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Feb 07, 2018

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エビデンスに基づく

助産ガイドライン

―分娩期 2012

一般社団法人 日本助産学会

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エビデンスに基づく助産ガイドライン—分娩期2012

本ガイドラインの基盤となる考え....................................................................................................................... 1

ガイドラインの作成方法....................................................................................................................................... 4

CQ 1 予定日超過における分娩誘発方針は?................................................................................................. 8

CQ 2 卵膜剥離は,分娩誘発の効果があるか?............................................................................................. 10

CQ 3 乳房/乳頭刺激は,分娩誘発の効果があるか?................................................................................. 12

CQ 4 指圧・鍼は,分娩誘発の効果があるか?............................................................................................. 13

CQ 5 分娩のため入院した際の胎児心拍の確認方法は何がよいか?......................................................... 15

CQ 6 分娩期の間歇的聴取法と持続的モニタリングでは,母子の予後に違いがあるか?..................... 17

CQ 7 硬膜外麻酔の効果と副作用は?............................................................................................................. 20

CQ 8 分娩第1期にお湯につかることは,産痛緩和効果があるか? .......................................................... 21

CQ 9 指圧・鍼は,産痛緩和効果があるか?................................................................................................. 22

CQ10 分娩進行中に飲食制限をする必要はあるか?..................................................................................... 26

CQ11 分娩第1期の歩行は,陣痛促進に効果があるか? .............................................................................. 27

CQ12 正常に経過している産婦に対して,分娩第1期に人工破膜をした場合の遷延分娩を 予防できるか?......................................................................................................................................... 28

CQ13 分娩第1期の浣腸は,陣痛促進効果があるか? .................................................................................. 29

CQ14 指圧・鍼は,陣痛促進効果があるか?................................................................................................. 30

CQ15 児娩出前の外陰部消毒は必要か?......................................................................................................... 33

CQ16 分娩第2期の体位は,どれが有効なのか? .......................................................................................... 34

CQ17 分娩第2期のクリステレル児圧出法は,児の娩出に有効か? .......................................................... 36

CQ18 分娩第2期の会陰マッサージは,会陰損傷を予防できるか? .......................................................... 37

CQ19 分娩第2期の会陰部の温罨法は,会陰損傷を予防できるか? .......................................................... 39

CQ20 分娩第2期の会陰保護は,会陰損傷を予防できるか? ...................................................................... 41

CQ21 ルチーンの会陰切開は,産婦の会陰損傷を予防し,新生児のアウトカムを改善するか?......... 43

CQ22 分娩進行中に回旋異常となった場合,四つん這いは回旋異常の改善に有効か?......................... 45

CQ23 新生児の口腔・鼻腔の吸引は必要か?................................................................................................. 47

CQ24 臍帯結紮の時期は,臍帯早期結紮と臍帯遅延結紮で,児の予後に違いはあるか?..................... 49

CQ25 出生直後に行う早期母子接触(skin-to-skin contact)は母子の予後に有効か? .............................. 51

CQ26 第1度,第2度会陰裂傷は,縫合が必要か?..................................................................................... 55

CQ27 分娩第3期の積極的管理と待機的管理に違いはあるか?................................................................. 56

CQ28 予防的な子宮収縮薬は,何を,いつ,どのように投与したらよいのか?..................................... 57

CQ29 児娩出後からの子宮のマッサージは,出血を予防することができるか?..................................... 59

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「エビデンスに基づく助産ガイドライン—分娩期2012」の刊行にあたって

堀 内 成 子(日本助産学会 前理事長)

 「エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期2012」を上梓する運びとなりました。助産師が独立して妊娠の診断から正常分娩の介助を行うためには,実施する助産ケアに対する最新のエビデンスを集積し,それに基づくケアの指針が必要です。日本助産学会は,2008年に「助産実践のためのガイドライン」作成を事業計画に盛り込み,ガイドライン作成委員会の立ち上げを学術振興担当理事の江藤宏美教授にお願いしました。すでに発行されている日本助産師会の「助産所業務ガイドライン」,日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会の「産婦人科診療ガイドライン」,ほか諸外国のガイドラインを参照しながら,取り上げられていない臨床の疑問(Clinical Question:以後CQと略す)の回答となるひとつの提案を行う助産実践ガイドラインを作成するよう依頼しました。 作成の過程は,EBM(Evidence-based Medicine)の手法に則って,①臨床上の疑問(CQ)の抽出,②文献検索,③文献の吟味,④提案や推奨文の作成の順に行われました。その間,日本助産学会の学術集会や学会ホームページにおいて,日本助産学会会員の皆様や臨床・教育現場の皆様からの意見を伺い,最終的には29項目のCQについてエビデンスのまとめと解説が「エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期2012」として完成しました。刻々と変化する世界中の最新研究を探索し吟味するという地道な作業に取り組んだガイドライン委員の皆様に心から感謝の意を表します。 ガイドラインの活用は,助産師が対象の欲しい情報をエビデンスに基づいて提供することを促進し,それはケアの選択肢を広げ,ケアの質を改善し,結果として妊産婦と新生児の健康状態を向上させます。ガイドラインに基づく助産実践により,正常経過をたどる妊産褥婦が安心してケアが受けられるように,また助産ケアへの理解と信頼が増すことを願います。 さらに,ガイドラインの活用は助産師自身へのメリットも大きく,助産ケアを刷新していく際の基盤になり,産科医をはじめとした多職種との協働を行う際の検討資料のひとつになります。また,複雑な問題やインシデントを懸念する状況に際しても,その原因分析を行う際の参考資料のひとつになると考えます。エビデンスに基づいたケアを実施し,その成果をモニタリングしていくことは,助産師としての能力を開発し,専門性や独自性を見つける好機となります。助産師は,つねに最新の研究成果に触れながら実践現場の疑問を解決する一方,十分にエビデンスが集積されていない研究課題を見出して研究者に届くようにすることが大切です。今後,ガイドラインは,常に更新していくことが求められます。このガイドラインを活用する皆様からの忌憚のないご意見を是非いただきたくお願いいたします。 このガイドラインが,活用され成長していくことを心から願います。

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推 薦 の 言 葉

「産婦人科診療ガイドライン̶産科編2011」作成委員会委員長 水 上 尚 典

 この度,日本助産学会から,助産師の目線に立ったガイドラインが出版された。喜ばしいかぎりである。是非,手に取って本ガイドラインの効用を実感して欲しい。 助産師は独立して(責任を持って)正常妊娠・分娩を管理することができる。正常と思われた分娩時にも母児生命を危うくするような事は起こる。したがって責任重大な職務である。信頼をよせて下さる妊婦さん方を裏切らないようにしなければならない。経験に基づいて「よかれと思っている処置・対応」でも,エビデンスは,その効用をしばしば否定する。例えば,分娩促進を目的に日常的に人工破膜を実施する助産師もいると思う。しかし,その効果については(実際に分娩時間短縮に寄与しているか),科学的には証明されていない。一方,人工破膜に関しては臍帯脱出や感染の危険も指摘されている。これらのことを理解するのに本ガイドラインは役立つ。 助産師は医師よりもより身近な存在として妊婦の傍らにいる。誤った信念は許されない。日常的に行っている業務の正当性について(本当に妊婦さんの福祉向上に寄与しているか)常に懐疑的であることが求められている。そのような謙虚さは,助産師としての能力を高めるのに役立つし,また本ガイドラインを手に取る動機となるはずである。いつも本ガイドラインと日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会共同監修の産科ガイドラインを身近に置くような助産師になって欲しい。妊婦とわれわれ医師はそのような聡明な助産師を求めている。

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助産師が待ち望んでいた「エビデンスに基づく助産ガイドライン—分娩期 2012」の発行

公益社団法人 日本助産師会会長 岡 本 喜代子

 この度,日本助産学会で,「エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期2012」を発行されました。 正常産に対して,母子の安全安心のためにという目的は同じですが,助産師と産科医とは具体的な産婦ケアや管理の仕方・考えかたは,異なることが多くあります。 お産は病気ではなく,それ故,助産師の行う分娩期のケアは生活を基盤にした産婦ケアが中心です。産科医の多くが考えている,「産婦は限りなく潜在的リスクを抱える危険な存在」と捉える医師の認識とお産は病気ではなく生理的現象であると考える助産師のそれとはおのずと異なります。 だからこそ,助産師は,温罨法や指圧,鍼灸,マッサージ,アロマ療法等々の補完代替療法や様々な日常的な生活面の食事や運動,分娩時の体位等が重要であると考えています。また,産婦に日常的に行われる人工破膜,クリステル,浣腸等々の処置や医療の根拠についても振り返る必要があります。 本ガイドラインは,日常的に実施している産婦のケアのエビデンスについて文献から明らかにし,助産師が,自信をもって助産業務に携わることを可能にするものです。 ぜひ,全ての助産師が必携し,日々の業務に臨んでいただきたいと願っています。その画期的な本著の発刊を皆様と共に喜び,その活用を推奨いたします。

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エビデンスに基づく助産ガイドライン—分娩期2012

ガイドライン委員会

委員長  江藤 宏美   長崎大学

委 員(五十音順)  浅井 宏美   聖路加看護大学大学院  飯田 眞理子  聖路加看護大学  片岡 弥恵子  聖路加看護大学  櫻井 綾香   市立大町総合病院  田所 由利子  元慶応義塾大学  堀内 成子   聖路加看護大学/聖路加産科クリニック  増澤 祐子   葛飾赤十字産院  八重 ゆかり  聖路加看護大学看護実践開発研究センター

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日本助産学会誌 J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

1J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 20121

本ガイドラインの基盤となる考え

本ガイドラインは、臨床の場での疑問を解決すべく、系統的に文献を収集、吟味し、ケアのエビデ

ンスを示している。女性が自らに対するケアの意思決定を行うには、医療者からのエビデンスに基づ

いた情報提供が不可欠である。そして助産ケアの基盤になるのが、女性を中心にしたケア: Women

Centered Care と家族中心のケア: Family Centered Care である。以下に、これらの考え方について述べ

る。

女性を中心にしたケア:Women Centered Care: WCC

女性を中心にしたケアは、1. 尊重、2. 安全、3. ホリスティック、4. パートナーシップの 4 つの特

徴を持っている。女性を中心にしたケアの第 1 の特徴は、女性の「尊重」である。これは女性の文化

的多様性や、女性の体験や価値、希望やニーズを尊重することを意味している。これには女性が受け

るケアを自ら選択できるように情報提供を行い、女性の意思決定を促し、その決定を尊重するという

ことも含まれている。さらに、女性の本来持っている力や能力に目を向けることも女性を尊重するこ

との意味の根底にある。第 2 の特徴は、女性の「安全」を守ることである。女性の安全を守る手段と

して、プライバシーの保持と不必要な医療介入は行わないということがある。産婦人科領域では、女

性のプライバシーの侵害につながる検査や治療が多い。女性の羞恥心に配慮し、女性が安心してケア

を受けられるよう、個の空間を保持する必要がある。また、必要最低限の医療介入で、心身への負担

が少ない治療やケアを受けられるようにすることも女性の安心感を保障するだろう。母子の安全を守

るために根拠がない過剰医療を行うことがあってはならない。第 3 の特徴は、女性を「ホリスティッ

ク(holistic)」にみることである。女性の身体面の一部やある部分のみをみるのではなく、全体論的な

存在として捉えることを意味している。女性のホリスティックな健康を達成するためには、女性の多

様性を認識し尊重した上で、女性一人ひとりをユニークな存在として捉え、個別性を重視したケア提

供が求められる。最後に第 4 の特徴は、女性と医療者の「パートナーシップ」である。パートナーシ

ップには、対等、信頼、配慮の特徴がある。女性と医療者は平等な関係性にあり、両者の協働によっ

て女性の多様なニーズに応えることができる。

女性を中心にしたケアは、女性の身体的・精神的・社会的な健康状態を高めることにつながる。さ

らに、女性のケアに対する高い満足感、自己コントロール感、自信の獲得、エンパワーメントがみら

れ、女性が自ら健康増進行動の方法を学ぶことにもつながる。また、女性を中心にしたケアは、ケア

提供者側の自律にも寄与し、より専門性の高いケアの提供を実現することも視野に入れている。

上記の特徴を持つ女性を中心にしたケアを提供するには、継続ケアを提供することが重要である。

継続ケアとは、女性が信頼する医療者から、妊娠・分娩・産褥期を通してケアが受けられるシステム

のことである。日々のケアを行う際に、より質の高い助産ケアを提供するために、女性を中心にした

ケアの概念は欠かせない。

【参考文献】

Horiuchi, S., Kataoka, Y., Eto, H., Oguro, M. & Mori, T. (2006). The applicability of women-centered care: Two

case studies of capacity-building for maternal health through international collaboration. Japan Journal of Nursing Science, 3, 143-150.

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2 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)2

Iida, M., Horiuchi, S. & Porter, S. (2011). The relationship between women-centred care and women’s birth experiences: A comparison between birth centres, clinics, and hospitals in Japan. Midwifery, doi:10.1016/j.midw. 2011.07.002

Iida, M. (2011). A comparison of midwife-led care versus obstetrician-led care in low-risk pregnancy: Maternal

and infant outcomes. St. Luke’s College of Nursing, Graduate School, Doctoral dissertation.

ICM 基本文書「助産師の国際倫理綱領 2008 年」(2009).日本看護協会 日本助産師会 日本助産学会訳.

http://www.nurse.or.jp/nursing/international/icm/definition/data/icm_ethics.pdf#search='ICM%20 助産師%20

倫理綱領%202008' [2012.9.30]

片岡弥恵子(2012).Women-centered care: 女性を中心にしたケア.山本あい子編.助産師基礎教育テキ

スト 2012 年版 第 1 巻 助産概論(pp. 55-61).東京:日本看護協会出版会. National Institute for Clinical Excellence (NICE) (2008). Antenatal care: Routine care for the healthy pregnant

woman. http://www.nice.org.uk/nicemedia/live/11947/40145/40145.pdf [2012.9.30]

家族中心のケア:Family Centered Care: FCC

1950~1970 年代、米国では夫立会い分娩の増加、ケアの受け手側の運動が高まり、看護学理論家の

Wiedenbach,E は著書『家族中心の母性看護:Family-centered maternity nursing』において FCC の重要性

を述べている。また、小児看護領域においても「両親は子どものケア提供・養育・保護の権利と責任

を持つこと」、つまり、子どもと家族両者をケアの対象とすることが重要視されるようになった。1970

年代後半~1980 年代には、Klaus と Kennel による母と子の絆の形成に関する初期の研究がなされ、周

産期医療においては親と子の絆や愛着形成を促進するケア、小児医療においては入院中の子どものケ

アへ両親が積極的に参画することなどが取り組まれるようになった。現在、「Family-Centered Care」と

いう言葉は様々なヘルスケア場面で使われており、その概念は、理念、原則、要素というかたちで定

義づけられている。

米国では 1992 年、非営利組織 Institute for Patient- and Family Centered Care (以下、IPFCC)が設立さ

れ、様々なヘルスケア領域で個人と家族の受けるケアが、より患者・家族中心のケアへと変革するよ

う、その理解と実践を促す様々な活動を行っている。IPFCC は患者・家族中心のケアの中核概念とし

て、以下の4つの概念を挙げている。

第 1に、尊厳と尊重(Dignity and Respect)である。 これは、ヘルスケア専門職が患者・家族の見解や

選択を傾聴し、尊重すること、患者・家族の持っている知識、価値観、信念、文化的背景をケア計画

に組み入れることである。第 2 に、情報の共有(Information Sharing)が重視される。これは、ヘルスケ

ア専門職はすべての偏りのない情報を確実で役立つ方法で患者・家族に伝え、共有すること。患者・

家族はケアや意思決定に効果的に参加するために、タイムリーにすべての的確な情報を受けることで

ある。次に、参加(Participation)であり、患者・家族が望むレベルでケアや意思決定に参加することを

奨励、支持されること。最後に、協働(Collaboration)は、患者・家族とヘルスケア専門職はケアを実

施する際、また、施設の方針、ヘルスケア施設の設計やヘルスケア専門職の教育に関しても、プログ

ラムの開発・実施・評価について協働することである。FCC の中核概念は、これまで受動的にケアを

受けていた家族の立場から、家族が主体的に役割を遂行できるよう家族と医療者が共に考え、実践で

きるようなヘルスケアシステムへ変革する重要性を示している。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

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出産はその女性にとってはもちろん、パートナーや生まれてくる子のきょうだい、祖父母などの家

族メンバーにとって重要なライフイベントである。本人とその家族の価値観、信念、文化的背景をケ

ア計画や意思決定に反映させ、家族が分娩に立ち会うことや入院中の新生児のケアに参加することは、

家族メンバー同士の絆を強め、親やきょうだいそれぞれの役割意識を高める意味で非常に重要である。

本ガイドラインでは、分娩期の助産ケアとして、出生直後の母子の早期接触(skin-to-skin コンタクト)

の有効性を示している。このケアは母子の愛着形成や家族の絆を強めるケアのひとつであり、助産師

はそれらを促進する役割を担っている。

【参考文献】

Asai, H.(2011).Predictors of nurses' family-centered care practices in the neonatal intensive care unit. Japan Journal of Nursing Science, 8(1),57-65.

Coyne, I. (2011).What does family-centred care mean to nurses and how do they think it could be enhanced in

practice. Journal of Advanced Nursing, 67(12), 2561-2573.

Gordin, P. (1999). Technology and family-centered perinatal care: Conflict or synergy? Journal of Obstetric, Gynecologic & Neonatal Nursing (JOGNN), 28(4), 401-408.

Institute for Patient- and Family-Centered Care. (2007). What are the core concepts of patient-and family-

centered care. http://www.ipfcc.org/faq.html [2012.8.30]

Petersen, M. (2004). Family-centered care: Do we practice what we preach? Journal of Obstetric, Gynecologic & Neonatal Nursing (JOGNN), 33(4), 421-427.

Wiedenbach,E.(1967). Family-centered maternity nursing(2nd ed., pp.16-23).New York:G.P. Putnam’s Sons.

