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1 UX ににににに - UX にに X に ににに IF に - UX ににににに - UX にに X に ににに IF に - にににに にににに Masaakikurosu @spa.nifty.com 1 2012 に 12 に 15 に ( に ) 11:00 - 2012 に 12 に 16 に ( に ) 19:00 DevLOVE Conference 2012 にににににににににににににに ににににににににに にに 12 に 1 ににににににににに にににに 17 に
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121216 uxにもの申す

Jun 27, 2015

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Masaaki Kurosu

Dev Loveから依頼された講演で、現在のUXの考え方を批判した時のものです。
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1

UX にもの申す- UX から X へ、そして IF へ -

UX にもの申す- UX から X へ、そして IF へ -

放送大学黒須正明

[email protected]

1

2012 年 12 月 15 日 ( 土 ) 11:00 - 2012 年 12 月 16 日 ( 日 ) 19:00DevLOVE Conference 2012株式会社サイバーエージェント東京都渋谷区道玄坂一丁目 12 番 1 号渋谷マークシティ ウエスト 17 階

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1. ユーザビリティからUX へ

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ユーザビリティ概念

1991 Shackel, B.

1993 Nielsen, J.

一連の ISO 規格

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目標達成

距離

初期状態

目標状態

有効さ

効率

無効

有効だが非効率的

有効かつ効率的

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ユーザビリティ ( と UX) に関する ISO規格

• TC159 (Ergonomics) • JTC1 (Information Technology)

ISO 9241-11:1998

ISO 13407:1999

ISO 9241-210:2010

ISO/IEC 9126-1:2001

ISO/IEC 25010:2011

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①TC159 系

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ISO9241-11 (1998)

• ユーザビリティ – ある製品が、指定された利用者によって、指定された利用の状

況下で、指定された目的を達成するために用いられる際の、有効さ (effectiveness) 、効率 (efficiency) および利用者の満足度 (satisfaction) の度合い」

• 有効さについては「ユーザが、指定された目標を達成する上での正確さと完全さ」

• 効率については「ユーザが、目標を達成する際に正確さと完全さに費やした資源」

• 満足度については「不快さのないこと、及び製品使用に対しての肯定的な態度」

• ISO9241-210– システムや製品、サービスが、指定された利用者によって、指

定された目標を達成するために用いられる際の、指定された利用の状況下における有効さ、効率、および満足度の度合い )

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ISO9241-210 におけるHCD プロセス

利用状況の理解と明確化

ユーザの要求事項の明確化

デザインによる解決案の作成

評価

デザインによる解決案は要求事項

に適合適切な段階へ反復

人間中心設計プロセスの計画

ISO13407 と基本的には同じであり、実質的にはウォーターフォールとみなして良い。ただし、デザインと評価の間の反復を重視している点は重要

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HCD1.0 から HCD2.0 へ

• HCD 1.0– ISO13407:1999– ユーザビリティを目標とした

• HCD 2.0– ISO9241-210:2010– 建前として UX を目標としている

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②JTC1 系

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Ext

erna

l Met

rics

(IS

O 9

126

-3)

Internal and

External Quality

Functionality

Usability

Reliability

Efficiency

Portability

Maintenability

SuitabilityAccuracyInteroperabilitySecurityFunctionality Compliance

UnderstandabilityLearnabilityOperabilityAttractivenessUsability Compliance

MaturityFault ToleranceRecoverabilityReliability Compliance

Time BehaviorResource UtilizationEfficiency Compliance

AdaptabilityInstallabilityCo-existenceReplaceabilityPortability Compliance

AnalyzabilityChangeabilityStabilityTestabilityMaintenability Compliance

Quality in Use

Effectiveness

Productivity

Safety

Satisfaction

品質特性 副品質特性

Ext

erna

l Met

rics

(IS

O 9

126

-2)

品質特性ISO9126-1: 2001

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System/Software ProductQuality

(ISO/IEC 25000:2005ISO/IEC25010:2011)

