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I.地震動による構造物の応答等に関する事項 1.はじめに I-1 2.鋼製橋脚の地震時応答特性 I-2 2.1.はじめに I-2 2.2.地域別補正係数と非線形時刻歴応答解析で用いる地震動 I-2 2.3.解析条件 I-4 2.4.地震時応答特性 I-5 3.長周期地震動による免震支承を有する斜張橋の応答 I-10 3.1.はじめに I-10 3.2.対象斜張橋および入力地震動 I-10 3.3.地震応答結果 I-12 3.4.まとめ I-16 4.液体タンクのスロッシング I-17 4.1.石油・LNG 等大型タンク I-17 4.2.受水槽・排水槽等小型タンク I-19 4.3.終わりに I-23 5.長周期地震動によって生じた津波・漂流物を受ける鋼構造物の耐震性能 I-24 5.1.仮想橋梁を用いた検討 I-25 5.2.実橋梁と対象とした検討 I-46
57

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Jul 11, 2020

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I.地震動による構造物の応答等に関する事項

1.はじめに I-1

2.鋼製橋脚の地震時応答特性 I-2

2.1.はじめに I-2

2.2.地域別補正係数と非線形時刻歴応答解析で用いる地震動 I-2

2.3.解析条件 I-4

2.4.地震時応答特性 I-5

3.長周期地震動による免震支承を有する斜張橋の応答 I-10

3.1.はじめに I-10

3.2.対象斜張橋および入力地震動 I-10

3.3.地震応答結果 I-12

3.4.まとめ I-16

4.液体タンクのスロッシング I-17

4.1.石油・LNG 等大型タンク I-17

4.2.受水槽・排水槽等小型タンク I-19

4.3.終わりに I-23

5.長周期地震動によって生じた津波・漂流物を受ける鋼構造物の耐震性能 I-24

5.1.仮想橋梁を用いた検討 I-25

5.2.実橋梁と対象とした検討 I-46

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-I- 1 -

I.地震動による構造物の応答等に関する事項

1.はじめに

平成 23 年 3 月 11 日に発生した東北地方太平洋沖地震では継続時間が非常に長く主要動が複数含まれ

るといった,兵庫県南部地震と比べて異なる性質を有する地震動の加速度波形が観測された 1.1).H24 道

示 V1.2)の改定では,タイプ I 地震動及び「地域別補正係数」が見直された.タイプ I 地震動は,平成 23

年に発生した東北地方太平洋沖地震および平成 15 年に発生した十勝沖地震の強震記録を振幅調整した

加速度波形に改定された.地域別補正係数は,大規模な地震が発生する地域とそれに該当しない地域で,

設計する際に用いる地震動の大きさに差をもたせるため,設計地震動に乗じる係数である.H24 道示 V

では,従来の地域別補正係数とは別に,タイプ I 地震動に対して適用する地域別補正係数が設定された.

東北地方太平洋沖地震と同じ,大規模なプレート境界型地震である東海地震,東南海地震,南海地震等

が近い将来発生すると考えられていることを踏まえ,強い影響を受けると推定される地域では,地域別

補正係数が 1.2 となっている.H24 道示 V 改定に伴い,ある地域区分ではタイプ I 地震動の 0.85 倍を考

慮していた従来の設計に対し,改定されたタイプ I 地震動の 1.2 倍を考慮するようになるなど,設計地震

動の加速度が大幅に増幅している.よって,H24 道示V で改定された地域別補正係数を考慮した設計地

震動,さらに長周期地震,継続時間の長い地震動が鋼構造物に与える影響は明らかにされていない.さ

らに,今後発生する巨大地震により,東北地方太平洋沖地震のように,津波または津波による船等の漂

流物により鋼構造物が被害を受ける可能性もある.

そこで,「I.地震動による構造物の応答等に関する事項」では,H24 道示V で改定された地域別補

正係数を考慮した設計地震動による鋼製橋脚(第 2 章)および斜張橋(第 3 章)の地震応答特性,長周

期地震動によるスロッシング(第 4 章),津波による漂流物の鋼橋への衝突の影響について検討(第 5

章)を行っている.その検討結果を以下の第 2 章~第 5 章で紹介する.

参考文献

1.1) 国土交通省国土技術政策総合研究所:平成 23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震土木施設災害調査速

報,国総研資料第 646 号,平成 23 年 7 月.

1.2) (社)日本道路協会:道路橋示方書・同解説V 耐震設計編,平成 24 年 3 月.

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-I- 2 -

2.鋼製橋脚の地震時応答特性 2.1)

2.1.はじめに

本章ではコンクリートを充填しない矩形断面の鋼製橋脚を対象に,H24道示Vで改定された地域別補

正係数を考慮した設計地震動を入力地震動とする非線形時刻歴応答解析を行い,その地震時応答特性,

耐震性能についての検討を行う.

2.2.地域別補正係数と非線形時刻歴応答解析で用いる地震動

(1) 地域別補正係数 地域別補正係数は,地震の発生する可能性が高い地域とそれに該当しない地域で,設計で考慮する地

震動に差を持たせるために,設計地震動に乗じる係数である.H24道示Vの改定では,レベル 2地震動

タイプ Iの標準加速度応答スペクトルと合わせて「地域別補正係数」が改定された. 従来のH14道示V2.4)では,レベル 2 地震動タイプ Iおよびタイプ IIに適用する地域別補正係数は同一

であり(地域別補正係数を czと表記),規模の大きい地震が発生する可能性が高い地域が A(cz=1.0),低い

地域が B(cz=0.85),C(cz=0.7)と 3 区域が規定されていた.H24 道示 V の改定では,震源域が連動する大

規模なプレート境界型地震を考慮し,従来の地域別補正係数とは別に,タイプ I 地震動に対して適用す

る地域別補正係数(タイプ I地震動について cIz,タイプ II地震動について cIIzと表記)が新たに規定された.

東北地方太平洋沖地震,北海道太平洋沖の地震が連動する場合,東海・東南海・南海地震および日向灘

地震が連動する場合等の震源域が連動する影響を考慮し,強い影響を受けると推定される地域では地域

別補正係数 cIzが 1.2 となった.結果として,地域区分A,B をそれぞれ 2 つに分け(地域区分 A1,A2,B1,B2),合計 5 つの地域区分が規定された.図-2.1,図-2.2に,H14 道示V,H24 道示Vの地域区分

および地域別補正係数をについてそれぞれ示す. 図-2.1,図-2.2から,B1 区域(愛媛県の一部,高知県の一部)のタイプ I地震動の地域別補正係数につ

いて,H14道示Vでは 0.85 となっていたのに対し,改定されたH24道示Vでは 1.2 と変更されている. (2)非線形時刻歴応答解析で用いる地震動

H24 道示V で設計地震動の加速度波形および地域別補正係数が改定されたのはタイプ I 地震動のみで

あり,タイプ II 地震動については H14 道示 V と同じものとなっている.H14 道示 V では,鋼製橋脚の

耐震性能上,支配的な地震動となるのは,タイプ I 地震動よりタイプ II 地震動となる場合が多かった.

他方,H24道示Vの改定で,タイプ I地震動については,上述の(1)の地域別補正係数の他,加速度応答

スペクトルが大きくなっているところもあり,鋼製橋脚の耐震性能上,タイプ I 地震動の方が支配的に

なる可能性がある.さらに,H24 道示V のタイプ I 地震動の加速度波形の継続時間が長くなっており,

継続時間が長くなったことにより,鋼製橋脚の地震時応答も変化する可能性がある.しかしながら,H24道示V のタイプ I 地震動が作用する鋼製橋脚の地震時応答に関する研究は少なく,十分に把握されてい

ない.そこで,本章の非線形時刻歴応答解析では,H24 道示Vのタイプ I地震動およびタイプ II地震動

を対象に検討を行うこととした.そして,鋼製橋脚の建設されるのは II 種地盤および III 種地盤が多い

ことを考慮し,タイプ I地震動およびタイプ II地震動の II 種地盤および III種地盤の設計地震動を用いて

解析を行った.

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-I- 3 -

図-2.1 H14道示Vで規定される地域区分及び地域別補正係数 2.1)

図-2.2 H24道示Vで規定される地域区分及び地域別補正係数 2.1)

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-I- 4 -

2.3.解析条件

本章の非線形時刻歴応答解析では,コンクリートを充填しない鋼製橋脚を 1 自由度 1 質点系にモデル

化した(図-2.3).非線形時刻歴応答解析では,下記に示す式(2.1)に示す振動方程式においてニューマーク

の β法(β=1/4)を適用し,地震動の時間間隔および解析時間間隔は 0.01 秒とした.

0)( 0 kxxcxxm (2.1)

ここで,m:以下の(2)に示す質量,c:減衰係数,k:復元力のバネ定数, 0x :入力地震動の加速度,

x :構造物の変形加速度,x:構物の変形速度, x :構造物の変形

以下に,非線形時刻歴応答解析で使用した特性値を示す.

(1)減衰定数 コンクリートを充てんしない鋼製橋脚を対象としているため.道示Vに従い 0.012.3)を用いる.

(2)質量 上部構造の質量に橋脚の質量の 0.3 倍を加えたものを質量とする 2.5).

(3)復元力特性 鋼製橋脚の復元力特性は,非線形性を考慮しバイリニア型の,橋脚頂部の水平荷重-水平変位関

係(P-δ 関係)で表現する.バイリニア型の復元力特性の模式図を図-2.4 に示す.このバイリニア型

の骨格曲線の設定法は下記の通りである. (a)降伏点

降伏点(δy,Py)は,以下の式(2.2)で定義される降伏水平変位 δy および式(2.3)で定義される降伏

水平荷重Pyとする.

EIhPy

y 3

3

(2.2) , h

WANP yy (2.3)

(b)最大水平荷重点 最大水平荷重点の点(δm,Pmax)は,既往の研究 2.6)の FEM 解析結果から得られる最大水平荷重

時変位 δmおよび最大水平荷重Pmaxとする.

図-2.3 1自由度1質点系モデル 2.1) 図-2.4 バイリニア型の復元力特性 2.1)

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-I- 5 -

2.4.地震時応答特性

非線形動的解析結果を基に,最大応答水平変位に着目して,H24 道示V のタイプ I 地震動およびタイ

プ II地震動が作用する鋼製橋脚の地震時応答特性について検討するとともに,複数の主要動を含む継続

時間の長い地震動が鋼製橋脚の地震時応答に与える影響についても考察を行う. (1)最大応答水平変位に着目した考察 鋼製橋脚の耐震性能は,地震時の最大応答変位が許容変位以下となるか否かで評価される 2.3).そこで,

ここでは,最大応答水平変位に着目して,H24道示Vの設計地震動が鋼製橋脚の地震時応答,耐震性能

評価に与える影響について考察を行う.なお,以下では,鋼製橋脚の多く建設される東京都および大阪

府が該当する「地域区分A2」,タイプ I地震動の地域別補正係数 cIzが 1.2,タイプ II地震動の地域別補

正係数 cIIzが 0.85 と地域別補正係数の差の大きい「地域区分B1」の解析結果を基にした考察を示す. 図-2.5に「地域区分A2」(cIz=1.0,cIIz=1.0)について,図-2.6に「地域区分B1」(cIz=1.2,cIIz=0.85)について,II 種および III 地盤種ごとの,地域別補正係数 cIzおよび cIIzを考慮したタイプ I 地震動および

タイプ II 地震動のそれぞれ 3 波による解析から得られる最大応答水平変位の平均値である「δmax-I」,

「δmax-II」を,δmで除して無次元化したものを比較したもの示す.なお,図-2.5および図-2.6では,δmax-II

が δmを超えた解析結果は削除している.図-2.5より,「地域区分A2」については東北地方太平洋沖地

震で観測された地震動および将来発生することが考えられるプレート境界型地震の地震動を考慮して設

定したタイプ I 地震動より,兵庫県南部地震で観測された地震動を基に設定されたタイプ II 地震動の方

が鋼製橋脚に大きな応答水平変位を生じさせる場合が多い.それに対し,図-2.6 の「地域区分 B1」で

は逆の傾向となっている.以上のことから,鋼製橋脚の建設地域によって,鋼製橋脚の耐震性能を評価

する上で支配的になる地震動が異なるため,注意する必要がある.