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4 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)4

ガイドラインの作成方法

本ガイドラインは、正常経過をたどるローリスク妊産婦の分娩時ケアに携わる助産師を主たる対象

とし、その他、妊産婦のケアにかかわる医療者全体を対象として作成したものである。利用に際して

は個々の分娩状況や妊産婦の価値観、臨床場の可能性などを考慮し、あくまでも助産師、および妊産

婦のケアにかかわる医療者全体が使いこなすべきものである。本ガイドラインの利用に関しては、本

ガイドラインに示されたエビデンスを基に、各施設で医療者間が話し合い、適切な医療を提供するた

めのものである。

作成の経緯は、2008 年、日本助産学会が「助産実践のためのガイドライン」作成を決定し、日本

助産学会ガイドライン委員会を発足した。目的は、ローリスクを対象とする助産師の視点からみたガ

イドラインを作成することである。妊娠期、分娩期、産褥期/新生児期のうち、まず「分娩期」から開

始することとした。

1)クリニカル・クエスチョンの決定

本ガイドラインは、29 項目のクリニカル・クエスチョン(Clinical Question、以下 CQ)から成る。

CQ の選択に当たっては、以下のプロセスで行った。

2009 年 3 月、日本助産学会で自由集会を開催し、参加者に「EBM に基づいたガイドラインの作成」

とはどのようなものをさすかについて講演し、どのような CQ を作成したらいいか意見を募った。現

在の助産実践からケア(予防的・治療的介入)について多くの CQ が提案された。

上記のプロセスを経て、最終的に実践家からの報告を重視したこと、教科書にはケアについて書か

れているがエビデンスが示されていないもの、また、助産師が実践場面で行うものについて着目し、

CQ を選択した。上記、内容を検討し、優先順位をつけて、今回の項目とした。今後、CQ は必要に応

じて見直し、増減する予定である。

2)文献検索

(1)情報源

既存の研究成果を調べるために、The Cochrane Library、PubMed、医中誌 web を用いて検索を行っ

た。対象検索年は、それぞれのデータベースの収載開始年から 2008 年 10 月登録分までとした。検索

対象言語は、英語もしくは日本語である。

本冊子を作成するために、The Cochrane Library に掲載されたシステマティック・レビュのみ、2012

年 8 月まで最新の文献を更新した。

(2)検索の過程

キーワードの選定には、NICE: The National Institute for Health and Clinical Excellence の提供している

Guidance「Intrapartum Care」の本文で使われている言葉、検索キーワード等を参考に、それぞれの CQ

にあったキーワードを 2008 年 8 月に仮決定した。キーワードはフリーワードとそれぞれデータベース

のシソーラス用語を組み合わせた。その後、ここで決めたキーワードを使った仮検索を数回行い、検

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

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索結果を研究メンバーと見ながらキーワードを適宜変更した(*CQ ごとのキーワードは、日本助産

学会ホームページに掲載)。検索は CQ ごとに行った。検索対象とした論文の種類は、メタアナリシス、

診療ガイドライン、ランダム化比較試験及び、システマティック・レビュであった。しかし、日本語

の文献についてはこの論文種類で絞ると数が少なくなるため、このほかに準ランダム化比較試験と比

較研究を含めて検索を行った。上記のような論文の種類への限定方法は、それぞれデータベースの絞

り込み項目を利用して絞ると検索結果から脱落してしまう論文があるため、PubMed については、タ

イトルもしくはアブストラクト中に、「systematic review*」、「meta analysis」、「guideline*」、「controlled

trial」、「controlled clinical」、「random*」が含まれるものも追加した。医中誌では、タイトル中に「ガイ

ドライン」、「メタ」、「比較」、「ランダム」、「ランダマイズ」が含まれるものについても検索を行った。

The Cochrane Library の検索では、全文検索を行うと、ノイズが増えることから、フリーワードについ

てはタイトル、抄録、キーワード中に含まれるものに限定した。(*検索式および検索結果は、日本助

産学会ホームページに掲載)

また、エビデンスを集積したガイドラインについて、研究の質の高さや活用性から必ず参照するも

のとして、英国 National Institute for Health and Clinical Excellence(以下、NICE ガイドラインと示す)、

「産婦人科診療ガイドライン産科編 2008(現在、2011 に改訂され、最新バージョンを参照)」、「快適

な妊娠出産のためのガイドライン」をとりあげた。

(3)文献情報の管理

データベースの検索結果は、RefWorks を使って管理した。CQ ごと、さらにデータベースごとにフ

ォルダを作成し、そのなかに検索結果を保存した。保存の際にはカスタマイズ項目に CQ ごとに項目

を作成し、各文献に CQ 番号を付与した。さらに、RefWorks から Excel へデータを出力し、CQ ごと、

論文の種類ごとにデータが見られるようにした。

3)文献の批判的吟味

1 名の評価者が文献検索で得られた文献のタイトルとアブストラクトを読み、CQ に合致した内容

の予防的・治療的介入を行っているものを採択し、「本ガイドラインの範囲外の文献」「質的研究」を

除外した。質的研究を除外した理由は,質的研究の評価基準について,現在のところコンセンサスが

得られていないと判断したためである。

評価した 1 名評価者が判断に困難を生じた場合は、もう一人の評価者に相談し、話合い後に採否を

決めた。

文献は研究の質およびエビデンスレベルから、本ガイドラインへの採否を決定した。その結果、採

択された文献数は、52 件(重複文献は除く)であった。批判的吟味を行い、ガイドラインへの採用が

決定した文献は CQ ごとに、エビデンス・テーブルを作成した(*CQ ごとのエビデンス・テーブル

は、日本助産学会ホームページに掲載)。

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6 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)

6

4)ガイドライン本文の作成

採用した文献の結果を基盤に、本文を作成した。本文は、ガイドライン、文献から得られた結果よ

り「エビデンスと解説」「根拠」を作成した。「エビデンスと解説」は、研究で得られたエビデンスを

もとに、ケアの内容を推奨する内容をまとめたもので、「根拠」は集積した質の高い各研究のエビデン

スを提示したものである。推奨文を作成しなかったのは、対象となる集団に提供される対処法はそれ

ぞれの実践の場により違いがあり、本ガイドラインによる「エビデンスと解説」をもとに策定しても

らうことが望ましいと考えたためである。

5)初版完成

2011 年 3 月日本助産学会の交流集会で、ガイドライン案を提示し、コメント聴取した。参加者 60

名を4グループに分かれてもらい、個々のガイドラインの解説を行い、それぞれの CQ についてコメ

ントを聴取した。その後、コメントへの返答と修正したガイドライン案を日本助産学会のホームペー

ジに掲載し、パブリックコメントを聴取した。2012 年 12 月初版完成となった。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

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分娩誘発法

妊娠満37週から満42週未満(満259~293日)の間の分娩を正期産と定義され、妊娠満42週(満294日)

以後の分娩を過期産という(日本産科婦人科学会, 2008)。過期産は、周産期死亡率が高く、羊水過少症

や胎便吸引症候群、呼吸障害など短期の新生児合併症を生じるリスクも高い(ACOG Committee on Practice Bulletins-Obstetrics, 2004)。このような胎児への重大なリスクを減少させるため分娩誘発が行わ

れる。分娩誘発の方法として、子宮収縮薬 (オキシトシン、プロスタグランジンF2α、プロスタグラン

ジンE2錠等)を使用する方法、器械的な方法(吸湿性頸管拡張剤、メトロイリンテル等)、その他薬剤

および器械を用いない方法として、卵膜剥離、乳頭/乳房刺激や指圧・鍼等があげられる。 全国の総合周産期センター44 施設、地域周産期センター53 施設を含む 139 施設において、2010 年

度に出産した妊娠 22 週以降の 83,383 例を対象とした周産期統計 (日本産科婦人科学会周産期委員会, 2012)によると、正期産のうち約 31.1%が 40 週~42 週未満と予定日超過での分娩となっている。

東京、神奈川、千葉、埼玉にある病院 118 施設、診療所 66 施設、助産所 71 施設を含む医療施設 255施設を対象とし、2010 年に実施されたローリスク妊産婦への分娩期ケア調査(清水, 2011)によると、

過期産予防の器械・薬剤による分娩誘発は、病院の 95.8%、診療所 97.9%が実施しており、実施時期

は妊娠 41 週が最も多かった。分娩誘発のための卵膜剥離をほぼ全例に実施している施設は非常に少な

く、ケースにより実施されているのは病院 66.1%、診療所 61.5%、助産所 50.7%であり施設の種類に

よる差はなかった。分娩誘発目的の乳頭刺激は、実施していない施設が多かった。

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8 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)8

CQ1 予定日超過における分娩誘発方針は?

【エビデンスと解説】

合併症を伴わない妊婦においては、予定日超過における分娩誘発の陣痛誘発群と待機的分娩群を比

較した場合、41 週以降の場合の周産期死亡率は低下するが、帝王切開率等の分娩アウトカムに関する

有意差はなかった。

NICE ガイドラインは、主としてコクランレビュの結果から「41 週以降での陣痛誘発方針」により

周産期死亡率の低下がもたらされることが示されている。一方、合併症を伴わない妊婦においては、

陣痛誘発群と待機的分娩群を比較した場合、分娩のアウトカムに対して有意な差はなかったとの RCT

の結果から、合併症を伴わない妊婦に対しては自然分娩の機会が提供されることを推奨している。

合併症を伴わない妊婦には、薬剤や器械を用いない分娩の機会が提供されることが望ましいが、41 週

0 日~6 日の間は頸管熟化度を考慮して薬剤や器械を用いた陣痛誘発を検討し、42 週以降は陣痛誘発

方針をとることが求められる。薬剤や器械を用いた陣痛誘発を行う前に、卵膜剥離(CQ2)、乳房/乳

頭刺激(CQ3)の実施を検討できる。

NICE 陣痛誘発ガイドライン

主としてコクランレビュの結果をエビデンスとして採用し、「41 週以降での陣痛誘発方針」によ

り周産期死亡率の低下がもたらされるとしている。また、スウェーデンでの RCT 結果では、陣痛誘

発群と待機的分娩群を比較した場合、帝王切開率、器械分娩率、重度の会陰裂傷、500 ml 以上の出

血、羊水混濁、5 分後アプガースコアが 7 未満、NICU 入院、子宮内胎児死亡、新生児死亡について、

有意な差はなかったとしている。これらの結果をもとに、合併症を伴わない妊婦には、あらゆる自

然分娩の機会が提供されることが望ましいと結論づけている。

産婦人科診療ガイドライン

「社会的適応による正期産分娩誘発」の CQ 項目において「特にリスクのない妊婦においても真

摯な誘発の要請があれば、子宮頸管熟化を十分考慮した、インフォームドコンセント後の分娩誘発

は認められるとするのが妥当である」と記載されている。しかし「37~40 週妊婦に対しての誘発が

待機に優るとのエビデンスは存在しないので、37~40 週の分娩誘発には医学的に証明された正当性

はない。したがって、これらの誘発は利害得失に関してのインフォームドコンセント後に施行すべ

きであるということになる」とされている。

また「妊娠 41 週以降妊婦の取り扱い」の CQ 項目では、「妊娠 41 週台では頸管熟化度を考慮した

分娩誘発を行うか、陣痛発来待機する。妊娠 42 週 0 日以降では分娩誘発を考慮する」と推奨されて

いる。そして解説においては「メタアナリシスの結果から 41 週以降妊娠では頸管熟化不良例でも良

好例でも、誘発は待機に比べて児死亡率、児罹患率および帝王切開率の減少傾向が示されているが、

一貫した有意差までは出ていない」として、「妊娠 41 週台では頸管熟化度を考慮した分娩誘発を行

うか、陣痛発来待機する」との推奨になったとされている。42 週以降については、「頸管熟化良不

良にかかわらず 41 週以降の誘発は待機に比較して母児罹病率が低い可能性が高いこと、42 週(過

期妊娠)は異常妊娠と位置付けられていること、本邦では初期超音波実施率が高く、浅い週数の妊

婦を 42 週以降だと誤認する可能性がかなり低いこと、の 3 点」を考慮し、「妊娠 42 週 0 日以降では

分娩誘発を考慮する。」との推奨になったとされている。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

99

科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

記載なし。

上記以外のエビデンス

19 試験(n=7,984)をレビュしたコクラン SR を採用した。

「41 週以降での陣痛誘発方針」と「待機的分娩」を比較した場合、周産期死亡のリスクは、「41

週以降での陣痛誘発方針」のほうが低かった(先天異常による死亡も含めた場合の相対リスク

RR0.30 [95%CI: 0.09, 0.99]、先天異常による死亡も含めなかった場合は陣痛誘発群での死亡例 0、待

機的分娩群での死亡例 7)。また、胎便吸引症候群の割合についても「41 週以降での陣痛誘発方針」

のほうが低く、RR0.29 [95%CI: 0.12, 0.68]であった。しかし、帝王切開割合については、「41 週以

降での陣痛誘発方針」と「待機的分娩」との間で有意な違いは認められなかった(RR0.92 [95%CI: 0.76,

1.12])。

「42 週以降での陣痛誘発方針」と「待機的分娩」の比較においては、胎便吸引症候群の割合、帝

王切開割合ともに「42 週以降での陣痛誘発方針」のほうが低い傾向にあったが、統計学的に有意な

差ではなかった(それぞれ RR 0.66 [95%CI: 0.24, 1.81]、RR 0.97 [95%CI: 0.72, 1.31])。

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10 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)10

CQ2 卵膜剥離は、分娩誘発の効果があるか?

【エビデンスと解説】

40 週以降の妊婦に対し、薬剤や器械による陣痛誘発を行う前に、内診による卵膜剥離の実施は陣痛

誘発の方法として効果がある。

NICE ガイドラインより、子宮頚管未成熟の妊婦に対する卵膜剥離は、回数にかかわらず、41 週お

よび 42 週以降の妊娠を減らし、薬剤による陣痛誘発を減少させるというエビデンスがあった。卵膜剥

離を実施しても、帝王切開および母体と胎児への感染リスクについて差は認められなかった。卵膜剥

離した女性の方が、内診時の不快感が高く、出血や不規則な陣痛といったリスクがあった。1 回の卵

膜剥離でも十分であるというエビデンスがあるが、複数回の卵膜剥離の効果を示すエビデンスもあっ

た。1 回の卵膜剥離で陣痛が発来しない場合は、次回の健診時など 2 回以上行うことも考慮する。そ

の際、卵膜剥離の目的、方法、効果、リスク(痛みおよび出血)等について妊婦に十分説明し、同意

を得なくてはならない。NICE ガイドラインの結論として、卵膜剥離は過期妊娠を防ぐために重要で

あり、これについて妊婦健診で妊婦と話し合う機会を持つこと、妊婦はこれらの情報をベースに、卵

膜剥離を受けるか受けないかを選択をすることができるとされていた。

【根拠】

NICE 陣痛誘発ガイドライン

1 件の SR(22 件の RCT で 2797 名の女性が含まれる。ビショップスコアは未開大から 6cm 以下、

初産婦および経産婦)は、卵膜剥離実施と何もしない場合の比較(20 件の RCT)、卵膜剥離とプロ

スタグランティンの比較(3 件の RCT)またはオキシトシンとの比較(1 件の RCT)であった。2

件は、比較群が複数であった。

このレビュに含まれるすべての試験は、回数にかかわらず、卵膜剥離をすることで、41 週以降

(RR0.59 [95%CI:0.46,0.74])、42 週以降(RR0.28, [95%CI:0.15,0.50])の妊娠を減らす効果が認め

られた。薬剤による陣痛誘発を 1 人減らすために、8 人の妊婦に卵膜剥離が必要となる(NNT=8)。

卵膜剥離した場合としない場合を比べ、帝王切開および母体と胎児への感染リスクについて統計的

有意差は認められなかった。卵膜剥離した女性は、内診時の不快感が高く、出血や不規則な陣痛と

いったリスクが認められた [EL=1++]。

妊娠 38 週から 42 週で子宮頚管未成熟の妊婦に対し、卵膜剥離を行うと薬剤による陣痛誘発が統

計的に有意に減少する(RR0.51 [95%CI:0.37,0.71]; 3 件の RCT; 226 名の妊婦)。卵膜剥離の実施と

実施しない場合を比べ、帝王切開(RR0.98 [95%CI: 0.49, 1.95]; 3 件の RCT; 200 名の妊婦)、硬膜外

麻酔(RR0.70 [95%CI: 0.42, 1.18]; 1 件の RCT; 65 名の妊婦)、器械分娩(RR0.87 [95%CI:0.33, 2.24]; 2

件の RCT; 135 名の妊婦)、5 分後のアプガースコア 7 点未満(RR0.97 [95%CI: 0.06, 4.85]; 1 件の RCT;

65 名の妊婦)、NICU への転送(RR0.97 [95%CI: 0.15, 6.47]; 1 件の RCT; 65 名の妊婦)について差は

なかった。母体、周産期死亡はなかった。

以上のエビデンスを基盤に NICE の推奨は、以下のように記述されている。

薬剤による分娩誘発に先立って、女性は、卵膜剥離のための内診を提供されるべきである。

妊娠 40 週と 41 週の妊婦健診にて、初産婦は、卵膜剥離を提供されるべきである。

妊娠 41 週の妊婦健診にて、経産婦は、卵膜剥離を提供されるべきである。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

1111

子宮頚管のアセスメントするために内診するときは、卵膜剥離の機会を女性に提供すべきである。

自然に陣痛が発来しない場合は、複数回の卵膜剥離がよいかもしれない。

産婦人科診療ガイドライン

妊娠 41 週以降妊婦の取り扱いについて、以下のように推奨されている。しかし、分娩誘発法とし

て卵膜剥離については言及していない。

1.妊娠初期の胎児計測値などから妊娠週数が正しいことを再確認する。(A)

2.胎児 well-being を定期的にモニターする。(B)

3.妊娠 41 週 0 日~41 週 6 日では頚管熟化度を考慮した分娩誘発を行うか、陣痛発来待機する。

(B)

4.妊娠 42 週 0 日以降では分娩誘発を考慮する。(B) 科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

記載なし。

上記以外のエビデンス

コクラン SR にて卵膜剥離の有効性を検討した研究は、2 つにわけることができた。一つは、過期

妊娠を防ぐために妊娠 38~40 週に卵膜剥離を実施する方針を評価した研究で、もう一つは、陣痛誘

発の方法として卵膜剥離を評価した研究であった。妊娠 37 週から 40 週の妊婦を対象としたのは 13

試験、妊娠 40 週を超えた妊婦は 6 試験であった。22 試験(2797 名の女性)が含まれ、20 試験は卵

膜剥離実施群と未実施群を比較しており、3 試験は卵膜剥離とプロスタグランジンの比較、1 試験は

卵膜剥離とオキシトシンを比較していた。帝王切開になるリスクは同程度(RR0.90 [95%CI: 0.70,

1.15])であり、卵膜剥離による産婦および新生児の感染症のリスクに関するエビデンスはなかった。

正期産の産婦に卵膜剥離を行うことで 41 週以降の妊娠継続(RR0.59 [95%CI: 0.46, 0.74])や 42 週以

降の妊娠継続(RR0.28 [95%CI: 0.15, 0.50])を減少させる。1 人の薬剤による陣痛誘発を回避するた

めには、8 人の妊婦に卵膜剥離をする必要がある(NNT= 8)。卵膜剥離を行う際には、内診時の不

快感(出血、前駆陣痛)が伴いやすいという報告があった。プロスタグランジン投与と卵膜剥離を

比較した試験では、サンプルサイズに限界があり、利益に関するエビデンスが示されていない。オ

キシトシン投与と卵膜剥離を比較した試験では、サンプルサイズに限界があるが帝王切開になるリ

スクは同程度だった。妊娠 38 週から行うルチーンの卵膜剥離は、臨床上の効果はないようである。

陣痛誘発として卵膜剥離を行う際は、器械や薬剤による誘発を減らすことができるが、女性の不快

感やその他の悪影響も増えるため、両者を考慮し実施を考えなくてはならない。

Note:卵膜剥離の方法

卵膜剥離は、内診を行った時に子宮の下部から卵膜を指で剥離することである。子宮頸管が閉

じている場合は、子宮頸管を開くようにする、または指で伸ばす(マッサージする)。

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12 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)12

CQ3 乳房/乳頭刺激は、分娩誘発の効果があるか?

