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50 ε R Δ ε Δ σ ε S ε B ε R ε R σ R σ S σ R σ B σ R t ε σ ϑ ε σ φ ε σ έ ε σ 物理的な負荷に耐えうるプラスチック部品を設計する際には、プラス チックの機械強度特性を評価することが極めて重要です。基本的な 機械特性には以下の項目があります。 ˌ 強度:材料に応力が加えられたときの抵抗挙動を表す指標 ˌ 降伏強度:応力を除去したときに元の形状に戻ることのできる限 界の強度 ˌ 剛性:応力と歪みが比例関係にあるときの比例係数(傾き) ˌ 靱性:応力により材料に蓄えられる総エネルギー S 強度(Strength) F 賦形性(Formability) R 剛性(Rigidity) T 靱性(Toughness) 以下の3種類のプラスチックの波形は、引張試験(DIN EN ISO 527、日 本はJISK7113)で、縦軸に強度(Strength)、横軸に歪み(Strain)をとっ たときの典型的な曲線(S-Sカーブ)を図示したものです。 ˌ 引張応力σとは、任意の時点において試験片に加えられた引張荷 重を、試験片の最小断面積(試験前の形状)で割った、単位面積あ たりの引張力として定義される ˌ 引張強度σ B とは、引張応力の最大値である ˌ 引張破断強度σ R とは、試験片が破壊された瞬間における引張応 力値である ˌ 引張降伏強度σ S とは、S-Sカーブ上で、加重の増加なしに伸びの 増加が認められる最初の点における引張応力値である(図参照)。 ˌ 伸びεとは、試験片上の2点間距離(例えば標線間距離):L 0 の変化 した距離ΔLの変化率:ε=(L 0 +ΔL)/L 0 です。引張強度に対応する 伸びを引張最大荷重伸びε B 、引張破断強度に対応する伸びを引 張破断伸びε R 、引張降伏強度に対応する伸びを引張降伏伸びε S と定義されます。 ˌ 引張弾性率E:S-Sカーブにおける比例関係(直線部分)は、荷重が 小さい領域のみに観察される。直線性が見られる領域では、フッ クの法則が適用できる。フックの法則とは、強度と変形(伸び)の 比、すなわち弾性率が一定であるというものである。 E=σ/ε なお、 JISの定義では、S-Sカーブに直線部がない場合には、変形開 始点における接線の傾斜を求めることとしている。 引張試験以外の曲げ試験、圧縮強度試験、衝撃強度試験などは、プラ スチック素材の特徴の確認や異なる応力形態に対する評価として利 用されます。 プラスチックの機械特性は、温度、使用期間、応力のタイプ、負荷のか かる速度、プラスチックの水分含有率など、環境条件に深く依存しま す。したがって、プラスチック部品・製品を設計する際には、使用条件 を考慮に入れ、適切な試験条件で評価する必要があります。 Source: J. Kunz, FHNW 試験方法・環境が及ぼす影響 時間 吸水量 温度 試験速度 σ B 引張強度 ε B 引張伸度 σ R 引張破断強度 ε R 引張破断伸度 σ S 引張降伏強度 ε S 引張降伏伸度 硬いが脆いプラスチック 靱性があり硬いプラスチック 柔らかく弾性のある プラスチックs 機械特性 R T F S ε σ 0
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機械特性 - PEEK樹脂 pmp tecapro mt tecaform ad tecaform ah tecaform ah gf25 tecamid 6 tecamid 6 gf30 tecamid 66 tecamid 66 gf30 tecamid 66 cf20 tecamid 46 tecast t tecarim 1500

May 13, 2018

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F

S

ε

σ

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物理的な負荷に耐えうるプラスチック部品を設計する際には、プラス

チックの機械強度特性を評価することが極めて重要です。基本的な

機械特性には以下の項目があります。

ˌ 強度:材料に応力が加えられたときの抵抗挙動を表す指標ˌ 降伏強度:応力を除去したときに元の形状に戻ることのできる限界の強度

ˌ 剛性:応力と歪みが比例関係にあるときの比例係数(傾き)ˌ 靱性:応力により材料に蓄えられる総エネルギー

S 強度(Strength)F 賦形性(Formability)R 剛性(Rigidity)T 靱性(Toughness)