図-2.5 地域区分A2の解析結果 2.1) 図-2.6 地域区分B1の解析結果 2.1)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2

δ max

I/δm

δmaxII/δm

A2区域 II種地盤

A2区域 III種地盤

±10%

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-I- 6 -

(2) 複数の主要動を含む継続時間の長い地震動が鋼製橋脚の地震時影響に与える影響 H24道示Vに示されるII種地盤のタイプI地震動とし,主要動が複数含まれる「H24_I-II-2」,「H24_I-II-3

下の地震動を選ぶ.ここでは,地域別補正係数を考慮しないこととする.図-2.7に加速度波形および主

要動を示す. 2 つの地震動に対する各モデルの最大応答変位 δmaxが出現する時刻を表-2.1に示す.表-2.1より,地

震動「H24_I-II-2」に関しては,ほとんどすべてのモデルで,最大応答変位が第 2 主要動の加速度のピー

ク付近である 80 秒程度で現れる結果が得られた.これは,第 2主要動の影響を受けて応答変位が増幅し

最大値を示すことを意味している.図-2.8 に 80 秒付近で最大値を示したモデルの時刻歴応答変位,荷

重-変位履歴を示す.時刻歴応答変位では,最大応答変位 δmax,残留変位 δRを,水平荷重-水平変位履歴

では δmax,δRに加えて比較のため許容値 δm(紫色の実線),δRa(橙色の実線)も示している.図-2.8 より,

各主要動に対して大きな応答変位が発生しているが,1 回目の変位よりも 2 回目の変位の方が大きくな

っていることがわかる.「H24_I-II-2」の加速度波形は,第 2主要動の最大振幅の方が第 1 主要動の最大

振幅より大きいため,ほとんどのモデルで第 2 主要動による影響によって最大応答変位を示したと考え

られる.図-2.9 に,「H24_I-II-2」による解析のうち唯一,80 秒付近とは異なる時刻で最大応答変位を

示したモデルの時刻歴変位及び荷重-変位履歴を示す.図-2.9より,このモデルでは,第 1主要動に対す

る最大の変位よりも,第 2 主要動に対する最大の変位の方が大きいが,第 2 主要動の加速度のピークと

は異なる時刻で最大応答変位を示している.このようなケースは本節の解析結果ではこのモデルだけで

あったが,加速度のピークとは異なる時刻で最大応答変位を示す場合があることがわかった. 表-2.1より,地震動「H24_I-II-3」に関しては,ほとんどすべてのモデルで,最大応答変位が第 2 主要

動の加速度のピーク付近である 80 秒程度で現れる結果が得られたが,第 1主要動の加速度のピークであ

る 45 秒付近で最大応答変位を示すモデルが 2 ケース存在した.図-2.10に 80 秒付近で最大値を示した

モデルの時刻歴変位,荷重-変位履歴を示す.図-2.10より,このモデルでは第 1 主要動に対して大きな

変位は発生せず,第 2 主要動に対してのみ大きな応答を示している.図-2.11,図-2.12に 45 秒付近で

最大値を示した 2 モデルの時刻歴変位,荷重-変位履歴をモデルごとにそれぞれ示す.地震動「H24_I-II-3」の加速度波形は,第 1 主要動と第 2 主要動の最大振幅の大きさに大差はないため,モデルによっては第

1 主要動の影響で最大応答変位を示す場合があると考えられる.しかし,本稿で対象としたモデルでは,

ほとんどの場合,応答変位に与える影響が支配的であるのは,第 2主要動であるという結果が得られた.

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-I- 7 -

図-2.7 対象とする地震動における複数の主要動 2.1)

表-2.1 最大応答水平変位の現れる時刻 2.1)

-1000 -500

0 500

1000

0 40 80 120 160 200 240

加速度

(gal

)

時間(s)

H24_I-II-2

第1主要動 第2主要動

-1000 -500

0 500

1000

0 40 80 120 160 200 240

加速

度(g

al)

時間(s)

H24_I-II-3

第1主要動 第2主要動

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-I- 8 -

図-2.8 第2主要動による δmax2.1)

図-2.9 第2主要動の加速度のピークとは異なる時刻における δmax2.1)

図-2.10 第2主要動による δmax2.1)

-60

-40

-20

0

20

40

0 40 80 120 160 200 240

変位

(cm

)

時間(s)

S6-N15_H24_I-II-2δmax

3 0 -2 0 -1 0

0

1 0

2 0 3 0

0 4 0 8 0 1 2 0 1 6 0 2 0 0 2 4 0

変位

(cm

)

時間 (s)

S6- N 0 5 _ H 2 4 _ I- II-2δma x

-1.5E+07

-1.0E+07

-5.0E+06

0.0E+00

5.0E+06

1.0E+07

1.5E+07

-70 -50 -30 -10 10 30 50 70

荷重

(N)

変位(cm)

S6-N05_H24_I-II-2δmaxδR

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-I- 9 -

図-2.11 第1主要動による δmax2.1)

図-2.12 第1主要動による δmax2.1)

参考文献

2.1) 北市さゆり:せん断パネル型ダンパーを用いた矩形断面鋼製橋脚の耐震性能向上策,平成 26 年 2月.

2.2) 国土交通省国土技術政策総合研究所:平成 23年(2011 年)東北地方太平洋沖地震土木施設災害調査速

報,国総研資料第 646 号,平成 23 年 7 月. 2.3) (社)日本道路協会:道路橋示方書・同解説V耐震設計編,平成 24 年 3 月. 2.4) (社)日本道路協会:道路橋示方書・同解説V耐震設計編,平成 14 年 3 月. 2.5) (社)日本道路協会:既設道路橋の耐震補強に関する参考資料,平成 9 年 8 月. 2.6) 岡田誠司,小野潔,谷上裕明,徳永宗正,西村宣男:高軸力が作用する矩形断面鋼部材の耐震性能

評価に関する研究,土木学会論文集A,vol.66,No.3,pp.576-595,平成 22 年 9月.

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-I- 10 -

3.長周期地震動による免震支承を有する斜張橋の応答

3.1 はじめに

1995 年の阪神・淡路大震災を契機に,地震観測網の体制がさらに強化され,現在までに種々の貴重な

地震動データが観測されている.その中の一つとして,長周期地震動の観測が挙げられる.長周期地震

動は,超高層ビルに代表される固有周期の長い構造物において,ビルの内部のエレベーターなどに被害

を与えたり,2003 年十勝沖地震で見られたように浮き屋根式タンクのスロッシング現象を引き起こした

りしている.

長周期地震動による橋梁の応答について,冨・梅原 3.1)が 5 径間連続桁橋の地震時応答解析を行ってい

る.桁の種類を鋼箱桁と鋼鈑桁,支承の種類を鋼製,反力分散,免震支承に変化させることで固有周期

が 0.6 秒から 1.4 程度の橋梁に対して応答計算を行い,橋梁が長周期化した場合,長周期地震動と短周期

地震動で応答値を比較すると,長周期地震動作用時に非常に大きな応答値が発生すること,および,断

面の隅部で損傷が発生する結果を確認している.また,庄司・渋井 3.2)は,1 次固有周期が 2 秒から 3 秒

の帯域となる PC 斜張橋を取り上げ,長周期地震動に対する PC 斜張橋の地震応答解析を行い,1995 年

兵庫県南部地震の神戸海洋気象台の地震波による応答と比較して,主塔頂部に大きな応答変位を示し,

ケーブルや主桁などの他の構造部材に振動の連成が生じることなどを明らかにしている.庄司ら 3.3)は,

2011 年東北地方太平洋沖地震で観測された長周期地震動を用いて,2 自由度系モデルを使って,制震ダ

ンパーのパラメータの最適化について検討を行っている.

本章では,長周期構造物の 1 例として仮想の斜張橋を取り上げ,2011 年東北地方太平洋沖地震で観測

された卓越周期が 2 秒以上の地震動による応答解析を実施した.

3.2 対象斜張橋および入力地震動

(1)斜張橋モデルの概要

図-3.1 に本研究で対象としたモデル斜張橋の全体図を示す.モデル斜張橋は 1996 年の道路橋示方書

に準拠して設計されたものである.橋長 412.0m,幅 14.0m(有効幅員 11.0m)の 3 径間連続複合斜張橋であ

る.主桁は箱断面であり,桁高は 2.0m とした.床版は,鋼・コンクリート合成床版とし,主桁間に縦桁

1 本を配置し,床版支間を 5.55m とした.横桁は 10m 間隔とし,ケーブル定着間隔と等しくした.桁併

合後,一括コンクリート打設することにより,床版の打ち継ぎ目を無くしている.

主桁・横梁・ケーブルは線形要素でモデル化を行い,RC 主塔・RC 橋脚・免震支承は非線形要素でモ

デル化を行った.RC 部材の材料非線形特性は骨格曲線としてトリリニア型,復元力特性として武田モ

デルを使用した.免震支承の骨格曲線はバイリニア型とした.免震支承は鉛プラグ入り積層ゴム(LRB)

で想定した.免震支承の物性値や設計条件は表-3.1に示しており,全支点を免震支承とした.

解析には汎用ソフト T-DAPⅢを用い,減衰は部材別に減衰定数を与えている.積分時間間隔は 0.001

秒である.各部材の減衰定数は道路橋示方書を参考に,主桁を 2.5%,ケーブルを 2.5%,橋脚を 2.0%,

地盤ばねを 10%と決定した.地盤バネの設定値を表-3.2 に示す.橋梁架設地点の地盤条件は II 種地盤と

し,地震動は橋軸方向ならびに橋軸直角方向への単独加震とした.

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-I- 11 -

図-3.1モデル斜張橋の全体図

表-3.1 免震支承の設定

a) 免震支承の物性値

b) 免震支承の境界条件

表-3.2 地盤バネの設定

X:橋軸方向 Y:鉛直方向

Z:橋軸直角方向

Rx:橋軸回り Ry:鉛直回り

Rz:橋直回り

P1とP4 P2とP3

橋軸橋軸直角

表-3.1a)の条件 表-3.1a)の条件

鉛直 剛結 自由

橋軸回り 剛結 剛結

橋軸直角回り鉛直回り

自由 自由

免震支承1 (桁端) 免震支承2 (橋脚上)

初期剛性(kN/m) 43028 44118二次剛性(kN/m) 4083 4182降伏耐力(kN) 910 798降伏変位(m) 0.021 0.018

バネ剛性 P1 P2 P3 P4

X(kN/m) 1.54E+07 2.00E+07 2.00E+07 1.54E+07Y(kN/m) 1.00E+10 1.00E+10 1.00E+10 1.00E+10Z(kN/m) 1.57E+07 2.22E+07 2.22E+07 1.57E+07

Rx(kN・m/rad) 5.68E+08 2.24E+09 2.24E+09 5.68E+08Ry(kN・m/rad) 0 0 0 0Rz(kN・m/rad) 4.53E+08 1.08E+09 1.08E+09 4.53E+08

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-I- 12 -

(2)入力地震動について

入力地震動として,2012 年に規定された道路橋示方書における II 種地盤のレベル 1 地震動とレベル 2

地震動(タイプ I),2002 年の道路橋示方書における II 種地盤のレベル 2 地震動(タイプ I)および 2011

年東北地方太平洋沖地震において観測された地震動のフーリエスペクトルにおいて最大振幅をとる周期

が 2 秒以上となる地震動(5 波)とした.各地震動の最大加速度,最大変位,卓越周期(フーリエスペ

クトルにおいて最大振幅をとる周期)を表-3.3に示す.

表-3.3a)のコードはK-NET での地点名である.地表面変位時刻歴波形は不完全積分法を用い,各地震

動の加速度時刻歴波形を式(3.1)を用いて,2 回積分を実施し,変位時刻歴波形を算出した.Y(t)は求める

時刻歴波形,y(t)は積分する時刻歴波形を示している.

Y t e y t s ds (3.1)

3.3 地震応答結果

(1)固有値解析結果

表-3.4にモデル斜張橋の固有値解析の結果を,図-3.2に橋軸方向・橋軸直角方向で有効質量比が卓越

する 3 次モードと 13 次モードのモード図を示す.表-3.4から,3 次モードは橋軸直角方向に対するモー

ド図であり,固有周期が 5.55(s)で有効質量比が 22.0%,橋桁が橋軸直角方向に対し変形するモードなっ

ている.また,13 次モードは橋軸方向に対するモード図となっており,固有周期が 1.43 秒で有効質量比

は 53%,塔頂部が橋軸方向に変形するモードとなっている.表-3.4 より 19 次モードまでで固有周期が

表-3.3 地震動一覧

a) 卓越周期が長い地震動

b) 2012年規定されたレベル1設計地震動(タイプI)

c) 2012年規定されたレベル2設計地震動(タイプI)

d) 2002年規定されたレベル2設計地震動(タイプI)

観測地点 観測地点 コード 地盤種別 卓越周期(sec) 最大加速度(gal) 最大変位(cm)

佐原 chb004 II種 4.43 277.48 8.11稲毛 chb024 II種 4.43 232.14 14.13

福島県 猪苗代 fks020 II種 2.95 241.48 14.48茨城県 岩井 ibr015 II種 4.43 321.05 8.31山形県 米沢 ymt015 II種 2.13 192.70 6.77

千葉県

地盤種別 卓越周期(sec) 最大加速度(gal) 最大変位(cm)

II種地盤 1.86 118.31 5.87

地盤種別 名称 卓越周期(sec) 最大加速度(gal) 最大変位(cm)

Type1-2-1 0.84 619.14 38.50Type1-2-2 1.00 674.90 47.39Type1-2-3 1.15 509.20 39.07

II種地盤

地盤種別 名称 卓越周期(sec) 最大加速度(gal) 最大変位(cm)

Type1-2-1 1.28 362.62 52.38Type1-2-2 2.41 384.93 82.38Type1-2-3 2.34 364.85 50.46

II種地盤

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-I- 13 -

1.0 秒を超えており,このモデル斜張橋の固有周期が長いことが分かる.