【エビデンスと解説】

乳房/乳頭の刺激は、ローリスクの妊婦に陣痛誘発の効果が認められた。

乳房/乳頭への刺激は、全てのローリスクの妊婦を対象として分析した結果、72 時間以内に出産に

至る女性の数を有意に増加させており、分娩後の多量出血をも減少させる効果が認められた。しかし、

ハイリスクの妊婦を対象とした 1 件の RCT では、周産期死亡は乳房/乳頭刺激群に 3 例、オキシトシ

ン使用群に 1 例報告された。また、コクラン SR において、サブグループ解析の結果、ハイリスク妊

婦で頸管が熟化していない場合には、72 時間以内に出産に至る女性の数を増加させるという効果は認

められなかった。

よって、ローリスクの妊婦を対象に、乳房/乳頭への刺激は陣痛誘発として有効であることが期待で

きる。しかし、ハイリスクの妊婦に対しては、陣痛誘発の効果もなく、周産期死亡例も報告されてい

ることから、用いるべきではないと考える。今後、安全性をはじめ、妊婦の満足度や不快感を考慮し

たさらなるデータの蓄積が必要である。

【根拠】

NICE 陣痛誘発ガイドライン

6 試験を検討したコクラン SR1 件が採用されていた。乳房/乳頭刺激は 72 時間以内に分娩に至る

妊婦を増やし、産後の多量出血の割合を減少させるという点で効果が検証された。帝王切開率は、

乳房/乳頭刺激群とオキシトシン静脈注射群の間で有意差はなかった。1 件の小規模の RCT では、

ハイリスクの産婦を対象として乳頭刺激群に 3 例、オキシトシン使用群に 1 例の周産期死亡が報告

された。しかし研究の質にばらつきがあるため、陣痛誘発の方法として、乳頭刺激の効果、時期、

方法、頻度、安全性、産婦の満足感を評価するために、さらなる研究が必要であるとしている。

産婦人科診療ガイドライン

記載なし。

科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

記載なし。

上記以外のエビデンス

6 試験(n=719)を検討したコクラン SR(Kavanagh et al., 2005)を採用した。乳房/乳頭への刺激

の有効性について、何もしない群と比較した研究(4 件)を統合した結果、72 時間以内に出産に至

った妊婦を有意に増やしていた(6.4% vs. 37.3%, RR 5.79 [95%CI: 3.41, 9.81])。産後における多量の

出血については、乳房/乳頭への刺激を行った方が有意に減らしていた(0.7% vs. 6%, RR 0.16

[95%CI: 0.03, 0.87])。ハイリスクの妊婦を対象とした研究では乳頭刺激群に 3 例、オキシトシン使

用群に 1 例の周産期死亡が報告された。

Note:

乳房/乳頭への刺激介入とは、<3 日間にわたり 1 日 1 時間程度左右の乳頭 15 分毎に交互に乳房

への刺激>、<1 日 3 時間程度の刺激>、<Electric breast pump(電動式の搾乳器)の使用(左右

の乳頭に 15 分間ずつ交互に 250 Hg の陰圧をかける)>などを行うことをさす。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

1313

CQ4 指圧・鍼は、分娩誘発の効果があるか?

【エビデンスと解説】

指圧による分娩誘発効果を検証した研究はなかった。鍼療法による分娩誘発の有効性は認められな

かった。

指圧や鍼療法による陣痛誘発効果・安全性に関して根拠は十分ではなく、陣痛誘発方法として指圧・

鍼療法を積極的に勧めることはできない。陣痛誘発方法としての鍼療法の効果、安全性、妊産婦の満

足度を評価するための研究が必要である。

【根拠】

NICE 陣痛誘発ガイドライン

SR1 件、RCT1 件が採用された。

SR(Smith et al., 2004)は、1 件の RCT(n=56)を含み、ビショップスコア 5 点未満の正期産の初

経産を対象としていた。鍼療法の効果を評価したが、陣痛誘発方法としては意味がある結果は得ら

れなかった。それは方法論の限界および脱落率によるためであった。

RCT(Harper et al., 2006)は、正期産で合併症のない初産婦を通常のケアのみ群(n=26)と通常の

ケアに 3 人の外来患者を加えて鍼療法を行った群(n=30)を比較した。対象者のビショップスコア

の平均は 4 点であった。どちらの群も医療ケア(卵膜剥離、誘発の時期、子宮頸管熟化のためのハ

ーブ療法)は行われている。両群で、自然分娩(70% vs. 50%、OR 2.33 [95%CI: 0.78, 6.98])、帝王切

開率(17% vs. 39%、OR 3.13 [95%CI: 0.99, 10.8])に有意差はなかった。

NICE では、効果がある、または害があることを証明する十分な根拠はないとし、陣痛誘発の方

法としての鍼療法は提供することを勧めないとしている(EL=1++)。

産婦人科診療ガイドライン

記載なし。

科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

記載なし。

上記以外のエビデンス

NICE で検討された SR(Smith et al., 2004)と RCT(Harper et al., 2006)に加えて、2008 年の RCT

(Smith et al., 2008)が該当した。

Smith ら(2008)は、対象者を予定日より 10 日以上経過している、単胎・頭位の 16 歳以上の妊

婦 346 人とし、三陰交を含む経穴に鍼を行う介入群(n=181)と、経穴・経絡以外に鍼を行う(偽

鍼)対照群 (n=183)の比較を行った。病院での通常の陣痛誘発を行う前に 2-3 日前に 2 日ほど介

入を行い、1 回の介入では鍼を打つ時間は 30-40 分程度であった。鍼療法のみで自然に陣痛発来し

たのは、介入群で51名(28.2%)、対照群で57名(31.1%)であり、有意な差はなかった(Ajusted P=0.83)。

Note:研究の介入方法 Smith et al.(2008 の RCT)…3 人の鍼灸師が研究中に鍼療法を行った。45 分のセッションを 2日以上、陣痛誘発 2~3 日前に行う。 介入:LI4(合谷)・SP6(三陰交)・UB31・UB32・ST36(足三里)・Liv3、KI7(復溜)・BL20(脾兪)・BL21(胃兪)に鍼を打つ。 <参考>経穴の名称:http://jsam.jp/authorization/pastdata/who_point.html [2011.05.03]

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14 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)14

胎児のモニタリング方法

胎児の心拍数により胎児の状態を評価するために、胎児のモニタリングが行われる。胎児心音聴取

方法として、分娩監視装置による持続的モニタリングと、ドップラーやトラウベによる間歇的聴取方

法がある。周産期統計 (日本産婦人科学会周産期委員会, 2012)によると、有効回答数 80,137件中 19,503件(24.3%)で、分娩時の CTG 異常が認められた。異常の種類は、早発一過性徐脈が 2,769 件、軽度

変動一過性徐脈が 8,243 件、高度変動一過性徐脈が 5,402 件、遅発一過性徐脈が 2,009 件、遷延性徐脈

が 1,824 件であった。 ローリスク妊産婦への分娩期ケア調査(清水, 2011)によると、入院時の分娩監視装置のルチーンの

使用は、病院 100%、診療所 95.5%、助産所 38.0%であった。分娩中の胎児心音聴取方法として、間

歇的聴取を行っている施設は 84.9%であった。間歇的聴取の場合、ドップラー・トラウベによる方法

は、病院 19.5%、診療所 15.6%、助産所 78.8%で実施されていた。間歇的聴取法から持続モニタリン

グに切り替えるケースは、「児心音異常」が最も多く、続いて「分娩第 2 期から」、「陣痛促進薬の開始」

「羊水混濁」の順であった。分娩監視装置の連続的使用は、病院 13.6%、診療所 31.3%であり、助産

所は 0%であった。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

1515

CQ5 分娩のため入院した際の胎児心拍の確認方法は何がよいか?

【エビデンスと解説】

入院時の CTG の装着は、間欠的な胎児心音聴取と比較して、分娩時の介入(器械分娩、帝王切開、

硬膜外麻酔、継続した CTG の装着、胎児採血の実施)が多いことが報告されている一方で、児のアウ

トカムに差はないと報告している研究があり、CTG 装着の方が、間欠的な胎児心音聴取よりも優れて

いるというエビデンスはない。

分娩のため入院した際の胎児心拍の確認方法には、CTG 装着の方が、間欠的な胎児心音聴取よりも

優れているというエビデンスはない。しかし、産婦人科診療ガイドライン、科学的根拠に基づく快適

な妊娠・出産のためのガイドラインでは、入院時の胎児の健康状態と分娩開始後のリスクを評価する

ことが望ましいとしている。

最近は、助産所から病院へ搬送した際に、搬送先で CTG モニターの記録提出が求められている。助

産所入院時点の胎児の健康状態を示すためにも、入院時には CTG の装着が奨められる。

【根拠】

NICE ガイドライン

3 件の RCT を分析した SR(Blix, 2005)が採用された。入院時に約 20 分間の CTG を装着した群

と間欠的な胎児心音の聴診のみを行った群とを比較した結果、前者は硬膜外麻酔(RR 1.2 [95%CI:

1.1, 1.4])、継続した CTG の装着(RR 1.3 [95%CI: 1.2, 1.5])、胎児採血の実施(RR 1.3 [95%CI: 1.1, 1.5])

が高かった。また、ボーダーラインの根拠としては、継続した EFM を受けた女性は、間欠的な胎

児心音の聴診と比較して、器械分娩(RR 1.1 [95%CI: 1.0, 1.3])、帝王切開(RR 1.2 [95%CI: 1.0, 1.4])

を受けるという傾向があった。一方で、分娩促進(RR 1.1 [95%CI: 0.9, 1.2])、周産期死亡率(RR 1.1

[95%CI: 0.2, 7.1])、その他の新生児の罹病率に差はなかった。これらから NICE のガイドラインでは、

どんな出産場所であれ、産科的にローリスクの女性に対する入院時 CTG の使用は推奨されないとし

ている。

産婦人科診療ガイドライン

CQ410「分娩監視の方法は」において、分娩第 1 期(入院時を含め)には分娩監視装置を一定時

間(20 分以上)使用し、正常胎児心拍数パターン(心拍数基線と基線細変動が正常であり、一過性

頻脈があり、かつ一過性徐脈がない)であることを確認することとしている。

科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

RQ11「CTG(胎児の健康状態を診る)」において、RCT7 件、SR1 件、その他 1 件の研究が採用

された。検討の結果、入院時は胎児心音の間歇的聴診で良いと言えるだろうとしながらも、スクリ

ーニングとして入院時に CTG の装着を行い、入院時の胎児の健康状態と分娩開始後のリスクを評価

することが望ましいとしている。

上記以外のエビデンス

3 件の RCT を吟味した SR(Gourounti, 2007)1 件を採用した(n=11,259)。それによると、産科的

にローリスクの女性が分娩入院時に CTG を装着すると、間歇的な胎児心音の聴取を受けた女性よ

りも、器械分娩(RR 1.1 [95%CI: 1.02, 1.18])と帝王切開分娩(RR 1.2 [95%CI: 1.00, 1.41])が高い傾

向があった。一方、入院時の CTG が 5 分後のアプガースコア 7 未満に関しては、有意差はなかっ

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16 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)16

た(RR 1.35 [95%CI: 0.85, 2.13])。これらから Gourounti らは、産科的にローリスクの女性に対して、

新生児に関するアウトカムが明確になるまでは、入院時にルチーンで CTG を用いるべきではない

としている。

4 本の RCT(n=13,296)をレビュした Devane ら(2012)のコクラン SR を採用した。それによると、

合併症のリスクが低い女性に対して、入院時に CTG を装着した場合は、間欠的な胎児心音の聴診

と比較して、分娩中の持続的な CTG の装着(RR 1.30[95%CI: 1.14, 1.48])と、胎児血サンプリング

(RR 1.28 [95%CI: 1.13, 1.45])の割合が有意に多くなる一方で、帝王切開、器械的な経腟分娩、胎

児および新生児死亡などに両群に有意差はなかった。これらから、Devane らは分娩時にリスクの低

い女性に対する入院時の CTG は用いられるべきではないとしている。さらに、入院時の CTG は利

益をもたらすというエビデンスがないにも関わらず、帝王切開の割合を増加させる可能性があると

いうことを女性に情報提供すべきであるとしている。

Note:

CTG において、心拍数基線(FHR baseline)と基線細変動(baseline variability)が正常であり、

一過性頻脈があり、かつ一過性徐脈がないとき、胎児は健康であると判断する。

詳細は、産婦人科診療ガイドライン CQ411「分娩監視装置モニターの読み方・対応は?」を参照。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

1717

CQ6 分娩期の間歇的聴取法と持続的モニタリングでは、母子の予後に違いがあるか?

【エビデンスと解説】

ドップラーによる間歇的聴取に比べ持続的モニタリングは、新生児痙攣のリスクを低下させるが、

脳性麻痺発症を有意に低下させるわけではなく、帝王切開や器械分娩(不必要な介入の場合も含む)

の発現割合を高くするというエビデンスがある。

過去の RCT およびそれらの SR、また観察研究結果からは、分娩第 1 期には、ドップラーによる間

歇的聴診(活動期までは 30 分ごと、活動期以降は 5~15 分ごと、1 回あたり 1 分以上)でも可と考え

られるが、分娩第 2 期およびハイリスクに移行する可能性がある場合(羊水混濁、胎児心拍異常、母

体発熱、児娩出前の出血、分娩促進剤使用時)は持続的モニタリングが必要である。

【根拠】

NICE ガイドライン

持続的モニタリングにより、新生児痙攣のリスクは低下するが、脳性麻痺発症には影響しない、

また帝王切開率は上昇するという、高いレベルのエビデンスがあるとし、以下の方法を推奨してい

る。

・低リスク妊婦での陣痛発来後は、あらゆる産科施設において、胎児心拍の間歇的聴診が奨められ

る。

・入院後、最初に聴診した後、診察ごとに聴診を行い、分娩開始を確認する。

・分娩開始確認後は、陣痛発作のたびに間歇的な聴診を行うことが望ましい。

・間歇的聴診にはドップラーまたはトラウベを用いることができる。

・間歇的聴診から持続的分娩監視装置装着に移行する場合の基準としては、以下を参考にすること

が望ましい。

-顕著な(significant)羊水混濁がある場合、または軽度な(light)羊水混濁があるが分娩進行状

況等から持続的モニタリングが必要と判断される場合

-間歇的聴診で胎児心拍異常が認められた場合(110 bpm 未満; 160 bpm を超える; 子宮収縮後の

心拍数低下)

-母体発熱(38℃、または 37.5℃が 2 時間以上持続)

-分娩中の鮮血

-オキシトシン使用時

-母親が持続的モニタリングを希望する場合

産婦人科診療ガイドライン

「分娩監視の方法は?」の CQ において、「以下の場合は原則、連続的モニタリングを行う。」と

し、1) 子宮収縮薬使用中、2) 分娩第 2 期、母体発熱中、メトロイリンテル挿入中、無痛分娩中、

3) CQ411「分娩監視装置モニターの読み方・対応は?」の表において“監視の強化”以上が必要と判

断された場合、4) ハイリスク妊娠、5) その他、ハイリスク妊娠と考えられる症例(コントロール

不良の母体合併症等)が挙げられている。

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18 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)18

科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

ローリスク産婦の分娩進行中は、持続的モニタリングまたはドップラーによる間歇的な聴診を、

分娩第1期は陣痛が強くなったときまたは活動期、および分娩第2期に実施することが奨められる。

分娩進行中に、厳密な意味で連続 CTG(持続的モニタリング)をしている病院は少なく、ルチー

ンで持続的モニタリングを行う群と、そうでない群(持続的モニタリングを行わない群、間歇的に

聴診を行う群、間歇的に CTG を行う群のいずれか)とを比較した論文は少ない。他のメタアナリシ

スでは、持続的モニタリング群とそうでない群の比較では、持続的モニタリング群の方が新生児痙

攣の相対危険度が有意に少なく、持続的モニタリング群では帝王切開と器械分娩が有意に増加して

いた。ローリスク産婦においては、分娩期に 5~15 分毎の間歇的な胎児心音聴取と持続的モニタリ

ングの結果と有意差が認められず、ローリスク例を含む全例の持続的モニタリングの必要性は認め

られない、また、脳性麻痺のリスクを示すモニター所見で脳性麻痺があったのは持続的モニタリン

グ群の僅か 0.2%で、分娩連続モニタリングによって脳性麻痺の偽陽性率が高い(99.8%)。ローリス

ク産婦を対象とした分娩進行中の RCT では、助産師または看護師が産婦を 1 対 1 で対応する条件の

下で、分娩期に 5~15 分毎にドップラー胎児心音計による間歇的心音聴診した場合、周産期死亡率、

児の 1 分後アプガースコア、臍帯血 pH、等に CTG モニターの結果と変わらない。

上記以外のエビデンス

12 試験(n>3,7000)をレビュしたコクラン SR では、「CTG を用いた持続的分娩監視」と「間歇

的聴取(分娩監視なし、トラウベまたはドップラーで間歇的に聴取、CTG で間歇的に聴取、のいず

れか)」を比較したところ、持続的監視により、新生児痙攣は有意に低下(RR0.50[95%CI: 0.31, 0.80])

したが、周産期死亡は低下傾向(RR0.85[95%CI: 0.59, 1.23])を示したものの有意な低下ではなかっ

た。持続的モニタリングにより発生リスクが有意に増加したのは、帝王切開(RR1.66[95%CI: 1.30,

2.13])、器械分娩(RR1.16[95%CI: 1.01, 1.32])、自然分娩ができない(RR.27[95%CI: 1.19, 1.36])、全

身麻酔を含む麻酔を要した割合(RR1.09 [95%CI: 1.01, 1.18])であった。

Graham らによる 2006 年の SR では、ヒストリカル・コントロールを用いた比較研究結果から、

115,096 分娩のデータを分析し、分娩時死亡割合は EFM(Electronic Fetal Monitoring)を用いた場合

1.5/1,000、間歇的聴取の場合 2.5/1,000、新生児死亡割合は EFM を用いた場合 8.1/1,000、間歇的聴取

の場合 14.7/1,000 であったと報告している。ただしヒストリカル・コントロールを用いたこの研究

は 1979 年に行われたものである。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

1919

産痛緩和法 産痛とは、分娩時の子宮収縮、軟産道開大、骨盤壁や骨盤底の圧迫、子宮下部や会陰の伸展などに

よって生じる下腹部痛や腰痛などの疼痛の総称である(日本産科婦人科学会, 2008)。産痛の緩和は、

分娩期のケアとして非常に重要である。産痛緩和の方法として、硬膜外麻酔の他に、体位変換、マッ

サージ、指圧・鍼、呼吸法、温罨法、入浴等、様々な方法が存在する。硬膜外麻酔とは、硬膜外腔に

薬液を注入し脊髄神経根をブロックすることで産痛を緩和する方法である。マッサージや指圧・鍼、

温罨法は、Melzack と Wall の唱えるゲートコントロール説を根拠に行われている産痛緩和法と考えら

れる。体位変換や呼吸法、温罨法、お湯に浸かることは、副交感神経を刺激しリラックスし血行を促

進することで筋緊張がとれることで産痛緩和につながるというリード理論に基づいている。 ローリスク妊産婦への分娩期ケア調査(清水, 2011)によると、産痛緩和法として最も多くの施設で

採択されていたのは、体位変換(94.5%)であり、続いてマッサージ(87.7%)、温罨法(73.9%)、歩

行(60.9%)、指圧(58.1%)、アロマセラピー(50.2%)、入浴(45.1%)であった。 硬膜外麻酔については、ほぼ全例に行っていると回答した施設は 1 か所の病院のみで、ケースによ

り実施している施設は、病院では 31.6%、診療所 31.3%であった。入浴をケースにより実施している

施設は、病院 47.5%、診療所 21.2%、助産所 91.3%であり、施設の種類によって差があった。産婦が自

由に動けるというケア方針をとっていたのは、病院 83.8%、診療所 63.6%、助産所 98.6%であった。

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20 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)20

CQ7 硬膜外麻酔の効果と副作用は?

【エビデンスと解説】

硬膜外麻酔による産痛緩和効果はほぼ確実であり、分娩第 1 期時間が短縮するという利益が期待さ

れる反面、器械分娩が増加する可能性があるとのエビデンスが得られている。

硬膜外麻酔分娩を希望する妊婦に対しては、産痛緩和効果とともに、硬膜外麻酔による器械分娩の

増加等に関する情報提供を十分に行ったうえで、かつリスクに十分対応できる施設で行う必要がある。

【根拠】

NICE ガイドライン

メキシコにおける 1 件の RCT(n=129)の結果から、硬膜外麻酔あり群のほうがなし群よりも、

分娩第1期の時間が有意に短かったが、分娩第2期の時間では有意な差は認められないとしている。

なお、痛みの軽減に関しては、非常に痛かったと答えた妊婦の割合が、硬膜外麻酔あり群 9%、な

し群 100%であった。

産婦人科診療ガイドライン

記載なし。

科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

産婦は分娩中の産痛が緩和されるようにケアを受けることができる。医療従事者は、出産施設に

おいて産痛緩和法にどのようなものがあり、どれができるかについて、妊娠中から情報を提供され、

状況が許す限り、産婦が選択できるようにすべきである。医療従事者は、様々な産痛緩和法を熟知

して、それを実施する場合は安全面に配慮して観察を行う必要がある。さらに、必要に応じて家族

に産痛緩和法を教育し、家族も主体的分娩に臨めるように援助する。

硬膜外麻酔は実施された産婦の 7 割以上の者が鎮痛効果を認め、満足度も高い。しかし、分娩第

2 期の胎位の異常、微弱陣痛、吸引、鉗子分娩が多くなる可能性がある。麻酔分娩にかかるコスト

は通常の分娩と比べて高く、施設により幅がある。

上記以外のエビデンス

21 試験(n=6,664)をレビュしたコクラン SR を採用した。産痛緩和を希望する妊婦に対する「硬

膜外麻酔」と「局所麻酔以外の産痛緩和方法または産痛緩和なし」を比較したところ、器械分娩割

合が有意に増加する(RR1.38 [95%CI: 1.24, 1.53])、帝王切開割合は有意ではないがやや増加傾向

(RR1.07 [95%CI: 0.93, 1.23])、7 分時点での低アプガースコア児の割合は減少傾向(RR0.70 [95%CI:

0.44, 1.10])、という結果が得られた。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

2121

CQ8 分娩第 1 期にお湯につかることは、産痛緩和効果があるか?

