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1 平成5年(行ウ)第4号再処理事業指定処分取消請求事件 大下由宮子 外157名 経済産業大臣 面(123) 核燃料サイクル施設に係る新規制基準骨子案に対する疑問と批判 青森地方裁判所 民事部御中 2013年(平成25年) 9月 6日 原告ら訴訟代理人 外13名
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Sep 10, 2020

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1

平成5年(行ウ)第4号再処理事業指定処分取消請求事件

原 告 大下由宮子 外157名

被 告 経済産業大臣

準 備 書 面(123)

核燃料サイクル施設に係る新規制基準骨子案に対する疑問と批判

青森地方裁判所 民事部御中

2013年(平成25年) 9月 6日

原告ら訴訟代理人

弁 護 士 浅 石 紘 爾

弁 護 士 内 藤 隆

弁 護 士 海 渡 雄 一

弁 護 士 伊 東 良 徳

外13名

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第1.はじめに

被告原子力規制委員会は、原子力発電所の新規制基準策定(平成25年7月8

日施行)に次いで、核燃料サイクル施設(再処理施設、核燃料加工施設、使用済

燃料貯蔵施設、第二種廃棄物埋設施設・廃棄物管理施設など)の新規制基準につ

いて、平成25年7月24日に骨子案を発表し、これに関する国民の意見(いわ

ゆるパブリックコメント)を募集した。

原告団と原告が行った意見を集約して、本準備書面をもって新規制基準の疑問

点を指摘する。

なお、12月策定予定の最終案に対するパブコメ募集が行われることになって

いるので、評価については再度検討して、準備書面を提出する。

第2.総論―再処理政策の撤回と再処理施設の即時廃止

1.再処理で抽出したプルトニウムをどのように消費しようとするのか。

「プルトニウムリサイクル」は、使い道あっての政策であるが、高速増殖

炉計画は完全に挫折し、代用手段とされるプルサーマル計画は、高コストを国

民負担に転化するだけで、安全性にも疑問があり、また福島原発事故以降の脱

原発国民世論の高揚は計画の実施を困難にしている。再処理の継続は余剰プル

トニウムの更なる増量を招き、国際公約に違反し核拡散を助長し、テロの対象

となる。

再処理コストは約11兆円と試算され、再処理等積立金の形で国民負担を

強い、ただでも高い電気料金を押し上げている。使用済燃料の直接処分費用は、

再処理の半分以下と言われており、高いコストをかけて抽出してもプルトニウ

ムは使い道がない以上、商業用の六ヶ所再処理工場には「経理的基礎」は認め

がたい。

原子力先進国で再処理を発電手段と位置付けている国は皆無である。費用

対効果の観点からプルトニウムが有用であるとの評価は過去のものとなった。

我国だけが官僚主導で核燃料サイクルを推進し、潜在的核保有を意図する政

治勢力が後押ししているのが現状である。

3・11により、原発の安全神話はもろくも崩壊した。事故原因は未だ解

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明途上で、しかも汚染水の漏出などにみられるように事故は未収束である。

