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ヘヴィなインダストリアル・サウンドが復活! MARILYN MANSON、これまでの軌跡 MARILYN MANSON という名は、女優の Marilyn Monroe と、 殺人犯の Charles Manson から名付けられたとか、幼少期を厳格 なカトリック・スクールで過ごし、その抑圧への反抗からアンチキリス トになったとか、コロンバイン高校銃乱射事件の犯人が MARILYN MANSON からの影響を受けていたとされて(実際は違った)理不 尽なバッシングを受けたとか、数々の訴訟を起こされたなどなど、彼 のスキャンダラスな歴史はファンではない人でも少しはご存知のこと だろう。あまりに興味深い彼の半生は、自伝「地獄からの帰還」で 語られている。自伝とは言っても、人生語りに終始せず、ひとつの 物語小説、アート作品として楽しめるこの本を読み、筆者も多大な 影響を受けたものだ。 さて、94 年『Portrait Of An American Famiry』から、03 年 『The Golden Age Of Grotesque』までの 5 枚のアルバムは、 ラウドロック、インダストリアル史において欠かせないマスト盤であ ることは言うまでもない。しかし、私生活において、バーレスク・ダ ンサーの Dita Von Teese と離婚し、その経験が作品に大きな影 響を与えた 07 年『Eat Me, Drink Me』は、メランコリックで剥 き出しの哀しみが漂い、彼にしてはとてもパーソナルな作品で、“吸 血鬼”というコンセプトはあったものの、生音が主体で、暗く内省 的であり、音楽性としてはファンから賛否の分かれる作品であった。 そして 09 年『The High End Of Low』は、10 年ぶりに Twiggy Ramirez との再会を果たし、前作よりもインダストリアル色が戻り、 「Arma-goddamn-motherfuckin-geddon」など、数曲はかつ てを思わせる曲があったが、『Eat Me, Drink Me』の延長上にある 歌モノの曲が多く、完成度としても今までの MARILYN MANSON の作品としては高いとは言えず、やはりこちらも賛否が分かれた。 しかし、1 人のシンガーとしての成長には目を見張るものがあり、音 楽的な内容も評価されるべき部分があったのは間違いない。常に同 じことをせず、その時にやりたいこと、出したい音というものを忠実 に作品に反映させるというポリシーも支持出来る。だが、もうかつて 『Born Villain』の大きな特徴は、MARILYN MANSON 印のヘ ヴィネスへ回帰しているということだ。今作では Twiggy Ramirez との共作曲が多いことも起因しているだろう。そしてもうひとつは、 インダストリアルなサウンドを完全に復活させているということ。 しかし、そのサウンド・メイキングは『Antichrist Superstar』、 『Mechanical Animals』『Holy Wood』の 3 部作的なアプロー チとは趣が違う。単純に言えば、4 つ打ちのリズムが多く、とても ダンサブルな曲が多い作品なのだ。但し、ダンサブルとは言っても、 今流行のエレクトロなサウンドではもちろんない。むしろ、1 億総 エレクトロ化しているシーンの流れに対抗せんとばかりの、あくまで ニュー・ウェーヴやゴシック起源のストイックなインダストリアル・ サウンドを、現代に鳴らすサウンドとしてアップデートするためにど う進化させるか?ということに重点を置いたのではないかと推測して しまう。 ここで『Born Villain』を代表する曲をご紹介しよう。「No Reflection」はエレクトリックな打ち込みで始まり、BPM 128 のダンサブルな 4 つ打ちで、生音のドラムのキックにヘヴィなリフ を乗せている。これまでにありそうでなかった曲だ。そこから、同 じく4 つ打ちだがテンポを落とした「Pistol Whipped」へ流れるが、 こちらは生音ドラムと打ち込みの音を同期させている。そして、今 作で特に筆者が好きな「Overneath The Path Of Misery」は、 静かな語りから始まり、アップ・テンポな 4 つ打ちで、ミニマルな A メロから、突如爆発するサビがたまらなくかっこいい ( このミニマ ルとマキシマムの対比を巧妙に使った手法は、今作ではかなり多く 見られる )。そして、往年のファンには最も喜ばれるであろう超絶ヘ ヴィなナンバー「Merderers Are Getting Prettier Every Day」は、絶対に聴き逃し厳禁である! プライベートでも親交の深いハリウッド俳優 Johnny Depp がギター とドラムで参加した Carly Simon のヒット曲「Youre So Vain」も なかなかの出来栄えで、アルバムのひとつのトピックとして大きな役割 を果たしている。 なお、今作はシェイクスピアの戯曲「マクベス」と、ボードレールの「悪 の華」からインスピレーションを受けている。これはじっくりと歌詞 を読みながら堪能したいところだが、残念ながら日本盤にも対訳は 付いていないようだ。これは「マクベス」と「悪の華」をちゃんと読 んでくれという MARILYN MANSON からのメッセージなのだろう か(笑)? 何にしろ、この2 作品を読めば、この壮大なコンセプトを 持つ『Born Villain』を 2 倍楽しむことが出来るだろう。相変わらず、 リスナーの想像力を掻き立てることがうまい人である。 前 2 作品を受け入れられなかったファンも、『Born Villain』を聴け ば、再び MARILYN MANSON の虜となることは間違いないだろ う。(KAORU) のアンチクライスト・スーパースターは戻って来ないのか?彼には常 に怒れる怪物でいて欲しかった……と、少し寂しく思っていたのも正 直な気持ちだった。1 ファンとしての勝手なエゴではあるけれど。 しかし、3 月に行われた来日公演はソールド・アウト。セットリスト を見ると、往年のアンセムが惜しげもなく披露されているではない か。MARILYN MANSON は、今もかつてのインダストリアルな 曲をプレイすることに全く抵抗はないのだろう。そして、このツアー は新作の布石となるものだ。そう考えると、新作の内容はもしや ……!? ゴシック・インダストリアルのダーク・ヒーロー、 MARILYN MANSON が 3 年振りの新作をリリース!! MARILYN MANSON Born Villain ●ゲスト参加:Johnny Depp (Track.14:Carly Simon 「Youre So Vain」のカヴァー ) ●日本先行発売 ●日本盤ボーナス・トラック 1 曲収録 [Victor Entertainment] VICP-65058 \2,625 (税込) NOW ON SALE!! 01 Hey, Cruel World... 02 No Reflection 03 Pistol Whipped 04 Overneath The Path Of Misery 05 Slo-mo-tion 06 The Gardener 07 The Flowers Of Evil 08 Children Of Cain 09 Disengaged 10 Lay Down Your Goddamn Arms 11 Murderers Are Getting Prettier Every Day 12 Born Villain 13 Breaking The Same Old Ground 14 You're So Vain 15 No Reflection [Radio Edit] Track.14:ボーナス・トラック (Johnny Depp 参加 ) Track.15:日本盤のみのボーナス・トラック Photo by Agata Alexander
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marilyn manson CS4 - gekirock...MARILYN MANSONが3年振りの新作をリリース!! MARILYN MANSON Born Villain ゲスト参加:Johnny Depp (Track.14:Carly Simon 「You’re