【エビデンスと解説】

分娩中にお湯につかることによって、分娩第 1 期の所要時間が短くなっており、分娩第 1 期の産痛

緩和効果も認められた。

最新のコクラン SR より、分娩第 1 期にお湯につかった場合、分娩第 1 期の所要時間が短くなって

おり、硬膜外・脊椎麻酔の使用頻度が減少し、産痛緩和効果が認められた。また、お湯につかるのは、

分娩第 1 期の早い時期よりも、子宮口の開大 5cm 以上が、より産痛緩和効果は大きかったといえる。

よって、上記のエビデンスに基づいて、臨床で適用するに当たり選択肢の一つとなりうると考える。

なお、本ガイドラインでは分娩第 1 期にお湯につかることの効果について検討したが、今後お湯に

つかること以外の足浴などの産痛緩和効果や、分娩時の水中出産の効果などとあわせて母子の安全性

に関する研究を重ねていく必要がある。

【根拠】

NICE ガイドライン

SR1 件(8 件の試験を含む)、RCT1 件、横断研究 1 件がレビュの中に含まれた。分娩進行中の母

児の合併症や介入における差異の根拠はなかった。横断研究では、水中出産で生まれた児の新生児

室へ入院率が有意に高いという報告があった。分娩第 2 期の水中出産利用については、新生児のア

ウトカムは根拠が不十分であるとし、水中出産について、よいか悪いかを示す根拠は不十分である

ことを、女性たちは知らされるべきであると推奨している。

産婦人科診療ガイドライン

記載なし。

科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

SR1 件が採用された。分娩第 1 期の入浴(お湯につかること)の効果として、硬膜外麻酔などの

使用、痛み、次回の妊娠・分娩を望まない割合の減少が認められた。分娩第 2 期の入浴の効果とし

て、分娩の満足感が認められた。分娩所要時間、会陰切開、鉗子・吸引分娩、帝王切開、第 3・4

度会陰裂傷、アプガースコア 5 分値、新生児集中治療室入院、新生児感染率に有意な差はなかった。

入浴の時期(前半群は後半群と比べて)の効果は、硬膜外麻酔、オキシトシンの使用は後半に入浴

した方に効果的であった。以上の結果から、入浴による産痛緩和の効果は、推奨の強さは B として

いる。

上記以外のエビデンス

12 試験を検討したコクラン SR(Cluett et al., 2012)を採用した。分娩第 1 期にお湯につかること

については、お湯につかった方が分娩第 1 期の所要時間が短く、硬膜外・脊椎麻酔の使用も少なか

った。また、疼痛も有意に少なかった。分娩様式、帝王切開、人工破膜、オキシトシンの使用、会

陰切開、第 2 度会陰裂傷、第 3・4 度会陰裂傷、感染には有意な違いは認められなかった。

分娩 1 期の早い時期(子宮口開大が 5cm 未満)と遅い時期(子宮口開大が 5cm 以上)にお湯につ

かった場合の比較では、早い時期にお湯に使った群に硬膜外麻酔の使用率が有意に高く、分娩促進

剤の使用も有意に増加していた。

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22 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)22

CQ9 指圧・鍼は、産痛緩和効果があるか?

【エビデンスと解説】

三陰交への指圧は産痛緩和を目的とした薬剤の使用を減少させるほどの効果はないものの、三陰交

に触れるだけの場合に比べ痛みスコアを下げるというエビデンスはあった。また、LI4(合谷)、BL67

(至陰)に指圧を行ったところ、産痛緩和効果が認められた。したがって、産婦が希望すれば、SP6

(三陰交)、LI4(合谷)、BL67(至陰)への指圧を試みることができる。鍼療法は産痛緩和効果を期

待できるが、鍼の使用に関しては鍼灸師免許が必要であり、鍼灸師免許を持つ者と協働して行う。

NICE ガイドラインで採択された Lee ら(2004)の研究によると三陰交への指圧は産痛緩和を目的

とした薬剤の使用を減少させる効果はないが、三陰交に触れるだけの場合に比べ痛みスコアを下げる

というエビデンスがあり、Chung ら(2003)の研究では LI4(合谷)、BL67(至陰)に指圧法を行った

ところ、産痛緩和効果が認められた。コクラン SR においては、和痛を目的とする薬剤の使用を減少

させる効果はないものの、痛みの強度は低くなるという結果があるが、対象者数が少なくエビデンス

は十分でないと結論づけられている。

また鍼療法については、コクラン SR によると療法によって痛みの強度を下げる効果がある研究と

効果がない研究があった。産痛緩和を目的とした薬剤使用に関しては、対照群がプラセボ群またはス

タンダードケア群である場合、鍼療法を行うことにより減少すると報告されている。

【根拠】

NICE ガイドライン

SR1 件、RCT4 件が採用された。韓国での研究(介入群 n=36, 対照群 n=39)は SP6(三陰交)

に指圧をすることと、同じ場所に触れることを比較している。2 件目の研究はノルウェーで行われ

(介入群 n=106, 対照群 n=92)、鍼療法を受ける群と、鍼療法を受けない、もしくはプラセボ群と

比較をしている。3 件目の研究もノルウェーで行われている研究(介入群 n=106, 対照群 n=102)

で、鍼療法と偽鍼療法の比較をしている。4 件目のスウェーデンでの研究は 90 人の女性を対象とし

て行っている(介入群 n=46, 対照群 n=44)。この研究の対照群はいかなる形式のプラセボも受け

ていない。一方で、分娩での指圧の効果を別に報告している。新しい SR はこれら 3 件の鍼の研究

を妥当で同質であるとみなし、統合されている。[EL=1+]

SP6 に触れる場合と比較して SP6(三陰交)に指圧を行った場合のほうが痛みスコアは減少した

が(WMD -1.20 [95%CI: -2.04, -0.36] )、薬剤を使った産痛緩和との違いは見られなかった(RR 0.54

[95%CI: 0.20, 1.43] )。

SR によると、鍼療法は鎮痛剤の使用や(2 件の研究、RR 0.74 [95%CI: 0.63, 0.86] )硬膜外麻酔(2

件の研究、RR 0.45 [95%CI: 0.29, 0.69] )の使用やオキシトシンによる陣痛の増強の必要性(2 件の

研究、RR 0.58 [95%CI: 0.40, 0.86] )を有意に減少させた。鍼療法後の痛みスコア(1 件の研究、MD

-0.20 [95%CI: -0.80, 0.40] )や自然経膣分娩率(3 件の研究、RR 1.03 [95%CI: 0.97, 1.09] )に差はな

かった。妊産婦の満足度や妊産婦や新生児の合併症は検討されていなかった。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

2323

産婦人科診療ガイドライン

記載なし。

科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

三陰交への指圧は産痛緩和効果が認められ、鍼を行うことは産痛を軽減する。しかしデメリット

に関する根拠を示す研究は行われておらず、明らかになっていない。

鍼を人体に施すには鍼灸師の国家資格が必要であり、どの施設・誰でも行える手技ではない。鍼

灸師との協働が必要である。また、用いる鍼はディスポを使用する。

上記以外のエビデンス

NICE ガイドラインに採択された研究以外に 2 件を採用した。Chung ら(2003)の台湾で行われた

RCT(介入群:n=43 上腕軽擦群:n=42 対照群:n=42)、コクラン SR(Smith et al., 2011)である。

コクラン SR では、13 件の RCT(鍼に関する RCT9 件、指圧に関する RCT4 件)をレビュし、メタ

アナリシスを行っている。そのうち本 CQ に合致する RCT は 7 件(鍼に関する RCT4 件、指圧に関

する RCT3 件)であった。

鍼に関する結果は、鍼療法群対プラセボ群(2 件)、鍼療法群対スタンダードケア群(1 件)、鍼療

法群対介入なし群(1 件)に分けて検討されている。対プラセボ群(χ²=1.78, df=1, p=0.18, I²=44%)、

対スタンダードケア群(SMD:-0.14 [95%CI: -0.55,0.28])では両群間で痛みの強度に差はなかっ

た。対介入なし群では、鍼治療群のほうが、呼吸法とマッサージ群よりも痛みの強度は少なかった

SMD:-1.00 [95%CI: -1.33,-0.67])、電気鍼治療群のほうが、産痛緩和ケアなし群よりも痛みの強度

は低かった(n=26,p=0.018)。

指圧に関する結果は、対プラセボ(1 件)、対統合(プラセボ+介入なし)群(2 件)に分けて検

討されている。対プラセボ群では指圧群のほうが痛みの強度は減少した SMD:-0.55 [95%CI: -0.92,

-0.19])。対統合(プラセボ+介入なし)群(χ²=0.01, df=1, p=0.91, I²=0.0%)は指圧群のほうが痛

みの強度は減少した SMD:-0.42 [95%CI: -0.65,-0.18]。

また、同 SR では鍼療法、指圧療法を行うことにより産痛緩和のための薬剤使用は減少するかに

ついても検討されている。該当文献は 7 件(鍼に関する RCT5 件、指圧に関する RCT2 件)であっ

た。鍼に関する結果は、鍼療法群対プラセボ群(1 件)、鍼療法群対スタンダードケア群(3 件)、鍼

療法群対水注射法群(1 件)に分けて検討されている。対プラセボ群(RR 0.72 [95%CI: 0.58, 0.88])。

対スタンダードケア群(RR 0.68 [95%CI: 0.56, 0.83])は鍼療法群のほうが鎮痛剤の使用が減少した。

しかし、対水注射法群では、両群に差は見られなかった(RR 0.84 [95%CI: 0.54, 1.30])。指圧に関す

る結果は指圧群対プラセボ群(1 件)、対プラセボ群(RR 0.54 [95%CI: 0.20, 1.43])、対統合群(軽擦

+スタンダードケア)(RR 0.94 [95%CI: 0.71, 1.25])もに両群間で差は見られなかった。

Chung らの研究では LI4(合谷)、BL67(至陰)に指圧法を行っている。産痛の強度の評価を VAS

でおこなっている。この研究の結果は分娩第 1 期の発作時には産痛の減少の度合いに指圧群、軽擦

群、対照群の 3 群間で有意差があった(p=0.41)。指圧群対軽擦群(p=0.109)、軽擦群対対照群(p=0.268)

では有意差はなく、指圧群対対照群では指圧群で産痛が緩和されていた(VAS 平均値 指圧群:37,

対照群 39, p=0.017)。間欠期・移行期では有意差はなかった。

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24 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)24

参考

経穴の名称:http://jsam.jp/authorization/pastdata/who_point.html [2011.05.03]

Note:各研究の介入方法

【指圧】

Chung et al.…指圧群:左 LI4(合谷)を 5 分→右 LI4(合谷)を 5 分→右 BL67(至陰)を 5 分→左

BL67(至陰)を 5 分の順で指圧する。 LI4(合谷)は親指で、BL67(至陰)は

鉛筆の消しゴムで圧する。1 分間に 5 サイクル行い、それらは 10 秒間圧を加え、2 秒

間圧を解除する、という構成。

軽擦群:左上腕外側を 10 分→右上腕外側を 10 分軽擦。研究協力者の呼吸に合わせて

行い、1 分間におよそ 12~30 ストローク行う。

Lee et al.…介入群:30 分間に毎回の陣痛発作に SP6(三陰交)を指圧する。

Skilnand et al.…LU7(列缺)、HT7(神門)、ST30(気衝)、ST29(気来)、ST36(足三里)、LI4(合

谷)、SP8(地機)、SP6(三陰交)、BL32 (次りょう)、BL34(下りょう)、BL60 (崑

崙)、BL67 (至陰)、KI3 (太谿)、GB34 (陽陵泉)、GB41 (足臨泣)、LE3 (太

衝)、GV20 (百会)の 17 の経穴のうち、2~12 つ(平均 7 つ)の経穴に鍼を打つ。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

2525

陣痛促進法

陣痛促進とは、陣痛が微弱で分娩進行に問題が認められる場合に、陣痛の増強を図る方法である(日

本産科婦人科学会, 2008)。陣痛促進の方法として子宮収縮薬の使用(オキシトシン、プロスタグラン

ジン F2α、プロスタグランジン E2 錠)や、薬剤を用いない方法として、分娩第 1 期の歩行、乳房/乳頭刺激、指圧・鍼、人工破膜や分娩中の浣腸、栄養補給(食事)があげられる。 ローリスク妊産婦への分娩期ケア調査(清水, 2011)によると、陣痛促進のための歩行は、全例・ケ

ースにより実施している施設は 98.0%で、全ての病院と助産院で実施され、診療所は 90.4%であった。

人工破膜は、ケースにより実施している施設は、病院 90.6%、診療所 97.0%、助産所は 58.0%であっ

た。分娩中の浣腸は全例に実施している施設は少なく、病院 1.7%、診療所 9.1%、助産所 1.4%であっ

た。陣痛促進を目的とした指圧は 57.9%、鍼は 23.0%の施設がほぼ全例・ケースにより実施していた。

指圧・鍼ともに全例に実施しているのは助産所のみ(11.4%)であった。

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26 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)26

CQ10 分娩進行中に飲食制限をする必要はあるか?

【エビデンスと解説】

分娩中の飲食については、摂取制限をする場合としない場合で、分娩時のアウトカムに違いは認め

られなかった。

分娩中に体力を維持するのに水分や食べ物を摂取するということは必要なことだと考えられている

一方で、通常の分娩でも、帝王切開のための麻酔などの医療介入の可能性を考慮して、飲食を制限す

る施設も多い。

NICE ガイドラインでは、分娩進行中に食事を摂取した場合、生化学的に母体にはメリットがある

が、嘔吐量が 2 倍になるという害が報告されている。しかし、それ以降に報告された、コクランの SR

によると、飲食制限した群と飲食した群を比較したものでは、メリットとデメリットの両面から有意

差はなかった。陣痛による体力の消耗や呼吸法や発汗などに対して、食物を摂取したり、水分の補給

をしたりすることが必要であると考えられるが、摂取制限をしても、しなくても、分娩時の医療介入

や分娩時間、嘔吐、児の予後といったアウトカムに差はなかった。よって、産婦の希望にそって、飲

食は自由に摂取できるようにすべきであり、制限すべきものでも、強く勧めるべきものでもないと考

える。

摂取する食べ物は、消化管に負担をかけないような食べやすいものが良い。

分娩が遷延し、エネルギー補給が必要と考えられる場合は食物の摂取を勧めても良いと考える。

【根拠】

NICE ガイドライン

RCT1 件が採用された。 限られたエビデンスにおいて、分娩進行中に食事を摂取した場合、血清

グルコースとインスリンはかなり上昇する。しかしながら、嘔吐量は、2 倍になる。分娩に関する

母のアウトカム(分娩経過時間、オキシトシンの必要度、分娩方法)、あるいは児のアウトカム(ア

プガースコア、臍帯血ガス)において有意差は認められなかった。

産婦人科診療ガイドライン

記載なし。

科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

記載なし。

上記以外のエビデンス

5 試験を検討したコクラン SR によると、分娩第 I 期の加速期の産婦に、飲水・食物摂取の完全制

限、飲水のみ、特定の水分・食物摂取のみ、炭水化物飲料摂取のみの何らかの制限を行った群と、

自由に飲水・食物を摂食する群と比較していた。その結果、飲食制限した群と飲食した群を比較し

たものでは、プライマリーアウトカムである帝王切開、器械的経腟分娩、5 分後のアプガースコア 7

未満の割合にも、その他、ケトーシス、分娩時間、吐気、嘔吐、分娩促進、疼痛緩和、硬膜外麻酔、

新生児の入院なども、有意差はなかった。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

2727

CQ11 分娩第 1 期の歩行は、陣痛促進に効果があるか?

【エビデンスと解説】

分娩第 1 期での歩行により分娩第 1 期の時間が短縮する可能性は示されているが、その他の分娩ア

ウトカムを改善するという結果はなく、現在のところは、分娩促進を目的とした歩行を積極的に勧め

るだけのエビデンスはない。

NICE ガイドラインでは、分娩促進に対する効果について示されてはいないが、異なる RCT におけ

る共通の結果として、仰臥位のほうが他の体位に比べてより快適であるとする産婦はいないとしてい

る。よって、分娩期を通して動くことや最も楽な姿勢をとることが勧められ、またそのようにできる

ための援助を受けることが望ましいと結論づけている。

【根拠】

NICE ガイドライン

産婦の快適さ、分娩進行、胎児の状態への影響等について、分娩中に移動制限なしとする場合と

移動を制限する場合を比較した臨床試験を検討した。米国における比較的大規模な RCT(n=1,067)

では、分娩第 1 期での歩行(平均 56 分)と歩行なし(通常ケア)を比較した結果、分娩時間、オキ

シトシン使用、鎮痛剤使用、分娩様式(自然分娩か器械分娩かなど)、母児アウトカムにおいて有意

な差は認められなかったとしている。また、オーストラリアでの RCT(n=196)でも、分娩第 1 期

の移動制限なしと仰臥位とを比較した場合、分娩様式、母児アウトカムにおいて有意な違いはなか

ったとしている。分娩時に移動制限なしとすることが移動制限ありに比べて、分娩アウトカムを改

善するという高いレベルのエビデンスは得られていない。

産婦人科診療ガイドライン

記載なし。

科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

分娩第 1 期での過し方について 2 つの RCT 結果をもとに「垂直姿勢や歩行は、仰臥位で過ごすこ

とと比較して、分娩第 1 期所要時間の短縮、自然経膣分娩の増加、アプガースコアがよいことが報

告されている一方、分娩結果、分娩様式、新生児に関連する項目に有意な差がなかったとする研究

があった。したがって、分娩結果、分娩様式、新生児関連の結果からは、どのような姿勢で過ごす

ことがよいかの根拠は見出せなかった。しかし、産婦が自由な姿勢をとれることの快適性、反対に

同じ姿勢と取り続けることに対する苦痛について多くの研究で共通して述べられており、自由な姿

勢をとれることは産婦の快適性や満足度を高くする。」としている。

上記以外のエビデンス

21 試験(n=3,706)をレビュしたコクラン SR の結果、「立位または移動制限なし」と「仰臥位ま

たは臥床」との比較においては、「立位または移動制限なし」のほうが分娩第 1 期の時間が有意に短

縮(-0.99 時間 [95%CI: -1.60, -0.39])したが、経膣分娩割合、器械分娩割合、帝王切開割合、分娩

第 2 期の所要時間については両群間で有意な差は認められなかった。また「立位または歩行」と「移

動制限あり」との比較においては、分娩第 1 期の所要時間に有意な差は認められなかった(-0.97 時

間 [95%CI: -1.96, 0.02])。

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28 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)28

CQ12 正常に経過している産婦に対して、分娩第1期に人工破膜をした場合の遷延分 娩を予防できるか?

