新生児医療が抱える問題 奈良県における二つの事例から 近畿病院団体連合会会長 兵庫県立こども病院院長 中　村　　肇

新生児医療が抱える問題

奈良県における二つの事例から

近畿病院団体連合会会長兵庫県立こども病院院長中　村　　肇

自由民主党政務調査会近畿圏整備委員会2007.10.30

新生児医療が抱える問題奈良県における二つの事例から

大淀病院の事例。。。。。　母体救急

母子のみを対象とする総合周産期母子医療センターでは受け入れ不能

今回の事例。。。。。。。。　一次産科救急

周産期医療システムは一救急を考えていない産科と小児科・新生児科の連携を中心に

その背景には、産科・小児科医師不足、 NICU ベッド不足

兵庫県周産期医療システムと兵庫県立こども病院周産期センターの診療実態

Awaji

○

図図 1.1. 　兵庫県周産期医療システム　兵庫県周産期医療システム

情報センター機能２４時間受け入れ態勢 研修機能

地域周産期母子医療センター阪神ブロック兵庫医大病院県立塚口病院神戸ブロック

神戸中央市民病院神戸大附属病院済世会兵庫病院

東播磨ブロック加古川市民病院

西播磨ブロック姫路赤十字病院

淡路ブロック県立淡路病院

県立こども病院総合周産期母子センター

丹波ブロック

ハイリスク妊産婦・児搬送

空床情報

協力病院・周産期医療施設・助産所

但馬ブロック公立豊岡病院

兵庫県立こども病院周産期医療センターの概要

１９７０．４ 病院開設１９９４．１０ 周産期医療センター完成２０００．３ 総合周産期母子医療センターとし

て 指定

産科　 ３２床　うち、 MFICU 　６床NICU １５床GCU ３５床

周産期医療センターの実績

産科部門

妊娠週数別入院数

0

100

200

300

400

500

600

700

800

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005

分娩後

37週以降

33-36週

29-32週

25-28週

24週以前

兵庫県立こども病院周産期医療センター産科

妊娠週数別分娩数

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005

37週以降

33-36週

29-32週

25-28週

24週以前

兵庫県立こども病院周産期医療センター産科

多胎分娩母体数

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005

要胎

品胎

双胎

兵庫県立こども病院周産期医療センター産科

周産期医療センターの実績

新生児部門

2007.3.現在

出生体重別新生児入院数

0

100

200

300

400

500

600

700

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2,500ｇ ～

-2,000～2,500g

-1,500～2,000g

-1,000～1,500g

～1,000g

兵庫県立こども病院周産期医療センター新生児科

0

20

40

60

80

100

120

140

160

1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006

～1,500g

～1,000g

～750g

～500g

出生体重別新生児入院数

兵庫県立こども病院周産期医療センター新生児科

出生体重別生存率

0%

20%

40%

60%

80%

100%1,500g～

1,000g～

750g～

500g～

兵庫県立こども病院周産期医療センター新生児科

多胎出生児のうち低出生体重児の占める割合　　 1995-2006

35%39% 38%

41%

21%

28% 28% 29%

41%

28%24%

33%

0%

20%

40%

60%

兵庫県立こども病院周産期医療センター新生児科

多胎妊娠では、出生児の 40 ％以上が低出生体重児として生まれる。

43%36%

26%

36%

27%

6%

38%

51%

0%

20%

40%

60%

兵庫県立こども病院周産期医療センター新生児科

出生体重群別にみた多胎出生児の占める割合　

2006

低出生体重児では一様に多胎妊娠出生児の占める率が高い。

県外1%

北播磨2%

淡路2%

中・西播磨2%

東播磨7%

阪神12%

神戸73%

