松川排水区雨水貯留管雨水貯留施設における水理現象調査研究(富山市) 調査研究年度 2011 年度 浸水対策の推進 (目 的) 松川処理分区は合流式下水道で整備されているが,都市化の進展により,流域の貯留機能が低下し,浸水 被害が顕著になっている。また,雨天時に未処理下水の一部が越流して河川に直接放流されるため,河川 の水質汚濁が問題となっている。これらの対策として,管径 5m,延長 1.1km,貯留量 20,000m 3 (浸水対策 貯留;14,100m 3 ,越流水対策貯留;5,900m 3 )の松川貯留施設が計画されており,雨水と合流越流水を貯留 して浸水対策と合流改善を行うものである。 一方,貯留管の運用では,地下深い貯留管に雨水等を流入させる高落差工や管内の空気を速やかに排出す る排気施設が安全に機能することが重要である。これらの水理機能や排気機能が不十分な場合,施設の損 傷や人孔蓋の飛散などが生じる危険性がある。松川貯留管本体は,越流水対策と浸水対策を同時に行える よう本管が約 500m にわたって仕切られているなど,特徴的な構造であるため,水理的課題が不明な点が多 い。特に,浸水対策用の貯留管は,曲線区間で管断面が円形から半月形に変化するため,流入水の挙動や 空気の挙動が複雑となる。 本検討では, 図-1 に示す水理 模型装置の設計,製作の後,水 理模型実験により水と空気の挙 動を把握し,必要な対策工を検 討したものである。 (結 果) 検討で明らかになった水理的 問題点に対する本研究による成 果を以下に示す。 (1) 越流水対策区間の対策工 越流水対策区間では,原案の 合流人孔のドロップシャフトは 吐出管が下流の導水管に向けら れていたため,高流速で導水管 に流下し,射流流れとなり,流 況が不安定であるとともに,空 気連行を増加させる要因となっていた。この状況を踏まえ,最終案では,吐出管を狭角 90°で2方向に吐 出し,合流人孔内で整流する方式として,導水管へ穏やかな常流流れで流下させ,流況の安定化を図った。 空気抜き施設については,原設計案の空気抜き管の規模及び配置を最適諸元として提案した。 (2) 浸水対策区間の対策工 浸水対策区間の排気対策としては,①貯留管最上流端,②丸の内流入人孔近傍,③磯部流入人孔近傍の 3箇所に空気抜き管を設置する案を最終案とした。背割り区間については,貯留過程において空気が残留 しにくいため,空気抜き管は特に設置しないものとした。 最上流端の空気抜き管からは,原案時よりも現象が緩和されるが,被圧残留空気の噴出が生じやすいた め,空気抜き管からの噴出水を緩衝するための空気分離人孔を設置するものとした。 流入人孔近傍の2箇所の空気抜き管については,近傍の流入人孔に接続する方式とし,空気抜き管専用 の地上部の排気マスの省略を提案した。 ※ 日本下水道事業団,(財)下水道新技術推進機構 問い合わせ先:研究第二部 池田 匡隆,伊藤 雄二, 井藤 元暢,大嶽 祐介 【03-5228-6598】 キーワード 貯留管,浸水対策,合流改善 φ5000mm、2.0‰ (インバート部;1.1‰) P P P P M10 M11 M13 M14 分水 No.4 分水 No.2 分水 No.1 分水 No.3 φ2200mm 0.7‰ 110.92m φ1650mm、1.0‰、281.80m φ700mm、2.5‰、66.58m φ1650mm、1.0‰、172.78m φ1650mm、1.0‰、183.82m 斜坑管 φ500(2条) ⊿h=5.967m +4.030m -1.225m -8.392m -0.930m -1.287m -0.943m +4.196m -8.470m 越流水導水管 合流人孔 ⊿h=7.167m Q=1.362 Q=0.340 Q=1.798 ← Q=2.138 Q=2.515 → Q=1.152 ↓Q=4.653 らせん案内路式 DRSφ2000 ポンプ室 ゲート(開口φ1000) 浸水対策(貯留)越流水水対策(貯留)越流水対策用 貯留 区間延長 L=511.00m φ5000mm、1.1‰ 浸水対策用 貯留 区間延長 L=1062.00m -8.470m(DP=11.44m) *インバート底高 -7.903m *インバート底高 -7.303m(DP=13.29m) *インバート底高 M1 M2 -2 M2 -1 M3 M4 磯部雨水幹線(導水管) φ1650mm 分水12 多段自由 落下式 分水11 多段自由 落下式 分水10 多段自由 落下式 分水9 多段自由 落下式 既設管 φ800 既設管 φ800 既設管 φ1000 既設管 φ1000 -6.809m +2.089m 管底高+6.254m 越流堰高+7.070m 管底高+6.092m 越流堰高+7.210m 管底高+5.642m 越流堰高+6.908m +2.586m ⊿h=4.322m +2.248m ⊿h=4.962m φ1500mm φ1500mm φ1650mm φ1650mm 分水量 Q=1.240 分水量 Q=0.936 分水量 Q=0.343 分水量 Q=0.847 ↑ Q=3.212 M7 分水5 既設管 φ1400 分水量 Q=2.138 管底高+6.288m 越流堰高+7.472m らせん案内路式 DRSφ1650mm ⊿h=8.898m -6.457m ↑ Q=2.138 らせん案内路式 DRSφ1500mm ⊿h=13.929m φ1350mm 空気抜き管 φ600 空気抜き管 φ600 総曲輪雨水幹線 分水18 分水17 分水16 分水15 分水14 分水13 諏訪川原雨水幹線 φ1200mm φ1500mm φ1800mm φ1350mm φ800mm 分水量 Q=1.266 分水量 Q=0.434 分水量 Q=1.175 分水量 Q=0.829 分水量 Q=0.518 分水量 Q=1.261 ← Q=1.775 Q=2.788 → 越流水対策貯留量 【V=5,900m3】 浸水対策貯留量 【V=14,100m3】 松川貯留管φ5000mm 図-1 模型実験全体図 -1- 2011 年度 下水道新技術研究所年報[要約版]