地震・津波などの自然災害が六ヶ所を襲い、再処理施設において電源喪失、

冷却機能喪失によりフクシマの悲劇が再現されない保証はどこにもない。と

りわけ、施設直下、あるいは近傍の活断層の活動によって基準地震動450

ガルの再処理施設が健全性を保てるかは極めて疑問である。更に、軍用・民

間を問わず多数の航空機が往き交う空域で、墜落による施設破壊を防護する

ことは不可能に近い。

再処理技術は確立しておらず、臨界事故、火災爆発事故の対策は未経験で

ある。平常運転中に全量放出されるクリプトン、トリチウム、炭素その他の

死の灰による汚染・被ばくは深刻である。新規制基準によっても、安全上の

リスクが解消されるとは到底考えられない。

(2)核燃料施設等に係る新規制基準骨子案の概要において、「設置許可/事業

(指定)許可基準については、東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓、

国際的な基準等を踏まえて強化。重大事故については、新たに規制項目とし

て対策を要求。」としている。しかし、事故を起こした福島原発の状況は惨憺

たる有様で、未だに毎日3000人を超える現場作業員の方々が、非常に困

難な被曝労働に従事せざるを得ない状況が続いており、今後は作業員不足も

憂慮される事態であるとの報道もなされている。

今回の新規制基準の策定より、福島第一原発の難問-「溶融した炉心はど

こにあるのか」「地下水はどこから原子炉建屋に流入しているのか」「大気圏

や海域に流出している放射能はどうすれば止められるのか」「事故を起こした

原発の廃止はどうすればよいのか」-等の対策を優先し、原子力規制委員会

及び原子力規制庁が総力をあげて立ち向かうべき時である。

第3 各論

1.はじめに

原告団は、上述のように核燃料サイクル施設の即時全廃を主張するものであ

るが、現実に核燃料サイクル施設が稼働し、または稼働が予定されている以上、

青森県民や全国民の権利と安全を確保する観点から、この骨子案に対する意見

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を述べ、二度と悲惨な原子力事故が起こらないための意見を述べるものである。

2.再処理施設の「設計基準」について

(1)基準が抽象的で旧指針と大差ない

以下の「設計基準」を具体的に明記しなければ福島原発事故以前と同様、

恣意的運用が繰り返され再発防止は全く期待できない。

㋐「異常な過渡変化より低い頻度」の定量的頻度基準(1.総則(2)用語

の定義⑤)

㋑「プルトニウム濃度の非常に低いもの」の定量的濃度基準(同⑪)

㋒全量垂れ流しのクリプトン・トリチウム、炭素についての、規制基準(共

通技術要件(7)〔詳細〕)

㋓放出放射性物質の濃度・量の規制値(個別施設の技術要件(4)〔事項〕)

㋔放射線量の規制値(個別施設の技術要件(6)〔詳細〕

(2)一般公衆の被曝線量は「1mSvを超える」とすべきである。

一般公衆の被曝線量は、「発生事故当たり5mSv を超える」は甘すぎる内

規であり、ICRP1990 年勧告に基づく一般公衆の被曝限度を準用して、「発生

事故当たり1mSv を超える」とすべきである。

六ヶ所再処理工場では、これまでの試験操業時においてさえ大小多くの事

故やトラブルが頻発しており、経済性が優先される本操業時には更なる頻度

の増加が予想される。

(3)自然現象に対する配慮について

① 第三者委員会の設置

〔要求事項の詳細〕A に「地震・津波及びその原因となる活断層等の評

価については、公正・中立で透明性の高い第三者委員会を設置し、その判

断に従うものとする。」との項目を追加する。

福島第一原発事故を含め、昨今の混乱した状況を生み出した地震・津波

及び活断層等の評価・判断は、謀議のごとく進められた推進派の学者・専

門家による安全審査が元凶である。今後このような混乱が生じないよう、

明文化しておく必要がある。

② 基準地震動の数値底上げ

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六ヶ所再処理工場は、配管部分の長さが約1300km あり、これが1