【エビデンスと解説】

正常に経過している産婦に対する分娩第 1 期の人工破膜は、遷延分娩を予防するというエビデンス

はない。

人工破膜の実施は、人工破膜を行わなかった場合と比較して、分娩の進行異常を減らすという研究

はあったが、人工破膜の適用が明確ではなく、研究の対象者に子宮口開大 3cm の産婦を含んでおり、

日本の現状には当てはまらなかった。

【根拠】

NICE 陣痛誘発ガイドライン

9 件の試験を統合した Fraser ら (2005)の SR を基に解説していた。介入は、分娩促進を必要とす

る女性に対する人工破膜であり、待機的管理と比較をしていた。それによると、分娩第 1 期での分

娩進行に遅れがある時、人工破膜によって時間の短縮がみられるという高いレベルのエビデンスが

みられた。

産婦人科診療ガイドライン

CQ404「微弱陣痛が原因と考えられる遷延分娩への対応」において、下記の Smyth ら (2007)のコ

クラン SR を引用し、研究間において、人工破膜の評価が一致していないことや臍帯脱出、感染率

上昇の危険性等を挙げ、人工破膜実施にあたっては慎重に判断する、としている。

科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

記載なし。

上記以外のエビデンス

人工破膜の効果について 14 件(n=4,893)の RCT を統合した Smyth らのコクラン SR(2007)を

採用した。人工破膜を行った場合は、行わない場合と比較して、次の内容について有意差はみられ

なかった:分娩第 1 期の所要時間、帝王切開率、出産体験に対する母親の満足度、5 分後のアプガ

ースコア 7 点未満、分娩第 2 期の所要時間など。有意差がみられたのは、分娩の進行異常(2 時間

経過しても子宮口の開大がみられない、もしくは、効果的でない陣痛)についてであった(RR 0.75

[95%CI: 0.64, 0.88])。しかしながらこの結果を導いた研究は 2 本(n=1,005)であり、研究の対象者

の組み入れ基準が子宮口 3cm 以上、もしくは除外基準が 6cm 以上であった。

これらより、吟味された研究間において、人工破膜のタイミングに関して一致していなかったた

め、人工破膜を標準的な分娩の管理やケアの一部としてルチーンに導入することは推奨できないと

している。人工破膜が検討される女性に対し、このレビュに示されたエビデンスを用いて、女性と

ケア提供者の間で話し合い意思決定することが奨められる。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

2929

CQ13 分娩第 1 期の浣腸は、陣痛促進効果があるか?

【エビデンスと解説】

分娩第1期に浣腸を実施することで分娩が促進されるというエビデンスはない。

コクラン SR において、分娩第1期の浣腸は分娩所要時間を短くするという根拠は示されなかった。

浣腸は不快な処置でもあり、分娩促進を目的として施されるべきではない。なお、産婦の希望により

便秘解消を目的に実施することを否定するものではない。

【根拠】

NICE ガイドライン

記載なし。

産婦人科診療ガイドライン

記載なし。

科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

記載なし。

上記以外のエビデンス

4試験(n=1,917)をレビュしたコクラン SR(Reveiz et al., 2012)を採用した。分娩所要時間に関し

ては、3件の RCT が採用され、そのうち1件(Cuervo, 2006)は産婦の分娩回数による調整がされてい

たが、残りの2件(Kovavisarach, 2005; Clarke, 2007)は分娩回数による調整がされておらず、3つの研

究は統合されなかった。Kovavisarach (2005)の RCT では、浣腸群の方が非浣腸群に比べて分娩所要

時間が有意に短かった(n=1,027, 409.4 vs. 459.8(分), MD -50.40 [95%CI: -75.68, -25.12], p<0.001)が、

分娩回数による調整がされておらず、この研究のエビデンスレベルは低い。また、分娩回数による

調整がされた Cuervo(2006)の RCT では、浣腸群の分娩所要時間の方が非浣腸群よりも短かったが有

意差はなかった(n=347, 515 vs. 585(分), p=0.24)。その後の Clarke(2007)の RCT でも、浣腸群と非浣

腸群の分娩所要時間に有意差はなかった(n=152, 504.7vs. 392.7(分), MD 112 [95%CI: 48.13, 175.87])。

Kovavisarach(2005)と Clarke(2007)の研究を統合した結果でも有意差はなく(n=1,179, WMD 28.04

[95%CI: -131.01, 187.10])、統計学的異質性が非常に高かった。よって、分娩第1期の浣腸が分娩所要

時間を短くするというエビデンスは得られていない。

なお、産後1カ月までの感染率は、褥婦、新生児ともに有意差は認められず(褥婦: RR 0.66 [95%CI:

0.42, 1.04];新生児:RR 1.12 [95%CI: 0.76, 1.67])、新生児の上・下気道感染(上気道感染: RR 1.82

[95%CI: 0.73, 4.52]; 下気道感染: RR 0.10 [95%CI: 0.01, 1.73])や臍帯の感染(RR 3.16 [95%CI: 0.50,

19.82])についても有意差は認められなかった。

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30 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)30

CQ14 指圧・鍼は、陣痛促進効果があるか?

【エビデンスと解説】

鍼による分娩促進効果については、鍼療法を行った群の方が、行わなかった場合よりも介入開始か

ら児娩出までの時間は短かいというエビデンスがあった。指圧による分娩促進効果については、同様

に、指圧を行った群の方が、行わなかった群よりも分娩所要時間が短いという結果であった。したが

って、SP6(三陰交)、LI4(合谷)、BL67(至陰)への指圧・鍼療法は分娩促進効果を期待でき、分娩

促進を図る方法の選択肢の一つとして考えられる。

【根拠】

NICE ガイドライン

Lee ら (2004)によると、両足の三陰交に間歇時に 30 分間指圧またはタッチを行い、その効果を判

定している。子宮口 3cm 開大から子宮口全開大までの所要時間は、三陰交指圧群のほうが三陰交タ

ッチ群よりも有意に短縮が見られた(p=0.009)。また子宮口全開大から児娩出までの所要時間は統

計的に差はなく(p=0.082)、これらのことから分娩第 1 期の間は促進され、分娩第 2 期では促進効

果は見られなかったと言える。結果的には総分娩所要時間(子宮口 3cm 開大から児娩出まで)は三

陰交指圧群のほうが三陰交タッチ群よりも短い(p=0.006)。

Skilnand ら(2002)によると、鍼療法を陣痛発来後子宮口が 3 ㎝以上開大し VAS で 3 以上を示し

た時に開始し、鍼療法開始からの分娩所要時間とオキシトシン使用の有無で分娩促進効果を測定し

た。介入群は経穴に鍼を、対照群は経穴以外に鍼を施した。分娩所要時間は介入群(n=106)212±155

(分)、対照群(n=102)283±225(分)、p=0.01、オキシトシン使用は介入群 106 人中 15 人(14%)、

対照群 102 人中 36 人(35%)、p<0.001 であった。

(上記 2 文献では主要アウトカムとしての検討ではない。)

産婦人科診療ガイドライン

記載なし。

科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

記載なし。

上記以外のエビデンス

Chung ら(2003)は三陰交以外を刺激し、分娩促進効果を分娩第 1 期の所要時間で判定している。

この研究では研究協力者を 3 群(介入群=LI4・BL67 に指圧、軽擦群=上腕軽擦、対象群=介入な

く会話をする)に分け、研究を行っている。3 群間で有意差が見られ(p=0.019)、介入群は対照群

に比べて分娩第 1 期所要時間が短かった。指圧群と軽擦群の間には有意差はなかった。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

3131

参考

経穴の名称:http://jsam.jp/authorization/pastdata/who_point.html [2011.05.03]

Note:各研究の介入方法

【指圧】

Chung et al.…指圧群:左 LI4(合谷)を 5 分→右 LI4(合谷)を 5 分→右 BL67(至陰)を 5 分→左

BL67(至陰)を 5 分の順で指圧する。LI4(合谷)は親指で、BL67(至陰)は鉛筆の消しゴムで圧

する。1 分間に 5 サイクル行い、それらは 10 秒間圧を加え、2 秒間圧を解除する、という構成。

軽擦群:左上腕外側を 10 分→右上腕外側を 10 分軽擦。研究協力者の呼吸に合わせて行い、1 分間に

およそ 12~30 ストローク行う。

Lee et al.…介入群:30 分間に毎回の陣痛発作に SP6(三陰交)を指圧する。

Skilnand et al.…LU7(列缺)、HT7(神門)、ST30(気衝)、ST29(気来)、ST36(足三里)、LI4(合谷)、

SP8(地機)、SP6(三陰交)、BL32 (次りょう)、BL34(下りょう)、BL60 (崑崙)、BL67 (至陰)、

KI3 (太谿)、GB34 (陽陵泉)、GB41 (足臨泣)、LE3 (太衝)、GV20 (百会)の 17 の経穴のう

ち、2~12 つ(平均 7 つ)の経穴に鍼を打つ。

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32 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)32

分娩第 2 期のケア

分娩第 2 期とは、子宮口全開大から児娩出までの時期であり、産婦および胎児の正確なアセスメン

トときめ細やかなケアが必要である。分娩第 2 期は様々なケアが提供されているが、助産ガイドライ

ンでは、外陰部消毒、分娩第 2 期の体位、会陰ケア、回旋異常への介入を取り上げる。 感染予防の観点から、分娩時の外陰部消毒は広く実施されている。ローリスク妊産婦への分娩期ケ

ア調査(清水, 2011)によると、外陰部洗浄・消毒を実施している施設は、病院 94.0%、診療所 84.8%、

助産所 72.9%であった。分娩第 2 期にフリースタイル分娩を実施している施設は、病院 31.0%、診療

所 16.7%、助産所 89.7%であり、特に児娩出時においては、病院 35.4%、診療所 16.1%、助産所 13.9%であった。クリステレル児圧出法については、ほぼ全例に実施されているのは 1 か所の病院のみであ

り、ケースにより実施されている施設は、病院 91.4%、診療所 83.1%、助産所 32.4%であった。会陰

損傷を予防するための会陰部温罨法をケースにより実施している施設は、病院 25.6%、診療所 20.0%、

助産所は 50.0%であった。会陰保護をほぼ全例に実施している施設は、病院 89.7%、診療所 87.7%、

助産所 54.3%であった。会陰切開については、初産婦に対しほぼ全例で実施している施設は、病院

20.7%、診療所 24.6%、助産所 1.5%であり、経産婦に対しては、病院 1.7%、診療所および助産所は

0%であった。分娩中に胎児が回旋異常の場合、回旋を改善するために四つん這いの体位をとる病院

は 8.6%、診療所 7.9%、助産所 23.2%であった。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

3333

CQ15 児娩出前の外陰部消毒は必要か?

【エビデンスと解説】

分娩時の外陰部消毒では、水道水と比較して塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン等の消毒薬

が効果的であるというエビデンスはない。

分娩時の外陰部消毒にて、水道水とセトリミド/クロルヘキシジンの効果を比較した比較研究(英国)

の結果、産婦の発熱、抗生剤の使用、外陰部の感染、外陰部裂傷の治癒について両群で差は認められ

なかった。また、新生児の感染についても差はないという結果であった。したがって、外陰部消毒の

ためのセトリミド/クロルヘキシジンの使用は、水道水と比較して効果があるというエビデンスはない。

【根拠】

NICE ガイドライン

分娩時外陰部消毒の際、水道水とセトリミド/クロルヘキシジンの効果を比較した比較研究(セト

リミド/クロルヘキシジン群 1813 名;水道水 2092 名)の結果、母親に関するアウトカムについては、

発熱(体温>38.0℃)(OR1.4 [95%CI: 0.8, 1.9])、抗生剤の使用(OR1.02 [95%CI: 0.86, 1.9])、外陰

部感染(OR1.4 [95%CI: 0.77, 2.7])、外陰部裂傷(OR5.8 [95%CI: 0.3, 999])が発生した母親の数に差

はなかった。

新生児に関するアウトカムについては、眼感染症(OR1.1 [95%CI: 0.78, 1.7])、脊髄感染症(OR1.3

[95%CI: 0.7, 2.1])、その他感染症(OR0.87 [95%CI: 0.65, 1.2])、SCBU(Special Care Baby Unit)への

入院(OR1.1 [95%CI: 0.9, 1.4])、抗生剤の使用(OR0.99 [95%CI: 0.82, 1.2])、発熱(体温>38.0℃)(OR1.4

[95%CI: 0.66, 3.0])の発生率に差はなかった。したがって、分娩時外陰部消毒には、外陰部消毒の

際、セトリミド/クロルヘキシジンの使用は水道水と比較しても効果がないというエビデンスがある。

産婦人科診療ガイドライン

記載なし。

科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

記載なし。

上記以外のエビデンス

なし。

Note: 日本における外陰部消毒に関する調査(瀬戸他, 2009)によると、病院ではポピドンヨード

(55.1%)の使用が最も多く、続いて塩化ベンザルコニウム(45.5%)であり、水を用いていた病

院は 5%以下であったことを報告している。ポピドンヨードを用いた外陰部消毒の産婦および新生

児への影響を検討した研究が見あたらないため、その効果および害については不明である。

セトリミド、塩化ベンザルコニウム:逆性石鹸

クロルヘキシジン:ヒビテン

ポピドンヨード:イソジン

引用文献

瀬戸知恵他(2009).産婦の QOL 向上を目指した分娩時の外陰部消毒に関する基礎研究‐わが国

の外陰部消毒の実態とその関連因子‐.日本母性看護学会誌,9(1).9-18.

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34 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)34

CQ16 分娩第 2 期の体位は、どれが有効なのか?

【エビデンスと解説】

分娩第 2 期の体位は、それぞれにメリットとデメリットがあり、仰臥位分娩に比べて、その他の体

位が優れているという明確なエビデンスは示されていなかった。

分娩時に、立位やスクワットなどの垂直位の方が、仰臥位や砕石位などの水平位より、器械分娩、

会陰切開、胎児機能不全を示す FHR 所見についても有意に少ないというメリットがあるという結果だ

った。一方で、デメリットとして、第 2 度会陰裂傷、500ml 以上の出血を示す産婦の割合が多くみら

れるという結果であった。また、垂直位は水平位に比べて、裂傷 3・4 度が有意差に多くなるわけでは

ないという結果だった。分娩時の体位は、そのメリット、デメリットを産婦に説明して、どのような

姿勢をとってもよい。

分娩時の体位は、仰臥位分娩に比べて、その他の体位が優れているという明確なエビデンスは示さ

れていなかった。安全性において仰臥位分娩より優れているという明らかなエビデンスはなかった。

なお、異常が予測される場合には、安全性を重視し、医療的な処置をしやすい仰臥位での分娩を促

す。

【根拠】

NICE ガイドライン

SR1 件、コホート研究 1 件が採用された。

分娩第 2 期に仰臥位でいることは、器械分娩や、疼痛を増加させ、また、産婦がいきむかどうか

の情報はないが胎児の心拍数の異常の症例が増えるという高いレベルのエビデンスがある。体位の

違いによって、会陰裂傷の発生率に違いはない。分娩第 2 期に四つん這いになることで、産婦の疼

痛の訴えが減少し、母子のアウトカムに不利益な影響を及ぼすような結果はないことについてもい

くつかの高いレベルのエビデンスがある。硬い分娩いすの使用は、直立でなくても、それ自体で

500ml より多い出血との関連がある。

以上から、女性は分娩第 2 期に仰臥位分娩や仰臥位分娩のような姿勢で横たわることを推奨され

ない。むしろ、最も快適な他の姿勢を推奨されるべきである。

産婦人科診療ガイドライン

記載なし。

科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

SR1 件、RCT6 件が採用された。推奨は下記の通りであった。

分娩第 2 期の体位は、産婦の快適性からみると座位分娩やフリースタイル分娩の方が他の体位よ

りも産婦の主観的評価は高いが、出産後の出血量の増加などの出産のリスクがあることを知ってお

くことが必要である(推奨 B)。

上記以外のエビデンス

22 試験(n=7,280)を検討したコクラン SR(Gupta et al.,2012)、De Jonge らの SR(2004)、RCT2

件(Stremler et al., 2005:Altman et al., 2007)を採用した。

コクラン SR の「垂直位 vs.仰臥位」の比較では、垂直位の方が、器械分娩、会陰切開、胎児機能

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

3535

不全を示す FHR 所見についても少なかった。一方、第 2 度会陰裂傷、500ml 以上の出血を示す産婦

の割合は、垂直位の方が多かった。産婦の分娩所要時間、麻酔の使用、帝王切開率、第 3・第 4 度

会陰裂傷、周産期死亡については、有意差は認められなかった。

「分娩いす/スクワット vs. 仰臥位」では、垂直位の方が、会陰切開、胎児機能不全を示す FHR

所見についても少なかった。一方、垂直位の方が、500ml 以上の出血を示す産婦の割合は多かった。

分娩所要時間、分娩第 2 期の麻酔の使用、分娩様式、会陰裂傷(第 2・3・4 度)、新生児の NICU 入

院、周産期死亡について有意差は認められなかった。

「バースクッション vs. 仰臥位あるいは砕石位」では、分娩第 2 期の所要時間については、初産

婦、経産婦、全ての産婦でバースクッションを使用した方が短くなっていた。器械分娩、第 2 度会

陰裂傷もバースクッションを使用した方が少なかった。帝王切開、会陰切開、第 3・4 度会陰裂傷、

500ml 以上の出血の割合に有意差はなかった。

「分娩いす vs. 仰臥位あるいは砕石位」では、第 2 度会陰裂傷は、分娩いすを使用した方が多く

発生していたが、会陰切開については少ないという結果だった。分娩第 2 期の麻酔の使用、分娩第

2 期の分娩所要時間、分娩様式、500ml 以上の出血、分娩第 2 期の麻酔の使用等について有意差は

なかった。

研究の質を考慮した感度分析によると、垂直位の方が水平位分娩に比べて、会陰切開、器械分娩

は少なかった。しかし、第 2 度会陰裂傷、500ml 以上の出血は多いという結果だった。分娩第 2 期

の麻酔の使用、分娩第 2 期の分娩所要時間、分娩様式、第 3・4 度会陰裂傷、周産期死亡について有

意差はなかった。

1 件の SR(De Jonge, 2004)によると、9 件の RCT と 1 件のコホート研究を統合した結果、仰臥

位分娩はそれ以外の分娩体位に比べて、器械分娩、会陰切開が多く、臍帯血(動脈)の pH も低か

った。反面、分娩時の出血、500ml 以上の産後出血は少なかった。

四つん這いと座位を比較した Altman らの RCT によると、会陰切開は座位に多くみられ、会陰裂

傷は座位の方が四つん這いに比べて少ないという結果だった。回旋異常時の、四つん這いと四つん

這い以外の姿勢を比較した Stremler らの RCT では、四つん這いの方が有意に腰痛を軽減していた。

その他の母子のアウトカムに関しては有意差がなかった。

仰臥位とそれ以外の体位での比較(仰臥位でのメリット・デメリット)

仰臥位を含む介入のメリット 仰臥位以外の体位のメリット 仰臥位あるいは砕石位 vs 垂直位あるいは側臥

第 2 度会陰裂傷、500ml 以上の出

血の割合が少ない。 器械分娩、会陰切開、胎児機能不全を示す

FHR 所見の割合が少ない。

仰臥位あるいは砕石位 vs バースクッション

分娩第 2 期の所要時間の減少。 器械分娩、第 2 度会陰裂傷の割合が少ない。

仰臥位あるいは砕石位 vs 分娩いす

第 2 度会陰裂傷の割合が少ない。 会陰切開の割合が少ない。

仰臥位 vs それ以外の体

位 分娩時の出血、500ml 以上の産後

出血の割合が少ない。 器械分娩、会陰切開の割合が少なく、臍帯

血の pH が低くない。 仰臥位 vs 側臥位 分娩第 2 期の分娩所要時間、分娩様式、会陰切開について有意差は認められな

かった。

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36 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)36

CQ17 分娩第 2 期のクリステレル児圧出法は、児の娩出に有効か?