May 23, 2020

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Page 1: marilyn manson CS4 - gekirock...MARILYN MANSONが3年振りの新作をリリース!! MARILYN MANSON Born Villain ゲスト参加:Johnny Depp (Track.14:Carly Simon 「You’re

ヘヴィなインダストリアル・サウンドが復活!

MARILYN MANSON、これまでの軌跡MARILYN MANSON という名は、女優の Marilyn Monroe と、

殺人犯の Charles Manson から名付けられたとか、幼少期を厳格

なカトリック・スクールで過ごし、その抑圧への反抗からアンチキリス

トになったとか、コロンバイン高校銃乱射事件の犯人が MARILYN

MANSON からの影響を受けていたとされて(実際は違った)理不

尽なバッシングを受けたとか、数々の訴訟を起こされたなどなど、彼

のスキャンダラスな歴史はファンではない人でも少しはご存知のこと

だろう。あまりに興味深い彼の半生は、自伝「地獄からの帰還」で

語られている。自伝とは言っても、人生語りに終始せず、ひとつの

物語小説、アート作品として楽しめるこの本を読み、筆者も多大な

影響を受けたものだ。

さて、94 年『Portrait Of An American Famiry』から、03 年

『The Golden Age Of Grotesque』までの 5 枚のアルバムは、

ラウドロック、インダストリアル史において欠かせないマスト盤であ

ることは言うまでもない。しかし、私生活において、バーレスク・ダ

ンサーの Dita Von Teese と離婚し、その経験が作品に大きな影

響を与えた 07 年『Eat Me, Drink Me』は、メランコリックで剥

き出しの哀しみが漂い、彼にしてはとてもパーソナルな作品で、“吸

血鬼”というコンセプトはあったものの、生音が主体で、暗く内省

的であり、音楽性としてはファンから賛否の分かれる作品であった。

そして 09 年『The High End Of Low』は、10 年ぶりに Twiggy

Ramirez との再会を果たし、前作よりもインダストリアル色が戻り、

「Arma-goddamn-motherfuckin-geddon」など、数曲はかつ

てを思わせる曲があったが、『Eat Me, Drink Me』の延長上にある

歌モノの曲が多く、完成度としても今までの MARILYN MANSON

の作品としては高いとは言えず、やはりこちらも賛否が分かれた。

しかし、1 人のシンガーとしての成長には目を見張るものがあり、音

楽的な内容も評価されるべき部分があったのは間違いない。常に同

じことをせず、その時にやりたいこと、出したい音というものを忠実

に作品に反映させるというポリシーも支持出来る。だが、もうかつて

『Born Villain』の大きな特徴は、MARILYN MANSON 印のヘ

ヴィネスへ回帰しているということだ。今作では Twiggy Ramirez

との共作曲が多いことも起因しているだろう。そしてもうひとつは、

インダストリアルなサウンドを完全に復活させているということ。

しかし、そのサウンド・メイキングは『Antichrist Superstar』、

『Mechanical Animals』『Holy Wood』の 3 部作的なアプロー

チとは趣が違う。単純に言えば、4 つ打ちのリズムが多く、とても

ダンサブルな曲が多い作品なのだ。但し、ダンサブルとは言っても、

今流行のエレクトロなサウンドではもちろんない。むしろ、1 億総

エレクトロ化しているシーンの流れに対抗せんとばかりの、あくまで

ニュー・ウェーヴやゴシック起源のストイックなインダストリアル・

サウンドを、現代に鳴らすサウンドとしてアップデートするためにど

う進化させるか?ということに重点を置いたのではないかと推測して

しまう。

ここで『Born Villain』を代表する曲をご紹介しよう。「No

Reflection」はエレクトリックな打ち込みで始まり、BPM 128

