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1.意思決定とは 2.合理的意思決定のための支援ツール 3.原発に関する意思決定 4.環境計画の意思決定 環境計画の意思決定 環境計画論 第9Feb.02, 2012 福島大学共生システム理工学類 後藤
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環境計画の意思決定a067/EnvPlan...AHP 法の手順 ①意思決定をするための問題から最終目標、評価基 準と代替案を決定する。評価基準は、互いに独立

May 01, 2019

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1.意思決定とは

2.合理的意思決定のための支援ツール

3.原発に関する意思決定

4.環境計画の意思決定

環境計画の意思決定

環境計画論 第9講 Feb.02, 2012

福島大学共生システム理工学類 後藤 忍

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1.意思決定とは

2.合理的意思決定のための支援ツール

3.原発に関する意思決定

4.環境計画の意思決定

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意思決定とは?

意思決定(Decision Making)の意味

意思決定の一般的な意味

いくつかある選択肢の中から 適なもの(代替案)を選ぶこと

状況をふまえ、所有する価値観に基づき行動を決定するメカニズム

意思決定と意志決定 Decision Makingの訳として「意思決定」が一

般的に使われるが、「意志決定」が使われることもある。

どちらが正しいという性質のものではないが、「意志決定」では「意志」の持つ個人的な要素の意味合いが強くなるため、本講義では、複数の主体間で「思い」を集約してものごとを決定することを重視し、「意思決定」を用いる。

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環境計画における意思決定 環境計画における意思決定

関連主体の間で、環境改善の方法について話し合い、 も望ましい手段を決定していくこと。

一般に想定される主体は行政(国、県、市町村など)、事業者(企業、自営業者など)、市民(国民、地域住民、地元住民など)の3者。近年では、NGO、NPOが4番目の主体として位置づけられることも多い。

主体の立場によって利害関係が異なることがある場合、しばしば合意形成は困難になる。

ex. 国際条約(京都議定書)

自然開発(長良川河口堰、諫早湾の干拓)

迷惑施設(新潟県旧巻町(原子力発電所建設を巡る住民投票,1996年)

岐阜県御嵩町(産業廃棄物処理施設を巡る住民投票,1997年)

高知県東洋町(放射性廃棄物 終処分場候補地を巡る問題,

2007年)

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意思決定において重要な点

意思決定に求められるもの

望ましい意思決定とは、意思決定の結果がより多くの人々により多くの幸福や利益を与えることと同時に、意思決定のプロセスが透明で合理的なこと、と言える。つまり意思決定の中身とそのプロセスの両者がともに重要である。

意思決定のプロセスにおいて重要なもの

参加:関連する主体の参加が支援されていること

→cf. 決定参加と情報参加

透明性:プロセスが一般に公開されていること

合理性:主体が納得できるような、論理的、科学的整合性が高いこと

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代替案の設計と評価 計画の立案

目的を達成するために必要となる様々な手段を考え、組織的に配列すること。

技術的な手法の他に、社会的な手法(規制、環境教育など)、経済的な手法(税金、補助金など)などがある。

計画代替案の設計

手段の種類や組み合わせを複数考え、代替案(alternatives)としてとりまとめる。

きめ細やかな代替案評価を行うには、ありなし比較の原則(with / without comparison principle)が用いられる。

代替案の順位付け

も望ましい代替案を選ぶには、総合的な改善効果を適切に測ることができる評価の視点と、定量的に測るためのものさし(環境指標や総合的環境評価)が必要となる。

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意思決定の類型 意思決定の主体

個人-組織-社会

意思決定の方向性 トップダウン-ボトムアップ

理論-実践の幅による類型意思決定を分析対象とした場合、1)規範的、2)記述的、

3)処方的の3つの類型が使われることが多い。

理論 対象とする問題 理論の評価基準 理論の判定者

規範的(normative)

すべての決定 理論的一貫性 理論上の賢人

記述的(descriptive)

ある種の決定 経験的妥当性 実験・観察者

処方的(prescriptive)

特定の決定 有用性 運用する分析者

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2.合理的意思決定のための支援ツール

3.原発に関する意思決定

4.環境計画の意思決定

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合理的意思決定のための支援ツール

合理的な意思決定と数理的手法

意思決定の合理性、客観性を高めるために、数量的な扱いに基づく計画代替案の評価および選択の方法が開発されてきた。このような手法のことをここでは数理的手法と呼ぶ。

理論的な枠組みを構築し、定量的な評価を可能にする上で、数理的手法が開発されることは望ましい。

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数理的手法の意義と留意点

数理的手法の意義

①意思決定者の判断に定量的な根拠を与えること、②過去の意思決定においてどのような基準が重視されたのかを遡って分析することが可能なこと、などがあげられる。

数理的手法の留意点

多面的な評価を可能にするものではあるが、唯一の 適解を決定するものではないため、得られた結果を直接的・断定的に政策決定の場に用いることは危険である。

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適化の手法

適化手法の例

線形計画法(Linear Programming)非線形計画法(Nonlinear Programming)動的計画法(Dynamic Programming)ゲーム理論(Game Theory)

