 2014 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する IFRS 決算上の留意点
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