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23 2010.1 金属資源レポート ブラジルのレアメタル資源(第 1 回) 803著者:Bamburra Planejamento e Economia Mineral Ltda. Eduardo Vale 地質の多様性、大陸の規模そして地理的条件の良さ等、ブラジルは多様な鉱物資源を豊富に供給できる可能性を もった国であり、最近は、BRICs の一員として世界経済上でも注目されている。しかし、同国のレアメタル資源 の探鉱や開発については、イメージが先行する中で、実態の分かりにくさがあった。 本稿では、同国のレアメタル資源に的を絞り、まずブラジルの地質形成とレアメタル資源賦存を概観した後に、 鉱種ごとに、探鉱や操業の実態に言及する。全体構成は以下のとおりで、これを 3 回に分けて掲載する予定であ る。 なお、章番号は一覧性を持たせるため、全体を通じて連続している。 はじめに ブラジルは広大な国土と地質の多様性により、鉱物 資源に恵まれた国である。例えば、アマゾン地域は、 まだ調査が不足しているものの、複数の鉱物資源賦存 地域が確認されており、南米の鉱山・製鉄・製錬の中 心である Minas Gerais 州の実績から類推しても、新 たな鉱床発見の可能性は大きい。実際、ブラジルの表 土層下に対する知識がまだ不十分なため、探鉱投資意 欲は削がれがちである。しかしながら、探鉱が不十分 でまだ多くの鉱物資源が未発見であると考えれば、こ の現実はポジティブに捉えることができる。 ブラジルの地質の多様性、大陸の規模、そして地理 的条件の良さを考慮すると、ブラジルが多様な鉱物資 源を豊富に供給できることは納得できる。大陸地域の 先カンブリア紀の基盤の 60%は顕生代(古生代・中生 代・新生代)に生成された堆積岩や火山岩に覆われて いるが、そこでは Solimoes, Amazonas, Parana, Parn- aibaと呼ばれる4つの主要な陸向斜及び大西洋拡大 をもたらしたテクトニクスの過程に関係する複数の堆 全体構成と掲載の予定 本号掲載項と目次 はじめに 各論 1. ニッケル 1 - 1. 操業鉱山 1 - 2. 鉱山開発プロジェクト 1 - 3. 探鉱プロジェクト 次号(金属資源レポート Vol.39 No.6) 掲載予定 2. PGM(白金族) 2 - 1. 探鉱プロジェクト 3. レアアース・モザナイト 3 - 1. 鉱床及び操業鉱山 4. リチウム 5. ベリリウム 5 - 1. 探鉱プロジェクト 6. ニオブ 6 - 1. 操業鉱山 6 - 2. 探鉱プロジェクト 6 - 3. 尾鉱プロジェクト 7. 錫・タンタル・インジウム 7 - 1. 操業鉱山 7 - 2. 探鉱プロジェクト 8. タングステン、(タンタル、ビス マス) 8 - 1. 探鉱プロジェクト 次々号(金属資源レポート Vol.40 No.1 掲載予定) 9. モリブデン 9-1. 探鉱プロジェクト 10. クロム 11. マンガン 11 - 1. 操業鉱山 11 - 2. 探鉱プロジェクト 12. チタン 13. バナジウム 13 - 1. 開発プロジェクト 14. ジルコニウム 文献等一覧 監修:サンティアゴ事務所 所長 菱田 元
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Mar 10, 2021

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232010.1 金属資源レポート

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ブラジルのレアメタル資源(第一回)

ブラジルのレアメタル資源(第1回)

(803)

著者:Bamburra Planejamento e Economia Mineral Ltda.

Eduardo Vale地質の多様性、大陸の規模そして地理的条件の良さ等、ブラジルは多様な鉱物資源を豊富に供給できる可能性を

もった国であり、最近は、BRICs の一員として世界経済上でも注目されている。しかし、同国のレアメタル資源の探鉱や開発については、イメージが先行する中で、実態の分かりにくさがあった。

本稿では、同国のレアメタル資源に的を絞り、まずブラジルの地質形成とレアメタル資源賦存を概観した後に、鉱種ごとに、探鉱や操業の実態に言及する。全体構成は以下のとおりで、これを 3 回に分けて掲載する予定である。

なお、章番号は一覧性を持たせるため、全体を通じて連続している。

はじめにブラジルは広大な国土と地質の多様性により、鉱物

資源に恵まれた国である。例えば、アマゾン地域は、まだ調査が不足しているものの、複数の鉱物資源賦存地域が確認されており、南米の鉱山・製鉄・製錬の中心である Minas Gerais 州の実績から類推しても、新たな鉱床発見の可能性は大きい。実際、ブラジルの表土層下に対する知識がまだ不十分なため、探鉱投資意欲は削がれがちである。しかしながら、探鉱が不十分でまだ多くの鉱物資源が未発見であると考えれば、こ

の現実はポジティブに捉えることができる。ブラジルの地質の多様性、大陸の規模、そして地理

的条件の良さを考慮すると、ブラジルが多様な鉱物資源を豊富に供給できることは納得できる。大陸地域の先カンブリア紀の基盤の 60%は顕生代(古生代・中生代・新生代)に生成された堆積岩や火山岩に覆われているが、そこでは Solimoes, Amazonas, Parana, Parn-aiba と呼ばれる4つの主要な陸向斜及び大西洋拡大をもたらしたテクトニクスの過程に関係する複数の堆

全体構成と掲載の予定

本号掲載項と目次はじめに各論1. ニッケル 1-1. 操業鉱山 1-2. 鉱山開発プロジェクト 1-3. 探鉱プロジェクト

次号(金属資源レポート Vol.39 No.6)掲載予定2. PGM(白金族) 2-1. 探鉱プロジェクト3. レアアース・モザナイト 3-1. 鉱床及び操業鉱山4. リチウム5. ベリリウム 5-1. 探鉱プロジェクト6. ニオブ 6-1. 操業鉱山 6-2. 探鉱プロジェクト 6-3. 尾鉱プロジェクト

7. 錫・タンタル・インジウム 7-1. 操業鉱山 7-2. 探鉱プロジェクト8. タングステン、(タンタル、ビス

マス) 8-1. 探鉱プロジェクト

次々号(金属資源レポート Vol.40 No.1掲載予定)9. モリブデン 9-1. 探鉱プロジェクト10. クロム11. マンガン 11-1. 操業鉱山 11-2. 探鉱プロジェクト12. チタン13. バナジウム 13-1. 開発プロジェクト14. ジルコニウム

文献等一覧

監修:サンティアゴ事務所 所長

菱田 元

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積盆に代表される巨大なイントラ・クラトン・ベーズンとなっている。その特徴は以下のとおりである。

