76 機 械 設 計 1.はじめに 本誌 2018 年 11 月号 1) と12月号 2) の連載記事では, 外歯車の歯形係数の計算方法について,身近な表 計算ソフトを用いることとし,計算手順としては, まず歯元すみ肉部の形状全体の姿と曲線の座標 (r f , θ f )を求め,その接線の歯の中心線とのなす角 度が 30°となる点の座標(X sFn , Y sFn )から歯形係数 を求める実例を紹介した。本稿は,内歯車を対象 とし,すみ肉部を含めた歯の歯形全体の姿を図で 確認しながら,歯形係数を計算する方法を,実例 を交えながら紹介する。 2 .内歯車のすみ肉曲線全体の形状を見な がら歯形係数を計算する 2.1 内歯車の歯形係数の定義 内歯車の歯の曲げ強さについて,公称応力のた めの最弱断面の位置をどこにとるかについては, 歯たけの中央付近が問題となる場合もある 3) が, ここでは ISO 6336-3(2006) 4) と JGMA 6101-02 (2007) 5) の考え方に従い,最弱断面は歯元のすみ 肉部にあるとする。また,歯形係数を計算する際 の荷重点の位置については,「(1)内歯車の歯先で 考える方法」と「(2)かみ合う相手小歯車との, 同時にかみ合う歯の対の数が一対である領域内の 最も内側の点を最悪荷重点とする方法」があるが, 本稿では,まずは「(1)歯先荷重」をとり,必要に 応じて「(2)一対かみ合い領域の最も内側の点」 での歯形係数も考える。 負荷力が図1 のように歯先に加わる場合の歯形 係数 5) を式⑴に示す。 Y Fa = 6 h Fa m n cos α Fan ( s Fn m n ) 2 cos α n ⑴ ここで, Y Fa :歯先負荷に対する歯形係数 h Fa :曲げモーメントの腕の長さで,歯先でかみ 合っているときの作用線と歯中心線との 交点から歯元最弱断面までの距離 m n :歯直角モジュール α Fan :歯先を通過する作用線と「歯中心線に直 交する線」のなす角 s Fn :歯元最弱断面の弦歯厚 Y (XsFn, YsFn) φ φ=60° φ α Fan Fbt b h Fa sFn rb2 Fc 基礎円 図1 負荷が歯先の場合の内歯車歯形係数の定義 5) エイチエイチ・メカニカル 平澤 博 * *ひらさわ ひろし:代表 造船会社にて船舶推進用大形歯車,ホーバ・クラフト動力伝達軸系,各種大形機械用歯車などの研究開 発・設計に従事。岡山大学および岡山県立大学講師を歴任。博士(工学) ピニオンカッタで歯切りされる内歯車のすみ肉曲線と歯形係数を表計算ソフトで計算する (前編) 特別解説 歯車装置 の設計計算 から学ぶ 実 例 続・