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インドネシア国ジャワ・バリ地域発電設備運用改善計画調査 5. 既設発電設備の運転・維持管理面に係る改善計画 5.1. 運転・保守能力の改善に向けて 5.1.1. PLN North American Reliability Council (NERC) 調査対象の 16 発電所の現地調査では、ジャワ・バリ地域の各発電所は運転能力の評価 するために、共通の指標を使っており、その一例を Table 5.1-1 に示す。 Table 5.1-1 Examples of Common Indicators Symbol Explanation Definition GCF Gross Capacity Factor = {GAC/(PH × GMC)} × 100 % GOF Gross Output Factor ={GAC/(SH × GMC)} × 100 % AF Available Factor ={AH/PH} × 100 % EAF Equivalent Availability Factor ={AH-(EUDH+EPDH+ESDH)} × 100 % SF Service Factor ={SH/PH} × 100 % FOR Forced Outage Rate ={FOH/(FOH+SH)} × 100 % EFOR Equivalent Forced Outage Rate ={(FOH+EFDH)/(FOH+SH+EFDHRS)} × 100 % SOF Scheduled Outage Factor ={SOH/PH} × 100 % EUDH Equivalent Unplanned Derating Hours ={EDH × MW derating }/NMC 上記の指標は 1990 年代中頃に PLN が運転能力の改善と強化を目的として NERC North American Electric Reliability Council; Generating Availability Report)をベースに作成したも のである。 NERC 1 1968 年に北アメリカでの大口電気系統の信頼性確保を目的として設立された 非営利団体で、北アメリカ基準理事会と共同でAmerican National Standards Institute (ANSI)を通じて信頼性基準の開発を行っている。米国、カナダ及びメキシコの電力関連 会社が会員として加入している。 Figure 5.1-1 Gresik 発電所のプレゼン資料から抜粋したもので、運転能力を等価稼動 指標 (EAF) を使って NERC の値と比較している。 上記の指標の一部は各発電所と PJB/IP 本社との間で年初に締結する契約書の中でも使 われており、各発電所は当該年の目標指標達成に向けて日常努力を行っている。 1 NERC Home Page is http://www.nerc.com 5 - 1 ファイナルレポート
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Mar 18, 2020

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インドネシア国ジャワ・バリ地域発電設備運用改善計画調査

5. 既設発電設備の運転・維持管理面に係る改善計画

5.1. 運転・保守能力の改善に向けて 5.1.1. PLN と North American Reliability Council (NERC)

調査対象の 16 発電所の現地調査では、ジャワ・バリ地域の各発電所は運転能力の評価

するために、共通の指標を使っており、その一例を Table 5.1-1 に示す。

Table 5.1-1 Examples of Common Indicators

Symbol Explanation Definition

GCF Gross Capacity Factor = {GAC/(PH × GMC)} × 100 %

GOF Gross Output Factor ={GAC/(SH × GMC)} × 100 %

AF Available Factor ={AH/PH} × 100 %

EAF Equivalent Availability Factor ={AH-(EUDH+EPDH+ESDH)} × 100 %

SF Service Factor ={SH/PH} × 100 %

FOR Forced Outage Rate ={FOH/(FOH+SH)} × 100 %

EFOR Equivalent Forced Outage Rate ={(FOH+EFDH)/(FOH+SH+EFDHRS)} × 100 %

SOF Scheduled Outage Factor ={SOH/PH} × 100 %

EUDH Equivalent Unplanned Derating Hours ={EDH × MW derating }/NMC

上記の指標は 1990 年代中頃に PLN が運転能力の改善と強化を目的として NERC(North American Electric Reliability Council; Generating Availability Report)をベースに作成したも

のである。 NERC1 は1968年に北アメリカでの大口電気系統の信頼性確保を目的として設立された

非営利団体で、北アメリカ基準理事会と共同でAmerican National Standards Institute (ANSI)を通じて信頼性基準の開発を行っている。米国、カナダ及びメキシコの電力関連

会社が会員として加入している。 Figure 5.1-1 は Gresik 発電所のプレゼン資料から抜粋したもので、運転能力を等価稼動

指標 (EAF) を使って NERC の値と比較している。 上記の指標の一部は各発電所と PJB/IP 本社との間で年初に締結する契約書の中でも使

われており、各発電所は当該年の目標指標達成に向けて日常努力を行っている。

1 NERC Home Page is http://www.nerc.com

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MW

1992/ 1993 1993/1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 s/ dOkt

PLTU PLTGU

NERC PLTGU = 85,80 %NERC PLTGU = 85,80 %

NERC PLTU = 82,00 %NERC PLTU = 82,00 %

GRAFIK EAF PLTU & PLTGU GRESIK

Figure 5.1-1 Comparison with NERC for EAF (Gresik power station)

5.1.2. 保守最適化プログラム(MOP)

能力指標の開発とは別に PJB では MTS (Maintenance Total Solution)の協力を得て保守

適化プログラム(MOP)を独自開発し、Gresik 発電所で 初に適用した。Figure 5.1-2 にMOP の全体フローチャートを示す。 MOP では Figure 5.1-2 に示す 10 項目の指標を使って運転・保守の能力指標を表現して

おり、信頼性管理については Table 5.1-2 に示す KPI が使用されている。

Table 5.1-2 Key Performance Indicators for Reliability Management

KPI Definition

Equipment breakdown rate

(Number of hours lost due to breakdowns/planned production hours) calculated as a percentage

Maintenance tactics profile Ratio tactical to non tactical maintenance

Availability EAF = Equivalent Available Factor = { AH - (EUDH + EPDH + ESDH) } / PH × 100 %

Schedule review rate (Number of schedules review or updated/ Total number of schedules) calculated as a percentage

Failure analysis (Number of failures analysed to identify root causes / Total failures) calculated as a percentage

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Figure 5.1-2 Flowchart of Maintenance Optimization Program at PJB

外部審査機関 (PT. TMS Indonesia)が毎年審査し、Figure 5.1-3 に示す一例を含めた評価

報告書を 審査対象の発電所に提出している。

Figure 5.1-3 Result of the Assessment (quoted from P17-Plant Assessment Gresik)

Gresik 発電所の 2005 年の管理能力は 46%で、2006 年の達成目標を 60%と置いている。

MOP は現在 Muara Karang 発電所及び Paiton 発電所でも導入されている。

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インドネシア国ジャワ・バリ地域発電設備運用改善計画調査

このように各発電所は運転・保守能力の改善に向けた取り組みを行っている。

100%

50%

75%

25%

World Class > 80%

Target 12 Months 60%

Gresik May 2005 46%

Asset Management Performance MeterAsset Management Performance Meter

Gresik May 2004 (estimate)

Figure 5.1-4 Asset Management Performance Meter for Gresik

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5.2. 火力発電所

3.2.の既設火力発電設備の運転・維持管理面に係る現状及び課題を踏まえて、効果的な電力

供給を図るために、次のような運用面および保全面からの改善策をリコメンドする。

(1) 突発的な事故等に迅速に対応する改善策として;

<運転面> ① コンパクト型シュミレータ(新設)を活用したユニットのトラブルシューティン

グの教育・訓練-インストラクター及び保全員の育成にも役立つ- ② 既設オンサイトシュミレータを改造し、ユニットのトラブルシューティングの 教育・訓練

<保全面> ① IT 活用による事故等に迅速に対応する資材管理システムの構築 (2) 設備劣化防止対策;Predictive/Preventive Maintenance の推進

① CBM(状態監視保全)の充実 専用診断技術だけではなく、日常点検等も含めた CBM の定義拡大

② 重大事故未然防止のためのファシリティーアセスメントの推進 A. 発電用配管肉厚検査工事を代表発電所の代表ユニットでの試行実施 B. 設備劣化による想定外トラブルの増加への対応として、設備密着型保全の取組み

の強化 (3) Indonesia Power/PJB の教育・訓練の改善 ① 新入社員教育の改善 ② 事故・トラブル等で得た教訓の風化防止・類似事故再発防止とスキル伝承 ③ 日本における品質・安全管理に係る OJT の実施 (4) 品質・安全確保のための技術基盤業務の整備・拡充 マニュアルの整備と DB(データベース)化 (5) 情報の共有化の推進 運転・維持管理情報交換会議を開催し、情報の共有化

(1) 定期検査体制の再構築と実施要領指針(案)の制定

(2) 定期点検工事の合理化を図るための工期短縮に向けた改善策

≪1. 日常の事故・トラブル防止に係る改善策≫

≪2. 定期点検工事に係る運用面からの改善策≫

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5.2.1. 日常の事故・トラブル防止に係る改善策

(1) 突発的な事故等に迅速に対応する改善策

<運転面>

① コンパクト型シュミレータ(新設)を活用したユニットのトラブルシューティング

の教育・訓練-インストラクター及び保全員の育成にも役立つ-

「通常のユニット起動・停止」ならびに「ユニットのトラブルシューティング」の

運転員のスキル向上を図るには、トレーニング用シミュレータ(代表ユニットのコ

ンベンショナル及びコンバインド)による、ユニット緊急時対応等の模擬トレーニ

ングを行うことが一番効果的であるため推奨する。

推奨するトレーニングシミュレータの概要

簡略化した操作デスク・パネルにより、運転訓練効果が期待でき、かつ、インストラク

ターによる訓練はもちろん、インストラクター無しでも効果的な訓練メニューの選択が

できるコンパクト型のシミュレータ。

1) 標準的な仕様 ・モデル精度: 静特性誤差 0.5%未満 動特性誤差 2%未満(主要プロセス) 10%未満(他のプロセス) ・マルファンクション個数 200 個

2) 運転訓練シミュレータの導入メリット ・ 1 人またはグループで簡単に運転の学習ができる。 ・ 機器の故障や系統の変動など、様々なトラブルを想定したシミュレーション運

転により運転要員の技能向上が図れる。 ・ 制御ロジックの変更や制御パラメータの調整訓練により保全技術者の理解度が

深まる。

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<イメージ>

トレーニング用オペレータコンソール/インストラクターコンソール

簡易シミュレータ設置スケジュール(案) 工程(月) -16 -15 -14 -13 -12 -11 -10 -9 -8 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0

1. システム提案・説明

2. 基本仕様調整

3. 詳細仕様検討

4. システム製作

5. 現地据付・調整

6. 検証試験・説明

受注 引渡し現地搬入

シミュレーションシステム構築に必要な期間は約 16 ヶ月

主要項目

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ステップⅠ・Ⅱ

シュミレータ 研修コース名

OJT ステップアップ

初級コース 中級コース 上級導入コース 上級コース

標準目標 5 年

基礎教育 3 年 応用教育 2 ~ 4 年

ステップⅠ・Ⅱ・Ⅲ

ステップⅣ・Ⅴ

Control

Patrol

Control

高卒の OJT レベルアップイメージ

ステップⅠ,Ⅳ :発電所にて知識習得把握・・・ペーパーテストで把握

ステップⅡ :発電所にて技能習得把握・・・模擬操作テストで把握

ステップⅢ,Ⅴ :シミュレータ研修にて全社共通技能修得把握

・初級コース : 通常のユニットの Start-up/Shutdown の習得

: 簡易なトラブルシューティングの習得

・中級コース : 多発している設備事故・トラブルの的確なトラブルシューティン

グの習得

・上級コース : 突発的に発生している設備事故・トラブルの的確なトラブルシュ

ーティングの習得

シュミレーション研修コース:標準目標 5 年で知識/技能習得修了

② PLN Suralaya Unit の既設オンサイトシミュレータを改造し、ユニットのトラブ

ルシューティングの教育・訓練

運転員の知識・能力のスキルアップを図るために、スララヤ発電所にある既設

オンサイトシミュレータに 近発生している突発的な設備事故・トラブルに即

応するためのソフトロジックを追加改造し、ユニットのトラブルシューティン

グの教育・訓練を行うことも大変効果的である。

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<保全面>

数ヶ所の発電所では、部品等をメーカに発注しても、入手するまで数ヶ月かか

り、工事計画に影響が出ている。これは現行の資材管理が迅速に対応できない

システムであると推定する。

─効率的な資材管理ができます─ ① IT 活用による、事故等に迅速に対応する資材管理システムの構築

JICA 調査団としては IT(パソコン)を活用し、全社大で情報共有することにより、有

事の際の迅速な物品検索および流用や多品種・多量の予備品等の在庫情報を少人数で

一元管理し、効率的に設備保全業務が行える資材管理システムの構築を提言する。

<主な用途> ・事故時の迅速な資材確認・流用による迅速な復旧 ・多種保有している資材(予備品、貯蔵品、付属品、メーカ在庫情報等)の一元管理

及び共有化 ・設備更新時期の繰り延べ検討等

<システム構築期間> ・資材管理システム構築に必要な期間は約 10 ヶ月

<活用例> №1 軸受が損傷した際、予備の所在を迅速に把握する。

システムを活用した事故対応のイメージ

資材管理 システム DB

資材情報の照会・検索

共有予備品の表示

詳細設備仕様の表示

流用可能箇所の表示

故障発生各事業所

●同種予備品の検索 ・仕様の確認 ・在庫状況(数量、品質)の

確認

システム操作

全ての事業所の予備

品、貯蔵品(主に事故

引当品)の在庫状況を

照会できます。必要に

応じて事業所間の融

通を行う。

詳細な仕様データお

よび図面等により、品

目の特定ができる。

受け払い情報のシス

テム化によりタイム

リーな在庫状況の照

会ができる。 図面・写真の表示

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(2) 設備劣化防止対策;Predictive/Preventive Maintenance の推進

1) CBM(状態監視保全)の充実

重要度の低い機器は、CBM を基本として点検を行っているが、専用診断技術だけ

でなく、日常点検等も含めた CBM の定義拡大を図った設備維持管理に取組むこと

が必要である。

1. 2.

