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はじめに 六価クロムは細胞内のタンパク質や DNA に結合し、代謝異常や がん、皮膚の炎症、喘息、肝臓の損傷を引き起こすと言われていま す。このため、毒性のない三価クロムとは分けて、個別に微量を定 量できる分析法が求められています。 六価クロムの分析法にはさまざまな方法があり、イオンクロマト グラフィー(IC )を用いる方法だけでも 3 種類があります。このア プリケーションノートでは、 IC による六価クロムの分析法を比較 します。 イオンクロマトグラフ(IC )法 六価クロムは、クロム酸として陰イオン交換分離と電気伝導度検 出という、一般的なイオンクロマトグラフ法で測定することができ ます。配管の模式図を1 に、標準液の測定例を2 に示します。 2 に示した条件で試料注入量が 250 μL のとき、定量下限値は 六価クロムとして 4.5 μg/L (クロム酸として 10 μg/L )です。 なお、この方法は陰イオンと六価クロムを一斉分析できますが、三 価のクロムを定量することはできません。 1 :イオンクロマトグラフ法の配管図 Application Note IC13016 六価クロムの分析法 - ICIC-PCIC-ICP-MS による分析法の比較 - 日本ダイオネクス株式会社 イオンクロマトグラフ‐ポストカラム IC-PC )法 六価クロムを分離後に、ジフェニルカルバジド溶液を添加して、吸 光光度検出器で測定する方法を、 IC-PC 法といいます。クロムと ジフェニルカルバジドの複合化合物を 520 nm で検出します。電 気伝導度検出と比べて、高感度な検出が可能です。 3 IC-PC 法の配管図 キーワード 六価クロム、イオンクロマトグラフィー(IC )、ポストカラム誘導体化法(PC )、 誘導結合プラズマ-質量分析(ICP-MS 2 イオンクロマトグラフ法による六価クロムの測定例 カラム : Thermo Scientific ™ Dionex ™ IonPac ™ AG12A/AS12A カラム温度 : 30 溶離液 : 9 mmol/L 炭酸ナトリウム 流量 : 1.5 mL/min 検出 : 電気伝導度(サプレッサー使用) 注入量 : 250 µL 定量下限値 : Cr 6+ として 4.5 µg/L
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、 P、 MS による分析法の比較 -IC...カラム: Di onex I Pac AG7 カラム温度: 30 溶離液: 0.4 mol/L 硝酸 流量: 1.2 mL/ in 注入量: 1 0 µL ICP-MS条件 装置:

Feb 26, 2021

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Page 1: 、 P、 MS による分析法の比較 -IC...カラム: Di onex I Pac AG7 カラム温度: 30 溶離液: 0.4 mol/L 硝酸 流量: 1.2 mL/ in 注入量: 1 0 µL ICP-MS条件 装置:

はじめに六価クロムは細胞内のタンパク質や DNA に結合し、代謝異常やがん、皮膚の炎症、喘息、肝臓の損傷を引き起こすと言われています。このため、毒性のない三価クロムとは分けて、個別に微量を定量できる分析法が求められています。六価クロムの分析法にはさまざまな方法があり、イオンクロマトグラフィー(IC)を用いる方法だけでも 3 種類があります。このアプリケーションノートでは、IC による六価クロムの分析法を比較します。

イオンクロマトグラフ(IC)法六価クロムは、クロム酸として陰イオン交換分離と電気伝導度検出という、一般的なイオンクロマトグラフ法で測定することができます。配管の模式図を図1 に、標準液の測定例を図2 に示します。図2 に示した条件で試料注入量が 250 µL のとき、定量下限値は六価クロムとして 4.5 µg/L(クロム酸として 10 µg/L)です。なお、この方法は陰イオンと六価クロムを一斉分析できますが、三価のクロムを定量することはできません。

図1:イオンクロマトグラフ法の配管図

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六価クロムの分析法- IC、IC-PC、IC-ICP-MS による分析法の比較 -

日本ダイオネクス株式会社

イオンクロマトグラフ‐ポストカラム(IC-PC)法六価クロムを分離後に、ジフェニルカルバジド溶液を添加して、吸光光度検出器で測定する方法を、IC-PC 法といいます。クロムとジフェニルカルバジドの複合化合物を 520 nmで検出します。電気伝導度検出と比べて、高感度な検出が可能です。

