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電気回路と動的解析
エネルギー蓄積素子
動的挙動を示す
電気回路理論
直流理論(静特性=静的理論)
非直流理論(動特性=動的理論)
交流理論(周期的特性)
過渡現象論(非周期的特性)
正弦波の振幅、位相を考えれば代数的手法で解ける
時間応答は微分方程式を解かなければいけない
電気回路を構成する素子
インダクタ
キャパシタ
抵抗
世の中で動いている電気、機械、熱、流体
等のシステム
エネルギーや信号はお互いの間で変換されながら相補
的に機能している微分方程式で表される
電気回路の動的解析、あらゆる動的システムの挙動を説明できる ラプラス変換
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動的回路解析ー 線形システムの動的特性解析 ー
キーワード電気回路、動的解析、ラプラス変換、制御工学、波動方程式
授業の目標および期待される学習効果目標:ラプラス変換を使い回路の動的解を導出できること、
システム方程式や伝達関数の概念を理解できること、
学習効果:基本回路の動的特性を直観的に理解できるようにする。
授業の概要
電気回路の過渡現象を解析できれば、様々なシステムの動的挙動の解析につながる。そのため、集中定数回路の動的挙動を微分方程式の解から解析する手法を述べ、動的特性の直観的な理解力を養う。また、ラプラス変換を用い、一般のシステムに対する回路方程式の動的解析に応用する。
授業内容のレベル
講義の位置づけとしては、電気回路IIと高周波回路工学をつなげる役割を担う。電気回路Iが理解でき、微分方程式の解法がある程度理解できることが前提
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履修資格特にないが、電気回路I、IIを履修していることが望ましい。
この授業の基礎となる科目電気回路I、電気回路II、基礎電気数学、制御工学
次に履修が望まれる科目高周波回路工学、光回路工学、画像工学
関連授業科目
電気電子計測、デジタル信号処理、電磁気学III
テキスト/参考書電気回路の動的解析(森北出版、小林幹/稲村實/井出英人 共著)
授業の形式(授業方法)テキストの重要な点を抜粋し、パワーポイントを使用して講義する。毎回小テストを行い、出席代わりにする講義資料はpdfをダウンロード、各自で印刷すること。
評価(成績評価基準)出席と期末試験により評価する。基本的に小テストは成績に考慮しない試験は講義用ppt資料のみ持ち込み可。
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1.R、L、C素子の動的挙動2.RL直列回路の動的解3.RC直列回路の動的解4.直流電流源での動的解5.直流以外の電圧源での動的解6.R、L、C直列回路の動的解7.無限大波形とインパルス応答8.ラプラス変換の基礎9.ラプラス変換による動的解析
10.システムの伝達関数11.フィードバック系の伝達関数12.システム方程式13.システム方程式の立て方14.ラプラス変換によるシステム方程式の解法の基礎15.システム方程式の解法例
授業の展開(授業計画)
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動的素子
S R L
C
白丸 端子
動的特性に関係する素子動的素子
電源 起電力抵抗 逆起電力コイル、コンデンサ逆起電力、起電力スイッチ
素子両端の電圧素子に流れる電流素子の鎖交磁束素子の電荷
変数 はこの値が時間によって変化することを意味する
・スイッチ過渡現象論ではスイッチの開閉に伴う問題を取り扱うことが多い
スイッチを閉じる スイッチを開ける スイッチを切り替える
スイッチの開閉は瞬時に完結するものとする。
回路定義
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抵抗に電流が矢印の向きに流れると仮定し、向きを定義する。
抵抗に対して電流の上流の電位は下流の電位より高く、電流と逆向きの電位差を逆起電力と呼ぶ。
・抵抗 R
+
-
10
抵抗の機能は以下の式によって表される
抵抗値は常に正、単位は [Ω]電流が矢印に流れれば だけ逆起電力が発生電流が流れなければ、+、-両端子は同電位(短絡と等価)