8の建屋の地下部分に配置されている。この施設には膨大な放射性物質が

溜め込まれており、地震により配管が破断すれば、周辺環境への放射性物

質の漏洩が危惧される。

一方で、基準地震動は、柏崎・刈羽の原発震災以降、各原発で底上げが

なされ、未だに改められていないのは青森県の原子力施設だけである。

大間原発は工事中なので、耐震補強工事は容易に着手できるし、東通原

発は耐震補強工事の準備も可能としている。

ところが、六ヶ所再処理工場の耐震補強工事は事実上不可能である。既

に施設そのものは殆ど完成し、過去にアクティブ試験で425トンの再処

理を行い、既に工場全体が放射性物質で汚染され、作業員が配管等に容易

に近づくことができず、補強工事が困難だからである。

再処理工場が運転を始めれば、少なくても40年間の運転期間を予定し

ている。日本全体が、地震の活動期に入っており、巨大地震が30年後に

は起きると言われている。そこで、将来の子孫が、再処理工場を襲う地震

の被害に巻き込まれないためには、基準地震動の数値を大幅に上げるべき

であるが、それが不可能な以上再処理工場は稼働させるべきではない。

③ 施設の安全性は抽象的な「設計基準」では確認できない。具体的な技術

基準を明示すべきである。

「耐震設計上の安全機能を有する設計」、「津波に対する適切な設計」、

「自然現象によって安全性を損なうことのない設計」、「過酷事象に耐える

設計」という言葉が並んでいるが、六ヶ所再処理工場では、これまで様々

な設計ミスが発覚したし、作業ミスも起きている。

再処理工場の着工から20年を経たが、工場全体が不均一な地盤上に建

ち、地盤沈下を繰り返してきた。その上に、初期の工事現場では、現場監

督をした電力会社からの出向社員が現場を見たことがないという事態も

発覚し、様々な施工ミス等が指摘されてきた。

特にひどいのは、建屋毎に施工会社が違うため、各建屋同士をつなぐ配

管に約1mのずれが生じて、工事の完成時に配管の接続が困難となる事態

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も発生している。

そのような施工状況を考えると、仮に設計が立派であったとしても、施

工現場でひどいことをしていれば、再処理工場自体は見た目の完成図とは

違った欠陥工場となる。

従って、設計基準の妥当性と施工の適切性とは、別次元であることを考

慮すべきである。

④ 事故時被曝線量は「1mSv を超える」とすべきである。

〔要求事項の詳細〕O「敷地周辺の一般公衆の‥‥発生事故当たり 5m

㏜を超える」は甘すぎる内規であり、「‥‥1mSv 超える」とすべきであ

る。

六ヶ所再処理工場立地周辺地域では、大津波の形跡も確認されており、

また大きな地震も頻発していることから、ICRP1990 年勧告に基づく一般

公衆の被曝限度である1mSv 準用すべきである。

(4)外部人為事象(航空機墜落、妨害破壊行為)に対する考慮

① 航空機対策は不十分である。

再処理施設を含む六ヶ所核燃料サイクル施設の上空は三沢特別管制区

域に指定され、頻繁に民間航空機、軍用機が飛び交っており、施設への墜

落の確率が高い。従って、大型航空機、大型・小型軍用機、爆弾を搭載し

た軍用機の落下、9・11 のような航空機テロを想定し、落下条件(機体の形

状、重量、速度)を特定した上で具体的防護設計を明示すべきである。

安全審査の過程では、戦闘機の衝突速度が不当にも215m/秒ないし

340m/秒が無視され、150m/秒に限定されて衝突時の衝撃を故意

に過小評価している

国の航空機落下確率10のマイナス7乗が過小評価であることは住民

感覚としてよく知られた事実であり、施設には落下に耐えられる強度が必

要となる。なお、軍用機は実戦配備されており、スクランブル発進等は日

常茶飯事であることから、実弾を積載した戦闘機の直撃はもとより、日本

を敵視する近隣国からのミサイル攻撃や空爆、艦砲射撃等も考慮すべき状

況にある。

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なお念のため付言すると、“それ等は外交交渉で解決されるべき問題”

