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臨床研究は手間暇かけて丁寧に
公立昭和病院 平成 25年度第 3回疫学統計学勉強会
東京慈恵会医科大学 臨床疫学研究室博士課程大学院生 守屋章成
平成 26年 1月 23日
これまでのおさらい第 1 回 臨床研究とは◦臨床上の疑問には 2 種類ある
Background question → 教科書,総説 Foreground question → 臨床研究の論文(原著論
文)◦Foreground question を解決する=適切な臨床
研究論文を探し出すための 3 つのキーワード リサーチ・クエスチョン( RQ )
PECO
真のエンドポイント 研究デザイン
◦何が分からなくて何を知りたいのかを明確に2
これまでのおさらい第 2 回 臨床研究の読み方◦EBM の 5 つのステップ
1. 疑問の定式化 RQ – PECO
2. 情報検索3. 批判的吟味
二次資料( UpToDate など)の活用4. 患者への適用5. 1.-4. の評価
◦ 製薬会社が臨床研究を巧妙に利用するケースにご注意!
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本日のお題第 1 回 臨床研究「とは」第 2 回 臨床研究の「読み方」
第 3 回
臨床研究の「作り方」◦アンケート(質問紙)調査を題材に
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題材:アンケート(質問紙)調査臨床上の疑問を解決する目的ならばアン
ケート(質問紙)調査も立派な臨床研究比較的簡便に実施可能◦1 人~少人数でも,短時間・短期間,低コスト
看護師・療法士・技師・研修医など大規模研究の基盤を持ちにくい職種でも実施しやすい◦研究資金が乏しく期限を区切られた大学院生も
…安易に実施されがち!◦得られた結果が「だから何なの (So what ?) 」
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臨床研究の手順 – 概略1. リサーチ・クエスチョン( RQ )を立てる◦ 先行研究を徹底的に検索する
2. 研究デザイン・実施方法を選ぶ3. FINER クライテリアでチェックする4. 研究プロトコルを書く◦ 統計解析もプロトコル中で事前に決定する
5. 倫理委員会( IRB )の審査・承認を受ける6. 研究を実施する7. 結果を解析する8. 口頭 / ポスター発表,論文投稿を行う
疎かにされがち
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1. リサーチ・クエスチョンを立てる日常の疑問◦「要介護高齢者が肺炎等で入院してくる
と,見舞いやムンテラに来る介護者ってみんな疲れた顔してるなあ…気になる」
上司に何気なく打ち明けた◦「研究として調べてみたら? 次の院内研
究会で発表しなさい」と 余計なことを ありがたくご指導下さった
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1. リサーチ・クエスチョンを立てる疑問:「介護者が疲れた顔をしている」漠然としたこの疑問を自分なりに練って深め
て具体的で明確な RQ へ“育てる”ポイント:どこが漠然・曖昧なのか?◦「疲れた」の種類?
身体疲労?精神疲労?通常レベル?病的レベル?◦「疲れた」の原因?
日常の介護?入院したこと?入院理由(疾患の種類等)で左右される?介護以外の別件?
◦「疲れた」の期間? 入院中の今だけ?最近?ずっと前から?
◦「疲れた顔」という印象の正体? 実は自分の解釈の歪み(自分こそ疲れている)?介護者全般への苦手意識の現れ?
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1. リサーチ・クエスチョンを立てる疑問:「介護者が疲れた顔をしている」ポイント:その疑問を明らかにす
る / 解決することで何につながるか?◦自分の部署 /自分の病院 / この地域 / 日本全体 /世界全体の現状・傾向が明らかになる?
◦介護者に対する新しい介入・接し方のヒント(仮設)が得られる?
◦スタッフの負担軽減・能力向上のヒント(仮設)が得られる?
