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安定供給確保のための強靭な 石油・LPガスサプライチェーンの構築について 平成25年9月 資源エネルギー庁 総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 第4回会合 資料2
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安定供給確保のための強靭な 石油・LPガスサプライ …›®次 1.石油・LPガスサプライチェーンの意義と直面する課題 2.危機時のリスクと対策

Jun 10, 2018

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安定供給確保のための強靭な石油・LPガスサプライチェーンの構築について

平成25年9月資源エネルギー庁

総合資源エネルギー調査会基本政策分科会 第4回会合

資料2

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目 次

1.石油・LPガスサプライチェーンの意義と直面する課題

2.危機時のリスクと対策-輸入途絶・国内大災害による供給障害(1)中東危機等(ホルムズ海峡封鎖等)への対策(2)国内危機(首都直下地震・南海トラフ巨大地震等)への対策

3.平時の対応(1)「石油精製・元売業」の課題と取組み(2)「石油販売業」の課題と取組み(3)「LPガス販売業」の課題と取組み

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1.石油・LPガスサプライチェーンの意義と直面する課題

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【必要な取組み】

○国内需要減に伴う供給能力過剰、アジアでの供給過剰による海外市場競争激化への対応

○将来的な原油の重質化や、シェール革命による石化市場変化への対応

○生産性の高いアジアの石油コンビナートとの競争への対応

○国内における公正な競争環境の構築 等

石油・LPガスサプライチェーンの意義と直面する課題

○石油・LPガスは、大規模災害等の危機により電力・都市ガス供給が不十分な状況でも、生命維持、救援・復旧、市民生活等を支える「最後の砦」として機能しうるエネルギー。東日本大震災時も重要な役割を果たした。

○そもそも、危機時の有用性のみならず、平時の社会経済活動に不可欠な燃料であるため、全国的な安定供給体制(経営基盤・供給網)が存続・機能することが必要。

○このため、①官民一体の危機即応力の強化と、②自由化された市場の中での安定的な供給体制維持のための石油・LPガス産業の経営基盤強化が必要。

石油・LPガスサプライチェーンの意義

【必要な取組み】

○危機即応力の強化

・官民一体での危機即応体制(石油供給BCPの確立と制度整備等)の向上と実践的な訓練の実施

・供給インフラ(製油所・SS・LPガス充填所等)の危機対応力強化

平時の対応=全国供給体制維持のための経営基盤強化

危機時のリスク

=輸入途絶や国内大災害による供給障害

直面するリスクと必要な取組み

様々なリスクに対して強靭な石油・LPガスサプライチェーンを構築=社会経済活動の「最後の砦」を確かなものにする 3

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2.危機時のリスクと対策ー輸入途絶・国内大災害による供給障害

(1)中東危機等(ホルムズ海峡封鎖等)への対策

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○原油の中東依存度は引き続き高いが、我が国は、ホルムズ海峡封鎖等のリスクに対し、十分な量の石油備蓄を保有しつつ、IEAの国際協調放出枠組みに参画して危機時に備えている。

日本の原油調達における地政学的リスク(高い中東依存度)と対策

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○我が国の石油備蓄制度は、国家備蓄と民間備蓄の二本立て(合計約150日分)

【備蓄量】 (平成25年6月末現在:日数は、国際エネルギー機関(IEA)ベース)

・国家備蓄: 原油4,894万kl ・ 製品46万kl (需要の84日分)

国所有の石油を、(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と石油精製業者等に管理委託。

・民間備蓄: 原油1,995万kl ・ 製品1,847万kl (需要の69日分)

石油精製業者等(石油精製元売・商社等)が在庫として義務的に保有。

○国家石油備蓄基地に蔵置するほか、製油所等にある民間石油タンクを借り上げて備蓄を蔵置している。

我が国の石油備蓄について

出光興産・ 愛知

北海道共備

苫小牧東部

むつ小川原(地上タンク)

秋田

昭和シェル・ 新潟東港

新潟共備

久慈(地下岩盤タンク)

三菱商事・小名浜

鹿島石油・ 鹿島

富士石油・ 袖ヶ浦

出光興産・ 千葉

福井

JX・ 大崎

東燃・ 和歌山菊間

出光興産・ 徳山

西部石油・ 山口

JX・喜入

志布志

串木野

上五島(洋上タンク)

白島

JX ・知多

沖縄石油基地(OCC)

沖縄ターミナル(OTC)

(参考)我が国の国家備蓄石油の蔵置場所(原油)

(*)民間備蓄は、石油会社等が全国に所有する貯蔵施設にて備蓄。

国家備蓄基地

民間タンク借上げで国家備蓄石油を蔵置している基地

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福島(長崎県)施設容量 20万㌧備蓄方式 地上低温タンク方式

七尾(石川県)施設容量 25万㌧備蓄方式 地上低温タンク方式

神栖(茨城県)施設容量 20万㌧備蓄方式 地上低温タンク方式

倉敷(岡山県)施設容量 40万㌧備蓄方式 水封式地下岩盤貯槽方式

波方(愛媛県)施設容量 45万㌧備蓄方式 水封式地下岩盤貯槽方式

地上

地上

地上

地下

地下

(参考)我が国の国家LPガス備蓄基地

波方基地

(左:地上設備、右:地下岩盤貯槽)

七尾基地

○我が国のLPガス備蓄制度は、国家備蓄と民間備蓄の二本立て(合計約78日分)

【備蓄量】 (平成25年6月末現在:日数は、備蓄法ベース)

・国家備蓄: 約19日分(約68万トン)

・民間備蓄: 約59日分(約204万トン:備蓄義務50日分+約9日分流通在庫 ) 合計78日分

○現在、国家備蓄を増強中。

・平成25年3月に2つの国備基地(倉敷・波方)完成(国家備蓄150万トン体制の基地建設完了)。

・平成25年8月末には波方基地に、米国よりLPガスの第一船が入港。今後、着実に国家備蓄LPガスの購入・蔵

置を進める予定。

我が国のLPガス備蓄について

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●石油備蓄放出にかかる国内ルール(石油備蓄法)経済産業大臣は、以下の場合にのみ放出できることとされている。(1)我が国への石油の供給が不足又は不足するおそれのある場合

(2)我が国における災害の発生により国内の特定の地域への石油の供給が不足又は不足するおそれのある場合

(参考:石油の備蓄の確保等に関する法律)

第三十一条(略)経済産業大臣は、我が国への石油の供給が不足する事態又は我が国における災害の発生により国内の特定の地域への石油の供給が不足する事態が生じ、又は生じるおそれがある場合において、(略)国家備蓄石油を譲り渡し、又は貸し付けることができる。(以下略)

●石油備蓄放出にかかる国際ルール

IEAの枠組みの下では、備蓄は量的不足の事態に際し、緊急時に協調して放出することがルールとされている。(参考)国際エネルギー計画に関する協定(IEP協定:1975年)

第十二条 集団全体又はいずれかの参加国が石油供給の削減を受ける場合又は受けるものと予想する理由がある場合には、(中略)緊急時の措置が発動される。

●IEA主要国の備蓄日数(平成25年4月末時点。IEAベース)

アメリカ ドイツ イタリア フランス 韓国 日本

174日 144日 110日 102日 228日 150日

石油備蓄の放出のルール及び主要国の備蓄日数について

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IEA協調行動による我が国の備蓄放出(民間備蓄義務引き下げ)実績

●1991年 湾岸戦争時のケース

1991年1月、湾岸地域で戦闘が発生した場合の石油の供給不足に備え、IEA(国際エネルギー機関)で日量250万バレルの石油備蓄放出を決定。

→我が国は、民間備蓄義務日数を4日分(82日→78日)引き下げ

●2005年 米国ハリケーン・カトリーナのケース

2005年8月、ハリケーン「カトリーナ」による米国における石油施設等の被害の状況を踏まえ、IEAで日量200万バレルの石油備蓄放出を決定。

→我が国は、民間備蓄義務日数を3日分(70日→67日)引き下げ

●2011年 リビア情勢悪化のケース

2011年6月、リビア情勢悪化による石油供給不足へ対応するため、IEAで日量200万バレルの石油備蓄放出を決定。

→我が国は、民間備蓄義務日数を3日分(70日→67日)引き下げ

○これまで、石油供給不足につながるおそれのある事態に際してIEA協調行動が決定され、我が国も加盟国とし

て協調放出を実施(民間備蓄義務の引き下げで対応)。

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石油・LP ガス備蓄放出にかかる仮想フロー図(例)

○石油供給途絶につながる恐れのある事態に備え、国としては、手続等を整備し、石油業界とともに(次頁のような)訓練等を定期的に繰り返している。

○仮にホルムズ海峡封鎖が発生したとして、その後3週間程度の間は、中東から日本に向かう洋上にあるタンカーが順次日本に到着し、原油・LPガスが供給される。国は、この間に、需給動向を見極め、①民間備蓄の引き下げとともに、②必要に応じて国家備蓄原油・LPガスについても、放出が容易な状態にある基地から順に段階的に放出を進める。

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○国家備蓄石油の放出手続・割当てに関する訓練・①資源エネルギー庁から、石油精製元売各社に対し、備蓄放出の対象となる基地や原油の油種・数量等の情報を提示し、②各社はこれに応えて割り当て要望を提示、③要望を踏まえて資源エネルギー庁が割り当てを決定。・こうした一連の流れについて、資源エネルギー庁と石油精製元売各社との間で年2回の実戦的なシミュレーション(机上訓練)を実施し、即応体制を整備している。

○油種入替事業等による実地放出訓練・震災から復旧した久慈基地については、今後、再稼動に向けた放出訓練を実施。・また、緊急時に国家備蓄原油を利用する我が国の製油所や火力発電所の設備特性等を考慮し、備蓄原油を適切な性状の油種構成に入替え(従来から備蓄されている重質油を売却し、民間事業者の需要が高い軽質油を同量購入)、危機対応力を高める。※この油種入替事業は、国家石油備蓄基地における放出訓練としての意義も有している。