(i) 大陸プラットフォームの大きな堆積盆(ii) フェイルド・リフト(aborted rift)に由来する

縁辺海の海盆(iii) 北東部の内陸海盆:無数の超塩基性アルカリ-

炭酸塩複合岩体とキンバーライトの貫入もまた大西洋拡大の過程と関係している。

先カンブリア紀の岩石は太古代中期(32 ~ 28 億年前)、太古代後期(28 ~ 25 億年前)、原生代前期(25 ~16 億年前)、原生代中期(16 ~ 10 億年前)、原生代後期

(10 ~ 5.4 億年前)のユニットに区分される。ブラジル で 最 も 古 い 地 質 は Amazonian ク ラ ト ン と Sao Francisco クラトン、及びより小規模のクラトン地域であり、これらは全て原生代後期より古い。これらのクラトンは太古代の核の周辺に移動性の帯状の原生代前期の地層(Trans-Amazon Orogenesis; 2.0 Ga)と原生代中期の地層が進化したものが合体している。

堆積盆(一部火山起源)の鉱物資源ポテンシャルを展望すると以下の鉱種が列挙される。石炭、含瀝青頁岩、ウラン(Parana);石油(Campos Solimoes-Ama-zonas, Sergipe-Alagoas, Reconcavo、その他多くの海岸沿いの海盆);石膏(Araripe);カリウム塩と岩塩

(Amazonas, Sergipe-Alagoas and Reconcavo): 硫 黄(Sergipe):リン鉱石(Pernambuco-Paraiba):重晶石(Camamu, Reconcabo-Tucano):石灰岩(セメント原料や土壌中和剤)、粘土や高級セラミクス材料となる工業原料鉱物資源。これらの堆積盆の全て、とりわけAquifero Guarani(Parana 州)は地下水の重要な供給源にもなっている。

また、塩基性-超塩基性のアルカリ-カーボナタイト複合岩体も、経済的価値のある鉱床と関係している。とりわけ、Parana 盆地(Araxa, Tapira, Pocos de Cal-das, Jacupiranga, Antitapolis, Catalao 他)縁辺部に、ボーキサイト、リン鉱石、ニオブ、チタン、重晶石、バーミキュライト、蛍石、ウラン、ニッケル、希土類元素が賦存する。数百ものキンバーライト岩体が複数の ダ イ ヤ モ ン ド 鉱 床 の 源 岩 と な っ て い る(Minas Gerais 州、Mato Grosso 州、Rondonia 州、Parana 州)。

これまで発見された新生代の主要鉱床は、ラテライトや重鉱物の濃集を起源とする鉱床であり、ボーキサイト、カオリン、ニッケル、金、錫、ダイヤモンド、チタン、レアアース、ジルコニウム等が含まれる。

ブラジル造山期(7.5 ~ 5.3 億年)の間は異なるクラトンが集合し、南米プラットフォームに代表される安定的なブロックを形成した。この領域で、グリーストーン・ベルトや火山岩-堆積岩ベルト、及び太古代または原生代前期の地層は、金、銀、鉄、マンガン、銅、ニッケル、コバルト、クロム鉱床の生成要因を形づくっている。さらに、これらのクラトン地域は桁違いの規模を持つ縞状鉄鉱層から成る太古代~原生代前期のプラットフォームによりカバーされている。

花崗岩質グリーンストーン地帯の上を原生代前期のプラットフォームが覆い、これらは大規模の縞状鉄鉱床により構成されている(Carajas and Ferriferous Quadrilateral)。原生代前期のシークエンスと関係して、炭酸塩岩(時折大きな磁鉄鉱鉱床を伴う)、珪岩、変礫岩(金やウランの砕屑型鉱床を伴う)が広く覆っている。原生代前期のベルトは通常、高度に変成を受けた地帯から構成されているが、これらは金属鉱床生成区として重要な苦鉄質及び超苦鉄質の複合岩体

(クロム、バナジウム、ニッケル + コバルト、アスベスト、PGM)、造山期前のオフィオライト(マンガン、銅 + ニッケル + コバルト、銅 + 亜鉛 + 鉛 + 銀)からなる太古代の核周辺に付加体を形成している。原生代中期(18 ~ 15 億年前)には、大陸地域の激しい火山活動が多くのウラン、錫、タングンテン、モリブデン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、トパーズ鉱床の生成を引起こした。火山-深成岩シークエンスの中に、広範囲な海進期の陸生堆積物が大陸成及び沖積層の岩相と共に発達し、ダイヤモンド、金や他の海成堆積物に富み、鉛、亜鉛、銅、銀の高い鉱化ポテンシャルを有している。

一方、原生代前期の地層は、珪岩や変礫岩(金やウランの破砕堆積鉱床を伴う)、そして条件によっては炭酸塩岩(マグネサイトの大鉱床)に代表される堆積岩の大きなカバーを伴っている。原生代前期のベルトは変成度が高い地層から構成されていて、太古代の核の周りに大陸付加帯を形成し、金属鉱床生成にとって重要である。

それらを概観すると、次のとおりである。ⅰ) 縞状の苦鉄質-超苦鉄質複合岩体に伴う鉱床は、

クロム、バナジウム、ニッケル + コバルト、石綿等を産し、さらには白金族の高いポテンシャルを有する。

ⅱ) 造山帯のオフィオライトに伴う鉱床は、マンガン、銅 + ニッケル + コバルト、銅 + 亜鉛 + 鉛 + 銀を産する。

ⅲ) マグマ孤の深成岩及び火山岩に伴う鉱床は、銅 +金、金 + 銀を産する。

時代が下って、原生代中期には大陸地域で激しい火山活動や深部火成活動があり、ウラン、錫、タングステン、モリブデン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、金、トパーズの多くの鉱床が生成された。

原生代後期の被覆岩石は、ほとんどがカーボナタイト質岩石であるが、鉛、亜鉛、銀、リン鉱石、バリウム、蛍石に関係した鉱物に富んでいる。

クラトン地域周辺の堆積盆に発達した原生代中期及び原生代後期のベルトは、引続く圧縮場テクトニクスの下で、衝突、クラトンの発達、ゴンドワナ超大陸の形成が続いていく。主要鉱床として、後期テクトニック花崗岩の活動及びその後の活動に関係した鉱床(タングステン + モリブデン + 金)、スカルン鉱床、ペグマタイトと関係した鉱床(バリウム、ニオブ、タンタ

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ル、リチウム、錫、宝石類)が挙げられる。造山期前(リフトタイプ)及び造山期後(島孤タイ

プ)の鉱化作用は、苦鉄質-超苦鉄質岩石中のニッケル + コバルト、斑れい岩中のチタン + バナジウム、鉱脈やせん断帯に伴う金 + 銀 + 硫化物、といった種類である。

