2 経営・マーケティング基本論 経営管理パート 経 …4 農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業 組織能力重視の戦略論 K.アンドリュース
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
科目2 経営・マーケティング基本論
経営管理パート
(5)経営戦略
開発担当者 : 高知工科大学マネジメント学部 准教授 桂信太郎
株式会社三菱総合研究所
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
概要
1.経営戦略とは
'1(概論
'2(事業戦略
'3(全社戦略
2.成功事例と分析の練習
2
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
ドラッカー、チャンドラー、アンゾフを経て、経営戦略論の2つの視点
ドラッカー『現代の経営』(1954)が戦略的問題の重要性に言及した。
→経営者の役割を明らかにすることが主眼で、戦略の概念は副次的なものだった。
チャンドラー『経営戦略と組織』,p.13,(1962):「企業の基本的な長期目標や目的を決定し、これらの諸目標を遂行するために必要な行動のコースを採択し、諸資源を割り当てること」
量的拡大、地域的分散、垂直的統合、多角化
↓
経営戦略論2つの視点
事業環境の魅力'位置取り(重視
→儲かる分野をやれ!
→戦わずして勝つ
↕
組織能力重視
→'勝つには(組織を鍛えよ!
→戦後日本企業が重視
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
ポジショニング重視の戦略論
アンゾフ 製品ー市場マトリクス
PPM'ボストンコンサル、1970年代(→GEグリッド
→事業環境の魅力と相対的競争力を分析
M.ポーター
→競争戦略論
→基本戦略'コストリーダー、差別化、集中(
→5フォースモデル
→戦略グループ
→価値連鎖
→クラスター戦略
→ダイヤモンドフレーム
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
組織能力重視の戦略論
K.アンドリュース
→SWOTにおいて、機会O'環境(と強みS'独自能力(の組み合わせを重視せよ!
ドラッカー
→自らの強みを環境の変化にマッチさせればチャンスになる
→「すでに起こっていることは何かとの問いに対する答えが、企業や産業にとっての可能性を明らかに
する。しかし、その可能性を現実へと転化するには、自らの強みを、そこにマッチさせることができなければならない」'『未来への決断』(
H.ミンツバーグ'計画性と創造性(
ハメル&プラハラード『コア・コンピタンス』
藤本隆宏教授(東大(の自動車産業の詳細な調査研究
→組織能力重視の戦略論'生産管理、産業論、MOTの視点(
↓
→組織を鍛え、独自の能力を構築し、それを生かして戦えば、敗れることなし。
伊丹敬之教授'一橋大、現東京理大院(
→見えざる資産重視の戦略、人本主義
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
経営戦略の位置づけ
事業戦略
実行計画
全社戦略
ビジョン '未来図、目
標(
理念
事業戦略
実行計画
事業戦略
実行計画
企業の経営に対する
普遍性を持つ信念
変わらない価値観や
判断基準となる
環境変動を考慮にいれた
あるべき姿
'概ね5~10年スパン(
あるべき姿を実現する施策群
'概ね1~3年スパン(
経営
戦略
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
戦略とは何か?
戦略とは
企業の事業目的を、競争優位性により、持続的に達成する、
構造を構築する施策群 (Mckinsey&Company(
■考慮すべき視点
・外部環境との整合性
・競合他社に対する優位性の構築可能性
・自社の施策間の整合性
・施策の優先順位
・施策の実行可能性
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
戦略の階層
全社戦略'企業戦略(
経営理念・ビジョンの実現に向けた、全社視点での戦略
・自社が戦うドメイン'領域(の設定
・競争力の源泉'コアコンピタンス(の決定
・保有する事業'ポートフォリオ(の決定⇒事業間での資源配分の決定
事業戦略
企業が有している特定の事業分野での戦略
①事業環境分析 → 成功要因'KSF(の明確化
②具体的な戦略を立案
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
概要
1.経営戦略とは
'1(概論
'2(事業戦略
'3(全社戦略
2.成功事例と分析の練習
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
事業戦略 ①事業環境分析
事業環境分析の階層
マクロ環境 分析
業界分析
市場・競合・自社分析
PEST分析
→事業に影響を及ぼす要素の把握
5つの力分析
→業界の収益性は?
