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Jan 14, 2016
「sustainabilityと人文知」研究プロジェクト」(総長裁量経費)
第3回WS「社会知からサスティナビリティを考えるⅠ」
「新たなエコノミーとサステイナブルな社会形成;危機を乗り越え
るため」似田貝香門(東京大学名誉教授 )
1.今回の問題提起の趣旨と展開1)宇沢弘文報告;
• 依頼したとき、テーマについては「社会的共通資本」Social Common CapitalとSustainabilityとの関わりについて、お願いしました。
• その回答が“Sustainable Development and Social Common Capital”、となったと推察しています。
• •
• 『自動車の社会的費用』 (岩波書店[岩波新書] , 1974年 )• 『「成田」とは何か――戦後日本の悲劇』 (岩波書店 [岩波新書 ],
1992年 )• 『社会的共通資本』 (岩波書店 [岩波新書 ], 2000年 )• 『市場・公共・人間――社会的共通資本の政治経済学』 (第一書林 ,
1992年 )• 『社会的共通資本――コモンズと都市』 (東京大学出版会 , 1994年 )• 『金融システムの経済学――社会的共通資本の視点から』 (東京大学出版会 , 2000年 )
• 『社会的資本としての都市 (1)都市のルネッサンスを求めて』 (東京大学出版会 , 2003年 )
• 『社会的資本としての都市 (2)21世紀の都市を考える』 (東京大学出版会 , 2003年 )
• 『社会的共通資本としての川』 (東京大学出版会 , 2010年 )•
2)「社会的共通資本」をめぐる宇沢経済学の基本的視点
• 「社会的共通資本は一つの国ないし特定の地域に住むすべての人々が豊かな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような”社会的装置”を指す。それは教育をはじめとする社会制度、自然環境、道路などの社会基盤の三つによって構成される。
• 年を経るとともに、私の研究テーマが自動車、医療、教育、環境問題などへと広がったのは、経済学が本来、取り組むべき課題がそこにあるとの思いを深くしたからにほかならない。」(宇沢弘文の祈り 人間回復、考える時に)
• 私の研究との関連;運動、都市における「社会共同消費手段」(→「社会共通資本」)、公共性
3)今回の問題提起の趣旨と展開
• 「人間生活の豊かさは、循環性の永続、多様性の展開および関係性の創出に支えられている」
• 人間生活の豊かさ;循環性のもつサスティナビリティ、多様性の展開、人々の社会関係の創出
• 人間生活の豊かさ→「社会的共通資本」→人々の社会関係の創出
• 「社会的共通資本」の重層性(公的資本、市場、社会経済的活動〔非営利+市民活動〕
• → ”社会的装置”(社会形成bildung)
• 多様性の展開→多様性の産出のメカニズムとその秩序・制度・構造への持続的編入
• →多様性とサスティナビリティ• 循環性の永続→ミクロとマクロの間に経過的に生成される〈中間的領域〉の feedback loopの社会的力の問題
2.運動、都市における「社会共同消費手段」
• 1)住民運動調査〔 1973~ 1975〕大学院(松原・似田貝共編著、 1976『住民運動の論理』学陽書房)
• 2)この調査で生成されたテーマ;• 「公共性とは何か」→「市民的公共性」、 公権力に対する「対抗的公共性」
• 3)経験的 findings;住民運動と「社会的共同費手段」の関係
•
(1)「社会的共同消費手段」としての生活基盤インフラ
• ・都市住民運動は、都市生活様式としての生活要求の運動(労働力再生産の場としての「地域」) 生活基盤インフラの要求(生活要求、生活環境要求)。
• →〔社会資本論の視点〕。
• 生産関係領域にける既存の労働運動=政治運動とは異なる、消費=社会関係領域における住民運動の存在意義。
• 都市における労働力再生産の場としての「地域」の共同生活財を要求する運動。
• ・この運動によって、社会的諸関係の豊かな展開。政治革命とは異なる市民社会の変革のテーマ
• →やがて 80年代にはこうした運動は「新しい社会運動」と呼ばれた」(『思想』特集、 1985年 1月号)。
• ・
(2)「社会的共同消費手段」の共同占取関係Appropriationという問題提起