(2)レベル 1 地震動による結果

まず始めにレベル 1 地震動による応答解析を行った.レベル 1 地震動による解析を行った理由は,モ

デル斜張橋が弾性応答内に収まることの確認と,どの部材が揺れやすいのかを確認するためである.図

-3.3にモデル斜張橋でレベル 1 地震動による,橋脚と主塔の応答塑性率を示す.応答塑性率は,最大応

b)13次モード(橋軸1次、T=1.43s)

a)3次モード(橋軸直角1次、T=5.55s)

図-3.2 モデル斜張橋 モード図

表-3.4 モデル斜張橋 固有周期

橋軸方向橋軸直角

方向鉛直方向

1 0.1028 9.7316 0.0% 5.0% 0.0%2 0.1588 6.2974 0.0% 0.0% 0.0%3 0.1800 5.5546 0.0% 22.0% 0.0%4 0.2362 4.2339 0.0% 0.0% 0.0%5 0.3566 2.8046 0.0% 0.0% 0.0%6 0.4107 2.4348 0.0% 3.0% 0.0%7 0.4784 2.0901 0.0% 0.0% 0.0%8 0.4957 2.0172 0.0% 0.0% 0.0%9 0.5135 1.9475 0.0% 0.0% 0.0%10 0.5136 1.9471 0.0% 11.0% 0.0%11 0.5414 1.8469 0.0% 0.0% 0.0%12 0.5687 1.7584 0.0% 1.0% 0.0%13 0.6970 1.4348 53.0% 0.0% 0.0%14 0.7117 1.4051 0.0% 0.0% 0.0%15 0.8654 1.1555 0.0% 0.0% 0.0%16 0.8654 1.1555 0.0% 0.0% 0.0%17 0.8702 1.1492 0.0% 0.0% 16.0%18 0.9438 1.0595 0.0% 0.0% 0.0%19 0.9673 1.0338 0.0% 0.0% 0.0%20 1.0262 0.9745 0.0% 0.0% 0.0%

次数(n)

振動数(Hz)

周期(sec)

有効質量比

a) 橋脚(P1)-橋軸方向 b) 橋脚(P2) -橋軸方向 c) 主塔(T2) -橋軸方向

d) 橋脚(P1)-橋軸直角方向 e) 橋脚(P2)-橋軸直角方向 f) 主塔(T2)-橋軸直角方向

図-3.3 レベル1地震動の塑性率(タイプI, II種地盤)

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答曲率を降伏曲率で除した値である.なお,橋脚 P3 と P4 は橋脚 P2,P1 と,主塔T3 は主塔T2 とほぼ同

じ挙動を示すことは確認している.図-3.3より橋脚よりも主塔の方がよく揺れることが確認でき,また,

a) 橋脚(P1)-橋軸方向 b) 橋脚(P2)-橋軸方向 c) 主塔(T2)-橋軸方向

d) 橋脚(P1)-橋軸直角方向 e) 橋脚(P2)-橋軸直角方向 f) 主塔(T2)-橋軸直角方向

図-3.5 レベル2地震動の塑性率(2002年規定,タイプI, II種地盤)

a) 橋脚(P1)-橋軸方向 b) 橋脚(P2)-橋軸方向 c) 主塔(T2)-橋軸方向

d) 橋脚(P1)-橋軸直角方向 e) 橋脚(P2)-橋軸直角方向 f) 主塔(T2)-橋軸直角方向

図-3.4 レベル2地震動の塑性率(2012年規定,タイプI, II種地盤)

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橋軸直角方向に地震動を作用させた場合において応答が大きくなる可能性が示された.

(3)レベル 2 地震動による結果

図-3.4 はモデル斜張橋で 2012 年規定されたレベル 2 地震動による橋脚と主塔の応答塑性率を示す.

2012 年規定されたレベル 2 地震動の場合,橋軸方向に入力した場合,橋脚,主塔ともに降伏現象が見ら

れた.橋軸直角方向に入力した場合は,主塔だけ降伏現象が見られたが,主塔の最大塑性率は橋軸方向

に入力した場合より大きいことがわかる.

図-3.5 はモデル斜張橋で 2002 年規定されたレベル 2 地震動による橋脚と主塔の応答塑性率を示す.

2002 年規定されたレベル 2 地震動の場合,橋軸方向加振では,橋脚 P2 と主塔T2 で降伏が見られた.2012

年の地震動と比較すると,応答値は小さくなり,2012 年の道路橋示方書において,レベル 2 タイプ I 地

震動の加速度応答スペクトルの引き上げの影響と,2012 年のレベル 2 タイプ I 地震動の卓越周期(約 1

秒)がモデル斜張橋の橋軸方向周期(1.43 秒)に近かったためと考えられる.橋軸直角方向においては,

2002 年のレベル 2 タイプ I 地震動の応答の方が大きくなる傾向にあり,こちらはモデル斜張橋の橋軸直

角方向周期が約 5.6 秒と長く,卓越周期の長い 2002 年の地震動による応答値の方が大きくなったものと

考えられる.

(4)長周期地震動による結果

図-3.6 に 2011 年東北地方太平洋沖地震で観測された卓越周期が長い地震動による橋脚と主塔の応答

塑性率を示す.各橋脚と主塔の最大塑性率は表-3.5に示している.卓越周期が長い地震動の場合,橋軸

方向加振の場合,降伏現象は見られなかった.これは地震動の最大加速度の大きさが小さいこと,地震動

の卓越周期がモデル斜張橋の橋軸方向周期よりも長かったためと考えられる.一方,橋軸直角方向加振で

a) 橋脚(P1)-橋軸方向 b) 橋脚(P2)-橋軸方向 c) 主塔(T2)-橋軸方向

d) 橋脚(P1)-橋軸直角方向 e) 橋脚(P2)-橋軸直角方向 f) 主塔(T2)-橋軸直角方向

図-3.6 卓越周期が長い地震動の塑性率(II種地盤)

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は chb024, fks020, ymt015 の波形のとき主塔の降伏現象が見られた.応答塑性率の値は,設計地震動に比

べて,とても小さいが,地震動の卓越周期と橋梁の固有周期が近くなれば,最大加速度が 200gal から

300gal 程度でも,橋梁の応答が弾性範囲内に収まらないことがわかる.

3.4 まとめ

固有周期の長い免震斜張橋を対象とし,レベル 2 タイプ 1 地震動および 2011 年東北地方太平洋沖地震

で観測された卓越周期が長い地震動において,応答解析を行い,卓越周期が長い地震動の場合,最大加

速度の大きさはレベル 1 地震動とそれほど変わらないが,構造物の固有周期が長くなると共振状態に近

づくため,応答値が大きくなり,対象斜張橋モデルでは,降伏する部材もあることがわかった.そのた

め,長周期地震動の発生が予測される場合は,最大加速度だけで判断せずに,地震動の卓越周期と対象

橋梁の固有周期を適切に把握し,地震応答解析により,長周期構造物の応答について確認する必要があ

るといえる.

参考文献

3.1) 冨健一,梅原秀哲:長周期地震動作用時の道路橋 RC 橋脚における 3 次元非線形動的解析を用い

た耐震性能評価,土木学会論文集E,Vol.65,No.1,pp.138-148,2009.3.

3.2) 庄司学,渋井拓也:長周期地震動に対する PC 斜張橋の地震応答特性とその制震対策,土木学会

論文集A1(構造・地震工学),Vol.65, No.1(地震工学論文集第 30 巻),pp.291-305,2009.3.

3.3) 庄司学,門真太郎,韓強:2011 年東北地方太平洋沖地震で観測された長周期地震動が長周期型構

造物の振動制御に与える影響,日本地震工学論文集,第 12 巻,第 4 号(特集号),pp.414-431,

2012.9.

表-3.5 卓越周期が長い地震動の最大塑性率(II種地盤)

a) 橋軸方向 b) 橋軸直角方向

chb004 chb024 fks020 ibr015 ymt015

P1 0.280 0.291 0.484 0.352 0.387P2 0.252 0.228 0.392 0.189 0.241P3 0.252 0.228 0.392 0.189 0.241P4 0.280 0.291 0.485 0.351 0.387T2 0.205 0.297 0.438 0.209 0.253T3 0.205 0.297 0.438 0.209 0.253

chb004 chb024 fks020 ibr015 ymt015

P1 0.117 0.071 0.181 0.192 0.099P2 0.048 0.036 0.038 0.065 0.035P3 0.048 0.036 0.038 0.065 0.035P4 0.117 0.071 0.181 0.192 0.099T2 0.751 1.161 4.784 0.689 1.648T3 0.751 1.161 4.779 0.689 1.649

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4.液体タンクのスロッシング

長周期地震動によるタンク等構造物の被害が注目を集めるようになったのは,1964 年新潟地震の際に

石油タンク基地が火災焼失した事故が契機となっている.これは,タンクの内部液体の波動(液面動揺,

スロッシング)が 6 秒程度の長周期地震動によって励起され,共振的な現象が生じた結果であると説明

されている.

タンクのスロッシング被害は,その他にも 1964 年アラスカ地震,1978 年日本海中部地震,1985 年ロ

サンジェルス地震,1995 年兵庫県南部地震,1999 年コジャエリ地震(トルコ)・集集地震〈台湾〉等々

で報告されているが,2003 年の十勝沖地震においては,タンクスロッシング問題の重要性を再認識させ

るような重大な被害が苫小牧の石油タンク基地で発生している.特に注目すべきは,大型石油タンクの

浮屋根がスロッシングによって破壊・沈没に至ったことにより,大規模な火災事故に繋がったことであ

る.その一方では,この地震において,近年の地震観測体制の整備に伴う多数の精緻な地震記録が観測

されて,長周期地震動の特性とスロッシング発生の因果関係が明白に実証された.

2011 年東北地方太平洋沖地震においては,その地震規模に比較して,震源域近傍ではむしろ短周期特

性がきわめて卓越している特性が認められており,震源域から遠方の千葉・神奈川等において大型石油

タンクのスロッシング被害が見られている.最近小規模な水槽について詳しく調査した結果では,震源

域近傍では,短周期的応答であるバルジング(タンク本体と内部液体との連成振動であり,スロッシン

グとは異なる現象)の被害が卓越しているが,一部特定の地域にはスロッシングの被害も現出している.

4.1 石油・LNG等大型タンク

(1)大型タンクの周期特性

石油・LNG 等を貯蔵するには,通常 10~80m程度の内径を有する円筒形のタンクが用いられる.

その場合,スロッシングの1次固有周期は次式で算定される.

D

H

g

DT S

68.3coth

68.32 (4.1)

ここで,TSはスロッシング 1 次固有周期,D はタンク内径,H は液深,および g は重力加速度で

ある.円筒形タンクについて,スロッシング 1 次固有周期とタンクの諸元との関係を図-4.1に示す.

また,スロッシングの波高は 1 次固有モードの応答値として,次のように表わされる.

STg

DS

g

Dv

SaS

2419.0419.0 (4.2)

ここで,ηSはスロッシング波高であり,Saおよび Svはそれぞれスロッシング 1 次の固有周期に対

応する絶対加速度応答スペクトルおよび疑似速度応答スペクトルである.

2003 年十勝沖地震の場合,タンク災害が現出した苫小牧の地震記録から見られるように,速度応

答スペクトル(図-4.2)が 5~8 秒のきわめて長周期の帯域において卓越している.苫小牧のタンク

石油基地における甚大な被害は,このような長周期地震動の入力によって,タンクのスロッシング

波高が数メートルに及ぶ過大な応答を生じ,結果として液体表面に配備されている浮屋根が構造的

に破壊,ないしは浮力を失って沈没したことにより,多数のタンクで火災が発生,大事故に至った.

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図-4.1 円筒形タンクのスロッシング1次固有周期

図-4.2 十勝沖地震における疑似速度応答スペクトルの例(苫小牧)

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(2)石油タンクの耐震設計基準

2003 年苫小牧石油タンクの地震災害に鑑みて,消防法における耐震設計基準(長周期地震動に対

するスロッシング設計)に 2005 年以下の大きな改定がなされた.すなわち,

1) 従来は,式(4.1)に示す波高算定式において,Sv を最大 100cm/sec 程度に設定していたが,そ

の後の長周期地震動の調査に基づき,これを最大 200cm/sec レベルに改定.

2) 従来スロッシングに関するチェック項目は波高のみであったが,波動により浮屋根に作用す

る外力および結果として生じる応力を求めて,浮屋根強度をチェックする項目を追加.

このように,石油タンクについては,従来に比べて,長周期地震動に関するスロッシング設計に

関して多大の改善がなされた訳であるが,今後発生が想定される巨大地震等も考えて,さらに次の

ような問題点を解明して行く必要がある.

1) 現在まで長周期地震動の実測データはまだ限られたものであり,今後実測データをより一層

集積し,巨大地震等への理論予測の進歩と相俟って,長周期地震動の設計値をより信頼性の

あるものにする必要がある.

2) 浮屋根のスロッシング挙動については,まだ十分に解明されておらず,浮屋根に作用する地

震外力や浮屋根の変位・応力の算出法等解明すべき点は多く残っている.

先年土木学会では建築学会と共同にて,「巨大地震災害への対応検討特別委員会」を設け,特に

長周期地震動の各種構造物への影響とその対策に焦点を当てた調査活動を実施した.その際には,

今後想定される東海・東南海・南海地震のような巨大地震に対しても,当時最新の理論予測手法を

用いて,高いレベルの長周期地震動の発生を予測し,それに対して浮屋根タンクその他がいかなる

影響を受け,結果としてどのような対策が必要であるかを検討している.

4.2.受水槽・配水曹等小型タンク

(1) 小型タンクの周期特性

水道水を貯蔵する受水槽や配水曹には,数m~10m 程度の幅を有する小型の矩形タンクが用いら

れることが多い.その場合,スロッシングの 1 次固有周期は次式で算定される.

L

H

g

LT S

coth2 (4.3)

ここで,L は地震方向の水槽幅(内部区切りのある場合には,区切られた水槽の幅),H は地震

時の水深である.また,スロッシングの波高は次のように表わされる.

STg

LS

g

Lv

SaS

24422

(4.4)

2011 年東北地方太平洋沖地震の際には,多数の受水槽・配水層の地震被害が報告されているので,

土木学会耐震工学委員会「水循環ネットワーク施設災害軽減対策研究小委員会」では,「給水タン

クの地震被害軽減対策の研究TF」として,調査研究活動を行った.それによれば,震源域近傍の宮

城県を中心に,岩手・福島・茨城・栃木の 5 県について,受水槽(高置水槽を含む)の地震被害を

広範に調査した結果として,合計 146 基の本体に地震被害があったタンクをカウントしているが,

そのうちタンク天端の被害数(スロッシング波動が天端に衝突して破壊したと思われる被害モード)

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-I- 20 -

は 27 基に上っている.宮城県において調査対象となった水槽 46 基から,式(4.3)を用いて給水タン

クのスロッシング 1 次固有周期を算定すると,表-4.1のようになる.