以上述べたような鉱床生成区の地質環境の多様性が、ブラジル鉱物資源の高い競争力の重要な要素の 1つである。

Carajas(Pará州)、Estanifera de Rondonia(Rondonia州)、Mapuera(Amapa 州)、Quadrilatero Ferrifero(Minas Gerais 州)の鉱床生成区においては世界クラス(百万 t 以上)の鉱床発見の可能性が高く、これらの局面が米国、ロシア、カナダ、豪州、中国、南アに匹敵する世界有数の鉱物資源ポテンシャル保有国としてのブラジルの立場を強めている。

図 1 にブラジルのテクトニクスの特徴をまとめた。図 2 はブラジルの主要地質区分である。

図 1. ブラジルのテクトニクスの特徴(出典:Sumario Mineral, 2007, DNPM/DIDM)

図 2. ブラジルの主要地質区分(出典:Sumario Mineral, 2007, DNPM/DIDM)

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Amazon 地帯における最も顕著な鉱床生成区は Pará州 Carajas 地域で、鉄、金、銅、マンガンの大規模鉱床を胚胎する。その他の鉱床生成区として、Tapajos

(金)、Pitinga(錫)、Paragominas(アルミニウム)、Urariquera(ダイヤモンド、金、錫)、Morro dos Seis Lagos(ニオブ)、Jari(金、錫、マンガン)、Gurupi/Alto Floresta( 金 )、Rondonia( 錫 )、Nova Olinda/Aveiro(石膏、ナトリウム、カリウム)、Palmas(ダ

イヤモンド、エメラルド)、Nortelandia/Taquari(ダイヤモンド)が列挙される。

表 1 にブラジルの主要鉱床生成区を示す。図 3 に Pará 州の鉱物資源(鉱床タイプ、分布、テ

クトニック領域)を示す。図 4 に Carajas 地域の地質概略図を、図5に Carajas

地域の最も重要な鉱床位置を示す。

表1.ブラジルの主要鉱床生成区

(出典:Sumario Mineral, 2007, DNPM/DIDEM)

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(出典:Sumario Mineral, 2007, DNPM/DIDEM)

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図 3.Pará 州の鉱物資源

(出典:CPRM)

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図 4.Carajas 地域地質概略図

(出典:Sumario Mineral, 2007, DNPM/DIDEM)

図 5.Carajas 地域主要鉱床位置図(出典:Sumario Mineral, 2007, DNPM/DIDEM)

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表 2 にブラジルの鉱物資源埋蔵量における世界シェア及びランキングを示す。

地球上全体で複数のテクトニクス区分の形成が地質構造発達過程において類似であると仮定すると、ブラジルの地質の地層サブユニットは、主としてベースメタルの非常に重要な鉱床を胚胎している。ブラジルの鉱物資源生産は今や 80 鉱種にわたるが、それはこれらの特徴の自然な反映である。また、ブラジルは次の鉱物生産者として世界の鉱物資源生産の中で重要な役

割を果たしている。それは、石綿、ボーキサイト、錫石、カオリン、鉄鉱石、リン鉱石、グラファイト、磁鉄鉱、ニオブ、金、石材(dimensional rocks)、タンタル、バーミキュライト等である。

表 3 に鉱物資源生産の世界ランキングとブラジルの位置を示す。

なお、政策レベルでは、この報告書で対象としているような鉱物資源に焦点を当てた政府プログラムやプロジェクトはないことを付記する。

(810)

表 3.ブラジルの鉱物資源生産量における世界シェア及びランキング

GlobalProduction

Position Mineral Participation (%)

1°Niobium

ManganeseIron

96.025.019.0

2°TantaliteBauxite

17.012.0

3° Graphite 7.0

4° Vermiculite 4.8

AsbestosMagnesite

Talc

10.07.75.0

(出典:DNPM/DIDEM)

表 2.ブラジルの鉱物資源埋蔵量における世界シェア及びランキング

GlobalReserves

Position Mineral Participation (%)

1°NiobiumTantalite

97.046.0

2° Graphite 27.0

3°Tin

Vermiculite13.06.0

3° Bauxite 8.0

4° Magnesite 9.0

5° Iron 7.0

5° Manganese 3.0

(出典:DNPM/DIDEM)

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ブラジルのレアメタル資源(第一回)

各 論現在、探鉱及び開発プロジェクトの段階にある鉱物

を鉱種毎に分類し、内容を詳しく紹介する。

1. ニッケル2008 年、ブラジルのニッケル生産量は 37,700 t で世

界シェア 2.5%(第 10 位)である(出典:WBMS)。ニッケル埋蔵量は 4.5 百万 t で世界シェア 6.4%(第 6位 ) で あ る( 出 典:USGS)。 そ の 内 訳 は Goiás 州

(44%)、Pará 州(31%)、Piauí 州(22%)、Minas Gerais 州(2%)そして São Paulo 州(1%)となっている。1-1. 操業鉱山

ブラジル国内のニッケルについて最も重要な生産会社と鉱山は次のとおりである。Votorantim グループ

2007 年、同グループの Ni 生産量は 47,213 t で、鉱山は次の3つの子会社により操業されている。・Cia. Niquel Tocantins:Goias 州 Niquelandia に位置

する。炭酸ニッケルの年生産能力は23,000 tである。・Prometalica Mineracao Centro Oeste S.A.:Goias 州

Americano do Brazil に位置する。ニッケル粗鉱の年間生産能力は 720,000 t である。

・Mineracao Serra de Fortaleza:Minas Gerais 州Fortaleza de Minas に位置する。ニッケル精鉱の年間生産能力は 100,000 t である。

Anglo AmericanGoias 州 Barro Alto 及び Niquelandia に操業鉱山を

有する。2007 年の生産量はニッケル鉱石 522,599 t、フェロニッケル(FeNi)29,223 t である。

• Cia. Niquel TocantinsNiqualandia 複合岩体に胚胎するニッケル鉱床は銅

と コ バ ル ト に 富 み、Companhia Niquel Tocantins (CNT) が 開 発 し て い る。 ブ ラ ジ ル の 鉱 業 規 則(code)ガイドラインに従った埋蔵量(ニッケル酸化鉱 + ガ ー ニ エ ラ イ ト ) は 5,200 万 t、 平 均 品 位 Ni 1.45%、Co 0.172% である。それに加え、品位 Ni 1.4%の緻密ニッケル珪酸鉱が 800 万 t ある。この鉱石は乾式製錬に非常に適している。現行の生産能力に基づくと、この埋蔵鉱量は少なくとも 20 年間の鉱石供給が可能である。