丹波1%

但馬0%

圏域別入院数兵庫県立こども病院周産期医療センター新生児科

2005年度、 588件

0

10

20

30

40

50

60

70

23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 40

稼動病床数とその頻度（日数）　 2006年度

稼動病床数

日数 産科　年間平均稼働率： 96.5％

定床　 32床

兵庫県立こども病院周産期センター

0102030405060708090100

12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22

稼動病床数とその頻度（日数）　 2006年度

稼動病床数

日数NICU　 年間平均稼働率： 107.1％定床　１５

床

兵庫県立こども病院周産期センター

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41

稼動病床数とその頻度（日数）　 2006年度

稼動病床数

日数 GCU　年間平均稼働率： 94.6％

定床　 3５床

兵庫県立こども病院周産期センター

兵庫県立こども病院周産期センターのスタッフ数

産科

３２床

新生児科

NICU 　１５床

GCU 　３５床

常勤医師 １０名 ８名

専攻医 ０名 ４名

看護師数 40 名 39 名 31 名

準夜勤務 5 名 5 名 4 名

深夜勤務 5 名 5 名 4 名

NICU のベッド不足をカバーするには

• NICU では、慢性的に定数オーバー• 産科、 GCU では、年間の３分の 1 で定数オーバー

⇒NICU のベッド不足の背景には、後方病床との看護力のギャップが大きすぎる。

⇒ 少なくとも、６： 1 看護体制に。　５ , ６００点を。

奈良県の新生児医療の現状

NICU 数 後方病床新生児科

医師数

奈良県立医大 12 床 ９床 ８名

県立奈良病院 ９床 なし ４名

近畿大奈良病院

９床 なし ２名

兵庫県周産期医療システム

の破綻の危機　！！

地方における周産期医療の現状ｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘ

ｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘｘ

中堅医師の立ち去り 医師数の減少

患者の過度の権利意識

医事紛争の多発

低医療費政策病床数削減

病院の集約化

医師への過度の負担

地方病院・中小病院の経営破綻、閉鎖

限られたポスト

周産期医療の破綻の背景にあるもの　　

– リスクに対する医療現場と民意・マスコミとギャップ– 「快適性と安全性」 、「お産の安全神話」– リスクの高い医療に対する法的バックアップが乏しい

周産期医療はリスクの高い（＝不確実性の）医療

25 ～ 29歳女性の年間死亡数（ H16 ）　該当人口 3,966, ０００人①自殺 ４７６人②悪性新生物 ２２６人③不慮の事故 　１５０人

妊産婦死亡　（Ｈ 17 ） ２０人 該当人口 ３３９ , ０００人

新生児死亡率　 1.3人 対出生千人脳性麻痺 2人～ 対出生千人

RENAIS HANAKITARENAIS HANAKITA小寺沢ら；脳と発達 , 2007,39 ： 27-36

在胎期間の短い早産児の CP が増加している。

40例

51例59例

73例CP 発症率対出生千

1.4

2.02.2

2.7

0

10

20

30

40

50

60

70

80

83 ～ 87 88 ～ 92 93 ～ 97 98 ～ 03

37ｗ～

32～ 36ｗ

28～ 31ｗ

～ 27ｗ

姫路市における脳性麻痺発症数の 5 年毎の推移

大学病院崩壊の次に来るもの 　地域基幹自治体病院の崩壊

卒後教育の担い手には、一体誰が？

大学　　　　勤務医　　　？？

ボランテア精神に頼る卒後医学教育の終焉

Employee satisfaction 、働き甲斐のある職場に

◆ 安全性を確保した医療環境　－「怯えの医療」からの開放 分娩のリスク、新生児のリスクの正確な情報提供 限られたマンパワーで提供できる周産期医療の限界は？ 医療者と患者の相互理解での医療を。 　 患者による刑事告訴を容認しない。

◆ 政策医療で位置づけた医師確保、適正配置を 病院の集約化だけでは解決しない 都市部研修拠点病院との連携で地方病院への派遣 地方病院勤務の義務化？ 中堅指導医師の待遇改善