この業界で戦うべきか?
3C分析
→この業界で事業を成功させる
必要条件は?
代表的な分析手法
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
事業戦略 ①事業環境分析 '1(マクロ環境分析
PEST分析
企業を取り巻くマクロ環境を把握する。マクロ環境の変化は業界・自社に大きなインパクトを与える可能性がある。
すべての要素を網羅的にみる必要はなく、自社にとって影響のありそうな要素を取り出して分析する。
政治'Political(
法規制'規制強化・緩和(/税制
政府・関連団体の動向、
裁判制度、判例
経済'Economic( 景気/物価'インフレ・デフレ(
金利・為替・株価
社会'Social( 宗教/価値観/人口動態
世論・流行/教育水準
治安・安全保障/ライフスタイル
技術'Tchnological( 技術革新/特許
代替技術/新技術の普及度
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
事業戦略 ①事業環境分析 '2(業界分析
5つの力分析
業界の構造を把握し、業界の魅力を図る。
業界内の競争
新規参入業者
新規参入の脅威
買い手
買い手の交渉力
売り手
売り手の交渉力
代替品
代替品・サービスの脅威
収益性の高い業界か?魅力のある業界か?
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
事業戦略 ①事業環境分析 '2(業界分析
5つの力分析事例:ビール業界
業界内の競争は厳しい ・大手による寡占
・激しい競争
・市場は成熟、差別化するポイントがない
新規参入の脅威は弱い ・設備産業
・大手寡占、
・チャネル、ブランド構築にもコストがかかる
買い手の交渉力は強い ・商品のスイッチングコスト低い
・商品の大きな違いはない
・流通の力が強い
売り手の交渉力は弱い
・原材料の調達は容易
・容器メーカーも同様
代替品の脅威は強い ・発泡酒、第3のビール
・ノンアルコールビール
・ハイボール
厳しい業界
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
事業戦略 ①事業環境分析 '2(業界分析
■5つの力分析のポイント
・「業界」の定義=どの業界で戦うのか?
・5つのそれぞれの力が強いのか、弱いのかを把握する
・結果として業界として魅力があるのか、ないのかを把握する
・魅力を高めるために何をすればよいのか、を大まかに考える
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
事業戦略 ①事業環境分析 '3(市場・競合・自社分析
3C分析
市場、競合を分析することでKBF、KSFを把握する。KSFを把握した上で自社の状況のギャップを把握する。
顧客・市場分析 ①既存顧客の層は? 意思決定者は誰か?
②市場規模や成長性はどのように評価できるか?
③顧客の購買動機、ニーズは?
④顧客にとって充足されてないニーズは何か?
⑤既存の流通経路は?他にどのような流通経路が考えられるか?
競合分析 ①既存の競合相手は? 強み・弱みは? どうして強いのか?
②競合企業の売上、シェア、利益、コスト構造は?
③新規参入が出現する可能性は?
④業界としての魅力や収益性は?
自社分析 ①自社戦略は?強み・弱みは?財務状況や業績'売上、収益(は?
②先行投資'研究開発や設備投資(は行っているか?または多すぎないか?
③生産力、販売力、コスト構造に問題点はないか?
④自社独自の技術やスキルはあるか?
⑤トップのリーダーシップや組織体制・組織文化はどうか?
KBF(Key Buying Factor(は?
潜在顧客が購買を決定する
主要な要因は何か?
KSF(Key Success Factor(は?
当該事業で成功するための
要件は?
ギャップ?
自社の競争優位?