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1. リサーチ・クエスチョンを立てる疑問:「介護者が疲れた顔をしている」先行研究の徹底検索◦論文データベース(医中誌, PubMed など)
看護系では心理学系論文データベースも◦得られた論文からの孫引き◦EBM では疑問解決のために「主な論文 / 二次
資料」を検索すれば良い◦臨床研究では既に実施された同様の研究がな
いか「徹底的に」検索せねばならない徹底検索によって「主流の研究概念 / 手
法」や「キーワード」が見えてくる◦「疲れた」を調べる既存の方法など
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1. リサーチ・クエスチョンを立てる疑問:「介護者が疲れた顔をしている」RQ :「◯◯病院の急性期病棟に要介護
高齢者が緊急入院した時,入院初期での介護者の介護負担度はどれぐらいか」◦「自分の病院で出会う介護者の実態をまず正確に把握しよう」
◦PECO Patient…◯◯病院緊急入院の介護者 Exposure… (なし) Comparison… (なし)
※後の発表時に他の研究結果と比較することは可 Outcome… 質問紙法による介護負担度
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2. 研究デザイン・実施方法を選ぶ質問紙法(アンケート)を選択した時点で自動的に「横断研究」◦横断研究…ある一時点の集団の傾向を知る
⇔縦断研究…一定の時間経過での集団の変化を知る『「疲れた顔」の介護者を調べた上で,そ
の人達にある種の働きかけをすることで「元気な顔」で帰ってもらえないかなあ』◦これは「縦断研究」の中の「介入研究」
対照群を作らない=前後研究,作る=比較研究◦質問紙法による横断研究より遙かに大変!
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2. 研究デザイン・実施方法を選ぶ「介護での負担度」を調べる既存の質問紙◦検索→数 10 種類の質問紙(アンケート)が?◦日本国内の研究で頻用されるものだけでも 13 種
類? 松浦 . 大阪経大論集 . 2012;62(5):91
◦それぞれに限界があって「完璧」な質問紙は存在しない
限界がある中で自分の RQ に最も近いものを選択する◦研究結果に限界が生ずることも“覚悟”する
安易に「オレ流の疲労度調査」をしない!◦新しい質問紙を作るのはトンデモナイ労力
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ハンドアウトから訂正
松浦 . 大阪経大論集 . 2012;62(5):91
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2. 研究デザイン・実施方法を選ぶ本体の質問紙の他にも同時に調査せねばなら
ない項目=背景( demography )◦介護者の背景
性別,年齢,家族構成,職業の有無,既往歴(特に精神疾患),介護に費やす週当たりの時間, etc.
◦要介護者の背景 性別,年齢,入院病名,要介護の原疾患,要介護度(介
護保険上の認定 /その他の指標),長谷川式 /MMSE ,etc.
介護者から調査するか?カルテ等から調査するか?匿名にするか?記名にするか?◦匿名:回答しやすい⇔回収後は特定出来ない◦記名:回答しにくい⇔回収後に特定出来る
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2. 研究デザイン・実施方法を選ぶ全体の分量・回答時間は?◦ 少ないほど協力を得やすい⇔調査内容が限られる
何例以上集めるのか?◦ 先行研究 / 質問紙ごとに要求される数 / 解析手法に依存
「 3 の法則」 ※観察研究・介入研究の場合は想定アウトカム数から算出
◦長期間になる場合,季節変動や経年変動も考慮いつ,誰が依頼するのか?回収は?◦通常業務の合間に依頼?
自分だけ?部署全体の協力?◦ 調査専属の日時・人員を確保?
勤務時間を充ててもらう?休日を利用?◦横で待っている?その場を離れる?
回答しやすい雰囲気⇔質問に答える即応性16
3. FINER クライテリアでチェック臨床研究をより良くするチェックリスト◦ ☑ Feasible 実行可能である
ランダム化比較試験 RCT は魅力的だが実行不能◦ ☑ Interesting 興味深い
実行可能を求めすぎてつまらなくなってはダメ◦ ☑ Novel 新しいものである
誰かの二番煎じでは価値が下がる◦ ☑ Ethical 倫理的である
被検者の身体や心理の被害が最小限であるよう◦ ☑ Relevant 臨床現場に関連が深い
臨床現場から遊離した研究では意味が無い17
4. 研究プロトコルを書く 研究プロトコル(研究計画書)
1. 研究課題名2. 目的≒RQ3. 方法
研究デザイン,実際の調査法・評価項目,統計解析手法4. 対象(被検者);選び方5. 目標症例数と予定期間6. 実施場所7. 被検者の安全性確保8. 被検者が研究に参加する利益・不利益9. 費用10. データの取扱い・保管方法11. 研究者連絡先12. 利益相反13. 倫理(遵守する倫理指針)14. 参考文献
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4. 研究プロトコルを書くプロトコル作成はエネルギーが必
要!◦書いていくうちに不備がボロボロと出て
来る→それを補完することで研究の質が上がる
プロトコルを書き上げれば研究は半分終わったようなもの◦守屋の学位研究プロトコル本文: A4×6枚
◦「プロトコルを誰かにポンと渡してもその人が明日から実施出来るぐらいの内容で」
続く倫理審査にも耐えうるプロトコルを
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5. 倫理委員会( IRB )の審査・承認大学(学部),病院,学会,研究機関などの
施設の内部に設置◦医学研究(プロトコル)の事前審査
IRB = Institutional Review Board
◦医療職(内部・外部),有識者(弁護士など),患者代表,市民代表などで構成
◦自施設にない場合に代理で倫理審査してくれる施設もある
◦1ヶ月~数ヶ月に 1 回開催;提出締切日ありIRB の審査・承認を得たら,以後プロコトルは一切書き換えない!寸分違わず実施!◦書き換えたら再度 IRBを通す!