適化の事例―線形計画法―線形計画法は、目的関数と制約式が一次(不等)式で表される 適化問題(つまり線形計画問題)の解法を中心とした方法論であり、 も基本的な数理計画法と位置づけられる。他の数理計画の解法に援用されることが多い。

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線形計画法の例題

学祭で餃子と熱燗をセット販売することを企画した。「食いしん坊セット(餃子20個、熱燗0.5合)」と「飲兵衛セット(餃子5個、熱燗2合)」を考え、価格はどちらも500円とした。材料は、餃子1000個分、一升瓶10本(100合)を用意した。どのよう

な割合でセット販売すれば、売り上げが も多くなるだろうか。(餃子と熱燗を別々や単品で販売することは考えないものとする)

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x

y

0

線形計画法の事例~解答~<解答>それぞれのセット販売数をx、y(≧0)とする。制約条件は

20x + 5y ≦ 10000.5x + 2y ≦ 100

目的関数は売り上げの500x+500y =G(x、y)

→これを解くと、y ≦-4x+200・・・・・①y ≦-1/4 x+50・・・・②

目的関数G(x,y)=500(x+y)が一定(定数c)のとき、等利益線は、

500(x+y)=cy=-x+c’

これはx=40、y=40のときに 大。

→それぞれ40セットずつ販売するのが も売り上げが大きくなる。

適点(40,40)

200

50

等利益線

200

50

C’

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線形計画法の環境計画への適用例~廃棄物の処理方法~

廃棄物1t(トン)を処理するのに、2つの処理方式AとBがあり、それぞれ化石燃料と 終処分地を次の表のように消費するものとする。100,000Jの化石燃料と300㎥の 終処分地という制約条件下で廃棄物を

処理する場合、 も多くの廃棄物を処理するためには、処理方式AとBでそれぞれどのくらい処理したらよいだろうか。

処理方式A 処理方式B 大量

化石燃料(J) 300 400 100,000終処分地(㎥) 2 1 300

処理量(t) x y ?

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多基準分析を用いた代替案評価

多基準分析(multi-criteria analysis)とは

多様な評価基準に基づいて、複数の代替案の優劣を評価する方法

実行可能な複数の代替案の中で相対的に高い案を探し出すアプローチ

一対比較に基づく代替案評価手法

多様な評価基準に基づいた一対比較の結果を、論理演算や線形代数などの数学的手法を利用して結合することで、代替案の序列化や階層構造を導き出す手法のこと。AHP、ISMなどが相当する。

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多基準分析法の事例~AHP法~(1) AHP(Analytic Hierarchy Process)とは 1971年頃、トマス・L・サティ(T.L.Saaty)により開

発された、不確定な状況や多様な評価基準における意思決定法のこと。

いくつかの代替案の中から 良のものを選びたいという問題の分析において、直感やフィーリングといった主観的判断と、合理的なシステムアプローチをうまく融合した問題解決型の手法として知られる。

日本における近年の適用事例としては、1992年に制定された国会等の移転に関する法律のもと、1999年に10候補地の中から「栃木・福島地域」,「岐阜・愛知地域」を選定し答申された国会等首都機能移転候補地選びがあげられる。

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移転先候補地の選定過程と対象地

出典:http://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/iten/index.html

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調査対象地の絞り込みと10地域の評価結果

出典:http://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/iten/index.html

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多基準分析法の事例~AHP法~(2)

AHP法の手順

① 意思決定をするための問題から 終目標、評価基準と代替案を決定する。評価基準は、互いに独立性の高いものを選ぶ。

② 問題をもとに階層構造をつくる

③ 評価基準を一対比較して重要度を求める

④ 評価基準ごとに代替案を一対比較し、重要度を求める

⑤ 総合評価を求める

※一対比較の整合性について確認する作業が必要であり、その方法も用意されているが、ここでは割愛。

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AHPの例~就職先の選定問題~ 就職先を選定する場合、主観的な判断をもとに合理的な

判断をするにはどうしたらよいか。

<解答>

①問題、評価基準、代替案を決定問題 :就職先の選定

評価基準:仕事内容、収入、安定性

代替案 :A社、B社、C社

②階層構造の作成

就職先の選定

仕事内容 収入 安定性

A社 B社 C社

問題、目的:

評価基準:

代替案:

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<解答>つづき~ ③-1 ~③ 評価基準の一対比較による重要度の算出

重要性の尺度

一対比較値 意味

1 両方の項目が同じくらい重要

3 前の項目のほうが後のほうより若干重要

5 〃 重要

7 〃 かなり重要

9 〃 絶対的に重要

2、4、6、8 補充的に用いる

上の数値の逆数 後の項目から前の項目をみた場合に用いる

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<解答>つづき~ ③-2 ~ 一対比較

幾何平均ならびに重要度の算出

仕事内容 収入 安定性 積 幾何平均 重要度

仕事内容 1 3 5 15 2.466 0.64

収入 1/3 1 3 1 1.000 0.26

安定性 1/5 1/3 1 1/15 0.405 0.10

積のn乗根 足して1になるように換算

評価基準の一対比較

逆数の記入

⇒評価基準の重要度は安定性<収入<仕事内容

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<補足>なぜ幾何平均か?