国家備蓄石油の放出訓練

各社への放出量割り当て決定・売買契約

「緊急時対応チーム」の設置

入港・荷役

タンカーの沿岸輸送特許取得等の手続き

国備原油(平成24年度末在庫)

原油輸入量(平成21年~23年平均)

保有数量(千kl)

構成比(%)

輸入数量(千kl)

構成比(%)

重質油 8,159 16.5 17,402 9.1

中質油 29,688 60.0 94,486 49.3

軽質油 11,645 23.5 79,623 41.6

(計) 49,492 100.0 191,512 100.0

<我が国の油種の現状><国家備蓄石油の放出段取り>

事象発生

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① 放出能力の増強事例

○ バース(桟橋)の増強:→ 緊急時放出に大型タンカーが着桟できるようバースを拡大する。

○ 作業船の高性能化:→ 緊急放出時のオイルフェンスの展張、

マリンホースの設置等の業務に当たる作業船を高性能化する。

作業船の高性能化(福井基地)原油タンカーのバース(桟橋)増強(志布志基地) 耐震工事イメージ図

国家備蓄基地の機動性向上事業

○大規模な石油の供給途絶が起こった際は、国家備蓄石油の速やかな放出が必要。そのため、国家備蓄基地における放出機動力を向上させることを目的に財政投融資を活用し、①放出能力の増強、②耐震・液状化・津波対策等、③老朽設備の更新を進めている。

② 耐震・液状化・津波対策事例

○ 耐震性強化・液状化対策:→ 中央管理棟など基幹施設の耐震性強

化(設計、補強工事)や液状化調査を実施。

○ 津波対策:→ 緊急時の津波に備え、非常用電源など重要設備を高台に移設する。

③ 老朽設備の更新事例

○ 中央変電所等の更新→ 基地の操業に関わる中央変電所等を更新する。

○ 受払ポンプの電力盤の更新:→ 石油の受払時ポンプに電力を配電するための設備を更新する。

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○国内の原油タンクを、我が国の主要原油輸入国であるアラブ首長国連邦(UAE)及びサウジアラビアの国営石油会社

に貸与し、両国の国営石油会社は所有する原油を蔵置。

・2009年12月より、鹿児島県のJX喜入(きいれ)基地において、UAEとの間で事業開始

・2010年2月より、沖縄県の沖縄石油基地(OCC)において、サウジとの間で事業開始

○平時には、産油国国営石油会社が当該タンクを(日本を含む)東アジア向けの供給・備蓄拠点として商業的に活用す

る一方、日本への原油供給途絶等の非常時には、タンク内に蔵置している原油を我が国が優先的に購入できる。

アブダビ首長国との共同備蓄プロジェクト

我が国の原油輸入先上位2カ国(サウジ・UAE)で全体の半分以上を占める。

我が国の原油輸入先第2位であるアブダビに対し、鹿児島県のJX喜入基地の原油タンク提供(約60万kl)。

我が国の原油輸入先第1位であるサウジアラビアに対し、沖縄県の沖縄石油基地(OCC)の原油タンクを提供(約80万kl)。

オイルロード

2009年3月、ムハンマド・アブダビ皇太子から提案あり。 2009年6月、資源エネルギー庁とアブダビ最高石油協議会との間で、基本的事項について合意。

2009年12月に第1船が到着(約30万kl)。2010年3月、第2船(約30万kl)が到着し、約60万klの貯蔵完了。

2007年4月に安倍総理訪サ時、アブドラ国王に対して提案。 2010年6月に、経済産業省とサウジアラムコ社との間で、基本的事項について合意。

2010年12月、JOGMECとサウジアラムコ社との間で、タンク賃貸借契約等締結。

2011年2月 第1船(約30万kl)到着。4月、第2船(約30万kl)が到着し、約60万klの貯蔵完了。

サウジアラビアとの沖縄原油タンク活用プロジェクト

産油国(UAE・サウジ)との共同備蓄プロジェクトの推進

日本の原油輸入量(2012年)366万B/D

サウジアラビア33.0%

UAE21.8%

カタール10.7%

クウェート7.6%

イラン5.2%

ロシア4.7%

インドネシア3.7%

オマーン2.9%

ベトナム2.3%

イラク1.9%

その他6.2%

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2.危機時のリスクと対策-輸入途絶・国内大災害による供給障害

(2)国内危機(首都直下地震・南海トラフ巨大地震等)への対策

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東日本大震災時の石油・LPガスの供給

「仮設SS」等において給油 避難所における炊き出しの熱源にLPガスを活用

被災者への仮設住宅の熱源にLPガスを活用

各家庭にはLPガスボンベが2本設置され、供給途絶

時も軒下在庫として平均1ヵ月以上使用可能被災時でも製油所・油槽所からドラム缶・コンテナで出荷

石油 LPガス

○東日本大震災当時、石油・LPガスは救援・復旧・市民生活等を支える「最後の砦」として重要な役割を果たした。

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石油販売業者

29%(422件)

病院・避難所

25%(364件)

警察・消防・地

方自治体・自

衛隊等

20%(291件)

その他(通信・

運輸・マスコミ

等)

26%(379件)

○被災地から内閣府経由の供給要請5,046件のうち約29%の1,456件が石油。政府と石油業界は、これら要請に対応し、約1.6万klの石油を被災地向けに供給した。

○なお、LPガスについては、需要家側の「軒下在庫」の存在もあり、供給要請は1件。

【石油供給の要請先内訳】

被災地からの供給要請対応件数(5,046件)のうち約29%が石油供給の要請への対応であった。

【被災地からの要請への対応内訳】

東日本大震災時の被災地からの石油・LPガス供給要請

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○ 東日本大震災時には、石油会社の物流施設(製油所・油槽所等)・輸送手段(タンカー・タンクローリー等)の損壊により、個々の石油会社の努力だけでは、石油供給が困難になった。

○ こうしたことから、独禁法等に抵触する懸念なく、石油業界全体で被災直後から共同で石油供給を行いうるよう、石油備蓄法を改正(災害時石油供給連携計画の作成・届出を義務化)。

① 製油所・油漕所等が被災した会社を、他社が供給支援する等の連携体制なし。

① 急遽、石油連盟内に共同オペレーションルームを設置。各社が協力して供給する体制を被災後に構築。

② 製油所・油槽所等が被災した際に、稼動可能な施設を業界内で共同利用する連携体制なし。

② 各社で共同利用する設備(塩釜油槽所等)を決め、出荷・製品補給も各社共同で実施。

※上記スキームの詳細や実施に係る問題点の検討に時間を要し、円滑な実施までに約1週間(事実上の行為)。

①稼働可能なSS(ガソリンスタンド)を捕捉する仕組みなし。

③SSの被災状況確認に時間を要し、稼働可能なSSへの石油供給に遅れ。

震災前 震災時 これまでの対応

(2)中核SSの捕捉一定要件を満たし、地域における災害時の石油供給拠点(緊急車両への優先給油等)となるSSの届出

震災時に応急措置的に構築・実施した供給オペレーションを、予め法制度として準備。これにより、発災後、大臣勧告により、直ちに対応可能な体制を構築。

【石油備蓄法改正済み】(1)大手石油元売に対し、地域ごとの「災害時石油供給連携計画」の事前作成・届出を義務化<計画の概要>①業界共同オペレーションルームの設置②共同利用する油槽所等の事前登録③製品の供給体制(輸送手段の共用・供給先割振り等)、域外からの製品補給方法 等

※公取委との事前調整を法定。発災後の大臣勧告により、独禁法上問題のない形で、直ちに供給連携を開始することを可能にした。

(1)製油所・油槽所

(2)SS(ガソリンスタンド)

東日本大震災の教訓を踏まえた対応 ~輸送体制強化(ソフト)~

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東日本大震災の教訓を踏まえた対応 ~供給設備の災害対応能力(ハード)~

○ 東日本大震災時には、停電や津波等により、被災地域の製油所・油槽所・SS(サービスステーション)の出荷・供給能力が毀損。このため、ガソリン・灯軽油等の在庫が存在するにも関わらず供給できない事態が発生。

○ こうした点を改善すべく、政府として、製油所・油槽所・中核SSにおける①非常用発電設備の導入や、②ドラム缶に石油を充填して出荷する設備の導入、③耐震強化等の投資を支援している。

② 製油所・油槽所から石油をドラム缶に充填して出荷する設備が不十分(通常は、タンクローリーに充填することが基本であるため)。

②被災地の避難所等へのドラム缶出荷を十分に実施できず。

震災前

③中核SS等における、自家発電設備導入、地下タンクの大型化等を支援。

① 災害により停電が発生しても製品を出荷できるだけの災害対応能力が不十分。

①停電により、石油タンクに在庫があっても出荷できず。また、石油タンク内の在庫量の把握も困難。

災害により停電が発生しても給油できるだけの災害対応能力が不十分。

③地下に貯蔵してあった在庫は無事であったものの、給油できず。営業しているSSに長蛇の列ができ、在庫切れが発生。

(1)製油所・油槽所

(2)SS(ガソリンスタンド)

これまでの対応

【予算措置】①全製油所や主要油槽所における、非常用発電設備、非常用情報通信システム、ドラム缶充填出荷設備の導入を支援。

②首都直下地震等の最新の被害想定を用い、製油所等の設備の地震・液状化・津波影響解析等を実施。

震災時

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東日本大震災の教訓を踏まえた対応 ~備蓄体制の強化(ソフト+ハード)~

○東日本大震災時には、石油業界からの申請に基づき、石油の民間備蓄を放出。○ しかし、被災当時の石油備蓄法では、「海外からの石油供給途絶時」にのみ、①国家備蓄石油の放出や②(事業者の申請を待たずに行う)国の発意による民間備蓄石油の放出を認めていたため、国家備蓄放出はできず、民間備蓄放出にも支障。

○ そもそも、当時の国家備蓄石油はほぼ全量が原油であったため、(仮に国家備蓄の放出が可能であったとしても)製油所の精製機能が毀損した震災時には石油製品の供給改善に結びつかなかった。