Product Quality

functional suitability

compatibility

performance efficiency

usability

co-existenceinteroperability

appropriatenessrecognizabilitylearnabilityoperabilityuser error protectionuser interface aestheticsaccessibility

maturityavailabilityfault tolerancerecoverability

security

reliability

maintainability

portability

confidentialityintegritynon-repudiationaccountabilityauthenticity

modularityreusabilityanalysabilitymodifiabilitytestability

adaptabilityinstallabilityreplaceability

functional completenessfunctional correctnessfunctional appropriateness

time behaviourresource utilisationcapacity

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Quality in Use (ISO/IEC 25000:2005ISO/IEC25010:2011)

Quality in Use

effectiveness

satisfaction

efficiency

Freedom from risk

context coverage

effectiveness

usefulnesstrustpleasurecomfort

efficiency

economic risk mitigationhealth and safety risk mitigationenvironmental risk mitigation

context completenessflexibility

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1414

2. UX という概念

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ユーザビリティから UX へ -1

• ユーザビリティ概念から UX への流れを明瞭な形で最初に提起したのは Norman(1998)– 「製品に関して、それがどのように見え、学習され、使用され

るか、というユーザのインタラクションのすべての側面を扱う。これには、使いやすさと、最も重要なこととして、製品が満たすべきニーズとが含まれる」

– ただし、この定義には、初期の定義であったからか、期待から始まり長期的利用に至るライフサイクルプロセスが含まれておらず、フィードバックループについても言及されておらず、さらに品質特性と感性面についての言及もない

• UX と U がついているのは、 Usability から発展してきた概念であることを示す。

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ユーザビリティから UX へ -2Norman, D.A. の回想

“I invented the term because I thought human interface and usability were too narrow. I wanted to cover all aspects of the person’s experience with the system including industrial design, graphics, the interface, the physical interaction, and the manual. Since then the term has spread widely, so much so that it is starting to lose it’s meaning”

Norman, D.A. and Merholz, P. (2007)– P.M.: “So now it’s 2007, what do you think of the phrase, ‘user

experience’?”– D.A.N. “User experience, human centered design, usability; all those

things, even affordances. They just sort of entered the vocabulary and no longer have any special meaning. People use them often without having any idea why, what the word means, its origin, history, or what it’s about.” 

http://www.adaptivepath.com/ideas/essays/archives/000862.php

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様々な定義の例

• Nielsen-Norman Group– 企業やサービスや製品とのエンドユーザのインタラクションのすべて

の側面のこと。

• UXPA– ユーザの全体的な知覚の構成要素となる製品やサービスや企業とユーザとのイ

ンタラクションのあらゆる側面のこと。– 先の Norman の定義同様、これらは「あらゆる」という形で「ずるい」定義に

なっている。

• Hassenzahl– 人間工学的品質と感性的品質が認知プロセスの中で魅力の判断として

統合され、結果的に、利用の増加のような行動的結果と満足のような情緒的結果をもたらす

– 感性面について最初に言及した点で意義が大きい

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主観的側面への関心

1990 Csikszentmihalyi, M.

1998 ISO9241-11 における満足感

2000 Jordan, P.

2000 Hassenzahl, M. における Hedonic Attribute

2004 Norman, D.A.

2011 Tractinsky, N. における Aesthetics

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感性経験を記述する言葉

Comfort (心地よさ )

Enjoyment (楽しさ )

Pleasure (嬉しさ )

Amenity (快適さ )

Happiness (幸福感 )

Satisfaction (満足感 )

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  ユーザビリティ UX

関数とみると

独立変数 (のひとつ ) 従属変数

因果関係とみると

原因 (のひとつ ) 結果

時間的位置 (基本的に )使用中使用前、使用中使用後

品質特性 客観的 客観的と主観的

特性 実用的 実用的と感性的

メンタルプロセス

知覚 知覚と統覚

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ISO9241-210 の UX の定義 (2010)

• 製品やシステムやサービスを利用した時、および / またはその利用を予測した時に生じる人々の知覚や反応のこと– 予測 (予期、期待 ) については言及しているものの、十分な定