採鉱は、露天採掘により、剥土の比率は 3 / 8.4 で、鉱量 360 万 t である。採掘された鉱石を破砕、ブレンド(均質化)、乾燥後、鉱石は製錬所に運ばれる。アンモニア浸出法に供するための炭酸ニッケル(Ni 48%、Co 2.4%)が準備される。炭酸ニッケルの精製は Sao Miguel Paulista Metallurgic プラントにおけるもう 1 つの工程に送られ、そこでは酸性溶液でリーチング精製される。その後、ニッケルとコバルトに富んだ溶液は電解質として準備され、その電解質から Niと Co のカソードが精製される。年間生産能力は Ni

23,000t、Co 1,420t である。

• Mineracao Serra de FortalezaFortaleza de Minas 鉱 山 は Minas Gerais 州 Forra-

leza de Minas 市(南緯 20°25′、西経 46°46′)に位置する。Morro do Ferro グリーン・ストーン・ベルトの基底部を形成する太古代の超塩基性岩体地域に位置する、鉱染~塊状の Ni-Cu-Co 硫化鉱床である。埋蔵 量 1,000 万 t; 品 位 Ni 1.8%、Cu 1.36%、Co 1.2%、PGM 1.7 g/t である。

この鉱山は現在の操業者 Mineraao Serra da Foraleza S.A. 社(Votorantim Metais Niquel S.A. の子会社)が2003 年に Rio Tinto から購入したもので、年生産能力は Ni 10,000t、硫酸 120,000t である。

• CodeminCodemin 鉱山はブラジリアから 180 km の距離に位

置する(南緯 14°37′19″、西経 49°05′59″)。鉱石はニッケル珪酸塩で SiO2/Mg=1.5、品位 Cu 0.7%以下である。母岩は蛇紋岩化したペリドタイト(かんらん岩)と輝岩・かんらん岩・蛇紋岩である。埋蔵量1,300 万 t;品位 Ni 1.32%である。露天掘で、鉱石は乾式製錬で処理される。

鉱山及び製錬事業所は 1982 年から操業している。Barro Alto 鉱 山 の 精 鉱 を 処 理 す る と の 決 定 は、Codemin の操業ライフを増加させ、FeNi 生産量を6,000t から 10,000t に押し上げた。Barro Alto 産精鉱はその全マインライフの間、Codemin で処理される計画である。

1-2. 鉱山開発プロジェクト• Barro Alto ニッケル・プロジェクト

Barro Alto 鉱床は長さ 35km、幅 2km のラテライト・ニッケル(サプロライト)鉱床である。鉱床は1960 年代末に発見された。Goiás 州 Brasília から約140km に位置する Barro Alto 鉱床は Goiás の先カンブリア楯状地の一部である Barro Alto 塩基性・超塩基性コンプレックスの蛇紋石化作用を受けた超塩基地帯の一部に胚胎する。埋蔵量は合計 116 百万 t、品位Ni は 1.53%。鉱体は以下の 3 種に分類される。①ラテライト鉱体:針鉄鉱に伴う高品位の鉄(Fe34%)

とニッケル②蛇紋岩化鉱体:低品位の鉄(22%)を伴う。主な含

ニッケル鉱物はリザーライトやアンチゴライトのような珪ニッケル鉱-蛇紋岩族に属する鉱物である。

③ラテライト鉱体と蛇紋岩化鉱体の遷移鉱体:ノントロナイトに密接に関係してニッケルを産し、鉄を22 ~ 34%含む。Anglo American は、Goiás 州の Barro Alto に FeNi

生産のための鉱山施設を建設中(投資総額は 15 億US $)である。Barro Alto 新規鉱山開発プロジェクト

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ブラジルのレアメタル資源(第一回)

2010.1 金属資源レポート

は 2011 年にフル操業が開始され、FeNi 年生産能力は36,000t に達する予定。マインライフは 26 年。

• Onça Puma ニッケル・プロジェクトVale 社は 2005 年 12 月に Onça Puma プロジェクト

を獲得。同プロジェクトは Pará 州南東の Ourilandia do Norte 市の南緯 06°31′、西経 51°03′の地点に位置する(図 1-1)。鉱床は Onça Puma と称する 2 つの苦鉄・ 超 苦 鉄 質 Complex に 胚 胎 す る。 こ の 2 つ のComplex は東西に延び、走向延長約 23km、幅 3km

のリッジを形成する。Onça Puma Complex はダナイト、蛇紋岩化かんらん岩、パイロクシナイト、斜長岩及び班れい岩から成る。Onça Puma の鉱床タイプは一般的に見られるニッケルを含むラテライト型である。

当プロジェクトは Pará 州の Ourilandia do Norte、São Felix do Xingu 及び Parauapebas 自治体に渡って広がる Onça 及び Puma 山脈に賦存するラテライトニッケル鉱床の開発を目的とする。

Onça Puma Complex は、1970 年 代 に、Vale Incoの子会社である Minerasul によって初期段階の地質調査が実施された。2001 年に Canico Resource Corp. が当鉱床の探鉱を引継ぎ、2002 年には資源量の規模を

確認するための総延長 171,190m に及ぶコア試錐が実施され、2005 年に完了した。以下に技術的評価のための 地質図等(図 1-2 ~図 1-6)をいくつか示す。

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図 1-1.Onça Puma プロジェクト位置図

(出典:Canico Resource Corp.)

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図 1-2.Onça Puma プロジェクト:衛星画像

(出典:Canico Resource Corp.)

図 1-3.Onça Puma プロジェクト:地質図

(出典:Canico Resource Corp.)

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図 1-4.Onça Puma プロジェクト:地質図 West Onça

(出典:Canico Resource Corp.)

図 1-5.Onça Puma プロジェクト:地質図 East Onça

(出典:Canico Resource Corp.)

