1’-Acetoxychavicol acetate (ACA) による抗肥満効果 大阪市立大学大学院 生活科学研究科 湯浅(小島) 明子 1
メタボリックシンドローム肥満を基礎疾患として、高血圧、脂質異常症および
糖尿病を合併する動脈硬化易発症状態である。
過栄養
内臓脂肪蓄積
脂質代謝異常
動脈硬化
運動不足
高血圧インスリン抵抗性
糖尿病
2
ACA (1’-acetoxychavicol acetate)東南アジア原産植物性食物の1つであるナンキョウの根茎に含まれる。天然にはS体ACAとして存在する。
OAc
AcO
OAc
AcO
ラセミ体ACA
ACAの合成法 H. Azuma, et al.: Bioorganic & Medical Chemistry 14:1811-1818 (2006)
OAc
AcO
リパーゼPSを用いた光学分割
S体ACA
R体ACA
TBS保護1’-hydrixychavicolの合成
3
In vitro 実験系: 3T3-L1前駆脂肪細胞を用いて
脂肪細胞への分化抑制および
脂肪蓄積抑制に対するACAの効果
肥満脂肪細胞の細胞数増加と脂肪蓄積による肥大化に起因
In vivo 実験系: 肥満モデルラットにACA含有
高脂肪食を摂食させた場合に
おけるACAの抗肥満効果4
0
20
40
60
80
100
120
140
細胞生存率(コントロール=100%)
3T3-L1前駆脂肪細胞の細胞生存率におよぼすACAの影響
0 2.5 5 2.5 5 2.5 5
S体ACA (μM) R体ACA (μM) ラセミ体ACA (μM)「細胞生存率の測定:Neutral red 法」
7
3T3-L1前駆脂肪細胞の分化誘導
Day 0 Day 8Day 4Day 2 Day 6
INS, DEX, IBMX含有培地
INS含有培地 培地
分化完了
INS, DEX, IBMX含有培地 : DMEM +10% FBS + Insulin + Dexamethasone+ Isobutylmethylxanthine
INS含有培地 : DMEM +10% FBS + Insulin
培地 : DMEM +10% FBS
ACA
+ + + +
ACAACA ACA
培地
8
コントロール
S体ACA R体ACA
3T3-L1前駆脂肪細胞の脂肪蓄積量におよぼすACAの影響
「脂肪蓄積量の測定:Oil red O染色法」
2.5 μM 2.5 μM 2.5 μM
5 μM 5 μM 5 μM
ラセミ体ACA
9
**
**
**
**
0
20
40
60
80
100
120
0 2.5 5 2.5 5
**; p<0.01
**
**
3T3-L1前駆脂肪細胞の脂肪蓄積量におよぼすACAの影響
Oil red O 染色
(コントロール=100%)
2.5 5
S体ACA (μM) R体ACA (μM) ラセミ体ACA (μM)
「脂肪蓄積量の測定:Oil red O染色法」10
ジヒドロキシアセトンリン酸(解糖系)
GPDH:グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ
グルコース
脂肪酸
グリセロール-3-リン酸
アシルCoA
トリアシル
グリセロール
(TG)
中性脂肪の合成経路
GPDH
11
**
****
0
20
40
60
80
100
120
140
GPDH活性(コントロール=100%)
3T3-L1前駆脂肪細胞のGPDH活性におよぼすACAの影響
**
**
0 2.5 5 2.5 5
**; p<0.01
2.5 5
S体ACA (μM) R体ACA (μM) ラセミ体ACA (μM)
「TG合成能の評価: GPDH活性の測定」12
カゼイン
ラード
L-シスチン
コーンスターチα-コーンスターチスクロース
大豆油
セルロースパウダー
AIN-93G ミネラルミックス
AIN-93 ビタミンミックス
重酒石酸コリン
第3ブチルヒドロキノン
ラセミ体ACA
コントロール食 高脂肪食ACA含有高脂肪食
0.1%ACA 0.5%ACA
200
0
3
397.486
132
100
70
50
35
10
2.5
0.014
0
200
170
3
269.986
89.5
100
70
50
35
10
2.5
0.014
0
200
170
3
268.986
89.5
100
70
50
35
10
2.5
0.014
1
200
170
3
264.986
89.5
100
70
50
35
10
2.5
0.014
5
合計 (g) 1000 1000 1000 1000
飼料組成
14
0.0
10.0
20.0
30.0
肥満モデルラットの脂肪組織重量におよぼすACAの影響
コントロール食群 0.5%ACA食群 高脂肪食群 高脂肪食+ 0.1%ACA食群
高脂肪食+ 0.5%ACA食群
脂肪組織重量(g)
(n=4)15
ACAに関するその他の生理作用
ACAが皮膚の真皮に存在する
線維芽細胞のコラーゲン産生能を
亢進させることが明らかとなった。皮膚の構造
皮膚の張り・弾力性の向上皺の予防
コラーゲン線維
線維芽細胞
表皮
真皮
角化細胞
角層になって脱落(約1ヶ月)
ACAが皮膚の表皮を形成する
角化細胞(ケラチノサイト)の
遊走・増殖能を亢進させることが
明らかとなった。
皮膚の新陳代謝を促進16
0
2000
4000
6000
8000
10000
12000
相対強度(arbitaryunits)
ヒト皮膚線維芽細胞のエラスチン産生量におよぼすACAの影響
エラスチン(72 kD)
コントロール 1.0 μM ACA18
ヒト角化細胞の遊走・増殖能におよぼすACAの影響
0時間(スクラッチ直後)
24時間後
コントロール 0.1 μM ACA 1.0 μM ACA
「スクラッチテスト:細胞をコンフルエント状態になるまで培養した後、ピペットチップで直線状に
細胞を掻きとり、24時間培養した後の修復程度を測定する方法」 19
我々は、ACAが抗肥満作用に優れ、しかも安全性の高い成分であり、
抗肥満剤として有用であることを見出した。ACAはタイショウガ
(ナンキョウ)に含まれる成分として知られているが、安価で合成する
ことも可能である。
さらに、ACAは皮膚線維芽細胞のコラーゲンおよびエラスチン産生能
向上作用、角化細胞の遊走・増殖能の亢進作用など様々な生理作用を
有するため、広範囲に応用できる。
新技術の概要および従来技術との比較
想定される用途
サプリメント、アンチエイジング化粧品、創傷治癒薬など20
本技術に関する知的財産権
「コラーゲン産生向上剤」 特開2006-151860
発明人:湯浅 勲、小島明子
出願人:湯浅 勲、小島明子
「コラーゲン産生促進剤」 特開2009-79004
発明人:湯浅 勲、小島明子、東 秀紀
出願人:湯浅 勲、小島明子、東 秀紀
●
●
「抗肥満剤」 特願2010-201892
発明人:湯浅 明子、湯浅 勲、東 秀紀
出願人:湯浅 明子、湯浅 勲、東 秀紀
● 「線維芽細胞増殖促進剤、角化細胞増殖促進剤、エラスチン
産生促進剤、ヒートショックタンパク質47産生促進剤、及びα-平滑筋アクチン (α-SMA) 産生促進剤,及び光老化防止剤」特願2010-199209
発明人:湯浅 明子、湯浅 勲
出願人:公立大学法人大阪市立大学
●
21
お問い合わせ先
大阪市立大学 新産業創生研究センター
コーディネータ 渡辺敏郎
TEL: 06-6605-3469
FAX: 06-6605-6499
E-mail: [email protected]
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