○ こうした点を改善すべく、石油備蓄法改正及び予算措置を講じ、①災害時の国家備蓄放出を制度上可能にするとともに、②ガソリン・灯軽油等の「製品形態での国家備蓄」を地域分散型で増強中(今年度内に国内需要の約4日分を蔵置予定)。

(1) 石油備蓄法上、災害時に①国家備蓄放出や②(事業者の申請を待たずに行う)国の発意による民間備蓄放出を行いうるよう規定せず。

(1) 国家備蓄の放出はできず。民間備蓄については、業界団体からの申請をもって全事業者からの申請とみなし、速やかに放出。

(2) 国家備蓄石油のほとんどが原油(99.7%)。

(2) 製油所や長距離物流網が被災したため、(仮に国家備蓄の放出が当時から可能であったとしても)被災地が求める石油製品(ガソリン、灯油、軽油等)の供給には貢献できず。

震災前

【石油備蓄法改正済み】(1)国内災害時にも①国家備蓄放出や②(事業者の申請を待たずに行う)国の発意による民間備蓄放出を可能にするよう、放出要件を改定。

【石油備蓄法改正済み・予算措置】(2)大規模災害発生時に、石油製品(ガソリン・軽油・灯油・A重油)を迅速に供給しうるよう、原油ではなく製品形態での国家備蓄を地域分散型で増強(今年度内に需要の約4日分を蔵置予定)。

(3) 国家備蓄石油製品の石油会社への管理委託を可能に。

(4)SS地下タンクにおける在庫の備蓄機能にも着目し、中核SS等の地下タンク大型化を支援。

これまでの対応震災時

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東日本大震災の教訓を踏まえた対応 ~LPガス供給体制(ソフト+ハード)~

○東日本大震災時には、LPガスの十分な「軒下在庫」の存在が被災直後からの暖房・炊き出し等を可能とし、自衛隊等の救援が到着するまでの初動時を含め、被災者の生活維持に貢献。また、政府は事業者の申請に基づき、民間備蓄の放出、近隣民間施設へ交換方式による国家備蓄の移送を措置。

○ 石油備蓄法改正や予算措置を講じ、①災害時の国家備蓄放出を可能にするとともに、②地域における災害時避難所となる学校・公民館や病院・特養ホーム等へのLPガスバルク・発電機等の導入、③災害時でも中核充填所単独で出荷出来るようLPG自家発電設備等の導入を促進している。

【予算措置】(3)LPG関連設備の導入促進①他エネルギーの途絶に備え、災害時に地域の避難所となる学校・公民館や 避難の難しい患者・老人を抱える病院・特養ホーム等への、LPガスバルク・LPG発電機・炊き出しセットの導入補助を実施。

②ガソリン供給不足が発生する事態であっても物資輸送等を可能にするべく、LPG自動車の導入補助を実施。

③災害時に中核充填所だけで出荷できるよう、LPG自家発電設備、LPG自動車、緊急通信設備などの導入補助を実施中。

(1) 災害時に国家備蓄を放出することを規定せず。

(1) 国家備蓄の放出はできなかったが、近隣民間施設への交換により、実質的な国家備蓄放出を実施。

(2)十分な軒下在庫が存在(平均して、需要1ヶ月以上分)

(2)震災直後の初動時、自衛隊等による救援が到着するまでの間も、LPガスの軒下在庫の存在が暖房・炊き出し等を可能にし、被災者の生命維持に役立った。

震災前【石油備蓄法改正済み】(1)国内災害時にも備蓄を放出できるよう放出要件を改定。

(2)特定石油ガス販売事業者等に対し、地域ごとの「災害時石油ガス供給連携計画」の事前作成・届出を義務化

これまでの対応震災時

20軒下に50kgのガスボンベ(軒下在庫)

■岩手県山田町での事例発災から3日目の自衛隊の到着まで、地

域婦人会が中心となって地区防災センターにてLPガスの調理設備を用いて懸命の炊き出しを実施。なお、LPガス事業者は、地区内の一般

家庭に対する点検・供給を12日目に再開(それ以前から使用再開中)。電気の19日目、水道の36日目と比較しても迅速であった。 【全国地域婦人団体連絡協議会調べ】

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LPガス充填所

都市ガス供給エリア

都市ガスガスパイプライン損傷

避難所 役所・病院など移動式ガス発生設備 (プロパン13A)

軒下に50kgのガスボンベ

岩手県 88%

宮城県 64%

福島県 80%

埼玉県 48%

千葉県 32%

神奈川県 30%

東京都 9%

LPガス消費世帯の県内全世帯数に占める比率(H22年3月末)

○ LPガスは導管に依存せず、ボンベで供給される分散型エネルギーであるため、災害時に電力・都市ガスの導管供給が分断された場合にも有効利用が可能。

①【軒下在庫】:通常、各家庭にはLPガスボンベが2本設置され、供給途絶時も軒下在庫として

平均1ヵ月以上使用可能。

②【迅速な復旧】:個別供給するLPガスは、1戸単位での迅速な復旧が可能

③【炊き出しへの活用】:軒下在庫や災害時対応バルクシステム等を

用い、被災初動時に地域の公民館などで暖房・炊き出し用

熱源として利用され、被災者の生活維持に有効に機能

④【劣化しない】:LPガスは劣化しない性質のため、備蓄に適し、

廃棄コストの削減可能

④【LPG車の活躍】:ガソリンが不足した際もタクシー等のLPG車が走行可能

⑤【都市ガスへのバックアップ】:移動式ガス発生装置を活用し、都市ガス供給エリアの病院、避難

所等にLPガスを供給可能

(参考1)LPガスの災害対応における特性

21

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○ 一次・二次基地についても、多くの基地が被害を受けたため、平成23年4月4日から国家備蓄のLPガスを隣接する鹿島液化ガス共同備蓄㈱へ放出(民間在庫との交換)。

○ LPガス国家備蓄基地は民間輸入基地に隣接しているため、民間輸入基地の出荷設備を活用し、供給不安に効果的に対応できた。

供給基地の被災・復旧状況 国家備蓄LPガスの活用

鹿島液化ガス共同備蓄(株)鹿島事業所

神栖国家石油ガス備蓄基地

LPガスの移送

(民間タンク ) (国備タンク )

所有権の移転

により国家備

蓄の減少分を

確保

(民間タンク )

大分液化ガス共同備蓄(株)大分事業所

<隣 接>

出荷秋田ターミナル

新潟ガスターミナル(輸入基地)

青森製造所(輸入基地)

八戸基地

小名浜LPGターミナル

鹿島液化石油ガス共同備蓄

川崎LPG基地市川基地

神栖国家石油ガス備蓄基地

被害なし

震災後、復旧

出荷・受入不可

仙台ガスターミナル(輸入基地)

(参考2)東日本大震災における被災状況と国家備蓄LPガスの活用

22

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南海地震

東南海地震

東海地震

南海トラフ巨大地震(三連動地震)

阪神大震災時の神戸港の液状化・護岸側方流動の教訓→護岸が沖合に流れ、神戸港の物流機能にダメージを与えた。

(出所)早稲田大学濱田教授資料

【今後30年以内の地震発生確率】東海:88%程度、東南海地震:70~80%程度、南海:60%程度※いずれも、マグニチュード8クラスのものであり、マグニ チュード9以上の地震や連動型を想定したものではない。

出典:平成25年1月 地震調査研究推進本部(文部科学省)

首都直下型地震

【首都圏、東海地震防災対策強化地域、東南海・南海地震防災対策推進地域にある拠点(対全国比)】

石油精製能力: 約79%(内、関東約38%)石油タンク : 約60%(内、関東約26%)LNG基地 : 約85%(内、関東約41%)LPG基地 : 約84%(内、関東約約36%)LNG火力 : 約84%(内、関東約44%)

(注)石油精製:製油所の原油処理能力の対全国比率石油タンク:製油所・油槽所等のタンク容量の対全国比率LNG基地:稼働中の輸入基地における受入規模の対全国比率LPG基地:輸入基地における実貯蔵能力の対全国比率LNG火力:LNG火力の発電設備容量の対全国比率

○我が国のエネルギー供給拠点は、太平洋ベルト地帯に集中。

○首都直下地震や南海トラフ巨大地震が発生した場合、広範囲にわたり、相当な期間にわたり、供給困難が発生するおそれ。相当程度のエネルギー供給能力が毀損される。

○東日本大震災の教訓から全国的な視点に立ち、ソフト・ハードの面でのサプライチェーン強靭化を検討することが重要。

首都直下地震・南海トラフ巨大地震によるリスク

23

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石油・LPガスサプライチェーンの危機対応力強化のあり方

石油 LPガス

ソフト

・関係省庁(内閣府・国交省・防衛省等)・関係業界・地方自治体等の連携を強化し、具体的な事態を想定した対処方針について、相互の人員・物資・資機材等の融通可能性や、非常時の制度運用も含め、事前検討や訓練を進める。・中核SSを中心とした緊急時を想定した訓練・研修・過疎SS問題に対応した自治体との連携