[A]
抵抗の特性
回路素子の瞬時電力 [W]
は より必ずゼロ以上。
電力の時間積分はエネルギ―なので、エネルギーを受け取り、熱等として消費するだけの素子である。抵抗の消費する電気エネルギーは
R
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・キャパシタ C
+
-
C+
-
極板間の静電引力により電荷を貯める働きをする動的素子 キャパシタ
電荷 と端子間電圧 との関係は
0 [V]
[C]
キャパシタの特性
静電容量Cは常に正、単位は [F]端子間電圧 に比例した電荷が蓄積電荷の時間変化に瞬時に電圧が追随
キャパシタでは、+極に(-極から)電荷が溜まる(流出する)により、変位電流を流す働きもできる。
≅ lim∆ →
∆∆
電荷が増加 =上流側の極板に流れ込む向きの電流電荷変化なし=電流流れず(開放と等価)電荷が減少 =上流側の極板から流れ出る向きの電流
[C]
∆
∆
∆∆
キャパシタでは極板間の電圧の時間変化に比例した電流が流れる
一般に、導線に流れる伝導電流 と導線を通過する電荷 との関係は
上流
下流
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[A]
キャパシタの電力 [W]
0外部回路から電力の供給を受ける0外部回路に電力を供給をする
[V] 0 0
電力を受ける
電力を供給
12
電気エネルギーは瞬時電力の時間積分なので、
が大きければ、キャパシタはその間にエネルギーを受け取るが小さければ、キャパシタはその間にエネルギーを放出する
[V]
エネルギーを受ける
エネルギーを放出
ある時間 から現在の電圧
電荷が移動しなくともよいので、位置エネルギーと等価
1 キャパシタの極板間電圧はキャパシタ電流の時間積分で決まる
微分表現を積分表現にすると
キャパシタ電圧は急激に変化できない=連続
キャパシタ電流 蓄積された電荷を移動 電圧変化
因果関係
(積分表現が動的特性において本質的)
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・インダクタ L
+
-
L
インダクタは磁束を貯める働きをする動的素子
鎖交磁束 と電流 との関係は
0
インダクタンスLは常に正、単位はヘンリー [H]電流 に比例した 鎖交磁束が蓄積されている
[A]
[H]
インダクタの特性
[A]
∆
∆
∆∆
電流の傾きに比例した電圧降下
起電力
インダクタのもう一つの働きとして、鎖交磁束を変化させないようにする働きがある。鎖交磁束の変化とインダクタの起電力の関係は
磁束が増加 = +方向の起電力(逆起電力 )磁束変化なし= 起電力発生せず(短絡と等価)磁束が減少 = -方向に起電力
インダクタに流れる電流の時間変化に比例した逆起電力が発生している
逆起電力
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12
インダクタの電力 [W]
インダクタの磁気エネルギーは
[A] 0 0
電力を受ける 電力を
供給
[A]
エネルギーを受ける
エネルギーを放出
電荷が移動しなければ0なので、運動エネルギーと等価
1 インダクタを流れる電流はインダクタ端子間の電圧の時間積分で決まる。
[V]
0外部回路から電力の供給を受ける0外部回路に電力を供給をする
が大きければ、インダクタはその間にエネルギーを受け取るが小さければ、インダクタはその間にエネルギーを放出する
ある時間 から現在の電流
微分表現を積分表現にすると
インダクタ電流は 急激に変化できない=連続
インダクタ電圧 鎖交磁束を増加(減少) 電流
因果関係
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・電源
任意の電圧源 直流電圧源 交流電圧源 電流源
電圧源端子間に現れる電圧 が、電流 に 無関係 に決まる
電流源 +端子から流れだす電流 が、端子間の 電圧に無関係 に決まる
-端子から+端子に向かって流れる向きに電流を取る
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電源波形
直流 電圧
[V]
0
単位ステップ電圧