表-4.1 給水タンクのスロッシング1次固有周期

ここで,最小は 1.4 秒程度,最大は 3.54 秒であるが,他所にはやや大型の水槽もあったので,給水

タンクのスロッシング 1 次固有周期は概ね 1.4~4.0 秒と推定することができる.

(2) 2011 年東北地方太平洋沖地震での水槽被害

東北地方太平洋沖地震における地震記録を用いて得られた絶対加速度応答スペクトルの一例を図-

4.5に示す.このスペクトルは,地震被害が発生した福島県相馬市にある給水タンク(図-4.6参照)

から近い地点で得られた地震記録から作成したものであるが,図から分かるように,このスペクトル

においては 1 秒以下の短周期成分応答が卓越しており,数秒と言うような長周期成分の卓越は見られ

ない.したがって,図-4.6に示したように,この場合のタンク被害モードは,長周期のスロッシング

応答による天端の破壊ではなく,大きな短周期加速度応答の結果として,内容液と側板が連成振動を

発現し,それによって過大な動圧力を受けた側板が破壊するバルジング現象によると推定された.

図-4.5 福島県相馬市給水タンク破壊地点近傍で得られた地震記録による絶対加速度応答スペクトル

受水槽 高置水槽 全水槽基数 34 12 46

最大 (s) 3.54 3.17 3.54最小 (s) 1.60 1.44 1.44平均 (s) 2.16 1.93 2.10

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-I- 21 -

図-4.6 短周期応答バルジングによるタンク側板の破壊例(左:相馬市,右:つくば市)

調査結果によれば,この種破壊モードを示した被害タンクの数は 146 基中で 119 基と全体の 81.5

%を占める.東北地方太平洋地震の報告によれば,この地震の特徴は,その規模に比較して短周期

成分が卓越していることであると言われているが,給水タンク地震被害の調査結果もまたその結論

と一致するものになっている.

しかしながら,宮城県を含む 5 県において検出された,スロッシング被害と推定される破壊モー

ドを呈した 27 基の被害タンクについては,事情が少し異なる.スロッシングによってタンク天端の

破壊を生じた例を図-4.7に示す.

図-4.7 長周期応答スロッシングによるタンク天端の破壊例(いずれも仙台市)

図-4.8は,2011 年 3 月 11 日の本震から前記 5 県およびその周辺 930 地点において稠密に記録さ

れた地震記録を用いて,疑似速度応答スペクトルを求め,広域 5 県における速度応答スペクトルの

コンター図を描いて,その上にスロッシング被害があった給水タンク 27 基の地点をプロットした

ものである.

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-I- 22 -

(a) Ts1=2.0sの場合 (b) Ts1=1.4-4.0sのPSV最大値を取った場合

図-4.8 疑似速度応答スペクトルのコンター図とスロッシング被害地点

(★:強震観測点, ○:受水槽,△:高置水槽)

図中,左図はスロッシング 1 次固有周期 2.0 秒に対応するスペクトル値そのもののコンター図で

あり,また右図はスロッシング 1 次固有周期 1.4 秒~4.0 秒に対応するスペクトル値の最大値から求

めたコンター図である.固有周期が 2.0 秒のスペクトルコンター図との対比では,スロッシング被

害地点とスペクトル値の高い地域との符合はよくない.一方,給水タンクのスロッシグ固有周期と

して推定した 1.4 秒~4.0 秒に対応したスペクトルコンター図では,コンター図の中でスペクトル値

がきわめて高い特定の地域とスロッシング被害の発生したタンク地点がよく符合している.すなわ

ち,全体として短周期成分が卓越している東北地方太平洋沖地震においても,固有周期 1.4 秒~4.0

秒程度の固有周期を有する給水タンクの被害(天端の破壊)は,ある特定の地域においてかなりの

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-I- 23 -

レベルでスロッシングの長周期的な応答が発現することによってもたらされたと言えるのである.

固有周期 2.0 秒の際に,両者の結果が符合しなかったのは,スロッシング現象では減衰がきわめて

小さく,固有周期 2 秒のスペクトル応答にはスロッシングの共振的な応答が現れないことを示して

いる.

(3) 給水タンクの 耐震設計基準

給水タンクの現行耐震設計基準は,1995 年の兵庫県南部地震における多大な被害を受けて,大幅

に改定されたものである.これによれば,短周期応答による側板動圧力を算定するのに必要な絶対

応答加速度スペクトルの値は,地表で最大 1,000cm/s/s,長周期応答によるスロッシング波動を算定

するのに必要な疑似速度応答スペクトルの値は,地表で最大 150cm/s と設定されている.

このような基準値に対して,たとえば図-4.5の絶対応答加速度スペクトルの数値は,1 秒以下の

短周期帯域において,1,500cm/s/s を超える値を示しており,現行の基準値を大きく上回っているこ

とが分る.また,図-4.8の疑似応答速度スペクトルのコンター図(右図)を見ると,特定の地域に

おいて,1.4 秒~4.0 秒に対する疑似応答速度スペクトルのレベルは~200cm/s 相当になっており,現

行基準値を上回っていることが分る.スロッシング被害を生じている地点はまさにこのような地域

である.

こうして,東北地方太平洋地震のような巨大地震においては,兵庫県南部地震をベースにした基

準値では不十分であることが明らかとなった.また水槽における短周期・長周期応答と被害モード

の関係が明らかになったので,今後の耐震対策へのアプローチもかなり明確になったと考えられる.

終りに

本論は,タンクの長周期問題(スロッシング)に関する近年の動向について,筆者が関係した調査・

研究等を中心に簡単にまとめたものである.詳しくは以下の参考文献,あるいはそれぞれの引用文献を

参照されたい.

参考文献

1. 畑山建,座間信作,西晴樹,山田實,廣川幹浩,井上涼介:2003 年十勝沖地震による周期数秒から

数十秒の長周期地震動と石油タンクの被害,地震,第 57 巻,pp.83-103,2004.12.

2. 坂井藤一:2003 年十勝沖地震における浮屋根式タンクの被害について,JSSC,No.52,2004.4.

3. 消防庁:危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令等の施行について,消防危,第 14 号,2005.

4. 土木学会巨大地震災害への対応検討特別委員会:耐震診断および耐震対策部会報告書,2007.3.

5. 坂井藤一:長周期地震動のタンク・橋梁に及ぼす影響,日本地震工学会誌,No.11,pp.8-11,2010.1.

6. 土木学会地震工学委員会:水循環ネットワーク施設災害軽減対策研究小委員会報告書,2015.3.

7. 井上凉介,坂井藤一,大峯秀一:2011 年東北地方太平洋沖地震における水槽の広域被害および地震

動特性との関連の分析,土木学会論文集A1,Vol.71,No.4,pp.I_764-I_773,2015.

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-I-24 -

5.長周期地震動によって生じた津波・漂流物を受ける鋼構造物の耐震性能

2011 年の東北地方太平洋沖地震では,東北地方の太平洋側において 2 秒以下の短周期地震動による

人的被害や家屋等の被害だけではなく,震源から遠く離れた場所まで伝播する性質を持つ長周期地震

動は,震源から約 370 km 離れた東京近郊の固有周期の長い高層ビルにまで被害を及ぼしている.この

長周期・長時間地震は総じて海溝型の地震であるため,同地震では観測史上最大規模の大津波が発生

した.発生した津波は東日本一帯の広い範囲の構造物に対して壊滅的な被害をもたらし,津波が直接

的な原因と考えられる海岸施設の破壊や橋梁の流出,建物の浸水といった被害の他に,津波が船舶や

コンテナを押し流し,漂流物となって構造物を損傷もしくは破壊した二次的被害も甚大であった 5.1).

例えば気仙沼市では,津波によって 330 重量トンクラスの大型漁船が岸壁係留位置から内陸に 800 m

以上の距離を建物や施設を破壊しながら漂流した報告(図-5.1)もある.このような地震動の周期に

依存した多様な被害は複合災害につながり,今後発生が懸念される南海トラフ地震をはじめとする巨

大地震に対する複合災害対策は喫緊の課題と考えられる.

一方,日本の主要港湾に架橋する長大橋は,国内の流通だけではなく,敷設されている送電線や導

水管などのライフラインの重要な一端を担っている.しかしながら,日本の主要港湾は埋立地が多く,

航路は狭小で複雑に入り組んでいるところに,多くの大型船舶が航行しているため,巨大地震時の津

波によって生じる二次被害から複合災害につながりやすいと考えられる.特に,都市部と社会経済に

直結した主要港湾沿いの施設や輸送路において,複合災害によって拡大する被害 5.2)が震災復旧・復興

へ与える影響は大きい.

このような背景から,ここでは日本の主要港湾に着目して,巨大地震時に発生した津波によって漂

流した大型船舶が長大斜張橋へ衝突する挙動と構造物被害を明らかにするために,数値シミュレーシ

ョンを用いて定量的評価を試みた.この想定した事象は,巨大地震と津波が構造物に直接的,間接的

に作用する複合災害のひとつのケーススタディであるため,対象構造物に対するすべての複合的な事

象を包括しているわけではない.しかし,ここで想定した複合的な事象は過去に発生し,地域によっ

ては最悪のシナリオになる可能性があるため,複合作用における応答性状の解明のための解析手法構

築は耐震性能評価に対して有用であると考えた.

本章は,仮想橋梁を用いた検討(5.1節)と,次節で詳述するが,想定するシミュレーションの

解析パラメータや諸量設定などに対する提起された問題を踏まえて,実橋梁を対象にした解析事例

(5.2節)で構成している.

図-5.1 2011 年東北地方太平洋沖地震の津波で打ち上げられた第 18 共徳丸

(2013年 4 月 18日読売KODOMO新聞)

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- I-25 -

5.1.仮想橋梁を用いた検討

ここでは,津波によって漂流した大型船舶が,湾岸沿いに架橋する仮想の鋼長大斜張橋へ衝突する

挙動および構造物への被害を数値シミュレーションによって明らかにし,その解析手法を提案するも

のである.

(1) 仮想橋梁の想定

長大斜張橋はコンピューターによる解析技術の進歩に伴って,近年,国内外で著しい進歩があった.

日本の主要港湾の特徴である埋め立てによる複雑な地形に対しては,長スパンで吊橋構造を選択する

必要性が少なく,トラス橋やアーチ橋に次いで斜張橋の採用は多い.そこで,図-5.2 に示す大阪湾に

架橋された架空の長大鋼斜張橋を対象とした.図-5.3 に示すように,橋長 1,000 m (250+500+250)の 3

径間連続 2 主塔 2 面吊り鋼斜張橋であり,大型船舶の航行を考慮して海上面 40 m の空間を確保してい

る.

(2) 検討手順

次に示す手順で検討を行った.(図-5.4)

(i) 南海トラフの巨大地震モデル検討会 5.3)にて提示された津波波源モデルを参考に作成した4連動地震を

波源モデルとした非線形長波理論による津波伝播解析を実施する.

(ii) 津波伝播解析によって得られた鋼斜張橋の架橋位置における流速および流向を,津波によって漂流した

大型船舶の衝突時速度および被衝突部材である主塔への衝突角度とする.

図-5.3 対象橋梁一般図

250 25 0

1,000

50 0

P1P 2 P3

P 4

4 5

3 0

4 0

505070

80

10

60

200

(単位:m)

図-5.2 想定地域と対象橋梁の位置図

架橋想定位置

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- I-26 -

(iii) 衝突における運動量を力積の正規分布形とした力の時刻歴波形(以下,力波形と称す)として算定する.

このとき,大型船舶は主塔の耐荷力相当の最大衝突力となる質量をもつものを想定する.

(iv) 上記(i)で想定した波源モデルをもとに,短周期工学基盤波を統計的グリーン関数法,長周期工学基盤波

を剛性マトリックス法で計算して重ね合わせる広帯域ハイブリッド法によって工学基盤波を求め,等価

線形法(SHAKE)により地震応答解析に用いる地表面の地震動を作成する.

(v) ファイバー要素 5.4)でモデル化した鋼斜張橋の橋梁全体系モデルへ(iv)で求めた地震動を入力する複合非

線形動的応答解析 5.5)を実施する.

(vi) (v)の地震による損傷状態を引き継いだ構造へ(iii)で求めた力波形を入力する衝突解析(弾塑性有限変位

解析)を実施する.

ここで,衝突解析における重要な要素は,衝突速度,衝突角度,衝突力,衝突時間である.衝突速度,

衝突角度については(ii)に示すように津波伝播解析の結果を用いるが,衝突力,衝突時間については衝

突する船舶規模の想定によって様々な結果をもたらすため,想定した条件に依存した極めて限定的な

解となってしまう.そこでここでは,(iii)に示すように入力する衝突力は被衝突部材である主塔の耐荷

力と同じ最大衝突力を与える力波形とした.なお,主塔の耐荷力は,被衝突部材を積層シェル要素で

モデル化して,衝突方向に漸増載荷した静的弾塑性有限変位解析によって求めた.

また,衝突解析における,地震による構造物被害の影響は,(vi)の初期状態において(v)で地震後十分

に振動が収まった時刻の全部材の状態量(応力,変位等)を引き継ぐことで考慮している.

