This document is posted to help you gain knowledge. Please leave a comment to let me know what you think about it! Share it to your friends and learn new things together.
*1 Gregg A. SILVIS Associate University Librarian for Information Technology and Digital Initiatives, The University of Delaware Library 181 South College Avenue, Newark, DE 19717-5267, USA *2 Chip NILGES Vice President, Business Development, OCLC, Inc. 6565 Kilgour Place, Dublin, OH 43017-3395, USA *3 Kimihiro NIIMOTO and *4 Yoshiko HIRABARU 株式会社紀伊國屋書店OCLCセンター 〒 153─8504 東京都目黒区下目黒 3─7─10
2012 年図書館国際セミナー「ディスカバリーサービスと未来の図書館システム―WorldCat Local とWorldShare―」(平原) 117
先ほど Silvis 氏からもお話がありましたが,WorldCat Local とはクラウドベースの情報発見&入手支援(ディスカバリー&デリバリー)サービスであり,それが今お話した「WorldCat」データベースを核として構築されている点が,大きな特徴となっています。 WorldCat Local を使うことで,図書館利用者は 1つの検索ボックスからWeb 上に散在する電子的なすべての図書館所蔵・契約資料を発見,入
図 2-1 WorldCat 収録目録の資料言語
図 2-2 WorldCat データの様々な活用の場
124 薬学図書館 58( 2 ),2013
手できるようになります。また,図書館はWeb上でその所蔵資料のプレゼンスを高め,例えば利用者が検索エンジン等から情報を探している場合にも,その情報が図書館から入手可能であることをシステマティックに案内できるようになります。 WorldCat Local が提供する機能をざっと挙げますと,クラウド型プラットフォームにおける図書館資料の一括検索,一次資料へのアクセス,KnowledgeBase,リンクリゾルバ,モバイルインターフェース,様々なウェブサイトとの連携といったものがあります。 なお現在,世界各国でWorldCat Local を使っている図書館は 1,000 以上に上っています。4. WorldCat Localの搭載コンテンツ 続いて,WorldCat Local を通じて利用できるコンテンツについてお話しましょう。WorldCat Local 上のデータは,①利用機関,②WorldCat,③世界中の数百に及ぶデータプロバイダの 3者から提供されるものの統合体です。図 2-3 に見られるように,多種多様な資料へのアクセスを提供しており,2億以上の書籍,7億以上のジャーナル記事,1,400 万以上の eBook 等がWorldCat Localの中にインデックス化されています。 搭載コンテンツの中でも急速に増加しているのが電子リソースで,データベースは 1,700 件以上,電子ジャーナル上の論文は 1 億 7,500 万件,eBook は先ほども言いましたが 1,400 万件にも上っています。こういったデータの提供元は世界規模のアグリゲータや出版社等で,例えば EBSCO,Gale,ProQuest,ハーバード大学,Springer,Elsevier 等々が挙げられます。現在,OCLCと紀伊國屋書店で協力して,日本で出版された雑誌の記事や書籍のデータ搭載についても準備を進めています。 また,OCLC は HathiTrust や Google ブックス,Europeana, OAIster 等といった主要なデジタルコレクションのデータを搭載していくことで,メンバー図書館にとって有用なすべての機関リポジトリやアーカイブをWorldCat Local から検索・入手可能とすることを目指しており,すでに世界中の大学他 1,200 以上の機関リポジトリの
WorldCat Local がどのように機能するかを伝えるには,実際に見てもらうのが一番だと思いますので,ここで少しデモをお見せします。図 2-5が,WorldCat Local の最初の利用機関の一つ,オハイオ州立大学の図書館サイトです。サイト中央に組み込まれたWorldCat Local の検索ボックスに「murakami」と入力してみると,図 2-6 のような検索結果が出てきます。WorldCat Localの特徴の一つは,検索対象を自在にスケールチェンジできる点です。上の矢印がドロップダウン
図 2-3 WorldCat 収録目録の資料種別
図 2-4 WorldCat データベースの成長
