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教室内でできる体力づくり(下)-ストレッチング- URL DOI...明治大学教養論集 通巻210号 体育学(1988)pp.1-23 教室内でできる体力づくり(下)

Jan 29, 2021

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  • Meiji University

     

    Title 教室内でできる体力づくり(下)-ストレッチング-

    Author(s) 山口,政信

    Citation 明治大学教養論集, 210: 1-23

    URL http://hdl.handle.net/10291/12210

    Rights

    Issue Date 1988-03-01

    Text version publisher

    Type Departmental Bulletin Paper

    DOI

                               https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/

  • 明治大学教養論集 通巻210号 体育学(1988)pp.1-23

    教室内でできる体力づくり(下)

    一ストレッチングー

    山 ロ 政 信

    1 はじめに

     社会生活の変化が人間の保ってきた生物としての機能を奪い,健康生活を脅

    かしはじめて久しい。

     その中にあって,1960年代には生涯を通してスポーツに親しむことが見直さ

    れ,チャンピオン・スポーツとともに大衆スポーツ,レクリェーション・スポ

    ーツ,市民スポーツに参加することを呼びかける動きが始まった。これがいわ

    ゆる西ドイツにおける「ゴールデン・プラン」(Golden Plan)である。次い

    で,スウェーデンでは心身のアンバランスやひずみを正そうとする「トリム運

    動」(Trim Movement)が起こり, E C諸国やアメリカにも伝播し,1987年

    の第20回ユネスコ総会においては「体育・スポーツ国際憲章」を採択し,生涯

    スポーツの振興にあたった。

     一方,わが国においては,1961年に「スポーツ振興法」を制定し,1964年の

    オリンピック東京大会を契機に「国民体力つくり事業団」などが発足し,体育

    の日記念行事などが行われるようになった。また1972年には文部大臣の諮問機

    関である保健体育審議会が「体育スポーツの普及振興に関する基本方策につい

    て」を答申するなど,みんなのスポーツ(Sports for a11)に対する政策面に

    おける機運は高まってきたが,これらの政策は具体性に欠け,市民の反応は

    十分とはいえなかった。これに対しアメリカにおけるフィットネス・ブーム

                   ー 1一

  • (Physical丘tness crase)の契機となったK・クーパー(Cooper)によるエア

    ロビクス(Aerobic Exercise)が紹介されるや否や,市民のスポーツ参加は急

    激に増加していった。

     しかし,ブ藁ムには必ずといらてよいほど行き過ぎが生じる。ジョキング

    (Jogging)に例をとっても走り過ぎ症候群にみられる膝や足首,そして腰の

    障害に悩む者が増え,心臓発作による急死も時として発生している。その一方

    で,単一種目に飽き足りない者は更に激しいトライアスロン(Triathlon)と

    いった複合種目に向tJて走り出しているのも事実である。

     このような現状にあって,近年,より穏やかで安全な運動であり,より日常

    的なウォーキングに目を向ける動きが活発となり,エクナサイズtウォーキン

    グ(Exercise Walking)として市民の支持を得るようになってきた。ウォー

    キングはクーパーのエアロビクスにも紹介されているものであって目新しいも

    のではないが,このムーブメントは体力的に十分でない人々がおもしろさめあ

    まリジョキングなどで無理をし過ぎた結果派生したものであるとも解釈されよ

    う。いずれにしても,競技者はもとより健康のためと称して行うスポvツも,

    段階を踏んで歪しい手段と方法を採用することが大切であることが再認識され

    てきた結果どいえよう。

     さて,.もう一っのブームにヌトレッチング(Stretching)がある。これはス

    ポーツを行う際の準備運動や整理運動としてチャンピオンを目指す選手や健康

    スポーツを行う市民およびスポーツを行わない人々の心身のリフレッシュ,さ

    らには障害者のリハビリテーションに至るまで万人に共通する柔軟性の養成を

    主眼とした体力づくりとして有益なものである。 .

    ,本稿においては,教室の限られた施設を用いて児童・生徒・学生および教職

    員が気軽にできる体力づくりであるストレッチングを採りあげることにした。

     ll柔 軟 性

    1 体力構成要素としての柔軟性

    体力とは身体が発揮できる能力で「生物的たくましさ」である。

                  -2 一

  •  柔軟性はこの体力を構

    歳する重要な要素で,身

    体的要素における行動体

    力機能の1つである(表

    1)。そして筋力や持久

    力などがエネルギーの発

    現に関する体力であるの’

    に対し,柔軟性は協応性

    などとともにサイバネテ

    ィックスからみたエネル

    表1 体力の構成 (猪飼道夫)

    力.