図-5.4 検討フロー

地震波入力

初期状態と

して考慮

衝突速度 衝突方向

長大橋梁の地震応答解析 (ファイバーモデル)

ハイブリッド合成法に

よる工学基盤面上広帯

域地震動の作成

工 学 基 盤 波 形

地 表 面 波 形

等価線形法(SHAKE)に

よる地表面波形の作成

地震後の応力状態

非線形長波理論による

津波伝播解析

架設付近の流速・流向

弾塑性 FEM シェル解析 被衝突部材の耐荷力算定

耐荷力・変位

衝突力波形

最大衝突力が耐荷力と なるような最大の漂流物

震 源 断 層 の 想 定 南海トラフを含む4連動 Mw9.0 地震

長大橋梁主塔への大型漂流物 衝突解析

複合作用を受ける橋梁被害評価

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- I-27 -

(3) 津波伝播解析

(a) 解析条件

南海トラフの巨大地震モデル検討会 5.3)(以下,中央防災会議)が 2011 年 12 月 27 日に中間取りま

とめとして発表した津波波源モデルを参考にして,東海地震,東南海地震,南海地震,日向灘プレー

ト間地震の4連動地震(Mw = 9.0,ここに,Mw:モーメントマグニチュード)を想定した波源モデル

を用いて津波伝播解析を実施した.想定した4連動地震の断層モデルを図-5.5,断層パラメータおよ

び地震規模を表-5.1 に示す.

津波伝播解析の解析条件を表-5.2 に示す.解析領域は図-5.6 の領域 A-F のように,想定した架橋位

置の大阪湾に着目して,最小計算格子幅は 10 m の 6 段階多層メッシュ構成とした.地形データは財団

法人日本水路協会,国土地理院から提供される地形データ等のデジタルデータを各解析領域格子間隔

に内挿して作成し,海底摩擦は Manning の粗度係数として 0.025 を用いた.津波伝播解析は,想定し

た波源モデルからMansinha and Smylieの方法5.6)によって計算される海底地盤変動を海面の初期水位変

動として,2次元浅水流モデルを差分法に基づく非線形長波理論で行った.計算時間間隔は 0.1 s,計

算継続時間は地震発生から 6 時間とした.また,計算には対象橋梁付近の台風期朔望平均満潮位 T.P.

+0.9 m(O.P. +2.20 m)を考慮している.

表-5.1 想定地震の断層パラメータおよび地震規模

断層長さ 断層幅 断層面積モーメントマグニチュード

L (km) W (km) S (km2) Mw

N1 東海地震 115 82 9,400 8.2

N2 東南海地震 174 91 15,800 8.4

N3 南海地震 295 125 37,000 8.8

N4 北部 64 48 3,082 7.7

N5 南部 75 54 4,079 7.8

- - - 9.0

南海トラフ地震

日向灘プレート間地震

4連動地震

断層帯位置地震の種類

図-5.5 津波波源の断層設定

日向灘南部破壊点

日向灘北部破壊点

南海破壊点

東南海破壊点

東海破壊点

日向灘プレート間地震

東海地震

東南海地震

南海地震

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- I-28 -

(b) 解析結果

波源モデルから計算された地震直後,地震発生 30 分後および地震発生 90 分後の水位変化コンター

図-5.6 津波伝播解析の計算領域(領域A-F)

領域A

領域B

領域C

領域E 領域E

領域F 架橋想定位置

表-5.2 津波伝播解析条件

項目

領域A 2430m (510x300)

領域B 810m (417x300)

領域C 270m (408x327)

領域D 90m (471x336)

領域E 30m (363x237)

領域F 10m (624x426)

基礎方程式

沖合境界条件

海底摩擦

陸側境界条件

初期波形

地形データ

潮位条件

計算時間間隔

計算継続時間

*1:NOAA National Geophysical Data Center

*2:日本近海30秒グリッド水深データ

*3:財団法人日本水路協会 近海等値線データ

*4:国土地理院基盤地図情報10m,5mメッシュ

Mansinha and Smylie

ETOPO2*1,MIRC-JTOPO30*2,海底地形デジタルデータ

M7000*3,国土地理院ダウンロードメッシュデータ*4

※各領域格子間隔に内挿して使用.

T.P.+0.9m

Δt=0.1s

地震発生から6時間

内容

計算格子間隔

非線形長波理論

領域Aで自由透過各領域間は水位・流量を接続

Manningの粗度係数=0.025

すべての領域で遡上境界

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- I-29 -

図を図-5.7 に示す.30 分後には太平洋から大阪湾へ通じる紀伊水道から紀淡海峡にかけて津波が到達

している.また,大阪湾内では,津波は地形との反射により複雑な波高分布を示した.

(4) 漂流物の衝突速度および衝突方向

最大流速時の大阪湾の水位変化コンター図と対象橋梁付近の流速ベクトル図を図-5.8 に示す.図に

図-5.7 広域の津波高さ

(c) 地震 90 分後

(a) 地震直後

(m)

(b) 地震 30 分後

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- I-30 -

示している着目した流速ベクトル位置の津波高さ,合成流速(東西成分流速と南北成分流速の合成成

分の流速),流向の時刻歴波形を図-5.9 に示す.ここに,図-5.9(c)に示す流向は北方向から右回りに

正をとった角度としている.対象橋梁への第一波は約 90 分後に到達し,最大津波高さは 114 分後に

2.702 m を記録(図-5.9(a))した.合成流速で 109 分後に最大流速 1.14 m/s を記録(図-5.9(b))し,そ

の時の流向は 30.7°(図-5.9(c))であった.

中央防災会議が 2012 年 8 月 29 日に発表した報告 5.7)では,対象橋梁付近の大阪市此花区の最大津

波高は 4 m となっている.本解析結果の対象橋梁付近最大津波高さはそれよりも約 1.3 m低くなって

いるように見えるが,この要因として,中央防災会議報告の最大津波高さが沿岸地点を抽出したもの

で,本解析の抽出地点と異なることが挙げられる.確認のために,本解析で中央防災会議報告と同様

に此花区近辺の沿岸の最大津波高さを抽出したところ,中央防災会議報告に近い約 3.5 m が記録され

ている場所もあった.さらに中央防災会議報告で示されている 1 m 到達時刻も比較的一致(中央防災

会議報告では 90-120 分,本解析では 104 分)していることがわかった.これらのことから,本解析で

想定した津波被害は,中央防災会議の想定とほぼ同程度と考えられる.

図-5.8 最大流速時の水位変化コンターと対象橋梁付近の流速ベクトル

架橋想定位置

着目した流速ベクトル v = 1.14 m/s

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- I-31 -

津波伝播解析からは合成流速で 1.14 m/s,その時の流向は 30.7°が得られている.図-5.10 に示すよう

に対象橋梁の架設方向は 150°としているため,大型船舶の衝突角度は橋梁に対して 60.7°となる.想定

する船舶は水面から船首の衝突範囲中心までの高さが 11.3 m,主塔基部高さがT.P. +1.0 m,津波高さ

が 2.7 mであるため,漂流物である大型船舶は主塔基部から 13 m の位置へ衝突するものとした.

図-5.10 大型船舶の衝突位置と衝突角度

衝突位置

m13

対象橋梁

大型船舶

大型船舶

150

7.30

7.60

図-5.9 対象橋梁付近の津波応答時刻歴波形

-1.0

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

0 60 120 180 240 300 360

t (min)Tsu

nam

i Hei

ght

(m)

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

0 60 120 180 240 300 360

t (min)

Flo

w S

peed

(m/s

)

0

120

240

360

0 60 120 180 240 300 360

t (min)Flo

w D

irec

tion

( °)

hmax = 2.702 m [114.0 min]

vmax = 1.14 m/s [109.0 min]

θ = 30.70° [109.0 min]

(a) 津波高さ

(b) 合成流速

(c) 流向

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- I-32 -

(5) 衝突解析に用いる力波形

(a) 衝突力のモデル化

大型船舶の衝突によって生じる荷重を力波形として構造物に入力する.力波形は,衝突によって大

型船舶は完全に停止して,失った運動量は主塔に作用した力積に等しいと仮定し,衝突時間 dt の半分

を最大とする正規分布形とした.衝突時間 dt の大型船舶の運動量の積分は 3σ(ここに,σ:標準偏差)

を採ることで衝突現象全体の力積と 99.73 %一致する.大型船舶の質量m と津波伝播解析によって得

られた流速 v を用いて,時間 t の関数として力波形F(t)を整理すると次式のようになる.

2

2

2

2

t

emv

tF (5.1a)

2

dt (5.1b)

3

(5.1c)

ここに,μ:平均値である.この力波形F(t)の最大値Fmaxは t = μより,

2max

mvF (5.2)

となる.

求めたF(t)に対して,衝突前に 1.0 s 間,波形全体が 10.0 s となるようにゼロを追加して力波形を作

成する.

(b) 衝突部材が耐えうる最大漂流物の想定と最大力波形の算定

衝突する大型船舶の大きさは被衝突部位である主塔に対して最大の漂流物を想定し,その衝突力は

構造物が耐えうる力(耐荷力)に等しいものとした.具体の手順は次のとおりである.

(i) 衝突部材である主塔下柱を,局部座屈を考慮できる弾塑性シェル要素でモデル化し,衝突方向のプ

ッシュオーバー解析を実施する.得られた荷重―変位曲線の最大荷重は衝突方向耐荷力Pmであり,

その時の変位を δmとする.

(ii) 船舶の衝突位置は主塔と同じだけ座屈変形すると仮定すると,衝突してから停止するまでの双方の

変形量の合計は δmの 2 倍となり,その間,等加速度直線運動で停止したときの時間を衝突時間 dt'

とする.

(iii) 衝突方向耐荷力 Pm,衝突時間 dt'および津波伝播解析によって得られた流速 v を用いて,式(6.2)か

ら最大衝突力 Fmax=Pmとなる質量 m を算定する.つまり,この質量 m は耐荷力と等しい衝突力が

発生する最大の漂流物質量M となる.

(iv) 最大漂流物質量 M および衝突時間 dt'を式(6.1a)に代入した力波形 Fm(t)を入力した衝突解析によっ

て,衝突部材が耐える最大の漂流物が衝突した際の挙動を再現し,その時の衝突現象が橋梁へ与え

る影響について考察する.

主塔柱基部から下段水平材までの主塔下柱を抜出し,図-5.11 に示すような解析モデルとした.衝突

位置付近を弾塑性シェル要素でモデル化し,端部は線形はり要素の単純支持とした.シェル要素と線

形はり要素は,剛な仮想部材で連結し,ダイヤフラムを 3.0 m間隔で配置した.

使用した要素は積層タイプの弾塑性シェル要素であり,応力―ひずみ関係は 2 次勾配が E/100 のバ

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- I-33 -

イリニア(ここに,E:鋼材のヤング係数),降伏判定はMises 降伏条件,塑性流れ則(応力―塑性ひ

ずみ増分構成則)は関連流れ則としている.載荷面は高さ方向 4.2 m,幅方向 9.07 mの範囲とした.

なお,載荷面周辺は大きなたわみや応力が集中されると予想されるため,柱軸方向および母材幅方向

の要素分割を細分化している.

主塔に作用する死荷重として 0.13Ny(ここに,Ny:全断面降伏軸力 = 765,000 kN)を頂点に載荷し

た後,津波伝播解析よって得られた衝突方向に,図-5.11 a に示す範囲を載荷面として変位制御でプッ

シュオーバー解析(静的弾塑性有限変位解析)を実施した.得られた荷重―変位曲線を図-5.12 に示す.

この図は,縦軸に載荷荷重P,横軸に衝突位置での衝突方向変位 δをとっている.δ = 676 mm で最大

荷重Pmに達して,δ = 1678 mm で構造不安定となり終局Puに達したと判断できる.載荷位置付近の柱

断面は前述の通り幅厚比は小さいため,最大荷重を過ぎた後の劣化域に急激な耐力低下は見られない.

このことから,橋梁全体系モデルにおける衝突位置へのファイバーモデル適用で,衝突位置塑性化の

評価が危険側になることはないと考えられる.最大荷重時および終局時のミーゼス応力コンター変形

図および同図中 a の位置の断面変形図を図-5.13 に示す.終局 Pu時の載荷面周辺では,局部座屈の進

展が見られ,断面変形に伴う座屈が表現できている.

図-5.12 荷重―変位曲線

0

50

100

150

0 500 1000 1500 2000

δ(mm)

P (

x100

0kN

)

P

mm140

Pm = 163,157 kN [ 676 mm]

Pu = 140,599 kN [ 1678 mm]

図-5.11 主塔柱部の弾塑性シェルモデルとメッシュ分割

a

(a) 全体図 (c) ダイヤフラム

載荷方向

a

a

(b) 一般部

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- I-34 -

漂流物の大型船舶の衝突位置は主塔と同じだけ座屈変形すると仮定すると,衝突してから停止する

までの双方の変形量の合計は δmの 2 倍となり,その間,等加速度直線運動で停止したときの時間を衝

突時間 dt'とすると次のように表される.

vvdt m 42

' (5.3)

式(5.3)より,衝突時間 dt' = 2.46 s を求めることができる.

さらに,衝突部材が耐えうる最大漂流物質量M は,式(6.2)の最大衝突力Fmax = Pmとすることで次の

式で求めることができる.

2max 3

222

v

PF

vM mm

(5.4)

式(5.4)より,最大漂流物質量M = 152.4×106 kg が求まる.この漂流物は石油タンカーでは全長 270 m

程度の Suezmax 級(積み荷を搭載した状態でスエズ運河を通航することのできる船の最大サイズ,大

規模分類)に相当する.

式(5.3)および式(5.4)で求めた最大漂流物質量 M および衝突時間 dt'を式(5.1a)に代入して求めた力波

形諸量を表-5.3 に示し,力波形Fm(t)を図-5.14 に示す.

図-5.13 ミーゼス応力コンター図と断面変形図

(a) 最大荷重Pm (b) 終局Pu

a a

倍変形倍率:1

y

倍変形倍率:1

MPa450y

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- I-35 -

(6) 地震応答解析

地震による構造物被害の影響を衝突解析の初期状態として引き継ぐために,(3)項の津波伝播解析で

想定した4連動地震から架橋付近のサイト波形を作成し,ファイバー要素を用いた橋梁全体系モデル

へ入力する地震応答解析を実施した.