2012 年図書館国際セミナー「ディスカバリーサービスと未来の図書館システム―WorldCat Local とWorldShare―」(平原) 125
ボックスを指していますが,ここから簡単に検索対象とする範囲を「自分の所属図書館の所蔵資料」だけに絞ったり,「コンソーシアム参加館の所蔵資料」まで広げたり,あるいはさらに「世界中のWorldCat Local 参加図書館の所蔵資料」まで広げることもできます。オハイオ州立大学では,初期設定として利用者の検索に合致するすべての図書館の資料を表示させています。 また,検索結果として表示された資料を,元々の収録データベース,件名や著者,出版日他,様々な切り口(ファセット)で絞り込むことも可能です。 結果一覧から例えば一冊の本を選んでタイトルをクリックすると,詳しい書誌情報を見ることができます。この本の利用状況を確認するには,スクロールダウンして図 2-7 のように「オフラインで入手」のセクションを見ます。ここには,WorldCat Local と連携したオハイオ州立大学の貸出管理システムからリアルタイムで取得した該当資料の利用状況が表示されます。ここで利用可能であると確認でき,その本を借りたい場合は「Request OSU Item」ボタンをクリックします。
ると思います。 その他,WorldCat Local インターフェースには,利用者が作成するタグ,レビュー,リストといった SNS 機能があり,ある資料を読んだ他の利用者がほかにどのような文献を読み,どのような学術論文のリサーチを行っているのかを見ることができます。 さて,先ほど少しオープンアクセスのコンテンツとWorldCat Local の同期について触れましたが,利用者からはどのように見えるでしょうか。図 2-9 のレコードは「WorldCat.org」データベースから引っ張ってきたものです。矢印の箇所にリンクがあるように,この資料はOCLC が提供元と提携し,メタデータに加えてWorldCat Localから一次情報へのダイレクトリンクを提供しています。WorldCat Local の利用館は,こういった全コンテンツへのアクセスを利用者に提供することができます。「今すぐ見る」ボタンをクリックすると,そのコンテンツの提供機関が一覧表示されます。この例ではミシガン大学の「Hathi-Trust」データベースにデータが収録されており,リンクをクリックすると,一次情報がすぐに表示されます。因みに,OCLC のWorldCat 上には HathiTrust の全資料が登録され,各書誌情報からHathiTrust へリンクが貼られているのですが,一方でHathiTrust インターフェースからもOCLC のWorldCat.org へとリンクが貼られ,研究者がHathiTrust 上で見つけた資料の入手手段を確認するために利用されています。 次に,電子ジャーナルの論文フルテキスト検索を行ってみます。まず,論文の中でフルテキスト
の閲覧が可能なものに検索対象を絞ります。これは検索範囲のドロップダウンボックス横,もしくは画面左のファセットから,1クリックで行えます。検索結果の中から,1 件の論文「Hunting Knife」を選びました。続いて「今すぐ見る」リンクをクリックすると,この論文の収録データベースが一覧表示されます。例えば「Academic OneFile」データベースを選択すると,今は認証画面が開きますが,各WorldCat Local 利用館のデータベース購読状況は内蔵KnowledgeBase で管理されているため,アクセス権限のある利用者であれば,このままシームレスにフルテキストを閲覧することができます。 最後に,図書館が独自にデジタル化したコレクションについての事例をお見せしたいと思います。多くの図書館が,その館を特徴づける特別なコレクションを所蔵しており,今そのデジタル化を進めています。そのメタデータ公開については,①WorldCat に登録し,Web 上で誰でも見られるようにする,②契約データベースのように,自館利用者だけがWorldCat Local 上で見られるようにする,という 2通りから図書館が選択します。図 2-10 をご覧ください。検索を実行したあと,結果を「ダウンロード可能な画像」だけに絞り込みました。1件選んでタイトルをクリックすると,サムネイル画像つきの詳細画面が表示されます。「View Online」リンクをクリックすると,画像全体を閲覧することができました。これは,所蔵館であるクレアモント大学図書館が,自館のデジタルコレクションを外部の利用者にも公開する設定(上記①)にしているからです。
図 2-9 一次資料へのダイレクトリンク 図 2-10 図書館作成のデジタルコレクション
2012 年図書館国際セミナー「ディスカバリーサービスと未来の図書館システム―WorldCat Local とWorldShare―」(平原) 127