• ・消費=社会関係領域における共同生活手段をめぐる住民運動は、「生活空間の利用の仕方」、すなわち「地域」での「社会的共同消費手段」の整備、使用、共同消費は、それ自体、住民の社会的諸関係生活価値形成を伴う〈生活の論理〉を生み出した。
• →社会的諸関係の生産=再生産の変化(市民社会の変革のテーマ)
• 「消費の物質的対象への共同使用の関係」は、即時的には「人と物との関係」(消費)であるが、社会学的には「そのもの介した社会関係の形成を産む」(『論理』)という、社会関係の形成、持続が大切なこと。
• → 都市市民としての権利要求revendication(後述)
• この視点は、誰が ,どのような共消費同手段を利用して、どのように生活を向上させるかをめぐる、社会構造内の対立的なmomentとしての、市民の利用、占取関係へと概念を広げ、「社会的共同消費手段」をという公共財政学の概念を、平等をめぐる市民関係形成の地域社会学へと援用した。
〈中間的領域〉での新しい秩序=「権利」の出現
• 生活の場において、日常生活時に人々の共同性を構成しているさまざまな関係性、すなわち「顔のある具体的関係」を梃子にして、地域課題の当該の問題に関する周辺的な可能性を素材として寄せ集め的実践( Bricolage) は、諸財産、資源の利用、占有の獲得状況を、まずは他の人(顔のある具体的関係性を持った)との社会関係ないし社会集団の内部において、その構成員相互間にその使用法、占取の権利・義務関係が事実上、帰属させられている appropriieren関係が成り立ていること →占取関係 Appropriation
• したがってこの実践は、新たな権利を生活の場から創設していく社会形成的ダイナミスムの運動過程の中で、新たに現出する「帰属される」財産の占有形態と同時相即的に生成する帰属主体としての社会関係、社会集団の創設をもたらす。
• この実践が事実上( de fact)に顕勢化している場、それが〈中間的領域〉である。
• → 新しい秩序の出現 emergence• Social Common Capital概念の内実は、こうした住民、市民の利用者主体に帰属させる approprieri関係の形成生活をめぐる社会規範が生成していることが不可欠
(3)異議申し立て contestationと権利要求revendication
• 権利要求の実体的根拠は「都市空間の生活者・居住者としての総空間の使用価値に根拠」(『論理』)
• 社会問題が生起する〈ミクロ出現〉では、異議申し立て、権利要求がなされる。
• 諸価値が社会的問題となるとき、人々は相互に安定的な秩序として「権利」要求。
• 諸価値が社会的に問題となったとき〈マクロ出現〉、法規範の安定的性 Stability of Lawを求める。
• →こうした社会問題〈ミクロ出現〉から〈マクロ出現〉が制度形成、秩序形成、すなわち 権利論 でミ「 」クロ・をマクロ連接する、社会変革、社会形成のテーマの基本線
• 社会的な意思決定についての〈正当化〉、〈妥当性〉への要求の高次化
• 住民運動の「公共性」の論点は、住民要求の内実をめぐる「妥当請求」の論議の場
• →「住民参加」と実践的テーマ
(4)集合的・社会的共同消費手段の運動による社会規範の形成;動態的〈位階層秩序〉という様相運動
• a.建築紛争(日照権(建築規制)運動)と法 の改正
• 容積率制度は、都市居住地域の建造物の周辺の居住住民の地域環境水準を、建築行為者や建築物の財産権の範囲(敷地単位)に拘束させられる。
• • 「建築基準法」改正され容積率制度
• ↓•
• 〈建築自由〉空間の生産〔建築行為〕→最大限の空間 volumeの確保=事業利益• →都市環境水準の問題発生
• →建造物の周辺の居住住民の環境水準(アメニティ)は、〈建築自由〉空間の財産権の範囲• (敷地単位)内で完結する〔私的所有権の絶対性〕
• 〔 communityの人々の社会関係の私的秩序の社会的非共同状況と法制度の class hierarchyの存在〕• →日照紛争の潜在的常態化
• →私的秩序の混乱と空間最大の volume所有者の優先的私的秩序→非共同状況•
• ↑• 日照権要求という Communityレベル運動化 →自主的な社会規範の構築
• 〔日照権の「建築協定」という市民協定〕• Community内の私的所有権者間の秩序化
• *法制度の class hierarchyの localからの改変• ↓