(a) 広帯域ハイブリッド法による強震動予測と地震波作成

強震動評価手法は理論的手法,半経験的手法および経験的手法に分類されることが多い 5.8).ここで

は地震動予測精度を向上させるために,短周期工学基盤波を半経験的手法の統計的グリーン関数法5.9),長周期工学基盤波を理論的手法の剛性マトリックス法によって求め,広帯域ハイブリッド法によ

る工学基盤面上広帯域地震動の合成を行っている.得られた工学的基盤波から等価線形法(SHAKE)に

より地表面の地震動を算定した.地震波の作成フローを図-5.15 に示す.

地震動の短周期成分は断層媒体の不均一性の影響を受けやすく,経験的グリーン関数法で用いるべ

き当該サイトの適切な中小地震記録を入手することが困難である.そこで本検討では,地震と地盤の

不確定性を確率論的に予測精度向上を図った統計的グリーン関数法を用いて短周期工学基盤波を計算

した.具体的には,加速度応答スペクトルにおいて周期が約 1 秒以下の領域で既往研究成果に基づき,

図-5.14 力波形Fm(t)

(M = 152.4×106 kg,dt' = 2.46 s)

0

50

100

150

200

0 2 4 6 8 10

t (s)F (

x100

0kN

)

Fmax = 163,157 kN [ 2.23 s] 被衝突部材耐荷力 P m kN 163,157

その時の変位 δ m m 0.676

停止するまでの距離 δ m 1.353

衝突速度 v m/s 1.1

重量 W t 152,395

質量 M kg 152,395,129

衝突時間 dt' s 2.46

平均 μ s 1.23

標準偏差 σ - 0.410

分散 σ 2 - 0.168

最大衝突力 F max kN 163,157

力波形継続時間 T s 10.00F max 時の時刻 t s 2.23

表-5.3 力波形諸量

図-5.15 地震波作成フロー

①統計的グリーン関数法によ

る短周期工学基盤波の作成 ②剛性マトリックス法による

長周期工学基盤波の作成

③ハイブリッド法による工学基盤面上

広域地震動の合成

④等価線形法(SHAKE)による

地表面波形の合成

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- I-36 -

断層パラメータの立ち上がり時間 5.10),破壊伝播速度 5.11)およびランダム位相角 5.12)をそれぞれ 5 種類

(平均時間の 0.67 倍, 0.83 倍, 1.0 倍, 1.17 倍, 1.33 倍),6 種類(0.72 km/s,0.756 km/s,0.792 km/s,0.828

km/s,0.864 km/s,0.9 km/s),10 種類(0~2π間)に変化させた合計 300 個の地震波を作成した.作

成した地震波の加速度応答スペクトルから平均スペクトルから+2σ(ここに,σ:標準偏差)シフトし

たスペクトルに最も近い波形を選定した.作成した 300 個の短周期工学基盤波の NS 成分の加速度応

答スペクトルと平均スペクトル,平均+1σ スペクトルおよび平均+2σ スペクトルの重ね合わせを図

-5.16 に示す.

長周期工学基盤波は,運動学的断層モデルと水平成層地盤モデルに基づいた理論的な地震動合成法

である剛性マトリックス法を用いて計算した.剛性マトリックス法は,震源特性,伝播経路特性およ

びサイト特性をモデル化し,波動方程式を離散波数法で解く手法であり,他の理論的手法よりも数値

計算的取扱いが容易な優位性がある.本検討では加速度応答スペクトルにおいて周期が 1 秒以上の領

域を対象とした.

広帯域ハイブリッド法は,短周期側は半経験的手法で求め,長周期側では理論的手法により計算し

て,両者を重ね合わせる方法 5.13), 5.14)である.本検討では,求めた短周期工学基盤波と長周期工学基盤

波の1~1.2秒の接続周期を中心とするマッチングフィルタを用いて時刻歴波形をフィルタ処理して合

成した.合成した波形を等価線形法(SHAKE)により地震応答解析に用いる地表面の地震動を求めた.

(b) 地震応答解析

鋼斜張橋の解析モデルはファイバー要素を用いた橋梁全体系モデル 5.4)とし,地震時の挙動を精確に

表現するために精緻なモデル化を行った.解析モデル図を,骨組み表示とファイバー断面表示を合わ

せて図-5.17 に示す.主塔および主桁はリブも含め,実状断面をファイバー要素でモデル化し,2 次勾

配が E/100 のバイリニア移動硬化則を設定した.ケーブルは細分化して中間節点に質量を設けること

により,幾何形状によってケーブルのたわみや張力抜けが評価できるような要素でモデル化 5.15)した.

解析には各部材の死荷重およびケーブル張力を載荷した応力状態を初期状態として考慮する.以降,

図-5.17(a)に示す方向に,橋軸方向をX,直角方向を Y の記号を用いて記述するものとする.

図-5.16 短周期工学基盤波の加速度応答スペクトル

(統計的グリーン関数法,NS 成分)

1

10

100

1000

10000

0.01 0.1 1

加速度

応答

スペ

クトル

(gal)

周期 (s)

平均 +1σ +2σ

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- I-37 -

固有値解析結果として,橋軸方向および直角方向の主要モード図を図-5.18 に示す.橋軸および鉛直

方向の卓越振動モードは固有周期 TX = 4.01 s,直角方向の卓越振動モードは固有周期 TY = 3.27 s であっ

た.地震応答解析の減衰モデルには部材別剛性比例減衰を用いて,橋軸と鉛直方向の卓越モード(TX)

に対応するひずみエネルギー比例減衰を設定した.ここで,減衰モデルに選択した卓越モードの妥当

性については地震応答解析の結果をもって議論する.

作成したNS 成分,EW 成分の想定地震加速度波形を対象橋梁の架設方向であるX 方向,Y 方向に展

開(図-5.19)して入力地震波とした.入力地震動の加速度波形および加速度応答スペクトル(5%減

衰)を各方向の卓越周期と合わせて図-5.20 に示す.入力地震波の加速度波形は,X 方向は最大 391.5

gal,Y 方向は最大 335.3 gal であり,主要動は 20 秒から 150 秒の間程度となっている.対象橋梁の固

有周期 TX,TYのときの加速度応答スペクトルはそれぞれ 190 gal,185 gal となっており,対象橋梁の

固有周期は入力地震波の共振周期帯の下降域に位置している.入力地震波は,耐震解析で用いられて

いる時間間隔と同じ 0.01 秒間隔のデジタルデータであり,主要動後の波形減衰域を含む継続時間 300

(a) 解析モデル

(b) 主塔柱一般部ファイバー断面図

図-5.17 対象橋梁全体系解析モデル図

ファイバー断面表示

骨組み表示

XY

2P

3P

1P

4P

M

M

MM

積分点

図-5.18 対象橋梁の卓越振動モード

X

Y

X

Y

(a) TX = 4.01 s (b) TY = 3.27 s

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- I-38 -

秒間(5 分間)のデータとなっている.ここで,入力地震波の 0.0 s は地震発生時刻であり,架設位置

と,そこから最も近い東南海地震の断層位置までの距離は約 160 km,S 波速度Vs=3.8 km/s から地震波

到達時刻は地震発生約 20 秒後となっている.

(3)項の津波伝播解析の結果から漂流物の衝突時刻は109分後であるため,入力地震波の継続時間300

秒間(5 分間)の揺れの後,漂流物衝突時には構造は十分減衰していると考えられる.そこで地震応

答解析の継続時間は,地震による揺れが収まる時刻を事前解析によって求め,地震発生後 600 秒間(10

分間)に設定した.

なお,解析には SeanFEM ver.1.225.16)を用いて,複合非線形解析を実施した.ここに,幾何学的非線

形性は有限変位・微小ひずみ・有限回転(Updated Lagrange 法)までを考慮する.また,数値時間積

分においては,計算時間ステップ毎に収束計算を行い,各ステップで収束していることを確認する.

以後の解析においても同じソフトを用いた.

X 方向,Y 方向の地震波を同時入力した地震応答解析を実施した.P2 主塔頂部の応答変位時刻歴波

形を図-5.21 に示す.P2 主塔頂部ではX 方向に最大 1.316 m,Y 方向に最大 0.937 m の応答変位が発生

している.ここで,動的応答時の主要な変形状態は図-5.18(a)に示す TXの固有モードに類似しており,

150 s までの主塔頂部および主桁中央支間 1/4 点での鉛直方向,橋軸方向の応答変位時刻歴波形のフー

リエ変換からも TXの固有周期付近で卓越したフーリエスペクトルが現れていたことから,入力地震波

に対する主要な振動は TXであるといえる.このことから剛性比例減衰に選択した TXのモードは動的

応答時の振動を評価できていると言え,減衰モデル設定の妥当性を確認した.

図-5.21 において主塔頂部の Y 方向変位時刻歴は入力地震動の主要動(図-5.20(a))と同じ約 150 s

付近まで振動しているが,X 方向は約 250 s 付近まで振動が続いている.図-5.22 は P2 主塔頂部の応答

変位をX 方向(横軸)および Y 方向(縦軸)の 2 方向で表したものである.入力地震動の主要動の範

囲である 0 s から 150 s(青線),それから地震動が終わるまでの 150 s から 300 s(緑線),解析終了

までの 300 s から 600 s(赤線)の応答変位を区分して示している.主要動の 150 s まではX 方向,Y

方向に大きく変形しており,その後 300 s までは主に X 方向に卓越して変形していることが確認でき

橋梁の橋軸方向

大型船舶

10

100

1000

10000

0.1 1 10

Period (s)

Acc

eler

atio

n R

espo

nse

Spe

ctru

m (

gal)

X

YTY

TX

図-5.20 入力地震波

(a) 加速度波形

(b) 加速度応答スペクトル(減衰 5%)

-600

-300

0

300

600

0 50 100 150 200 250 300

t (s)Acc

eler

atio

n(g

al)

X max= -391.5gal[54.32sec]

Y max= 335.3gal[53.93sec]

図-5.19 入力地震波の作用方向と

橋梁の架設方向

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- I-39 -

る.これは入力地震動のもつ振動特性と構造物との共振現象によるものであり,X 方向への寄与率が

高い特徴的な応答が見られた.

図-5.23 に P2 主塔最大ひずみ分布と主塔基部の塑性化範囲を示す.P2 主塔は基部で最大 2,641μ の

圧縮ひずみ(≒ 1.17εy,SM570 材)が発生しており,降伏応力の超過率は比較的小さいものの,主塔

基部の塑性化によって主塔頂部には 246 mm の残留変位(図-5.21 a)が生じる結果となった.また,

図-5.23(b)に赤線で示しているように,X 方向に圧縮力を受ける方向の板の塑性化範囲が広いことか

ら,X 方向とY 方向の応答の差異は,主塔基部の塑性化に起因するものと考えられる.P2 主塔基部で

最大ひずみが発生した位置での応答ひずみ時刻歴波形および応力―ひずみ履歴を図-5.24 に示す.同図

は引張側(プラス側)を青線,圧縮側(マイナス側)を赤線で表しており,降伏ひずみの位置も合わ

せて示している.ここには紙面の都合上,P2 主塔の応答を示したが,P3 主塔においても同様の応答,

損傷が見られた.

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

0 100 200 300 400 500 600

t (s)Dis

plac

emen

t(m

)

X max= -1.316m[126.80sec]

Y max= 0.937m[110.70sec]

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

0 100 200 300 400 500 600

t (s)Dis

plac

emen

t(m

)

X max= 0.752m[128.90sec]

Y max= 0.987m[54.00sec]

mma 246:

図-5.21 応答変位時刻歴波形

(a) P2 主塔頂部

(b) 主桁支間中央

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

-2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0

Y-D

irect

ion

(m)

X-Direction (m)

0 - 150 s

150 - 300 s

300 - 600 s

2P

X

Y

図-5.22 P2 主塔頂部の2方向変位

X

降伏箇所

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

-5,000 0 5,000

Strain (µ)

Hei

ght (

m)

yy

nco

mpr

essi

o tension

y17.1 X

図-5.23 地震によるP2 主塔の最大ひずみ分布と主塔断面内の塑性化範囲

(b) 主塔右柱断面内の塑性化範囲 (a) 最大ひずみ分布

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- I-40 -

(7) 衝突解析

(5)項で求めた最大力波形 Fm(t)(図-5.14)を,(6)項の地震応答解析による損傷を引き継いだ橋梁全

体系モデルへ入力する動的弾塑性有限変位解析を実施した.

(a) 地震による損傷を考慮した衝突解析の初期状態

解析モデルの初期応力状態は,(6)項の地震応答解析で地震による揺れが十分減衰した地震応答解析

の最終時刻である 600 秒後を用いた.そのときの変形図を図-5.25 に示す.主塔基部の塑性化により

P2,P3 主塔が始終点側に倒れる残留変形となっている.

(b) 衝突解析結果

衝突部位の直ひずみが最大時刻のひずみコンター変形図を主塔衝突部拡大図とともに図-5.26 に示

す.また,衝突部(図-5.26 a),衝突側の P2 主塔頂部(図-5.26 b),主桁中央(図-5.26 c)および

P3 主塔頂部(図-6.26 d)の変位時刻歴波形を図-6.27 に示す.この図より,P2 主塔頂部は最大衝突力

が入力された 2.23 s の直後の 2.53 s に Y 方向(主塔面内方向)に最大変形 0.178 mが発生し,その後,

P2 主塔頂部,主桁中央,P3 主塔頂部へと波動伝播していることがわかる.また,主塔頂部と主桁中

央の Y 方向の時刻歴波形は固有周期 TY (= 3.27 s)とほぼ同じ安定した自由振動をしており,衝突後

の振動特性を表現している.