義とはいえない。– おそらくは、世間が先行し、後付けであったことが関係してい

るのだろう• HCD は UX を重視するものでもある• ISO9241 におけるユーザビリティ概念は広義の概念で

あり、ユーザの個人的目標という観点から解釈したときには、仕事における満足感や単調さの排除といった項目と共に、典型的には UX と関連した知覚や情緒の側面を含みうるものである

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UX白書• 2010 年 9 月 15-18 日に

ドイツの Dagstuhl でユーザビリティ専門家を30 人集めた” Demarcating User Experience - Dagstuhl Seminar”

• 2010 年 2 月に一般公開された (Roto et al. 2011)   12pages– 1. 序– 2. 現象としての UX– 3. UX の時間的展開– 4. UX に影響する要因– 5. 実践としての UX22HCD-Value による和訳あり

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UX の現象的特性• UX は一般概念としての経験の下位集合である。• UX はシステムとの出会いを含む。• UX は個人に特有なものである。• UX は過去経験やそれにもとづく期待に影響される。• UX は社会的文化的文脈に根ざしている。• UX は技術志向なものではなく、人間に焦点を当てるも

のである。• ユーザによって知覚されたユーザビリティは全体的 UX

に寄与する典型的な側面ではあるが、 UX はそれとは異なる。

• UX デザインはユーザインタフェースデザイン以上のものである。

• UX はブランドや消費者、顧客経験と相互に影響しあうものではあるが、それらとは別のものである。23

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UX に影響する要因

• 文脈 (context)– 他人と作業をするというような社会的文脈– テーブルの上で製品を使ったりバスの中で使ったりという物理

的文脈– 周囲にあって同時に注意を払うべきタスク文脈– ネットワークへの接続などのような技術的・情報的文脈

• ユーザ– モチベーションや気分、精神的資源や身体的資源、期待

• システム– 対象システムにデザインされた機能性や審美性などの特性– 機器に貼り付けられた写真のようにユーザが追加したり変更し

たりした特性– ブランドや製造業者のイメージ

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白書のモデル

• 他のシステムやブランドに関する事前経験の関与が表現されている

• その他の情報が入ってきた後、新システムを購入したり入手したりする

• その後、短時間の UX やエピソード的 UX(新しい機能に気づくとか、故障するなど ) が徐々に累積する

• 利用している時期としていない時期を交互に交えながら、当該システムやブランドなどに関する情報が入ってくる

• それら全体を累積的 UX と呼ぶ

累積的 UX

エピソード的 UX短時間 UX

時間

当該システムやブランド、他のシステムに関する情報

利用している期間利用していない期間

新システムとの最初の出会い

新システムに関する情報

他のシステムやブランドに関する経験

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ユーザの種類ユーザの種類 例

直接ユーザ

システムと相互作用する人

一次ユーザ一次的な目標達成のためにシステムと相互作用する人

MRIの検査技師

教室で PPTをプロジェクタで投影する教師

業務システムを利用して業務を行う社員(direct user) (primary

user)

  二次ユーザ システムへのサポートを提供する人

MRIのメンテナンス担当者や医局の管理者

プロジェクタ機器を管理している担当者や、機器導入の決済者

情報部門担当者と業務のマネージャ  (secondary

user)

間接ユーザシステムとの相互作用は行わないが、

その出力を受け取る人

検査技師から結果を受け取る医師

授業を受けている学生

(同社の製品やサービスを受ける人々 )

(indirect user)

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探索と発見・出会い

仮説構築( 主観的期待感・客観的予想 )

仮説検証(試用 )

購入・入手

最終的な印象形成

飽き・不満足・機能不足・性能劣化・故障による

使用中止や廃棄

情報

企業の提供する情報

TV CM, 広告カタログ、販売員企業サイト、取説

マニュアル

一般に入手できる情報

雑誌、新聞、ブログSNS 、対面 ( 知人等 )

消費者

ユー

問題への気づき、必要性の認識と欲求・動機付け

印象・評価短期的利用

(累積された長期的利用 )

利用状況の理解と明確化

ユーザの要求事項の明確化

デザインによる解決案の作成

評価

製造・販売

企画

ユーザ 企業

ユーザサポート

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まとめると

• ある環境のなかにいる生活体が、能動的または受動的に感覚器官を通して認知し、記憶し、学習した情報が、知的機能と感情機能によって把握された結果であり、次の経験を構成し獲得するための仮説の構築につながる。

