要な抗菌薬 と 不要な抗菌薬karada-naika.com/blog/wp-content/uploads/2019/11/7540b13...必要な抗菌薬 と 不要な抗菌薬 KARADA内科クリニック 東京医科大学病院

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必要な抗菌薬

不要な抗菌薬

KARADA内科クリニック

東京医科大学病院 感染制御部・感染症科

佐藤 昭裕

第24回恵愛堂病診連携研究会 2019年11月20日

抗菌薬は耐性化する

JAMA. 2016;316(11):1193-1204.

AMRアクションプラン 具体的数値目標指標 2020年 (対2013年比)

全体 33%減

経口セフェム,ニューキノロン,マクロライド系

50%減

静注抗菌薬 20%減

指標 2014年 2020年目標

肺炎球菌のペニシリン耐性率 48% 15%以下

黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性率 51% 20%以下

大腸菌のキノロン耐性率 45% 25%以下

緑膿菌のカルバペネム耐性率 17% 10%以下

大腸菌・クレブシエラのカルバペネム耐性率

0.1~0.2% 同水準

医師が抗菌薬を処方する理由

患者の感染症を治療する

患者の感染症を予防する

患者が抗菌薬を求める

感染症を「予防」する

手指衛生 周術期

発症予防 お守り

免疫不全 予防疾患 投薬内容

HIV(CD4<200) ニューモシスチス肺炎 ST

HIV(CD4<100) トキソプラズマ ST

HIV(CD4<50) 非結核性抗酸菌症 AZM CAM

ステロイド(20mg/日を3-4週間)

ニューモシスチス肺炎 ST

結核 INH RFP

肺炎球菌 ワクチン

脾臓摘出後 肺炎球菌・髄膜炎菌・インフルエンザ桿菌・インフルエンザ

ワクチン

発症

予防

周術期

CEZ

CMZ

ABPC/SBT

VCM

切開の1時間前に投与単回投与

抗菌薬の予防効果

上気道炎後の肺炎

咽頭炎後の咽後膿瘍

中耳炎後の乳突蜂巣炎

に対する抗菌薬予防効果は…

NNT 4000

NNT(Number Needed to Treat) : 一人の治療効果を得るために必要な患者数

NNT 4000→「4000人に抗菌薬を投与すれば1人だけ予防効果がある」

BMJ 2007:335:982

セフェム系抗菌薬を4000人に予防投与

予防効果あり

皮疹(1~3%)

下痢(1~19%)

アナフィラキシー

NNT

4000

1人40~120人40~760人0.4人

患者へ「抗菌薬は不要です」という説明

抗微生物薬適正使用の手引き第一版

GPC GNR

嫌気非定型

MRSA 腸球菌 Strep MSSA E・K・P・S・C・E 緑膿菌

外来

入院

微生物の分け方

E:大腸菌K:クレブシエラP:プロテウスS:セラチア

C:シトロバクターE:エンテロバクター

βラクタム系

ニューキノロン系

アミノグリコシド系

テトラサイクリン系

マクロライド系

その他

βラクタム系

ペニシリン系 セフェム系

カルバペネム系 モノバクタム系

βラクタム系

・細胞壁がない(マイコプラズマ・クラミ

ジア)

・細胞内寄生(レジオネラ)

点滴 内服

略語 一般名 商品名(院内採用)

PCG ペニシリンG ペニシリンG®

ABPC アンピシリン ビクシリン®AMPC

アモキシシリン(サワシリン®)

PIPC ピペラシリン ピペラシリン®

ABPC/SBT アンピシリン/スルバクタム スルバクシン®

AMPC/CVAアモキシシリン/クラブラン酸

(オーグメンチン®)

PIPC/TAZ ピペラシリン/タゾバクタム タゾピペ®

ペニシリン系

略語 一般名 商品名(院内採用)

PCG ペニシリンG ペニシリンG®

ABPC アンピシリン ビクシリン®

PIPC ピペラシリン ピペラシリン®

ABPC/SBT アンピシリン/スルバクタム スルバクシン®

PIPC/TAZ ピペラシリン/タゾバクタム タゾピペ®

ペニシリン系

「ペニシリンから離れていくと…

GPCに対する活性⇩,GNR⇧」

MRSA・非定型はダメ

GPC GNR

嫌気非定型

MRSA 腸球菌 Strep MSSA E・K・P・S・C・E緑膿菌(GNFR)

PCG

ABPC

PIPC

ABPC/SBT

PIPC/TAZ

ペニシリン系完成版

ピペラシリン/タゾバクタム:PIPC/TAZ(タゾピペ®)

• MERINO Trial

「ESBL産生E.coli or Klebsiellaの血流感染症において、

MEPMに対するPIPC/TAZの非劣性は示せず」

• 「VCMとPIPC/TAZ併用で急性腎障害のリスクが上昇する

(VCMとP/T併用によるAKIオッズは

対VCM単剤 3.40、VCM+CFPM 2.68、P/T単剤 2.70)

JAMA.2018; 320(10): 984-994.