6. 外部サイトとの連携とモバイルアクセス 皆さんよくご存知のとおり,Web 上で情報を探す際,今多くの人は図書館のWeb サイトではなく,例えば検索エンジン「Google」等から始めます。ですから Google で,本のタイトルを検索してみましょう。図 2-11 の結果一覧を見ると,一番上の検索結果は Google ブックスから,4 つ目の結果はWorldCat.org から引っ張ってきたデータです。 4 つ目のリンクをクリックしてWorldCat.orgに行くと,例えば早稲田大学図書館がこの資料を所蔵していることがすぐにわかり,そのまま早稲田大学のOPACにアクセスすることもできます。この流れは,早稲田大学が所蔵情報をWorldCatに登録していることにより可能となっています。あるいは結果一覧から Google ブックスへのリンクをクリックした場合,図 2-12 のように画面左に「Find in a Library(日本語版では「所蔵図書館を検索」)」というリンクが表示されます。これをクリックすると,先ほどと同じWorldCat.org
のページに辿り着きます。このような他サイトとの連携により,自館の利用者が図書館サイトまたはWorldCat.org または Google とどこから検索を始めた場合でも,最終的には所属図書館の所蔵資料をアピールすることができるというわけです。 そして,利用者が図 2-13 の左右に紹介している各種提携サイトからWorldCat.org へのリンクをクリックしたときには,IP アドレスからWorldCat Local 導入館の利用者か否かを自動的に識別し,利用者であった場合は,WorldCat.orgよりもカスタマイズされ,多くの情報を入手できる所属図書館のWorldCat Local インターフェースがあることを案内します。確認画面で利用者がWorldCat Local へのアクセスを選択すると,図2-13 の中央に例示しているように,所属図書館のWorldCat Local で該当の詳細書誌画面が表示されます。このように,図書館サイト以外の場所で探していた資料が,実は所属図書館の倉庫にある,といったことがすんなりとわかるわけです。WorldCat Local では資料の請求番号も表示されるため,貸出予約もすぐに行えますし,該当する情報を所属図書館が電子フォーマットで所蔵していれば,その場でアクセスすることも可能です。
それでは,WorldCat Local の導入が図書館にどういった変化をもたらしたか,少し事例をご紹介したいと思います。図 2-15 のグラフをご覧ください。WorldCat Local を導入したアメリカのカリフォルニア州にあるホーリーネームズ大学では,電子リソースの利用が 2011 年と 2012 年で130% 伸びました。2010 年と 2012 年を比較して見ると,350% も増加しています。また,図 2-16のウィラメッテ大学では,WorldCat Knowledge-
Base の働きにより,電子リソースの使用率が75%増加したというレポートが出ています。8. WorldShare Management Services(WMS)について
Silvis 氏も仰ったとおり,WorldCat Local はOCLCの提供するクラウドベースの図書館システム「WorldShare Management Services(WMS)」の一部です。WorldCat Local は WMS の一連のサービスの中で,利用者が資料を発見(ディスカバリー)するためのインターフェースとして機能するものです。WMSでは,利用者のためのディスカバリーインターフェースのほか,図書館員のための目録作成,収書,貸出,電子資料管理といった機能も提供しています。図 2-17 が WMSの構成要素全体を表したもの,図 2-18 が WMSの収書管理用のインターフェースです。現在すでに 40 以上の図書館がWMSを利用しており,導入館は日々増加しています。9. WorldCat Localの特長
最後にこれまでお話してきたことを踏まえ,WorldCat Local のお勧めポイントを簡単にまと
図 2-15 資料利用率の変化①
図 2-16 資料利用率の変化②
図 2-17 WMSの全体構成
図 2-18 WMS収書管理画面
2012 年図書館国際セミナー「ディスカバリーサービスと未来の図書館システム―WorldCat Local とWorldShare―」(平原) 129
めてお伝えしましょう。まず,①WorldCat Local は,皆さんの図書館の所蔵資料を利用者にもっとアピールし,その利用率を高めることができます。また,こちらのほうがさらに重要かもしれませんが,②WorldCat Local の導入によって,図書館の利用者に世界中の図書館蔵書を見つける機会を提供することができます。さらに,③WorldCat Local を導入することで,自分たちのペースで「Web スケール」な図書館へと進化していくことが可能となります。 そして私たちOCLC は,これからも図書館共同体として常に世界中のメンバー図書館や紀伊國屋書店のようなパートナー機関の声に耳を傾け,継続的にシステムを発展させながら,世界の図書館利用者にとって価値のあるサービスを提供していきます。ですので④図書館はOCLC のサービスを利用することで,世界規模の図書館共同体に参加し,他のメンバー館によって継続的に蓄積されていくデータの共有をはじめ,様々な恩恵を受けることもできるといえます。