他の方法もあるが、整合性がとれている場合、重要度は簡単な比(a:b:c)となる。

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<解答>つづき~ ④-1 ~④ 評価基準ごとの一対比較

<仕事内容>

A社 B社 C社 積 幾何平均 重要度

A社 1 2 5 10 2.154 0.58

B社 1/2 1 3 3/2 1.145 0.31

C社 1/5 1/3 1 1/15 0.405 0.11

⇒仕事内容ではC社<B社<A社

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<解答>つづき~ ④-2 ~④ 評価基準ごとの一対比較

<収入>

A社 B社 C社 積 幾何平均 重要度

A社 1 1/3 1/5 1/15 0.405 0.10

B社 3 1 1/3 1 1.000 0.26

C社 5 3 1 15 2.466 0.64

⇒収入ではA社<B社<C社

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<解答>つづき~ ④-3 ~④ 評価基準ごとの一対比較

<安定性>

A社 B社 C社 積 幾何平均 重要度

A社 1 1/2 1/5 1/10 0.464 0.12

B社 2 1 1/3 2/3 0.874 0.23

C社 5 3 1 15 2.466 0.65

⇒安定性ではA社<B社<C社

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<解答>つづき~ ⑤ ~⑤ 総合評価

評価基準における得点に、その基準の重要度を乗じて、足し合わせる

仕事内容 重要度 収入 重要度 安定性 重要度

A社 0.58

0.64

0.10

0.26

0.12

0.10B社 0.31 0.26 0.23

C社 0.11 0.64 0.65

A社=0.58×0.64+0.10×0.26+0.12×0.10=0.4092B社=0.31×0.64+0.26×0.26+0.23×0.10=0.2890C社=0.11×0.64+0.64×0.26+0.65×0.10=0.3018

結論:A社がいいんでない!?

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AHPの環境問題への適用

例題と同様にして、次の問題の解法をイメージしてください。

湖の水質問題を解決するための方法として、a)浄化のための植物を植える、b)家庭や工場に汚水処理装置を設置する、c)環境教育や環境メディアによりマナー向上の普及啓発を行う、の3つの代替案を

考えた。また、これらの中から も望ましいものを選ぶための評価基準として、1)水質の改善効果、2)必要となる資源・エネルギー量(もしくはコスト)、3)関連主体への受け入れられやすさ、の3つを考えた。

この場合、合理的に代替案の意思決定を行うにはどのようにしたらよいか。

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一対比較法のその他の点

ISM(Interpretive Structural Modeling) J.W.Warfieldによって提唱された、階層構造化手法の一つ

多数の要素の間で複雑な関係が存在している場合に、この「関係」を利用して要素、および要素間の関係を分類するための機械的な方法。

ある概念を構築している各要素が分かっているときに、それぞれの関係を行列を用いて分析し、有向グラフによって階層的に表現して、構造化していく方法

AHPとの違いは、階層構造を導出するのに客観的な数学モデルを用いること

一対比較法の問題

評価基準が増えると、一対比較が困難になる

一対比較ができたとしても、論理的な矛盾をかかえたりする

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1.意思決定とは

2.合理的意思決定のための支援ツール

3.原発に関する意思決定

4.環境計画の意思決定

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原発に関する意思決定 原発に関する意思決定

深刻な原発事故が,残念ながら日本においても現実になってしまった今こそ,原発の是非について日本全体で真剣に議論し,意思決定しなければならない。

福島に住む人は,そこにいなければ分からないことを広く世に知ってもらうため,声にしていかなければならない。

原発の是非を判断するための枠組みの例

ディベート

判断のための表(中京大学 楠美順理先生考案)

原発は利用不可

原発は不必要

原発は条件により利用可能

原発は重要

原発は必要

原発の要/不要に関する代表的な12の見解と,原発由来の追加的な放射能汚染リスクに対する3つの立場から,考え方を整理

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原子力の是非の判断に関する枠組み(1)①一切の放射能汚染リスクを避けたいという立場(原発を認めない立場)

②縦の「見解」の重要度と放射能汚染リスクとのバランスで判断する立場

③縦の「見解」の必要に応じて,許容する放射能汚染リスク水準を高めにとる立場

従来,原発反対の根拠とされてきた見解

パプアニューギニア風ライフスタイルによる電力需要で十分という見解

両立:原発は利用すべきでない(以下,利用不可)

この見解からは許容リスク水準を高めにとる必要は生じない

この見解からは許容リスク水準を高めにとる必要は生じない

経済発展はそこそこで十分という見解 両立:原発は利用不可

この見解からは許容リスク水準を高めにとる必要は生じない

この見解からは許容リスク水準を高めにとる必要は生じない

「数%の電力不足」相当のために節電・停電対策を進められるという見解

両立:原発は利用不可この見解からは許容リスク水準を高めにとる必要は生じない

この見解からは許容リスク水準を高めにとる必要は生じない

放射能汚染リスクに関する地域的不公平をもたらしたくないという見解

両立:原発は利用不可 両立:原発は利用不可この見解からは許容リスク水準を高めにとる必要は生じない

放射能汚染リスクに関する将来世代との不公平をもたらしたくないという見解

両立:原発は利用不可 両立:原発は利用不可この見解からは許容リスク水準を高めにとる必要は生じない

原発由来の放射能汚染リスクを温暖化リスクよりも避けたいという見解

両立:原発は利用不可

この見解からは許容リスク水準についてあまり縛りはなく,両立しうる:原発は利用可能

この見解からは許容リスク水準についてあまり縛りはなく,両立しうる:原発は利用可能

原発の要/不要の見解

原発由来の追加的な放射能汚染リスク

への立場

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原子力の是非の判断に関する枠組み(2)①一切の放射能汚染リスクを避けたいという立場(原発を認めない立場)