図-5.24 P2 主塔基部の応答ひずみ

-10,000

-5,000

0

5,000

10,000

0 100 200 300 400 500 600

t (s)

Stra

in(μ

)εmax= 0.82εy [47.50sec]

εmin= -1.17εy [47.60sec]

-1,000

-500

0

500

1,000

-10,000 -5,000 0 5,000 10,000

Strain(μ)

Str

ess

(kN

/m2 )

(a) 応答ひずみ時刻歴波形

(b) 応力―ひずみ履歴 図-5.25 最終時刻の応答変位図

(600 s,変形倍率:50 倍)

2P 3P

mm246

X

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- I-41 -

図-5.28(a)に衝突位置で最大であった要素の応答ひずみ時刻歴波形,図-5.28(b)に同位置での応力-

ひずみ履歴図を示す.同図(b)挿絵の矢印は主塔の衝突位置を示し,●印は応力―ひずみの抽出位置を

示す.最大衝突力が入力された時刻直後に衝突位置では最大 3,552μ の圧縮ひずみ(≒ 1.58εy,SM570

材)が発生している.同様に,主塔で最大応答ひずみが発生した基部の応答ひずみ時刻歴波形と応力

―ひずみ履歴図を図-5.29 に示す.衝突位置で最大応答ひずみが発生したほぼ同時刻で最大圧縮ひずみ

8,390μ(≒ 3.73εy,SM570 材)が発生し,引張側も 6,104μ(≒ 2.71εy)のひずみが発生している.衝突

時刻の大きな塑性化の後に復元力はなく,圧縮側では約 5,384μ(≒ 2.39εy),引張側で約 3,333μ(≒ 1.48εy)

の残留ひずみが生じる結果となった.

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

0 2 4 6 8 10

t (s)Dis

plac

emen

t(m

)

X max= -0.163 m[6.79 s]

Y max= 0.425 m[6.25 s]

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

0 2 4 6 8 10

t (s)Dis

plac

emen

t(m

)

X max= 0.261 m[9.09 s]

Y max= -0.577 m[8.04 s]

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

0 2 4 6 8 10

t (s)Dis

plac

emen

t(m

)

X max= -0.149 m[2.35 s]

Y max= 0.178 m[2.53 s]

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

0 2 4 6 8 10

t (s)Dis

plac

emen

t(m

)

X max= -0.459 m[7.45 s]

Y max= 0.855 m[2.85 s]

図-5.27 衝突部ひずみ最大時刻のひずみコンター図

mma 325:

(a) 衝突部(図-5.26 a)

(c) 主桁支間中央(図-5.26 c)

(b) P2主塔頂部(図-5.26 b)

(d) P3主塔頂部(図-5.26 d)

図-5.26 衝突部ひずみ最大時刻のひずみコンター図

a

b 倍変形倍率:50

cd

2P

3P

X

Y

0

y

2.10.12.1 0.1

ncompressio tension

a

2P

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- I-42 -

ここで,(5)項の弾塑性 FEM シェルモデルによるプッシュオーバー解析結果を用いて,衝突位置の

最大変位時刻の局所的な損傷状態を確認する.衝突解析における衝突位置の衝突方向最大変位は 140

mm で,図-5.12 の荷重―変位曲線に合わせて示している.この図より,弾塑性 FEM シェル解析では

僅かに非線形域に入った段階のようであり,そのときのミーゼス応力コンター図を内部表示も合わせ

て図-5.30 に示す.矢印は衝突方向を示している.縦リブ間隔で局所的に降伏応力付近のミーゼス応力

が発生しているものの,変形状態から局部座屈の影響は大きくないと判断できる.また,内部では縦

リブの変形とダイヤフラムが変形に抵抗してたわんでいる様子が確認できる.

図-5.30 FEM シェルのミーゼス応力コンター図

(衝突位置の最大変位時刻の損傷状態)

y

倍変形倍率:50

P

mm140

衝突位置の断面変形 衝突範囲

-10,000

-5,000

0

5,000

10,000

0 2 4 6 8 10

t (s)

Str

ain

(μ)

εmax= 1.15εy [2.39 s]

εmin= -1.58εy [2.36 s]

-10,000

-5,000

0

5,000

10,000

0 2 4 6 8 10

t (s)

Str

ain

(μ)

εmax= 2.71εy [2.38 s]

εmin= -3.73εy [2.37 s]

図-5.28 P2 主塔衝突位置の応答ひずみ

(b) 応力―ひずみ履歴

-1,000

-500

0

500

1,000

-10,000 -5,000 0 5,000 10,000

Strain(μ)

Str

ess

(kN

/m2 )

-1,000

-500

0

500

1,000

-10,000 -5,000 0 5,000 10,000

Strain(μ)

Stre

ss (

kN/m

2 )

y39.2y48.1

(a) 応答ひずみ時刻歴波形

図-5.29 P2 主塔基部の応答ひずみ

(b) 応力―ひずみ履歴

(a) 応答ひずみ時刻歴波形

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- I-43 -

(8) 大型漂流物衝突時の地震による構造物被害の影響に関する一考察

対象橋梁に対して,津波による大型漂流物衝突前の地震被害が,衝突による損傷評価へ与える影響

について,前論文の結果との比較を通して本検討に考察を加える.

衝突解析における P2 主塔頂部のX 方向応答変位時刻歴波形の比較を図-5.31 に示す.同図(a)(赤線)

が地震の影響を考慮した結果であり,同図(b)(青線)が地震の影響を考慮しない結果である.ここに

は示していないが,衝突時に主要な変形方向である Y 方向の応答変位時刻歴波形は地震による損傷を

考慮しない解析結果とほぼ同じであった.縦軸は絶対変位を表しており,同図(a)の 0.0 s に残留変位が

持ち越されていることがわかる.最大衝突力が入力された 2.23 s の後に,地震の影響を考慮しない場

合は正負交番の振動が見られるが,一方,地震の影響を考慮した場合は残留変形をした方向(マイナ

スの方向)にさらに変形が進み,振動は見られない.P2 主塔頂部の 2 方向変位図を図-5.32 に示す.

○印は 0.0 s のときの開始点であり,●印は最大衝突時刻を示している.

図-5.33 に P2 主塔の最大ひずみ分布の比較を示す.地震による損傷を考慮した場合,漂流物が衝突

した P2 主塔の最大ひずみ分布が変化している.地震で塑性化して主塔基部に残留したひずみが,衝突

力に助長されて大きくなり,変形が主塔基部で吸収されることにより衝突位置の損傷は小さくなった

と考えられ,複合作用特有の被害モードといえる.

図-5.31 P2 主塔頂部の応答変位時刻歴波形

(X 方向)

-2.0

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

0 2 4 6 8 10t (s)D

ispl

acem

ent

(m)

(b) 地震の影響を考慮しない場合

(a) 地震の影響を考慮した場合

図-5.32 P2 主塔頂部の 2方向変位

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

-0.6 -0.3 0.0 0.3 0.6X-Direction (m)

Y-D

irec

tion

(m

)(b) 地震の影響を

考慮しない場合

(a) 地震の影響を考慮した場合

2P

XY

)(tFm

X max= -0.121 m[3.19 s]

max= -0.459 m[7.45 s]

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- I-44 -

(9) まとめと課題

ここで得られた結果をまとめると次のようである.

(i) 衝突解析に用いる力波形は,津波伝播解析から大型漂流物の流速と流向を算出し,衝突位置の部分

FEM シェル要素を用いたプッシュオーバー解析によって被衝突部材が耐えうる最大漂流物質量を

設定して作成した.

(ii) 入力地震動の加速度応答スペクトルと対象橋梁の固有周期の重ね合わせから,対象橋梁は共振周期

帯の下降域に位置していることから,地震応答解析における対象橋梁の損傷は,主塔基部で最大

1.17εy程度と比較的小さい応答であったものの,主塔頂部には 246 mm の残留変位が生じる結果と

なった.

(iii) 衝突解析では,主塔衝突位置で 1.58εy,主塔基部に 3.73εyのひずみが発生した.ここで,解析モデ

ルに用いたファイバーモデルは衝突位置における断面変形を伴う座屈を表現することはできない

ため,衝突部位の部分 FEM シェル解析によって局所的な損傷状態についても確認した.

(iv) さらに,地震によって対象橋梁が受けた損傷が,大型漂流物との衝突現象へ与える影響について,

地震による損傷を考慮しない結果と比較することで考察した.地震によって主塔基部が受けた比較

的小さな損傷(最大圧縮ひずみ 1.17εy)で残留したひずみが,衝突力によって助長され,主塔基部

では地震の影響を考慮していない結果よりも大きい 3.73εyの圧縮ひずみが生じた.それに起因して

主塔頂部の残留変位が大きくなる結果となり,地震による損傷レベルが比較的小さいとしても,本

章で検討したような漂流物の衝突などの 2 次被害が複合的に構造物に作用することで,被害の拡大

化が懸念される結果が得られた.

本検討ではMw9.0 の南海トラフ地震を想定し,津波伝播解析,地震応答解析および衝突解析といっ

図-5.33 衝突解析におけるP2主塔の最大ひずみ分布

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

Hei

ght (

m)

(a) 地震の影響を考

慮した場合 (b) 地震の影響を考慮

しない場合

-10,000 -5,000 0 5,000 10,000

Strain (µ) Strain (µ)

yy

y73.3

y58.1

com

pres

sion

tension-5,000 0 5,000

Strain (µ)Strain (µ)

yy

y66.2

com

pres

sion

tension

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- I-45 -

た数値解析によって対象橋梁に対する一連の複合被害について検証を行ったが,その数値シミュレー

ションの仮定において次のような課題が残る.

(i) 衝突時のシナリオ設定

対象構造物は仮想橋梁であるため,大型船舶の当該地域への入港頻度や船舶動態など,架橋する地

域に依存する情報については考慮されていない.実橋梁の架設位置における船舶動態分析で衝突する

可能性が高い船舶規模を特定することで,より精確な衝突シナリオを設定することができると考えら

れる.

(ii) 船舶の衝突時の応答

衝突時の船舶側の損傷は,被衝突部材である塔柱部剛性と同じと想定しているため,船舶の衝突部

位や剛性について考慮されておらず,再考の余地がある.

(iii) 不確実性の高い解析パラメータ設定

船舶の規模は被衝突部材の FEM シェルモデルの耐荷力から算定し,衝突解析に用いる力波形の衝突

時間を仮定している.この衝突時間は不確実性が高いにも関わらず,設定によっては衝突解析の結果

は大きく異なる.このような不確実性の高い設定値に対しては一意的な設定根拠の開発が期待される.

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-I- 46 -

5.2.実橋梁を対象とした検討 5.17)

5.1では仮想橋梁による,漂流した大型船舶と長大橋梁の衝突に関する数値解析的検討を示した

が,本節では大阪湾に実在する橋梁を対象とした検討について示す.

(1) 対象橋梁と検討概要

対象橋梁は,大阪湾岸沿いに架橋された都市高速道路の実橋梁とした.対象橋梁は大阪湾内におけ

る国際港である神戸港の東側に位置する橋長約 900m の鋼斜張橋である.図-5.34 に対象橋梁の構造概

要を示す.

本検討では、5.1での検討と同様に,津波伝播解析を実施することで対象橋梁に衝突する船舶の

速度・方向・衝突高さを求めた.また,衝突する船舶については,AIS(船舶自動識別装置)データ

を分析することで,対象橋梁周辺部に存在する船舶の最大級の大きさを把握し,その最大級規模の船

舶が対象橋梁と衝突することを想定して数値シミュレーションを行った.

(2) 津波伝播解析の結果

5.1 (3)で示したように,中央防災会議 5.3)が中間取りまとめとして発表した津波波源モデルを参

考に,4連動地震(Mw = 9.0,ここに,Mw:モーメントマグニチュード)を想定した津波伝播解析を

実施した.図-5.35 に示すように,対象橋梁の架設地点での津波の波高・流速・流向をそれぞれ求めた.

図-5.36 に対象橋梁架設地点での波高・流速・流向の時刻歴変化図を示す.図に示すように,対象橋梁

の架設地点では,地震発生後 133 分において波高がTP+3.0m と最大値を示した.また,流速について

は,地震発生後 111 分において 0.6m/s と最大流速を示した.最大波高時,最大流速時における流向は

ともに 352°と,ほぼ真北に向かって流れた.なお,本解析では地震発生後における地盤沈下量も求め

図-5.34 対象橋梁の構造概要図

(a) 橋梁一般図

(b) 主塔構造図

146.5m

28.4m

44.1m

24m

4.5m

5.5m

16m

橋軸直角方向 橋軸方向

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-I- 47 -

ており,対象橋梁の架設地点での地盤沈下量は 0.6m となった.津波高さはこの地盤沈下量も考慮して

おり,対象橋梁の架設地点における最大波高はTP+3.6m とした.これらの結果より,対象橋梁に衝突

する船舶の速度は 0.6m/s とした.また,衝突する方向は上述の通りほぼ真北であり対象橋梁の橋軸直

角方向とほぼ一致していることから,船舶の衝突方向は橋軸直角方向とした.

(3) 漂流船舶の設定

対象橋梁の周辺海域における船舶の航行,停泊などの船舶は,2010年7月の1ヶ月間における神戸港

東エリアのAISデータを分析することで,詳細のその動態把握を行った.図-5.37に神戸港東エリア周

辺部に存在した船舶の大きさの分布を示す.このエリアでは,航行する船舶の約半数のものの船長が

図-5.35 津波伝播解析の解析対象

領域G

領域A

領域F 領域E 領域D

領域C

領域B

対象橋梁

対象橋梁

N

0

90

180

270

360

0 120 240 360

流向θ(°

)

(min)

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

流速

(m

/s)

-1.0

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

津波

高さ

T.P.