運転員の日常点検時の五感の活用 ユニットトリップした時に、機器トラブルもなく安全停止を行うための定期的な

保安装置の機能確認試験や、警報発信による異常の早期発見

専用診断技術だけではなく、日常点検等も含めた CBM の定義拡大

日本の電力会社で行われている保安装置テスト(1 回/月)項目

電気関係 1. 密封油バックアップ作動テストおよび ANN テスト

2. 固定子冷却水ポンプ自動起動テスト

主タービン関係 1. 主蒸気止弁ステムフリーテスト

2. ガバナ弁ステムフリーテスト

3. 再熱弁ステムフリーテスト

4. 主タービン保安装置テスト(中央遠隔)

5. 主タービン主油ポンプ吐出圧力低とリップテスト

6. 復水器真空低下とリップテスト

7. 主タービン軸受油圧力低下とリップテスト

8. 主タービンスラスト保護装置動作テスト

9. EH 油ポンプ自動起動テスト

10. 主タービン吸込油ポンプ (SOP) 自動起動テスト

11. 主タービンターニング油ポンプ (TOP)自動起動テスト

12. 主タービン非常用油ポンプ (EOP)自動起動テスト

13. 抽気逆止弁作動テスト

BFP-T 関係 1. BFP-T 高・低圧蒸気止弁ステムフリーテスト

2. BFP-T 保安装置テスト ① スラスト保護装置動作テスト ② 非常トリップ装置動作テスト ③ 軸受油圧低下トリップテスト ④ 主油ポンプ自動起動テスト ⑤ 非常用油ポンプ自動起動テスト

注)BFP-T : Boiler Feedwater Pump - Turbine

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2) 重大事故未然防止のためのファシリティーアセスメントの推進

a. 発電用、配管肉厚検査工事を代表発電所の代表ユニットで試行実施 2004 年 8 月、日本の 2 ヶ所の発電所でエロージョン、コロージョンによる配管

の減肉により、配管破損事故(復水配管と給水加熱器ドレン配管)が発生し、

社会的にも大問題となった。 これらの事故に電力会社・IPP・自家発の各発電所で配管肉厚検査を実施した

結果、Tsr (Thickness shell requirement) 割れの配管が多数発見された。 ※「Tsr」は計算により求められる配管が強度を保つために必要とされる厚さ

Indonesia Power/PT PJB の発電所においても同様の事故発生の可能性が有り、火

力設備の配管管理方針/配管検査計画を策定し、代表発電所の代表ユニットで、

次の実施内容でもって、早期に試行実施に取り組む必要がある。

1. 調査対象設備: 蒸気タービンを用いる出力 1,000 kW 以上の火力発電設備

実 施 内 容

2. 調査対象配管: 発電設備の水、蒸気による減肉の可能性がある材料を使用している。

①主蒸気系統 ②再熱蒸気系統 ③復水系統 ④給水系統 ⑤抽気系統 ⑥ドレン系統 の各配管 3. 調査対象部位: エロージョン、コロージョンによる減肉が生じる可能性のある部位

図 5.2.1-1 参照 ①制御弁下流部 ②玉型逆止弁下流部 ③エルボ部 ④T 管部 ⑤オリフィス下流部 ⑥スイング型逆止弁下流部 ⑦レジューサ部

⑧ベント部 ⑨玉型弁下流部 4. 点検(試験)方法: 点検(試験)方法は以下の方法によること。 ①超音波パルス反射法による厚さ測定方法 ②放射線透過画像検査による試験方法 ③パルス過流法によるスクリーニング試験方法 ④電位差法による試験方法 ⑤3 次元超音波検査法による試験方法 5. 検査時期: ユニットが停止している定期点検工事期間中に実施する。

5 - 11 ファイナルレポート

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インドネシア国ジャワ・バリ地域発電設備運用改善計画調査

Figure 5.2-1 Measurement Points

Figure 5.2-2 Measurement Flow for Key Inspecting System

配管肉厚検査範囲の スケルトン作成

測定部位の形状毎による 測定ポイントを決定

各測定点で測定実施

各測定点における肉厚評価

余寿命評価

判定基準厚さ (tm) 未満?

測定点の周囲を詳細測定 (20mm ピッチ)

No

Yes

(負の公差)

2/3(tn-tsr)

tsr

tm

tn

T 板

詳細測定判定基準厚さ(tm) = 管の計算必要厚さ +2/3(管の 小厚さ-管の計算上必要厚さ) = tsr + 2/3 (tn-tsr)

T : 管の呼び厚さ tn: 管の 小厚さ(管の呼び厚さ-負の公差) tm: 詳細測定判定基準厚さ tsr: 管の計算上必要厚さ (「発電用火力設備の基準」による)

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b. 設備劣化による想定外トラブルの増加への対応として、設備密着型保全の 取組みの強化

信頼性維持の観点から、日常における設備密着型保全の強化策として次のよう

な活動の取り組みをリコメンドする。

a) 設備全体の劣化調査を中心とした点検活動

過去の事故事例や保修経歴から設備固有の弱点を推定し、それをベースに

点検メニューを作成する。その後は現場での綿密な点検に専念する。

b) 自所の現場設備を熟知した保全員の目による点検

点検メニューに漏れた危険部位、点検での見落としによる精度低下を防ぐ

ため、設備保全の経験度合いを反映した体制で実施する。

・ これらの活動は 2 ~ 3 年で設備劣化部位の抽出を行い、その活動で得ら

れた設備点検ポイント(ノウハウ)を各職能、装置別に整理し、「設備

点検基準マニュアル」を制定する。

・ 点検活動で回収された不具合や、 近の大規模プラント災害事例等を

随時盛り込み、点検要領のスパイラルアップ化を図る。

c. 設備劣化防止策として、新規専用診断ツールの採用の検討

今後、設備劣化による想定外トラブルが増加することが予想されるので、設備

劣化防止対策として新規専用診断ツールの採用を検討する必要がある。

(3) IP/PJB の教育・訓練の改善

今後、IP/PJB の火力発電所が信頼性をより高め維持していくためには、発電所要員の教

育・訓練は も重要な項目の一つであり、現在の教育・訓練について改善が必要と考え

る。

① 新入社員の教育の改善

A. IP/PJB の発電所でも同様であるが、新入社員は 初の配属が決まるとその職種

から変わることはまれである様に見える。発電所全体のシステム及びその動作

を理解するためには、運転の経験が非常に重要であるため新入社員の技術者(エ

ンジニアリング、環境、化学要員を含む)はすべて共通教育後発電所の運転の

直に一定期間(1 年ないし 2 年)配属し、その後再配員することが望ましい。ま

た、その後のローテーションも重要である。

B. 発電所自体の事故ばかりでなく系統事故によるプラント・トリップも多いため、

緊急時に対処するための運転要員の訓練が必須である。新規のシミュレータの

設置が望ましい。

5 - 13 ファイナルレポート

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インドネシア国ジャワ・バリ地域発電設備運用改善計画調査

日本の電力会社でも入社後 2 ~ 3 年経過した運転員に対するシミュレータによる

訓練が行われている。

C. また上記と合わせて、今後の各種教育・訓練の必要性増加に対応するための新

規の TRAINING CENTER の設置も必要と考える。

D. その他として、今回の調査では設備の改善が主目的であるため教育・訓練に関

する詳細な調査は行われていないが、この問題は言うまでもなく非常に重要な

ことであり、IP/PJB において他国の例についても詳細な調査を行いより良い方

法を検討されることを推奨したい。

E. 共通教育の中で、環境設備運用に関する基礎知識を習得することも非常に重要

である。

例えば、 1) 環境の全容(環境規制の背景、発電所運営との関わり) 2) 発電所に該当する大気汚染と対策 3) 発電所に該当する水質汚染と対策 4) 発電所に該当する騒音と対策 5) 大気汚染の概念 6) 水質汚染の概念 7) 騒音の概念 8) 環境保全設備の概要 9) 環境設備性能の考え方と性能把握方法

水質試験及び給水管理/排水試験及び排水管理/排ガス試験及び排ガス管理/環境

設備運用管理等の日常管理、定期管理及び異常時対応等における専門スキルの

習得を目的として日本の電力会社での OJT 研修(IP/PJB 共に 2 名程度、期間約

2 ヶ月)を調査団として提案する。

② 事故・トラブル等で得教訓の風化防止・類似事故再発防止とスキル伝承 ─トラブル事例集の作成と DB(データベース)登録─

A. 『思いがけない・珍しいトラブル事例集』- 低 20 件 例えば、 ・ボイラ『ドラムレベル低』によるトリップ ・タービン昇速中の蒸気タービントリップ ・蒸気加減弁スプリング締め込みボルト等 ・ユニット起動中 BFP トリップによるユニット起動不能

B. 『経年劣化機器の損傷事例集』- 低 20 件 例えば、 ・配管外面腐食 ・エキスパンション損傷(HRSG 排気ガスダンパー) ・外面腐食によるチューブ噴破

ファイナルレポート 5 - 14

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・シーケンサ他不良によるシステム停止等

C. 『ヒューマンエラーによる設備トラブル事例集』- 低 20 件 例えば、 ・DSC(デジタル制御システム)誤操作によるボイラ緊急停止 ・グランド蒸気圧力調整弁信号配線の誤結線による誤動作 ・蒸気タービン起動条件不成立による起動時間遅れ等 ・復水器真空低下

③ 日本における品質・安全管理に係る OJT の実施

目 的 : 保全員の品質・安全管理に係るスキルアップを図るために、日本の電

力会社の定期検査工事の品質・安全管理の実態を OJT を通じて修得

し、インドネシア国に水平展開を行う。

参加人数 : 4 ~ 5 名 (ボイラー,タービン・発電機,計装,電気担務の Supervisor クラス)

実施場所 : 石炭焚,ガス焚の既設火力発電所および建設所

期 間 : 約 6 ヵ月間×2 回程度

(4) 品質・安全確保のための技術基盤業務の整備・拡充

≪運 転≫

① 『ANN(アラーム)発信時の処置マニュアル』の整備と DB(データベース)化

運用異常時、運転員による早期処置が出来るよう日頃からの訓練が大切である。し

たがって、各発電所で発生して設備事故・トラブル事例を参考にした『ANN(アラ

ーム)発信時の処置マニュアル』の整備ならびに DB(データベース)掲示を行い、

運転員の知識・能力の向上を図る上で、非常に重要である。 尚、各発電所において、知識習得把握はペーパーテストで確認することを提言する。

② 『新パトロール点検基準の作成と DB(データベース)化』

各 P/S で Turbine vibration Trouble/Boiler Gas Leak/Tube Leak/Valve Leak and HRSG Exhaust Gas Pamper Turbine等によるユニットTrip, Shutdown and Deratingが多発して

いる。そういった中で、日常のパトロール点検では単に機器を見廻るだけでなく、

事故・トラブル機器の損傷メカニズムを整備し、それに基づきユニット毎の点検ポ

イントを明確にした「新パトロール点検基準」の作成と DB(データベース)化が

大切と考える。 また、パトロール点検漏れの防止や合理的な点検のためのパトロール順路を示すこ

とも大切である。

5 - 15 ファイナルレポート

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≪保 全≫

① 『機器の補修要領』、『作業基準書』等の整備と DB(データベース)化

保全作業は各 P/S 共、大きな努力が払われている。ただ、予備品工具類が入荷しな

いため、修理ができない機器がでてきて問題になるケースが今後、十分考えられる。 従って、下記の点に充分留意して、さらに発電所の信頼を高めるように考慮する必

要がある。

・ 保全作業は現在メーカが提出している各機器の取扱説明書を利用しているが、

将来は発電所の経験も加味した機器の「補修要領」や「作業基準書」を作成し、

DB(データベース)登録することを提言する。

・ 発電所運用上、重要な「補修記録」又は「計測記録等の経事変化の集約」等も

保管、またはコンピュータにより管理することを提言する。

② 基本設計マニュアルの整備と DB(データベース)化

設計技術基盤の整備・拡充を目指して、社内標準や設計マニュアル等の設計標準類

の再編に取り組み、そして、有識者による内容レビュー会を実施することも、大切

である。

1.

2.

3.