0 01 0
[V]
0
1
正弦波交流電圧
sin
[V]
2
振幅
角周波数
位相
周期2
負荷(電源回路につながる回路 )のインピーダンスに依存せず、決まった値
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RL直列回路S
スイッチSが開回路に電流流れない
、 は 0 (短絡)
電源の-からスイッチまでは等電位
スイッチの両端に電位差 が発生
スイッチSが閉電流 が流れようとする
抵抗には に比例した電圧降下
インダクタには の時間変化に比例した電圧降下
キルヒホッフの電圧則 0より
これは1階の常微分方程式となっている
S
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回路方程式の解法
1階の常微分方程式
微分方程式は、任意の時刻 において、その式を満足しなければならない
この解法には、・ の取りうる値を既知として、その関数の係数を決定する未定係数法
・ラプラス変換、ラプラス逆変換を使う手法
ステップ1余関数の算出
ステップ2特殊解の算出
ステップ3一般解の決定
一般解 = 余関数 + 特殊解
として初期条件から未定係数を決定
未定係数法
過渡解の形を求める 定常解を求める 完全解 = 過渡解 + 定常解として初期条件から完全解を決定
数学的表現
現象論的、物理的表現
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ステップ1 余関数(過渡解)の算出
0
より
とおく。 0
微分方程式の右辺を0 としたときの解 を求める
0
0
この方程式が任意の時刻 で成立するためには…
0
上式を補助方程式、特性方程式と呼ぶ。また、この解 は 固有値 と呼ばれる。
まとめると
は 電源を短絡除去 した回路が満足する解
与式の微分を関数に対するオペレータとして以下のように変形すると
0
補助方程式は ⁄ を に置き換えても得られる。一般の常微分方程式の解にも有効
補足
固有値を代入すれば、
1
回路に電流があったとしても、時間経過に伴って指数関数的に減衰する
電源のない回路 0の回路
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ステップ2 特殊解(定常解)の算出とおいたときの、微分方程式の解 を求める
, は 0 を含む任意の定数とする
代入して
右辺が定数(時間変化なし)より0
が必要である。
より、以下が得られる。
この解を特殊解、特解と呼ぶ。
微分方程式右辺が時間に無関係特殊解も時間に無関係
特殊解は微分方程式を満たすが、時間的に変化せず、明らかに完全な解ではない。
ステップ1とステップ2の微分方程式を比べよう
では、一般解はどのように求めれば良いだろうか?
0
余関数の式を 倍して両式の和を取ると、
も 微分方程式の解
これが、任意の で成立するためには…
代入すると
これが一般解
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ステップ3 一般解
電圧や、電流の 連続な物理量 から初期値の条件を求め、 を決定
キャパシタの電圧
1 1
インダクタの電流+
ー
C+
ー
+
ー
L
流れる電流の時間積分が端子間電圧に比例
端子間電圧の時間積分が流れる電流に比例
キャパシタ電流 が不連続だったとしても、キャパシタ電圧 は必ず連続
[A]
[V]
ジャンプ
連続
積分
微分
インダクタ電圧 が不連続だったとしても、インダクタ電流 は必ず連続
[V]
[A]
ジャンプ
連続
積分
微分
一般解 = 特殊解 + K×余関数 (未知数 を含む)
Page 19
ステップ3 一般解の係数決定RL直列回路に流れる電流の一般解は
インダクタを流れる電流は連続であるため
スイッチを閉じる瞬間を 0、 0では電流 は0
0 0 0
0 0
一般解に代入すると、
したがって
[A]
1
回路の電流は時刻0から急激に増加し、
徐々に増加が緩やかとなり、 ⁄ に漸近し
ていく。
時刻0以前は基本的に 0(初期条件による)
0
1一般解は
1
[V]
0
1
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RL直列回路の動的特性
00