②縦の「見解」の重要度と放射能汚染リスクとのバランスで判断する立場

③縦の「見解」の必要に応じて,許容する放射能汚染リスク水準を高めにとる立場

従来,原発推進の根拠とされてきた見解

温暖化リスクを原発由来の放射能汚染リスクよりも避けたいという見解

原発以外の温暖化対策が不十分なら両立しない:原発は利用不可

両立:(原発以外の温暖化対策次第で)原発は不要~必要

両立:(原発以外の温暖化対策次第で)原発は利用可能~必要

も安価な電力供給ができるように発電手段を選択しようとする見解

原発の発電コストが 安価であれば両立しない。安価でなければ両立:

原発は利用不可

両立:(発電コストの見積もり額とリスクの程度次第で)原発は不要~必要

両立:原発による発電コストが安価なら原発は重要。高価なら重要でない。

経済活動の維持・発展を前提とし,「数%の電力不足」相当の問題を生じさせたくないという見解

電力供給にどれだけ余裕を持たせたいかに拠るが,火力を増設すれば確実に両立:原発は利用不可

発電手段の選択肢次第で両立:原発は利用不可~重要

両立:原発は重要

国際情勢に依らずに安定的にエネルギー源を確保したいという見解

両立し難い 両立:原発は重要 両立:原発は重要

火力に代わる大規模で安定的な実用手段を今から備えたいという見解

両立し難い両立:(進行中の技術革新次第で)原発は重要~必要

両立:(進行中の技術革新次第で)原発は重要~必要

原子力発電技術全般の確立のため技術大国としてフロントランナーでありたいという見解

両立しない 両立:原発は必要 両立:原発は必要

原発の要/不要の見解

原発由来の追加的な放射能汚染リスク

への立場

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原発の立地による交付金の支給

電源三法交付金支給モデル(出力135万kW 1基)(出典:清水修二(2011)『原発になお地域の未来を託せるか』,自治体研究社,p.90)

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福島県への交付金など 福島県内(県・市町村)電源三法交付金受給額(1974~2009年)

Jヴィレッジ 1997年に開設されたスポーツ施設。総工費130億円。

日本サッカー界初のナショナルトレーニングセンター。

福島県の広野町と楢葉町にまたがって立地。

なでしこリーグの東京電力女子サッカー部マリーゼ(TEPCOマリーゼ)のホームスタジアム。

原発事故後は閉鎖され,事故の対応拠点となっている。

費目 金額(円)

電源立地促進対策交付金相当部分 72,335,222,783原子力発電施設等周辺地域交付金相当部分 62,546,536,459電力移出県等交付金相当部分 85,201,273,234水力発電施設周辺地域交付金相当部分 11,641,937,619電源立地等初期対策交付金相当部分 5,032,607,574原子力発電施設等立地地域長期発展対策交付金相当部分 31,595,087,000電源地域産業育成支援補助金 1,055,021,136

合計 269,407,685,805

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日本全国で,原発が立地しているのは13の道県。

原発関連施設が立地する市町村の財政力指数(2009年)が各道県で1位なのは,うち10にのぼる。

北海道泊村1.17(1位)

青森県六ヶ所村1.71(1位)東通村1.07(2位)

福島県大熊町1.50(1位)楢葉町1.12(4位)富岡町0.92(5位)双葉町0.78(8位)

茨城県東海村1.78(1位)

新潟県刈羽村1.53(1位)柏崎市0.79(4位)

石川県志賀町0.96(1位)

福井県敦賀市1.11(1位)

おおい町1.10(2位)高浜町0.97(3位)美浜町0.73(7位)

島根県松江市0.58(1位)

佐賀県玄海町1.49(1位)

鹿児島県薩摩川内市0.50(3位) 愛媛県

伊方町0.54(7位)静岡県

御前崎市1.48(2位)

宮城県女川町1.41(1位)

全国の原発関連施設立地自治体の財政状況

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地方財政への問題 原発は地域振興策になるのか

原発関連施設の立地により,交付金等で自治体の財政が一時的に潤うことは確かである。

これまで福島県および原発立地自治体は,原発を推進してきたことは確かであり,直接その恩恵にあずかってきた自治体は,一概に被害者と言えず,その責任は免れない。原発誘致に動いてきた人々,利益を得てきた人々は大いに反省すべき。