• 私的秩序の自己拘束 ruleの形成• ↓
• まちづくり( localな建物と地域との空間環境の共同性秩序の成立〔地域 governance〕 • ↓
• 地方自治体による「要綱」、「条例」による規制• ↓
• • 「建築基準法」の改正( 1976)第 56条
• 「日影における中高層建築物の高さの制限-日影基準」を創設
b .70年代~80年代のまちづくりの画期• まちづくりは、地域を端緒とする生活秩序の〈生成性を運動の原理〉とする。
• 生活単位としての地域が内外の環境変化に対し、自己再生産という個体横断的過程を繰り返し、絶えず形成
• しながら、まち=地域としての個別存在の自立性を産出• • まちづくり運動という、生活の集合的基礎単位の生活秩序形成の絶えざるルール作りの自己組織化、という 〈生成性の原理〉は、少しずつ、次第に、地域から基礎自治体へ、自治体から
• ・制度システムへと上昇し、 法・制度システムのルールそれ自体を変更させる力を持つ。
• まちづくりの主体論、組織論は、地域生活秩序の出現による下からの、少しずつ、次第に地域から地域へ、地域から自治体へ、自治体から自治体へ、自治体から法・制度システムへという階層的秩序形成と、法・制度システムからの、自治体を介しての、地域の都市計画への統合、包摂、支配という階層的秩序形成という、同一にして相反する両極を生み出している。
• まちづくり運動は、この両極の間を流動化し、運動化する。そしてこの複雑な2つの流れをもつ持つまちづくり階層的秩序の運動は、それが故に、現状のある水準から他の水準への移行や、まちづくりの多様な水準をもつ統合性を、〈そのつど〉生み出す。
•
3.〈ミクロ出現〉の社会問題からマクロへの変化;〈中間的領域〉について
• 〈中間的領域〉は、ミクロな生活の基礎的社会関係の場で新たに生成する生活秩序( local rule)と、既存の秩序態、制度体、構造など、各位相の秩序が、対立・競合などの激しい緊張関係が入り交じった様相をもちつつ、時に共存する融合現象を生み出す様相的運動の場である。
• • 既存の秩序体〔境界〕との隔たりに出現するこのような、未知にして予期の困難、不安定にして非秩序状態という事象が、少なくとも〈具体的、一時的、局所的〉に形成されたローカルな秩序(ルール、規範)へと生成され、かつ既存の秩序や他のルールと、暫時的な折り合いがついたとき、不安定ながらその位置がしばし定まる。このような暫定的秩序を〈中間的領域〉と呼んでおきたい。
• 別言すれば、〈中間的領域〉とは、ミクロに出現する「隙間」が展開して、マクロな制度、秩序構造と混在するときの様相運動の暫定的秩序(〈隙間と混在〉)であるといえる。
2)ミクロや構造との関係
• 〈中間的領域〉そのものは、その形成力に力があれば、安定的な定型化として留まることはなく、既存の制度、 秩序、構造を、〈巻き込み〉、それとの〈相互浸透osmose〉させるなどの、不安定ながら特異性を形成する自己成長的(自己産出的)運動性を有する。
• それは、〈中間的領域〉が feedback loopという特異な運動性を有しているからである。
• 社会問題の生起の只中から生み出された、尖端的実践、漸次的実践はこうした様相運動としての「実践的閉域」 を形成し、やがて運動的力学が働けば、構造の下位システムに〈越境的dynamism〉に移行、「変移」 Verganginis し、構造化される。そしてそれは、制度体、秩序態、構造を変形、変化させる。
• • 社会の変化、「社会が自己を生産する」( A.Toutaine)、自己組織化などという表現は、このような様相運動が、既存の枠組みを解き放ち、新たな関係性、要素を制度や構造へ〈組み込む〉過程的運動を意味することである。
• つまり〈中間的領域〉は、既存組織や境界と弁別され、差異化される別様なモデル形成、既存の関係性を解き放つ新たな社会変革モデルの萌芽を生成する尖端現象、 incubatorとしての潜在的可能性に注視(似田貝香門 2009、 2011)。
3)多様性、多様系との関係
• 〈中間的領域〉は時空間的な、〈具体的、一時的、局所的〉の複数の論理の共存、相異なる行為群の併存の 場、という性格を持つ。いわば、差異の併存、多様系の暫時的秩序形成の場である。
• 「開かれた場」とか、多様性とかいわれる社会事象は、少なくとも、このような〈中間的領域〉という「実践の閉域」を形成したとき、はじめてその可能性は生まれる。