・LP備蓄放出のオペレーション訓練

・中核充填所を中心とした緊急時に備えた訓練

・関係業界・地方自治体の連携を強化し、具体的な事態を想定した防災協定等の締結を進める

ハード

製油所・油槽所・輸送手段 SSLPガス充填所・需要家設

・製油所・油増所の災害対応能力強化(非常用電源・ドラム缶出荷設備等設置)・設備の耐震・液状化・津波対策の推進・被害を織り込んだ早期復旧策の準備

・中核SS等の災害対応能力強化(自家発電、大型タンク等)・消防法に対応したタンクの整備・過疎地における設備の合理化

・中核充填所の災害対応能力強化(自家発電、LPG自動車、緊急通信設備等)・緊急時に備えたバルクの整備・LPコジェネ等の導入促進

○石油・LPガスの安定供給が、首都直下地震や南海トラフ巨大地震等の未曾有の危機時にも維持・早期回復され

るためには、ソフト・ハード両面からの強靭化が必要。

○ソフト面としては、関係省庁・関係業界(精製元売・運送・販売等)等の間で、①具体的危機想定に基づく対処方針

の策定と実践的訓練、②人員・物資・資機材等の融通可能性の確認、③非常時の制度運用等についての事前申

合せ等を進めることが必要。石油業界各社は、これらと平仄の合ったBCPを同時に整備することが必要。

○ハード面としては、製油所・油槽所・SS・LPガス充填所等の「供給拠点」やタンカー・タンクローリー・貨車等の「輸

送・給油手段」の災害対応能力強化や、地域分散型での(ガソリン・灯軽油等)製品備蓄の強化等が重要。重要な

社会機能を担う需要家側による、自らの初動を支える備蓄確保も必要。

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○ 下図は、2011年3月17日(被災6日後)に経産大臣が発表した、地域間供給バックアップ作戦の概要。○ 「次なる危機」に向けては、具体的危機を想定し、供給バックアッププランを官民関係者間での事前に準備・同意・共有することが必要。

○その上で、①官民双方が必要な設備投資、②非常時の円滑な物流を可能にする制度運用や輸送に必要な資機材・人員の融通等の必要な準備を進め、③実践的な訓練等を繰り返すことが必要。

25

官民一体での危機対応力強化の必要性(ソフト+ハード)

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○ 石油備蓄法に基づく「特定石油精製業者等」(大手石油精製元売)による「災害時石油供給連携計画」の訓練を、

石油業界・関係省庁・地方自治体等、今後さらに関係者を拡大して継続。

○ 計画の実効性をさらに高めるためには、必要に応じて計画や情報共有システムの改訂を進める。

(1)石油 「災害時石油供給連携計画」の実効性の確保①(ソフト)

本年実施した「第1回訓練」のスキーム(平成25年6月26日~28日実施済)

【被害想定】南海トラフ巨大地震が発生し、和歌山県・大阪府南部で大きな被害が発生

経済産業大臣が特定石油精製業者等(大手石油元売会社)に対し、「災害時石油供給連携計画」の実施を勧告。石油連盟内(被災時は別の場所)に各社が集まり、「共同オペレーション」を開始(公取委と事前に調整した方式で実施)。

エネ庁

共同オペレーションルーム(石油連盟内)

②緊急要請対応室(需要・供給のマッチング機能)・エネ庁から送付される「物資調整シート」に基づき、個々の対応を石油元売に割振る

・基地の共同利用を行う場合、①利用するタンク等の数量や、②出荷・受入設備の利用スケジュール等の割振りを調整

①情報収集室(供給能力の情報収集機能)・被災地域の製油所・油槽所・SS等の供給インフラ被災状況・在庫量等を情報収集。

燃料供給要請

燃料調整シート送付

供給依頼

内閣府(防災)

特定石油精製業者等

(石油元売各社)

和歌山県

燃料調整シート送付

石油連盟事務局が事務を担当。エネ庁からも職員を派遣し、調整事務を行う。

訓練結果を踏まえ、情報共有システムの改良を進める

製油所等被災状況・在庫量

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○石油業界が共同で行う「災害時石油供給連携計画」の実効性確保には、政府全体や個々の石油会社の石油供給

BCP(事業継続計画)や強靭化投資が、整合性を持って整備されることが必要。

(1)石油 「災害時石油供給連携計画」の実効性の確保② (ソフト)

(1)被災・停電した中での重要な社会機能の燃料需要把握と、需要家側での十分な備蓄

・ 官庁・通信基地局・病院・火葬場・自衛隊・海保・警察・消防等の重要な社会機能が必要とする燃料の種類・量の把握・ 重要な社会機能を担う需要家側における、被災後の初動を支える十分な備蓄

(2)災害時の燃料供給の「優先順位付け」についての考え方の準備・(杓子定規な順位付けは有害だが)事前の考え方の整理は不可欠

(3)災害時の燃料供給に必要な資金の確保・(政府の緊急供給要請に応えて)普段の商取引がない相手に販売する際の売掛債権保全

(4)災害時燃料物流のための省庁間協力・官民協力・他省庁・関係機関が保有する輸送手段等の活用・タンクローリー・船舶等輸送手段・運転者の融通・確保・ディーゼル機関車の確保や非常時における機関車通行可能な路線の確保 等

(5)災害時燃料物流の円滑化に向けた課題の事前検討・災害時の末端供給(給油)におけるタンクローリー・屋外給油機等の活用・災害時におけるタンクローリーの長大・水底トンネル通行・迅速な災害時の緊急通行車両登録 等

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A地区(原油タンクエリア)

C地区(石油精製エリア)

桟橋

水底トンネル

橋脚

B地区(製品出荷エリア)

貨物鉄道

最低限維持すべき機能:石油製品の入出荷機能

(1)石油 【製油所・油槽所対策】災害時入出荷機能の強化① (ハード)

○首都直下地震・南海トラフ巨大地震を想定した場合、製油所のハード対策の考え方は、以下のように整理できるのではないか。①震度6程度の地震の場合、石油精製設備は自動停止(無傷でも運転再開には7日前後。被害があれば長期化。東日本大震災時には、3つの製油所が復旧に半年から1年を要した。)

②系統電源が停電、その復旧にも時間がかかる可能性③埋立地盤の液状化や桟橋等の側方流動等の発生により、海上・陸上の入出荷機能が毀損する可能性

○石油の安定供給を早期回復させるためには、製油所の石油精製設備が長期にわたり停止したとしても、①製油所内に蔵置されている石油製品備蓄(民間備蓄・国家備蓄)を放出、②大型石油製品タンカー(MR級)により国内他製油所や海外から石油製品を受入れ、③製油所外へ出荷(タンカー・タンクローリー・貨車)するための諸機能を維持・早期回復しうるよう、準備が必要。

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(1)石油 【製油所・油槽所対策】災害時入出荷機能の強化② (ハード)

【石油製品備蓄の保全】-製油所内の石油製品備蓄(国家備蓄・民間備蓄)の保全

【海上・陸上の入出荷機能の確保】-「非常用電源」「非常用通信設備」「ドラム缶充填・出荷設備」の確保-大型タンカーによる効率的な製油所間バックアップ転送のため、桟橋・出荷ポンプ等の能力増強-地震動対策・液状化対策・側方流動対策等による設備の耐性強化-一定の液状化被害等の発生を前提として、早期復旧を助ける資機材・人員等の事前準備

※臨海コンビナート地区からの搬出経路の確保=国交省等(港湾・道路・鉄道)関係省庁との連携論点-コンビナート港湾地域における、タンカー航路・泊地の保全・早期復旧-コンビナート地区と陸地をつなぐ橋脚や貨物線の保全・早期復旧-非常時における水底・長大トンネル(例:東京湾アクアライン等)通行の確保 等

ドラム缶充填設備の設置

非常用電源の設置

タンカー桟橋能力の増強

液状化・側方流動対策

国家製品備蓄の増強

製油所で死守すべき機能

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未調査区域の「地盤資料」を追加的に収集(ボーリング調査等)

企業が保有する「地盤資料」を収集・整理 事業所全域で

液状化予想箇所の推定

護岸背後地盤の移動量の推定

事業所地盤の側方流動量の推定

液状化・側方流動・津波・地震動リスクに対応し、強化すべきポイントを把握

首都直下地震及び南海トラフ巨大地震の最新の想定地震動を、Input‐motionとして入力

100kmGoogle地図に加筆

東京湾

伊勢湾

沖縄

大阪湾・南海

九州

中国・四国

総額費用:43億円事業所数:25ヶ所

首都圏、南海トラフ沿いの3地域及び九州地区・沖縄地区において実施中。

産業・エネルギー基盤強靭性確保調査事業(平成24年度補正、25年度繰越)

○首都直下地震・南海トラフ巨大地震の被災想定地域内の石油コンビナート地区に立地する製油所・化学工場等を対象に、最新の震度等想定を用い、災害リスク(地震動・液状化・側方流動・津波)に対する「耐性総点検」を実施中。官民連携による効果的・効率的な対策を進める上での基礎資料として活用する予定。

(1)石油 【製油所・油槽所対策】災害時入出荷機能の強化③ (ハード)

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○東京湾等の石油コンビナートは、埋立てられた軟弱な地盤の上に造成。人工造成地の土壌が安定固化するには100年以上かかるため、1960年代から1980年代に造成された石油コンビナートは、近い将来にわたり、「液状化」への抵抗力が低い状態にあるといわれる。

○大規模な「液状化」が生じた場合、製油所の配管類の破損・切断のおそれがある。また、護岸の背後地盤が液状化することにより、コンビナートの地盤全体が大きく海方向に押し出される(側方流動)可能性もある。その場合、製油所へのタンカー着桟が困難になり、タンクの不等沈下により石油の入出荷が困難になるおそれがある。

出典:貝塚爽平「東京湾の地形・地質と水」 0 100m0 100m

NN

336189

189365338

365

189188

神戸市御影浜 285 298236235神戸市御影浜

東京湾埋立の歴史 阪神淡路大震災時の神戸港で発生した側方流動

(参考)石油コンビナートの抱えるリスク

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○災害時に地域の石油製品供給の拠点となる、自家発電設備や大型タンク等を備えた「中核SS」を各県あたり20~40カ所程度整備し、平成26年中に全国で計約2,000カ所の整備を完了する予定。

○加えて、災害時に中核SSを補完する役割を果たす災害対応型SSの整備を引き続き進める。

○また、こうしたハード対策を支えるソフト対策を行い、災害対応の実行性を担保することが重要。具体的には、SSの従業員に対する人材育成等の取組として、全国の石油組合において、①災害時対応研修、②災害時対応訓練を、年1回実施。

(1)石油 【SS対策】災害対応型中核給油所(中核SS)等の整備(ソフト+ハード)