との見解は、昨今の我が国政府の外交交渉の現状からは空疎な言い訳であ

る。

② 我が国の原子力発電所は、すべて海岸に建設されている。

有事の際、外敵からの攻撃が原子力発電所に集中することは、公知の事

実である。

青森県は日米のミサイル防衛構想のおひざ元であるが、軍事施設の近く

に原子力施設が配置されている状況は極めて危険である。

近隣国からのミサイル攻撃を想定して、国民保護法を制定した。そのた

めに、日本海側の米軍基地に X バンドレーダーを配備し、三沢市の米軍施

設内に Jタグスを設置し、むつ市の釜伏山に巨大レーダーを展開している。

その情報を米軍が分析して、日本海に配備されるイージス艦に指令を出し、

弾道ミサイルを破壊する。それが失敗した場合は、パック3で迎撃すると

なっている。

敵となる国から見た時に、このレーダー網は真っ先に破壊すべきターゲ

ットであり、有事の際に戦闘機やミサイルを用いて破壊命令が下されるの

は必然である。そのレーダーの近くに原子力発電所や中間貯蔵施設、再処

理工場があるのである。

このような武力によるレーダーへの攻撃に対して、現在の日本の防衛力

が万全の備えを有しているとは思えない。現憲法のもとでは、これ以上の

戦闘能力の備えには限界がある。

従って、ミサイル攻撃などの妨害破壊行為から再処理工場を守れること

は、事実上不可能と言わざるを得ない。

なお、最近になって、日本原燃は、事業申請書で示してきた工場の模式

図から、各工程を示す名称を削除するようになった。これはテロ対策と思

われる。

③ 国家石油備蓄基地の存在及び核燃施設の集中立地に対する考慮が欠落し

ている。

六ヶ所再処理施設に近接して、総容量約570万 kl の国家石油備蓄基

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地(1基11.2万 kl の原油タンク51基)あり、地震等で原油タンクから

の流出、火災事故が引き起こされると、再処理施設のみならず、隣接して

いる核関連施設の災害要因となりうる。新設計基準には、これら近隣の大

型施設に対する検討が欠落している。

(5)閉じ込め機能について

核種の「年間放出量」の算定方法が合理的でない。

本来、大気中に放出しないように、フィルタ、洗浄塔の除染効率を高める

べきで、それが出来なければ、放出量を規制すべきである。一般公衆の放射

線量から逆算して決めている現在の算定方式を改めるべきである。

なお、大気中への放射性気体廃棄物は、「発電用原子炉施設の安全解析に

関する気象指針」を適用しているが、環境の放射線量から逆算された放出量

がそのまま「年間放出量」と許容されているだけであり、全く科学的に合理

性がなく、法的にも上限が規制されていない。

また、現在の「気象指針」では、六ヶ所再処理工場でアクティブ試験時の

2006年8月18日、2007年9月9日の主排気筒からのクリプトン8

5の吹き戻しによって敷地内に沈降・対流した現象の説明ができない。フラ

ンスでは10数年前から、有効煙突高度の算定式を低く見直しており、本基

準改定時に、あわせて従来の「気象指針」も根本的に見直すべきである。

(6)「単一誤操作の連続性」による「臨界可能性」を排除できない。

六ヶ所再処理工場の MOX 燃料乾燥工程で、過去に MOX 燃料の二重装荷

が発生した。これは、乾燥工程の内部が高温で蒸気が上がり、内部が良く見

えない状況の中で、一度乾燥した受け皿で、再度 MOX 燃料を乾燥しようと

したことが原因であった。

その後、日本原燃は改善策を発表したが、同様の工程は工場全体の至る所

で起きる可能性がある。

いかに臨界防止対策を講じていても、肝心の操作員の教育訓練が不備であ

れば、同じような二重操作、三重操作を行い、臨界発生を回避することは困

難である。

なお、最初の設計では機器を二重に用意して、一方が不調となった場合は

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別なものを使うとなっていた。ところが、その後、建設費の高騰で、二重に

用意するはずが一つしか用意していない箇所もある。

その結果、一つの工程で不調が生じると、再処理工場全体が停止するとい

う事態もありうる。

また、再処理工場は年間800トンの再処理を目標に掲げているので、現

場を預かる作業員としては、計画通りの運転計画に縛られる。従って、多少

の機器の損傷があっても、その個所を直すため、工場全体を止めることはで

きないという意識が働く。

このような状況下で、現場作業員が単一誤操作を繰り返せば、臨界に至る

可能性は極めて大きくなる。それを回避するためには、年間800トンの再

処理計画を白紙に戻して、臨界管理を徹底することを優先すべきである。

言うまでもなく、MOX 燃料の使い道がない以上は、再処理事業そのもの

を止め、これまで溜まった核のゴミの一切を日本原燃の責任と費用で、早急

に安全処分する方策を講じるべきである。

(7)単一故障について

単一故障(共通技術要件(13))は、動的機器に限定せず、静的機器も

含めるべきである。

(8)照明用電源の再検証を

六ヶ所核燃サイクル施設の多くは、外部からの照明を取り入れない構造に

なっている。窓はなく、コンクリートで覆われている。特に、再処理工場は

壁厚が1mを超え、内部の照明はすべて蛍光灯に依存している。

この蛍光灯の寿命を超えて使い続けたが故に、最近火災が発生した例もあ

る。原因はメーカー保証の利用時間をはるかに超えたことによる。

もともと蛍光灯は、夜間の利用を前提としており、昼夜分かたぬ長時間フ

ル稼働を設定していないからである。

ところが、再処理工場内は24時間の連続使用が当たり前であり、それを

メーカー保証の年限を超えて利用して火災発生に至ったというのである。

その事例から考えると、全電源停止になった際、非常用電源の起動と同時

に避難用の照明が灯るように設定せよというのは、当然の要求である。しか

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し、そこに使われる照明器具が寿命を超えていれば用をなさない。寿命を維

