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[ TECHNOLOGY BRIEF ] 1 目的 重要性の高い代表的な農薬分析において、 MRL に対応するXevo TM TQ-S microの性能を評価し ます。 背景 グリホサートの安全性に対する懸念から、この 5年で食品中の極性が高い酸性農薬の定量分析 が注目されています。そのため、これらの化合 物を監視する需要が高まり、多くの食品分析ラ ボでは高極性の酸性化合物を誘導体化せずに分 析する方法が望まれています 1 多くのラボでは検出下限値0. 010 mg/kg 以下に することを目的としており、MRL 2 0. 01 mg/kgに加え、有機農産物や乳児向け食品に設定され ているさらに厳しいMRLにも対応可能な効率 的でシンプルな分析法が求められます。 コンパクトなタンデム質量分析計Xevo TQ-S micro極性の高い酸性農薬のルーチン分析において堅牢性を 発揮します。 水分量が多い食品に含まれる酸性農薬の定量分析 Euan Ross,¹ J D De Alwis,¹ Stuart Adams,¹ Joanne Williams,¹ and Dimple Shah² ¹Waters Corporation, Wilmslow, UK; ²Waters Corporation, Milford, MA, USA 高極性な農薬を誘導体化せずに分析する上で感度を得るためには、一般的に、 特殊なLCシステムまたは高性能なタンデム四重極質量分析計が必要になりま す。こういった装置を用いることで農薬の直接分析は可能になる反面、ラボの 運用コストや装置の設置面積がかさんでしまいます。 これまでに、Xevo TQ-XS システム、および Anionic Polar Pesticide カラム, 5µ, 2.1 × 100 mmp/n 186009287)を使った極性が高い酸性農薬の定量 分析メソッド(HILICモード)を報告しておりますが 3 、本稿ではよりコンパクトに なった新型Xevo TQ-S micro システムを用いて代表的な高極性農薬を測定し、 その結果をSANTEガイドライン に照らし合わせ評価しましたのでご紹介します。 1 . キュウリに8種類の化合物を添加し QuPPe 法により抽出した際のクロマトグラム (添加量: 0.010 mg/kg
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Jul 12, 2020

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Page 1: [ TECHNOLOGY BRIEF ] - Waters Corporation · [ TECHNOLOGY BRIEF ] 3 酸性極性農薬のルーチン測定におけるTQ-S micro のパフォーマンスを評価するために代表的な

[ TECHNOLOGY BRIEF ]

1

目的

重要性の高い代表的な農薬分析において、MRLに対応するXevoTM TQ-S microの性能を評価します。

背景

グリホサートの安全性に対する懸念から、この5年で食品中の極性が高い酸性農薬の定量分析が注目されています。そのため、これらの化合物を監視する需要が高まり、多くの食品分析ラボでは高極性の酸性化合物を誘導体化せずに分析する方法が望まれています1。

多くのラボでは検出下限値を0.010 mg/kg 以下に することを目的としており、MRL2(0.01 mg/kg) に加え、有機農産物や乳児向け食品に設定されているさらに厳しいMRLにも対応可能な効率的でシンプルな分析法が求められます。

コンパクトなタンデム質量分析計Xevo TQ-S microは極性の高い酸性農薬のルーチン分析において堅牢性を 発揮します。

水分量が多い食品に含まれる酸性農薬の定量分析

Euan Ross,¹ J D De Alwis,¹ Stuart Adams,¹ Joanne Williams,¹ and Dimple Shah² ¹Waters Corporation, Wilmslow, UK; ²Waters Corporation, Milford, MA, USA

高極性な農薬を誘導体化せずに分析する上で感度を得るためには、一般的に、特殊なLCシステムまたは高性能なタンデム四重極質量分析計が必要になります。こういった装置を用いることで農薬の直接分析は可能になる反面、ラボの運用コストや装置の設置面積がかさんでしまいます。

これまでに、Xevo TQ-XS システム、および Anionic Polar Pesticide カラム, 5µm, 2.1 × 100 mm(p/n 186009287)を使った極性が高い酸性農薬の定量分析メソッド(HILICモード)を報告しておりますが3、本稿ではよりコンパクトになった新型Xevo TQ-S micro システムを用いて代表的な高極性農薬を測定し、その結果をSANTEガイドライン4に照らし合わせ評価しましたのでご紹介します。

図 1 . キュウリに8種類の化合物を添加しQuPPe法により抽出した際のクロマトグラム (添加量:0.010 mg/kg)

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ソリューション

極性化合物の良好な保持および分離を達成するため、誘導体化を行わずHILICモードで分離しました。固定相にはジエチルアミン(DEA)をトリファンクショナル修飾したエチレン架橋ハイブリッド(BEH)シリカゲルを採用しました。基材の親水性表面とリガンドの陰イオン交換能が、陰イオン性化合物の保持及び分離に適した特性を与えます。