◆中核SS整備・自家発電設備、情報伝達装置等の設置補助、地下タンク増強◆小口燃料配送拠点整備・自家発電設備、情報伝達装置等の設置補助、地下タンク増強、配送用ローリー導入補助◆周辺SS早期再開支援拠点整備・携行缶、自家発電設備、可般式ポンプ等の複数常備◆災害対応型SS整備・自家発電設備、地下タンク増強

◇災害時対応研修の実施

災害発生時におけるSS店頭混乱防止策をはじめ、行動指針等について説明し、災害時の対応等に係る研修を実施。・東日本大震災の概要、SS被害状況、東日本大震災以降の行政の動きについて・SS店頭における一般車両対応、及び優先供給車両への対応方法について・自家発電機の操作手順及びメンテナンス

◇災害時対応訓練の実施災害を想定し、実際に自家発電機を起動させて災害発生時の対応に関する実地訓練を実施。・SS店頭における問い合わせへの対応(話法訓練)・自家発電機の起動訓練

ハード対策

ソフト対策

32

・23年度補正:青色・24年度当初:赤色・24年度補正:黄色

緊急車両等への給油中核SS

自家発電設備等

優先給油

(出所:下野新聞HP)

中核SS整備状況地震の被害予想が大きい県から順次整備中

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基地出荷機能強化

今後需要期に災害が起こった場合等にも対応できるよう、全国の輸入基地のうち特に重要な拠点の災害時対応能力を抜本的に高め、被災した基地に代わって石油ガスを供給できる体制を整備します。

1.出荷機能強化2.節電・停電対策

充填所の出荷・配送体制強化

災害時対応中核充塡所

被災者・被災地

LPG自動車による、①燃料の配送②物資の運搬③流出ボンベの撤去 等が可能となる。

・LPG自家発電設備の設置・ディスペンサーの配備・LPG配送車を配備・LPG軽自動車を配備・出荷設備の配備・緊急時通信設備の配備

自治体等

連携

○分散型エネルギーであるLPガスは、災害時において、系統電力や都市ガスの供給が途絶した場合でも、軒下在庫があることによって迅速な活用が可能。

需要 設備導入需要サイドのバルク・設備導入

分散型エネルギーであるLPガスのバルクシステムと発電機等の導入促進

○LPガス基地、中核充填所の出荷機能強化及び需要家側へのLPガス発電機等の導入により災害対応能力を強化。○また、ソフト面からも地方自治体とLPガス関係業界との災害時連携の強化を進める。

(2)LPガス LPガス基地・充填所の災害対応能力強化 (ソフト+ハード)

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(2)LPガス サプライチェーン全体の災害対応能力強化(ハード)

○首都直下地震等の次なる危機に備え、災害時のLPガスの安定供給を図るべく、上流(LPガス輸入基地)から下流(需要家側設備)まで一貫した、LPガスサプライチェーン全体のハード強化策を引き続き講じる。

上流(LPガス輸入基地) 中流(LPガス中核充填所) 下流(需要家側)

・LPガス輸入基地のうち自家発電設備等を所有していない8基地に対し、移動式電源車を4台配備するとともに、その受電設備を整備中。

・北海道内の5つのLPガス2次基地のうち3基地に対し、移動式電源車を3台配備するとともに、その受電設備を整備中。

・LPGローリー車の管理システムを日本LP協会に整備中。

・全国約2,200箇所ある充填所のうち、約300箇所を中核充填所として出荷機能の強化を実施中。

※出荷機能の強化とは、・LPG自家発電設備・LPG自動車・緊急時通信設備 等の設置

・他エネルギーの途絶に備え、災害時に地域内の避難所となる学校・公民館や避難の難しい患者・老人を抱える病院・特養ホーム等における、LPガスバルク・LPG発電機・炊き出しセット・LPG自動車の導入を実施中。

・毎年、LPガス販売会社約40社が、需要家約40,000世帯に対し、集中監視システムの導入等の供給構造の改善を実施中。

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3.平時の対応

(1)「石油精製・元売業」の課題と取組み

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日本の石油精製・元売業の事業環境と課題

<課題>①石油コンビナートにおける設備最適化○ 個別製油所ベースの取組のみならず、コンビナート内外の複数製油所等の「資本や地理の壁を超えた統合型運営」により、①高効率な精製・石化設備等の増強・集約化や、②非効率設備の廃棄等により設備最適化。

○ 原油の超重質化(及び重軽格差拡大)を見据えた技術開発・設備改良の備え、シェール革命による市場変化を見据えた適切な石化投資(BTX、プロピレン等)等を推進。

②他の事業分野の強化・海外市場の開拓○ 総合エネルギー産業化(上流権益の更なる強化、電力・ガス事業等の強化・参入)等。○ アジア新興国向けの海外直接投資(海外での石油コンビナート運営・元売業への参入)等。

<事業環境>1.【需給バランス悪化】国内石油需要の減少(毎年△1%~△2%の需要減の見通し)○ 国内石油需要は、①人口減少、②エネルギー効率の改善、③(ガスシフト等の)燃料転換等により継続的に減

少していく見通し。アジア域内の石油製品需要は増加するが、供給力も増加するため、日本を含め、アジア域内全体で供給能力過剰になる見通し。

○ 石油精製元売は、大幅な設備廃棄を進めてきたが、引き続き、一層の設備最適化が必要。

2.【上流・下流の変化】原油重質化・シェール革命への対応の必要性○ 超軽質のシェールオイルが登場する一方、調達原油の超重質化(・重軽格差拡大)は引き続き備えるべき課題。このため、重質油分解能力向上の推進は、生産性とセキュリティ(原油調達可能性の拡大)の両面から必要。

○ シェールガス随伴「エタン(ガス)」由来のエチレンがアジアに流入すれば、アジア域内で競争力の低いエチレンプラントの淘汰を加速。日本の石油コンビナートに構造変化を迫る可能性。

3.【激しい国際競争】アジアで新増設される大規模・最新鋭石油コンビナートとの競争激化○ アジア域内で、スケールメリットと低コスト、巨大な石油化学能力等を有する最新鋭の輸出型石油コンビナートが新設・増設。日本のコンビナートは生産性向上に向けた設備最適化を迫られる。

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Shell ExxonMobil Chevron Conoco

Phillips A社 B社 C社

売上高(百万ドル) 470,171 467,029 244,371 244,813 115,868 53,811 39,354

上流部門 42,260 46,452 29,709 58,182 1,914 1,195 1,109

下流部門 427,864 420,565 214,132 186,513 104,598 51,146 39,041

その他 47 22 530 118 12,098 1,471 ▲ 797

当期利益(百万ドル) 31,185 41,060 26,895 12,436 4,022 1,724 805

上流部門 24,455 34,439 24,786 8,700 668 348 656

下流部門 4,289 8,842 3,591 4,496 3,075 1,251 173

その他 86 ▲ 2,221 ▲ 1,482 ▲ 760 266 125 ▲ 24

石油精製能力(千B/D) 3,251 6,271 1,967 2,011 1,630 640 635

石油製品販売量(千B/D) 6,196 6,413 2,949 3,125 1,103 518 233

○各国の石油産業は上流部門が主な収益源であり、上下流垂直統合型の企業構成。

○しかし、日本の石油産業は、第二次世界大戦後の歴史的経緯もあり、構造的に収益性の低い「中下流部門」を軸

として発展。それゆえ、(上流部門の厚い)海外メジャー等に比べ経営基盤は脆弱。

世界の石油企業との収益比較(2011年)

(出所:各企業公表データより作成)

海外の石油産業との収益基盤比較

37

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○ 燃料油の需要減は、東日本大震災後の電力用重油需要の拡大を除き、震災前より加速の見通し。

○ アジア全域の石油需要は今後も増加が続く。しかし、巨大な石油コンビナートの増設が続くため供給能力も増加。このため、アジア域内全体でも供給過剰となる見通し。

○ 設備の効率化・高度化によるマージン上昇と、市況変動に柔軟に対応した石油製品・石油化学製品の生産によって国内で利益を上げつつ、海外市場にどこまで食い込めるかがポイントとなる。

【需給バランスの悪化】国内・海外(アジア)の石油需給バランスの見通し

38

-

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 15

千BD

国内需要 精製能力

【アジア域内の需給の推移】

アジア域内供給

アジア域内需要

アジア域内も供給過剰

(出所)bp統計/FACTS

【原油処理能力と石油需要量の推移】単位:万B/D

製油所数は49カ所(ピーク時1984年)から25カ所(2013年9月現在)に減少。各社は、能力余剰を解消すべく設備廃棄を進めている。

※精製能力は各年4月1日時点の能力。2014年度は、各社公表情報を基にした見込み。※2000年度から2012年度までの需要量は実績。2013年度から2017年度までの需要はエネ庁「石油製品需要見通し」より

見通し

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カナダ:オイルサンド(超重質)

中東:原油の重質化

ベネズエラ:オリノコタール(超重質)

ブラジル:マリム原油(超重質)

【原油の重質化の状況】

○超軽質のシェール・オイルも登場する一方、原油の超重質化と重軽価格差の広がりにも備えることは、①製油所の

生産性向上と②供給セキュリティ向上の観点から、引き続き必要な課題。

○しかし、我が国製油所の重質油分解装置の装備率(原油処理装置の能力に対する重質油分解装置の能力の割

合)は、欧米やアジアの他製油所と比べ低い。

○我が国石油産業が調達する原油の将来的な超重質化や、国内需要の白油(ガソリン・灯軽油等)化に対応し、重質

油分解能力(原油一単位あたりの白油得率を上げる能力)を向上させることは引き続き必要。

【上流の変化】原油の変化(将来的な超重質化への備え)