Crit Care Med. 2017; 46: 12-22.

ESBL産生菌による菌血症はMEPMの一択

VCMとP/T併用はAKIのリスク

点滴 内服

略語 一般名 商品名(院内採用)

第1世代 CEZ セファゾリン セファゾリン ケフレックス®

第2世代 CTM セフォチアム セフォチアム® ケフラール®

(2.5世代) CMZ セフメタゾール セフメタゾール® -

第3世代 CTRX セフトリアキソン セフトリアキソン® フロモックス® セフゾン

®

(3.5世代) CAZ セフタジジム セフタジジム® -

第4世代 CFPM セフェピム マキシピーム® -

セフェム系

GPC GNR

嫌気非定型

MRSA 腸球菌 StrepMSS

AE ・ K ・ P ・ S ・ C ・ E 緑膿菌

CEZ

CTM

CMZ

CTRX

CAZ

CFPM

スペクトラムセフェム系

セフォペラゾン/スルバクタム:CPZ/SBT(ワイスタール)

• 「胆汁移行性がよい」という宣伝:胆道系感染症に頻用

GPC GNR

嫌気非定型

MRSA 腸球菌 StrepMSS

AE ・ K ・ P ・ S ・ C ・ E 緑膿菌

CPZ/

SBT

• 抗緑膿菌作用を持たせるためにはかなりの増量が必要

(CPZ 8g以上?)

• 腸球菌のカバー外れる

錠剤・カプセルの用量

AMPC ABPC

経口点滴 1~2g 1日4回

= 4~8g/日

250mg 1日3~4回= 750~1000mg

抗菌薬

バイオアベイラビリティ

バイオアベイラビリティ Bioavailability

投与した薬剤がどれだけ血液中に移行するかの指標

・点滴:100%血管内に投与される

・経口:腸管で吸収された後に肝臓で代謝されてから

「腸管からの吸収がよく、肝臓で不活化されにくい薬剤」

がバイオアベイラビリティがよいということ

抗菌薬

バイオアベイラビリティ

第3世代セフェム系

CDTR-PI メイアクト 16%

CPDX-PR バナン 46%

系統 略号 商品名 腸管吸収率(%)

ペニシリン系AMPC サワシリン 80

AMPC/CVA オーグメンチン

セフェム系 CEX ケフレックス 90

マクロライド系CAM

クラリスクラリシッド

50

AZM ジスロマック 37

テトラサイクリン系 DOXY ビブラマイシン 良好

ニューキノロン系 LVFX クラビット 98

サルファ剤 ST バクタ 85

第3世代セフェム系抗菌薬のデメリット

1.一般的な副作用

2.偽膜性腸炎

3.耐性菌

4.低カルチニン血症

・セフカペンピボキシル(フロモックスなど)

・セフジトレンピボキシル(メイアクトなど)

・セフトラムピボキシル(トミロンなど)

・テビペネムピボキシル(オラペネム)

・ピブメシリナム(メリシン)

→カルチニンが少ない小児で低血糖、痙攣、脳症を起こす

ピボキシル基を有する抗菌薬

カルチニン排泄亢進

抗菌薬

点滴

略語 一般名 商品名(院内採用)

IPM/CS イミペネム/シラスタチン イミペネム/シラスタチン®

MEPM メロペネム メロペン®

DRPM ドリペネム フィニバックス®

BIPM ビアペネム オメガシン®

PAPM/BP パニペネム/ベタミプロン カルベニン®

カルバペネム系

それぞれ多少菌への効果は異なるが,幅はほとんど同じ使い分ける必要はほとんどなし

GPC GNR

嫌気非定型

MRSA 腸球菌Stre

p

MSS

A

E・K・P・S・C・E

緑膿菌(GNFR)

MEPM

スペクトラムカルバペネム系

1st choise となる時

起因菌がESBLやAmpC等の耐性菌

壊死性菌膜炎の初期治療

カルバペネム系

ニュー

キノロン系

点滴

略語 一般名 商品名(院内採用)

CPFX シプロフロキサシン シプロキサン®

LVFX レボフロキサシン クラビット®

ニュー

キノロン系

GPC GNR

嫌気非定型

MRSA 腸球菌Stre

p

MSS

A

E・K・P・S・C・E

緑膿菌(GNFR)

CPFX

LVFX

ガレノキサシン:ジェニナック®シタフロキサシン:グレースビット®モキシフロキサシン:アベロックス®

どれも1st choiceとなる感染症はなし

点滴

略語 一般名 商品名(院内採用)