原発がなくなると失業する人もいることは事実だが,あえて厳しい表現で言えば,「武器商人が失業したところで同情の余地無し」ということと同じではないか。

地域振興にとって原発は,少なくとも「麻薬である」との認識が必要である。

→「辛いことがあって困ってるんです。」という患者に対し,「では麻薬をどうぞ。」と処方をする医者は正しいと言えるだろうか?たとえ本人が望んだとしても。

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福島県の今後は? 前 福島県知事のスタンス

前知事の佐藤栄佐久氏(在職:1988~2006年)は,当初,原発容認派であった

が,東電のトラブル隠しが発覚した後はプルサーマル計画に反対した。

2006年に汚職事件の容疑で逮捕され,その責任をとって辞職した。

現 福島県知事のスタンス

佐藤栄佐久氏の後の知事に就任した佐藤雄平氏は,2010年8月にプルサーマル計画を認めた。

佐藤雄平氏は,福島県に原発誘致を進めてきた渡部恒三民主党 高顧問の甥にあたる。

原発事故後,復興ビジョンや復興計画の策定,県総合計画の見直しの中で,「脱原発」への方針転換を表明した。

福島民報2011年6月28日

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1.意思決定とは

2.合理的意思決定のための支援ツール

3.原発に関する意思決定

4.環境計画の意思決定

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環境計画の意思決定

環境計画における意思決定の特徴

増大していく不確実性と、人々の価値観の多様性から、意思決定の方法は重要性を増している。

環境計画の中で意思決定は、計画を実際的なものとすると同時に、実効性を担保するためにも重要。

環境問題は多くの主体に関連することが多いため、より高いレベルで意思決定されることが望ましい。

環境問題が深刻で早急な解決が求められる場合は、因果関係に関する科学的な知見が十分でなくても、意思決定すべきときがある。(倫理的、政治的判断の重要性)

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不確実性下における意思決定

森田による、不確実で重大な環境リスクに立ち向かう場合の政策判断の基本原則

「不確実性下での減速」:人類が、不確実ではあるが重大な危険を察知したとき、さらに次世代もそ

れに巻き込まれる恐れがあるとき、まず優先される行動原理は、危機に近づく速度を緩めてその危機を見極めること

「時間資源の節約」:減速の程度は、後生の世代が危機に対応できる時間的余裕を与える。

「政策の抱き合わせ」:政策の実現可能性という観点からは、現在すでに社会的合意が得られ

ている政策と抱き合わせることが効果的である

「 悪リスクの回避」:悪の場合を前提とした適応策を十分に検討しておく

「芯の通ったしなやかさ」:新しい科学的知見や経済的影響が解明されたとき、基本方針を維持しつ

つも柔軟に政策自体を修正していく仕組みが備わっていること

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より良い意思決定を行うために(1)

代替案選択において求められる要件

代替案の有効性(effectiveness)代替案の効率性(efficiency)関連主体間の公平性(equity)あるいは公正さ(fairness)

受容性(acceptability)実行可能性(administrative feasibility) など

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より良い意思決定を行うために(2)

いかに調整するのか環境資源から享受する便益や、必要となるコスト、環境リスクなどについて、関連する主体間の公平性を考慮し、誰も損しない代替案を目指す。

(WIN-LOSEとWIN-WIN)

人間が対象や環境を理解し、それに意味づけする場合、さまざまな分類体系を有しており、唯一絶対の尺度で評価することはできない。

→そのため、環境の意味づけやリスクの相互理解を深め、これらを共有しうる社会システムの構築を目指す。

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-William Rees, 1995-William Rees, 1995

“持続可能性には、資源をマネジメントする“持続可能性には、資源をマネジメントする

ことから、私たち自身をマネジメントすることから、私たち自身をマネジメントする

ことに焦点を移すことが求められている・・・”ことに焦点を移すことが求められている・・・”

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“私たちが生活していく上で、“私たちが生活していく上で、

-Oren Lyons-Oren Lyons

物事を決めるときはいつも、物事を決めるときはいつも、七世代先の子供たちのことを七世代先の子供たちのことを心に留めている・・・”心に留めている・・・”

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未来の人間環境系の未来の人間環境系の

よりよい関係を見据え、よりよい関係を見据え、

それが環境計画です。それが環境計画です。

実現のための様々な手段を実現のための様々な手段を

創造的に考えて意思決定すること、創造的に考えて意思決定すること、

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主な参考資料

参考文献 木下栄蔵(1992)、『わかりやすい意思決定入門―基礎からファジィ理

論まで―』、啓学出版

渡辺茂・須賀雅夫(1996)、『システム工学とは何か』、NHKブックス

南石晃明(1995)、『確率的計画法―不確実性に挑む知恵と技術―』、現代数学社

末石冨太郎+環境計画研究会(1993)、『環境計画論―環境資源の開発・保全の基礎として―』、森北出版株式会社

土木学会環境システム委員会 編(1998)、『環境システム―その理念と基礎手法―』、共立出版株式会社

佐伯胖(1980)、『「きめ方」の論理―社会的決定理論への招待―』、東京大学出版会

参考ホームページ http://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/iten/index.html

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意思決定に関する練習問題(※今年度は割愛)環境計画論が終わりに近づき、ちょっぴり淋しそうにA君Bさんが話している。

A君:「半期の間、環境に関していろんなことを考え、話してきたなぁ。Bと意見が食い違うこともあったけど、環境計画の意思決定もこうやって関連主体が意見を話し合って、お互いのことを理解していくことから始まるんだろね。」