39

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○石油化学の最上流にある「エチレン」には、①「石油(ナフサ)由来」と②「ガス(エタン)由来」がある(右下図参照)。○「ガス(エタン)由来」のエチレンは「石油(ナフサ)由来」のエチレンに比べ、コスト競争力が圧倒的有利(左下図参照)。○このため、北米シェールガスに随伴するエタンを原料とするエチレンがアジア地域に流入すれば、国際競争は激化し、アジア域内で競争力の低いエチレンプラントの淘汰が加速する可能性。○その場合、日本の石油産業(精製元売)は、①ナフサの売り先(エチレンプラントを持つ石油化学会社)を失うリスクと、②エチレンの連産品である基礎化学品(BTX、プロピレン等)の供給シェアを伸ばすチャンスの両方に直面している。

○内外の市場動向を見極めつつ、「ガソリン等燃料」と「BTX等基礎化学品」を柔軟に生産しうるよう、スピード感をもって設備最適化を進めることが生産性向上の鍵となる。

•エチレンのコストカーブ

天然ガス

原油

エタン

ナフサ

エチレン

ブタジエン

BTX

エチレン

•エチレン生産の流れ(イメージ)

プロピレン

(※日本ではナフサ由来のエチレンが主流)

(化学繊維、化学樹脂の原料等)

(自動車部品、

アクリル繊維の原料等)

(合成ゴム、タイヤの原料等)

(ポリエステル繊維、PET樹脂の原料等)

出典:CMAI “2011 World Ethane Cost Study”

北東アジアと米国でm3当たり600ドル以上の生産コスト差

40

【下流の変化】北米シェールガス生産拡大による石油・化学への影響

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○韓国の製油所に比べ、日本の製油所は①規模の経済(原油処理能力の大きさ)や、②生産コストで劣後(差額2.78$/bblのうち、メンテナンスやエネルギーに係る変動費用の差が$1.54/bblを占める)。○メンテナンスやエネルギー等のオペレーションの効率化により、より高い収益性を目指すことが重要。

○一方、日本の製油所は、設備の複雑性が高く、市場変動リスクに対する製品収率のフレキシビリティは比較的高いとい評価もある。アジアの新しい製油所との競争条件不利を補うべく更なる設備最適化を進め、内外の市場動向に合わせて燃料・基礎化学品を柔軟に生産する体制を強化し、輸出競争力も高めることが必要ではないか。

韓国は「規模の経済」で勝る(日本平均の3倍以上) 日本の製油所の「設備の複雑性」は比較的高い(※)

2010年時点J23

(日本製油所平均)

J5(日本製油所ベスト5)

K(韓国5か所)

Vacuum(VTU) 29.70% 39.90% 17.30%

Hydrocracker 3.80% - 7.90%

Reformer 16.60% 20.60% 12.30%

FCC 21.70% 22.50% 10.50%

Kerosene HYT 23.50% 24.90% 11.60%

Diesel HYT 19.60% 20.30% 20.60%

Complexity 11 10.6 9.9

2010年時点J23

(日本製油所平均)

J5(日本製油所ベスト5)

K(韓国5か所)

Crude 186 152 566

Vacuum(VTU) 55 60 98

Hydrocracker 43 - 314

Reformer 31 31 69

FCC 40 34 59

Kerosene HYT 44 38 65

Diesel HYT 36 31 116

(1000b/d)

41

【激しい国際競争】周辺国との石油コンビナート生産性競争(韓国との比較)

保安・メンテナンス費用やエネルギー費用に差日本の製油所の平均生産コストは韓国に比べ2.78$/bbl高い

87.00 85.14

84.22

80

82

84

86

88

J23 J5 K

$/bb

l

$2.78$0.92

0.720.47

0.82

0.44

0.04

0.05

0.22

0.14

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0

J23とKの差額 J5とKの差額

$/bb

l

その他

メンテナンス以外

メンテナンス

エネルギー

1.79

1.10

(数字の合計値が左図と合わない点は四捨五入による誤差と推定される。)

$1.54

※但し、韓国は2010年以降、重質油分解装置の能力を増強し、複雑性を高めている

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【エネルギー供給構造高度化法】○エネルギー供給事業者(電気、ガス、石油等)による非化石エネルギーの利用と化石燃料の有効利用を促進。

<法律のスキーム>

基本方針

判断基準特定のエネルギー供給事業者に対し、①非化石エネルギーの利用、②化石燃料の有効利用を義務づけ

基準に基づく計画の作成・届出・実施

→ 判断基準に照らし取組の状況が著しく不十分な場合、経済産業大臣は当該事業者に対し、勧告・命令の措置を講ずることができる。

非化石エネルギーの利用

【対象】電気事業者、ガス事業者、石油精製業者

化石燃料の有効利用

【対象】ガス事業者、石油精製業者

・・・経済産業大臣が策定

・・・経済産業大臣が策定

42

【石油精製業者に関する判断基準(大臣告示)】

○投入する原油一単位あたりの石油製品(ガソリン・灯軽油等)生産能力向上を義務付け(2013年度末期限)。

重質油分解装置の能力

原油処理装置の能力

重質油分解装置の装備率=

<参考>石油精製プロセスの概略図

原油処理装置(トッパー)

LPガス

ガソリン

灯油

軽油

残油留分

重油コークス等

原油処理装置から発生する残油留分(重質油)から、付加価値の高い軽質油(ガソリン・灯軽油等)を抽出・生産する装置。

軽質油

重質油(残渣)

ナフサ

LPガス

ガソリン

灯油

軽油

ナフサ

重質油分解装置

エネルギー供給構造高度化法(「重質油分解装置装備率」の向上義務)

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鹿島・鹿島製油所 270,000 →252,500JX・水島製油所 455,200→380,200

西部・山口製油所 120,000

JX・根岸製油所 340,000→ 270,000

コスモ・四日市製油所 175,000 →155,000昭和四日市・四日市製油所 210,000

コスモ・千葉製油所 240,000極東・千葉製油所 175,000出光・千葉製油所 220,000富士・袖ヶ浦製油所 192,000→143,000

出光・北海道製油所 140,000

出光・愛知製油所 160,000

出光・徳山製油所 120,000→ 0(2014年3月予定)

JX・室蘭製油所 180,000→0(2014年3月予定)

東亜・京浜製油所 185,000→70,000

東燃ゼネラル・川崎工場 335,000→268,000(2014年3月予定)

JX・麻里布製油所 127,000

JX・仙台製油所 145,000

コスモ・堺製油所80,000 →100,000東燃ゼネラル・堺工場156,000大阪国際・大阪製油所115,000

コスモ・坂出製油所 140,000 → 0太陽・四国事業所 120,000

南西・西原製油所 100,000

JX・大分製油所 160,000→136,000

東燃ゼネラル・和歌山工場170,000→132,000(2014年3月予定)

日本海石油・富山製油所 60,000→0

帝石トツピング・頸城製油所4,724→0

我が国における原油処理能力の削減動向(これまでと今後)

43

○製油所の閉鎖等により、我が国製油所の原油処理能力は、2008年4月初時点(28製油所・約489万B/D)に比して、来年2014年4月初(23製油所約393万B/D)には約2割削減される見通し。○国内需要減や国際競争の激化が見込まれる中、更なる原油処理能力の廃棄が必要。今後は、コンビナート内外の複数の製油所等で「資本や地理の壁を越えた統合型運営」を促進する過程で、製油所の原油処理装置の削減や高付加価値化投資等の「設備最適化」を進めることが必要。

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国内 電力 石油 ガス その他

上流

・火力発電(石油、ガス、石炭)・再生可能エネルギー

・油田開発 ・ガス田開発・鉱物資源開発・石炭開発

中流 ・電力卸売・石油精製・卸売

・石油化学・ガス卸売

下流 ・電力小売・SS経営(小売)

(・ガス小売)

・次世代自動車用SS(水素・電気等)

・エネファーム(定置式燃料電池) 等

石油精製・元売業の将来戦略の可能性

○石油精製元売業のコア事業は、燃料油・潤滑油・基礎化学品の生産・卸売・小売。

○国内外の石油需給バランス悪化に対応した将来戦略としては、①石油コンビナート内外で「資本の壁・地理の壁」を超えた設備最適化等を進め、マージン改善と市況に柔軟な生産体制の構築により、コア事業の競争力を強化。

○その上で、②上流権益開発や電力・ガス等のエネルギー事業の強化による「総合エネルギー産業化」、③海外での石油精製・石油化学、元売・販売、その他エネルギー事業の複合的展開等も考えうる。

○自社の経営資源を把握し、コア事業を起点としつつ新たな成長分野を開拓することが重要ではないか。

海外市場

国外③

石油精製元売のコア事業

44

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○アジア域内では、大規模・高効率な石油精製・石化設備が統合運営されるコンビナートの新設・増設が進む。

○日本のコンビナートは、①小規模で分散型の立地(「規模の経済」で不利)、②一つのコンビナート内に異なる資本の複数の製油所等が立地(設備の重複で非効率)しており、競争力に劣る状況。

○政府は、これまでも「コンビナート連携事業」により、同一コンビナート内の製油所・化学工場等を結ぶ配管投資等を支援し、留分融通による生産性向上等の「緩やかな連携」を促進してきた。

○今後は、①同一コンビナート内のみならず地理的に離れたコンビナート間で、②複数製油所等の統合型運営を目指す、高効率な石油精製・石油化学等設備への集約・増強や非効率設備の廃棄等を促進することが必要。

○この過程を通じ、石油コンビナートの設備最適化(過剰設備廃棄・高付加価値化)を進め、石油産業の供給構造改善を推進すべき。

○「同一コンビナート内」の連携が対象。

○製油所・化学工場等の間の留分融通による生産性向上等「緩やかな連携」を促進。

○事業所間を結ぶ配管設置や石化・用役等設備の増強・集約化等を支援。

○「同一コンビナート内」に加え、「地理的に離れたコンビナート間」連携も支援対象に。

○複数製油所等の「地理・資本の壁を越えた統合型運営」で設備最適化を促進。

○精製・石化・用役等の設備最適化(増強・集約化・廃棄)を支援。(設備廃棄を支援対象に)