• キーワード– 環境、認知プロセス、知性と感性、仮説構築

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UX の調査法・評価法

• 経験サンプリング法• 前日再構成法• AttrakDiff• 体感評価用具

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経験サンプリング法(ESM: experience sampling method)

• ユーザに随時連絡を行い、その時に何をしているか、何を考えているか、どんな気持ちでいるかを尋ねる( 日常行動のサンプリング ) 。

• 連絡は携帯電話で行うことが多く、一定時間おきに行ったり、ランダムに行ったりする。またそのときの気持ちについては、 5 段階尺度を用いたり、後述するAttrakDiff を利用したりする。

• 記憶による情報の変容やバイアスを防ぐことができるのが利点といえる。

• Csikszentmihalyi も利用した。

30

Roto, V., Vermeeren, A., Vaananen-Vainio-Mattila, K., and Law, E. (2011) “User eXperience Evaluation – Which Method to Choose?” INTERACT2011 Tutorial TUT115

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前日再構築法(DRM: day reconstruction method)

• 前日のできごとをエピソードの羅列として記述させる回顧的日記法 (Kahneman et al. 2004) 。

• まずいろいろなエピソードを記述させ、それぞれのエピソードについて状況説明や当時の気持ちを書かせる。

• この結果、活動や状況に関連した正確な経験をまとることになる。

Roto, V., Vermeeren, A., Vaananen-Vainio-Mattila, K., and Law, E. (2011) “User eXperience Evaluation – Which Method to Choose?” INTERACT2011 Tutorial TUT115

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AttrakDiff

• Hassenzahlほか (2003) の開発した尺度で、 hedonicと pragmatic な経験について、短縮版は 10個、フルバージョンは 21個の評定尺度によって 7 段階で評価する。

• 各項目は対になった形容詞から構成されている。

• そこに含まれている尺度は、Pragmatic な品質 (PQ)4 項目、 Hedonic な品質 : 同定 (HQ-I)4 項目、 Hedonic な品質 :刺激 (HQ-S)2 項目である。

Roto, V., Vermeeren, A., Vaananen-Vainio-Mattila, K., and Law, E. (2011) “User eXperience Evaluation – Which Method to Choose?” INTERACT2011 Tutorial TUT115

PQ 混乱した - 構造化された実用的でない - 実用的な予測不能な -予測できる複雑な -単純な

HQ-I 退屈な - 魅惑的な格好悪い - 格好いい品質の低い - 品質の高い想像力の貧困な -創造的な

HQ-S 良い -悪い美しい -醜い

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Sensual Evaluation Instrument

• ユーザは、その時々の心理的状態、特に感情状態を表現するために、それを言語化せず、様々な形 ( とんがったり、丸かったり、凸凹していたり ) をした8 つの立体の中からひとつ以上選択する。

• 選択した立体に関して後刻インタビューが行われ、経験内容について言語的データを得る。

• 立体は、即座に言語化しにくい心的状態をまず選択的に表現させるためのもので、具体的な内容については後でインタビューによって明らかにする。

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Roto, V., Vermeeren, A., Vaananen-Vainio-Mattila, K., and Law, E. (2011) “User eXperience Evaluation – Which Method to Choose?” INTERACT2011 Tutorial TUT115

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3. UX から X へ

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UX の持つ利点 -包括性• 単品の評価に焦点化していた従来のユーザビリティ評価の限界を、システムやサービス視点を含めることで乗り越える– 相性問題

• 新しい周辺機器、新しいソフトウェアのインストールで発生• 誰がその問題に責任を持つべきか• 自社製品の範囲内でその利用上の問題を考えていれば良いのではなく、相互に乗り入れた問題についてもそれなりの対応をすべき

– 交通機関• 乗り心地や乗降のための操作や手順だけが問題なのではない• たとえば乗り継ぎ時間が適切に設定されているか• 製造業だけでなくサービス業にとっても検討すべき点を明示している