4)動態的〈位階層的秩序hierarchy〉との関係
• 〈中間的領域〉は、〈ミクロ出現〉の新たな関係性や要素が、既存の制度、秩序、構造と遭遇する。
• いわば、社 会的規則(法則)の確実性の、安定性の中に、法則的不確実性を取り込むことになる。
• この事象は、私たちに、ミクロ位相からマクロ位相にわたって、社会的規則(法則)の階層性(位階性)が相対的に自立しつつ、条件があれば、相互に〈相互浸透osmose〉、〈越境的ダイナミスム〉、 feedback loopという様相運動によって、各位相の秩序(規則)の変形、変化、転移させる。
• 〈中間的領域〉はこのような運動(これを動態的〈位階層的秩序hierarchy〉形成とよぶ)の中核である。
•
5)社会形成 bildungとの関連;〈ミクロ出現〉と〈マクロ出現〉との間で
• 社会形成とは、動的秩序を自ら創り出す能力のことである。
• この形成力の核心は、ミクロとマクロの間に feedback の働きが存在している、と思われる(図参照)。
• したがって、社会形成力の強弱、社会の安定性、不安定性は、この feedback loopの強弱に関係していると思われる。
4. 80年代~ 90年代の都市社会;「排除された人々 Exclus)」問題
• 開発・支配・生活をめぐる都市研究調査;福山・神戸・福山(第 2次)・東京〔 1976~ 1995〕
• 都市の行財政分析の焦点として、財源の社会過程=財源別,公共機能別,受益層別,諸団体別に分析して都市自治体行財源の流れと,都市自治体の自己管理性,公共政策の意思決定,社会集団と社会階層の政治過程や行政過程への編入=連接の現状の究明 *
• テーマ;「国家の市民社会の介入」(福祉国家; crisis management)の経験的分析
• 「第 2次都市化」の危機(先進国都市衰退現象)に対応する「市民社会の自立的力」
• • 『地方自治体と市民生活-福山市を対象に』( 1983,東大出版会)
• 『都市政策と地域形成―神戸市を対象に』( 1990, 東大出版会)
• 『都市政策と市民生活―福山市を対象に』( 1993,東大出版会)、
• 『現代都市と地域形成―転換期とその社会形態』( 1997,東大出版)
•
1)都市政策は生活の生産=再生産の戦略、都市の社会的編成。
• 都市政策は、生活の生産=再生産の戦略、都市の社会的編成。
• 都市社会の維持=展開を可能ならしめるその公共政策の中心は、「社会的消費手段」・「集団的消費手段」。
•
2)都市官僚制の新たな構築と都市社会の諸団体
• 都市官僚制の新たな構築• →urban management• →産業関連集団、生活の「根本欲求」を組織化できる地域 集団、市民集団を介して展開するという特性。
• 政策担当部局と受益階層の関連に密接化
• 都市自治体の公共機能の拡大=都市街頭官僚制〔 T.Lowi〕の拡大)
3)都市 Corporatismの時代区分;都市官僚制と団体・集団
• 都市 Corporatismの程度・性格を把握するため4つの団体類型設定;• 〈経済セクター部門団体〉market participants;• 農林、林業、魚業、商工サービス関連、港湾関連、労働組合等。• 組織規模大。 Corporate組織。補助金、審議会・委員会に委員を参加。• 〈政策受益団体〉 policy taker;「新しい資格を持つ団体」。• 医療、福祉、教育、社会教育。 1970年代に多くは組織化。• 自由意思団体(一部 Corporate組織)。補助金。施設利用。• 教育・福祉関連の審議会、委員会に委員参加。• 〈市民生活関連団体〉;• 文化、レクレーション・スポーツ、住民運動等。• 50以下の規模小。非 Corporate組織。市の利用。• 〈地域組織〉;• 町内会・自治会等の地縁組織。• Corporate組織。補助金。一部審議会・委員会に委員を参加。• 行政補完団体的機能(広報・寄附・募金活動)。
• *社会諸階層との関連• 〈経済セクター部門団体〉;自営・現業層
• 〈市民生活関連団体〉 ;自営・上級ホワイト
• 〈地域組織〉 ;自営・上級ホワイト
• 1960年代~ 1970年代前半;• 〈経済セクター部門団体〉が独占。市民生活団体未組織。市民生活は〈地域組織〉 が補完。
• 1970年代後半~ 80年代;• 〈政策受益団体〉の参加と組織化された〈市民生活関連団体〉
•
4) 80年代~ 90年代の住民運動、市民運動の特色と生成された課題