マニュアル作成になると従来の設計方法を解説するというテキスト的なもの

になりがちだが、設計マニュアルは『設計時に必要な条件』が明記されてい

て、それを取り込むとこんな設計仕様になるという流れにすること。

既設発電所での事故等トラブル対応を『設計』に反映すべき事項もあるため、

前向きに取り組むこと。

写真・イメージ図等を盛り込み、初心者でも直ぐ理解できるビジュアルな設

計マニュアルにすること。

設計マニュアルの整備・拡充に向けて、反映すべき事項

(5) 情報の共有化の推進─運転・維持管理情報交換会議の開催─

次のような主旨で、運転・維持管理情報交換会議を開催し、情報の共有化を推進するこ

とを提言する。

≪目 的≫

① 発電所の安全・安定運転継続に有益な、他所の優れた取り組み事例やノウハウ

について相互に情報交換を行い、全体のスパイラルアップを図る。 ② 実際に現場第一線で陣頭指揮を執るボイラ・タービン・電気・計装・運転の

Supervisor or Specialist の全体的な交流の機会を設け、日常的な情報交換が行わ

れる環境づくりの一助とする。

ファイナルレポート 5 - 16

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<会議の頻度>

1 回/年の頻度で、情報交換会議を開催する。 ※各所相互ディスカッションの時間を多くとる。

<全職能共通課題>

発電所の安全・安定運転に役立つ情報 ① 重大災害防止 ② 供給支障事故防止

<具体的な情報提供テーマ事例>

① 運転管理面 A. 運転操作におけるヒューマンエラー防止取り組み情報 B. 事故兆候の早期発見拡大防止取り組み情報 C. 教育・技術伝承に関する取り組み情報 D. その他の設備健全度に関する情報 ② 保全管理面 A. 懸案事項管理実態の質的向上情報 B. 的確な事故水平展開の実施情報 C. 設備管理方法法の改善情報(状態監視技術等) D. 教育・技術伝承に関する取り組み情報 E. その他の設備健全度に関する情報

5.2.2. 定期点検工事に係る運用面からの改善計画

(1) 定期検査体制の再構築と実施要領指針(案)の制定

定期点検中の検査漏れ等による類似事故の繰り返しを防止し、発電設備の保安・品質の

向上を図るためには、ユーザ側の役割分担を明確にした定期検査体制の確立と実施要領

指針 (Table 5.2-1) を制定し、業務を円滑に遂行することを提言する。

① 定期検査に係る体制と役割分担

A. 検査体制 定期検査の検査体制は次によるものとする。

5 - 17 ファイナルレポート

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副検査責任者

執行責任者:

副所長(技術)

(補佐) 発電所長

IP -Supervisor PJB-Specialist

検査責任者

<役職名> Supervisor

副検査責任者 <役職名> Supervisor

<役職名> Supervisor

運転操作責任者

運転操作員

検査員( 担務) 検査員( 担務)

分担 ※1 へ

より

※1

試験員

発電所:B/T/E/C

UBHAR, UHARB/T/E/C

(発電所の保全部門の代表)

B. 分担役割 発電所とメンテナンス事業部 (UBHAR, UHAR) との定期検査に係るメンバー

の役割分担は Table 5.2-2 “Sharing of Roles” によるものとする。

② 定期検査における要員等の確保

検査責任者は定期検査着手までに検査に必要な確認の上、検査体制表を作成し、執

行責任者の承認を得るとともに、定期検査記録データベースに掲示する。 なお、運転責任者、運転操作員については、作動試験・試運転検査の試験実施まで

に、検査責任者が個別に体制を確保するものとする。

③ 定期検査実施要領

定期検査着手から完了までの一連の業務フロー (Figure 5.2-3) および各実施要領に

ついて示す。

Table 5.2-1 Implementation Procedure of Scheduled Inspection 1. 検査手順 検査手順は、Figure 5.2-3 “Flow of Inspection Procedure” のとおりとする。

2. 試験、検査手

順 (1) 検査員は、次の事項を試験前に確認する。

a. 検査・測定および試験装置の確認 検査要領書で明確にした検査・測定装置および試験装置は、「計測制御装置管理に関す

る要領指針」に定められた周期または使用前に校正・点検を行い、必要な精度にあるこ

とを確認する。

b. 資格の確認 検査員は、試験員が試験の実施に必要な資格を有していることを、事前に資格証明書ま

ファイナルレポート 5 - 18

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たは作業従事経歴書の写しにより確認し、検査責任者へ報告する。

(2) 検査責任者は、次の事項を検査前に確認する。

a. 作動検査・試運転検査体制の確立 運転操作責任者は、運転操作責任者と運転操作員の名前、運転操作員の資格確認日を作

動検査・試運転検査体制表(任意様式)に記入する。 検査責任者は、作動検査・試運転検査までに、体制表に必要事項が記載されていること

を確認する。

3. 試験実施 (1) 試験実施要領 検査員は、検査要領書のとおりに試験員が試験を実施していることを現場立会いで都度確

認する。なお、確認事項は下記のとおりとする。

a. 試験の方法 b. 有資格者が試験を実施していること c. 試験が行われている箇所 d. 使用されている検査装置

(2) 検査装置の取扱い 検査員および試験員は、製造メーカーの取扱説明書に基づき検査装置を取り扱う。

4. 試験記録 (1) 試験員が作成する試験結果の記録

a. 検査員は、試験記録の作成を試験員に指示し速やかな提出を依頼する。

b. 検査員は、試験員から提出された試験記録を確認し、試験内容に問題の無いことを確認

する。

(2) 作動検査および試運転の試験記録 検査員は、検査に必要なデータを出力、印字させる。データの出力、印字ができない場合

はデータの採取を行う。なお、データの採取については検査助勢員に指示してもよい。

5. 検査実施 (1) 検査範囲 各検査要領書による。

(2) 検査員の検査方法

a. 検査員は、現場立会いまたは試験記録をもって、試験結果を判定基準に照らし合わせて

合否判定を行うものとし、検査日は、検査員が合否判定した日とする。

(a) 現場立会いをもって合否判定する検査は、目視検査、外観検査、浸透深傷検査、復

水器漏洩検査、作動検査、検査とする。ただし、ガス検知器の作動検査については、

試験記録をもって合否判定することができる。

(b) (a)項以外の検査は、試験記録をもって合否判定することができる。

(c) 検査を工場で行う場合は、当社要求事項を満足する納入・メーカが作成した検査要

領書を、検査責任者の確認を得ることで、試験記録により合否判定することができ

る。(予め定めた検査要領に限る)

b. 目視検査等で合否判定が難しい場合には、浸透深傷検査等の追加試験または健全性を確

認する技術評価を実施し、合否判定を行う。 なお、技術評価をもって合否判定した場合、技術評価結果の承認日が検査日となる。

c. 検査の結果に基づき補修を行った場合は、再検査を行うとともに、必要に応じて追加検

査を実施する。

d. 検査要領書に定める以外の検査を実施する場合は、検査要領を作成し、執行責任者の承

認を得る。

(3) 検査責任者および副検査責任者の立会い 検査責任者は、検査員が現場で行う合否判定に、原則、立会い、検査員を適切に指示、管

理する。検査責任者は、副検査責任者または検査印から不適合報告を受けた場合は、その

内容について原則、現場確認を行う。また、作動検査、試運転検査に原則立会い、副検査

責任者と検査員を適切に指示、管理する。

5 - 19 ファイナルレポート

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6. 検査記録 (1) 検査結果の記録

a. 検査員は、「検査記録」を用いて必要事項を記入し、検査記録を作成する。 なお、検査記録には 低限必要なものを除き、試験記録から転記しないものとする。

再検査を行う場合または追加検査で検査記録用紙の空白欄が不足する場合は、新たに検

査記録を作成する。 検査の結果は、都度、副検査責任者の確認を得るものとする。

b. 副検査責任者は、検査の都度、検査員が適切な記録を作成していることを確認し、検査

記録にサインを行う。 また、設備項目(検査記録における検査名)の検査が全て完了したことを確認し、検査

責任者の承認を得るものとする。

c. 検査責任者は、検査記録を承認するとともに、検査記録の文書登録を実施し、検査記録

表紙および作動検査・試運転検査の試験記録ならびに作動検査・試運転検査体制表を定

期検査記録 DB に掲示する。

(2) 検査記録の添付資料

a. 検査の合否判定に用いたものを検査記録に添付する。 なお、試験員が作成した試験記録については、原本を添付する。

b. 検査の結果を記述または補足したものを添付する。

c. 作動検査・試運転検査については、試験記録の原本、運転操作責任者および運転操作員

を含む検査体制の実績を添付する。 なお、判定基準に照らして合否判定しづらい場合は、試験記録一覧表を作成してもよい。

その場合も試験記録の原本を必ず添付すること。

7. 不適合処置 検査員が、不適合と判定した場合は、 適な処置方法を検討するとともに、所内速報を記載し

て、検査責任者の確認を得る。

(1) 補修する場合 検査責任者の承認を得て、修繕または取替後に再試験を実施して、一連の行為を検査記録

に記録する。

(2) 補修しない場合

a. 技術評価

(a) 技術評価方法が社内標準に規定されていれば、それに従い技術評価を実施する。

(b) 社内標準に規定がない場合は、検査責任者は、技術基準、メーカ推奨、運用実績等

ならびに必要な場合は関係箇所との調整を行い、技術評価を実施した結果を執行責

任者へ報告する。

b. 特別採用 技術評価の結果、次回の検査時まで安全・安定運転が継続できることを検査員が判断し、

検査責任者が承認した場合は、特別採用とすることができる。 なお、特別採用を承認した日が検査日となる。

8. 次工程への引

渡し 検査責任者が、合否判定を「適合」と承認した場合、もしくは「特別採用」と承認した場合、

次工程への引渡しが許可できる。 副検査責任者が、合否判定を「適合」と確認した場合、組立または復旧の許可ができる。

9. 検査工程管理 検査責任者は、副検査責任者の報告を受けて「検査工程管理表」を作成し、各検査の工程を都

度把握する。 また、定期検査完了時および、中間時として総合インターロック時期(総合インターロックを

実施しない定期検査は除くことができる)に、執行責任者へ報告する。 なお、定期検査完了時の報告後に、「検査工程管理表」を定期検査記録 DB に掲示する。

10. 定期検査完了 定期検査のすべてが終了したことを、検査責任者が確認すれば、検査完了とする。

ファイナルレポート 5 - 20

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Table 5.2-2 Sharing of Roles 役 職 役 務 内 容

執行責任者 ・発電所長

・発電所における保安に関する業務を統括する。 副所長(技術)が配置されている場合は、役務を補佐させることができる。

検査責任者 発電所の保全 部門の代表; IP: Supervisor Senior PJB: Specialist

・定期検査の適切な実施に責任を有する。

・適切な定期検査要領書作成と検査体制を確立する。

・定期検査を遂行するために必要な知識・経験を有する検査員を配置し、検査に必

要な手順を熟知し遵守することを基本として、関係箇所と十分な連絡協調を図り

ながら検査を進めるとともに、所管する検査員の職務の遂行に関して適切な指

示・管理を行うものとする。

・不適合が発生した場合は、本要領指針の定めるところに従って処置する。

・検査記録および添付資料に不備がないことを確認し、不備があればこれを是正す

る。

・次工程への引渡し許可の権限を有する。

・定期検査の工程管理を行う。 副検査責任者

・IP/PJB 発電所 Supervisor (B/T/E/C) ・UBHAR/UHAR; Supervisor (B/T/E/C)

・検査責任者の不在時には、役務を代行する。

・職務の遂行に際して、検査に必要な手順によりがたい場合は、検査責任者の判断

を求め、必要な処置を講じるものとする。

・検査記録および添付資料に不備がないことを確認し、不備があればこれを是正す

る。

・組立または復旧の許可ができる。

・検査の状況を把握し、定期的に検査責任者に報告する。

・検査に必要な資格を有する副検査責任者は、検査員の役務を実施できる。 検査員

・IP/PJB 発電所 Technician Senior (B/T/E/C) ・UBHAR/UHAR; Technician Senior (B/T/E/C)

・検査に必要な手順を遵守することを基本として、定期検査を実施するものとする。

・職務の遂行に際して、検査に必要な手順によりがたい場合は、検査責任者の判断

を求め、必要な処置を講じるものとする。

・判定基準に照らして、合否判断を実施する。

・適合、不適合の判断が難しい場合には、副検査責任者、検査責任者に指導・助言

を求める。

・判定基準を超えた場合は、不適合処置の内容を検討して、検査責任者の承認を得

て不適合処置を行う。 運転操作責任者

(IP/PJB) ・検査に必要な運転操作員を選任し、運転操作を指示する。

・不具合が発生した場合には、検査責任者へ報告する。 運転操作員

(IP/PJB) ・運転操作責任者からの指示に従い、運転操作を実施する。

・不具合が発生した場合には、運転操作責任者へ報告する。

5 - 21 ファイナルレポート

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Start

補修を実施す

るのか? 試 験 準 備 補修実施

試 験 実 施

技術評価方法が

「標準化」されて

いるか?

試験は適切に行

われているか?

UBHAR/UHARは技術

評価の妥当性を確認

し、結果を検査責任者

に送付する。また、必

要に応じて助言を行

う。

判定基準内か? (※1)

※1: 適合・不適合の判定が難しい場合には、追加検査を実施して判定を行う。 (例:目視検査において、割れの疑いがある事象を認めたので、追加検査として浸透深傷検査を実施した。)

Figure 5.2-3 Flow of Inspection Procedure

次工程への引渡しを許可

Yes 判定基準内だが軽微な事象が

ある場合、事象内容を記録し

て適合とした理由も記録す

る。

標準化 UBHAR

記録が困難な場合、写真やス

ケッチ等を用いる。 技術評価の結果

継続使用は可能

か?