スイッチの両端電圧
S
スイッチを閉じる前 0
Sスイッチを閉じた少しあと 0
回路の電流が増加が増加
分圧されて が から減少
S
0
スイッチを閉じ十分時間が経った後 ∞定常状態ではインダクタの電流変化がなく、インダクタ電圧0なので ∞ 0
∞ /
0Sスイッチを閉じた直後
インダクタの電流は連続なので、 0 00 00 で 瞬時に電圧が増加
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電流、電圧 ある状態から単調に増加、減少したり、急激に増加した後単調に減少する終的に一定値に収束、定常状態に至るまでの現象を過渡現象と呼ぶ。
現象論的には、 完全解=過渡解+定常解
1 1
RL直列回路の過渡現象まとめ
ステップ2で得られる特殊解は ∞の解(定常解)であり、電源に依存して定まる
1特性方程式の固有値
時定数が大きい ゆっくりした変化小さい 素早い変化
通常、過渡現象は5 でほぼ定常状態に達すると考えてよい。
ステップ1での余関数の解が過渡解電源電圧を短絡除去した回路固有の時間応答の性質を持つ。
に対応する を考えると、は過渡現象を考える際の時間尺度とみなせ、時定数と呼ばれる
電源に無関係に定まる
ただし、微分方程式右辺の電源は連続関数(例えば定数、正弦関数)でなければならない
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RC直列回路
スイッチSが開回路に電流流れず
電源の-端子からスイッチまでの導体は等電位
スイッチの両端に起電力に等しい電位差 が発生
スイッチSが閉 回路に電流 が流れる
抵抗には電圧降下
キャパシタには電圧
キルヒホッフの電圧則 0 より
1電流を電荷の時間変化と考えれば
S R
C0
0
1
これは1階の常微分方程式となっている1
R
C
S
Page 24
RC直列回路の解
1 0とおくと特性方程式は
この式が 0で成立するには
1 0
1したがって、固有値 は
余関数は
とすると、
ステップ1 (電源を短絡除去した解)
ステップ2 (電源に依存する解)
1
この式が 0で成立するには
0
より、
より特殊解は
一般解 は
ステップ3
初期電荷 0 は0より初期電圧 0 0
キャパシタ電圧は急変し なため、 0 0
よって、一般解は
1
より
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RC直列回路はスイッチを入れた直後に電流が瞬時に流れ、 ⁄ から減少し、0に漸近していく。
[A]
0
[V]
0
1
RC直列回路の動的挙動S R
C0
スイッチを閉じる前
初期電荷=0キャパシタ電圧=0短絡と等価
0 0
S
R
C
過渡状態
電流による電荷チャージにより、 が増加、 はその分、減少していく
S
R
C0
0定常状態
キャパシタ電圧が電源電圧になるまで増加したら、電流停止
S
R
C
スイッチを閉じた直後
キャパシタ電圧は連続なため、抵抗に電圧 が瞬時にかかり、 瞬時に電流も流れようとする
キャパシタ電圧は0から急増し、徐々に増加割合が低下し、 に漸近していく。
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スイッチを再度閉じるとやはり回路に電流は流れない
RC直列回路の動的挙動(2)S R
C
スイッチ両端は等電位
一般解 は
このとき、回路は同じなので、微分方程式は同じ
0 より、 0
0 0
微分方程式の解は、あらゆる初期条件における一般解を表現できる
定常状態からスイッチを開くとどうなるか?
なにも変化なし
R
C
S
0 2
0 2
より、
1 コンデンサの電圧がEになるまで電荷を放電する。逆向きに電流が流れる
0
0
コンデンサの初期電圧が2 のとき、スイッチを閉じると
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RC直列回路の動的挙動(3)定常状態から 0で電源を短絡除去し、 0としたときどうなるか?
0
回路方程式は
初期条件は 0
したがって、
1
キャパシタが電源として作用するため電流は逆向きに流れる
R
C
S
この式は特性方程式そのものであり、特殊解は0なので、余関数から一般解は
S
R
C
0