• (1)制度化された公共政策の生産ルール構築 s
• 住民運動、すなわち住民、市民によって定式化され、組織化された生活の「根本欲求」( C.Offe)をめぐる社会的力は、都市官僚機構と都市社会の組織化可能な諸団体・組織によって政策のインプットーアウトプットという、いわば制度化された公共政策の生産ルールを構築した。
• (2) 「都市コーポラティズム」• 運動と公共性との関連は、都市社会の「社会的編成」を維持する社会的諸階層の生産=再生産という結節点をなし、「都市コーポラティズム」という特異な社会政治経済レジュームを作り上げた。
• →都市官僚制と受益政策階層( policy taker)
• (3)都市の市民諸階層の集団・団体の意義とその存在様態• 「組織化できる能力とコンフリクト能力」をもち、生活欲求を充足する組織化の存在としての集団・団体の意義とその存在様態。
• 1980年代の「住民運動の『転形期』」の意味;• → 1980年代の住民運動の「転換期」、「転形期」とは、都市社会の社会生活に関わる諸団体の新しいボランタリズムの形成とそのインパクトによる相異なる組織原理の相互浸透の進展状況を意味する。
• →生産関係から区別された社会的諸関係の変革というテーマ(「市民社会」の相対的自律性)
• 〈市民生活関連団体〉。運動と活動の相互浸透(そして運動から活動への変容)
• →この地盤変化が 90年代以降の voluntarismsへの潮流を生み出す。
• (4) 1980年代の住民運動の「転換期」、「転形期」
• 都市社会の社会生活に関わる諸団体の新しいボランタリズムの形成とそのインパクトによる相異なる組織原理の相互浸透の進展
• 〈政策受益団体〉、〈市民生活関連団体〉の活性化が、伝統的地縁組織と都市官僚制の双方への変換器の働きなす。
• →社会的 social領域と共同 communal生活領域との連接が「新しい voluntarismを形成している
• (5)課題として、このレジュームを構築していく担い手とそこから排除され、非決定状態におかれる社会階層の問題(それは同時に、集団的、団体的消費手段=財の再配分から遠ざけられた、生活の「根本欲求」の未組織領域
• →「排除された人々( Exclus)」問題;職能集団、市民集団、家族、地縁組織、近隣等の市民社会を構成する諸集団の紐帯から切り離され、あらゆる生の偶然性(リスク)に曝された脆弱な存在。
• *「排除」とは、特定階層や周縁の問題ではない。
• 現代社会に生きる個人が、脆弱化した社会的紐帯の状況で、常にこの紐帯「脱落し貧窮に陥る」というプロセスに脅かされている状況そのもの
• Serge Paugam dir., L’exclusion : l’etat des savoirs, Paris, Editions la Decouverte,
• 1 996.
5.危機を乗り越えるための活動 一種の新たなモラル エコノ・ミー
• 災害からの復旧・復興の「経済」 economy複合体―サステイナブルな社会形成の素材を求めて
• 1)復興学の新しい研究分野• 人文・社会系の研究を、災害研究の回復・復興論をテコに、現代社会の現実問題へとつなぐ、社会応用の学の領域を開拓する必要がある。
• 従来のように、「成長」、「発展」、「イノベーション」という枠組による、現状の社会状態からの将来社会への成長変化ではなく、災害、社会のrisk、 脆弱性 vulnerability、不確実等をテーマとして、一旦、落ち込みを受けた人々の生活再生、地域の再生、社会再生という、新たな社会のあり方を構想という新しい研究分野を創造する必要がある。
• 阪神・淡路大震災以降、実践的、緊要な課題としてテーマ化されてきた「事前復興」という新しい社会計画論を単に「減災」+復旧・復興の枠に留めることなく、なお一層、長期的な社会再生論へと繋げていく方法を考えるべきである。
• →災害学のこれまでの研究を人文社会系と連接させのため、災害工学の領域を、災害復興領域から、社会再生論へと推し進める必要。いわば「防災から減災へ」(これはまだ災害論の中でのシフトのしかた)から「防災から社会再建へ」へと諸学を連携したパラダイムシフトとしての〈新しい復興学による社会の再生〉をめざすことになる。
•
2)〈災害経済〉と広い意味でのエコノミー;市民的サブシステンス