    糞神劉驚臨_一に          対する抵抗力

    ギーの効率的な使い方,つまり技術にかかわる体力であるといえる。

    2¶ _軟性を規定する因子

     柔軟性とは関節角度を大きくし,運動領域を広くすることのできる可動性を

    意味している。この柔軟性を規定する因子には次の3つがある。

     ① 関節の構造

     ② 関節に関係する靱帯や筋肉

     ③ その他の結合組織

     なお,これらの因子に付随して,年齢や環境温度などが二次的因子となって

    いる。

    3 スポ・・1一ツの場における柔軟性

     スポーツ競技における柔軟性(Suppleness)は,スピード (Speed),筋力

    くStrength),スタミナ(Stamina),技術(Skill)とともに勝利の「5T-S」と

    よばれ,競技者にとって重要な競技力要素の一端を担っている。

     わが国における一般的なトレーニングではスピードや持久力の養成に重点を

    おき,柔軟性を軽視する傾向にあった。しかし,より速く,より大きく,そし

    て躍動的な動作を必要とする種目においては,リラクセーションやコンセント

    レーションの意味からも柔軟性は不可欠な要素である。同時に柔軟性は動作を

    行う際の疲労を遅らせることができ,持久力を必要とする種目にとっても大切

                    一 3 一

  • な要素となっている。更に高度に発達した運動技術や体力の養成のために,ス

    ポーツ選手のトレーニングは高度化の一途を辿っており,彼らのトレーニング

    における使い過ぎ症候群(Overuse)が問題化しているが,柔軟性を高めるこ

    とによって疲労回復や傷害の予防と治療など身体的にはもちろん精神的な効果

    をも期待できることに注目すべきである。

    4 生活の場における柔軟性

     柔軟性はスポーツの場にだけ必要なのではなく,一般の人々が日常生活をエ

    ネルギッシュに送るためにも重要な役割を果している。

     ストレス社会における片寄った生活により,頭痛,肩こりや腰の痛みなどを

    訴える人が多くなっている。また,ちょっとしたはずみで転倒し,捻挫や骨折

    を起こす例も多い。これらは柔軟性が失われた結果,筋肉が固くなり,過緊張

    の状態にあって,心身の行動領域が狭められていることが主な原因となってい

    る。

     したがって,日常生活の場においても柔軟性を高めることによって血流量の

    増加を促進し,疲労物質を除去して心身ともに臨機応変な行動がとれるように

    することが望まれる。

    皿 柔軟性の養成法とストレッチング

    1 従来の柔軟体操

     柔軟体操といえば,号令に合わせて1人もしくは2人組になり,はずみをつ

    けて行う方法(Ballistic StretchingもしくはDymanic Stretching)が一般的

    であった。この方法は筋肉や靱帯の収縮と伸展を反復することによって体温を

    高め,次に行う主運動に対する合目的的な動作の予行となるものである。しか

    し時として筋肉やその結合組織などの可動範囲を逸脱し,むしろ緊張を増加さ

    せて行われている例がみられる。このような場合には筋肉などが伸ばされ過ぎ

    るのを防こうとして筋紡錘や腱紡錘にょる伸展反射が生じ,その成果を得るこ

    とができないばかりかマイナスに作用するので注意が必要である。

    2 ストレッチンゲ

                   ー 4 一

  •  前記のはずみを使った柔軟体操に対し,・ゆるやかに筋肉やその結合組織を伸

    ばす柔軟体操を現在ではストレッチングとよんでいる。

     わが国にストレッチングが普及したのはアメリカのボブ・アンダーソン

    (Bob Anderson>が著したrStretching」がユ981年}ご紹介されて以降である。

    小林によれば,現在ストレッチングとして認識されている反動を使わないタイ

    プの柔軟体操に関する最初の論文は1960年にオ・9一ネル(E.G. Oconnel)