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[A]
は を0にした直後に急激に逆方向に流れ、 ⁄ から 0に漸近していく。
0
定常状態では であり、 0である。電源電圧を時刻0で0にすると、抵抗両端に瞬時にキャパシタ電圧と 逆符号の過渡電圧が表れ、徐々に減少していく
[V]
0
1特性方程式の固有値
これはRC回路での時定数であり、RL回路の場合と式は違うが物理的意味は同じである。
抵抗やコンデンサの値が大きくなれば時定数が大きくなり、充電、放電に 時間がかかる
ことを意味する
RC直列回路においても、過渡解には指数関数が表れ、過渡解は電源を 短絡除去 した回路固有の時間応答の性質を持つ。
同様に、 に対応する を考えると以下が得られる。
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RC並列回路(直流電流源の場合)S
R C
スイッチSが開回路に電流は流れない
電源の-端子からスイッチまでの導体は等電位
スイッチSが閉じたとき、回路に電流が流れ、
抵抗には に対応した電流 が流れる
キャパシタには に対応した電流
キルヒホッフの電流則 より
これは1階の常微分方程式である。ステップ3での初期条件のためにキャパシタ電圧についての式を考える。
0 初期電荷がないので、キャパシタや抵抗の端子間電圧は0
抵抗、キャパシタには電位差 が発生するS
R C
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RC並列回路の解
一般解 は
ステップ3
ステップ1
とおくと特性方程式は1
0
1したがって、固有値 は
よって、余関数は
ステップ2
直流電源なので、特殊解も時間によらず一定値となり、定常状態の電圧から
キャパシタ電圧が連続となる条件から、0 = 0 より
よって、
1
1
C
余関数は電源を0にしたときの解
電流源では電流が流れてはいけないので、電流源は開放除去
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[V]
回路の電圧はスイッチを入れたのち徐々に上昇し、 に漸近していく。
0
[A]
0
1
1
S
R C
過渡状態
電荷がチャージされ、 が増加すると、 より抵抗に電流が分流される
S
R C
0
定常状態キャパシタが充電されると 、キャパシタ電流が0となり、抵抗に全電流が流れる
S
R C
スイッチを閉じる前
初期電荷が0なので、 が0であり、短絡 と等価
0
RC並列回路の動的挙動
S
R C
0 キャパシタ電圧は急変しないので、 0
、抵抗の電流が0 なので、 キャパシタ
に瞬時にすべての電流 が流れる。
スイッチを閉じた直後
スイッチを入れた後、電流は瞬時に流れ、
徐々に低下しながら0に漸近していく。
Page 33
電圧源と電流源
R
C
1 1
1
R
C
理想電圧源 と内部
抵抗 の直列接続
理想電流源 と内部
抵抗 の並列接続をみたす電源に変換可
RC並列電流源回路RC直列電圧源回路
負荷の電流、電圧に対して両者が等価
Page 34
RL,RC直流回路の動的挙動の直観的理解
過渡解は常に の形(過渡状態は指数関数的に変化)過渡状態の後、定常状態になる(コンデンサ開放 、コイル短絡 )
直観的理解のためのヒント
1. 初期状態の動的素子の電圧、電流を定める
パターンA パターンB パターンC
2. 定常状態の動的素子の電圧、電流を求める
3. 初期状態から定常状態への変化が、急激な変化から緩やかな変化になるようにつなげる
4. 過渡現象を起こさない動的素子に注意
電圧源の負荷に並列につながる抵抗に流れる電流電流源の負荷に直列につながる抵抗の電圧
電圧源に並列につながる短絡素子 電圧源が∞の電流を流す X電流源に直列につながる開放素子 電流源が∞の起電力を起こす X
5. 解析不能な動的素子にも注意
Page 35
+
ー
+
ー
+
ー
直流回路の動的挙動を推測する際の基本インダクタキャパシタ抵抗
・電圧は電流に比例
・電流の時間積分が電荷
・電荷に比例したキャパシタ電圧
・電圧の時間積分が磁束
・鎖交磁束に比例した電流
あらゆる時間で満たすべき基本特性
C‐3電流0、電圧が一定(充電済みキャパシタ)は開放と等価