Bさん:「そうね。環境問題に関心があると思われる、環境計画概論を受講した福大の学生さん達の間でも、様々に違う意見が出てたものね。」

Gさん:「ふむふむ・・・、A君Bさんの意見や会話が、受講生が環境について色んな立場・角度から考えることのできるきっかけになってると嬉しいね。 」

A、B:「・・・・・あなた誰?」

さて、あなたはこの会話についてどのような感想をもちますか。講義を通じて学んだ考え方や意思決定に関する意見、今までの意思決定の経験(うまくいったとき/失敗したときの事例や理由)などについて述べてください。

G

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試験のポイントについて

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主な出題範囲(1)

第1講 環境の概念と環境計画

環境問題の捉え方

環境問題の特性

計画の構成要素

環境計画の定義

環境計画の策定手順

手段を考える際に留意すべきこと

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第1講に関する過去問(例) 環境計画に関連する要素や進行管理について、次の文章の( a )~( o )に当てはまる適切な言葉を書きなさい。

環境問題とは,人間活動に起因して環境の劣化が起こることであり,問題の影響先も人間社会とその持続可能性であることからすると,環境問題は( a )の問題として捉えることが重要である。複数の環境問題に共通する特

性として,先行き起こる可能性のある事象が複数あって特定できないという( b )性,問題の発生や対策の効果が表れるまでに時間的な差が生じる( c )などがあげられる。環境問題の根本的な解決を考えるには,構成要素間の関係を認識し,それらの構成要素を1つの統一された全体像として捉えることを重視する( d )思考も重要である。

一般に,計画には4つの構成要素が考えられる。判断のできる個人またはその集合体としての( e ),実現を意図してあらかじめ設定する( f ),行為を働きかける( g ),実現のために採用する方法の( h )の4つである。これらの構成要素をふまえると,環境計画は「( e )である人間が( i )を改善することを( f )とし,( f )を実現するために人間または( i )に働きかける( h )の組織的配列を考え,( j )すること」と定義される。( j )においては,

関連する主体の参加が確保されていることや,プロセスが一般に公開されているという( k )性,論理的・科学的整合性が高いという( ℓ )性などが重要な点である。(つづく)

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第1講に関する過去問(例) (つづき)

環境計画を効果的に進めていくには、実行した結果を( m )して、計画内容に再びフィードバックするPDSサイクルが重要な役割を果たす。環境の状

態を効率的に把握するため,様々な環境指標が考えられている。集約度の高い指標の例として,William Leeらによって開発された,コミュニティの維持に必要となる土地の面積を表す( n )などがある。ただし,集約度の高い指標

では,捨象された情報も必ずあるので,その使用や解釈には注意が必要である。

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主な出題範囲(2) 第2講 人間環境システムの構造把握

システム思考

第3講 循環型社会に関する概念・理論

物質フローの捉え方

リサイクルの功罪

第4講 資源・エネルギーの枯渇問題と環境計画

エネルギーの変換

熱力学第二法則

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第2~4講に関する過去問(例)

エネルギー・資源の利用に関する熱力学的な考え方について、次の文章の( a )~( o )に当てはまる適切な言葉を書きなさい。同じ言葉が入る場合もその都度記述すること。

熱力学第二法則は,エネルギーや物質の散らばり具合を表す指標である( a )が,系の全体では必然的に増大していくという法則であり,変化の( b )性を表すものである。この法

則の発見には,熱機関の変換効率について理想的な状態を仮定して考察を行ったフランスの物理学者( c )の功績が大

きい。熱力学第二法則により,熱エネルギーの使用には効率の上限があり,必ず一部の熱を捨てなければならない。このように,あるエネルギーのうち他のエネルギーの形(特に仕事)に変わりうる部分のことを( d )といい,残りの部分を( e )という。 (つづく)

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第2~4講に関する過去問(例) (つづき)

環境を基準とすれば,温度や圧力の差が大きいエネルギーほど取り出せる仕事が大きくなるため,自然エネルギーが化石燃料と比べて使いづらいのは,( d )が低いからである。エネルギーや物質は,質が( f )する方向に変化するので,それに従って段階的に利用することを( g )利用という。リサイクルのように廃棄物を再資源化しようとする場合は,低( a )源として別の資源を投

入する必要があることから,廃棄物量が減ってもエネルギー使用量が増えるといった,物質汚染と( h )汚染の( i )となる場合が多い。

人間の社会経済活動における,物質,物質の流れ,エネルギーの効率的な利用を目的とする管理のことは,物質フローのマネジメントと呼ばれる。物質フローを捉える際に,流体力学における2つの流れの捉え方を援用することができる。決まった観測位置で次々に通り過ぎる流体要素を観測する( j )的な見方と,特定の流体要素を追跡して観測する( k )的な見方の2つである。

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第2~4講に関する過去問(例) (つづき)

日本全体における物質の出入りの状況を物質フローとして把握する方法は,前者の捉え方に近い。物質フローに関する代表的な環境指標として,日本では( ℓ )性,循環利用率,終処分量の3つが使われている。( ℓ )性は,資源の効率

的な利用を評価するために設定されたものであり,GDPを天

然資源等投入量で除した値が使われている。これは,環境への負荷や経済的コストを削減するために,より効率的に物質やエネルギーを利用しようとする( m )の概念に基づく指標である。( m )は国家レベルから事業者・家計まで幅広く