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
事業戦略 ②戦略の立案
3つの基本戦略
出典(M.E.ポーター 「競争の戦略」
戦略の有利性
低コスト 顧客が特異性を認める
戦略ターゲット
業界全体 ①コストリーダーシップ
業界全体を対象に他社よりも低コストを武器に競争に勝つ戦略
②差別化
製品の品質、サービス、品揃え等の違いを顧客に認めてもらい、競争相手より優位に立つ戦略
特定セグメント ③集中
特定のセグメント'顧客、地域(に的を絞り、 資源を集中投入して競争に勝つ戦略
'コスト重視( '差別化重視(
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
事業戦略 ②戦略の立案
コストリーダーシップの低コスト構造の前提
●規模の経済
生産量が増えると1個あたりのコストが下がる
変動費
固定費
50個生産 100個生産
1個当たりのコスト
¥100 ¥100
¥20000/日
¥100/個
¥400 ¥200
¥500 ¥300
●経験曲線
累積生産量が増えると一般的には費用が低減することが知られている
累積生産量
1個あたりのコスト
多い
高い
低い
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
概要
1.経営戦略とは
'1(概論
'2(事業戦略
'3(全社戦略
2.成功事例と分析の練習
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
全社戦略
①自社が戦うドメイン'領域(の設定
②競争力の源泉'コアコンピタンス(の決定
③保有する事業'ポートフォリオ(の決定 ⇒ 事業間での資源配分の決定
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
全社戦略 ①自社が戦うドメイン、②競争力の源泉
①ドメイン'領域( 企業ドメインとは企業の活動領域。企業が現に保有している事業分野の集合。
・適度な領域を示す '広すぎず、狭すぎず(
・将来のビジョンを含んでいる
・表現方法
①商品・製品・サービスによる表現:鉄鋼業、運送業、洋菓子製造、アパレル・・
②顧客を軸にした表現 : 富裕層向け事業
③提供価値を軸にした表現 : お客様の安心と健康をサポートする事業
④自社技術を軸にした表現 : 発酵技術による事業
②競争力の源泉 'コアコンタンス( 顧客への価値提供にあたり、他社にまねできないその企業ならでは価値を提供する企業の中核的な力。
商品、顧客、提供価値、自社技術などを含む。企業の競争優位の源となる。
コア・コンピタンス が明確になればドメインも定まってくる。
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
全社戦略 ③事業ポートフォリオ
③事業ポートフォリオ PPM'プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(
スター 問題児
金のなる木 負け犬
相対マーケットシェア
低い 高い 1.0
10%
市場成長率
高い
低い
A事業
B事業 D事業
E事業
C事業
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
概要
1.経営戦略とは
2.成功事例と分析の練習
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
ケース分析:世界初で生鮮野菜直送ビジネス成功オイシックス
オイシックス株式会社 '創業 2000年6月、東京(
社長 高島宏平
健康にいい食品のネット通信販売事業
企業理念 「作った人が自分の子供に食べさせることができる食品だけを売りたい」
年商 約62億円'09年度(
www.oisix.com
売上・経常利益
78
750
6,225
4,721
295
1,922
1,380
2,680
3,611184
321
75
-8
42
181
-
1,000
2,000
3,000
4,000
5,000
6,000
7,000
2001年3月 2002年3月 2003年3月 2004年3月 2005年3月 2006年3月 2007年3月 2008年3月 2009年3月
'単位:百万円(
-50
-25
-
25
50
75
100
125
150
175
200
225
250
275
300
325
350
375
400
売上高
経常利益
出所:本資料は、オイシックス社から桂への提供資料である。
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
オイシックス・ビジネスのポイント
①都市部の消費者ニーズをキャッチ
→食の安心安全健康美容志向
→ほしい商品を量・時期問わず提供
→ターゲットの女性、30代'親(、妊婦のニーズ'共働き、40-50代主婦、20代一人暮しへ拡大(