8種類の農薬(AMPA、グリホサート、n-アセチルグルホシネート、グルホシネート、n-アセチルAMPA、エテホン、ホセチルアルミニウム、ホスホン酸)を食品に添加したのちQuPPe法で抽出し、ESIネガティブモードで測定しました。

SANTEガイドライン(2018)には「最も早く溶出する分析種の保持時間は少なくともホールドアップタイムの2倍でなければならない」と記載されており、今回用いた分析カラムはすべての分析種についてガイドラインの条件を満たしました。図1に8種の農薬をキュウリに添加した際のクロマトグラム(添加濃度0.010 mg/kg)を例示します。SANTEガイドラインでは、保持時間の安定性について±

0.1分の公差が認められており、異なる食品間でも保持時間の変動はこの範囲内でした(図2参照)。すべての分析種において優れた直線性の検量線(R2>0.99、回帰直線に対する残差20%未満)が得られました。キュウリとトマトにAMPAおよびグリホサートをそれぞれ0.005~0.2 mg/kgの濃度で添加し(最終的なサンプル溶液中の濃度として2.5~100 ng/mL相当)、抽出後に測定して作成した検量線を図3に示します。

A.

B.

図 2. グリホサートの保持時間安定性 異なるマトリックスから抽出した試料を30回ずつ注入しても保持時間は安定していました。

図 3. AMPAとグリホサートをそれぞれトマト(a)とキュウリ(b)から添加回収して測定した 検量線(0.005~0.2 mg/kg)および、各濃度における残差

図 4. 0.010、0.020、0.050 mg/kgの濃度で8種類の農薬をトマトに添加した際の定量精度(棒グラフ)およびRSDr(折れ線) 赤い破線はSANTEガイドラインで許容されている精度の範囲(70~120%)とRSDrの上限(20%)を示します。

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酸性極性農薬のルーチン測定におけるTQ-S microのパフォーマンスを評価するために代表的な8種の農薬について、目標とされているLOQの0.010 mg/kg、およびLOQの2倍・5倍にあたる濃度で添加回収試験(マトリックス:キュウリ、トマト)を6回行いました。Xevo TQ-S microが目標とされているLOQを満たせるか、また、分析メソッドの定量精度(trueness)および繰り返し再現性(%RSDr)を評価するため、添加回収した化合物を先述の検量線を用いて定量しました。図4は、トマトに8種の農薬を添加した際の定量精度およびRSDrをまとめたものです。すべての分析種において定量精度は70~120%以内に、繰り返し再現性は20%以下に収まりました。その他、SANTEガイドラインの中で定義されている分析メソッドの妥当性の基準については表1をご覧ください。

表 1. トマトをマトリックスとした場合の分析メソッドのバリデーション(SANTEガイドライン準拠)

CompoundRetention time

(±0.1 min)% Trueness (70–120%)

% Precision (RSDr ≤20%)

Linearity (Residuals ≤

±20%)

Ion Ratio (±30%)

LOQ 0.010 mg/kg

AMPA ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓Glufosinate ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓

N-acetyl glufosinate ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓

Glyphosate ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓N-acetyl AMPA ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓

Ethephon ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓Phosphonic acid ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓

Fosetyl aluminum ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓

まとめ

コンパクトでルーチン分析に適したタンデム四重極質量分析計による高極性農薬分析をご紹介しました。8種の農薬を種々の食品に添加し、測定した結果、新規HILICカラムにより良好な保持と分離を達成できました。Xevo TQ-S microは目的化合物の

Waters、The Science of What’s Possible、Xevo、ACQUITY および UPLC は Waters Corporation の商標です。 その他すべての商標はそれぞれの所有者に帰属します。

©2020 Waters Corporation. Produced in Japan. 2020 年 3月 720006645JA 03A PDF

測定において感度・直線性・濃度レンジの全てにおいて高いパフォーマンスを発揮しました。AQUITY UPLC I-Class と Xevo TQ-S micro を組み合わせたLC-MS/MSシステムおよびウォーターズの高極性農薬分析用のカラムは、残留農薬のルーチン分析に最適です。

参考資料

1. European Food Safety Authority (2017), EFSA statement addressing stakeholder concerns relating to EU assessment of glyphosate.

2. European Commission (2016) EU Pesticide Database [Online] http://ec.europa.eu/food/plant/pesticides/eu-pesticidesdatabase/public/?event=pesticide.residue.selection&language=EN.

3. Improved Chromatographic Retention and Resolution for the Analysis of Anionic Polar Pesticides and Plant Growth Regulators in Food Commodities, Waters Application Note, 720006505EN (2019).

4. European Union (2018), Document No. SANTE 11813/2017. Guidance Document on Analytical Quality Control and Method Validation Procedures for Pesticides Residues Analysis in Food and Feed.