L‐3電圧0、電流一定の状態では短絡と等価
定常状態の条件
R‐1 電流の流れない抵抗は短絡と等価
C‐1 電荷のないキャパシタは短絡と等価、
L‐1 鎖交磁束のないインダクタは 開放 と等価,
t=0以前に成立
C‐2 キャパシタ電圧は連続 L‐2 インダクタ電流は連続
t=0に成立
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S
R L 各素子の電流、電圧とも0
スイッチ閉じる前は
RL並列回路(直流電流源)の動的挙動の推測
L‐2の条件より抵抗に全電流が流れる 0
R
S
0 0 0
スイッチ閉じた直後は、
定常状態では
L‐3の条件よりインダクタの電流はしたがって、抵抗の電流は0したがって、端子間電圧も0 ∞ 0
∞ 0 ∞
R
S
R L
過渡状態では
時定数 ⁄ で初期状態から定常状態に遷移するので
1 )
0 0 0 0
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接続時に電流∞C‐1が影響
定常状態で電流∞L‐3が影響
電流がどんどん流入して定常状態にならないキャパシタ電圧∞
接続時に電流0L‐1が影響
インダクタ電圧∞
電流がどんどん流入して定常状態にならないキャパシタ電圧∞
接続時に電流0L‐1が影響
インダクタ電圧∞
接続時にコンデンサの電流∞、C‐1が影響
定常状態でコイルの電流∞、L‐3が影響
簡単な直流回路の動的挙動
Page 38
0
S
キルヒホッフ電流則
キルヒホッフ電圧則
各動的素子毎のインピーダンス条件
未知数5個に式5個で必ず解ける。
2分岐した枝の各電流、動的素子3個の電圧の5個を未知数とする
コンデンサの微分があるので、 に関する微分方程式を立てる⑤より、 と との関係を導出
①
②
③
④
⑤
回路方程式による解答
②に③、④を代入
①を代入し、 を消去⑤式を代入し、 を消去
整理して
Page 39
端子から見た回路を、電圧源や電流源に置き換え
コンデンサを開放除去したときの開放電圧
内部の電源を0としたときのコンデンサ側から見たインピーダンス(理想電流源は開放除去、理想電圧源は短絡除去)
電圧源RC直列回路、電流源RC並列回路への変換
コンデンサを短絡除去したときの短絡電流
C電圧源RC直列回路への変換
鳳 ‐テブナンの定理
C 電流源RC並列回路への変換
ノートンの定理
Page 40
RC直列回路の微分方程式の形と同じ
理想電流源と並列な抵抗を理想電圧源と直列な抵抗に変換
C
R
Cこの回路の微分方程式
電圧源‐電流源変換による解
Page 42
矩形波
0
キャパシタ電圧
0抵抗電圧
電源電圧が矩形波のとき(RC直列回路)
電流 0
充電
放電
充電
放電
充電
放電
電源を短絡除去することと等価
Page 43
矩形波
0
矩形波
0
矩形波のパルス幅が変わったとき
時定数は回路の抵抗、電気容量のみで決まる
矩形波のパルス幅が短くなったらどうなるか? (時定数は同じ)
電源On, Off による過渡応答特性は同じだが、パルスの繰り返し毎に初期値が異なるため、
全体の過渡応答は変わる
キャパシタ電圧はローパス特性を持つので、高い周波数は伝わらず直流成分 /2が残る
Page 44
電源電圧が正弦波の場合の動的解(RL直列回路)S
スイッチSを閉じたとき、回路に電流が流れる
キルヒホッフの電圧則 より
sin
電源電圧に交流電源を考える
sin
右辺が時間の関数なので、仮定する特殊解が 直流電源とは異なる。
右辺の関数(電源関数) 仮定する特殊解
定数 定数
cossin sin cos
⋯
微分方程式左辺は直流電源と同じなので余関数も同じ。
Page 45
電源電圧が正弦波の場合の動的解(RL直列回路)
sin Im Im
正弦振動する関数は、オイラーの式を使って指数関数で取り扱うと便利
=ここで、 は複素数であり、Im[] は複素数の虚部を意味する
電源以外に 複素数 はないため、以下の微分方程の解 の虚部が sinに対応する解になる
表から、特殊解は で表されるため、代入すると
この式がすべての時間に成立するためには
ここで
sin
したがって、特殊解の虚部を取れば
これまでの議論では特殊解は定常状態での解を表していた。
この場合も定常状態で電流が、振幅 、
位相 で正弦振動することを表してい
るだろうか?