検査対象機器の使用を停止 検査終了

Yes

試 験

(適合)

No

〔不適合処置の内容を検討〕

Yes

No

Yes

No

Yes

No

〔特別採用〕

技術評価

(不適合)

ファイナルレポート 5 - 22

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(2) 定期点検工事の合理化による工期短縮に向けた改善策

日本におけるボイラー・タービンの精密定期点検工事の各作業工程で採用されている工

期短縮実施項目を、アンケート形式で Indonesia Power/PT PJB の各発電所に対し、実施

の有無の調査を実施した。

その結果を Table 5.2-3 に示す。これらの工期短縮項目は設備の高稼働の確保や運用・補

修コスト低減に大変役立つものと思われるので、各発電所において工期短縮実施項目を

再度検討することを提言する。

尚、定期点検工事の基本作業(タービング分解点検等)、大型改修工事について、今後、

工事内容の見直し、手順の組み替え、工法の改善、治工具、仮設の開発、新技術の活用

等を着眼点として工期短縮を図るべく幅広く検討することも非常に大切と考える。

(参考) 日本における定期検査工期短縮の採用状況

<ボイラ> ボイラ強制冷却および灰処理等バキューム車の採用比率は高い。それに次ぐのは作業用開

口の大型化、チューブ研摩装置となっている。

<タービン> 保温材のカプセル化等の採用比率は高い。それに次ぐタービン強制冷却、小物分解用クレ

ーンの採用、大型容量ボトルヒータ、インライン式オイルフラッシングとなっている。

5 - 23 ファイナルレポート

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Table 5.2-3 Scheduled Inspection Shortening Method (Questionnaire Result Summary Sheet)

○:Finishing[adoption] ×;un-adopting (Boiler) -: No response

shortening method Suralaya TanjungPriok Semarang Perak Muara

Tawar Gresik Grati Paiton

1 Boiler forced cooling × × ○ × × ○ × ×

2 Enlargement of a manhole × ○ × × ○ × ○ ○

3 Adoption of the scaffold in a lifting furnace ○ × × × ○ ○ × ×

4 An improvement and increase of a mechanic tool ○ ○ × - ○ ○ ○ ○

5 Increase of welding equipment ○ ○ × × ○ ○ × ○

6 Foundation of the scaffold work in a furnace ○ ○ ○ - ○ × × ×

7 Adoption of the scaffold in a sky station (gondola type) furnace ○ ○ × × ○ ○ - ○

9 Adoption of vacuum car, such as an ash handling system × - - - - - - ×

10 An improvement and of the polish methods, such as a pipe and a tube ○ ○ × - ○ ○ ○ ○

(Turbine)

shortening method Suralaya Tanjung Priok Semarang Perak Pesang

-garan Pemaron Gilima- nuk

MuaraTawar Gresik Grati Paiton

1 Forced cooling of a gas/ steam turbine × × × × × × ○ ○ × × ×

2 Encapsulation of casing keeping-warm material ○ ○ × × ○ ○ ○ ○ × ○ ○

3 Adoption of a mass bolt heater ○ ○ ○ - ○ ○ ○ × ○ ○ ○

4 Increase of welding equipment ○ × - - - - - ○ ○ × ○

5 Adoption of a high frequency bolt heater ○ ○ ○ - × × × ○ ○ ○ ○

7 Encapsulation of main steam entrance pipe flange part keeping-warm material

○ ○ × × - - - ○ × ○ ○

8 The crane for accessories disassembly ○ ○ ○ × ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

9 Hydraulic coupling bolt ○ ○ ○ - ○ ○ ○ ○ × ○ ○

10 Adoption of turbine casing jack rise equipment ○ ○ ○ - ○ ○ ○ ○ × ○ ○

11 Adoption of turbine rotor slewing mechanism ○ ○ ○ - ○ ○ ○ ○ × ○ ○

12 Foundation of a diaphragm storage stand ○ ○ ○ - ○ ○ ○ ○ × ○ ○

13 Adoption of in-line type oil flushing equipment ○ × × × × × × × ○ ○ ○

14 Adoption of additional oil flushing equipment ○ × ○ × ○ ○ ○ × ○ ○ ○

ファイナルレポート 5 - 24

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5.3. 水力発電所

第 3 章の評価・分析を基に、考慮することが望ましいと考えられる項目について記述する。

これらの項目について、その採否、適用は発電所毎の実情に基づき計画されることが望ま

れる。 発電所共通事項としては次の通りである。

(1) 運用職員と保守職員の定期的な人事交流

各発電所での運転職員と保守職員の数は十分と思われる。しかし、運転職員と保守職員の

定期的な人事交流は原則的に殆ど行われていない。 関係職員の更なる技術アップを図る観点から定期に人事交流を行うことを提案する。

(2) 計画定期点検の弾力運用

インドネシアでは定期点検は原則的に“年間点検 (AI)”、“一般点検(GI)”、及び“主要分解

修理 (MO)”からなっており、何らかの点検が毎年行われている。しかしながら、現在の

事故回数の水準を勘案すれば、例えば Soedirman 発電所のように年間点検 (AI) を半年点検

に簡素化して点検時間を 30 時間に短縮するなど、点検間隔の延長を含めて計画定期点検の

弾力運用が提案される。

主要分解修理 (MO) に関しては原則として 4,000 時間毎に実施するようになっているが、

Soedirman 発電所では 初の運開から約 20 年 (1988.11) 経過しているものの運転が順調な

ため、今日まで主要分解修理 (MO) は実施されていない。各号機の運転が順調であれば予

定の主要分解修理時期に来ても MO は不要と考える。

(3) より効果的な運転保守実現のための推奨項目

機器の称呼番号札の取付および各機器名の記入は誤操作や誤確認を防ぐために特に重要と

考えられるため。これらをしっかり取付、記入することが望ましい。

圧力計、油面計、電流計等の指示計器類については保守員の的確な判定のためにも、その

標準値および正常範囲を示すマークを表示することが望ましい。

主機運転停止時における各機器動作のシーケンス時間を計測し、管理することが機器の異

常早期発見に有効な手段の一つであるのでこれの計測・管理が望ましい。

軸受温度、発電機コイル温度等については現状でも各所とも十分に計測されているが、こ

れらを長期に亘りトレンド管理をすることが機器の異常早期発見に有効な手段であるので

長期トレンド管理をしっかりと実施することが望ましい。また、計測値と設計値或いは試

験実施時の値等と比較することも大切である。

5 - 25 ファイナルレポート

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万一異常値が発見された場合はただちにその原因の把握につとめ、それらを除去するとと

もに、異常の様相、原因等について記録用紙に詳細を記載しておくことが後々の保守のた

めにも重要と考える。

(4) より効果的な点検実現のための推奨項目

オーバホールについては、決められた運転時間に達したからという理由で無条件に実施す

ることは電力系統の信頼度確保や経済的観点から見ても不要と考えられる。

年次点検 (AI) での軸受パッド表面点検は特に理由がない限り不要と考える。

点検報告書には修理した場合の修理の詳細を記載しておくことが後々の点検時に役立つの

で詳細記入を推奨する。

発電機コイルの健全性確認のための正極指数 (PI) および誘電正接 (Tan δ) 試験が実施さ

れている場合といない場合があるので実施することが望ましい(原則として 3 年次点検で

実施)。

点検後の試験については水車性能のチェックのために開度―出力試験の実施が、また電力

系統事情および発電所機器の事情が許せば調速機機能のチェックのために時折負荷遮断試

験の実施が望ましい。

点検報告書に試験記録の記載がないケースが見受けられるので後々のために記載すること

が望ましい。 発電所個別の推奨事項を以下に記載する。

(5) Saguling

近年、同一事象による強制停止のケースが増加傾向にあるように見受けられる。多くは検

出器等の誤作動によるものと推測されるが、このような場合単に誤作動を復帰すのだけで

はなく、これらの原因を取り除くことが大切と考えられる。 (6) Cirata

発電機の運転平均出力が 60 ~ 65%程度と低いため水車が比較的低効率の運転となっている。

負荷率の改善についての検討が望まれる。この場合当然 LFC 運転への影響も考慮に入れる

必要がある。

Cirata では現在 AI の期間短縮について検討が実施されているが、点検期間の短縮について

は系統への信頼度向上にも繋がるので、これの実現を期待する。

ファイナルレポート 5 - 26

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インドネシア国ジャワ・バリ地域発電設備運用改善計画調査

(7) Soedirman

近年発電機の運転平均出力が低下傾向にあるように思われるため、これの改善について検

討が望ましい。 (8) Sutami

3 号機の年間運転時間が他号機と比較して短い。各号機の運転時間のバランスをとること

がより良い保守のため望ましい。

Sutami の運転・保守要員の経験年数は十分で理想的であるが、年齢構成が比較的高いため、

技術の伝承のためにも若年層を順次投入し教育していくことが大切と考える。

5 - 27 ファイナルレポート

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インドネシア国ジャワ・バリ地域発電設備運用改善計画調査

5.4. 日本の公共電力会社の関係規則

ここでは監督官庁である MEMR がインドネシア電力セクターへの今後の監督・指導改善に

参考となる日本の公共電力会社が発電所の運転・維持を行う上で遵守すべき日本の関係法

規を紹介するものである。

5.4.1. 電気事業法関連 日本の電力会社は下記の法令及び経済産業省(METI)令に従って事業運営を行っている。 (1) 電 気 事 業 法(法律:1964 年施行、2005 年改定)

(2) 電気事業法施行令(省令:1965 年施行、1996 年改定)

(3) 電気事業法施行規則(省令:1965 年施行、1995 年改定、 終改定 2006 年 9 月)

(4) 技 術 基 準(省令) (a) 電 気 設 備(1965 年施行、2006 年改定) (b) 火力発電設備(1965 年施行、2006 年改定) (c) 水力発電設備(1965 年施行、2006 年改定)

(5) 電気関係報告規則(省令:1965 年施行、2004 年改定) 一方、調査団が知る限りではインドネシアにおける電力関連の法令、省令は以下の通り。 (a) 電 力 法2 (b) グリッドコード (ATURAN JARINGAN JAWA-MADURA-BALI) 電力法は日本に電気事業法に相当し、電気事業の骨組みを謳っており、グリッドコード

は日本の電気設備技術基準に相当し、系統接続から要求される技術基準を定めている。 日本における発電設備および運転・維持に関する上記法令の概要は以下の通り。

(1) 電力事業法

この法律は、電気事業の運営を適正かつ合理的ならしめることによって、電気の使用者

の利益を保護しおよび電気事業の健全な発達を図ると共に、電気工作物の工事、維持お

よび運用を規制することによって、公共の安全を確保し、及び環境の保全を図ることを

目的とする。

1) 技術基準への適合(39 条及び 40 条)

(a) 事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物を経済産業省令で定める

技術基準に適合するように維持しなければならない。......................... (39 条)

2 電力法は 2006年 3月 22日に国会に提出され、現在審議中である。国家立法計画によれば今年中に国会を通過する予定である。

ファイナルレポート 5 - 28

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インドネシア国ジャワ・バリ地域発電設備運用改善計画調査

(b) 経済産業大臣は、事業用電気工作物が前条第一項の経済産業省令で定める技術

基準に適合していないと認めるときは、事業用電気工作物を設置する者に対し、

その技術基準に適合するように事業用電気工作物を修理し、改造し、若しくは

移転し、若しくはその使用を一時停止すべきことを命じ、又はその使用を制限

することができる。 .................................................................................... (40 条)

上記 40 条では監督官庁の権限を定めている。

2) 自主的な保安(42 条)

(a) 事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に

関する保安を確保するため、経済産業省令で定めるところにより、保安を一体

的に確保することが必要な事業用電気工作物の組織ごとに保安規程を定め、当

該組織における事業用電気工作物の使用の開始前に、経済産業大臣に届け出な

ければならない。 .....................................................................................(42-1 条)

(b) 事業用電気工作物を設置する者は、保安規程を変更したときは、遅滞なく、変

更した事項を経済産業大臣に届け出なければならない。..................(42-2 条)

(c) 経済産業大臣は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安を確保

するため必要があると認めるときは、事業用電気工作物を設置する者に対し、

保安規程を変更すべきことを命ずることができる。..........................(42-3 条)

(d) 事業用電気工作物を設置する者及びその従業者は、保安規程を守らなければな

らない。 .....................................................................................................(42-4 条)

各電気事業者は自主保安規定策定をこの 42 条で保障されているが、保安規定は関

連省令を遵守していることが前提となっている。

3) 主任技術者(43 条)

(a) 事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に

関する保安の監督をさせるため、経済産業省令で定めるところにより、主任技

術者免状の交付を受けている者のうちから、主任技術者を選任しなければなら

ない。 .........................................................................................................(43-1 条)