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ブラジルのレアメタル資源(第一回)

(815)

当プロジェクトは、2005 年 8 月に FS を終了し、技術的また経済的に優れた鉱床であることが確認された。Vale は世界需要を考慮しニッケル生産を進める目的で、Onça Puma ニッケル・プロジェクトの完結を急がず、2010 年 1 月に操業を開始し、年間 58,000t

のフェロニッケルを生産する計画を立てた。しかし、環境許可が未だペンディング状態であることを考えると、 Onça Puma 鉱山の操業開始は少なくとも 1 年延期となる見込みである。当プロジェクトの一般データを下記に示す(表 1-1)。

• Vermelho ニッケル・プロジェクトPará 州 Carajás 鉱業地域に位置する Vermelho ニッ

ケル・プロジェクトは Vale が開発するプロジェクトである。当プロジェクトは Carajás から約 70km、また Parauapebas から 45km の南緯 06°06′、西経 50°17′の地点に位置する。1974 年に実施された写真地質図解析及びレーダー画像解析によって鉱床賦存の可能性が確認された。Vermelho 鉱床は推定埋蔵量 123.6百万 t、品位 Ni 1.25%及び Co 0.06%のラテライト・ニッケル(-リモナイト)鉱床である。これまでに実施されたプロジェクトの探鉱活動及び鉱床評価は、次のように大きく 2 段階に分けられる。

(i) まず、1990 年に発見されたサプロライト型の鉱体(珪ニッケル鉱)に焦点が当てられ、FeNi 合金の

生産に適した乾式製錬のためのプレ FS が実施された。しかし、技術評価及び経済性評価の段階で、前述の製錬プロセスではほんの僅かな鉱量しか適用できず、採算が合わないと判断された。全体の資源量に含まれるサプロライトの埋蔵量は僅か 15%であった。

(ii) 1997 年に実施された地質調査で大規模なリモナイト鉱床が確認された。リモナイト鉱石の採掘を考慮し、1999 年、湿式製錬の HPAL 法に焦点を当て、第 2 段階目の探鉱が実施された。2000年と 2001 年には探鉱の精査と冶金試験が実施された。2001 年、予察的経済評価(Scoping Study)のもと調査結果が収集され、当プロジェクトの

図 1-6.Onça Puma プロジェクト:Puma 試錐位置図

(出典:Canico Resource Corp.)

表 1-1. Onça Puma プロジェクト概要データ

(出典:Vale)

Mine useful life 33 years

Mineral Reserves 82.7 Mt @ 1.73% Ni

Type of Ore Saprolitic

Process Rotary Kiln Electric Furnace 〔RKEF〕Ferro Nickel

Estimated Nominal Production 52 Kt/year of containde Ni.

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2010.1 金属資源レポート(816)

大きな可能性が示され、今後の開発が妥当であると判断された。さらに、2002 年 7 月から 2003年 12 月まで実施されたプレ FS でも当プロジェクトの将来性が認められた。

Vermelho ニッケル・プロジェクトの最終 FS は

2005 年 3 月に完了した。同 FS では、前段階の調査によって得られたニッケル品位が再確認され、Vale 社にとってリスクの少ない魅力的なプロジェクトであることが証明された。同プロジェクトの一般データを以下に示す(表 1-2)。

Vermelho 鉱山では年間 46,000t のニッケル生産及び2,800t のコバルト生産が期待される。当プロジェクトへの投資総額は 19 億 US $。Vermelho 鉱山は 2012 年上期に完成が予定されている。

• Santa Rita プロジェクトSanta Rita プロジェクトは、ブラジル Bahia 州の南

東、Salvador 市の南西およそ 360km、また Ipiaú 市から 6km 地点に位置する。当プロジェクトの中心地は南緯 14°11′42″及び西経 39°42′11″である。Santa Rita プロジェクトはまとまった面積 29,998.92 ha の探鉱 32 鉱区と採掘 1 鉱区から構成される。Santa Rita鉱床は鉱区 DNPM871369/89 に位置する。図 1-7 は当プロジェクトを含む広域地図を示す。

(出典:Vale)

表 1-2. Vermelho プロジェクト概要データ

Mine useful life 42 years

Mineral Reserves 123.6 Mt @ 1.25% Ni,and 0.06% Co.

Type of Ore Silicified Limonite and saprolite

Process High Pressure Acid Leach 〔HPAL〕

Autoclave Nominal Throughput 3.0 Mt/year

Estimated nominal Production 46 kilotonnes of contained nickel per year

図 1-7.Santa Rita プロジェクト位置図

(出典:Mirabela)

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(817)

Santa Rita プロジェクトは、2009 年の半ばに操業開始、2010 年の半ばにはニッケル年産量 27,000t まで引上げる計画である。露天掘下部の坑内採掘計画の調査も順調に進んでおり、坑内採掘による増産が可能になれば、Santa Rita は将来年間 40,000t を超えるニッケルが生産できることになる。

以下に Santa Rita の概要をまとめる。① 過去 12 年に発見された新規硫化ニッケル鉱床と

して世界最大規模② 726,000t のニッケル露天採掘埋蔵量③ 浮遊選鉱プラントの建設は既に約 65%完了④ 2009 年中期に生産開始、2010 年中期までに年間

27,000t のニッケル生産⑤ 主な株主は Dundee 社(19.9%)、社内役員(12.2%)、

Vale 社(9.2%)⑥ 鉱化帯は厚さ 40 ~ 140m で、走向延長 2km 以上、

深度 1,000m 以上延長地質について記載すると、Mirabela 及び Palestina

苦鉄質・超苦鉄質貫入岩は Itabuna-Salvador-Curaçaベルト内に位置し、Jequiere ブロック西端部に隣接し、Ipiaú 帯から6km 内の地点に位置する。両貫入岩は、Itabuna-Salvador-CuraçaベルトがJacaréブロック上を西方へ向かって衝上する際に形成された背斜構造の中心を形成している。貫入岩の母岩は、グラニュライト相と平衡を保った地殻上部の岩石及び正片麻岩である。

地殻上部の岩石は主に石英長石質及びキンツィジャイト質片麻岩、石英岩、変成珪酸塩(及び酸化物)相の縞状鉄鉱層、コンダライト、細粒変成苦鉄質火山岩層、変ガブロノーライト・シル及び小規模蛇紋岩から

成る。正片麻岩は通常変形したチャーノッカイトに相当する。

Mirabela 及び Palestina 層状貫入岩は São Franciscoクラトンの始生代から原生代前期の岩体、主としてItabuna-Salvador-Curaça 帯 内 に 形 成 す る。Fazenda Mirabela 貫入岩の母岩にはグラニュライト相で相平衡を保った地殻上部の岩石及び正片麻岩が含まれる。正片麻岩は変形したチャーノッカイト及びエンデルバイトである。地殻上部の岩石はは石英長石質片麻岩、細粒変成苦鉄質火山岩層、変ガブロノーライト・シル、珪酸塩-酸化物相-縞状鉄鉱層、並びに介在した変堆積岩や海洋底や背弧海盆で生成した班れい岩や玄武岩を表すと考えられる蛇紋岩から成る。

Fazenda Mirabela 貫入岩は、Itabuna-Salvador-Curaça帯の西端部に隣接した、100km 以上延びる巨大なリニアメントに沿って貫入した苦鉄質・超苦鉄質層状体2 体のうち、少なくとも 1 体に相当する。Fazenda Mirabela 貫 入 岩 は、2.15 ~ 2.05Ga 後 期 の Transam-azonian 造山運動の間に、Itabuna-Salvador-Curaça 帯が Jequiere ブロックに衝突し同ブロック上に衝上した際に形成された。