図3:IC-PC 法の配管図

キーワード六価クロム、イオンクロマトグラフィー(IC)、ポストカラム誘導体化法(PC)、 誘導結合プラズマ-質量分析(ICP-MS)

図2: イオンクロマトグラフ法による六価クロムの測定例

カラム : Thermo Scientifi c™ Dionex™ IonPac ™ AG12A/AS12A

カラム温度 : 30 ℃溶離液 : 9 mmol/L 炭酸ナトリウム流量 : 1.5 mL/min検出 : 電気伝導度(サプレッサー使用)注入量 : 250 µL

定量下限値 : Cr6+として 4.5 µg/L

Page 2: 、 P、 MS による分析法の比較 -IC...カラム: Di onex I Pac AG7 カラム温度: 30 溶離液: 0.4 mol/L 硝酸 流量: 1.2 mL/ in 注入量: 1 0 µL ICP-MS条件 装置:

Ap

plic

atio

n N

ote

IC1

30

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E1310

IC-PC 法では、六価クロムをクロム酸として分離する方法と、溶離液に錯形成剤を添加して六価クロムと三価クロムを分離する方法があります。それぞれの測定例を図4 および図5 に示します。

カラム : Dionex IonPac AG20/AS20カラム温度 : 35 ℃溶離液 : 30 mmol/L 水酸化カリウム流量 : 1.0 mL/min反応試薬 : 2 mmol/Lジフェニルカルバジド/10%メタノール/

0.5 mol/L 硫酸検出器 : 吸光光度(520 nm)試料注入量 : 500 µL

図4:IC-PC 法(六価クロムをクロム酸として分離したとき)

カラム : Dionex IonPac CG5A/CS5A溶離液 : 2 mmol/L 2, 6- ピリジンジカルボン酸/2 mmol/L

リン酸水素ナトリウム/10 mol/L ヨウ化ナトリウム/50 mmol/L 酢酸ナトリウム/ 2.8 mmol/L 水酸化リチウム

流量 : 1.0 mL/min反応試薬 : 2 mmol/Lジフェニルカルバジド/10%メタノール/

0.5 mol/L 硫酸検出器 : 吸光光度 (520 nm)注入量 : 250 µL

図5:IC-PC 法(六価クロムと三価クロムの一斉分析)

イオンクロマトグラフ‐誘導結合プラズマ‐質量分析(IC-ICP-MS)法六価と三価を一斉に高感度検出したい場合は、IC で形態別に分離後、ICP-MS で検出する(IC-ICP-MS)方法があります。この方法では、1000 µL 注入時で三価クロムが 3 .3 ng/L、六価クロムが 2.5 ng/L と非常に高感度に検出できます。測定例を図6

に示します。

おわりに六価クロムは、イオン交換 -電気伝導度検出の IC 法で簡便に測定できますが、IC-PC 法で µg/L レベルの高感度に、IC-ICP-

MS 法では ng/L レベルの超高感度測定が可能です。

IC条件カラム : Dionex IonPac AG7カラム温度 : 30 ℃溶離液 : 0.4 mol/L 硝酸流量 : 1.2 mL/min注入量 : 1000 µL

ICP-MS条件装置 : Thermo Scientifi c ™ iCAP ™ Qcネブライザー : ESI PFA-LCネブライザースプレーチャンバー : 石英製サイクロン型インジェクター : 石英製 内径 2.5 mmインターフェイス : Ni製高マトリックス対応インターフェイス

(insert : 3.5 mm)ネブライザーガス流量 : 0.99 mL/min高周波出力 : 1550 WQcell Heガス流量 : 4.3 mL/minQcell KED設定電圧 : +3 V測定同位体 : 52Cr 、 53Cr積分時間 : 100 ms

図6:IC-ICP-MS 法での 5 ng/L クロムの測定例

Ⓒ2013 Thermo Fisher Scientifi c Inc. All rights reserved.ここに掲載されている会社名、製品名は各社の商標、登録商標です。ここに掲載されている内容は、改善のために予告なく変更することがあります。

定量下限値 : Cr6+ 0.02 µg/L

定量下限値:Cr3+ 100 µg/L, Cr6+ 1 µg/L

定量下限値:Cr3+ 3.3 ng/L, Cr6+ 2.5 ng/L