適用可能な概念であるが,必ずしも環境負荷の総量を表すことができないため,この指標の追究によって,かえって環境負荷が増大してしまうという( n )効果が起こる可能性などに注意することが重要である。

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主な出題範囲(3)

第5講 自然共生に関する概念と計画

生物多様性の概念

共生の概念

種平衡説

ビオトープの空間計画~Ecological Network~

※後期では扱うことができませんでした

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第5講に関する過去問(例) 生物多様性に関する次の問に答えなさい。

(1)生物多様性の内容について階層性を中心に説明しなさい。

(2)生物多様性を英語ではbiodiversityというが、「多様性」を意味する単語として“variety”ではなく“diversity”が使われていることの意味を簡潔に述べなさい。

(3)生物多様性の価値には様々なものが考えられている。次の内容はそれぞれどの価値に相当するか。選択肢a)~d)のうち適するものを一つずつ選びなさい。

1.遺伝子資源の確保 2.ホタルの保護活動資金

3.バード・ウォッチング 4.食糧・燃料・医薬品

a) 消費的使用価値、b) 潜在的利用価値、c) 非消費的使用価値、d) 存在価値

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第5講に関する過去問(例) 下の図は、エコロジカル・ネットワークの構成要素の考え方を模

式的に表したものである。( a )~( j )に当てはまる言葉を下の選択肢1)~10)から選びなさい。同じ言葉が入る場合もその都度選ぶこと。

1) 核心地域(コアエリア) 2) パッチ 3) 移行地帯 4) 自然創出区域 5) エコダクト 6) 生態的回廊(コリドー) 7) 緩衝地帯 8) メタ個体群 9) マトリックス 10) ギャップ

matrix

corridor

patch

patch

patch

corridor

corridor

緩衝帯

コアエリア

生態的回廊

自然創出区域

景域の構成要素景域の構成要素

エコロジカル・ネットワークの基本的な構成要素エコロジカル・ネットワークの基本的な構成要素ゾーニングゾーニング

ビオトープの配置原則ビオトープの配置原則

など

( a )

( b )

( b )

( b )

( c )( c )

( c )

( d )

( e )

( f )

( g )

( h )

( i )

( j )

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主な出題範囲(4)

第6講 環境教育の役割と実践

環境教育の定義

持続可能な発展のための教育(ESD)

第7講 環境メディア

メディア-利用者の関係における効果

広告に見られる説得のテクニック

環境広告

今後の課題

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第6,7講に関する過去問(例) 環境教育や環境メディアについて、次の文章の( a )~( ℓ )に当てはまる適切な言葉を書きなさい。

環境教育という言葉は,1948年の国際自然保護連合(IUCN)の設立総会において使われたのが 初とされ,その後,1975年の( a )憲章や1977年の( b )勧告・宣言を通じて,目的の概念整理がなされてきた。目的の中身は,環境問題に関心を持つ( c )(Awareness)から,環境問題の解決に積極的に関わる( d )(Participation)まで,5~6の項目で捉えられる。環境教育の対象

は,学校教育だけでなく学校外での教育課程も含み,包括的な( e )教育でなければならないとされている。2002年には,( f )で開催された地球サミットにおいて,2005年~2014年を「( g )の10年」とすることが,日本のNGOの発案をもとに提案され,同年の国連総会において満場一致で可決された。日本政府は,2006年に実施計画を策定し,その取り組みが進められている。(つづく)

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第6,7講に関する過去問(例) (つづき)

メディアの伝える情報を批判的に読み解くメディア・リテラシーも,環境問題に関する情報入手において重要である。マスメディアには,人々の「今何が重要なのか」といった判断に影響を与える( h )効果や,社会的な現状認識に長期的・累積的な影響を与える( i )効果があることが指摘されている。また,広

告には,人々ができるだけ簡素な方法で不協和を低減しようとする傾向があることを示した( j )理論に基づくテクニックが使

われることもある。私たちは,このようなメディアの特性を理解し,( k )としての役割を自覚して,判断や行動をすることが重要である。同時に,( k )の態度を好ましいものに変容させようとする,メディアの( ℓ )効果を,環境改善に役立てる環境メディアのあり方を追究することも求められる。

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主な出題範囲(5)第8講 環境計画の評価法

環境計画における評価と環境指標

環境計画の評価における留意点

第9講 環境計画の意思決定

意思決定における重要な点

適化の手法

一対比較に基づく代替案評価分析手法

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第8~9講に関する過去問(例) 環境計画の評価法における環境指標について、次の問に答え

なさい。(1)環境指標におけるPSR(Pressure-State-Response)の枠組みについて説明

した次の文章について、( ア )~( エ )に当てはまる言葉を書きなさい。

「PSRとは、日本語でPが( ア )を、Sが( イ )を、Rが( ウ )を意味する。これは、環境問題の( エ )の流れから指標を考えようとするものである。」

(2)環境指標について、次のア~エの指標はPSRのどれに相当するか。PSRの意味をよく考えて、P,S,Rのうち適するものを一つずつ選んで書きなさい。

ア.地球温暖化問題における「地球平均温度」

イ.富栄養化問題における「下水処理普及率」

ウ.酸性化問題における「酸性化物質排出指標」

エ.生物多様性減少の問題における「生態系タイプ別の自然保護区域」

(3)環境計画における環境指標の役割と注意点としてどのようなことが考えられるか。それぞれについて述べなさい。

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第8~9講に関する過去問(例) 意思決定に関連する要素について,次の文章の( a )~