• 社会学領域では、 A・トゥレーヌ Alain Touraine、 J・ハバーマス J.Habermas、 A・ギデインス Anthony Giddensが、同じように、主観性、日常生活における実践、親密性 intimacyといったテーマを展開しているが、それらは経験度の高いレベルで、親密度への個人実践の集合行為をテーマし、非制度的形式をもつ集合行為の自立性の場たるサブシステムへと関心が集中
• 私たちテーマである、新しい主体論・自立論に向けての、被災者の自立という共同の企てとは、こうした現代社会のひとびとの「痛み」、「苦しみ」の問題と深く関わっている。
• 私たちの研究を貫くのは、苦しみに〈居合わせる co-peres-ence〉という支援行為のなかに、人々の生をめぐる自立性と、その自立性を可能にする人々の実存的社会関係性としての「サブシスタンス」( I・イリイチ Ivan Illich)のありようを究明する、というテーマ
• 自立しようとする人の生活実存の経済であり、またそれらの人々の具体的な実存欲求( needs)の支援という形で表現される、根源的、基本的な意味での「エコノミー」のあり方が模索
• 発災から復旧・復興のプロセスを考えるにあたり、阪神・淡路大震災の経験を素材として、これまで研究してきた『自立支援の実践知』(似田貝香門編、 2008)で課題として残した、思想としての「サブシステンス subsistence」概念、すなわち「人の『生』の営み、すなわち生命=生活の基本的 な活動上、不可欠な相互 行為的実存経済と考え、震災以降のステップとしての復旧以降の被災者支援活 動の地域的・全国的空間にまで広がった活動交換を、もう一つの経済たる市民的サブシステンスの萌芽と位置付けたい」( 1章、8章 10節)を積極的に展開
• →公的資金、市場以外に存在する生活経済や市場経済を介さないエコノミー等を、広い意味でのエコノミーの重層状況や関係を、「災害経済 economy」という概念を措定
• この「災害経済」の構成、主体、時間的構成の変化を経験的に把握することによって、特に社会再生に関わる、公共部門、市場部門、社会的領域の特異な重層性を素描し、社会の仕組みとしての重層 economyの構造を捉え、新しい社会の形成に関わる社会的領域の潜在的な対象と課題を考える必要がある。
•
• 災害からの復興過程における、公的部門の財源支出とそれ以外(民)の財源・資源(民)支出割合や役割についての研究はない。
• 参考になるのは、災害対応に関しては林春男の研究( 2003)で、災害発生 から 1000 時間 (およそ 42 日間)を分析し、公的部門の果たした役割が1割程度、残りのうち7割を個人、2割をボランティア や地縁組織・会社組織による活動が占めていたとしている。
• より長期的な復興過程において、特に経済的な側面から「民間」と「公共」の役割分担を数量的あるいは質的に明らかにし、公共部門と民間部門の全体的な復興活動の中での財政資金や復興活動の規 模と役割を明らかにすることにある。
(2)〈災害経済〉の構成;複合的な「経済」の重層性(関係)
• 災害からの復旧・復興は、• ①行財政支出(公的資金〔復旧・復興事業費〕+復興基金)• ②被災地と非被災地の企業間の特異な支援関係• ③多領域の被災地外の公共・民間サービス部門の直接的支援• ④市民社会の支援活動諸団体への民間からの寄付金や、物資提 供、被災者の生活実存を支えるサブシステンスな経済
• ⑤あるいは中小零細を含めた民間企業、被災住民の住宅再建などのための自力復興を支える日銀、都市銀行、
• 信用金庫、労金の緊急的金融市場のあり方(住宅再建資金・事業再建資金・経済復興の資金)
• ⑥雇用に限らない仕事• 等、複合的な「経済」 economyの重層によって成り立っている。
• そこにはきわめて広い意味での economyから構成される複合体が、いのち、くらし、地域を支えていくものと考えられる。
• これら復旧復興の複合的な「経済」の重層性(関係)を、仮に特異な「災害経済」と呼ぶとすれば、この実態を解明し、引き続く「地域」の
• サステイナブルな社会・経済構造への転移へのモデル形成にどのような貢献ができるかを問うことが、災害からの復旧・復興の社会的カレンダーを考える一つと考えられる。
• 単に災害からの復旧-復興のみならず、ポスト開発主義の地域再生や新たな社会形成にとって有効な視点。
• その営為は、開発主義的な「成長モデル」から脱却し、ポスト開発主義の「サステイナブルな」モデルを構想するという、現段階の我が国の社会形成の別様な素材への手がかりともなり得ると思われる。