【エビデンスと解説】

分娩第 2 期のクリステレル児圧出法(手による子宮の圧迫)の効果に関するエビデンスはない。腰

ベルトによる子宮の圧迫も、分娩第 2 期所要時間を短縮する効果はない。

クリステレル児圧出法は、子宮破裂、児の骨折・脳挫傷、肛門括約筋の損傷などを起こす危険性が

指摘されているため、適用を十分考慮しなくてはならない。産婦人科診療ガイドラインにおいても、

吸引分娩時の補完的な使用について言及しているが、危険性について警告している。分娩第 2 期のク

リステレル児圧出法は、正常分娩の場合は行わない。

【根拠】

NICE ガイドライン

記載なし。

産婦人科診療ガイドライン

「CQ406:吸引・かん子分娩の適用と要約、および、施行時の注意事項は?」に下記の記述が示

されている。

複数回の吸引術を必要とする場合やクリステレル胎児圧出法併用を余儀なくされる場合がある。

クリステレル胎児圧出法に関しては胎盤循環の悪化、子宮破裂、母体内臓破裂などの副作用も報

告されているが、吸引術の娩出力補完に有効である。クリステレルの功罪についてはエビデンス

が乏しいのが現状であり、今後検討されるべき課題である(p.182-183)。

科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

記載なし。

上記以外のエビデンス

Verheijen ら(2009)のコクラン SR では、分娩第 2 期における子宮底の圧迫の効果について検討

していた。その結果、手による子宮底の圧迫の効果に関するエビデンスはなかった。空気で膨らま

せることができる腰ベルトの効果については、分娩第 2 期の所要時間は、両群に統計的な有意差は

認められなかった。器械分娩、5 分後アプガースコア 7 点以下、NICU 転送、母子の重篤な疾病率お

よび死亡率も差はなかった。

Note:

クリステレル児圧出法は、子宮破裂(Pan, 2002; Vangeenderhuysen, 2002)、児の骨折・脳損傷

(Amiel-Tyson, 1988)、肛門括約筋の損傷(Cosner, 1996; De Leeuw, 2001; Zetterstrom, 1999)の危険

性が指摘されている。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

3737

CQ18 分娩第 2 期の会陰マッサージは、会陰損傷を予防できるか?

【エビデンスと解説】

分娩中の会陰マッサージは、会陰裂傷の発生や会陰切開率を改善する明確な効果は確認されていな

い。

分娩中に会陰マッサージをした場合としない場合を比較した研究では、マッサージ群では第 3 度会

陰裂傷が少なかったという結果が示された。一方で、1 つの RCT(n=1,211)では、分娩第 2 期におけ

る助産師ケアとしての「温罨法」、「潤滑剤を用いたマッサージ」、「児頭発露まで手を触れない」を比

較したところ、会陰裂傷、会陰切開いずれにおいても有意な差は認められなかったと報告されている。

また、介入の中止を希望した人の割合は「潤滑剤を用いたマッサージ」群に多く、「温罨法」や「児頭

発露まで手を触れない」に比べ、「潤滑剤を用いたマッサージ」群で 3 度裂傷の発生割合が減少する傾

向も認められなかったとされている。

分娩第 2 期における医療者による会陰マッサージが会陰裂傷予防効果を有するというエビデンスは

ない。よって、分娩第 2 期における医療者による会陰マッサージは行わないほうがよい。

分娩第 2 期の会陰マッサージは、会陰裂傷の発生や会陰切開率を改善する明確な効果は確認されて

いない。コクラン SR(Aasheim V, et al., 2011)によると、分娩第 2 期の会陰部マッサージが、第 3・4 度

会陰裂傷の頻度を有意に減らすという結果が示された。しかし、この結果は、採用された 2 つの RCT (Stamp, 2001; Albers, 2005)のうち、Stamp (2001)の結果の影響が強く出た結果である。この論文は評価

者をブラインドできなかったことによる結果の偏りが考えられるという著者のコメントもあり、「会陰

マッサージ」が会陰裂傷を減らすというコクランの結果をそのまま採用することはできない。

NICE ガイドラインでは、Stamp (2001)の RCT が採用されているが、分娩第 2 期における医療者によ

る会陰マッサージが会陰裂傷予防効果を有するというエビデンスはないため、分娩第 2 期における医

療者による会陰マッサージは行わないほうがよいと結論付けている。

会陰裂傷を防ぐ方法には、会陰部の手技に加えて、分娩体位、女性の会陰部の組織、分娩のスピー

ドなど多くの要因が複雑に関与しているため、会陰部マッサージの効果に関しては、更なる研究が必

要である。

【根拠】

NICE ガイドライン

オーストラリアでの RCT(n=1,340)の結果から、マッサージによる分娩時会陰裂傷予防効果に

ついては、第 3 度裂傷割合を有意に低下させる(RR0.47 [95%CI: 0.23, 0.93])が、会陰が無傷である

割合(RR1.03 [95%CI: 0.87, 1.23])、第 1 度裂傷(RR1.03 [95%CI: 0.81, 1.30])、第 2 度裂傷(RR1.03

[95%CI: 0.86, 1.24])、会陰切開率(RR0.92 [95%CI: 0.77, 1.11])に対する改善効果は認められないと

している。

産婦人科診療ガイドライン

記載なし。

科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

記載なし。

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38 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)38

上記以外のエビデンス

コクラン SR(Aasheim V,et al.,2011)を採用。会陰マッサージの効果については、2 つの RCT (Stamp,

2001; Albers, 2005)が統合され、第 3・4 度会陰裂傷、会陰切開率、会陰裂傷なしの頻度の 3 つのア

ウトカムについて検討された。その結果、分娩第 2 期の会陰部マッサージが、第 3・4 度会陰裂傷の

頻度を有意に減らすことが示された(n=2147, RR 0.52 [ 0.29, 0.94 ])。しかしながら、Stamp(2001)の

RCT では、裂傷 3 度を除く他の裂傷に会陰マッサージの効果は認められなかった。裂傷 3 度に関し

ても、独立して裂傷を評価したものは、会陰マッサージ群 1.6% (9/564) vs 対照群 3.3% (16/489);

RR0.49 [95%CI: 0.22-1.09], p < 0.07 となり、会陰マッサージによる効果は認められなかった。

NICE ガイドラインで採用された RCT(2001 年発表論文)以後の 1 つの RCT(n=1,211)では、分

娩第 2 期における助産師ケアとしての「温罨法(n=404)」、「潤滑剤を用いたマッサージ(n=403)」、

「児頭発露まで手を触れない(n=404)」を比較したところ、会陰裂傷、会陰切開いずれにおいても

有意な差は認められなかったと報告されている。各群におけるそれぞれのアウトカム発生割合%は

つぎのとおりであった。会陰切開(0.3, 1.7, 0.5)、裂傷全体(76.7, 76.7, 77.7)、1 度裂傷(24.4, 22.6,

22.0)、2 度裂傷(17.3, 18.1, 18.3)、3 度裂傷(0.7, 1.0, 0.5)、4 度裂傷(0, 0.3, 1.0)。なお、産婦が介

入中止を希望した割合はそれぞれ、2.2%、13.4%、1.7%であり、「潤滑剤を用いたマッサージ群」に

多い傾向が認められている。

Note:

ここでの会陰マッサージの具体的方法は、2 本の指を膣内に挿入し、会陰部を内側から左右に優

しく動かす、ということをさす。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

3939

CQ19 分娩第 2 期の会陰部の温罨法は、会陰損傷を予防できるか?

【エビデンスと解説】

分娩第2期の会陰部温罨法は会陰裂傷の頻度を減らす効果がある。

コクラン SR(Aasheim V,et al.,2011)により、分娩第2期の会陰部温罨法が、第3・4度会陰裂傷の頻度を

有意に減らすというエビデンスが示された。また、産痛、分娩後1・2日の疼痛が軽減されるというエビデン

スも示されている。

NICE が検討したアメリカの RCT(Albers et al., 2005)(対象のうち40%が初産婦)では、分娩第2期

の会陰部への温罨法、潤滑油を用いたマッサージ、児頭娩出まで会陰部に触れない方法の3群に会陰損

傷の程度の違いは認められなかった。しかし、NICE ではコホート研究から、分娩第2期に会陰部に温

罨法を行うと、自然裂傷が減少する可能性を指摘している(初産婦の結果はボーダーライン)。

したがって、分娩第2期に会陰部に温罨法を実施することによる会陰損傷の予防効果は、相反する

結果が出ているが、最新のコクラン SR によって効果が示されたことから、会陰部温罨法は分娩第2期

のケアの選択肢の一つとなり得る。

【根拠】

NICE ガイドライン

温罨法の効果を検討した項目において、大規模なコホート研究 1 件(Albers et al.,1996)が採用

された。分娩第 2 期の会陰部への温罨法は、会陰切開を受けなかった女性(n=2,363)の自然裂傷を

予防し(初産婦については有意差はボーダーライン。初産婦:OR 0.7 [95%CI: 0.4, 1.0] ;経産婦:

OR 0.6 [95%CI: 0.3, 0.9])、初産婦については温罨法の実施により会陰切開を予防する効果も認めら

れた(OR 0.3 [95%CI: 0.0, 0.8])。

会陰保護について検討した項目において採用された研究のうち、会陰部への温罨法、潤滑油を用

いたマッサージ、児頭娩出まで会陰部に触れない方法の3種類の分娩第2期における会陰へのケアを

比較したアメリカの RCT が1件あった(Albers et al., 2005)。この結果では、会陰損傷の程度は3群と

も違いは認められなかった(信頼性の高いエビデンス、対象のうち40%が初産婦)。

産婦人科診療ガイドライン

記載なし。

科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

記載なし。

上記以外のエビデンス

コクラン SR(Aasheim V, et al.,2011)を採用。会陰部温罨法の効果については、2 つの RCT (Albers,

2005; Dahlen et al., 2007)が統合され、第 3・4 度会陰裂傷、会陰切開率、会陰裂傷なしの頻度の 3 つ

のアウトカムについて検討された。その結果、分娩第 2期の会陰部温罨法が、第 3・4 度会陰裂傷の

頻度を有意に減らすことが示された(n=1525, RR 0.48 [95%CI: 0.28, 0.84 ])。

コクラン SR の採用文献である初産婦を対象とした RCT(Dahlen et al.,2007)において、温罨法

群(n=360)では、会陰部が児頭により膨張し、対象が伸長していることを知覚したら、発作期に

会陰部に温めたパットをあてた。対照群(n=357)は通常のケアを受けた。結果、会陰裂傷 3 度以

上だったのは、温罨法群が有意に少なかった(温罨法群 4.2% vs. 対照群 8.7%, p=0.02)。会陰裂傷

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40 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)40

1 度以下、会陰裂傷 2 度以上、会陰切開率、縫合の必要性について違いは認められなかった。なお、

産痛知覚は、温罨法群の方が有意に軽度であった(5 段階評価、p<0.001)。分娩後 1・2 日の疼痛も、

温罨法群の方が有意に軽度であった(10 点の VAS p<0.001)。分娩後 3 カ月の尿失禁は、温罨法

群の方が有意に少なかった(温罨法群 9.7% vs. 対照群 22.4%, p=0.0001)。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

4141

CQ20 分娩第 2 期の会陰保護は、会陰損傷を予防できるか?

【エビデンスと解説】

側臥位分娩では、会陰保護(ハンズオン、ハンズオフ)の違いによる会陰裂傷の予防効果は認めら

れない。

NICE では、ハンズオン(右手で会陰を保護し左手で児頭を屈曲させ娩出をコントロールする)の

方が分娩後10日の会陰部痛が軽度であるが(RR 1.10と差は小さい)、ハンズオフ(娩出の準備はして

おくが会陰や児頭に触れず、児頭娩出後にうけとめるのみ)の方が会陰切開率は低く、会陰損傷の程

度についての違いは認められなったことから、ハンズオン、ハンズオフのどちらも自然な娩出を援助

するのに利用できるとされた。その後の RCT においても、会陰損傷の有無・程度・部位はハンズオン

群、ハンズオフ群での差は認められなかった。

但し、NICEで採用された3研究は、児娩出時の体位に関わらず分析されている(それぞれ最多の体位は、

臥位、座位、側臥位)。その後のRCTでは側臥位に統一されていた。性器損傷については、人種による

違いも認められている。また、コクランSR(Aasheim, et al., 2011)の結果、温罨圧迫法やマッサージはハン

ズオフに比べて、第3・4度会陰裂傷の頻度や会陰切開率が有意に少ないという結果であった。

したがって、側臥位に関してはハンズオン・ハンズオフによる会陰損傷予防に違いはないといえる

が、他の分娩体位や人種・分娩環境もふまえた更なる検討が必要である。日本において同様の研究は

行われておらず、今後行われることが期待される。

【根拠】

NICE ガイドライン

検討された文献は、RCT2件、準 RCT 1件であった。

アメリカの RCT(Albers et al., 2005)では、会陰部への温罨法、潤滑油を用いたマッサージ、ハ

ンズオフの3種類の分娩第2期における会陰へのケアを比較した。会陰損傷の程度は3群とも違いは認

められなかった(信頼性の高いエビデンス)。大規模なイギリスの RCT(McCandlish et al., 1998)(エ

ビデンスの信頼性は限られる)では、ハンズオン群、ハンズオフ群を比較し、分娩後2日の会陰部痛

について両群に違いは認められなかったが、10日では会陰に触れた群の方が有意に軽度であった

(RR1.10 [95%CI: 1.01,1.18])。この違いは、主に疼痛の程度を軽度としたカテゴリーから生じてい

た (軽度:9.2% vs. 8.8%; 重度:1.4% vs. 1.4%)。第2度会陰裂傷(会陰切開含む)の割合は両群とも

類似していたが、会陰切開率はハンズオフ群の方が低かった(RR 0.79 [99% CI: 0.65, 0.96])。オース

トリアで行われた準 RCT(Mayerhofer et al., 2002)では、ハンズオンとハンズオフを比較し、ハン

ズオン群は、ハンズオフ群より会陰切開が行われていた(17.9% vs. 10.1%, p< 0.01)。

以上より、ハンズオン、ハンズオフのどちらも自然な娩出を援助するのに利用できるとされた。

なお、NICE 中に記載はなかったが児娩出時の体位は、Mayerhofer らでは、臥位が最多であり(ハ

ンズオフ群60.9%、ハンズオン群73.8%、以下、同順)、側臥位18.7%、13.2%、スクワット14.7%、

6.9%、座位3.3%、2.2%、四つん這い3.1%、1.1%であった。Albers らでは全対象の内、座位が5分

の4と最多であり、臥位9.7%、側臥位7.4%、スクワット・四つん這い・立位は1%未満であった。

McCandlish らの研究では、シムス位が両群とも68%と最多であり、直立位(立位、膝立ち、スクワ

ット、座位)が両群とも18%、臥位(側臥位、仰臥位、砕石位)がハンズオフ群10%、ハンズオン

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42 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)42

群11%、四つん這いが両群とも2%であった。McCandlish らでは、性器損傷の adjusted RR を算出し

ており、座位 0.68 [95%CI: 0.50, 0.91]、ヒスパニック系でない白人女性 1.34 [95%CI: 1.06, 1.73]など

が挙がっていた。

産婦人科診療ガイドライン

記載なし。

科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

記載なし。

上記以外のエビデンス

コクランSR(Aasheim V,et al.,2011)を採用。ハンズオン(会陰保護)の効果について、2つのRCT (McCandlish,1998; Mayerhofer,2002)が統合され、第3・4度会陰裂傷、会陰切開率、会陰裂傷なしの頻度

の3つのアウトカムについて検討された。その結果、分娩第2期の会陰部のハンズオンは、ハンズオフ

に比べて会陰切開率が有意に少ないということが示された (n=6,547, RR:0.69 [0.50, 0.96])

しかしながら、「ハンズオン」、「ハンズオフ」、「スタンダードケア」、「会陰サポート」の用語はそ

れぞれの研究で意味が異なることがあり、必ずしも十分に定義できておらず、会陰裂傷を防ぐ方法に

は、会陰部の手技に加えて多くの要因が複雑に関与しているため、会陰部の手技を評価するための更

なる研究が必要である。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

4343

CQ21 ルチーンの会陰切開は、産婦の会陰損傷を予防し、新生児のアウトカムを改善 するか?

【エビデンスと解説】

ルチーンの会陰切開に比べ、限定的な会陰切開の方が産婦および児への利益が大きいというエビデ

ンスが示されている。

1 件の SR の結果、会陰切開率は、「ルチーンの会陰切開」群では 75%(全産婦に会陰切開を行う方

針であっても実施できない場合があるため)、「限定的な会陰切開」群では 28%であり、明らかに限定

的な会陰切開群の方が低い(Carroli, 2009)。さらに、限定的な会陰切開群の方が、重度会陰裂傷(RR0.67

[95%CI: 0.49, 0.91])、縫合の必要性(RR0.71 [95%CI: 0.61, 0.81])、癒合時の合併症(RR0.69 [95%CI: 0.56,

0.85])が少ない。また、重度膣会陰裂傷、性交痛、尿失禁、会陰痛、新生児仮死は、両群で差はなか

った。したがって、限定的な会陰切開の方針の方が、産婦および児にとって利益が大きい。

NICE ガイドラインでも、ルチーンの会陰切開は、短期的または長期的にも女性の利益とならない

ため、「自然な分娩ではルチーンの会陰切開はすべきではない。会陰切開は、器械分娩や胎児の異常な

ど臨床上必要な場合のみ実施すべきである」と推奨されている。したがって、日本におけるローリス

クの正常分娩の場合は、全産婦に会陰切開を行わず、臨床上必要な場合に限定して実施する方針がよ

いと考えられる。

【根拠】

NICE ガイドライン

限定的な会陰切開は、ルチーンの会陰切開と比べ、第 3 度・4 度裂傷(RR0.74 [95%CI: 0.42, 1.28])、

会陰損傷(RR0.87 [95%CI: 0.83, 0.91])が少なく、会陰上部裂傷(RR1.75 [95%CI: 1.52, 2.01])は多

いものの、児の 1 分後アプガースコア 7 点未満(RR1.05 [95%CI:0.76, 1.45])は差がないという結果

であった。ルチーンの会陰切開(試験平均 71.6%; 範囲 44.9%-93.7%)は、限定的な会陰切開(試験

平均 29.1%; 範囲 7.6%-53.0%)と比べ、短期的または長期的にも女性の利益とならないというかな

り高いレベルのエビデンスがある。

産婦人科診療ガイドライン

記載なし。

快適な妊娠・出産のガイドライン

RCT4 件、SR1 件が採用された。分娩時にルチーンに会陰切開を行うことに会陰部裂傷の頻度を

減少させる点での効果はなく、会陰切開を分娩時にルチーンに行う必要はない。会陰切開は、胎児

の well-being の観点から必要と認められる場合、大きな裂傷を生じる可能性があるなど、会陰部を

保護する必要があると認められる場合に行われるべきものである。

Note:

限定的な会陰切開:方針として必要な場合に限定して実施すること。

ルチーンの会陰切開:方針として全産婦に会陰切開を行うこと。

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44 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)44

上記以外のエビデンス

最新のコクラン SR(2009)は、8 件の試験(5541 名の女性)を含めて分析されている。ルチーン

の会陰切開群では 71.5%(2035/2708)の産婦に会陰切開が行われており、限定的な会陰切開群での

会陰切開率は 28.4%(776/2733)であった。ルチーンの会陰切開に比べ、限定的な会陰切開は、重

度の会陰裂傷(RR0.67 [95%CI: 0.49, 0.91])、縫合(RR0.71 [95%CI: 0.61, 0.81])、癒合時の合併症

(RR0.69 [95%CI: 0.56, 0.85])を減らす。制限的な会陰切開は、会陰上部(陰唇)の裂傷を増やす

(RR1.84 [95%CI:1.16, 2.10])。重度の膣会陰損傷(RR0.92 [95%CI: 0.72, 1.18])、性交痛(RR1.02

[95%CI: 0.90, 1.16])、尿失禁(RR0.98 [95%CI: 0.79, 1.12])および痛みの程度については差がなかっ

たことが報告されている。児のアウトカムとしては、1 分後アプガースコア 7 点未満で差はなかっ

た(RR1.05 [95%CI: 0.76, 1.45])。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

4545

CQ22 分娩進行中に回旋異常となった場合、四つん這いは回旋異常の改善に有効か?