GM ゲンタマイシン ゲンタシン®

AMK アミカシン アミカシン®

TOB トブラマイシン トブラシン®

SM ストレプトマイシン

KM カナマイシン

ABK アルベカシン ハベカシン®

アミノ

グリコシド系

抗酸菌用アミノグリコシドMRSA用?アミノグリコシド

GPC GNR

嫌気非定型

MRSA 腸球菌Stre

p

MSS

A

E・K・P・S・C・E

緑膿菌(GNFR)

GM/TOB

/AMK

アミノ

グリコシド系

※ それぞれ違いは多少あるものの,ほぼ同じと考えてよい

テトラ

サイクリン系

点滴 内服

略語 一般名 商品名(院内採用)

MINO ミノサイクリン ミノマイシン® ミノマイシン®

DOXY ドキシサイクリン - ビブラマイシン®

GPC GNR

嫌気非定型

MRSA 腸球菌Stre

p

MSS

AE・K・P・S・C・E

緑膿菌(GNFR)

MINO

テトラ

サイクリン系

点滴 内服

略語 一般名 商品名(院内採用)

EM エリスロマイシン エリスロシン® エリスロシン®

CAM クラリスロマイシン - クラリス®

クラリシッド®

AZM アジスロマイシン ジスロマック® ジスロマック®

マクロライド系

マクロライド系

エリスロマイシン:百日咳+非定型肺炎

+消化管蠕動運動亢進

クラリスロマイシン:エリスロマイシン

+インフルエンザ桿菌

アジスロマイシン:クラリスロマイシン

+サルモネラ/赤痢

+クラミジア

GPC GNR

嫌気非定型

MRSA 腸球菌Stre

p

MSS

A

E・K・P・S・C・E

緑膿菌(GNFR)

AZM

マクロライド系

点滴 内服

略語 一般名 商品名(院内採用)

VCM バンコマイシン バンコマイシン® バンコマイシン散®

LZD リネゾリド ザイボックス® ザイボックス®

DAP ダプトマイシン キュビシン® -

TEIC テイコプラニン タゴシット® -

TZD テジゾリド シベクトロ® シベクトロ®

抗MRSA薬

GPC GNR

嫌気非定型

MRSA 腸球菌Stre

p

MSS

A

E・K・P・S・C・E

緑膿菌(GNFR)

VCM

LZD

DAP

抗MRSA薬

新薬:テジゾリド(TZD) シベクトロ®

• 新規の抗MRSA薬

• 1日1回点滴or内服

• TDM不要

• LZDと同様の作用機序

• LZDに比べ汎血球減少少ない

• 適応は皮膚軟部組織感染症、外傷、熱傷・手術創二次感染

• 肺炎や血流感染症に適応無し

• 高い!(1日約20,800円)

新薬:フィダキソマイシン(FDM) ダフクリア®

• CDI(Clostridioides difficile Infection)の新規治療薬

• 1回1錠 1日2回内服

• ほぼCDにしか効かず、消化管吸収もなし

• 再発が少ない可能性あり

• 高い!(1日約7900円) VCM散は1日約1100円

新薬:セフトロザン/タゾバクタム ザバクサ®

• セフトロザン:新規第4世代セフェム

• 抗緑膿菌作用+抗嫌気性菌作用

• 腹腔内感染症に使用できる?

• 嫌気性菌の治療成績はメトロニダゾールと併用下

• 感受性試験か実施できず

抗菌薬投与前には培養採取をお願いいたします

血液培養は2セット採取(鼡径部からは避ける)

不必要な抗菌薬は使わない・求めない

当院採用・処方歴のある外来で使う抗菌薬系統 抗菌薬名 適応

ペニシリン系 アモキシシリン(サワシリン®) 溶連菌、梅毒、肺炎球菌

アモキシシリン/クラブラン酸(オーグメンチン®)

肺炎、副鼻腔炎、動物咬傷

セフェム系 セファレキシン(ケフレックス®)

蜂窩織炎、咽頭炎

ニューキノロン系 レボフロキサシン(クラビット®)

渡航者下痢症、腎盂腎炎、前立腺炎

モキシフロキサシン(アベロックス®)

咽頭炎、尿道炎(マイコプラズマ、ウレアプラズマ)

テトラサイクリン系 ドキシサイクリン(ビブラマイシン®)

肺炎、マラリア予防

マクロライド系 クラリスロマイシン(クラリス®)

カンピロバクター腸炎、MAC予防、ピロリ菌

アジスロマイシン(ジスロマック®)

クラミジア感染症

その他 ST合剤(バクタ®) 膀胱炎

ご清聴ありがとうございました

佐藤昭裕 Mail : a.sato@karada-naika.com

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