(b) 事業用電気工作物を設置する者は、主任技術者を選任したときは、遅滞なく、

その旨を経済産業大臣に届け出なければならない。これを解任したときも、同

様とする。 .................................................................................................(43-3 条)

(c) 主任技術者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督の

職務を誠実に行わなければならない。 .................................................(43-4 条) (d) 事業用電気工作物の工事、維持又は運用に従事する者は、主任技術者がその保

安のためにする指示に従わなければならない。..................................(43-5 条)

具体的な主任技術者と電力設備の関係は電気事業法施行規則 52 条で定められてお

り、その内容は以下の通り。

5 - 29 ファイナルレポート

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インドネシア国ジャワ・バリ地域発電設備運用改善計画調査

電力設備 主任技術者

四 水力発電所であって、高さ十五メートル以上

のダム若しくは圧力三百九十二キロパスカル

以上の導水路、サージタンク若しくは放水路

を有するもの又は高さ十五メートル以上のダ

ムの設置の工事を行うもの

第一種ダム水路主任技術者免状 又は

第二種ダム水路主任技術者免状 の交付

を受けている者

五 火力発電所(内燃力を原動力とするもの及び

出力一万キロワット未満のガスタービンを原

動力とするものを除く。)

第一種ボイラー・タービン主任技術者免

状 又は 第二種ボイラー・タービン主任

技術者免状 の交付を受けている者

七 発電所(原子力発電所を除く。)、変電所、

需要設備又は送電線路若しくは配電線路を管

理する事業場を直接統括する事業場

第一種電気主任技術者免状、第二種電気

主任技術者免状 又は 第三種電気主任

技術者免状 の交付を受けている者

電力設備の補修工事、運転・維持の安全性を確保するため、日本の各発電所には主

任技術者が配置されている。 (2) 電気事業法施行令

1) 報告の収集(8 条)

(a) 経済産業大臣が電気事業者に対し報告又は資料の提出をさせることができる

事項は、次の各号に掲げる事項とする。 - 電気の供給業務の運営に関する事項 - 電気事業の用に供する電気工作物の工事、維持及び運用の保安に関する事項 - 会計の整理に関する事項 - 調査業務の運営に関する事項

上記のように監督官庁は電力供給者に対し必要に応じてあらゆる情報や資料を入

手することができる。

(3) 電気事業法施行規則

電気事業法施行規則は電気事業法の運用に必要な細目について規定している。

例えば電気事業法第 55 条で謳っている定期安全管理検査について以下の項目が規定さ

れている3。

1) 原子力発電所以外の発電所に属する蒸気タービンにあっては、運転が開始された日、定

期自主検査が終了した日又は法第五十四条第一項の検査が終了した日以降四年を超え

ない時期 ....................................................................................................................(59-i 条)

2) ガスタービン(出力一万キロワット未満の発電設備に係るものに限る。)又はガスター

ビン作動用空気加熱器(出力一万キロワット未満の発電設備に係るものに限る。)にあ

っては、運転が開始された日、定期自主検査が終了した日又は定期検査が終了した日以

3 2006 年 9 月の 終改訂版では 59 条、60 条、61 条は電力産業の自由化に沿って削除されている。

ファイナルレポート 5 - 30

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インドネシア国ジャワ・バリ地域発電設備運用改善計画調査

降三年を超えない時期 .......................................................................................(59-ii 条)

3) ボイラー、独立過熱器、蒸気貯蔵器、ガスタービン(出力一万キロワット以上の発

電設備に係るものに限る。)、ガスタービン作動用空気加熱器(出力一万キロワット

以上の発電設備に係るものに限る。)にあっては、運転が開始された日、定期自主

検査が終了した日又は定期検査が終了した日以降二年を超えない時期 .(59-iii 条)

4) 次に掲げる場合にあっては、前項の規定にかかわらず、定期自主検査に係る事業用

電気工作物の設置の場所を管轄する通商産業局長(以下この項において「通商産業

局長」という。)が定める時期に定期自主検査を行うものとする。 ........(59-2 条)

(a) 使用の状況から前項に規定する時期に定期自主検査を行う必要がないと認め

て、通商産業局長が定期自主検査を行うべき時期を定めて承認したとき。

(b) 災害その他非常の場合において、前項に規定する時期に定期自主検査を行うこ

とが著しく困難であると認めて、通商産業局長が定期自主検査を行うべき時期

を定めて承認したとき。

5) 定期自主検査は、次に掲げる事項について行うものとする。 ..................... (60 条) (a) 各部の損傷、変形及び異常の発生状況の開放又は分解による点検 (b) 機能及び作動の状況の試運転等による点検

6) 定期自主検査の結果の記録は、次に掲げる事項を記載するものとする。 . (61 条) (a) 検査年月日 (b) 検査の対象 (c) 検査の方法 (d) 検査の結果 (e) 検査を実施した者の氏名 (f) 検査の結果に基づいて補修等の措置を講じたときは、その内容

7) 定期自主検査の結果の記録は、五年間保存するものとする。 ..................(61-2 条)

(4) 電気関係報告規則4

この規則は事故の定義と所轄の経済産業局長もしくは経済産業大臣に報告すべき事故

を規定している。

1) 事故の定義(第 1 条の 3 項、4 項、5 項)

(a) 「破損事故」とは電気工作物が変形、損傷若しくは破壊、火災又は絶縁劣化若

しくは絶縁破壊が原因で当該電気工作物の機能が低下又は喪失したことによ

り、直ちに、その運転が停止し、若しくは運転を停止しなければならなくなる

こと又はその使用が不可能となり、若しくはその使用を中止することをいう。

(b) 「主要電気工作物の損壊事故」とは、主要電気工作物がその損傷又は破壊によ

4 MEMRは商業運転開始に先立つ調査は省令で義務付けられているものの、「電気関係報告規則」に相当する省令は無い。

5 - 31 ファイナルレポート

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インドネシア国ジャワ・バリ地域発電設備運用改善計画調査

り機能を著しく低下し、又は喪失することをいう。

(c) 「供給支障事故」とは、電気工作物の故障、損傷、破壊等により電気の使用者

に対し、電気の供給が停止し、又は電気の使用を緊急に制限することをいう。

ただし、電路が自動的に再閉路されることにより電気の供給の停止が終了した

場合を除く。

2) 事故報告(第 3 条 2 項)

(a) 電気事業者は次の表に掲げる事故が発生した時は、それぞれ同表の報告先の欄

に掲げる者に報告しなければならない。

Table 5.4-1 Regulated Electricity related Accident Report 事 故 報告先

1 感電又は破損事故若しくは電気工作物の誤操作若しくは電気工作物を操作しないことにより人が死傷し

た事故(死亡又は病院若しくは診療所に治療のため入院した場合に限る。) 所轄経済産業

局長

2 電気火災事故(工作物にあっては、その半焼以上の場合に限る。ただし、前号及び次号から第 5 号までに

掲げるものを除く。) 所轄経済産業

局長

3 破損事故又は電気工作物の誤操作若しくは電気工作物を操作しないことにより、公共の財産に被害を与

え、道路、公園、学校その他の公共の用に供する施設若しくは工作物の使用を不可能させた事故又は社会

的に影響を及ぼした事故(前 2 号に掲げるものを除く。)

所轄経済産業

局長

4 次に掲げるものに属する主要電気工作物の破損事故(第 1 号、前号及び第 8 号から第 10 までに掲げるも

のを除く。) 1) 出力 90 万キロワット未満の水力発電所 2) 火力発電所における汽力若しくは汽力を含む 2 以上の原動機を組み合わせたもの、出力 1,000 キロワ

ット以上ガスタービン又は出力 1 万キロワット以上の内燃機関を原動力とする発電設備 3) 火力発電所における汽力又は汽力を含む 2 以上の原動力を組み合わせたものを原動力とする発電設備

であって、出力 1,000 キロワット未満のもの(ボイラーに係るものを除く。) 4) 燃料電池発電所/5) 太陽電池発電所/6) 風力発電所 (省略) 7) 電圧 17 万ボルト以上 30 万ボルト未満の変電所 8) 電圧 17 万ボルト以上 30 万ボルト未満の送電線路 9) (省略)

所轄経済産業

局長

5 次に掲げるものに属する主要電気工作物の破損事故(第 1 号、第 3 号、及び第 8 号から第 10 条までに掲

げるものを除く。) 1) 出力 90 万キロワット以上の水力発電所 2) 電圧 30 万ボルト以上の変電所又は容量 30 万キロボルトアンペア以上若しくは出力 30 万キロワット以

上の周波数変換機若しくは出力 10 万キロワット以上の整流機器を設置する変電所 3) 電圧 30 万ボルト(直流にあっては電圧 17 万ボルト)以上の送電線路

経済産業大臣

6 供給支障電力が 7,000 キロワット以上 7 万キロワット未満の供給支障事故であって、その支障時間が 1 時

間以上のもの、又は供給支障電力が 7 万キロワット以上 10 万キロワット未満の供給支障事故であって、

その支障時間が 10 分以上のもの(第 3 号及び第 8 号に掲げるものを除く。)

所轄経済産業

局長

7 供給支障電力が 10 万キロワット以上の供給支障事故であって、その支障時間が 10 分以上のもの(第 3号及び第 9 号に掲げるものを除く。)

経済産業大臣

8 破損事故又は電気工作物の誤操作若しくは電気工作物を操作しないことにより他の電気事業者に供給支

障電力が 7 千キロワット以上 7 万キロワット未満の供給支障を発生させた事故であって、その支障時間が

1 時間以上のもの、又は供給支障電力が 7 万キロワット以上 10 万キロワット未満の供給支障を発生させ

た事故であって、その支障時間が 10 分以上のもの(第 3 号に掲げるものを除く。)

所轄経済産業

局長

9 破損事故又は電気工作物の誤操作若しくは電気工作物を操作しないことにより他の電気事業者に供給支

障電力が 10万キロワット以上の供給支障を発生させた事故であって、その支障時間が10分以上のもの(第

3 号に掲げるものを除く。)

経済産業大臣

10 省 略

11 ダムによって貯留された流水が当該ダムの洪水吐から異常に放流された事故(第 3 号に掲げるものを除

く。) 所轄経済産業

局長

ファイナルレポート 5 - 32

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インドネシア国ジャワ・バリ地域発電設備運用改善計画調査

(b) 前項の規定による報告は、事故の発生を知った時から 48 時間以内可能な限り

速やかに事故の発生の日時及び場所、事故が発生した電気工作物並びに事故の

概要について、電話等の方法により行うとともに、事故の発生を知った日から

起算して 30 日以内に様式第 11 の報告書を提出して行わなければならない。た

だし前項の表第 4 号 7)若しくは 8)若しくは第 5 号 2)若しくは 3)に掲げるもの

のうち当該事故の原因が自然現象であるものについては、様式第 11 の報告書

の提出を要しない。 ......................................................................... (第 3 条 3 項)

(c) 様式第 11 ........................................................................................... (第 3 条関係)

電気事故報告

1. 件 名: 2. 報告事業者

1) 事業者名(電気工作物の設置者) 2) 住 所

3. 発生日時 4. 事故発生の電気工作物(設置場所 使用電圧) 5. 状 況 6. 原 因 7. 被害状況

1) 死 傷 : 有 ・ 無 内 容 : 2) 火 災 : 有 ・ 無 内 容 : 3) 供給支障 : 有(供給支障電力 供給支障時間) ・ 無 内 容 : 4) そ の 他 : (上記以外の他に及ぼした傷害) 内 容 :

8. 復旧日時 9. 防止対策 10. 主任技術者の氏名及び所属 11. 電気工作物の設置者の確認 : 有・無

日本における法令の紹介から、日本における電気事業者と監督官庁 (METI) の間に

は以下の図に示す関係が描かれる。

5 - 33 ファイナルレポート

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インドネシア国ジャワ・バリ地域発電設備運用改善計画調査

Power Utility Companies METI

Operation and Maintenance

Establishment of Technical Standard

Establishment of Safety Rule

Establishment of Qualification System

Selection of Qualified Chief Engineer

Collection of any Data and Information

Submission of Accident Report

Issuance of Business Improvement Order, if any

Power Utility Companies

METI Execution of necessary

countermeasures

Figure 5.4-1 Relationship between Power Utility Companies and METI in Japan

5.4.2. 日本における他の関係規則と主任技術者

発電所を運転するにあたっては 5.4.1 章に掲げた規則以外に多くの規則がある。以下の

表は上記の 5.4.1 章を含めて関西電力のある火力発電所における主要な関係法規と求め

られる資格を示す。

関係法規 必要な資格

電気事業法第 43 条 1 項 第 1 種電気主任技術者

電気事業法第 43 条 1 項 第1種ボイラー・タービン主任技術者

エネルギーの使用の合理化に関する法律第 7 条 1 項 エネルギー管理士(熱)

エネルギーの使用の合理化に関する法律第 7 条 1 項 エネルギー管理士(電気)