【エビデンスと解説】

回旋異常となった場合、分娩第2期に四つん這いの体位をとることで、回旋異常が改善されるという

明らかなエビデンスはなかった。回旋異常による背部痛を軽減するケアとしては、四つん這いの有効

性が認められた。

回旋異常になった場合の四つん這いの効果を検討した研究は少なく、NICE とコクラン SR で採用さ

れたのは分娩第2期に四つん這いを実施する同一の RCT 1件のみであった。この研究によると、分娩期

第2期に四つん這いを実施したことで後方後頭位から前方後頭位に改善した割合では有意差は認めら

れなかったが、回旋異常が改善される傾向があった。また、四つん這いにより背部痛が軽減する効果

が認められ、次回の分娩で四つん這いを実施したいと回答した者も高率であった。なお、母児への害

は認められなかった。

したがって、研究対象者が少なかったため効果が認められなかった可能性があり、今後、研究参加

者を増やした研究が行われることが必要である。

【根拠】

NICE ガイドライン

分娩第2期の体位について検討されたうち、回旋異常との関連について言及しているのは Stremler

ら(2005)の多施設における RCT1件であった。Stremler らは、胎児が後方後頭位である分娩第2期の

初産婦を、四つん這い群(n=70, 研究期間1時間のうち、四つん這いの姿勢を短くても30分は維持す

るよう依頼)、対照群(n=77, 四つん這いを積極的に推奨されず、四つん這い以外で産婦自身が好ん

だ姿勢をとることはできる)に分け、四つん這いの効果を比較した。研究期間から1時間後に前方後

頭位であった(超音波で確定)割合は、2群間に有意差は認められなかった(四つん這い群 vs. 対

照群:11人(16%) vs. 5人(7%),RR 2.42 [95%CI: 0.88, 6.62])。分娩第2期における持続性の背部痛

は、四つん這い群が軽度であった (VAS: p=0.0083; PPI スコア: p=0.014; SF-MPQ スコア: p=0.028)。

母子のアウトカムについて他に有意差は認められなかった。

よって、分娩第2期の四つん這いは産痛が軽減するといういくつかの質の高いエビデンスがあり、

害となる母子のアウトカムは認められなかったとされた。

産婦人科診療ガイドライン

記載なし。

科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

記載なし。

上記以外のエビデンス

3試験(n=2,794)を検討したコクラン SR(Hunter et al., 2009)があったが、採用した3文献のうち

対象が分娩期であったのは、NICE ガイドラインで検討された Stremler らのみであった。なお、NICE

とコクラン SR に記載はなかったが、Stremler らでは、質問紙に回答した124人のうち104人(84%)

が次回の分娩で四つん這いを実施したいと回答していた。

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46 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)46

新生児のケア

Consensus2010 に基づく日本版新生児蘇生法ガイドライン(日本周産期・新生児医学会, 2010)では、

出生直後のチェックポイントから「羊水混濁の有無」が削除され、羊水混濁があり、児に活気がなく

てもルチーンに気管吸引を行う必要はないと改訂された。ローリスク妊産婦への分娩期ケア調査(清

水, 2011)によると、羊水混濁がない場合の出生直後の吸引をほぼ全例実施している施設は、病院 69.0%、

診療所 76.6%、助産所 2.9%であった。 臍帯結紮を行う時期には、児娩出直後や臍帯拍動停止後、胎盤娩出後などがある。ローリスク妊産

婦への分娩期ケア調査(清水, 2011)によると、臍帯結紮の時期について、児娩出直後に実施している

施設は、病院 89.0%、診療所 87.9%、助産所 15.7%であった。臍帯拍動停止後の実施は、病院 8.5%、

診療所 6.1%、助産所 71.4%あった。 早期母子接触とは、母親や父親などの胸の間に児を立位で抱き、肌と肌とを直接触れ合わせた体勢

で行う抱っこ(カンガルーケア・ガイドラインワーキンググループ, 2010)と定義されている。ローリ

スク妊産婦への分娩期ケア調査(清水, 2011)によると、早期母子接触(skin-to-skin contact)をほぼ全

例に実施している施設は、病院 51.7%、診療所 41.5%、助産所 94.4%であった。そのタイミングは、

児娩出後すぐが最も多く66.3%、次いで30分以内が28.4%であった。早期母子接触(skin-to-skin contact)を行う時間は、30 分が最も多く 39.6%、120 分が 25.8%、60 分が 24.8%であった。パルスオキシメー

ターをほぼ全例に使用している施設は、病院 32.7%、診療所 31.1%、助産所 5.9%であった。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

4747

CQ23 新生児の口腔・鼻腔の吸引は必要か?

【エビデンスと解説】

羊水混濁のある元気な新生児に対するルチーンの気管挿管と吸引が新生児のアウトカムを向上させ

るという質の高い根拠は不十分である。また、分娩中の吸引は胎便の誤嚥のリスクを低減するという

エビデンスはなく、新生児の肩甲と体幹娩出前の鼻咽頭の吸引を支持する根拠はない。

新生児の口腔・鼻腔の吸引の有効性を支持する研究はなく、新生児の分娩中吸引(児の頭部娩出後、

肩甲娩出前の吸引)も、新生児の体幹娩出後の吸引も、羊水混濁の有無に関わらず、ルチーンで行う

必要はない。

体幹娩出後の吸引は、出生直後の評価ポイントに異常があれば、蘇生の初期処置を行う(以下の【根

拠】を参照)。

新生児の蘇生は、Consensus 2010 に則って行われるべきであり、全ての分娩に新生児蘇生法を習得

した医療スタッフが新生児担当者として立ち会うことが望ましい(日本周産期・新生児医学会の新生

児蘇生法普及事業小委員会)。

【根拠】

NICE ガイドライン

羊水混濁のある元気な正期産の新生児に対して、気管挿管と気道吸引の方が、口咽頭の吸引を含

むルチーンの蘇生よりも有益かを検討した SR(4 件の RCT、n=2,884)(Halliday, 2005)の結果、児

の死亡率(RR 1.73 [95%CI: 0.37, 8.1])、胎便吸引症候群(以下、MAS)の発生(RR 1.29 [95%CI: 0.80,

2.08])、呼吸器系の症状もしくは呼吸障害(RR 0.87 [95%CI: 0.58, 1.31])、酸素の必要性(RR 1.49

[95%CI: 0.86, 2.60])に関して、有益であるという根拠は示されなかった。つまり、羊水混濁のある

元気な新生児に対するルチーンの気管挿管と吸引が新生児のアウトカムを向上させるという質の高

い根拠は不十分であるという結果であった。

産婦人科診療ガイドライン

CQ407「羊水混濁時に対応は?」にて下記のように推奨されていた。

1. 破水後は羊水混濁時の有無に注意する。(B)

2. 羊水混濁を認めたら、一定時間(20 分以上)分娩監視装置を使用する。(B)

3. 胎児心拍数パターンに異常がないときは、特別の処置は必要としない。(B)

4. 出生後、呼吸障害(新生児仮死や MAS の発生など)に注意する。(B)

科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

RQ13「出生児のルチーンの口腔内吸引」にて検討されていたが、Consensus 2005 を参考にしてい

た。

Consensus 2010 に基づく日本版新生児蘇生法ガイドライン 2010

Consensus 2010 において、羊水混濁があったとしても、出生後に気管内吸引を行うことは児の予

後の改善につながらないという報告があるため、出生直後の評価ポイントに、羊水混濁の有無は含

まれていない。そのため、羊水混濁のある新生児への吸引については勧めていない。分娩中、吸引

に関して、呼吸循環系の合併症の発症の可能性があることから、ルチーンの分娩中吸引は推奨して

いない。

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48 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)48

出生直後の 3 つの評価ポイントは、1.正期産児か、2.呼吸や啼泣は良好か、3.筋緊緊張は良好

か、である。出生直後の評価ポイントで 3 項目全てを認めなかった場合は、ルチーンケアに進む。

ルチーンケアは、1.保温に配慮する、2.気道を確保する体位をとらせる、3.皮膚の羊水を拭き取

る、であり、以上の処置を行ってから更なる評価を行う。これらは母親のそばで行う。

一方、出生直後の評価ポイントのいずれかに問題があった場合は、蘇生の初期処置を行う。初期

処置は以下の通りである:1.保温し、皮膚の羊水を拭き取る、2.気道確保を行う(気道確保の体

位と、胎便除去を含む必要に応じての吸引)、3.優しく刺激する、4.再度気道確保の体位をとる。

蘇生の初期処置を必要とした場合は、30 秒毎に児の評価を行うが、その際、呼吸と心拍の評価をす

るために、右手にパルスオキシメーターを装着する。

胎便による羊水混濁があって、児に活気が無い場合に、MAS 防止策としての出生後の気管内吸引

はルチーン処置にはないが、児の状態かスタッフの熟練度によっては実施してもよい。

上記以外のエビデンス

NICE が吟味したコクラン SR(Halliday et al., 2001)があり、発行年は異なるが、結論に変更点は

ない。

Vain らの RCT では、羊水混濁のある在胎週数 37 週以上の児に対して、肩甲娩出前の口咽頭と鼻

咽頭の吸引を行った場合と吸引を行わなかった場合のアウトカムを比較した(n=2,514)。それによ

ると、次の内容に関して両群に差はなかった:MAS(RR 0.9 [95%CI: 0.6, 1.3])、機械的人工換気(RR

0.8 [95%CI: 0.4, 1.4])、死亡率(RR 0.4 [95%CI: 0.1, 1.5])、分娩室での気管挿管と吸引・陽圧換気の

必要性(RR 1.1 [0.8, 1.4])、その他の呼吸障害(RR 1.3 [0.9, 1.8])、1 分後のアプガースコア(p=0.29)、

5 分後のアプガースコア(p=0.29)、MAS による酸素療法の期間(p=0.91)・機械的人工換気の期間

(p=0.49)・入院期間(p=0.14)。これらより、羊水混濁のある正期産児に対するルチーンの口咽頭・

鼻咽頭の吸引は、MAS を予防しないと結論付けていた。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

4949

CQ24 臍帯結紮の時期は、臍帯早期結紮と臍帯遅延結紮で、児の予後に違いはある か?

【エビデンスと解説】

臍帯遅延結紮を行うことにより、新生児の貧血の発生を減少させる一方で、高ビリルビン血症の発

生を増加させるというエビデンスがある。

NICE のガイドラインでは、臍帯遅延結紮(delayed cord clamping)は新生児の貧血の発生を減少さ

せたり、高ビリルビン血症の発生を増加させたりするという報告があるが、その他の長期的なアウト

カムについての報告は様々で一貫してないと述べられており、臍帯結紮のタイミング、母子両方の利

点とリスクのバランスを調査するためには更に研究を進めるべきであると結論づけていた。

また、最新のコクラン SR(McDonald et al., 2009)でも、少なくとも 2~3 分の臍帯結紮の遅れは、

分娩後出血(post partum hemorrhage; PPH)のリスクを増加させず、加えて臍帯遅延結紮(late cord

clamping)は、特に栄養状態の悪い地域における新生児にとって、臨床的に価値のある鉄分レベルを

向上させるという利益もある、一方で光線療法が必要な黄疸のリスクも増加させると報告していた。

黄疸に関与することとして、新生児は生理的多血症であることが挙げられる。新生児の血液量(胎

盤-胎児間輸血の量)は、臍帯結紮の時期による影響が最も大きいとされ、正常新生児の血液量は、

出生後直ちに結紮した場合 70ml/kg であるが、1 分後では 85ml/kg、3 分後では 90ml/kg となる。この

ように臍帯結紮が遅れると多血となる児が多くなる(仁志田,2004)。Consensus2010 日本版新生児蘇

生ガイドラインによると、日本では人種的に新生児期のビリルビン値は高く、ビリルビンウリジン 2

リン酸グルクロン酸転移酵素遺伝子変異の頻度が高いことが黄疸と関係があることが分かっている。

このことより、日本では児の光線療法の頻度が増加する可能性が示されている。

したがって、日本における臍帯結紮のタイミングは母子両方の利点とリスクを考慮し、更なる研究

が必要である。

【根拠】

NICE ガイドライン

SR 1 件と低-中所得の国々での RCT3 件が採用された。高所得の国々での研究から臍帯遅延結紮

(delayed cord clamping)は新生児の貧血の発生を減少させたり、高ビリルビン血症の発生を増加さ

せたりするという中程度レベル(middle-level)のエビデンスがある。その他の長期的なアウトカムに

ついての報告は様々で一貫していない。低所得の国々では、臍帯遅延結紮(delayed cord clamping)

は新生児の貧血の発生を減少させるという高いエビデンスレベル(high-level)の報告がある。エビデ

ンスの多くは貧血がより蔓延している低所得の国々での結果であり、高所得の国々での研究は 1 件

を除いて、全て RCT ではない。臍帯クランプのタイミングに関して一定しない見解はこの問題をさ

らに複雑にしており、貧血が蔓延していない高所得の国々での新生児への影響はあまり知られてい

ない。

産婦人科診療ガイドライン

記載なし。

科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

記載なし。

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50 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)50

Consensus2010 日本版新生児蘇生ガイドライン

ILCOR の Consensus 2010 では蘇生を必要としない新生児では、少なくとも 1 分以上の臍帯遅延結

紮を推奨している。しかし日本では人種的に新生児期のビリルビン値は高く、ビリルビンウリジン

2 リン酸グルクロン酸転移酵素遺伝子変異の頻度が高いことが黄疸と関係があることが分かってい

る。日本で臍帯遅延結紮を導入した場合、光線療法の頻度の増加とそれに伴う児の入院期間の延長

が危惧されるとしている。日本で臍帯遅延結紮を導入するかは、質の高い臨床研究の結果を待って

判断する必要があり、それまでは日本での採用は保留することとする(田村,2010)。

上記以外のエビデンス

11 件の RCT(n=2,989)を検討した最新のコクラン SR(McDonald et al., 2009)を採用した。母体の

アウトカムとして、臍帯早期結紮群と臍帯遅延結紮群との間に、500ml 以上の分娩後出血(RR 1.22

[95%CI: 0.96, 1.55])、1000ml 以上の重篤な分娩後出血(n=898, RR 0.84 [ 95%CI: 0.48, 1.49])に関する有

意差はみられなかった。また、児のアウトカムとして、臍帯遅延結紮群に利点と害の両方がみられ

たとの報告がある。害としては、臍帯早期結紮群は臍帯遅延結紮群に比べて、出生後、黄疸のため

光線療法が必要な新生児が有意に少なかった (RR0.59 [ 95%CI: 0.38, 0.92])。一方、利点としては、

フェリチン(体内に鉄を貯蔵する役目をするタンパク質)値が 6 カ月後においても、臍帯早期結紮群

の方が臍帯遅延結紮群に比べて低い値を維持していた(RR-11.80 [95%CI: -19.53, -4.07])ことが報告さ

れている。

また、この CQ に関連するコクラン SR として、分娩時、臍帯クランプする前の新生児と胎盤の

相対的な位置の違いによる新生児および母体のアウトカムへの影響に関する SR (Palethorpe et al.,

2012)があったが、採用基準に当てはまる文献はひとつもなかったという結論であった。

Note:

臍帯早期結紮(early cord clamping)…児の出生後 60 秒以内に臍帯をクランプすること

臍帯遅延結紮(delayed cord clamping/late cord clamping)

…児の出生後 1 分以上してから、あるいは臍帯の拍動が消失してから臍帯をクランプする

こと 注)McDonald SJ, Middleton P(2008)による。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

5151

CQ25 出生直後に行う早期母子接触(skin-to-skin contact)は母子の予後に有効か?

【エビデンスと解説】

早期母子接触(skin-to-skin contact、以下 SSC とする)は、母乳育児や愛着行動、児の身体状況の安

定等への効果に関するエビデンスがある。

出生直後に行う SSC とは、母子の状態が安定している場合に、羊水等を拭きとった出生直後の児を、

母親の素肌にお互いの胸と胸とが合うように抱くことであり、児は保温のために温かい掛け物で覆わ

れる。

SSC はコクラン SR やコクラン以降の SR おいて母乳育児や愛着行動、児の身体状況の安定等への効

果が有意に認められており、実施が薦められる。

但し、SSC 中の児の酸素飽和度の低下も有意に認められている。しかし、観察方法(モニタリング、

または常時観察)を比較した研究はなかった。根拠と総意に基づくカンガルーケア・ガイドラインでは

実施中に重大な急変が生じた報告もあることなどから「ご家族に対する十分な事前説明と、機械を用

いたモニタリングおよび新生児蘇生に熟練した医療者による観察など安全性の確保をした上で」の実

施を推奨している。したがって、事前に家族へ説明し同意を得た上で SSC を実施し、実施中は新生児

蘇生を行える医療者が、児の観察を常に行うべきである。臨床において児を常に観察し続けることは

難しいため、機械を用いたモニタリングも行うべきである。新生児蘇生を行える医療者とは、新生児

蘇生の研修を定期的に受けていることが望ましい。

なお、出生直後の酸素飽和度は不安定であり、Consensus 2010 日本版新生児蘇生法(NCPR)ガイド

ラインでは Dawson ら(2010)を引用し、出生後 10 分までには経皮的酸素飽和度は安定すると指摘し

ている。酸素投与を実施している場合も、出生後 1 分で 60%以上、3 分 70%以上、5 分 80%以上、10

分 90%以上を下限として、この下限をこえても経皮的酸素飽和度が上昇傾向にあれば 95%に達してい

なくても酸素投与を中断してもよいとしている(Dawson らでは、出生後の児は早期産児・帝王切開

児は蘇生用カートに寝かされ、他は母親の胸に寝かされた。酸素投与や補助換気が必要であった場合・

先天性の奇形があった場合は対象から除外された)。

SSC 開始のタイミングや持続時間については研究によって違いが見られ、より効果的な方法は確定

できない。しかし、科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドラインでは「少なくとも出

生直後 1 時間以内は、児の計測も含め母子分離せずに、早期接触すること」、根拠と総意に基づくカン

ガルーケア・ガイドラインでは「出生後できるだけ早期にできるだけ長く実施すること(注釈:「出生

後 30 分以内から、出生後少なくとも最初の 2 時間、または最初の授乳が終わるまで、カンガルーケア

を続ける支援をすることが望まれる」)が奨められている。

出生直後の SSC については、上述のように研究によって開始のタイミングや持続時間の違いが見ら

れ、また、安全性について検討した研究が少ない。今後、より効果の得やすく安全な実施方法につい

ての研究が期待される。

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52 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)52

【根拠】

NICE ガイドライン

NICE ガイドラインで採用された文献はなかったが、児の出生後できるだけ早期に児と SSC を行

うよう支援され、SSC を行っている間、保温のために児は拭かれ、温かく乾いたブランケットやタ

オルで覆われているべきであるとされた。

産婦人科診療ガイドライン

記載なし。

科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン

RQ14「早期母子接触をすること」として、SR2 件(Moore et al., 2007; Carfoot et al., 2003)、RCT3

件(Sloan et al., 1994; Mizuno et al., 2004; Carfoot et al., 2005)、対照研究 1 件(Righard et al., 1990)、研