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UX の功績

• 欲求から印象まで、経験の時間的幅の長さを考えさせてくれたこと

• 経験 (X) というキーワードから、ユーザに限定されないその多様性を考えさせてくれたこと

UX の不適切さ• User だけではない

– サービスなら Recipient

• あまりに一人歩きしすぎた– 多義的な概念になってしまった– しかも UXD という不適切な用語まで生み出した

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探索と発見・出会い

仮説構築 ( 主観的期待感・客観的予想 )

仮説検証 (試用 )

購入・入手

最終的な印象形成

飽き・不満足・機能不足・性能劣化・故障

による使用中止や廃棄

情報

企業の提供する情報

TV CM, 広告、カタログ、販売員、企業サイト、取説

マニュアル、ユーザサポート

一般から入手される情報

雑誌、新聞、ブログSNS 、対面 ( 知人等 )

消費者

ユー

問題への気づき、必要性の認識と欲求・動機付け

印象・評価

顧客

短期的利用

(累積された長期的利用 )

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最後の印象が大切

• ユーザビリティ等の品質特性や外観形状などの感性特性という独立変数が良くても、 UX が良くなければ駄目だ、という同じロジック

• UX が良いはずだと思っても、受け止め方は人によって様々

• 良い UX を提供したつもりでも、残された印象が良くなければ効果がない

• 経験の様々なフェーズは、最終的に印象に集約されるだろう。

• 効果指標としての印象

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顧客経験 (CX) とユーザ経験 (UX)

• 顧客という言い方は、人工物提供側に視点がおかれている。

• 他方、消費者やユーザという言い方は、比較的第三者的な視点から見ている。– 同じ人物がフェーズによって異なる呼び方をされている。– 購入前は消費者、購入後はユーザ

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サービスを考えた場合 (SX)

• サービスを、ではなく、サービスも• サービスは「使う」ことか、「受ける」ことか

– User とはニュアンスが異なる

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立場による多様な経験 (X)• 人工物と関係がある経験 ( 提供側 )

– 制作者として• 制作経験

– 提供者として• 提供経験

• 人工物と関係がある経験 (受容側 )– 購入者として

• 消費者経験 (Consumer Experience)• 顧客経験 (Customer Experience)

– 利用者として• ユーザ経験 (User Experience) – Active (product)• 受容者経験 (Recipient Experience) – Passive (service)

• 人工物との関係が特にない経験 (自分自身、自然物、他の人間などとの関係 )

– 人間として• 認知的経験・・思索をめぐらす、など• 感情的経験・・恐怖体験、など• 対人的経験・・軽蔑、感謝、など

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一般化すれば X

• 立場や役割は異なっても、人間の経験の内容と質を向上させようという気持ちは共通している筈。

• だったら、ユーザビリティ時代の澱を捨て、シンプルに X で行こう。

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3. X の三次元

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ユーザビリティ、 UX 、 X 、 & QOL

品質特性-ユーザビリティ-信頼性-安全性-等々

感性特性-満足感-楽しさ-心地よさ-等々

意味性-目的適合性-ありがたさ-欲しかった-等々

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3つ目の基準軸としての意味性

感性特性

意味性

Null PositiveNegative

Negative

Positive

品質特性

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46

①品質特性

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47

ユーザビリティだけではない

Nielsen のモデルの再評価 ISO 25010:2011

システムの受容可能性(System Acceptability)

社会的な受容可能性(Social Acceptability)

実用的な受容可能性(Practical Acceptability)

コスト(Cost)

メンテナンス(Maintenance)

互換性(Compatibility)

ユースフルネス(Usefulness)

安全性(Safety)

信頼性(Reliability)

Product Quality

functional suitability

compatibility

performance efficiency

usability

security

reliability

maintainability

portability

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②感性

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Aesthesis(Aristotle)

Greek German

Aesthetics= sensible cognition

(Baumgarten)

France

Sensibilite= ethical impression, sympathy, sadness

(Febvre)

美学(Aesthetica)

= science of beauty(西周 )