これまで 今後<事業の具体的なイメージ>

「地理・資本の壁を超えた統合型運営」により、他事業所の高効率設備への機能集約化・稼働率向上

設備の廃棄

設備の共用化

コンビナート設備最適化による構造改善

A製油所 B製油所

①国内コンビナート設備最適化による石油産業の構造改善(国内高度化)

RING・コンビナート連携事業 石油産業構造改善事業

これまでの「コンビナート連携」と、今後の「設備最適化」

45

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②総合エネルギー産業化の例(石油+ガス+石炭+電力)

石油精製・卸売・小売石油化学

ガス卸売

石油・ガス等資源開発LNG火力発電

電力卸売 電力卸売

生産

流通

○例えば、石油精製・卸売・販売や石油化学をコアとしつつ、石油・天然ガスの上流権益開発を強化し、電力事業・ガス事業も展開する「総合エネルギー産業化」を進め、経営基盤を強化することが考えられる。

○既存の経営資源の強みを見定め、新たな付加価値を生み出すビジネスにつなげることが重要。

石油残渣発電

46

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③我が国石油精製元売の海外展開事例(海外製品輸出)③我が国石油精製元売の海外展開事例(海外製品輸出)

日本企業 韓国企業 事業概要

JX日鉱日石エネルギー

SKグローバルケミカル

2014年に蔚山(ウルサン)に100万トン/年のパラキシレン製造設備を建設

コスモ石油 ヒュンダイオイルバンク

2013年に大山(デサン)で80万トン/年のパラキシレン製造設備を増設・完成

昭和シェル太陽石油

GSカルテックス 2014年末までに麗水(ヨス)で100万トン/年のパラキシレン製造設備増設を検討中(覚書締結済み)

具体的なプロジェクト・計画概要

○国内燃料需要が減少する中、国内製油所で生まれるガソリン留分から基礎化学品(ミックスキシレン)を製造し、韓国に輸出して合弁工場で製造したパラキシレンを中国等へ輸出する動きが進んでいる。これらは国内のガソリン需給適正化と、成長分野への経営資源の振り向けにつながる投資。

○今後の市場動向を見極めつつ、海外合弁のみならず、国内の製油所・化学工場の連携等による基礎化学品(BTX等)投資や設備集約化を進め、収益源としての基礎化学品等の輸出競争力の強化が進められるべきではないか。

日韓のパラキシレン提携

韓国の日韓合弁プラント(パラキシレン製造)

日本の製油所

(ミックスキシレンを製造)

輸出

輸出

47

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③我が国石油精製元売の海外展開事例(海外直接投資)③我が国石油精製元売の海外展開事例(海外直接投資)

○人口規模と需要・精製能力バランス(供給過小)の大きいインドネシアやベトナムでは石油コンビナートの増設・新設ニーズがあり、成長ポテンシャルの大きいミャンマー等にも石油・石化事業の可能性はあるが、同時に東南アジア全体で供給能力の増強計画も進んでいる。市場環境を的確に見極めた、スピード感のある判断が必要になる。

○先行事例として、ベトナムにおいて、出光興産と三井化学が、ペトロベトナム、クウェート石油公社との連携で石油化学コンビナートの建設を始める(2017年に商業運転開始予定)。

○更なる海外事業展開の促進に向け、ミャンマー等の新興市場における製油所等の供給網構築への技術協力を進めるほか、各国で「中流」(精製・石化)のみならず、「下流」(元売・販売)を含めた事業展開を可能にすべく参入規制への働きかけも必要ではないか。

(出所)Pertamina

場所原油処理能力(kb/d) 出資候補企業 運転開始予定

Balongan 300 Pertamina、KPC、SK 2019年11月Tuban, Java Timur 300 Saudi Aramco 2020年4月Plaju, Sumsel 300 政府100%出資 2020年12月

(出所)出光興産、日本エネルギー経済研究所

Dung Quat製油所(操業中)PetroVietnam 14万B/D

Nghi Son製油所(計画)PetroVietnam、出光興産、三井化学、KPI :20万B/D

ベトナム インドネシア

48

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3.平時の対応(2)「石油販売業」の課題と取組み

49

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石油販売業の事業環境と課題

<事業環境>1. 石油製品需要の継続的な減少(毎年△1%~△2%の需要減)と経営基盤の脆弱化○少子高齢化や自動車の燃費向上等といった構造的な要因により、石油製品需要は減少。経営基盤の脆

弱化、後継者難などから全国のSS(サービスステーション)数は減少。消防法令の規制強化がSSの減少傾向に拍車をかけている。

2. 全国的な石油供給網の末端における綻びと地域における安定供給確保への懸念○全国的にSS数が減少する中、市町村内のSS数が3カ所以下の地域は257所。自動車のガソリンや農業機械の軽油などの給油や高齢者への冬場の灯油配達などに支障が生じる懸念のある「SS過疎地」の問題が顕在化。

3. 厳しい市場競争環境と公正な取引条件の確保への懸念○石油製品は差別化が容易ではなく、競争が価格に集中する傾向。このため、卸価格の格差はSSの競争基盤に大きな影響を及ぼすものと考えられる中、卸価格の価格差や決定方法の不透明性、競争上不利な取引条件が課されているおそれのあるSS事業者の存在等が指摘されている。

<課題>①経営基盤の安定化○地域の安定供給を担う意識と意欲のあるSSがその役割を果たすための支援を実施。②地域における石油サプライチェーンの維持・強化○SS過疎地対策は、自治体等と連携し、地域政策としてより踏み込んだ対応が必要。③公正・透明な競争環境の整備○正常な商慣習に照らして不当にSS事業者が不利益を被るなど、独占禁止法に違反する疑いのある卸価格の価格差が存在する場合には、公正取引委員会とも連携して対応する。

④SSの次世代化・消費者との直接的なつながりを有する「強み」を活かした新たな事業の開拓○地域におけるエネルギー供給拠点として、SS事業者が、たとえば水素供給などを含む「総合エネルギー販売業」として発展していくことや新たに事業を開拓していくことなどが期待される。

50

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0

50

100

150

200

H19.1 5 9

H20.1 5 9

H21.1 5 9

H22.1 5 9

H23.1 5 9

H24.1 5 9

H25.1 5 9

0

0.5

1

1.5

2

平成19年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度

出典ガソリン販売業者:石油製品販売業経営実態調査報告書(平成23年度調査版)小売業:年次別法人企業統計調査(財務省)

【SS数及び石油販売事業者数の推移】

(出典)・平成20年度~平成24年度実績値:「資源エネルギー統計」資源エネルギー庁・平成25年度~平成29年度想定値:「石油製品需要見通し(平成25年6月)」石油製品需要想定検討会

【ガソリン販売量の推移】

(単位:千KL)

販売量実績値:▲1.5%(平成20年度、平成24年度比較) 想定値:年平均▲1.7%、全体で▲8.4%見込み

(平成24年度~平成29年度比較)

【小売業・ガソリン販売業の営業利益率の推移】

(単位:%)

【ガソリン価格、原油価格推移】

(出典)・資源エネルギー庁調べ

約半分

(出典)・資源エネルギー庁調べ

9月2日:67.9円/㍑108$/バレル、100円/$

9月2日160.7円/㍑最高値:182円/㍑(平成20年8月)

最高値:90円/㍑133$/バレル、108円/$(平成20年7月)

レギュラーガソリン

ドバイ原油は実績は見通し

○全国のSS数は平成6年度末をピークにその後減少傾向で推移。(平成24年度末時点で36,349件)○ガソリン販売量は、少子高齢化や自動車の燃費向上等といった構造的な要因により、今後も減少傾向(年▲1.7%)が続く見込み。

○ガソリン販売量の減少、原油価格の高止まり等に伴い、SSの収益率が低下。

0

15,000

30,000

45,000

60,000

平成元年度末 平成13年度末

給油所数揮発油販売業者数

58,285 60,421

32,835 36,349

18,269

平成24年度末

50000

52000

54000

56000

58000

1.5 1.3 1.31.41.6

0.80.60.60.70.5

-は小売業-はガソリン販売業者

石油製品販売業を巡る現状

51

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○改正消防法令に基づき、平成25年2月1日より、主に40~50年を経たSS地下タンクの改修工事が義務化され、SS事業者にとって大きな負担となっている。

(改正消防法令)

平成22年6月28日に公布された、消防法に基づく省令により、地下タンクのうち地盤面下に直接埋設された腐食のおそれが(特に)高いものについては、危険物の流出防止措置等を講ずることとされている。

施行:平成23年2月1日(ただし、2年間(平成25年1月31日まで)の猶予期間あり。)

・設置年数50年以上、モルタルによる外面保護、設計板厚が8.0mm未満、等

腐食のおそれが特に高いもの

・FRP内面ライニング又は電気防食

① 危険物の漏れを

未然に防止する措置

・設置年数40年以上50年未満、アスファルトによる外面保護、設計板厚が4.5mm以上、等

腐食のおそれが高いもの

・①に掲げる措置又は精密油面計等による

常時監視

② 危険物の漏れを

早期に検知する措置

平均工事費(1SS当たり3本のタンクがある場合)

FRPライニング 電気防食 精密油面計200~300万円/本 300万円/本 80万円/本(700万円/SS) (300万円/SS) (200万円/SS)

月間粗利益額約475万円(※)のSSにとっては

大きな負担

※平成24年度石油製品販売経営実態調査より換算

消防法令における地下タンクの危険物流出事故対策

52

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○こうしたSS過疎地において、各地域の実情に応じた供給体制を構築するため、灯油の定期配送や、日用品店との複合拠点化等の実証事業を23~25年度で計9カ所実施。(25年度予算 1.1億円)

(実証事例)・長野県天龍村 地元の商工会と連携し、高齢者宅等へ灯油と日用品の共同配送を実施する

・広島県安芸高田市 通行量の多い道路沿いにSSを移転するとともに、日用品店を併設することにより利益の向上を図る

・高知県馬路村 SSの地下タンクを廃止し、簡易なポータブル計量器を導入するダウンサイジングにより経営の効率化を図る

○なお、過疎市町村においては、市町村の判断により、過疎対策事業債(過疎債)のソフト分(※)を活用し、SS事業者の運営補助等を行うことも一般的には可能。

※:地域医療や生活交通の確保、集落の維持及び活性化などの住民の安全・安心な暮らしの確保を図るため、 将来にわたり過疎地域の自立促進に資する、ハード以外の事業を広く対象としており、市町村ごとに総務省令により算定した額の範囲内で発行が可能