究報告 1 件(島田他,2006)が採用された。出産、出生直後の母子の早期接触は、母親の愛着行動

(児の顔を見つめる、キスする、話しかける、抱っこする、抱きしめるなど)を増し、愛着形成を

促進する、母親は早期接触を楽しい経験として記憶し次回の出産でもそれを望んでいる、児への影

響としては母親の母乳への反応を促進する、母乳育児率が上がる、授乳期間を長くする、特に SSC

では児の体温は低下しない、感染予防の観点からも有用性が示唆されている、呼吸数の低下や心拍

数の低下の可能性があるが結論は出ていない、それ以外の SSC による悪影響は報告されていないこ

とが示された。また、早期接触のタイミングについては、出産直後の児が覚醒している時間帯であ

る必要があり、最初の吸啜は生後 20 分から生後 55 分位までに殆どおきること、生後 2 時間以降で

は児が眠ってしまうことより、出産後 2 時間前後に行うことが望ましいとされた。

そして推奨は、「出産、出生後の母子の早期接触、特に SSC は児の体温が低下せず、母の愛着形

成を促進して愛着行動を増し、母親の満足感が高く、母乳育児の率を上げ授乳の期間も長くする。

母子共に状態が安定している場合、少なくとも出生直後 1 時間以内は、児の計測も含め母子分離せ

ずに、早期接触することが薦められる(推奨の強さ B)」、「母子の早期接触は衣服を介してではな

く、肌と肌の接触により行うことが奨められる(推奨の強さ C)」とされた。

根拠と総意に基づくカンガルーケア・ガイドライン

SSC の有効性と安全性に関する世界的な知見を参考にしながら、日本の診療現場に受け入れられ

るガイドラインを作るという趣旨で作成された「根拠と総意に基づくカンガルーケア・ガイドライ

ン(2009)」を採用した。

SSC を行う前提条件として、SSC を行う際にはご家族の心理社会的な支援を整える、実施に先立

ちご家族に情報提供を十分行いケア実施の希望を確認する、「赤ちゃんが中心である Child-centred

Care」が原則である、ケアの前後数時間を含めて安全面に最大限の配慮を行う、が示され、これら

条件が十分に守られない時は、形だけの SSC になり本来の効果を期待できない恐れがあるとされた。

健康な正期産児への SSC に関して採用されたのは SR2 件(Moore et al., 2007; Mori et al., 2010)

であった。生後早期の肌と肌との接触の有効性は母乳育児、児の体のサイン、母親の愛着行動に有

効であるという比較的質の高い科学的根拠が示された。一方、実施のタイミングや実施時間につい

ては研究間で統一されておらず、実施対象については後期早産児や母親以外の家族による SSC の抱

っこについての報告が少なかったことから、これらについては一致した見解は得られなかった。安

全性については、生後早期の SSC の最中に重大な急変が生じたり、医療訴訟係争中の例も少なくな

いという報告や調査が、また、健康な正期産児においても SSC 中に酸素飽和度が低下することが示

された。そのため、実施中の呼吸、酸素飽和度モニタリングは可能な限り厳重に行い、安全性に対

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

5353

して最大限配慮する必要があると指摘された。よって推奨は、「ご家族に対する十分な事前説明と、

機械を用いたモニタリングおよび新生児蘇生に熟練した医療者による観察など安全性の確保をした

上で、出生後できるだけ早期にできるだけ長く、ご家族(特に母親)と SSC をすることが奨められ

る(推奨グレードB)」とされた(「安全性の確保」については「今後さらなる研究、基準の策定が

必要」、「出生後できるたけ早期にできるだけ長く」については「出生後 30 分以内から、出生後少な

くとも最初の 2 時間、または最初の授乳が終わるまで、SSC を続ける支援をすることが望まれる」

と注釈された)。

上記以外のエビデンス

コクラン SR(Moore et al., 2012)、SR(Mori et al., 2010)を採用した。

コクラン SR では正期産または後期の早期産児(妊娠 34~37 週)の新生児と母親が対象の 34 試

験(n=2,177)が検討された。SSC 群は対照群と比較して、有意に出生後 1 カ月から 4 カ月に母乳育

児が行われ(OR1.82 [95%CI: 1.08, 3.07])、母乳育児期間が長く(WMD42.55 [95%CI: -1.69, 86.79])、

母親の愛着行動が良好であり(SMD0.52 [95%CI: 0.31, 0.72])、児の啼泣時間がより短く(WMD-8.01

[95%CI: -8.98, -7.04])、出生後 75-90 分の児の血糖値が高く、(WMD 10.56,[ 95%CI:8.40, 12.72]、後期

早期産の児の場合は心肺状態がより安定した(WMD2.88 [95%CI: 0.53, 5.23])。早期の SSC に関する

否定的な結果は認められなかった。なお、SSC の実施開始時期や実施持続時間は各試験によって異

なっていたが、SSC である点は統一されていた。

Mori らの報告では 23 試験(RCT5、コホート研究 4、クロスオーバー研究 1、相関研究 13)が採

用され、SSC による児の体温・心拍数・経皮的酸素飽和度への影響が検討された。その結果、SSC

前と比べ、SSC 中・後において心拍数では違いは認められなかったが、体温は有意に上昇した(SSC

中: WMD0.22°C [95%CI: 0.18, 0.27], p < 0.001;SSC 後: WMD 0.14°C [95%CI: 0.09, 0.18], p < 0.001)。

一方、児の酸素飽和度は、SSC 前と比べて、SSC 中に有意に低下した (WMD -0.60% [95%CI: -1.05,

-0.15] p=0.01)。

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54 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)54

分娩第 3 期以降のケア

分娩第 3 期の積極的管理として、子宮収縮薬の投与、臍帯の牽引、児娩出後の子宮マッサージが挙

げられる。ローリスク妊産婦への分娩期ケア調査(清水, 2011)によると、ルチーンで子宮収縮薬投与

を行っている施設は、病院 50.4%、診療所 63.1%、助産所はオープンシステムを実施している施設の

みであった。収縮剤の投与時期は、「胎盤娩出後」が 34.3%、「児娩出から胎盤娩出の間」が 32.5%、

「児娩出直後」が 18.1%、「胎盤娩出時」が 15.0%であった。使用する子宮収縮剤は、「マレイン酸メ

チルエルゴメトリン注射」が 49.3%と最も多く、次いで「オキシトシン」投与が 24.1%であった。 臍帯の牽引をほぼ全例に行っている施設は、病院 14.5%、診療所 24.2%、助産所 4.3%であった。児

娩出後の子宮マッサージをほぼ全例に実施している施設は、病院 23.9%、診療所 33.3%、助産所 7.1%であった。

第1度会陰裂傷の対応として、ほぼ全例に縫合を行っているのは、病院 81.0%、診療所 83.3%であ

った。助産所の 74.3%はクレンメを使用していた。第 2 度会陰裂傷の縫合は、病院 100.0%、診療所

96.7%であった。助産所では、第 2 度会陰裂傷の縫合をほぼ全例に実施している施設は 15.2%、ケー

スにより実施している施設が 39.4%、縫合しない施設は 30.3%であった。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

5555

CQ26 第1度、第2度会陰裂傷は、縫合が必要か?

【エビデンスと解説】

第 1 度、第 2 度会陰裂傷を縫合した方がよいか否かに関する十分なエビデンスはない。

NICE では 1 件の小規模の RCT の結果を根拠に、第 1 度裂傷で断面があっている場合以外は、縫合

することを奨めている。1 件の RCT は、初産婦を対象に第 1 度、第 2 度会陰裂傷を縫合した群としな

い群の 6 週間後の完全癒合(REEDA スコア 0 点)を比較したところ、縫合した群は 84%であったの

に対して、しない群は 44%であった。しかし、この RCT では、初産婦のみを対象にしており、さら

に第 2 度裂傷の産婦が 7 割であり、第 1 度裂傷と第 2 度裂傷を分けての分析は行われていない。2011

年に発行されたコクラン SR では、2 件の RCT(うち 1 件は前述の RCT)を採択しているが、アウト

カムの違いにより統合されておらず、第 1 度、第 2 度会陰裂傷を縫合した方がよいかどうかのエビデ

ンスは不十分であると結論づけている。

なお、クレンメの使用など縫合以外の方法のエビデンスは、見当たらなかった。

【根拠】

NICE ガイドライン

第 1 度裂傷の場合、傷の断面が合っている場合を除いては、治癒を促進するために縫合した方が

よい。第 2 度裂傷の場合も、治癒を促進するために筋肉を縫合した方がよい。会陰縫合は、感染と

出血のリスクを最小限にするために、できるだけ早く行った方がよい。

第 1 度、第 2 度会陰裂傷を縫合しないと、6 週間後の傷の治癒が悪いという数は少ないが高いエ

ビデンスレベルがある。長期的な帰結については、エビデンスはない。出産後の会陰縫合の時期に

ついてのエビデンスはない

産婦人科診療ガイドライン

記載なし。

快適な妊娠・出産のガイドライン

記載なし。

上記以外のエビデンス

コクラン SR“Surgical repair versus non-surgical management of spontaneous perineal tears”では、2 件の

RCT(154 名の女性を含む)があったが、同一のアウトカムで報告されていなかったので、統合は

できなかった。しかし、2 群で痛みの発生と創部の合併症、退院時とその後の痛み、性交の再開に

ついて差は認められなかった。鎮痛剤の使用は研究によって異なっていたが、1 件の研究では縫合

群に多かった。もう 1 件の研究では、非縫合群に創部離解と創部の断端が合わない女性が多かった

が、非縫合群には母乳育児の女性の割合が高かった。

Note:

第 1 度:会陰皮膚、膣粘膜に限局し、筋層には達しない裂傷 第 2 度:球海綿体筋、浅会陰横筋などの会陰筋層に及ぶが、外肛門括約筋には達しない裂傷

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56 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)56

CQ27 分娩第3期の積極的管理と待機的管理に違いはあるか?

【エビデンスと解説】

分娩第 3 期の積極的管理とは、分娩後出血を防ぐために、子宮収縮剤を予防的に投与し、臍帯を児

娩出直後に切断した上、臍帯を注意深く牽引して胎盤を娩出させる方法である。それに対して、待機

的管理とは、臍帯の拍動を待って切断し、自然に胎盤を娩出させる。

最新のコクラン SR によると、積極的管理は 1000ml 以上の出血を減らす効果がある。しかし、拡張

期血圧の上昇、嘔吐の増加といった副作用があることから、医療環境によって積極的管理か待機的管

理かを決めてよいとされている。

緊急搬送体制が整備されている施設にて、分娩後出血のリスクが低い場合は、待機的管理でよい。

しかし、いつでも大量出血に対応できるよう、日ごろから緊急時の対応に関するトレーニングと物品

の準備が必須である。

【根拠】

NICE ガイドライン

分娩後出血を予防するために、分娩第 3 期の積極的管理(臍帯早期切断+臍帯の注意深い牽引+オ

キシトシン 10 単位の筋肉内注射)の実施が推奨される。妊産婦には、分娩第 3 期の積極的管理は出

血のリスクを下げ、第 3 期を短縮することを説明する。しかし、ローリスク妊産婦で待機的管理を

希望する場合は、その選択が支持されなくてはいけない。出血がある、胎盤が 1 時間たっても娩出

されない、分娩第 3 期を早く終えたいとの希望があった場合は、待機的管理から積極的管理へ変更

する。なお、臍帯牽引または子宮の触診は、積極的管理においてオキシトシンを投与してから実施

する。

産婦人科診療ガイドライン

記載なし。

快適な妊娠・出産のガイドライン

記載なし。

上記以外のエビデンス

最新のコクラン SR(2011)の改訂では、結論が大きく変更されている。ハイリスク、ローリスク

を含めた産婦に対する分娩第 3 期の積極的管理の効果については、待機的管理と比べ、1000ml 以上

の分娩時出血(RR0.34 [95% CI 0.14, 0.87])、分娩後の母体のヘモグロビン 9g/dl 以下(RR 0.50 [95%

CI 0.30, 0.83])を有意に減少させた。また 500ml 以上の分娩時出血、平均出血量、輸血、治療的子

宮収縮薬の使用も減少させたが、拡張期血圧、分娩後の嘔吐、後陣痛、退院までの鎮痛薬の使用、

出血による再入院を増加させた。分娩後出血に関するローリスク産婦に限定すると、1000ml 以上の

分娩時出血および分娩後の母体のヘモグロビン 9g/dl 以下について差はなかったが、その他は同様

の結果であった。結論として、質の高いエビデンスはなかったこと、ハイリスク、ローリスクを含

めた産婦において 1000ml 以上の分娩時出血を減らすことができるが同時に副作用も明らかになっ

た。よって、積極的管理と待機的管理の利益と害を女性に説明し、意思決定を支援すべきと示され

ている。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

5757

CQ28 予防的な子宮収縮薬は、何を、いつ、どのように投与したらよいのか? 【エビデンスと解説】

分娩後出血のリスクのある産婦に対し、出血予防のための子宮収縮薬投与は効果的である。予防的

な子宮収縮薬の投与は、1000ml 以上の出血の発生および治療的な子宮収縮薬の使用を有意に減らすこ

とができる。子宮収縮薬は、リスクに応じてオキシトシン 5 単位または 10 単位を投与する。麦角アル

カロイドはオキシトシンと比べ、胎盤用手剥離および血圧上昇が増加するため、オキシトシンの方が

望ましい。日本における子宮収縮薬の投与の時期は、胎盤娩出前、胎盤娩出後において作用、副作用

とも差はないので、どちらでもよい。投与方法としては、筋肉内注射または静脈内注射のどちらが効

果的かについてはエビデンスがなかった。

なお、出血多量の際は、産科危機的出血への対応ガイドラインに従う。

【根拠】

NICE ガイドライン

予防的なオキシトシン投与の効果は、500ml 以上の出血(RR0.50, [95%CI: 0.43, 0.59])、1000ml 以

上の出血(RR0.61, [95%CI: 0.44, 0.87])、治療的な子宮収縮薬の使用(RR0.50, [95%CI: 0.39, 0.64])

を減少させるが、分娩第 3 期所要時間、用手剥離の必要性、悪心については変わらなかった。オキ

シトシンと麦角アルカロイドを比べると、500ml 以上の出血、1000ml 以上の出血、治療的な子宮収

縮薬の使用、分娩第 3 期所要時間について差はなかったが、オキシトシンは胎盤用手剥離の必要性

を減らした。

産婦人科診療ガイドライン

分娩後出血の予防的な介入については記載なし。CQ316 の「分娩時大出血への対応は?」にて、

産科出血量の評価(計測出血量と shock index にて評価)、産科大出血への対応(産科危機的出血へ

の対応ガイドライン)、輸血の実際について記載されている。出血多量の場合の対応は、産婦人科診

療ガイドラインに則して行う。

快適な妊娠・出産のガイドライン

記載なし

上記以外のエビデンス

子宮収縮薬については、コクラン SR(Cotter et al., 2004)の予防的オキシトシンに関する結果は、

500ml 以上の出血(RR0.50 [95%CI: 0.43, 0.59])、治療的なオキシトシン投与の必要性(RR0.50 [95%CI:

0.39, 0.64])を減らす効果が認められた。オキシトシンは麦角アルカロイドを比較すると、効果の差

は些少であるが、副作用の胎盤用手剥離(RR0.57 [95%CI: 0.41, 0.79])および血圧上昇(RR0.53

[95%CI: 0.19, 1.52])が少ない。

麦角アルカロイドの効果についてコクラン SR(Liabsuetrakul et al., 2011)では、麦角アルカロイ

ドの経静脈投与群では平均出血量(MD-83.03ml [95%CI: -99.39, -66.66ml])、500ml 以上の出血

(RR0.38 [95%CI: 0.21, 0.69])、子宮収縮薬の治療的使用(RR0.25 [95%CI: 0.10, 0.66])が有意に減少

した。胎盤遺残、胎盤用手剥離、または両方については一貫した結果が認められなかった。麦角ア

ルカロイドは血圧の上昇、鎮痛を必要とする産後の痛みを有意に増加させたが、嘔気嘔吐、頭痛、

子癇発作では差がなかった。エルゴメトリンの経口投与では、プラセボ群と比較し効果がなかった。

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58 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)58

子宮収縮薬の投与時期は、コクラン SR(Soltani et al., 2010)では、胎盤娩出前の子宮収縮薬の投

与と胎盤娩出後の子宮収縮薬の投与を比べ、500ml 以上の出血、遺残胎盤、分娩第 3 期の長さ、産

後出血量、ヘモグロビン値の変化、輸血、追加の子宮収縮剤投与、母体低血圧の発生、産後多量出

血(1000ml 以上)において有意差がなかった。

コクラン SR(Oladapo et al., 2012)にて、子宮収縮薬の投与方法は、筋肉内注射と静脈内注射の

どちらがよいかについては、適切な研究がないという結果であった。

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J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, Supplement, 2012

エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期 2012

5959

CQ29 児娩出後からの子宮のマッサージは、出血を予防することができるか? 【エビデンスと解説】

子宮マッサージの出血予防に対する効果はなかった。これはオキシトシンを使用した場合でも、使

用しなかった場合においても、子宮マッサージの効果はなかった。

子宮マッサージとオキシトシン使用を比較すると、子宮のマッサージはオキシトシン使用と比べ、

500ml 以上の出血が 2~3.5 倍多く、追加の子宮収縮剤の使用も 1.5~3 倍多かった。オキシトシン使用

した場合、持続的な子宮のマッサージをしてもさらなる効果はなかった。子宮のマッサージを実施し

た産婦の半数に痛みや不快感が生じていた。

これらのエビデンスから、分娩後出血のリスクが高い場合など出血を予防する必要がある場合は、

子宮のマッサージをするよりもオキシトシンの使用(血管確保されている場合は静脈からの注入、血

管確保されていない場合は筋肉注射)が必要である。オキシトシンを使用した場合、子宮のマッサー

ジは、さらなる効果が期待できずかつ産婦に痛みが生じるため、行わない方がよいと考えられる。

【根拠】

NICE ガイドライン

産後出血の緊急対応の推奨は、「適切なヘルプを求める」「子宮マッサージの実施」「血管確保」「子

宮収縮剤の投与」をすべきであると記述されているが、子宮のマッサージのエビデンスについては

示されていない。

産婦人科診療ガイドライン

記載なし。

上記以外のエビデンス

コクラン SR において 1 件の RCT が採用され、200 名の女性を分娩第 3 期の積極的管理の後に子

宮マッサージを受ける群と受けない群に無作為に割りつけられた。500ml 以上の出血した女性の数

は少ないため、信頼区間は広く、統計学的有意差は認められなかった(RR0.52 [95%CI: 0.16, 1.67])。

どちらの群も癒着胎盤はなかった。30 分での平均出血量は、子宮マッサージ群のほうが少なかった

(MD-41.60 ml [95%CI: -75.16, -36.09])。追加の子宮収縮剤の必要性は、子宮マッサージ群に少なか

った(RR 0.20 [95%CI: 0.08, 0.50])。対照群に 2 例の輸血があった。

Abdel-Aleem ら(2010)は、出産後出血を減らすため胎盤が娩出する前に持続的に子宮底をマッ

サージすることの効果を検討するため、エジプトと南アフリカにて RCT を行った。1964 名の女性

は 3 群(オキシトシンの筋肉注射、持続的な子宮底マッサージ、その両者)にランダムに割りつけ

られ、分娩後 30 分以内の出血が記録された。分娩後 30 分以内の 300ml 以上の出血は、マッサージ

とオキシトシン群(エジプト:RR1.88 [95%CI: 1.29, 2.74]、南アフリカ:RR1.3 [95%CI: 1.00, 1.68])

そしてオキシトシンン群(エジプト:RR1.7 [95%CI: 1.11, 2.61], 南アフリカ:RR2.24 [95%CI: 1.54,

3.27])よりマッサージ群の方が有意に多かった。エジプト、南アフリカにおいて、追加の子宮収縮

剤の使用は、他の 2 群に比べ、マッサージ群が有意に多かった。結論としては、子宮底マッサージ

は、分娩後出血を減らすためにオキシトシンよりも効果は低い。オキシトシンが使われている時は、

マッサージによるさらなる効果は見込めない。オキシトシンを使用しない子宮底マッサージの効果

は検討されていない。また、マッサージ群の女性の 54.0%が痛みや不快感があった。

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60 日本助産学会誌 26巻 別冊(2012)60

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エビデンスに基づく助産ガイドライン—分娩期 2012発行日:2012(平成24)年12月31日

編集・発行:一般社団法人日本助産学会 ガイドライン委員会

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