1 手関節・手指機能障害-橈骨遠位端骨折 Clinical Question 5 手術の有無によらず遷延性の橈骨遠位端骨折の患者に対する超音波療法や 電気刺激療法は推奨されるか ステートメント 橈骨遠位端骨折患者に対して、超音波療法や電気刺激療法を行うことを提案 するが、遷延性の患者に対する効果の検証は今後も必要である □作成班合意率 100% 解説 ◇CQ の背景 橈骨遠位端骨折において、超音波療法や電気刺激は骨癒合を促進し、機能回復が遅れる遷延治癒例 や新鮮骨折の治療に使用される場合がある。橈骨遠位端骨折患者に使用する場合は、創外固定やギプ スなどの外固定除去時期を早める効果があるとされている。ただし、橈骨遠位端骨折の発生部位は海 綿骨の豊富な骨幹部であり、遷延治癒例は 0.7~4%と少ない。また、費用対効果を考慮すると適応が 開放骨折や高度粉砕骨折例などに限られる。 ◇エビデンスの評価 システマティックレビューの結果、該当する論文は 5 報であった。そのうち経皮的末梢神経電気刺 激(transcutaneous electrical nerve stimulation:TENS)治療において、アウトカムが疼痛のものが 1 報であり、研究デザインは RCT であった。Lee ら 1) は、橈骨遠位端骨折患者 36 例を対象に、TENS 治 療の有無による疼痛の程度を visual analog scale(VAS)にて比較した結果、介入による有意な改善は みられなかった。 創外固定からの交流電流治療においては、アウトカムが関節可動域(range of motion:ROM)のも のが 1 報であり、研究デザインは RCT であった。Itoh ら 2) は、橈骨遠位端骨折患者 43 例を対象に創 外固定から交流電流治療を実施した 18 例と創外固定のみの 25 例を比較した。しかし、手関節の可動 域において介入による有意な改善はみられなかった(p>0.05)。 超音波療法においては、アウトカムが ROM のものが 1 報であり、研究デザインは RCT であった。 Basso ら 3) は、橈骨遠位端骨折患者 38 例を対象に超音波療法の有無による関節可動域を比較した結果、 介入による有意な改善はみられなかった(p>0.05)。 パルス電磁波療法においては、アウトカムが ROM と浮腫に関する内容が 2 報、疼痛に関する内容 が 1 報であり、それらの研究デザインは RCT であった。Gladys ら 4) は、38 例を対象とし、Lazovic ら 5) は、60 例を対象にパルス電磁波療法の実施の有無による ROM と浮腫の比較を実施した。しかし、 どちらも介入による有意な改善はみられなかった(p>0.05)。また、疼痛においてもパルス電磁波療 法による改善効果はみられなかった(p>0.05)。 これらの該当論文は、バイアスリスク、不精確で高リスクであり、非一貫性やその他のバイアスの 評価は困難であるため、確実性も D(非常に弱い)であった。 また、CQ の設定アウトカムに挙がっていた骨癒合(仮骨形成)や合併症に関しては、論文中に記 載があるものの統計学的検証が不明となっており、理学療法士が判断できる内容ではないとも考えら