○全国的にSS数が減少する中で、市町村内のSS数が3カ所以下の地域は257所(平成25年3月末)。石油製品の安定供給に支障がでる懸念のある「SS過疎地」の問題が顕在化。○関係省庁や地方自治体と連携し、地域政策としてより踏み込んだ対応が必要。

■民間事業者やJAの撤退により、自治体や地域住民が地域のSSを守るために、主体的に取り組む事例が増加

高知県四万十市(旧西土佐村)地域住民が

主体的に経営

愛知県豊根村(旧富山村)

SSの閉鎖直後に村が施設を買い取り、運営を村営事業の1つとして観光業とともに民間団体に管理委託(平成17年)自治体が

主体的に経営、または事業者へ補助

宮城県七ケ宿町

閉鎖予定のSS施設を村が無償で譲り受け、地元の自動車整備事業者に無償貸付をして営業を継続(平成21年)SSが撤退を検討した際、村民の要望を受けた村がガソリン・灯油の仕入価格の10%を補助することで、SSが事業を継続(平成21年)

福島県檜枝岐村

SSが消防法令の規制強化を機に廃業することから、地元の観光業者等でつくる合同会社が事業を継承(平成24年)

群馬県みなかみ町

SSが撤退するにあたり、住民が県庁の指導を受けながら、住民出資の株式会社を設立して事業を継承(平成18年)

0 400km

市町村別100k㎡あたりSS数

100 50 8 4 2

0 400km

市町村別100k㎡あたりSS数

100 50 8 4 2

SSに他の公共インフラを併設し、ワンストップ化を進めているケースも存在・郵便局(新潟)

・郵便局+日用品店(北海道)

・薬局(北海道)

SS過疎地問題について

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卸価格の決定方法の不透明性・業転格差などについて

○国内石油需要の減少傾向、原油精製の供給能力過剰等を背景に、石油製品の需要を上回る生産余剰分がいわゆる「業転玉」として、系列SSに供給される「系列玉」よりも安い卸価格で市場に流通している。○公正取引員会「ガソリンの流通実態に関する調査報告書」(平成25年7月)は、こうした卸価格の状況等に対して以下のように指摘。・「系列特約店間における仕切価格を、形態別(販売子会社、商社系特約店及び一般特約店)にみると、商社系特約店に対する仕切価格が最も低く、次に販売子会社に対する仕切価格が低く、一般特約店に対する仕切価格が最も高かった」

・「元売が、系列特約店、特に一般特約店にとって相対的に高い仕切価格を設定し、その仕切価格の設定に当たり十分な情報の開示や交渉が行われていない場合がみられた。」

・「また、元売は、自社が精製したガソリンを商社に販売し、それが安価な業転玉としてPBSSに供給されている一方で、系列特約店に対しては業転玉の購入・販売を制限している。」

・「これらの行為は、一般的にみて、取引上優越した立場にある元売が、一般特約店に対し、一方的に、競争上不利な取引条件を課しているおそれのあるものであり、ガソリンの流通市場における公正な競争環境を整備するという観点からみて不適切であると考えられる。」

○上記のような指摘を踏まえ、独占禁止法に違反する疑いのある卸価格の価格差が存在する場合には、公正取引委員会とも連携して対応するとともに、地域の安定供給を担う意識と意欲のあるSS事業者がその役割を果たすため、それぞれのSS事業者が自己責任と契約意識に基づいた自由な選択を行えるような環境を整備することが必要。

(出典)ガソリンの流通実態に関する調査報告書(平成25年7月公正取引委員会)より作成

元売

系列ルート

業転ルート

輸入ガソリン

精製会社

【元売系列SS】(系列特約店・販売店)・元売商標を表示して営業・仕入先は、契約上、当該元売系列からに限定・エネルギー商社から零細事業者まで多様な事業者が運営

系列玉

【無印SS】・元売商標等を利用せず、自らの信用力のみで営業・仕入先に関する制約はない

【PBSS】・PB事業者(エネルギー商社等)の商標を表示して営業・仕入先は、契約上、当該PB事業者に限定

業転玉流通業者①(商社等大手業者)

・総合商社・エネルギー商社 等

業転玉流通業者②(PB事業者)

・エネルギー商社・全農 等

先物取引市場

流入

業転玉

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価格差

ガソリンの主な流通経路と業転格差

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○電気自動車(EV)をはじめ、次世代自動車の普及等により石油製品の国内需要は減少傾向。こうした外部の環境変化に対応し、燃料販売のみに依存しないビジネスへの転換を図るべく、平成23~25年度においては、充電ネットワークの構築・連携やEV点検サービス、OBD(自動車自己故障診断)情報の活用による集客効果の検証等の実証事業を実施。○また、石油販売業は、たとえば今後の燃料電池車の本格的な普及を見据えて水素の供給拠点としての役割を担う

など、「総合エネルギー販売業」として発展していくことや、地域におけるエネルギー供給拠点として車検・タイヤ販売といった車関連事業のみならず、消費者との直接的なつながりを有する「強み」を活かした新たな事業の開拓も期待される。

次世代SSについて

【OBD情報を活用したサービス】

エコ運転&安全運転支援

エコ運転ランキング実施などにより、エコ運転意欲の向上

JCN

【充電マップのサービス強化】・ルート周辺充電器検索表示・会員ログイン機能導入 等

自動車利用環境に応じた油外商品・サービスの紹介

点検・整備 洗車

充電の満空情報を基にした到達可能充電スタンドの紹介

誘導

OBDプラットフォーム

水素ステーションの整備

平成25年度次世代SS実証事業

レンタカーサービス

コンビニの併設

燃料販売以外への多角化

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3.平時の対応

(3)「LPガス販売業」の課題と取組み

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日本のLPガス産業の事業環境と課題

<事業環境>1. LPガス需要は微増(但し、家庭業務用は減少傾向(直近2年△2.71%~△4.1%の需要減)①LPガス世帯の減少 =都市部への転出等②エネルギー間競争の影響 =オール電化住宅の増加、都市ガス供給区域の拡張③都市ガス向けの増加 =都市ガス向け増熱用のLPガスの増加

2. 中東からの輸入依存度が高く、輸入価格がサウジCPにより決定されているため高止まり○LPガスは約8割を輸入しており、そのうち、カタールをはじめとする中東諸国が約8割。価格もサウジCPで決定される状況であるため、その上下動に国内価格が左右されている。

3.  米国からのLPガス調達によるシェール革命の影響○北米シェールガス由来の安価なLPガスの輸入は既に始まっており、その一部は国家備蓄基地にも搬入された。これらの動きの進展により、今後、中東依存度が緩和されるとともに、中東の価格と米国価格が今後収れんしていく可能性がある。

<課題>日本のLPガス販売事業者は①調達ソース多角化とLPガス供給構造改革が必要。○例えば、米国のシェールガス・オイル随伴LPガスの調達増などの多角化を図るとともに、充てん所の統合や集中監視システムの導入等の供給構造の改善が必要。

②新しい事業の創出が必要。○例えば、売電事業や都市ガス事業といった他のエネルギービジネスへの参入、アジア諸国等へのLPガスの安全機器の輸出などが考えられる。

③エネルギー利用の多様化に資する高効率LPガス機器の普及促進が必要。○需要家側での備蓄(軒下在庫)を活用したLPガスコジェネレーションシテムの普及促進を図る。57

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○LPガスは、全国総世帯の過半数(約2,500万世帯)の家庭用燃料、全国約21万台のタクシー燃料として利用さ

れるなど、様々な分野で使用されている国民生活に密着したエネルギー。

LPガスの国内需要の推移我が国の部門別LPガス総需要(平成24年度)

家庭業務用

(48.7%)

工業用

(17.2%)

化学原料用

(12.2%)

都市ガス用 (6.7%)↓

自動車用→

(6%)

電力用(9.1%)↓ ↓輸出(0.2%)

(出典)日本LPガス協会資料

平成24年度総需要は、昨年度と比較し、約13万トンの増加。引き続き、1,600万トン台で推移。

都市ガス用、電力用以外は対前年度比で減少。特に電力用は、原子力発電所の停止を受け、LPGによる火力発電も増加したため、大幅増となっている。

総需要合計 約1,696万トン21年度 22年度 23年度

国内需要 1,649(0.4) 1,681(2.0) 1,694(0.8)

家庭業務用

885(2.1) 862(▲2.7) 827(▲4.1)

(注)( )内は対前年度比。「国内需要」は総需要から輸出分を除いた値。

(単位:万トン、%)

我が国のLPガス需要の動向

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LPガスコジェネ等の普及促進について

○環境特性が高くクリーンなガス体エネルギーであるLPガスは、劣化が少なく可搬性に優れており、需要家側に在庫として備蓄することが可能。(そのため、災害初動時及び孤立した地域においてはいち早い対応が可能。)

○また、エネルギー利用多様化の視点も踏まえ、空調などの設備において使用するエネルギーを電力から他の燃料にシフトすることについても、節電・ピークカット対策として有効な手法。その手段として、LPガス機器等の普及促進を図ることが重要。

小型燃料電池

学校病院

オフィスビル マンション

バルク貯槽

コジェネ

公民館

戸建て住宅

小型燃料電池ボンベ

【参考】<家庭用>50kgボンベ1本×エネファーム1台=41日間※コンロなど併用の場合は、若干日数は減

<業務用>300kgバルク1基×GHP(20HP×2台)=5.4日間

1,000kgバルク1基×発電機(9.9kva×1機)=3日間

コジェネ

コジェネ

バルク貯槽

バルク貯槽

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発電機

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