持し、定期的な交換がされるようなマニュアルの確認が必要である。

非常用電源設備が、非常用照明の備えとして、十分かどうかを、再度検証

すべきである。

(9)外部電源対策は不十分

外部電源対策として、外部電源喪失後の復旧期間を7日間としているのは

短すぎる。最低でも福島原発事故の完全復旧に要した11日間以上とすべき

である。また、送電線の鉄塔は耐震 S クラスにしなければ、2回線共倒れの

事態に対応できない。

(10)放射性廃棄物発生量の低減対策の不備

六ヶ所再処理工場は商業施設であるが故に、東海再処理工場のような実験

施設と違い、経済性を理由に環境中に放出する核種が認められてきた。

その代表的なものが、クリプトンとトリチウムである。東海再処理工場で

は全量回収といわれているが、六ヶ所再処理工場では当初設計では設置され

ていた除去装置は排除され、また、上記核種につき規制値を設定している原

発と異なり、全量放出(たれ流し)を許容している。

この際、新たな規制の下で、全量回収もしくは定量管理基準で放出量を規

制すべきである。

(11)再処理施設由来の廃棄物の行き先はどこか?

六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設施設については、当初は、「原子力発電

所由来の均質固化体」とされたが、変更許可申請で「雑固化体と当施設由来

の廃気物」と変わった。この段階では、まだ再処理工場の廃棄物を受け入れ

ることにはなっていない。

ところが、事業者は、「将来は核燃サイクル施設で生じた核のゴミも受け

入れる予定である」ことをパンフレット等で謳っている。

ただし、現在はウラン濃縮工場由来の廃棄物を受け入れる申請はないし、

再処理工場の核のゴミも受け入れることにはなっていない。

その結果、ウラン濃縮工場と再処理工場には、それぞれ低レベル放射性廃

棄物の貯蔵施設が付設されている。

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かつて、六ヶ所再処理工場内に大量のゴミが放置されている事態が報道さ

れた。焼却可能なゴミがゴミ袋に入れられて、通路の半分をふさいでいたと

いうことである。

再処理由来の低レベル廃棄物の処理・処分方策を明示すべきである。

(12)パラメータについて

「安全性を確保する‥‥パラメータ」にはα線、β線、γ線、中性子線及

び水素濃度のリアルタイム計測器を設置すべきである。

1997年の東海再処理施設事故や1999年の JCO 臨界事故、そして

2011年の福島第一原発事故など大小多くの事故が日常的に発生しており、

事故の感知やその推移を把握するには必要不可欠である。

(13)廃棄物処理施設について

① 「‥‥線量目標値50μ㏜/年を参考に‥‥」は、規制者側が決定すべ

きものである。

事業者任せでは何も進まないことを福島原発事故が明らかにしている。

このような愚挙は二度と起こしてはならず、事業者任せにはできない事項

である。

② 排水の放出口での濃度規制が不当にも無視されている。

一般の原子力施設では、液体廃棄物の放出口での排水に対して濃度規制

が適用されている。しかし、国は1971年の総理府令で再処理工場での

濃度規制を適用除外し、住民の被曝線量だけで規制する方式にすり替えて

大量の放射能の海洋への垂れ流しを可能とした。これによって、例えば六

ヶ所再処理工場のトリチウムの場合、一般の原子力関連施設から排出され

る規制濃度(3カ月平均濃度)60Bq/㎤のなんと 2,750 倍が許容されてい

る。今回の基準改定に伴いこれまでの海洋を汚染する不合理を根本的に改

め、一般の原子力施設で行っている放出口での濃度規制に改めるべきであ

る。

(14)放射線量の評価について

「放射性物質の設定」,(b)「放射線量の評価」については、規制者側が決

定し評価する必要がある。

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放出される放射性物質の化学的・物理的性質や数量に基づき、規制者側が