    が発表したとされている。なおスポーツマッサージにも手技の一つのして同じ

    原理からなる伸展法が知られている。

    (1)ストレッチングをすべきとき

     アンダーソンはストレッチングを行う場面はいつでもよいとしているが,目

    常生活の場においては次の例を推奨している。

     ① 1日の初めである朝。

     ② 精神的緊張を和らげるための体を動かすとき。

     ③ 長い間坐ったり,立ったりしたあと。

     ④折りにふれて,例えばテレビを観ているとき,音楽を聴いているとき,

      読書をしているとき,または坐って話をしているとき。

     要するに我々は日常生活のふとした折に,自然にあくびをしたり,背伸びを

    しているカ㍉これは他の動物(例えば犬や猫)でもよく見かける光景である。

    ストレッチングはT.P.0にこだわらず,あらゆる局面をとらえて積極的に実

    践したいものである。

    (2)ストレソチングの方法

     ストレッチングによって心身のコンディションを向上させるためには,次の

    合言葉を念頭において実施するとよい。           ・

     ① 無理をせず

     ②正しい姿勢で

     ③ じんわりと

     ④ 息をとめずに

     ⑤ 30秒

                  一)-5 一

  •  具体的に解説すると,まず安定した状態で心身のリラクゼーションに留意

    し,ストレッチしようとしている身体部位を意識して15~60秒間(主働筋ほど

    長くする)じっくりと伸ばし続ける。このとき,呼吸は止めないようにする。

    そのためには秒数を数えたり,同僚と話をしながら行うとよい。しかし決して

    競争はしないようにすべきである。

    】V 教室内で行うストレッチング

     企業においては業間体操によって心身のリフレッシュがなされているよう

    に,学生や教職員が本務の遂行を能率化するために,休憩時間等を利用して教

    室で行うストレッチングの条件や施設および具体的な方法を解説する。

    1 教室内で行うストレッチンゲの条件

     教室で行うストレッチングには次の6条件が満足されなければならない。

     ① 1人で行える。

     ② 短時間に行える。

     ③ 特別の器具を必要としないで行える。

     ④ 騒音を発しないで行える。

     ⑤ 著しい発汗をともなわないで行える。

     ⑥ 手足や衣服を汚さないで行える。

    2 教室内の利用できる施設

     教室内で利用できる施設をまとめると以下のようになる。ストレッチングを

    行う際には,より容易に,効率的に行える施設を利用したい。

     ①机(固定式・移動的,共同用・個人用)

     ② 椅子(固定式・移動式,共同用・個人用)

     ③ 壁

     ④ 出入口

     ⑤ 教壇,階段

    3 教室内で行うストレッチンゲの具体例

     具体的なストレッチングの実施方法を次の順序で記載した。

                   -6 一

  •  部部部部部部

    位頭頂頭頭 突

    部の頭前頭後側耳乳

     L2a45a

    頭部、顔面、頸部

      (顔の部位)

    7.眼  窩  部

    8.鼻    部9. 口     部

    10.頭    部

    11.眼窩下部12.頬 骨 部13.頬    部

    14.耳下腺咬筋部

    15.下顎後部

     部部部部角部部部窩部角窩窩部

    伽 上下三腺 賜三上上

             L頸骨骨

           管

         脈頭

    部下下

    卿 骨骨動状 鋤側鎖鎖

    ー頭顎舌舌頸喉甲気頸胸外大小項

     a7。&9αL23。436.7&9。

     11112222222222

    図1 身体の構成(体表解剖)福島英夫他

     ① 基本的方法

    利用する施設や姿勢など,基本的な方法について解説した。なお解説は写真

    に基づいたもので,左右対称で行える場合も多いが,これについては省略し

    た。なお写真が2葉以上ある場合には(A)について解説した。

     ② ストレッチ部位

     ストレッチ効果のある身体部位について解説した。なお身体の各部位に関す

    る名称は必ずしも解剖学的な表現をせず,(図1,2)に基づいて次のように表

                  一7一

  • AB

    人体前面

    A:

    B:乳頭線C:

    D:肩甲線

    D C

    人体後面

     (胸の部位)

    A.前正中線30.胸骨部31.鎖骨部32.鎖骨下部33.三角(筋大)胸

     筋三角

    34.乳房部35.乳房下部

       む

    窩胸頭訓肋胃腹

       の

    腋側乳醸下上側騰

    36

    R7

    a 38394041

    部部線

    部部部部

    42. 1:ド    月夏    音匡

    43.鼠 径 部44. 耳[こ   骨    音[~

     (背 部)