Japan

Kansei( 感性 )= sensitivity, sense, sensibility, feeling

aesthetics, emotion

Sinnlichkeit= sense, sensuality, feeling, awareness,

spirit, sensitivity

Present

Aesthetics(Kant)

Historical background of kansei

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視覚受容器      STM(短期記憶 )      (WM 作業記憶 )

聴覚受容器

他の感覚受容器

音声出力系 出力バッファ

身体出力系 出力バッファ

VIS( 視覚的感覚記憶 )

AIS(聴覚的感覚記憶 )

SIS( 感覚記憶 )

感情プロセス(新規イベントに感情価を付与 )

意味的情報の貯蔵と検索

( 項目と感情価 )

過去のイベントの貯蔵と検索

( イベントと感情価 )

類似のイベントの貯蔵と検索

( イベントと感情価 )

LTM( 長期記憶 )意味記憶

エピソード記憶

把持ループ

把持ループ

把持ループ

イベントと感情価のペア

減衰 減衰

項目と感情価のペア

減衰

減衰

減衰

外発的感情 内発的感情

情報処理制御部

身体内部組織 データ制御

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③意味性

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事例 某社のテレビ - この意味性は ?

• 某社は、「水に包まれた微粒子イオン」発生装置を搭載した 19型液晶テレビを、 6 月下旬に発売。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は 46,000円前後。カラーはブラック (K) とホワイト(W) の 2色。

• カビ菌や花粉の抑制、脱臭、うるおい美肌空間の実現などに効果があるという「水に包まれた微粒子イオン」発生装置をテレビに搭載したシリーズの 19型モデル。視聴環境をより快適なものにするとしている。

– http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20120601_536993.html から編集

• テレビ機能いらないんじゃね? • こういう考え方は一回止めてシンプルに一から見直すべきだと思う• 冷蔵庫テレビはまだか! • むしろ企画書見たいねw • どんな手を使えばこんなの通せるのか知りたいww

– http://gahalog.2chblog.jp/archives/52101332.html より抜粋

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意味をみつける

• 意味を見つける努力– 優れた直感・洞察力– フィールドワーク

• 直感と洞察力という個人の資質– アイデアマンが存在することは確かだが– どうやって、その正しさを確信できるか– 前回成功したから今回も成功するといえるか

• フィールドワークによる裏打ち– ただし、裏付けデータだけを取ろうとしてはいけない– それはフィールドワークのバイアスとなる– 仮説検証のためのフィールドワークは虚心に行うこと

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意味あるものを作る組織と活動

• アタマを自由にさせる– 現在の担当業務の枠からアタマを自由にさせること– それを許容できる業務システム

• 柔軟な姿勢を持つ– 駄目だと分かったらプロジェクトを解散する英断

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4. X を確実にするために

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現場主義、当事者主義の質的手法へ

• 定性的 ( 質的 ) な技法は、市場を同定し、デザイナにどこを開拓すればいいかを示してくれる。

• 市場の仕事を理解するためには、顧客の仕事のやり方を調べ、仕事のやり方や人々のニーズに関する発見を提供してくれる定性的な技法が必要である。

Beyer, H. and Holtzblatt, K. “Contextual Design” Morgan Kaufmann 1998, p.33

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フィールドワークの重要性

• ユーザの特性やその利用状況を的確に把握するためには、フィールドワークが欠かせない

• 特に成功体験のある技術者は、自分の直感 ( その多くは自分をユーザ像と見立てている ) だけで行こうとするが、その歩留まりをあげるためにはフィールドワークが必要

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面接法 ( インタビュー法 )