cos sin
cos sin }
,
Page 46
左の図において、回路に流れる定常電流を考える。
sin
であり、電流の大きさは
である。
インピーダンスの位相は
コイルは電流の位相を遅らせるため
すなわち、この場合も特殊解は定常状態での解と等価である。
交流理論 から特殊解を得てもよい
一方、余関数は(直流回路の結果から) より、一般解は未知数 を用いて
sin
初期条件は 0 0 =0 より
sin
sin sin
特殊解と定常解(RL直列回路)
インピーダンスは より、大きさは
したがって、電流の一般解は
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電源電圧が正弦波の場合の動的挙動(RL直列回路)
[A]
0
定常解
一般解
過渡解 sin
定常解
時間的に角周波数 で変動する正弦波
位相が で表される
過渡解
時定数 / で指数関数的に減衰する
と が同じであれば、過渡解は0
スイッチを閉じた瞬間から回路には外力(電源電圧)に依存する動作が始まる。
また、同時にその回路固有の動作も始めるが、
この動作はスイッチを 閉じた直後にのみ現れ 、時間とともに消滅する
Page 49
n階の定係数常微分方程式の解法
⋯
は任意の整数、 ⋯ は任意の定数である。この微分方程式を満足する を求める
( 2の場合)
この2階微分方程式の解も、微分方程式右辺を 0 としたときの解 (余関数)と特殊解
の和で表される。
ステップ1
0
を任意の時刻において満たす解として、
0
代入すると
から特性方程式が導かれ
0
この解(固有値)は判定式
4
の符号により分類できる
(i) 0固有値が異なる値 , を持つ場合
(ii) 0 固有値が重根 の場合
ステップ2
特殊解 は、物理的には右辺を電源
波形とし、回路を励振したときの定常解。
・交流理論から定常解を求める
・特殊解の形状を仮定して未定係数法
で解く
一般解
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( 3の場合)
一般解は と表される。
(i) 固有値が全て異なる場合 , , …
(ii)固有値に 個の重根が含まれる場合
⋯
⋯
, , … ,および の 重根
⋯
⋯ 0
に関する 次方程式であり、 大で個の根が存在する。
余関数を微分方程式右辺 0に代入すると、
ステップ1 ステップ2
特殊解 は、回路から定常解を求めるか、未定係数法で解く。
⋯
ステップ3
得られた一般解の余関数には一般に
n個の任意定数 が含まれる。
これらの値を決定するには、回路図
に立ち返る必要があり、問題から初
期時刻における、動的素子に関する
独立なn個の初期条件を見つける必
要がある。
n階の定係数常微分方程式の解法
Page 51
RLC直列回路の動的解析
電源のないRLC直列回路を考える。尚、スイッチを
閉じる前にコンデンサには電荷 がたまっている
スイッチを閉じるとコンデンサの電荷が移動し、電流
が流れる。この回路方程式はキルヒホッフの電圧則
0から
10
ここで、 ⁄ より、
10
0
0
スイッチを閉じた直後
0 21
とおき、
2 0 の解を考える 特殊解は0なので余関数が一般解
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RLC直列回路の動的解(余関数)
したがって、余関数の形は、右の2個に決まる
i) 0のとき 固有値は二つ
ii) 0のとき 固有値が負の重根
1
スイッチを閉じた直後の等価回路からコンデンサの初期電荷が連続 0
インダクタに電流は流れておらず、 電流は連続 0 0
初期条件
とすると、特性方程式は
2 0
固有値 判別式
特性方程式の解余関数の形を
これらの線形結合により、余関数 が決まり、 により場合分けが必要
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0
0 000 0
1 10
1 01 0
行列で表現すると 行列で表現すると
クラメールの公式
の解x , yは
分母は行列式
分子は を に置き換えた行列の行列式
分母は行列式
分子は を に置き換えた行列の行列式
=
=
RLC直列回路の未定係数の導出i) 0のとき ii) 0のとき
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RLC直列回路の一般解
sin
(ii) 0 ) のとき
時間とともに減衰しながら振動する振動的な過渡解
固有値が異なる複素数
2
(i) 0 ( ) のとき
時間とともに減衰していく単調に減衰
固有値が異なる負の実数
22
未定係数, を解くと
1 1
(iii) 0 (
時間とともに減衰していく
固有値が負の重根
, を解くと
判別式 より
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解の減衰項にはすべて が入っている、 が大きいほど、時間的に早く減衰する
2
2
1
RLC回路の動的挙動(1)