    C・後正中線45.脊 柱 部

    46.肩甲間部47.肩甲上部48.肩 甲 部

    49.肩甲下部50.腰   部51. イ山   ’nyn   音ll

    D.肩 甲 線そ  の  他 (上肢の部位)

    52.肩 峰 部

    53.三角筋部

    一8一

    54.前上腕部(上腕

     屈側部)

    55.外側上腕部56.内側上腕部57.後上腕部(上腕

     伸側部)

    58.肘前部59.外側肘部60. 内  側  月寸 部

    61. 月寸   頭   音1~

    62・後 肘 部63.前腕屈側部64.外側前腕部65.内側前腕部

    66.後前腕部67.手 掌 部68.手 背 部

  • ABCD

    69.手の手掌側部

     70.手の指背側部

     71・手の爪部  (下肢の部位)

     72. 寛   帽:  音匡

     73.殿    部

     74.転  子  部

     75.前大腿部 76.外側大腿部 77.内側大腿部前正中線:

    乳頭線:

    後正中線:

    肩甲線;

    その他矢状面:

    部部部部部部部部部部

    腿  腿腿腿腿

      蓋窩 下大 腹果

    大  下側側下

    後膝膝膝前外内後腓内

    &90。-。2a4。5a7

    7788888888

    体幹の前面の正中を通る垂直線

    鎖骨中央と乳頭を通る垂直線

    体幹の背面で正中を通る垂直線

    肩甲下角を通る垂直線

    常に正中に平行となる面

    88.内果後部89.外  果  部

    90.外果後部91.足  背  部

    92.足  底  部

    93.足の趾背部94,足の趾底側部

    95,足の爪部96.会 陰 部

     前額面:身体を左右に通り,正中と矢状に対して直角となる面

     水平面:身体を上下にて分する水平な面以上主要な線と面であるが他に胸骨線,胸骨労線,前腋窩線,椎骨労線,肩甲間線後

    腋窩線等の区分がある。

            図2 身体の構成(体表解剖)福島英夫他

    現して一般の人にもわかりやすくした。

    頸部…首

    胸部…胸,体側

    腹部…腹,体側

    背音区… 背, 月要

    上肢…肩,上腕・前腕の前面・後面,手掌,手背,手指

    下肢…尻,大腿の前面・後面・内側・外側,下腿の前面・後面,アキレス

       腱,足背,足底

    なお上肢の前腕の前後面にわたる場合は前腕,下肢の大腿と下腿にわたる部

    分は脚と表現した。

    ③ 応用的方法

    基本的方法のバリエーション(写真B,Cを含む)について解説した。

    一9一

  • 写真 1

    ① 後頭部で両手を組み,首の力を抜いて腕の

     重みを利用して頭を前へ倒す。

    ② 首

    ③ 立位も可。頭を左右へ倒してもよい。また

     顔を上げ,口を大きく開けて天井を見るのも

     よい。

    (A)

    写真 2 (B) ⑥

    ① 左腕を体の前で伸ばして手掌を前にする。

     右手で左手の5指を手前に引く。

    ② 手指,手掌,前腕後面

    ③ 立位も可。左手指は下に向けてもよい。

     (2-B),(2-C)の方法でもよい。また 同様に手掌を手前にして行うと手背と前腕後

     面に効果がある,

    一10一

  • (A) 写真 3(B)

    ① 体の前で両手を上下に交叉して組む。

    ② 手指,手背,前腕

    ③ 立位も可。組んだ手を手前に引き,下から

     [:へねじ1二げる。肘を伸ばすと効果が高まる

     (3-B)。

    (A) 写真 4(B)

    ① 体の前で両手指を組み,前方へ伸ばす。

    ② 手指,手掌,前腕前面

    ③ 立位も可。左へひねると右上腕後面,右体

     側,背,腰への効果が生じる(4-B)。

    一11一

  • (A)

    写真 5  (B) (C)

    ① 体の前で両手指を組み,頭上へ腕を伸ば す。

    ② 手指.手掌,前腕前面,肩

    ③ 立位も可。腕を後方へ引くと胸にも効果が

     ある。また(5-B)のように右へ側屈する と左一ヒ腕後面,左体側にも効果を生じる。な

     お立位では壁を利用して行うのもkい(5- C)。

    写真 6

    ① 左腕を頭の後方へ.Eげて肘を屈げる。続い

     て右手でその肘を持ち右側へ引く。

    ② 左上腕後面,左肩,左体側

    ③ 立位の場合は腰を左に寄せてから行うと効

     果的である。

    一12一

  • (A> 写真 7(B)