特定工場における公害防止組織の整備に関する法律第 3 条及び第 6 条 資格不要

特定工場における公害防止組織の整備に関する法律第 3 条及び第 6 条 公害防止管理者

廃棄物の処理及び清掃に関する法律第 12 条の2第 6 項 特別管理産業廃棄物管理責任者

浄化槽法第 10 条の 2 第 3 項 資格不要

労働安全衛生法第 11 条第 1 項 資格不要

労働安全衛生法第 12 条第 1 項 第1種衛生管理者

労働安全衛生法第 14 条 特定化学物質等作業主任者

消防法第 8 条第 1 項 防火管理者

消防法第 12 条第 7 項 資格不要

ファイナルレポート 5 - 34

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関係法規 必要な資格

消防法第 13 条第 1 項 甲種又は乙種危険物取扱者

消防法第 14 条 資格不要

防災法第 17 条第 1 項 資格不要

高圧ガス保安法第 27 条の 2 第 3 項及び第 33 条 高圧ガス製造保安責任者

高圧ガス保安法第 28 条第 2 項 資格不要

港則法第 23 条 資格不要

港則法第 5 条 資格不要

道路交通法第 74 条の2第 1 項 資格不要

道路運搬車両法第 50、52 条 資格不要

水道法第 19 条 水道技術管理者講習受講者

5 - 35 ファイナルレポート

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インドネシア国ジャワ・バリ地域発電設備運用改善計画調査

5.5. 火力発電所設備維持管理に関するマネジメント計画及びガイドライン 5.5.1. 運転・維持管理に関する体制及び規則

ジャワ・バリ地域全体における短期・中期の電力需要に対応するための運転・維持管理に

関する体制及び規則については、以下に掲げる要求事項を満たすことを条件に提言する。

(1) 組織について

A. 発電所の運転・維持管理のための体制(以下「組織」という)は、次に掲げる部署(従

業員を含む、以下同じ)の責任、権限、相互関係を明確にし、文書化していること。 ① 運転、保全及び安全管理に関する業務を管理する部署 ② 運転、保全及び安全管理に関する業務を実施する部署 ③ 運転、保全及び安全管理に関する業務の妥当性を検証する部署

(備考) ここで「安全管理」とは、ボイラー・タービン等の改善等の使用条件の変更に際して、

事前に安全性を評価し、及び、社内外のトラブル事故等に係る情報を運転・維持管理

に活用することをいう。

B. 特に次に掲げる業務に係る判断及び権限を必要とする部署における責任、権限、相

互関係を明確にし、文書化し、及び実施していること。 ① 運転、保全及び安全管理に関する全ての不適合を予防する行動 ② 運転、保全及び安全管理に関する全ての問題の明確化と、その記録 ③ 所定の経路を通じた解決策の開始、勧告又は提供 ④ 解決策の実施の検証 ⑤ 不具合又は不満足な状態が是正されるまでの管理

(2) 運転管理及び日常点検基準について

A. ボイラー・タービン等の Table 5.5-1 運転管理について、運転管理項目を定めた適正

な基準を定め、その基準に基づいて実施し、結果を記録し、保管していること。

B. ボイラー等・タービンの Table 5.5-2 日常点検の設備について、点検箇所、点検項目、

点検方法、適否の基準等を定めた適正な基準を定め、その基準に基づいて実施し、

結果を記録し、保管していること。

(3) 緊急時の対応について

A. ボイラー・タービン等の異常及び事故の対処方法に関する基準を定めていること。 B. 緊急時の連絡の体制を定めていること。

(4) 保全基準について

A. 補修等を決定する基準を定めていること。

ファイナルレポート 5 - 36

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B. 補修等に係る内容等の記録を管理し、保管していること。

(5) 文書管理について

A. 運転・保全及び安全管理に関する文書管理の手順を文書化し、維持していること。 (備考)文書は、ハードコピー、電子的媒体など、どのような媒体を用いてもよい。

B. 発行前に権限のある部署が文書の適切性を審査し、承認していること。

C. 新の版を明確にするために、台帳又は同様の管理手順を定めていること。

D. 当該手順は、無効文書又は廃止文書の使用を防ぐため、常時利用できること。

E. 次に掲げる管理を確実に実施していること。 ① 運転、保全及び安全管理を行う全ての部署で文書の適切な版が利用できること ② 無効又は廃止文書は、全ての発行部門及び使用部門から速やかに撤去するか、

又は、意図に反する使用を防ぐ手段を講じていること ③ 知識保存の目的のため保持する廃止文書は、適切な識別がされていること。

F. 変更の確認、承認は、特に指示しないかぎり、文書の作成を 初に行ったのと同一

の組織が行っていること。

G. 特に指示のある場合は指示の手順が明確にされていること。

H. 特に指示された組織又は部署は、確認及び承認の根拠となる裏付け情報を利用でき

ること。

I. 確認及び変更の根拠となる裏付け情報を確認及び承認を行った組織又は部署以外

の関係者も利用できること。

J. 変更の内容をその文書中、又は、適切な添付文書で明確にしていること。

(6) 教育・訓練について

A. 運転、保全及び安全管理に関する業務に従事するすべての従業員に必要な教育・訓

練の内容等を明確にし、文書化し、維持し、実施し及びその記録を保管しているこ

と。

B. 特に定められた業務に従事する従業員について、次に掲げる資格認定基準を文書化

し、維持し、実施していること。 ① 必要に応じて適切な教育・訓練に基づいた資格認定 ② 経験に基づいた資格認定

(7) 記録の管理について

A. 運転、保全及び安全管理に係る次に掲げる手順を文書化し、維持していること。 ① 記録の識別 ② 記録の収集

5 - 37 ファイナルレポート

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③ 記録の見出し付け ④ 記録の利用 ⑤ 記録のファイリング ⑥ 記録の保管、維持 ⑦ 記録の廃棄

B. 記録が規定要求事項に対する適合性及び管理の効果的な運用を実証するために維

持されていること。

C. 記録が読みやすいこと。

D. 記録が、劣化、損傷、紛失を防ぐのに適した環境下で保管されていること。

E. 記録が、容易に検索できるよう、保管、維持されていること。

F. 記録の保管期間を定め、記録されていること。 (備考)記録は、ハードコピー、電子的媒体等、どのような媒体でもよい

(8) 検査・測定装置の管理について

1) 一般事項

A. 使用する検査、測定及び試験装置(試験用ソフトウェアを含む)を管理、校正、

維持する手順を文書化し、維持していること。

B. 検査、測定及び試験装置の使用に当たって測定の誤差を認識し、必要な測定能

力を満足していること。

C. 試験用ソフトウェア又は試験用ハードウェアのような基準器を検査に適した方

法として用いる場合に、次に掲げる検証能力を証明すること。 ① 使用前に点検していること ② 規定の期間毎に再点検していること ③ 点検の範囲及び頻度は、定められていること ④ 管理の記録を保管していること

2) 管理の手順について

A. 適切な検査、測定及び試験装置を選定し、測定項目及び必要精度を明確にする

こと。

B. 品質に影響を与える測定機器を含む全ての検査、測定及び試験装置について識

別 し、校正について国家標準とのトレーサビリティを証明し、国家標準がない

場合の校正基準は文書化し、及び規定の間隔若しくは使用前に校正し、調整し

ていること。

C. 検査、測定及び試験装置の校正プロセスは次に掲げる項目を明確にしていること。 ① 装置の形式 ② 固有の識別番号 ③ 配置場所

ファイナルレポート 5 - 38

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④ 点検頻度 ⑤ 点検方法 ⑥ 判定基準 ⑦ 結果が不満足な場合の処置方法

D. 適切な標識又は承認された識別記録によって、校正状態を表示し、検査、測定

及び試験装置を識別していること。

E. 検査、測定及び試験装置の校正記録を保管していること。

F. 検査、測定及び試験装置の校正結果が不満足だった場合、過去の検査・試験の

結果の妥当性を評価し、文書化していること。

G. 校正、検査、測定及び試験の実施には、適切な環境条件を確保していること。

H. 検査、測定及び試験装置の取扱い、保存及び保管には、精度及び使用適合性の

維持を確実にしていること。

I. 試験用ソフトウェア及びハードウェアを含め、検査、測定及び試験装置には、

校正 (2)の設定を無効にするような調整を防ぐ保護手段を講じていること。

(9) 是正処置について

1) 一般事項

A. 是正処理を実施する手順を文書化し、維持していること。

B. 実際に発生した不適合又は潜在的な不適合の原因を除去するために取られる是

正処置について次に掲げる項目を満足すること。 ① 問題の大きさに適切な程度であること ② 遭遇するリスクに釣り合う程度であること ③ 是正処置及び予防処置に伴い、関係する手順書の変更を実施し、記録してい

ること

2) 是正の手順について

A. 是正処理の手順に下記が含まれていること。 ① 不適合箇所報告書の効果的な取扱い ② 設備、工程及び管理に関する不適合原因の調査を実施し、結果の記録 ③ 不適合の原因除去に必要な是正処置の決定 ④ 是正処置が効果的であることを確実にする管理

5.5.2. 既設火力発電設備の運転・維持管理に関するマネジメント計画及びガイドライン

(1) 運転管理( 低限必要な取り組み)

次の項目について、運転管理基準を定め適切な運転管理を行う。

5 - 39 ファイナルレポート

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Table 5.5-1 Items for Operation Management 設 備 運 転 管 理 項 目 注

• 過熱器及び再熱器の出口における蒸気の圧力及び温度 1

• ボイラーの蒸発量又は給水流量

• ドラム内の水位 2

• ドラム内の圧力 2

• ボイラー水及び給水の水質

• 使用燃料

• 過熱器及び再熱器のスプレー水量又はスプレー前後の蒸気温度 2

ボ イ ラ ー

• ボイラーの効率 3

• 発電機の出力

• 主蒸気止め弁の前及び再熱蒸気止め弁の前の蒸気の圧力及び温度

• 蒸気タービンの速度 2

• 蒸気タービンの排気圧力

• 蒸気タービンの抽気の圧力及び温度 2

• 蒸気タービンの軸受の入口における油圧 2

• 蒸気タービンの軸受温度又は軸受の出口における油温 2

• 潤滑油の性状

• 蒸気タービンの制御油圧 2

• 蒸気加減弁の開度 2

• 蒸気タービンの振動 2

• 蒸気タービンの効率 3

蒸気タービン

• 車軸、車室の伸び及び伸び差(車室が2個以上あるものに限る) 2

• 発電機の出力 4

• ガスタービンの速度 5

• ガスタービンの空気圧縮機の吐出圧力 2

• ガスタービンの入口におけるガスの温度 6

• ガスタービンの軸受の入口における油圧 2

• ガスタービンの軸受温度又は軸受の出口における油温 2

• 潤滑油の性状

• ガスタービンの制御流体の圧力 2

• ガスタービンの振動 2

• ガスタービンの空気圧縮機の入口における空気温度 7

• 使用燃料

ガスタービン

• ガスタービンの効率 8 注 1; ユニット方式の場合は、主蒸気止め弁の前及び再熱蒸気止め弁の前における蒸気の圧力及び温度でもよい。 注 2; 必ずしも記録を要しない。ただし、運転管理基準に照らして異常のある場合は記録しておくこと。 注 3; ユニット方式の場合は、ユニット総合効率でもよい。 注 4; 発電電力量でもよい。 注 5; フリータービン式ガスタービンにあっては、ガス発生機の速度及び出力タービンの速度とする。また、必ずしも記

録を要しないが、運転管理基準に照らして異常のある場合は記録しておくこと。 注 6; ガスタービンの出口におけるガスの温度でもよい。 注 7; 屋内設置のものにあっては、発電装置の吸気口における空気温度、屋外設置のものにあっては、大気温度でもよい。

また、必ずしも記録を要しないが、運転管理基準に照らして異常のある場合は記録しておくこと。 注 8; 総合効率でもよい。

ファイナルレポート 5 - 40

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(2) 日常点検( 低限必要な取組み)

次の項目について、日常における巡視点検方法を定め、状況を確認する。なお、巡視点

検頻度は異常の早期発見を勘案し、1 日に 1 回以上とする。

Table 5.5-2 Routine Inspection Items 設 備 日 常 管 理 項 目

ボイラー安全弁 • シート部からの蒸気の漏洩 • ハンガー類の異常 • 配管からの蒸気、ガスの漏洩 主要配管 • 配管の振動 • 燃焼状態

ボイラの火炉 • 火炉内部の異常 • ボイラ本体、チューブの損傷

HRSG • ドラム二色水面の水位、蒸気漏洩、ガラスの損傷 • 振動、異音 • 車室からの蒸気の漏洩 • ボルト、ナット類のゆるみ

蒸気タービン

• 軸受の振動、異音、過熱及び排油の状態 • 蒸気の漏洩

主要熱交換器等 • 水位 • 振動、異音、過熱その他の異常 • ガス、潤滑油等の漏洩 • 架台、支持金具類の異常及びボルト、ナット類のゆるみ

ガスタービン

• 軸受の振動、異音、過熱及び排油の状態 • 振動、異音その他の異常 • 潤滑油の漏洩 • 架台、支持金具類の異常及びボルト、ナット類のゆるみ

ガスタービン空気圧縮機

• 軸受の振動、異音、過熱及び排油の状態 • 振動、異音、過熱、異臭 • 水素ガス漏洩 • 軸受の排油の油量、油温、泡立ちの状態 • CT ブッシング部、相分離母線の振動、漏水警報装置の洩れ