Santa Rita 鉱床では、鉱染状のニッケル及び銅硫化物が層状鉱体を形成している。これは岩相接触部の方向へ僅かに傾き、ハルツバージャイト・ユニットからかんらん石斜方輝石岩ユニットを通り古銅輝岩ユニットまで上方に延びながら層状体を形成する。鉱化帯はFazenda Mirabela 貫入岩の一方から反対方向へ走向延長 2km 以上、深部へは傾斜方向に 900m を超える深さまで延びていることが確認済みである。ニッケル鉱床の有意性を示す経済性地質図を次に示す。

図 1-8.Santa Rita プロジェクト:「Ni 品位×厚さ」断面図

(出典:Mirabela)

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2010.1 金属資源レポート(818)

図 1-9.Santa Rita プロジェクト:重力・「Ni 品位×厚さ」平面図

(出典:Mirabela)

図 1-10.Santa Rita プロジェクト:鉱体・ボーリング位置 鳥瞰図

(出典:Mirabela)

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(819)

ニッケル価格を 7US $/lb を基にして最適化された露天掘資源量を表 1-3 に示す。剥土比は 7.6:1 とする。

表 1-4 に剥土比を 7.2:1、ニッケル価格は同様に

7US $/lb とした場合の露天掘の確定及び推定埋蔵量を示す。

当鉱山の拡張計画では、坑内堀資源量として少なくとも 2 百万 t のニッケル埋蔵量をターゲットとしてい

る。マインライフは 25 年。ニッケル精鉱年産 45,000tが予定される。

図 1-11.Santa Rita プロジェクト:ボーリング断面図

(出典:Mirabela)

表 1-3.Santa Rita プロジェクト:露天掘最適鉱量

(出典:Mirabela)

JORC/43.101 MillionTonnes Ni(%) Cu(%) Ni Tonnes

Measured 15 0.65 0.16 98,000

Indicated 115 0.60 0.16 691,000

Measured+Indicated 130 0.60 0.16 789,000

Inferred 20 0.60 0.16 119,000

表 1-4.Santa Rita プロジェクト:露天掘確定及び推定埋蔵量

(出典:Mirabela)

JORC/43.101Category

MillionTonnes Ni(%) Cu(%) Ni Tonnes

Proven Reserve 15.1 0.65 0.16 98,000

Probable Reserve 105.9 0.59 0.16 628,000

Total Mining Reserve 121.0 0.60 0.16 726,000

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2010.1 金属資源レポート(820)

1-3. 探鉱プロジェクト• Lontra ニッケル・プロジェクト

ブラジル北部 Pará 州 Carajas 鉱業地域の東縁辺のAraguaia 変動帯に位置する Lontra プロジェクトは初期段階の探鉱プロジェクトである。同プロジェクトは、Xstrata が発見した大規模な Serra da Tapa ニッケル鉱床の南方 80km、また Vila Oito にある Teck Cominco のニッケル後期探鉱プロジェクトの東方約10km 地点に位置する 25,556 ha の地域を覆う探鉱 5鉱区で構成される。当プロジェクトはブラジルとペルーに探鉱の焦点を当てている AIM 上場の探鉱開発企業 Horizonte Minerals plc. が管理する。

同地域は、鉱山開発が進む数多くの鉱床が賦存する大規模な新しいラテライト・ニッケル地域である。中でも Vale の Vermelho や Onça Puma、Anglo Americanの Jacare 鉱床等が有名である。Araguaia 変動帯は、一連のオフィオライト Slivers を胚胎する原生代の砕屑性堆積物が集積した南北に延びる地溝である。オ

フィオライトは玄武岩、滑石片岩及び蛇紋岩によって構成されるが、これらはソレアイト質から超苦鉄質の海洋底残留物である。このような地質体に顕著な熱帯気象が影響すると、上記のような開発可能なニッケル鉱体が形成される。

Lontra プロジェクトは、これまで鉱床・鉱徴が知られていなかった地域でのグラスルーツ探鉱による新しい発見である。探鉱は沢砂地化探サンプリングから始まり、即座に広域の土壌サンプリングへと展開した。土壌の Ni 地化学異常が認められた地帯に掘深長6 ~ 18m のオーガードリル調査が実施された結果、Serra da Tapa や Vale dos Sonhos(Xstrata)、Onça Puma(Vale)、Jacaré(Anglo American)そして Morro Vermelho(Vale)のような Para 州南部の重要なニッケル鉱床と同様の Ni-Co 品位を有する鉱化帯が捕捉された。図 1-12 にこれら鉱床の位置を示す。

MAJOR NICKEL PROJECTSAND COMPETITOR CLAIMS IN THE ARAGUAIA BELT

HORIZOHTE MINERALSMajor Ni exploners

NI:Advanced Projecis &Feasibility Studies

XSTRATACODELCO

ANGLO AMERICANVOTORANTIM METAIS

TECK COMINCO[・Pan Braz,]

図 1-12.Lontra ニッケル・プロジェクト:Araguaia 変動帯における Ni 鉱床の位置

(出典:Horizonte Minerals)

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ブラジルのレアメタル資源(第一回)

(821)

鉱化帯を捕捉したボーリング孔のほとんどが鉱化帯の下底には達していない(図 1-13)。

表 1-5 では、EOH(end of hole)が最終サンプル区間にも鉱化作用が見られることを示している。このことから、実際の鉱化帯の幅はこれらの調査で確認された数値より厚いことが想定される。さらには、多数のボーリング孔で深度が増すにつれて品位が高くなるこ

とが確認された。 鉱化帯の範囲をより詳しく調査するため、コアボーリング(堀深長約 30m で未変質岩までの深度、及び、鉱化帯の幅や深さを調査する)を用いた探鉱が近々実施される予定である。400m 間隔のこれら一連のボーリング調査によって、鉱量及びNi-Co 品位が確定され鉱床の解析が可能となる。

NI(%)

Soil

LlthoiagyH

d

e

ID

MAF

VS

VE: 2x EOH

0-02

0.2-05

0.5-1

>1%

図 1-13.Lontra ニッケル・プロジェクト:オーガードリル断面図

(出典:Horizonte Minerals)

表 1-5.Lontra ニッケル・プロジェクト:オーガードリル調査結果

(出典:Horizonte Minerals)

Hole From To   Interval Ni* Co     Including

209 4m EOH   +8m 1.0% 0.06%   2m @ 1.4% Ni

211214

6m4m

EOH   +8mEOH   +8m

1.0%1.0%

0.08%   2m @ 1.5% Ni0.04%   2m @ 1.3% Ni

220 6m EOH   +5m 1.2% 0.10%   2m @ 1.3% Ni

223224226

4m8m6m

EOH   +4mEOH   +2mEOH   +6m

0.59%0.60%0.55%

0.09%0.07%0.03%

227 6m EOH   +5m 0.76% 0.03%

228231

4m8m

EOH   +7mEOH   +4m

0.87%0.82%

0.03%0.06%

232 6m EOH   +6m 1.4% 0.05%   6m @ 1.4% Ni

247 8m EOH   +1.8m 0.51% 0.01%

257 7m EOH   +9m 0.54% 0.02%

273 6m 8m     2m 0.54% 0.08%

273 6m EOH   +6m 1.1% 0.06%   2m @ 1.6% Ni

*ICP Ni values over 1% upper limit reanalyzed using NiLat methodology.