• インフォーマントと会って対話をするなかから情報を得る手法。

• 心理学では、目的によって相談的面接と調査的面接に分類されている。– 調査的面接に該当する

• 対象者の人数によって、個人面接と集団面接とに分類される。– 個人面接がベター

• 面接の場所によって、会議室面接と現場面接に分けられる。– 現場インタビューは必須

• 構造化のレベルによって、構造化法、半構造化法、非構造化法に分けられる– 半構造化法では、質問や回答による分岐に応じた追加質問を用意して

おき、さらに流れに応じて質問の順序を変えたり、補足的質問を行うなど、臨機応変な対応を行う

• データ処理には GTA や SCAT などがあるが、必ずしも手をかけすぎる必要はない。

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面接者の態度• 傾聴

– 知的・論理的にだけでなく、インフォーマントの世界を共感的に理解する。

• ありのままの受容– 面接者はインフォーマントを批判しない。

• 言葉の個別の意味の明確化– インフォーマントの言葉を大切に聞くように心がけ、その意味をじっくり確認する。

• 教えてもらう、という姿勢– 自己流に解釈し、わかったつもりにならない。

• 主体性の尊重– 質問への回答には、圧力をかけず、主体的に語られるのを待つ。

• 倫理的責任– インフォーマントをひとりの人間として尊重する。

• 礼儀– 自分の癖を知り、服装、表情、言葉遣いなどでインフォーマントに不快感や緊張感

を与えないような配慮を心がける。

高野陽太郎、岡隆編「心理学研究法」有斐閣アルマ 2004 より  (部分的改変あり )

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ビジネスエスノグラフィは十分か

• かならずしも GTA などを利用する必要はない• しかし、まず ( 理論的飽和が起きるまで )十分な情報を得て、それを (仮説で歪曲せずに )虚心に謙虚に解釈すること

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実環境における実利用への着目

• ユーザビリティはユーザビリティラボにおけるテストでも評価しうる概念であった

• UX は実際の環境において実際に機器やシステムを利用している場合にはじめて評価できる

• デジカメをハンドバッグやウェイストポート、ズボンのポケットなどに入れておいて使っていると、出し入れの際にモードダイヤルが回転してしまうことがある。– 実環境性や実利用状況に関わる問題は、ラボテストではなかな

か摘出が困難– モードダイヤルのロックという問題そのものはユーザビリティ

の問題だが、 UX の導入によって視野が拡大し、そうした問題をも摘出することが可能となる

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長期的モニタリング (ISO9241-210)

• ユーザの実利用にもとづくフィードバックは長期的な問題を同定し、将来のデザインへつながる点で重要である。 (4.4)– デザインにおける意志決定は、ユーザの満足感に基づくべきで

ある。それは、心地よさや楽しさという短期的なものだけでなく、健康や生き方や仕事への満足感などに関連したものである。 (4.6)

• 人間中心設計のプロセスは、製品やシステム、サービスに関する長期的モニタリングを含む。– フォローアップのための評価はシステム評価の一部として重要

であり、システムの実装から 6ヶ月から 1 年の間に実施すべきである。

• 短期的な評価と長期的モニタリングの間には重要な相違点がある。

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6363

5. IMPRESSION FORMATION

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印象の工学

• 「印象の工学とはなにか ― 人の「印象」を正しく分析・利用するために」がある– 丸善プラネット (2000/01)

• スタンスに共通性がある

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X の最終段階の IF を重視しよう

• 結局、最終的には、どういう印象を抱いてもらえるかが大切なのではないか

• IF: Impression Formation  印象形成– 心理学では、従来、対人認知について使われることが多かった– 経験はまだ最終状態が不確定、印象は確定的– 印象で『良さ』を確定させることが大切

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DIF へ

• UXD から DIF へ– UX Design って、可能なことだったのか ???– Designing for User Experience– Designing for Experience– そして– Designing for Impression Formation が正しく、適切である

• DIF は他社との差別化につながる語感を持っていて結構 !

• 重要なのは、きちんとしたプロセスを経ること– 次図の各ステップをきちんと遂行する– 特に顧客調査をきちんと行う

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探索と発見・出会い

仮説構築 ( 主観的期待感・客観的予想 )

仮説検証 (試用 )

購入・入手

最終的な印象形成

飽き・不満足・機能不足・性能劣化・故障

による使用中止や廃棄

情報

企業の提供する情報

TV CM, 広告、カタログ、販売員、企業サイト、取説

マニュアル、ユーザサポート

一般から入手される情報

雑誌、新聞、ブログSNS 、対面 ( 知人等 )

問題への気づき、必要性の認識と欲求・動機付け

印象・評価短期的利用

(累積された長期的利用 )一回利用

サービス

顧客

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社会心理学における印象形成

• あくまでも対人認知に関する考え方であるが、対象を人から人工物に置き換えても十分に成立する。

• Brewer, M.B. (1988) のモデル• Fiske & Neuberg (1990) のモデル

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69

Brewer, M.B. (1988) のモデル刺激人物

同定化

関連性 ?