発電機・励磁機

• ブラシの摩耗状態、振動、リード線の過熱、接続状態 • 本体の振動、異音、温度上昇 • グランド部からの蒸気、ガスの漏洩

主要回転機 蒸気タービン、ガスタービン、

ガスタービン空気圧縮機を除

く。 • 軸受の油温、油面、油の漏洩

• 弁体の振動、異音 • 弁のグランド部、シート部からの蒸気、ガス等の漏洩 主要弁 • 作動源の異常 • 過熱、異臭、うなり及び変色の状態

主要変圧器 • コンサベータ油面、ブリーザシリカゲル変色の状態 • 操作盤・監視盤・配開装置の表示灯の異常、警報表示灯の点灯状態 • 配線の過熱、異臭、変色及び端子の締付け状態 電気設備 • 動力変圧器、照明変圧器等の変圧器には振動、異音、異臭 • 指示計・記録計等の計器は損傷状態及び指示値と標準値を比較し • 相違の有無 • 記録計のインク切れ、チャート送りの状態

計器類

• 発信器等の指示値・検出部もれ

5 - 41 ファイナルレポート

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(3) 定期点検( 低限必要な取り組み)

① 開放又は分解による機器の点検 ② 機器の作動・調整試験 ③ 記録の点検 を各機器に応じて適切に組み合わせて実施する。

(4) 火力業務のガイドラインとマニュアルの整備( 低限必要な取り組み)

火力発電所の保安ならびに品質を確保し、火力発電所の運営業務を円滑に遂行するため

に、次のようなガイドライン及びマニュアルの整備、ブラッシュアップに取り組むこと

を提言する。

1) 火力運営業務に係わるガイドラインの整備(IP/PJB 本社) 項 目 ガイドライン

• 火力発電所機器名称に関する要領指針 • 事故等取扱要領指針 • 火力発電所設備コードを定める要領指針 • 作業伝票取扱に関する要領指針

1. 運転・保全共通標準

• 産業廃棄物処理に関する要領指針 • 機器操作票の作成及び運用に関する要領指針 • 火力発電所保安装置運用要領指針 • 熱効率管理に関する要領指針 • ばい煙管理に関する要領指針 • 潤滑油等管理に関する要領指針 • 発電実績統計処理に関する要領指針 • 化学薬品取扱に関する要領指針 • 保安日誌作成に関する要領指針 • 作業停電手続き要領指針

2. 運転標準 (計画、環境化学含む)

• 水質管理に関する要領指針

2) 定期検査の品質管理業務に係わるガイドラインの整備(IP/PJB 本社) 項 目 ガイドライン

• 工事の安全性事前評価要領指針 • 火力設備の保全基準に関する要領指針 • 火力発電所予備品の取扱を定める要領指針 • 計測制御装置管理に関する要領指針 • 仕様書作成に関する要領指針 • 火力検査実施に関する要領指針 • 溶接検査実施に関する要領指針 • 不活性ガス等の識別に関する要領指針 • 火力発電所保護継電装置整定に関する要領指針 • 放射性同位元素の管理に関する要領指針 • 火力発電所配管スケルトン図管理要領指針

1. 保全基準

• 環境・化学関係運用管理に関する要領指針

ファイナルレポート 5 - 42

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3) 発電所業務運営に係わるマニュアルの整備(各発電所) 項 目 マニュアル

• 運転要員育成所則 • 運転業務を定める所則 • 運転操作管理所則 • 事故時操作管理所則 • 巡回点検管理所則 • 定期試験管理所則 • 警報発信時の処置に関する所則

1. 運転課制定分

• 弁施錠管理所則 • 環境保全管理所則 • 復水器細管管理所則 • 高圧ガス保安教育計画所則

2. エンジニアリング (環境・化学含む)課制定分

• 高圧ガス容器管理所則 • 保全要員の巡回点検基準を定める所則 • 発電所設備の保全基準に関する所則 • 盤内作業の取扱いに関する所則 • 計測制御装置定期検査工事に関する所則 • 制御回路の変更に伴う運用管理方法を定める所則

3. 保全課制定分

• 予算計画、執行管理に関する所則 5.5.3 人材育成計画 ━ 強い火力を構築するための人材育成方策の見直し ━

「多様化に対応した育成パターンの設定」 と 「個人のキャリア記録」による適材適所の

要員配置を可能とする仕組みの構築を提言する。

(1) 火力発電事業の共通基盤業務である「発電業務」と「保全業務」の基礎を全火力要員に修

得させる

• その際、考え方としては、共通基礎として標準目標5年間(発電3,保全2年)で

の早期育成を図る。

• 共通基礎終了後は、発電/保全/エンジニアリング(環境・化学を含む)の専門技

術者を育成すべく、職能毎基礎を経て、応用段階者としての育成を行う。

• 応用段階においては応用Ⅰと応用Ⅱに分類し、育成管理を行う。 なお、応用Ⅰ終了後は、他発電所とのローテーションを図ることで多能化 (O&M) を

推進する。

(2) 多様化した事業所の役割に応じた育成パターンを策定する

• 上記育成のパターンに照らして、個人のキャリア実績(業務履歴)を経年記録する

ことで、適材適所の要員配置を可能とする仕組みを整備する。

5 - 43 ファイナルレポート

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< 強い火力を構築するための各職能毎の人材育成方策 > (運転要員)

応 用 育 成 者 基 礎 育 成 者 (修得履歴の記録・管理) 応用Ⅰ(修得履歴の記録・管理) 応用Ⅱ(修得履歴の記録)

火力技術テキストの記載事項 +

業務遂行に必要な技能 (点検・操作・監視・制御等)

業務遂行に必要な技能 (操作・監視・制御等)

• 知識面の修得把握 : 筆記試験

• 技術面の修得把握 : シミュレータ上級Ⅰ

業務に必要な技能 (操作・監視・制御等)

(保全要員) 基 礎 育 成 者 応 用 育 成 者 (修得履歴の記録・管理) 応用Ⅰ(修得履歴の記録・管理)応用Ⅱ(修得履歴の記録)

火力技術テキストの記載事項 設備構造,原理,特性等に

関する技術知識 +

業務遂行着眼点スキル

工事計画・実施,トラブル 対応等一連の保修業務

• 着眼点の修得把握 : 項目毎の口答試験

業務遂行着眼点スキル

工事計画・実施,トラブル 対応等一連の保修業務

業務遂行着眼点スキル 内容を詳細化

(エンジニアリング,環境・化学要員)

応 用 育 成 者 基 礎 育 成 者 (修得履歴の記録・管理) 応用Ⅰ(修得履歴の記録・管理) 応用Ⅱ(修得履歴の記録)

火力技術テキストの記載事項

(業務遂行に必要な技術知識) +

業務遂行着眼点スキル

ユニット性能改善,環境

━ 改善業務,給水,油管理等

業務遂行着眼点スキル

ファイナルレポート 5 - 44

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< 育成パスのイメージ >

共通基礎育成 パス(5年) ・運転3年 巡回:1.5年 制御:1.5年 ・保全:2 年

応用育成-Ⅰ

(4 年)

保全要員基礎段階育成 (3 年)

エンジニアリング,環境・ 化学要員基礎段階育成

(1 ~ 2 年)

応用育成-Ⅰ

(2 ~ 4 年)

応用育成-Ⅱ (応用育成-Ⅰ終了 ~役職就任まで)

応用育成-Ⅱ (応用育成-Ⅰ終了 ~役職就任まで)

応用育成-Ⅱ 基礎段階スキルをベース

として~役職就任まで

(運転要員)

(保全要員)

(エンジニアリング,環境・化学要員)

専 門 職

専 門 職

専 門 職

5.5.4. 安全管理

安全管理の徹底を図り、労働災害“ゼロ”を目指すための対策として、次のような取り

組みをリコメンドする。

(1) 安全管理体制の点検ならびに再構築

1) 安全関係者の計画的育成 安全担当者のレベルアップに対する指導・支援として請負会社を含めた安全担当者

の研修会の実施

2) 他発電所の安全管理活動のベンチマーキングの反映 各発電所の安全担当研修会を開催し、その時の指導事項を水平展開し、所員ならび

に請負会社への災害防止等周知の徹底

(2) 現場主体の安全文化の展開による安全文化の再構築

1) OHSAS 18001 の更なる進展 危険有害要因の特定と対策実施を工事計画に反映させた取り組みの強化として、 ① 危険有害要因特定シートの記載事項を日々の作業指示書に反映する。 ② 安全作業手順の実施状況確認と内容充実の指導を行う。

2) 各種安全対策の確実な実践 所員ならびにメーカ・請負会社に対し、定期的な研修会で、安全意識の向上を図る。

3) 変化に対応する危険予知、TBM (Tool Box Meeting) 等の実践による災害防止 自問自答カード等による危険予知の指導教育・研修を定期的に行う。

5 - 45 ファイナルレポート

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5.6. 水力発電所設備運転維持管理に関するマネジメント計画およびガイドライン

5.6.1. 運転に関する事項

設備運転に関する業務は主として①機器の運転停止操作、②機器の監視、③日常巡視点

検、④点検および修理作業準備、復旧のための開閉器、バルブ等の開閉操作、ロック操

作である。 ① 機器の操作にあたっては、誤操作防止が も大切でありこのためには主機の運転停

止や主要開閉機器の投入開放のような主要機器の操作は chief engineer あるいは

senior engineer が操作内容を確認しながら1指令1操作の形で運転要員に操作させ

ることが基本となる。 また、バルブの開閉や補機の操作等についてはあらかじめ操作手順を操作票に記入

し chief engineer あるいは senior engineerが承認を与えた場合のみ操作手順に従って

操作が出来るといったルールも大切と考える。 ② 機器の監視については、常に監視盤の計器類に注意を払い万一異常発生時に即応で

きるよう日頃からの訓練が大切である。 ③ 日常巡視点検については、単に機器を見回るのではなく五感を働かせ注意深く巡視

するとともに、指示計器類については正常範囲或いは標準値を表示するとか巡視点

検記録票に指示計器類の基準値を記入する等して異常を発見し易くすることも重

要である。 また、点検漏れの防止やより合理的な点検のための巡視順路を示すことも大切であ

る。 ④ 機器の点検作業或いは修理作業開始にあたって保守要員が安全に作業を実施する

ために、また、作業中に電力系統へ悪影響を及ぼさないよう誤りのない機器のロック

作業等が大切で、このためあらかじめ作成し承認を得た操作票に基づきロック作業等

を実施することが大切である。また、復旧時も同様である。 操作ミスを防ぐためにも機器の称呼番号板、各補機の名称板、バルブ番号札、バルブ

開閉表示札、配管への流れ方向表示、流体種類識別等についてしっかり表示してお

くことが望ましい。 以下に運転チームの主要な役割および整備が望ましい規則類を示す。

(1) 運転 staff の役割

- 機器の運転停止操作、開閉設備の投入開放操作、バルブ類の開閉操作、保護装置の

ロックおよび解除

- 保守点検のための作業範囲の設定

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- 機器操作票および安全作業票の作成

- 機器の日常巡視点検の実施

- 発電所運転実績の記録

- 機器管理記録の作成(運転時間、発生 kWh、計画停止時間、事故停止時間、所内消

費電力量、温度関係長期管理記録他)

- 機器の運転状態監視

- 事故、障害速報作成

(2) 運転 chief の役割

- 機器の運転停止操作の staff への指示 および操作状況確認

- 給電指令所との連絡調整、維持管理(保守)部門との連絡調整

- 機器操作票および安全作業票の内容承認

- 機器巡視点検記録の確認、照査

- 発電所運転実績記録の確認、照査

- 運転日誌記録

- 機器の運転状態監視

(3) 業務遂行に必要な規則類

- 機器操作規則;機器の操作にあたっての遵守事項、操作票、安全作業票の策定方針、

関係帳票類の様式決定、運転日誌の記載方針

- 日常巡視点検規則;巡視点検時に特に注意して点検すべきポイント、巡視点検項目、

順序の標準、巡視点検票の様式決定

- 運転管理記録規則;管理すべきデータの種類、管理方針、記録様式の決定 5.6.2. 維持管理に関する事項

維持管理に関する業務は主として①週点検、月点検、年次点検等の定期点検工程および

項目計画の策定、実行、結果の評価および次回点検計画への反映、②事故障害発生時の

復旧、原因追及、再発防止策の策定、③機器保護システムの整定および管理、④図面、

設計計算書、各報告書等関係資料の整備保管等がある。

① 点検工程および項目計画にあたっては機器の重要度を十分勘案し項目毎にその頻

度を決定することが重要である。また、点検票には基準値を記入する等して良否を

判断しやすくすることも重要と考える。 年次点検 (AI、GI) については比較的大規模な点検となるので、過去の点検実績等

を十分吟味し、過去において常に良好と判断されている項目は点検頻度を延長する

等綿密な計画が大切と考える。 特に MO については大規模な点検であり、電力系統への影響や経済的な影響も大き

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いので単に決められた運転時間に到達したからといった理由で MO を実施するこ