    ① 右腕を体の前へ伸ばし,その.ドからまわし

     た左腕で後方へ引きつける。

    ② 右上腕後面,右肩

    ③ 体をひねると右体側.背,腰にも効果があ

     る。立位の場合にも1・i fJ ”kであるが,ひねる側

     の脚を一歩前に出すと効果が高まる(7

     B)。

    (A) 写真 8

    難轟

    叢難

    (B)

    ①立入口のドアを開けた状態で敷居の前に立 ち,両手をドアと壁にかけ,体を前へ押し出

     す。

    ② 上腕前面,肩,胸,腹

    ③ 片手で行って{,よい。また.鴨居に手をか

     けて行う方i去もよい(8-B)。

    一13一

  • 写真 9

    ① 右腕は肩越しに,そして左腕は下からまわ

     して体の背面で両手指を組む。

    ②上腕後面,肩,胸③ 坐位も可。手が組めない場合は,ハンカチ

     などを利用するとよい。

    写真 10

    ① 頭の後で両手指を組み,両肘を後方へ引 く。

    ② 上腕後面,肩

    ③ 坐位も可。左右への引く度合を変えてもよ

     い。

    (A)

    写真 11 (B)

    ① 体の後で左手首を右手で握り,後方へ伸ば

     す。

    ② 前腕後面,上腕前面,肩,胸

    ③ 坐位も可。両手指を組んでもよい。また

     (11-B)のように上体を前面に倒すと, 背,腰,尻,大腿後面,下腿後面にも効果が

     ある。

    一14一

  • 写真 12

    ① 壁に向t,て立ち,両手を壁に当てて肩を入

     れる。

    ② 前腕前面,上腕後面,肩,胸,腹

    ③ 教卓を利してもよい。片手でもよい。また

     坐位では椅子を机かC・Wtして行うとkい。

    写真 13

    ① 固定式の机を両手で握り,腰を後方へ引く

    ② 上腕後面,肩,背,腰③ 足を机に近づけて行うと尻,脚後面にも効

     果がある。

    (A) 写真 14(B)

    ① 左右に開脚して両手を腰にとり,上体を後

     へ反らせる。

    ②首,胸,肩,腹③ 壁を背にして立ち,頭上から壁に手を触れ

     るようにすると上腕後面にも効果があるが,

     腰に不安のある者は壁に近づいて行うように

     した方がよい(14-B)。

    一15一

  • 写真15

    ① 左右に開脚して椅子に浅く坐り,頭の後で

     両手を組んで頭を両脚間へ入れる。

    ② 首,背,腰

    ③ 立位も可。腕は両脚間に入れてもよい。

    (A)

    写真16 (B)

    ① 左右に開脚して埼予に浅く坐り,両手を両

     膝に当てて左肘を外へ割って左肩を入れ,右

     へ上体をひねる。

    ② 左肩,背,腰,左体側

    ③ 立位では左大腿内側にも効果がある(16- B)。

    一16一

  • (A) 写真 17(B)

    ① 椅子に坐・,て左手で右膝を押さえ,右手は

     背もたれに当てがって体を右へひねる。

    ② 腰,背,左体側③ 壁を背にして立ち.体を右へひねって壁に

     両手を当てがうと右の尻や左大腿外側にも効

     果がある(17-B>。なお両手で固定物につ

     かまることができる場合には,ひねりが.一層

     大きくなる。

    (A) 写真 18(B)

    ① 椅子に浅く坐り,膝を伸ばして左右に開脚

     し,左手で右つま先に触れる。

    ② 右脚後面,腰,背③ 立位も可(18-B)。手でつま先を手前に

     引くと,右下腿後面右アキレス腱にも効果が

     ある。体が固い者は右手で右つま先に触れて

     もkい。

    一17一

  • (A)

    写真 19 (B)

    ① 閉脚で立ち,膝を伸ばした状態でっま先を

     両手でさわる。

    ② 脚後面,腰,尻,背

    ③椅子に浅く坐って行ってもよい。また左右

     に開脚してもよい。更に脚を交叉しても脚へ

     の効果が高い(19- B)。

    写真 20

    ① 壁を側方にして立って左手を壁に当てて体

     を支え,右手を腰に当て左へ押しつける。

    ② 左体側,左腰,左脚外側

    ③ 頭を右へ倒したり,左肘を屈げると効果が

     高い。

    一18一

  • (A) 写真 21(B)