以下の3種類のプラスチックの波形は、引張試験(DINENISO527、日

本はJISK7113)で、縦軸に強度(Strength)、横軸に歪み(Strain)をとっ

たときの典型的な曲線(S-Sカーブ)を図示したものです。

ˌ 引張応力σとは、任意の時点において試験片に加えられた引張荷重を、試験片の最小断面積(試験前の形状)で割った、単位面積あ

たりの引張力として定義される

ˌ 引張強度σBとは、引張応力の最大値である

ˌ 引張破断強度σRとは、試験片が破壊された瞬間における引張応

力値である

ˌ 引張降伏強度σSとは、S-Sカーブ上で、加重の増加なしに伸びの

増加が認められる最初の点における引張応力値である(図参照)。

ˌ 伸びεとは、試験片上の2点間距離(例えば標線間距離):L0の変化した距離ΔLの変化率:ε=(L0+ΔL)/L0です。引張強度に対応する

伸びを引張最大荷重伸びεB、引張破断強度に対応する伸びを引

張破断伸びεR、引張降伏強度に対応する伸びを引張降伏伸びεS

と定義されます。

ˌ 引張弾性率E:S-Sカーブにおける比例関係(直線部分)は、荷重が小さい領域のみに観察される。直線性が見られる領域では、フッ

クの法則が適用できる。フックの法則とは、強度と変形(伸び)の

比、すなわち弾性率が一定であるというものである。

E=σ/ε

なお、JISの定義では、S-Sカーブに直線部がない場合には、変形開

始点における接線の傾斜を求めることとしている。

引張試験以外の曲げ試験、圧縮強度試験、衝撃強度試験などは、プラ

スチック素材の特徴の確認や異なる応力形態に対する評価として利

用されます。

プラスチックの機械特性は、温度、使用期間、応力のタイプ、負荷のか

かる速度、プラスチックの水分含有率など、環境条件に深く依存しま

す。したがって、プラスチック部品・製品を設計する際には、使用条件

を考慮に入れ、適切な試験条件で評価する必要があります。

Source:J.Kunz,FHNW

試験方法・環境が及ぼす影響

時間

吸水量

温度

試験速度

σB 引張強度 εB 引張伸度σR 引張破断強度 εR 引張破断伸度σS 引張降伏強度 εS 引張降伏伸度

硬いが脆いプラスチック

靱性があり硬いプラスチック

柔らかく弾性のあるプラスチックs

機械特性

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機械特性に及ぼす「時間」の影響

先述したように、プラスチックの機械的挙動は応力の経時変化に依

存します。従って、プラスチックの特性をすべてを理解するには、短期

試験(準静的特性)と一緒に長期試験(静的特性)を実行すべきですし、

同様に、動的疲労試験(定期的に応力のかかる用途)及び衝撃試験(

突然の応力が加わる用途)も実施すべきです。

変形という観点で考察する場合は、次の三つのタイプの変形パター

ンとその複合系を考慮します。

ˌ 弾性変形(完全に初期状態に戻る変形)ˌ 粘弾性変形(遅れて初期状態に戻る変形)ˌ 塑性変形(元に戻ることのない変形)

これらの中で、粘弾性変形の利点について注意を払いたい。粘弾性

変形では、プラスチックを構成する高分子の高次構造が変化します。

この構造変化は、応力とはタイムラグをおいて発生し、温度との高い

相関があります。粘弾性変形は、使用時の応力変化に伴って、以下の

ステップを経過するのが特徴です。

ˌ 遅延:一定の荷重をかけた状態で時間経過に伴い変形が増大する

ˌ 応力緩和;一定の荷重をかけた状態で、応力が時間と共に減少する

ˌ 復元:荷重を取り除いた際に変形量が減少する

この時間に依存した変形挙動は、時間-破断図、クリープ図、等時応

力-歪み曲線、クリープ弾性率図に示されます。このことを踏まえると、

プラスチック部品・製品を設計する際には、特定の短期間の試験の

物性値だけを考慮するだけでは不足します。設計不良を回避するた

めにも、すべての使用条件を考慮した構造計算をすることが大切で

す。

一定荷重をかけて、荷重を除去した(緩和)ときのプラスチックの変形挙動

ϑ = 一定

荷重

σ = 一定

緩和

σ = 0

t

TECARANABS

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TECANAT

TECANATGF30

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TECASONS

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TECAPEI

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TECAPEEK

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引張弾性率・曲げ弾性率[MPa]