判断すべきであり、特に半減期が長く、その化学的性質にしたがって-例え

ば福島現地の放射性セシウム-周辺環境に残留・蓄積しやすいものは、年々

歳々の放出量を考慮する等の慎重な判断が望まれる。

(15)放射線量の規制値について

放射線防護施設〔要求事項〕「‥‥敷地周辺の放射線量を十分低減できる

こと」は規制者側が具体的数値を提示すべき。

事業者任せでは何も進まないことを、2年5ヵ月経った福島原発事故の昨

今が明らかにしている。定性的な精神規定や訓示規定では意味をなさない。

3.再処理施設の「重大事故対策」について

(1)立地審査指針の欠落

重大事故対策の有効性の評価につき、原子炉の新規制基準と同様に「立地

審査指針」に該当する基準が抜け落ちており、有効な住民の被曝対策が講じ

られなければならない。

(2)重大事故対処手段

① 可搬式の事故対策手段の保管場所は、「100m以上」の隔離では足りな

い。

再処理工場で扱う放射能の量からすると、地震や津波、大型航空機の墜

落やテロ攻撃を受けた際、その影響の及ぶ範囲は、広大となることが予想

される。そのような場合に、「100m以上」隔離された場所に保管する

ことでは十分な対策とは言えない。

例えば、可搬式設備ではないが、福島原発事故の際、既定のオフサイト

センターが使えず、約60㎞離れた福島県庁内に設置した。六ヶ所再処理

工場の場合は、既にある約3㎞離れたオフサイトセンターが使い物になら

ず、遠隔地に用意する計画が進行している。

事故収束に当たるオフサイトセンター並みに、遠隔地に保管するべきで

ある。

② 予備品等の確保を具体的に

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六ヶ所再処理工場の工事現場をバスで見学した際に、実に多くの鉄筋等