( c )に当てはまる適切な言葉を書きなさい。

意思決定においては,関連する主体の参加が確保されていることや,プロセスが一般に公開されているという( a )性,論理的・科学的整合性が高いという( b )性

などが重要な点である。多様な評価基準をもとに複数の代替案の優劣を評価することを可能にするためのツールとして,数理的手法も開発されてきており,1971年頃トマス・L・サティによって開発された( c )はその一つとして

知られている。数理的な手法は,定量的・多面的な評価を可能にするものではあるが,唯一の 適解を決定するものではないため,政策決定の場に用いる際には注意が必要である。

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原発や被ばくに関する過去問(例) 原子力発電や放射線被ばくの問題について,次の文章の( a )~

( m )に当てはまる適切な言葉を書きなさい。

放射線の被ばくについては,確定的影響が生じる高線量被ばくと,確率的影響が生じる低線量被ばくがある。高線量被ばくの事故としては,1999 年9月30日に日本の茨城県東海村の株式会社( a )

で起きた臨界事故が挙げられる。この事故では大量の中性子線などで被ばくし,2名が亡くなった。原発がある限り,このような被ばく

のリスクをゼロにすることはできない。一方の低線量被ばくについては,急性障害が現れない程度の線量として,( b )mSv以下を指す場合が多い。100mSv以下の放射線量では,検査で検出できる

症状は現れないとされる。しかし,これは安全であることと同義ではない。低線量被ばくについては,安全と考える立場から,小さくてもリスクはあるとする立場まで,捉え方に幅がある。アメリカ科学アカデミー電離放射線の生物影響に関する委員会(BEIR)や国際放射線防護委員会(ICRP)は,低線量でも被ばく線量とリスクは比例すると仮定した( c )モデルを支持している。 (つづく)

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原発や被ばくに関する過去問(例) (つづき)

東京電力福島第一原子力発電所の事故が起きる前は,日本における一般公衆の線量限度は( d )mSv/年と定められていた。これが事故後に( e )mSv/年に引き上げられ,子どもにも

同じ基準が適用されたため,国内外から多くの批判を浴びた。そのため,文部科学省は,学校で受ける線量を当面( d )mSv/年以下とするように方針を改めた。しかし,これは学校だけの数値で,他の日常生活で受ける放射線量は含まれていないなど,未だ問題を抱えている。

放射線の不必要な被ばくを防ぐため,日本の法律上,放射線量が一定以上ある場所を明確に区別し,人の不必要な立ち入りを防止するための区域として( f )区域が設定されており,その基準は( g )mSv/年である。労災認定基準では,( h )病の基準も( g )mSv/年となっている。

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原発や被ばくに関する過去問(例) (つづき)

原子力発電の教育および広報では,偏った情報提供が行われてきた。例えば,( i )省と経済産業省( j )庁が主催で実施してき

た原子力ポスターコンクールでは,応募要領を使って原発のプラス面に関する普及啓発が行われていた。そして,学校単位での取組みも重視して賞の設定や広報効果の分析が行われていた。また,東京電力福島第一原発の事故発生当時,日本( k )学会の会長

は東京電力の清水社長であった。「原子力発電はクリーンな電気のつくり方」という宣伝コピーに対し,原子力発電が発電時に二酸化炭素を出さないという点だけで,「エコ」や「クリーン」という表現が使われるのは「不当な広告表示である」として,( ℓ )に求められた審査に対し,( ℓ )はその不当性を認めた。しかし,その後も原発広報に大きな改善は見られなかった。「日本の電力の約1/3は原子力」

と宣伝されてきたが,これは運用による結果であり,設備容量の割合で見れば全体の( m )割に満たないのである。

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その他の出題範囲

国際放射線防護委員会(ICRP,2009) Publication111の内容理解→いわゆる「20mSv/年の問題」に関する基本的事項

→出典:http://www.icrp.org/docs/P111(Special%20Free%20Release).pdf

高線量被ばくおよび低線量被ばくに関する内容理解 JCO臨界事故

→高線量被ばくによる人体への影響に関する基本的事項

→出典:NHK「東海村臨界事故」取材班(2006)『朽ちていった命』,新潮文庫

アメリカ科学アカデミー 電離放射線の生物影響に関する委員会(BEIR)→線形しきい値無し(LNT)モデルに関する基本的事項

→出典:http://archives.shiminkagaku.org/archives/radi-beir%20public%20new.pdf

原子力広報評価検討会(2000)報告書の内容理解→原子力広報におけるセグメントの設定に関する基本的事項

→出典:http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g00925i.pdf

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不服申立について

不服申立期間は9月22日(木)正午~17時です。

成績に不服がある場合は、教務課で不服申立書を記入した上で研究室に来るようにしてください(不服申立を行うに足る合理的な根拠を授業担当者に説明することが求められます)。

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それではみなさん、試験がんばってください!その後はよい春休みを♪