引張弾性率 曲げ弾性率

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TECARANABS

TECANYL731

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TECAMID6GF30

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TECAMID46

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TECARIM1500

TECAPET

TECADURPBTGF30

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TECAFLONPVDF

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TECATRONGF40

TECATRONPVX

TECAPEEK

TECAPEEKGF30

TECAPEEKCF30

TECAPEEKPVX

TECATOR5013

TECASINT1011

TECASINT2011

TECASINT4011

TECASINT4111

引張強度[MPa] 引張伸び[%]

引張強度 引張降伏強度

引張降伏伸度 引張破断伸度

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TECAMID66

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TECASTT

TECARIM1500

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TECADURPBTGF30

TECANAT

TECANATGF30

TECAFLONPVDF

TECAFLONPTFE

TECASONS

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TECAPEI

TECATRON

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TECATRONPVX

TECAPEEK

TECAPEEKGF30

TECAPEEKCF30

TECAPEEKPVX

TECARANABS

TECANYL731

TECANYLGF30

TECAFINEPMP

TECAPROMT

TECAFORMAD

TECAFORMAH

TECAFORMAHGF25

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TECAMID6GF30

TECAMID66

TECAMID66GF30

TECAMID66CF20

TECAMID46

TECASTT

TECARIM1500

TECAPET

TECADURPBTGF30

TECANAT

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TECAFLONPVDF

TECASONS

TECASONPMTcoloured

TECAPEI

TECATRONPVX

TECAPEEK

TECAPEEKGF30

TECAPEEKCF30

TECAPEEKPVX

TECATOR5013

圧縮強度[MPa] ボール圧入硬度[MPa]

1%変形時の圧縮強度 2%変形時の圧縮強度

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非強化熱可塑性プラスチック

繊維強化熱可塑性プラスチック

射出成形 押出成形 射出成形 押出成形

引張強度

引張弾性率

引張破断伸度

プラスチック(特に熱可塑性プラスチック)の物質としての巨視的な性

質は、加工法に大きく左右される。射出成形で製造した製品・部品

は、金型内を樹脂が高速で流動する際に非常に高いシェア(せん断

力)がかかるので、プラスチックを構成する巨大分子や添加剤が特に

配向しやすい。一方で、押出成形による切削加工用のプラスチックで

は、射出成形よりも遥かにシェア(せん断力)が小さいのでそれほど配

向しない。アスペクト比(長さを幅で割った比率)の大きい添加剤(ガラ

ス繊維や炭素繊維など)は、高いシェア(せん断力)がかかると流れの

方向に沿って配向しやすい。

射出成形による引張試験片は、引張方向と樹脂の流動方向が同一方

向になっています。このように試験片に異方性(方向性)が生じている

ために、引張強度が高めに得られる傾向にあります。

成形時の冷却速度も同じようにプラスチックの諸特性に影響を及ぼ

します。射出成形による成形品の冷却速度は、押出成形による切削

加工用のプラスチック素材よりもかなり速くなります。その結果、(結

晶性プラスチックでは)結晶化度が大きく異なり、押出成形による素

材の方が結晶化度が高くなります。

成形方法と同様に、形状や肉厚の違いにより特性と物性値が異なり

ます。丸棒、板材、チューブ材では、体積あたりの表面積が異なるため

冷却速度が異なります。肉厚(丸棒では直径、板では厚さ)が大きくな

るほど、中心部が冷却される時間は長くなります。

異なる素材間での物性値を比較できるように、ヨーロッパ規格DIN

EN15860「Thermoplasticsemi-finishedproducts」が定められてい

ます。同規格では、以下の図に示すように直径40から60mmの丸棒

を用いて試験片を作成することを定めています。:

成形方法が物性試験結果に及ぼす影響

押出成形品をカットして切削加工して調製した試験片繊維やポリマーの配向はランダムになっている。

射出成形により調製した試験片樹脂の流動方向に繊維とポリマーが配向し、同じ向きで試験が行われる。

d 直径t 厚みw 幅

試験片

成形方法が物性試験結果に及ぼす影響

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