停止

自己関与 ?

カテゴリー化 /タイプ化

一致 ?

停止

個人化

個別化

自動的処理

統制処理

山本眞理子、戸山みどり (編 ) (1998) 「社会的認知」 誠信書房

No

Yes

No

No Yes

Yes

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70

刺激人物

同定化

関連性 ?

停止

自己関与 ?

カテゴリー化 /タイプ化

一致 ?

停止

個人化

個別化

自動的処理

統制処理

No

Yes

No

No Yes

Yes

刺激人物が知覚者の要求や目標に関連しているかどうか意図されない 性別や年齢、人

種などの判断次元として高頻度のものにもとづいて判断

カテゴリー依存型処理 - 特定集団の一員として処理 (個人性に着目しない )

個人依存型処理- その人物個人にもとづいて処理

当該の人物に注目して、その特徴を判断しようとする

その人物をそのカテゴリーの特殊例とする

その人物に強い自己関与をもっていると、個人に焦点の当たった処理

その人物をそのカテゴリーの一般例とする

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刺激人物

同定化

関連性 ?

停止

自己関与 ?

カテゴリー化 /タイプ化

一致 ?

停止

個人化

個別化

自動的処理

統制処理

No

Yes

No

No Yes

Yes

いわゆる当たり前品質的な製品やサービス

自分の価値観にぴったりした魅力的品質の製品やサービス

まあ、よくある「○○○」だという位置づけちょっと変わっ

た「○○○」で面白い

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72

Fiske & Neuberg (1990)のモデル

刺激人物

初期カテゴリー化

関心や関連性 ?

確証的カテゴリー化

再カテゴリー化

ピースミール統合

ピースミール依存型カテゴリー依存型

反応の公的表明の可能性

更なる評価の必要性 ?

何らかの処理の必要性 ?

成功

停止

刺激人物の属性への注意

成功No

Yes

Yes No

No

YesYes

Yes

No

No

山本眞理子、戸山みどり (編 ) (1998) 「社会的認知」 誠信書房

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73

刺激人物

初期カテゴリー化

関心や関連性 ?

確証的カテゴリー化

再カテゴリー化

ピースミール統合

ピースミール依存型カテゴリー依存型

反応の公的表明の可能性

更なる評価の必要性 ?

何らかの処理の必要性 ?

成功

停止

刺激人物の属性への注意

成功No

Yes

Yes No

No

YesYes

Yes

No

No

活性化されたカテゴリーと人物の特徴との照合 (カテゴリー依存型処理 )

活性化されたカテゴリーと一致しない時、別のカテゴリーとの照合

属性の個別的吟味

既有知識ではなく、特徴を組織化したもの

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74

刺激人物

初期カテゴリー化

関心や関連性 ?

確証的カテゴリー化

再カテゴリー化

ピースミール統合

ピースミール依存型カテゴリー依存型

反応の公的表明の可能性

更なる評価の必要性 ?

何らかの処理の必要性 ?

成功

停止

刺激人物の属性への注意

成功No

Yes

Yes No

No

YesYes

Yes

No

No

「これは、よくある携帯電話の一種と思うが」

「携帯にしてはちょっと大きいが、外観からして携帯に近い特徴をもっているな」

「それじゃ、電子ブックなんだろうか」

「よく分からんから、詳しく吟味してみよう」

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印象形成の枠組みの利用

• 今のは一例・・

• 心理学では対人認知における処理として研究されてきた。

• 対人間の枠組みを対人工物の枠組みとして利用する。• 個人化ないし個別化が起きると、当該の人工物に対す

る印象は「特に」強く残されることになる。• 今後、さらに検討を継続する。

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多謝、御静聴否、求御騒聴歓迎後日質問