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2010.1 金属資源レポート(822)

• Anápolis 硫化ニッケルベルトカナダ TSX-V(コード名:INV)に上場する Inter-

national Nickel Ventures(INV)は、Goias 州 Anápolisベルト地帯に位置する約 200,000 ha もの広大な鉱区を管理する。当地帯は 50 か所を超える探鉱ターゲットが抽出されており、ポテンシャルの高い苦鉄質・超苦鉄質変質帯地域である。INV は、現在 Goias 州、Pará

州及び Tocantins 州においてもラテライト・ニッケル鉱床探鉱を実施している。Anápolis 帯が硫化ニッケル鉱床の探鉱対象地域として選定されたのは、既知の硫化ニッケル・銅鉱床がこの地域内の Mangabal 及びAmericano do Brasil に存在することに基づいている

(図 1-14)。

INV 社は、2005 年に、Teck Cominco と JV 契約を交わし Santa Fé-Iporá JV を設立した(権益比率はINV27%、Teck Cominco73%)。当鉱区の権益 25%を所有するブラジル民間鉱山会社 Mineradora Montita Ltda. から Santa Fé-Iporá 鉱区の 75%権益を獲得することが目的であった。

Santa Fé–Iporá 鉱区は Goias 州の南西、南緯 16°20′、西経 51°07′の地点に位置する。当区は大規模な既知ラテライト・ニッケル鉱床を含む、8 鉱区及び申請中

の 9 鉱区で構成された面積計約 16,217 ha を占める。NI 40-101 規程に基づいた、カットオフ品位 Ni 0.8%とした場合の Santa Fé-Iporá 鉱床の資源量が 2008 年 1月に次のとおり確定された。

確定鉱量:35.7 百万 t、品位 Ni 1.14%推定鉱量:104.3 百万 t、品位 Ni 1.03%表 1-6 に 3 段階の Ni カットオフ品位による資源量

評価を示す。

図 1-14.ブラジルにおけるニッケル鉱床・鉱徴位置図

(出典:INV)

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2010.1 金属資源レポート 43

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(823)

図 1-15 にラテライトを胚胎する超苦鉄質岩に関係する高磁気異常を示す。表 1-7 に Santa Fé-Iporá 鉱床

と他の重要なニッケル鉱床との比較を示す。

図 1-15.Santa Fé–Iporá ニッケル・プロジェクト:ラテライト・ニッケル鉱床と磁気異常の関係(出典:INB)

表 1-6.Santa Fé–Iporá ニッケル・プロジェクト:資源量評価

(出典:INV)*Millions of tonnes

Indicated Mineral Resources Inferred Mineral Resources

Cutoff(% Ni)

Tonnage(Mt*)

Nickel(%)

Cobalt(%)

Iron(%)

Tonnage(Mt*)

Nickel(%)

Cobalt(%)

Iron(%)

0.8 35.7 1.14 0.08 35.9 104.3 1.03 0.05 24.0

0.9 27.5 1.23 0.08 35.8 61.9 1.15 0.05 23.7

1.0 20.9 1.32 0.08 36.0 39.2 1.26 0.05 23.2

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2010.1 金属資源レポート(824)

• Araguaia プロジェクトXstrata Brasil Exploraçao Mineral Ltda. が Araguaia

プロジェクトを所有する。当プロジェクトはブラジル北西部の Pará 州に位置し、2008 年にプレ FS を開始。Araguaia は資源量が確認されたポテンシャルの高い鉱床で、鉄道、道路、発電所及び送電等の地域インフラ設備が整った好都合の場所に位置する。

2007 年に 46,300m に及ぶコアボーリングが終了し、その結果、Serra do Tapa、Vale dos Sonhos 及び Pau Preto 鉱床での確定埋蔵鉱量が見直された。Araguaiaの推定埋蔵量は、現在 101.5 百万 t、品位 Ni 1.45%(カッ

トオフ品位Ni 1%)もしくは69.4百万t、品位Ni 1.6%(カットオフ品位 Ni 1.2%)をベースとしている。

2006 年 3 月時点の Falconbridge の資料によると、Araguaia ラテライト・ニッケル・プロジェクトにおけるニッケル鉱床の初期の推定鉱量(カットオフ品位Ni 1.0%)は表 1-8 のとおりである。

鉱化作用は主にサプロライトと遷移帯で特徴付けられ、若干のリモナイトを含む(約 12%)。図 1-16 にAraguaia ニッケル・プロジェクトの位置図を示す。

TARGETRESOURCE

MtNi

(%)Co

(%)Fe

(%)MgO

(%)SiO2(%)

Si/MgRatio

Serra do TapaVale dos Sonhos

60.313.0

1.51.5

0.050.07

18.020.3

16.519.4

40.032.0

2.41.6

TOTAL 73.3 1.5 0.06 18.4 17.0 38.6 2.3

表 1-8.Araguaia ニッケル・プロジェクト:2006 年 3 月時点の資源量

(出典:Falconbridge, 2006)

表 1-7.Santa Fé-Iporá 鉱床と重要ニッケル鉱床との比較

(出典:INV)

DepositTonnes

MtNi

(%)Year

M. Claros 52.5 1.27 1981

A. Branca 78.7 1.24 1974

M. Engenho 38.6 1.10 1986

Santa Fé-lporá

OVER 100 million tonnes @ 1.03 2008

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2010.1 金属資源レポート 45

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(825)

• Mangabal プロジェクトCastillian Resources Corp. は TSX-V( コ ー ド 名:

CT)に上場するカナダ系探鉱会社である。Castillian社は、2005 年、Falconbridge(Xstrata Nickel の前身)と提携しブラジルの Mangabal ニッケル・銅探鉱プロジェクトを促進。2007 年 12 月までに総面積 153,000haを覆う 83 鉱区を取得し、Castillian・Xstrata 両社のJV として順調に活動を進めた。Castillian 社は 2008年、Xstrata Nickel と交わした合意条件を満たし、ブラジル Goias 州の南緯 16°22′、西経 50°03′の地点に位置する Mangabal ニッケル・銅探鉱プロジェクトの権益を 100%獲得した。当権益購入に要した金額は 7百万 US $に上った。