単位は 周波数(時間の逆数)
1また、 も周波数の単位を持つ
また、 や は回路素子のパラメータによって、
独立に定まる、 、 の軸を持つ平面を考えると
固有値が実数をもつ(すなわち、非振動的な過渡応答を示す)条件は
0 より
非振動的
振動的
は臨界抵抗値とよび、解の振動的、非振動的挙動の性質を決める要素となる
のとき、RLC直列回路を流れる電流は非振動的で単調に減衰する。
21
22 ⁄のときの抵抗値ここで 0
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この振動はキャパシタの電気エネルギーとインダクタの磁気エネルギー間での、
エネルギー交換による電流の振動を表している。
抵抗が0(LC直列回路)であれば減衰することなくいつまでも振動を続ける 共振
状態になる。(周波数 1/2 )
抵抗が大きくなるにつれ、キャパシタ、インダクタ間の電流の往復の際に 抵抗
でエネルギーを失われていく
抵抗が 2 ⁄ より大きくなると、1回でエネルギーが多く失われ 非振動的 となる
12
4
このとき、振動の周波数 は
一方、 すなわち、抵抗が 2 ⁄ より小さけ
れば、振動しながら減衰 していくことになる。
2
1
非振動的
振動的
で決まるため、その過渡応答の振動周波数は電源電圧に無関係に回路素子によって定まる
RLC回路の動的挙動(2)
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2 ⁄ 100 Ω]
40pF
100nH
14
過渡応答の周波数 [Hz]
25Ωのとき13ns50Ωのとき14.5ns95Ωのとき40ns
255075
100125
抵抗値を変えたときの過渡応答臨界抵抗 100 Ω]
臨界抵抗値
のとき、 は大きくなり、振動を起こしやすい
→ のとき、急激に長くなる
RLC回路の動的挙動の例
過渡応答の周期 1/
≫ 1/2のとき (共振状態)
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等価回路モデル端子につながる導線間が浮遊容量を持つ
導体は回路を構成すればコイルと等価なので
小さなインダクタンス成分を持つ
数100MHz以上の周波数では無視できない。
コンデンサ
チップコンデンサ
電界コンデンサ
セラミックコンデンサ
コンデンサに並列な漏れ抵抗、それに直列なインダクタンスとしてモデル化できる。
抵抗
炭素被膜抵抗
抵抗に直列なインダクタンス、それに並列なコンデンサとしてモデル化できる。
極板間の絶縁抵抗は有限極板間に導電電流が流れる導体がインダクタンス成分を持つ
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定格電力(使用電圧、電流の上限)
実在の抵抗、コンデンサ、インダクタには定格電力(素子の耐えられる電力)が決められている。
例えば、1/8W,1/4W,1/2Wなど。
定格電力を超えた電力を与えると発火の危険がある。
商用100 [V]電源の定格800 [W]の電熱線ヒータ
もし、12.5Ωの抵抗器に8Aの電流を流せば
800Wの電熱線ヒータ程度の熱が発生する。
流れる電流は 800 [w] / 100 [V] = 8 [A]
電熱線の抵抗は 100 [V] / 8 [A] = 12.5 [Ω]
電熱線の抵抗で消費されるエネルギーは熱に変わる
燃えて当然
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浮遊容量や非線形性についてはその都度、理想的な素子でモデル化する。
重要なことは、理想的な素子の動特性を解析できるようにすること。
同様なことはコンデンサやコイルにも当てはまる。
したがって、抵抗端の電圧と流れる電流は
素子の非線形性
抵抗の抵抗値は温度に依存 抵抗の温度は電流に依存
抵抗値が 電流に依存する
[A]
Ω
抵抗の特性
電流が多く流れている実在の抵抗の端子電圧と電流は比例しない
実在の素子では線形な特性はある条件に限られることに注意。
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理想電圧源負荷に関わらず電源電圧 が一定
理想電流源負荷に関わらず電源電流 が一定
電源には電圧源と電流源の2種類に分けられる? 両者は同じ
実在の電源に関して(電圧源と電流源)
一般の電圧源は理想電圧源 と内部抵抗 の直列接続でモデル化できる
一般の電流源は理想電流源 と内部抵抗 の並列接続でモデル化できる
≅ 1 1
/となるような電流源に
変換できる
任意の電圧源に対して
負荷から見た電源はどちらにも表現できる
負荷に対し、内部抵抗の十分小さい電源を電圧源 、十分大きい電源を電流源と呼ぶ
≪ (定電圧源) ≫ (定電流源)
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・抵抗 R
・キャパシタ C
・インダクタ L
インダクタ電流は急変しない。
キャパシタ電圧は急変しない。
素子の動的挙動まとめ