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5’. 研究倫理の指針国の定めたガイドラインあり◦「厚生労働省 研究に関する指針につい
て」 厚生労働省+文部科学省合同で策定
◦法的義務ではないが,遵守している(≒ IRB審査を経ている)ことを明記しないと論文を受け付けてくれない雑誌が増えている
「疫学研究に関する倫理指針」◦質問紙法の場合に従う倫理指針◦完全匿名調査の場合は IRB 審査が不要なこ
とも21
5’. IRB 審査(付議)不要の条件「疫学研究に関する倫理指針」4 研究機関の長の責務 - (3) 倫理審査委員会への付議◦ (中略)ただし、次のいずれかに該当する研究計画につい
ては、この限りでない。◦①当該研究計画が次に掲げるすべての要件を満たしており、
倫理審査委員会への付議を必要としないと判断した場合 ア 他の機関において既に連結可能匿名化された情報を収集する
もの、無記名調査を行うもの、その他の個人情報を取り扱わないものであること。
イ 人体から採取された試料を用いないものであること。 ウ 観察研究であって、人体への負荷又は介入を伴わないものであること。
エ 研究対象者の意思に回答が委ねられている調査であって、その質問内容により研究対象者の心理的苦痛をもたらすことが想定されないものであること
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6. 研究を実施するプロトコルを書いた, IRB を通した
(必要に応じて)→あとはプロトコル通りに粛々と実
行するのみ◦IRB を通すまで:頭を使う◦研究を実施:手と足を使う
実施開始してから「あれ,ここどうすんだっけ?」にならないためにも十二分なプロトコルを
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7. 結果を解析する統計解析は「プロトコルに書いた通り」にやる
だけ◦データを取ってから解析手法を選ぶのは言語道断,御法度!
◦プロトコルを書く段階で統計を勉強する /詳しい人に相談する 得られるデータに最も適切な解析手法を事前に決めておく
「有意差」が出なくてもそれは一つの研究結果◦「有意差病」にご注意!
横断研究の限界◦「有意差」が出ても「因果関係」は言えないことに
注意!(「関連・相関」しか言えない)
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8. 口頭 / ポスター発表,論文投稿せっかく頑張って研究したんだからみんなに知っ
てもらおう!◦「新しい学術成果をこの世に加える」
院内や学会で発表◦口頭発表(口演),ポスター発表◦聴衆とリアルタイムに討論出来る
論文執筆の参考,次の研究へのヒント論文投稿◦論文(原著論文)として雑誌に掲載して初めて学術的
価値を持つ たとえ「有意差」がなくても立派な学術的価値
◦永遠に後世に残る 誰かが参照することで学術的価値が広がる
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臨床研究は手間暇かかる臨床研究は手間暇かかります◦論文読むのは早くて 10秒,長くても 15 分◦その論文が雑誌に載るまでに 1年以上◦「読む」と「作る」は大違い
「こんな手間かけなくていいんじゃないの?」◦研究内容,発表場所によっては簡略化出来る部分も
あるでしょう◦しかし大小問わずいかなる臨床研究も「被検者(患
者)を利用している」ことを決して忘れない!◦利用させていただくからには,世に残す学術的価値
を少しでも高める努力を真摯に!26
臨床研究を始めるには正規の指導者,または研究の経験豊富な上司・先輩の指導を仰ぐ
「手取り足取り」の指導が不可欠◦質問紙なら項目の一言一句◦プロトコルの「てにをは」まで
努力は必ずあなたに何かを残します
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3 回に渡るご清聴誠にありがとうございました
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