→あらゆる食材ニーズに対応'和洋中、調味料、総菜、酒、ベビーフード、防災用食品、ルー、スープ、レトルト、菓子、米パスタ…(
②IT+メディア活用によるコストカット
→受注をHPとメールで人件費カット
→HPから情報発信'レシピ、流行、ランキング、おすすめ、売れ筋、季節感、生活形態・年齢層に応じた食生活、トレーサビリティー(食のポータルサイト化
③明確な戦略的思考'顧客ターゲット絞り込み、都市部の競合(
→マメで丁寧なメール+担当者制でファン獲得+サポート+リピートを促す簡潔・正確な情報提供
→オイシックスクラブ+ポイント制'顧客囲い込み+商品5%引き+送料を軽減~無料化(
→顧客の声を随時更新'かなり豊富な情報量(
→
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
オイシックスの売上と顧客層
この事業での成功は世界初。
売上構成比:ネット事業90%、宅配10%
→参入当初は宅配90%。ネット10%'宅配はシルバー(
→収益化は05年から。5年間赤字だった。
売上は、関東圏が50%。大阪30%。地方20%。
売上配分:農家:オイシックス=5:5
→産直の1.5倍の価格。
リピーター28万人
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
集荷・配送
神奈川海老名に集荷センター。
→パートさんが知恵を出し合い梱包を工夫。たまご割れない、冷えやすい所に腐るもの、など。無駄ない梱包。
農家から集配センターまでの配送方法は秘密。
情報はすべてメールでやりとり。
農家の開拓は、はじめは足でかせぎ直接出向いてお願いした。紹介してもらいながら、人脈を広げた。
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
演習
■オイシックス '創業時(
新規参入の脅威
買い手の交渉力 売り手の交渉力 代替品・サービスの脅威
業界は?
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
演習
顧客・市場分析
競合分析
KBF(Key Buying Factor(は?
KSF(Key Success Factor(は?
オイシックスの戦い方は?
自社分析
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
参考図書
経営戦略論
アンゾフ著『経営戦略論』'新訳(中央経済社(2007/1979)
ポーター著/土岐坤訳『競争の戦略』ダイヤモンド社(1995/1980)
ポーター著『競争戦略論Ⅰ・Ⅱ』ダイヤモンド社(1999)
伊丹敬之著『経営戦略の論理』(2003)
藤本隆宏著『製品開発力』(2009)
ミンツバーグ著『戦略サファリ』(1999)
イゴール・アンゾフ著『経営戦略論・新訳』中央経済社
石井淳蔵、加護野忠男、野中郁次郎『経営戦略論'新版(』有斐閣,(1996)
ヘンリー・ミンツバーグ『戦略サファリ』ダイヤモンド社,(2001)
青島矢一『競争戦略論』一橋ビジネスレビュー,(2003)
戦略策定
榊原清則『企業ドメインの戦略論』中公新書,(1992)
水越豊『BCG戦略コンセプト』ダイヤモンド社
チャンキム、レネボモルニュ『ブルーオーシャン戦略』ランダムハウス
ハメル&プラハラード『コア・コンピタンス経営』日本経済新聞社
ハマー&チャンピー『リエンジニアリング革命』日経文庫
エリヤフ・ゴールドラット『ザ・ゴール』ダイヤモンド社
ピーターズ、ウォータマン『エクセレントカンパニー』講談社
コリンズ、ポラス『ビジョナリカンパニー、2、3』 戦略の革新
セクサニアン/大前研一『現代の二都物語』講談社(1985)
松田修一『ベンチャー企業の経営と支援'新版(』(2000)
クレイトン・クリステンセン『イノベーションのジレンマ』祥泳社(2000)
柳孝一『ベンチャー企業論』日本経済新聞社(2004)
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
本講義の内容
経営戦略とは
–経営戦略とは何か?
–事業戦略、全社戦略を作る基本的な手法について紹介
–分析手法'フレームワーク(は活用できるものは使う
演習
–分析からは意味を取り出す
–業界のKSFを押さえる
農林水産省 新事業創出人材育成事業
教材利用条件
この教材は以下で公開されている、農林水産省「平成22~23年度新事業創出人材育成事業」で開発された成果を利用しています。
http://www.6ji-biz.jp/kyozai/
「クリエイティブコモンズ・ライセンス 表示 - 非営利 - 継承 2.1」に従う限り、自由に利用・改変することができます。
http://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/2.1/jp/
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