のダンサブルな 4 つ打ちで、生音のドラムのキックにヘヴィなリフ

を乗せている。これまでにありそうでなかった曲だ。そこから、同

じく4つ打ちだがテンポを落とした「Pistol Whipped」へ流れるが、

こちらは生音ドラムと打ち込みの音を同期させている。そして、今

作で特に筆者が好きな「Overneath The Path Of Misery」は、

静かな語りから始まり、アップ・テンポな 4 つ打ちで、ミニマルな

A メロから、突如爆発するサビがたまらなくかっこいい ( このミニマ

ルとマキシマムの対比を巧妙に使った手法は、今作ではかなり多く

見られる )。そして、往年のファンには最も喜ばれるであろう超絶ヘ

ヴィなナンバー「Merderers Are Getting Prettier Every

Day」は、絶対に聴き逃し厳禁である!

プライベートでも親交の深いハリウッド俳優 Johnny Depp がギター

とドラムで参加した Carly Simon のヒット曲「You’re So Vain」も

なかなかの出来栄えで、アルバムのひとつのトピックとして大きな役割

を果たしている。

なお、今作はシェイクスピアの戯曲「マクベス」と、ボードレールの「悪

の華」からインスピレーションを受けている。これはじっくりと歌詞

を読みながら堪能したいところだが、残念ながら日本盤にも対訳は

付いていないようだ。これは「マクベス」と「悪の華」をちゃんと読

んでくれという MARILYN MANSON からのメッセージなのだろう

か(笑)? 何にしろ、この 2 作品を読めば、この壮大なコンセプトを

持つ『Born Villain』を 2 倍楽しむことが出来るだろう。相変わらず、

リスナーの想像力を掻き立てることがうまい人である。

前 2 作品を受け入れられなかったファンも、『Born Villain』を聴け

ば、再び MARILYN MANSON の虜となることは間違いないだろ

う。 (KAORU)

のアンチクライスト・スーパースターは戻って来ないのか?彼には常

に怒れる怪物でいて欲しかった……と、少し寂しく思っていたのも正

直な気持ちだった。1ファンとしての勝手なエゴではあるけれど。

しかし、3 月に行われた来日公演はソールド・アウト。セットリスト

を見ると、往年のアンセムが惜しげもなく披露されているではない

か。MARILYN MANSON は、今もかつてのインダストリアルな

曲をプレイすることに全く抵抗はないのだろう。そして、このツアー

は新作の布石となるものだ。そう考えると、新作の内容はもしや

……!?

ゴシック・インダストリアルのダーク・ヒーロー、

MARILYN MANSONが 3 年振りの新作をリリース!!

MARILYN MANSONBorn Villain

●ゲスト参加:Johnny Depp (Track.14:Carly Simon  「You’re So Vain」のカヴァー )●日本先行発売●日本盤ボーナス・トラック 1 曲収録

[Victor Entertainment]VICP-65058\2,625 (税込) NOW ON SALE!!

01 Hey, Cruel World...

02 No Reflection

03 Pistol Whipped

04 Overneath The Path Of Misery

05 Slo-mo-tion

06 The Gardener

07 The Flowers Of Evil

08 Children Of Cain

09 Disengaged

10 Lay Down Your Goddamn Arms

11 Murderers Are Getting Prettier Every Day

12 Born Villain

13 Breaking The Same Old Ground

14 You're So Vain

15 No Reflection [Radio Edit]

Track.14:ボーナス・トラック (Johnny Depp 参加 )

Track.15:日本盤のみのボーナス・トラック

Photo by Agata Alexander