(m)

南北方向

max .3.0m

max .0.6m/s (111min)

352°(111min)

東西方向

図-5.36 対象橋梁地点における波高・波速・流向の時刻歴変化

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-I- 48 -

100m~200mであり,船長が300mを超えるようなものは非常に少ない.また,船長が最も大きいもの

は350mであることがわかった.図-5.38に船長クラス毎の航行軌跡図を示す.図に示すように,船長が

300mを超える船舶は対象橋梁の周辺海域を航行していないことがわかる.これは,300mを超える船舶

が水深などの影響から対象橋梁周辺部の航路を使用していないためだと考えられる.これらの分析結

果から,対象橋梁に衝突する可能性がある船舶は,大きくても船長が300m程度のものであると考えた.

次に,本解析で想定する衝突船舶の構造諸元を,図-5.39 に示す.これら船舶の構造諸元については,

港湾の施設の技術上の基準・同解説 6.19)に記載される構造諸元の中で,船長 300m に最も近い 294m の

コンテナ船の値を用いることとした.後述する船舶-橋梁衝突解析で用いる船舶質量は,満載排水ト

ン数(80,640 トン)となった.

0m~50m4%

50m~100m22%

100m~150m30%

150m~200m21%

200m~300m19%

300m~4%

図-5.37 神戸港東エリアに存在する船舶の構成割合

(a) 船長200~300m (b) 船長300m超

図-5.38 船舶の航行軌跡(対象橋梁周辺部)

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-I- 49 -

(5)船舶-橋梁衝突解析のモデル化

5.1での仮想橋における漂流船舶との衝突解析と同様に,動的弾塑性有限変位解析(解析コード

:SeanFEM)による船舶衝突後の橋梁全体系の時刻歴応答を算出した.対象橋梁の解析モデルを図-5.40

に示す.本項での解析では,後述するが衝突力を算定するにあたって収束計算を実施することから,

前節での解析とは異なら衝突箇所での局部座屈を考慮することができるシェル要素を用いた解析は実

施せず,ファイバーモデルによる非線形解析を行った.衝突が生じると想定した主塔部および直接衝

突は生じないが,衝突後の挙動による大きな応答が生じる可能性のある主桁といった上部構造につい

てもファイバーモデルを用いた.支承部については線形ばねモデル,橋脚基礎部には集約バネ

(Sway-Rocking バネ)を設置した.動的解析の結果に大きな影響を与える減衰については,前節にお

ける解析と同様に,衝突現象が生じる時の粘性減衰の設定方法として適切な手法が確立されていない

と判断し,減衰は履歴減衰のみしか考慮しなかった.

船舶の衝突力は,後述する外力波形をT1主塔のTP+13.7mの位置に与えた.これら外力波形の与える

高さは,船舶と橋脚の衝突が船舶の舳先で生じると想定し,5.2 (2)の津波伝播解析で求めた最大

波高TP+3.6mに図-5.40に示す船舶の海面上高さ10.1mを加えることで衝突位置をTP+13.7mとした.な

お,TP+13.7mの位置は主塔基部から10.3mの高さにあたる.また,衝突力の方向については,前述の

津波伝播解析より対象橋梁架設地点における津波の流向はほぼ真北であり,対象橋梁における橋軸直

角方向にほぼ一致していることから,本衝突解析における衝突力の方向は橋軸直角方向とした.

船舶の衝突力は,5.1 (5)の中で示した衝突力の考え方を用いることとし,式(5.1a)で求まる外力

波形を解析に用いた.また,式(5.1b) ,式(5.1c)から平均値μ,標準偏差σは,それぞれ衝突時間の1/3,

1/6の大きさとなる.これらの式からもわかるように,外力波形の大きさは衝突時間Tの大きさに大き

く依存することから,本検討では本項での解析では図-5.41に示すフローに従い衝突時間Tを求めるこ

ととした.

まず初めに,外力 P を与えた場合の水平変位 δを求める.δの算出では,船舶の衝突後では橋梁と

船舶がともに変形すると仮定し,図-5.42 に示すプッシュオーバー解析を行った.プッシュオーバー解

析では,図-5.40 に示す橋梁全体系のモデルと船舶の船首部の変形を考慮したバネモデルを接合するこ

喫水深 船舶深さ

海面上高さ

全長

 全長(m) 294 載荷重量トン数(t) 60,000 満載排水トン数(t) 80,640 幅(m) 35.9 船舶深さ(m) 23.5 喫水深(m) 13.4 海面上高さ(m) 10.1

図-5.39 本解析における漂流船舶の構造諸元

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-I- 50 -

とで,船舶が衝突した時の船舶と橋梁の連続的な変形挙動を求めた.船舶の剛性に相当するバネ剛性

値は,清宮らの研究 5.18)で提案されているバイリニア型の式(5.5a) ,(5.5b)を用いて算出した.

DD

PPK s

cr

sf

crs 25.00

25.0

(5.5a)

sass DK 25.00 (5.5b)

ここで,Pcr は船首強度(Pcr=109,200kN),D は船の深さ,δs は船首部の変位量とする.なお,Pcr

の値は清宮らの研究の中に示す算定式18)に本解析における対象船舶の長さである294mを代入するこ

船舶衝突外力

図-5.40 対象橋梁の解析モデル

T1

T2

主構(上下弦材,斜材,垂直材,横桁)

主塔:ファイバー要素

ケーブル:ケーブル要素

橋脚基礎部:集約バネ

主塔のモデル化(ファイバーモデル)

< 主塔柱 > < 主塔下段水平材 > < 主塔上段水平材 >

P1 P2

P3

P4 側径間橋脚:ファイバー要素

:ファイバー要素

外力P

プッシュオーバー解析

変形量 δ

衝突時間T1

0

2

vT

等加速度直線運動

を仮定し算出

衝突時間T2

P

mvT 0力積と運動量

の関係から算出

T1=T2

終了

No Yes

P+ΔP

図-5.41 衝突時間の算出フロー

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-I- 51 -

とで求めた値である.図-5.43にこれらの式から求めた船舶バネモデルの水平荷重と水平変位の関係を

示す.

次に,衝突時の変形は等加速度直線運動を行うと仮定し,式(5.6)により衝突時間Tを求めた.

0

2

vT

(5.6)

ここで,δ は上述のプッシュオーバー解析で求めた橋梁および船舶の水平変位の合計値,v0 は前章

で求めた対象橋梁架設地点における最大速度とする.

一方,衝突時間Tは力積と運動量の関係からも求めることができるため,式(5.7)により衝突時間Tを

船舶バネモデル

(船舶想定)

crP

P

sasf

船舶衝突外力

橋梁全体系モデル

図-5.42 プッシュオーバー解析の概要

(橋軸直角方向)

T1 主塔拡大図

0

20

40

60

80

100

120

140

160

0 5 10 15

水平荷

重(×

103 k

N)

水平変位(m)0

1

2

3

4

5

6

0 0.5 1 1.5 2 2.5

衝突

時間

(s)

水平変位 (m)

2.85s [ 0.91m]

力積と運動量の関係から求まる曲線

等加速度直線運動から求まる直線

2.9s[0.9m]

図-5.43 衝突時間の算出フロー船舶バネモデル

の水平荷重と水平変位の関係 図-5.44 衝突時間の算出

Page 53: ,>, 7È · | S4@b Â'Å'¼ 6õM ¦8o - JSCElibrary.jsce.or.jp/Image_DB/committee/steel_structure/...,>, 7È ·_| S4"@b Â'Å'¼_6õM 8o >/>,cLu_ I-1 >0>,5ð0 «+.b 7È ì Â'Å"I ö

-I- 52 -

算出した.

P

mvT 0 (5.7)

ここで,Pは外力,mは船舶の質量とする.

本検討では,両手法により求めた値が一致する時間が衝突時間にあたると考え,式(5.6),式(5.7) そ

れぞれで求めた衝突時間Tが一致するまで繰り返し計算(収束計算)を行った.図-5.44には,式(5.6)

から求めた衝突時間の繰り返し計算の結果,式(5.7)から求めた繰り返し計算の結果の両方を示すとと

もに,計算上の収束点についても示す.図中に示すとおり,繰り返し計算により求まった衝突時間は

2.9秒(δ=0.9m)となった.衝突時間を算出するためのプッシュオーバー解析では,5.1における仮

想橋での検討のように衝突部での局部座屈が考慮できていない.本検討では,実務レベルでの検討と

いうことを視野に入れ,計算を比較的簡単にかつ精度を高く算出するというコンセプトの基,今回の

ような局部座屈を考慮せず繰返し計算による衝突力の評価を実施した.

最後に,上述した検討により求めた衝突時間Tを式(1)に代入することで,図-5.45に示す外力波形F(t)

を求めた.この外力波形については,衝突開始時および衝突終了時に1秒間ずつゼロ値を付けることで

全体波形としている.

(6) 衝突解析の結果

図-5.46に対象橋梁の主要部における変位の時刻歴応答を,図-5.47に衝突位置での変形量が最大とな

った時刻である2.5秒の時のT1主塔における変形図及び曲げモーメントの分布図を,図-5.48にT1主塔

の高さ方向の最大ひずみ分布を示す.

変位の時刻歴応答については,船舶が衝突する方向であるY方向(橋軸直角方向)の応答が大きく

なり,X方向(橋軸方向)の応答はほとんど生じなかった.船舶が衝突するT1主塔では大きな応答が

生じず,主塔で最も大きな応答変位を示す主塔頂部においてでさえ約0.09m(2.8秒)という小さな変

位しか生じなかった.また,上部構造である主桁中央支間部の応答変位についても最大で約0.04m(3.7

秒)とこれも非常に小さな値となった.

図-5.47の衝突後2.5秒における曲げモーメント図が示すように,曲げモーメントは主塔基部において

最大となる.一方,図-5.48のT1主塔における最大ひずみ分布図が示すように,ひずみの最大値は基部

0

20

40

60

0 1 2 3 4 5

水平

荷重

1000

kN)

衝突時間 (s)

水平

荷重

(×

103 k

N)

図-5.45 本解析で用いた外力波形分布

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-I- 53 -

① T1 主塔衝突部

② T1 主塔頂部

③ 主桁支間中央部

④ 側径間P4橋脚天端部

(a) T1 主塔衝突部(点①)

② ③

XY

-0.5

0.0

0.5

0 2 4 6 8 10

変位

(m)

時間 (秒)

X max= 0.002m[2.49sec]

Y max= 0.020m[2.48sec]

-0.5

0.0

0.5

0 2 4 6 8 10

変位

(m)

時間 (秒)

X max= 0.002m[8.67sec]

Y max= 0.093m[2.82sec]

(c) 主桁支間中央部(点③)

-0.5

0.0

0.5

0 2 4 6 8 10

変位

(m)

時間 (秒)

X max= 0.002m[2.76sec]

Y max= 0.041m[3.66sec]

-0.5

0.0

0.5

0 2 4 6 8 10

変位

(m)

時間 (秒)

X max= 0.002m[2.80sec]

Y max= 0.000m[9.28sec]

T1 T2

P4

(b) T1 主塔頂部(点②)

(d) 側径間P4 橋脚天端部(点④)

0.00m[2.5sec]

0.02m[2.5sec]

0.00m[8.7sec]

0.09m[2.8sec]

0.00m[2.8sec]

0.04m[3.7sec]

0.00m[2.8sec]

0.00m[9.3sec]

図-5.46 対象橋梁の主要部における変位の時刻歴応答図

(a) 変形(倍率100) (b) 曲げモーメント

衝突位置 衝突位置

0.02m

293,000kN・m

75,000kN・m

図-5.47 T1主塔における変形量と曲げモーメント分布図(2.5秒)

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-I- 54 -

から高さ2.0mの位置で生じており,その値は圧縮側で約1100μ(=0.51εy),引張側で約600μ(=0.26εy)

となった.曲げモーメント図から考えると最大ひずみが生じる位置は主塔基部となると考えられる

が,上述のように基部から高さ2.0mの位置で最大値が発生している.そこで,この基部から高さ2m

に位置に着目し,図-5.49に示すようなT1主塔基部の構造の詳細について確認した.図中に示すよう

に,基部から高さ2mまでの範囲は剛性が非常に高いアンカーフレームとなっており,それより上の

部分は主塔部材となっている.この基部から高さ2mの位置では断面剛性が急激に変化しているた

め,アンカーフレームの直上部で発生ひずみが最大になったものと考えられる.

このように,対象橋梁では船舶との衝突が生じる T1 主塔でさえ,塑性化を伴うような大きな損

0

20

40

60

80

100

120

140

160

-3 -2 -1 0 1 2 3

主塔

高さ

(m)

ひずみ(×1000μ)

衝突高さ 10.3m

引張側 圧縮側

-εy εy

高さ 2.0m

図-5.48 T1主塔における高さ方向の最大ひずみ分布

図-5.49 T1主塔基部の構造の詳細

2.0m

衝突位置

断面積断面二次

モーメント

(m2) (m

4)

①アンカー

フレーム3.94 10.35

② 主塔部1 1.45 2.44

③ 主塔部2 1.22 1.99

7.5m

6.0m

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-I- 55 -

傷が発生することはない,ということが解析によりわかった.船舶の衝突する位置は,基部から高

さ約 10m の位置と,主塔の高さである 150m に比べると非常に小さく,ほぼ基部と言える位置とな

っている.主塔は地震時外力等の外力を考慮して設計していることもあり,非常に大きな剛性を有

している.そのため,本検討で想定した衝突力の大きさは設計で考慮した地震時外力などに比べて

相対的に小さく,大きな損傷が生じなかったものと考えられる.

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- I-56 -

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