が野ざらしに積まれ、赤さびが浮いた状態が目撃された。この資材は、再

処理工場の建設に使われたものであるが、保守管理のずさんさは目を覆う

ばかりである。

再処理工場は、約 1300 ㎞の配管と、24000 個所の継ぎ目、点検が必要

な 10000 基の機器で構成されている。その多くは、定期的に交換されるが、

その保守管理がずさんだと交換後にトラブル発生が予想される。

これはウラン濃縮工場で実際に起きたことだが、市販品のジャック一個

が不良品であったことから、ウラン濃縮工場が止まったことがあった。

1000 個単位で納入したもののうち、0.1%に当たる1個に製造上のミスが

あり、それが工場を止めたのである。

点検が必要な器機が 10000 基となれば、それの交換に必要な予備品等

も相当量確保しなければならないことは明らかである。

予備品の確保と保守管理が適切に行われるよう具体的な基準を設定す

べきである。

(2)外部からの早急支援は期待できない

六ヶ所再処理工場内で事故が発生した際に、放射能の影響がない場所で事

故原因の究明をする施設を作るように初期設計されていた。しかし、その後、

経済性を理由に建設は中止され、その代わりに、先進地である仏国、英国、

東海事業所から指導を得るということになった。ガラス固化施設で不調が起

きた際、東海村にモックアップ施設を作り原因究明をしたりフランスのアレ

バ社との技術支援協定を締結したことがそれである。

しかし、事故発生時には、即座に原因究明をする必要があるから、再処理

工場内に建設して安全確保に努めるべきである。

(3)B-DBA(設計基準事故を超える事故)対処の困難性

再処理工場勤務の社員は約1500名を切っている。その中でも、地元採

用の社員が多いが、彼らは運転員である。また、電力会社からの出向社員も

相当数いるが、再処理工場の技術的なノウハウを持つ出向社員は稀有に等し

い。そのような中で、「B-DBA に対応できるチーム」を編成することは極

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めて困難であり、机上の空論に終わるおそれがある。

ところで、電力会社からの出向社員の多くは、放射線領域に入ることを極

度に嫌っている。青森県内から採用された下請け企業の社員に対し、被ばく

の強制をすることはあっても、自分がその場所に立ち会うことはしない。

部品交換は、メーカーごとの技術の守秘義務も兼ねているので、事業者が

技術を把握しているとは思えない。すべては、メーカーもしくは下請けの保

守管理会社に丸投げしているのが実態である。まして高線量の下でとか、夜

間や悪天候下での作業などは、初めから事業者には期待しても無駄であり、

チーム編成にあたっては、このような特殊事情を考慮すべきである。

なお、B-DBA の用語は使わず、「重大事故」で統一すべきである。

(4)補給水・水源の確保対策の不備

「移送ホース、ポンプを準備」は甘すぎる内規であり、「恒設の設備」に

変更する必要がある。

福島原発事故では、緊急時の「移送ルートの確保」や「移送ホース・ポン

プ等の設置」がいかに困難かを物語っており、この教訓が全く生かされてい

ない。

(5)モニタリング設備の完備

「モニタリング設備は‥‥」の具体的内容として、α線、β線、γ線、中性

子線のリアルタイム計測器を設置すべきである。

1997年の東海再処理工場事故や、1999年の JCO 臨界事故、そし

て2011年の福島第一原発事故など、大小多くの事故が日常的に発生して

いるのが現実であり、事故の感知やその推移を把握するためには必要不可欠

である。

(6)意図的な航空機衝突等のテロリズム対策の不備

大型機が衝突した場合、施設の防護設計は無能化し、緩和対策は無意味で

ある。

新基準はテロリズムだけを想定しているが、ミサイル攻撃、空爆、艦砲射

撃も考慮に入れるべきである。

(7)有効性評価の判断基準の不備(冷却機能喪失による蒸発乾固)

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「放射性物質の放出量がセシウム137換算で100テラベクレルを十

分下回るものであって、かつ、実行可能な限り低いこと」とあるが、放射性

希ガス、放射性ヨウ素、トリチウム、放射性ストロンチウム、プルトニウム、

ウランを含む全ての核種を対象にすべきである。

福島第一原発事故の際にも、現在も問題になっている放射性セシウムの他、

多くの核種が確認されていることから、全核種を対象とすべきであり、放出

量についてもその根拠を説明する必要がある。

3.第二種廃棄物埋設施設について

本件再処理施設と直接の関連性はないが、青森県民や国民に十分な情報提

供がなされないまま、秘密裏に最終処分場計画が進行しているので、この施設

について付言する。

余裕深度処分とか第二種廃棄物とか、言葉が定まらないようであるが、所

謂原子力発電所の廃炉過程で出る放射性廃棄物に関しては、地下50m~10

0までの深さに埋設することが検討されてきた。しかし、今回の規制は、地下

50mより浅い埋設としている。

ちなみに、六ヶ所村における低レベル廃棄物の処分方策の推移は、“なし崩

し”状態と言っても過言ではない。最初は均質固化体を受入れさせ、次に雑固

化体を認めさせ、更には海外返還の低ベル廃棄物に変えて高レベル固化体の本

数を増やした(単一返還方式)。今後は原子燃料サイクル施設がらみの核のゴ

ミも低レベル放射性廃棄物として受け入れる予定と放言している。

そういう経過を考えると、余裕深度処分という言葉は、青森県が将来廃炉

廃棄物の墓場となることを暗示している。

尾駮沼周辺で進められている研究施設は、地下水豊富な沼の縁に近く、適

地とはほど遠い。ところが、電気事業連合会は適地であるかのように宣伝して、

日本原燃に受け入れを検討させているとされている。

三村知事は、使用済燃料が再処理されないなら持ち帰れと厳しく迫るが、

核のゴミが次から次と押し付けられることに対しては異議を述べたことがな

い。また、六ヶ所村長も、核燃がないと六ヶ所村は限界集落並みになると恫喝

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している。

青森県が日本中の核のゴミの一大集積地になることはあってはならない。

従前のずさんな低レベル埋設事業許可の轍を踏むことなく、厳格な審査基準の

策定と審査が求められる。