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労働災害の原因のひとつに「知識不足」や「技能未熟」と
いうのがあります。初めての現場に入るときは誰しも不安が
あります。現場の状況がわからないし、元請や他職の人たち
に顔見知りがいなかったりします。現場特有のルールがあっ
たりします。安全作業を行うためには事前に「知らないこと」
を教えてもらうことは重要です。
朝礼にも参加せず、新規入場者教育も受けずに勝手に現場
に入り、開口部から墜落して死亡した例もあります。
「大切な自分の命」と「大切な家族」を守るためにも新規
入場者教育を受けてください。
本冊子は、新規入場者教育とはどんなもので、何を学べば
よいのか? という疑問にこたえるものです。様々な場面で
使っていただき、新規入場者による労災事故を防ぎましょう。
はじめに
目 次
はじめに1 新規入場者は災害にあいやすい!………………………………………… 22 送り出し教育とは? 新規入場者教育とどう違うの?………………… 33 新規入場者教育とは?……………………………………………………… 44 教育内容……………………………………………………………………… 6
1安全施工サイクル…/2作業を行う上でのルール…/3現場内設備の使用取り決め…/4危険箇所、立入禁止箇所…/5危険予知(KY)の具体的な実施…/6正しい服装・安全帯・保護具…/7指差呼称…/8墜落・転落災害…/9電動工具・脚立…/…� 5S と安全通路…/�熱中症の予防、健康の保持
コラム「現地KYで、現場の危険に敏感になろう」…………………………… 285 産業廃棄物の処分ルール………………………………………………… 296 作業に必要な資格………………………………………………………… 30コラム「資格はなぜ必要なの? それは、あなたの命を守るため!」… ……… 32
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新規入場者は災害にあいやすい!
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「工事現場で起こる災害にあいやすい人には、共通点があります!」
このようにお話すると、驚くかもしれません。しかし、共通点はあるのです。
それは「新規入場者」であることです。
◉新規入場者とは
新規入場者とは、工事現場に入場して間もない人のことです。実は、災害に
あった人の約70%は、新規入場してから7日以内に被災しているのです。
国土交通省の直轄工事では、事故の3分の1は新規入場後7日以内に発生し
ているとのデータがあります。
0
5
10
15
20
25(人)
入場日数(日)
■ 死傷者数
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
出所:国土交通省「安全啓発リーフレット(平成30年度版)―直轄工事における事故発生状況」より
◉なぜ、新規入場者の災害が多いのか
新規入場者の災害が多い、その大きな理由としては、「現場特性をよく知ら
ない」からです。現場のルールや危険
箇所は現場ごとに異なりますよね。入っ
たばかりの時期は、それらがよくわか
らず、災害にあってしまうケースが多
いようです。
最初の7日は災害の可能性が大きいと知ろう!
特に初日に多い!
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送り出し教育とは?新規入場者教育とどう違うの?
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「新規入場者教育」と似たものとして、「送り出し教育」があります。この
2つの教育の違いは、どのようなものでしょうか?
先に答えを言うと、実施する時期と場所が異なります。新規入場者教育は、
工事現場に入場した日の朝(朝礼後)に現場事務所等で行うのに対して、送り
出し教育は入場の前日までに、各事業所(会社事務所)で行います。
内容の違いは、新規入場者教育では、当現場のルール等を学ぶ事に対し、送
り出し教育では、仕事を行う上で必要な安全衛生の基本を学びます。○新規入場者教育と送り出し教育の違い
新規入場者教育 送り出し教育
実 施 者 協力会社の職長・安責者 協力会社の安全衛生担当または職長・安責者
実施期間 工事現場入場日の朝(主に朝礼後)
工事入場日の前日以前または定期実施
目 的 現場のルールを理解する 安全衛生の基本的知識を理解する
教育内容現場の危険箇所、他業者との関係事項、連絡体制等のルールや規則
安全衛生の基本方針、作業手順等または次に入場する現場のルールや特徴等
送り出し教育は、作業員の安全衛生の基礎力向上のために行います!
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新規入場者教育とは?3
新規入場後の最初の7日間は、最も災害にあいやすい時期です。元請会社も
協力会社も、この期間の災害防止には注意を払っています。
(1)入場前の確認
協力会社の職長・安全衛生責任者は、事前に元請会社に対して、必要事項を
書類で提出します。書類については、元請会社によって異なりますが、一般的
には次のような内容が含まれます。元請会社には次の書類を提出します。
・作業員名簿・所有資格一覧・健康診断実施記録(過去1年以内)・高年齢者・年少者就労届・送り出し教育記録・その他(使用車両届、使用機械届、作業手順書等)
(2)新規入場者教育の進め方
実際の教育の進め方は、一般的に次のように進めます。
① 職場体操・安全朝礼終了後に、現場事務所会議室や打ち合わせ室などに集合させる。②� 新規入場者アンケート用紙に、氏名、生年月日などの必要事項を入場者本人が記入する。
③ DVDや教育テキスト、資料を使って、新規入場者教育実施内容を教える。④ 新規入場者アンケート用紙に記載事項を確認後、署名させて終了する。
新規入場者教育は、送り出し教育と共通した内容も含みますが、現場特有の
注意事項も多く含みます。しっかりと理解し、現場作業に取り掛かりましょう。
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(3)新規入場者教育の内容
新規入場者教育は、朝礼やKY、作業前点検の後に行うことが多いようです。
場所は、現場事務所や休憩所が使われます。送り出し教育で、実施内容の一部
を教育していた場合は、その項目は省略されます。
・労働者が混在して作業を行う場所の状況・労働者に危険を生ずる箇所の状況・混在作業場所において行われる作業相互の関係・退避の方法・指揮命令系統・担当する作業内容と労働災害防止対策・安全衛生に関する規定・建設現場の安全衛生管理計画の内容
出所:「元方事業者による建設現場 安全管理指針のポイント」より(厚生労働省)
「労働者が混在して作業を行う場所の状況」例 「労働者に危険を生ずる箇所の状況」例
新規入場者は必ず、教育後に作業に取り掛かろう!
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教育内容4安全施工サイクル1
工事現場には、全作業員が災害にあわないようにするためのルールが必要で
す。作業の進め方のルールの代表が、安全施工サイクルです。
朝礼の掲示板に描かれているので見た経験はありますよね。
安全朝礼
毎日のサイクル
所長巡視
使用開始時点検
終業時の確認
持ち場後片付け
安全工程打合せ
安全ミーティング
新規入場者教育
作業中の指導監督
安全施工サイクルとは、現場で元請業者から作業員までが一体となって、工
事施工と安全衛生管理を一体的に進めていく手法のことです。
このサイクルでは月・週・日等の周期の中で、「誰が」「いつ」「何を」行う
かを定めています。
このサイクルに従い、「今は何をすればよいか」を自分で判断し、毎日、毎週、
毎月の単位で、きちんと回していくことで、現場のリズムを作り、安全衛生管
理の徹底を図ることができるのです。