とは好ましくない。真に必要な時期を検討し実施することが大切と考える。 定期点検報告書は後年度の点検時のために、特に修理した部品等の修理内容詳細を

記入することおよび点検後の試験結果の詳細を記入することが大切である。 ② 事故障害発生時には迅速な復旧は当然のことであるが、その原因をしっかりとつき

とめることが大切であり、再発防止に努める必要がある。 ③ 機器の保護システムについてはその整定値は系統の変更や、機器の運転状態の変化

に応じて適宜見直す必要がありそのための整定指針をしっかり定めておくことが

大切と考える。 ④ 機器図面類、設計計算書、取扱説明書、建設時の据付試験記録、定期点検記録等の

図書類は機器のより良い維持管理に不可欠のものであり散逸しないようしっかり

管理しておく必要がある。 以下に保守 team の主要な役割および整備が望ましい規則類を示す。

(1) 保守要員の役割

- 週点検、月点検、年次点検等定期点検の実施

- 同上点検計画 (schedule) の策定

- 同上点検項目内容の策定

- 同上点検結果の評価

- 点検後の試験計画、実施、評価

- 機器正常範囲の検討

- 保護リレーの整定値の検討

- 事故、障害発生時の原因調査、復旧および詳細報告書の作成

- 定期点検報告書の作成

- 図面類、設計計算書類、機器取扱説明書類、営業運転前試験報告書類、定期点検報

告書類等の図書類の整備保管

(2) 保守責任者の役割

- 点検計画 (schedule) の照査、承認

- 点検内容項目の照査、承認

- 点検結果評価の照査、承認

- 点検後試験結果の照査、承認

- 機器正常範囲の検討結果の照査、承認

- 保護リレー整定計算結果の照査、承認

ファイナルレポート 5 - 48

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- 作業実施の指示

- 事故、障害発生時の原因調査、復旧および詳細報告書の照査、承認

- 定期点検報告書の照査、承認

(3) 業務遂行に必要な規則類

- 保護リレー整定規則

- 定期点検実施規則;機器および構成部品毎の標準点検周期策定、点検内容、項目の

策定、点検票様式策定 5.6.3. 教育に関する事項

(1) 一般事項

発電所職員への教育は基本的には OJT (on the job training)が一番効果的と考えられる。 直属の上司が部下に対して仕事を通じて教育することは非常に重要である。 その他、要員相互の相互研修も大切で、staff 毎にテーマを与え、勉強の結果を他の要員

に紹介することにより自己研鑽を積ませることが相互の skill up に多いに役立つ。 また、運転要員と保守要員の間の定期的 job rotation も skill up に有効な手段である。 職員の経験や年齢構成もギャップを生じないよう長期的視野にたって日頃から注意を

払い、人事配置を考えておくことが重要である。 安全教育についても一つの重要な要素であり、人身事故、設備事故の絶滅に向け定期的

な教育が大切である。 事故想定訓練については、あらゆる設備事故や人身事故を想定し日頃からこれらに対応

できるよう訓練を積むことが大切と考える。

(2) 社員教育に関する方針および体系の例

現状における水力関係社員の教育育成に関する方針および体系について紹介する。(本

方針は工務部門で全社共通である…電力システム部門技術要員育成要綱)

1) 達成すべき技術力

運転; ・ 電力系統の安定かつ経済的な総合運用を実施するための技術力 ・ 系統、設備状態のあらゆる事象に対応した復旧方針の立案と迅速かつ的

確な処置を実施するための技術力

保全; ・ 設備の異常および劣化状況を判断し、健全かつ合理的な維持管理計画の

策定ならびに実施するための技術力 ・ 設備状態のあらゆる事象に対応した設備復旧方針の立案と迅速かつ適

切な処置を実施するための技術力 ・ 事故復旧および日常の保全技術として、水車発電機、調速機の分解点検、

補修作業、内部診断、社内試験および励磁装置、配電盤の点検、調整、

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社内試験等に関する技術力

工事; ・ 経済的な工事計画の立案と的確な工事を実施するための技術力 ・ 将来性、信頼性、安全性かつ経済性を考慮した新工法、新技術の開発と

採用方針の立案を実施するための技術力

2) 要員のスキルレベルの段階管理

要員の技術レベルは下表の通り 5 段階に分けられる。 また、達成すべき技術レベルについて詳細な項目が決められている(運転関係で 6項目、保全関係で 17 項目)。

技術レベル段階と達成すべき内容

技術レベル 達成レベル

段階 1(基礎) 簡易な定型業務が自ら出来、その他の定型業務も指導のもとに出来るスキルを有する。

段階 2(応用) 定型業務が自ら出来、かつ非定型業務がポイント指導のもとに出来るスキルを有する。

段階 3(専門) 非定型業務が自ら出来、かつ指導も出来るスキルを有する

段階 4(複合) 専門性が高く、かつ複雑な業務が自ら出来、かつ指導も出来るスキルを有する。

段階 5(究極) あらゆる業務が自ら出来、かつ業務改善と指導も出来るスキルを有する。

3) 要員育成方策

要員の育成方針の体系を下表に示す。(年度ごと) これらの基本方針に基づき毎年要員育成のための具体的方策が策定される。

要員の育成方針の体系

部 門 所 属 長 各 個 人

育成方針

育成目標

P

育成計画

D 育成実施

育成把握

C

分析

A 活用

要員育成年度 基本方針

今年度目標設定

年度研修計画 要員育成計画 自己啓発プラン 作成

研修実施 On the job training 自己啓発プラン 実施

業務スキル習得状

況の確認

スキル習得状況 研修受講結果 把握・分析

職場大スキル習得

状況・把握分析指導

補完

ジョブローテーション

要員育成年度 目標達成

詳細スキル習得状

況の自己評価

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4) 具体的教育内容(全社共通部分)

教育内容については、全社共通で実施すべき内容のものおよび、個々の電力所や発

電所で実施すべき内容のものがあり、各技術レベル毎に教育項目が設定されている。 多くの項目は発電所の特徴に応じ、電力所または発電所大で設定される。 運転・保全に関する技術レベル毎の教育内容を次表に示す。

技術レベル毎の教育内容

段 階 1 段 階 2 段 階 3 段 階 4 段 階 5

水車・発電機補修

水車・発電機補修 (実機OH)

水力AVR, GOV補

修技術

GIS 補修技術

LTC 補修技術

電力所・発電所大個別教育 (特徴に応じた

教育カリキュラ

ムの設定)

電力所・発電所大個別教育

(同左)

電力所・発電所大個別教育 (同左)

電力所・発電所大個別教育

水力・変電作業責任者・当直責任者

(同左)

自己啓発

水力発電所運転

教育の具体的内容例としては次のようなものである。

- 水車・発電機補修教育 水車および発電機に関する基礎知識と技能を直営による分解点検を実施するこ

とにより習得させ、機器構造の修得と補修技術の向上ならびに現場における品

質管理ポイントの修得を図る。 圧油配管系統図、機器図面読解、玉掛け、水力工具の取扱、水力測定機器の取

扱、水車の種類・構造と原理、発電機の種類・構造と原理および冷却方式、軸

受の構造原理と各部温度管理、ランナ、ガイドベーン他ギャップ測定方法、発

電機固定子・回転子絶縁抵抗測定方法、発電機回転子分担電圧測定方法、水車

および発電機分解組立手順・方法(立軸、横軸)、非破壊検査手順、入口弁点検・

試験手順と管理値、調速機点検・試験(静特性試験)手順と管理値

- 水力発電所運転研修 一般水力発電所の運転操作における異常時の異常個所探索とその処置方法を、

模擬訓練設備を用いて繰り返し実習し、運転・保守員の技能向上と水車および

発電機に関する事故復旧の迅速化を図る。 当直および制御所出動者の心得と業務、発電機保護リレーの構成と動作原理、

発電機制御・補機シーケンス読解、技術図面・PCT・トリップ回路図の見方、圧

油配管系統図、事故時の報告とお客様対応、故障表示と故障状況および事故復

旧の基本手順、水車および発電機事故時の復旧方法、軸受の構造原理と各部温

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度管理、水車および発電機保護装置の種類・構造と原理、発電・揚水起動並列

操作(手動並列)

- そ の 他 水力の運転・補修技術に関しては個別の発電所レベルでそれぞれの特徴に応じた

教育計画がたてられ相互研修、OJT 等により技術レベルの向上が図られている。 また、機器の補修技術力向上のため年に全社技能発表会が開催され、同一テー

マで支店単位で機器の補修技術力を競い相互研修が図られている。

5.6.4. 安全に関する事項 安全な作業は全てに優先する事項であって、これらに必要な設備の充実はもとより、安

全に関する規則類の充実および所員への徹底が大切である。 また、不安全作業を防ぐために、運転 staff と保守 staff との緊密な連絡が特に大切と考

える。 安全作業に関しては、感電防止、転落防止、充電部への接近、設備の誤動作による電力

系統への悪影響、緊急事態時の対応方策と言った観点から遵守すべき事項を細かい点ま

で規則として取り決める必要がある。 各設備の安全対策の一例として次のようなものが挙げられる。

① 電気設備点検時の感電防止のための回路接地、開閉機器操作ロック、作業区画の設

定等

② 鉄管内、水車内点検時の内部作業時における誤充水防止のためのバルブロック、入

口弁ロック、ゲートロック、内部作業人員把握等

③ 発電機内部点検時の異物落下、工具類置き忘れ防止のための措置

④ 高所作業時の転落防止等の安全対策

⑤ 機械設備点検時の誤動作防止のためのバルブロック、操作油ロック等

⑥ 制御保護装置点検時の誤動作防止のためのリレーロック、制御電源ロック等

(1) 安全作業等に必要な主要事項(整備すべきもの) - 保安帽、作業服、安全靴、絶縁手袋、絶縁靴 - 安全ネット,命綱,検電器,接地棒,酸素濃度計 - 緊急時の避難誘導 - 非常時の対応および体制表 - 担架、消火設備- 従業員の定期健康診断

(2) 業務遂行に必要な規則類

- 安全作業規則の制定 - 安全設備の定期点検方法の制定

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5.6.5. 運転・保守および安全管理に関する規則類の例

(1) 一般事項

運転・保守および安全管理に関する規則類は全社での基本ルールを定めた規程の元に運

転および保全要綱が定められている。 この要綱をベースに個別の発電所毎に詳細な運転・保守マニュアルが制定されている。 これらの体系を次表に示す。

運転・保守・安全に関する規則類の体系

給電規程 保安規程 ・ ・ ・

職責権限規程 職制規程

(規程)

情報通信保全業務要綱 ・ ・ ・

水力発電所土木設備保全業務要綱

給電・運転業務要綱 水力・変電・制御保全業務要綱

(要綱) 支店別要領類 発電所別運転保守マニュ

アル類 ・ ・ ・

(要領・マニュアル等)

(2) 要綱の記載事項

要綱は部門共通で遵守すべき規則類を取り決めたものであり水力関係の運転保守に関

する要綱の内容の概要は次の通りである。

1) 水力・変電・制御業務保全要綱 総 則 巡視・点検・改修・操作 作業の実施 事故時の処置 安全衛生管理 保全データの管理 地域共生活動 予備品管理 ヒューマンファクター事故災害防止対策

2) 給電運用運転業務要綱

本要綱のうち水力運転に関係する規則は次の通りである。 総 則 一般運用業務 平常時の運用 事故時等の運用 異常気象等時の運用

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3) 運転・保守マニュアル

OM マニュアルの概略記載内容は次表に示す通りである。

Outline described in OM Manual Operation Manual Maintenance Manual Safety Manual

(Law, statute or regulation) /Regulation of noise /Regulation of vibration (Operation) /Power system operation /Water system operation (Monitoring and supervising) /Plant condition monitoring system /Supervising of each equipment (Operation of equipment) /Operation of system /Operation of equipment /Automatic operation /Description of operation procedure sheet /Pointing out and recitation for confirmation /Operation of power supply /Grounding (Countermeasure against trouble) /recovering trouble /recording trouble /Trouble shooting /Simulator training (Prevention of emergency situation) /Abnormal natural phenomena /Lighting struck /Fire fighting

(Law, statute or regulation) (Periodical observation) /Routine observation item and frequency /Routine observation sheet /Management of routine observation dada (Periodical inspection) /Periodical inspection item and frequency/Periodical inspection sheet /Management of periodical inspection data/Long range plan of periodical inspection /Periodical inspection report (Repair) /Cost reduction of inspection or repair work (Management of instrument) /Check item and frequency of instrument /Method of check /Point of calibration test /Record of check or management sheet (Disassemble or assemble sheet) /Description of sheet /Repair report and check sheet / (Maintenance schedule) /Outline of maintenance management system /Report of maintenance /Repair planning /Procedure for trouble shooting /Protection from small animals /Risk management from disaster /Use of transportable equipment /management of spare parts

(Law, statute or regulation) /Works required license (Management system for safety and health) /Role of manager of safety /Role of chief of safety on site (Essential point for safety) /Grounding of electrical circuit /Permission signature for work /Protection and safety tool (Essential point to prevent human damage) /Protection of falling down from height/Operation of crane /Operation of winch /Welding work /Risky work of oxygen deficit /Measures of human factor (management for hazardous materials) /Treatment of hazardous materials /Treatment for storage of hazardous materials

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