    ① 前後開脚して左足を教壇におき,両手でつ

     ま先に触れる。

    ② 左大腿後面,背,腰

    ③ 片手で行ってもよい。腰を後へ引くと左尻

     にも効果がある。坐位も可。(21-B)のよ

     うにつま先を引くと下腿後面,アキレス腱,

     足底にも効果がある。

    (A)

    写真22 (B)

    (C)

    ①椅子に坐り,左脚の膝を屈げて両手でもち 一]一:げる。

    ② 左大腿外側,後面,左下腿前面,左足背

    ③ 左下腿を右膝に乗せて体の前屈をすると足

     背への効果は消失するが,腰や背にはよい (22-B>。また脚を交叉し,体をひねる方

     法も同様の効果がある(22-C)。

    一19一

  • 写真 23

    ① 椅子に浅く坐り,右膝を屈げて両手で引き

     つける。

    ② 大腿後面

    ③ あごを右膝につけるようにすると背や腰に

     も効果がある。

    (A)

    写真 24 (B)

    ① 壁に向って立ち,左手を壁に当てて体を支

     え,後へ上げた右っま先を右手で引き上げ る。

    ② 脚前面,足背,右胸,腹

    ③手を入れ換えてもよい。また椅子の右側に

     坐り,左足の甲を椅子に当てがう方法はド肢

     への効果がある(24-B)。

    一20一

  • 写真 25

    ① 壁に向って立ち,両手を壁に当てる。脚を

     前後に開き,後足の瞳を床につけた状態で膝

     を屈げて体を前方へ移動する。

    ② 下腿後面

    ③ 頭を壁につけるようにすると効果が高ま

     る。

    写真 26

    ① 椅子に坐り,左膝を外へ割ッて小指側のみ

     で床に接する。

    ② 足背,下腿前面

    ③ っま先を右へ向けてもよい。

    (A) 写真 27(B)

    ① 椅子に坐り,左脚を後へ流してっま先のみ

     で床に接する。

    ② 足背,脚前面

    ③(27-B)のよ も高まる。

    :にすると.1:半身への効果

    一21

  • (A)

    雛難灘欝灘難灘・”

           ①

            をかける。

           ② アキレス腱

           ③       一B)。

    写真 28(B)

    壁に向って前後開脚をする。両手を壁に当

    て,後膝を屈げて踵を床に接し,後脚に体重

    教壇を利用すると下腿にも効果がある(28

     V 効果的なモデル・プラン

     授業中においては,椅子に坐った状態で目立った大きな動作を必要とせず,

    できるだけ多くの部位にわたって効果があがる方法を選択した。

     また休憩時間中に実行したいプランは,立位での方法を含むより効果的な方

    法を採用した。

    (1)授業中のモデル・プラン

     フ゜ランA=1十2十9十16十26

     プランB=1十3十11十17十27

    (2)休憩中のモデル・プラン

     プランA=1十5十11十15十22

     プランB=1十8十12十18十24

     W おわりに

     教室内で行うストレッチングの主な目的は,授業に対する心身の構えを自然

    につくり出すことにある。授業中においては集中力の薄れたときに行い,休憩

                    一22一

  • 時間中にあっては背伸びをして大きなあくびをするつもりで行えばよい。

     授業を競技会に例えて考えてみると次のようになるのではなかろうか。競技

    会(授業)に集中するのは誰しも当然である。しかも優秀な競技者(学生)は

    競技会中(授業中)にもリラックスするコツを心得ている。しかも忘れてなら

    ないことは競技会(授業)の前の心身の準備状況であり,競技会(授業)後の

    アフター・ケアである。

                  参 考 文 献

    1 小林義雄・竹内伸也「ストレッチング」講談社 1981

    2 ボブ・アンダーソン「ボブ・アンダーソンのストレッチング」ブックハウス・エイ

    チディ 1981

    3 安田・小栗・勝亦「ストレッチ体操」大修館書店 1981

    4 山口政信「教室内でできる体力づくり(上)」明治大学教養論集刊行会 1986

    5 福島英夫他5名「目で見るテーピングの理論と実際」不昧堂出版 1981

    一23一