Mangabal に位置する鉱区の多くには、始生代クラトンの境界に隣接する原生代海盆中に貫入した、苦鉄質・超苦鉄質貫入岩を含む一連のニッケル硫化物が含まれる。このことから、カナダ Thompson、中国 Jin-shuan、カナダ Raglan、ロシア Pechunga 及びタンザニア Kabanga を含む、その他数多くの主要なニッケル硫化鉱床が胚胎する環境と類似の地質構造を形成していると理解できる。Mangabal で確認された 14 の貫入岩のうち、2 か所のみで前述のような段階的探鉱開

発が行われた。この地域での探鉱活動は以前 METAGO(Goias 州

政府探鉱公社)が、最近では Castillian 社とオプション契約を結ぶ以前に Falconbridge Brasil が実施した。当地域に位置する Americano ニッケル鉱山はブラジル IMS 鉱 山 グ ル ー プ Prometallica 社 が 操 業 す る。Americano 鉱山の埋蔵鉱量は、4.98 百万 t、;品位 Ni 0.62 %、Cu 0.65 %( 内 高 品 位 部 700,000t は 品 位 Ni 2.5%、Cu 1.5%)、Cut & Fill 法により年間 600,000t :品位 Ni 1.1%、Cu 0.9% を採掘する。マインライフは4 年。

Castillianは3,921.3 line-kmの空中電磁探査(VTEM)を完了。Mangabal South 鉱床及びその周辺のボーリング孔を利用した電磁探査も Furgo Ground Surveys社(Geomag Lasa)によって実施された。さらに、現在、VTEM 調査によって異常が捕捉された Mangabal South Complex 及びその周辺地域のターゲットに対して、地質マッピング、土壌及び岩石の地化学探査、並びに 2 次元と 3 次元の地質モデリングが実施されている。

全ブロックが高い優先度を有することが確認された

図 1-16.Araguaia ニッケル・プロジェクト位置図

(出典:Falconbridge)

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2010.1 金属資源レポート(826)

当地帯では、鉱床評価のために段階的なフォローアップ作業(土壌サンプリング、地質図、地上物理探査、ボーリング探査等)が進められる。Mangabal 北部とMarinheiro で地質、地化学及び放射能異常が確認された VTEM のターゲット地域では、優先して現地でのフォローアップ探査(固定ループ TEM 法、地質図、土壌地化学探査)が施され、後にボーリング調査へと進む。

鉱床は、鉱床を取り囲んでいる変形及び変成した変優黒質ノーライト / 苦鉄質片麻岩から角閃岩と同等の、かんらん石を含む優黒質ノーライト~かんらん岩の貫入岩を母岩とするパイプ状の鉱染鉱床である。

複雑な構造の Mangabal South Complex の中でも、広域的及び局所的に褶曲作用を受けた苦鉄質・超苦鉄質貫入岩に比較的大きな鉱化作用が見られる。苦鉄質・超苦鉄質岩の中でも、かんらん石及び輝石に富む分化したかんらん石ノーライトからかんらん岩の中に集中して鉱化作用が見られる。

この鉱床は高い品位の半塊状から局所的塊状の硫化鉱物がより広範囲に鉱染帯に存在するのが特徴的である。ボーリング調査により、周囲の鉱染体は首尾一貫した分布傾向にある一方、その中の高品位コア部はより複雑な分布をしていることが確認された。鉱化作用は表面から深度約 450m まで緩くプランジして延びる。Mangabal プロジェクトでは現在もボーリング探鉱及び地化学調査が継続されている。

Castillian は 2007 年に総延長 14,399.91m のボーリング探鉱を完了したが、その内の 13,365.64 m は Man-

gabal South 鉱床でのコアボーリングである。Mang-abal South 鉱床でのボーリング調査によって、2008年 1 月には鉱床の境界が幾つかの部分で明らかとなった。南西方面(傾斜方向)への延長も調査される予定だが、ボーリングのターゲットを明確に位置付けるため、ボーリング孔を利用した物理探査が必要となる。

同社は、2008 年の第 1 四半期には、Mangabal South鉱床における NI43 - 101 規格に基づく資源量の公表及び予察的経済評価(Scoping Study)を終了する予定である。

Mangabal South 鉱床は塊状のニッケル及び銅に富む硫化物鉱化帯で、幅は 545m 及び傾斜延長 40,100m、深度約 400m までプランジした鉱染鉱床である。以下にいくつかのボーリングによる鉱化帯捕捉結果を記す。1)  FLMS05001:堀進深度 33.65 ~ 40.85m 間の 7.2m

で品位 Ni 2.21%、Cu 0.48%。塊状、半塊状及び鉱染状の硫化地帯。

2)  CRMS07008:堀進深度 51.2 ~ 60.65m 間の 9.45mで品位 Ni 1.17%、Cu 0.28%及び堀進深度 69.0 ~72.0m 間の 3m で品位 Ni 1.22%、Cu 0.22%。

3)  CRMS0713:堀進深度 104.9 ~ 125.0m 間の 20.1mで品位 Ni 1.08%、Cu 0.43%、Co 0.04%、及び堀進深度 6.0m で品位 Ni 2.02%、Cu 0.64%。

4)  CRMS07021:堀進深度 116.45 ~ 149.0m 間の 32.55mで品位 Ni 1.0%、Cu 0.4%、並びに深度 12.7m で品位 Ni 1.5%、Cu 0.5%を捕捉。

以下に本プロジェクトの状況を表す図表を示す。

図 1-17.Mangabal プロジェクト:周辺インフラ

(出典:Falconbridge)

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2010.1 金属資源レポート 47

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ブラジルのレアメタル資源(第一回)

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図 1-18.Mangabal プロジェクト:磁気図と探鉱ボーリング位置平面図

(出典:Castillian)

図 1-19.Mangabal プロジェクト:探鉱ボーリング位置断面図

(出典:Castillian)

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2010.1 金属資源レポート(828)

表 1-9.Mangabal プロジェクト:Mangabal South 鉱床 2007 年探鉱ボーリング結果

(出典:Castillian)

HOLE # Azim Dip Depth From To Width True Width Ni (%) Cu (%) Co (%)

FLMS05001 315 45 200.03 33.30 43.25 9.95 9.95 1.63 0.44 0.05

incl. 33.65 40.85 7.20 7.20 2.06 0.55 0.06

FLMS05002 315 75 171.27 36.00 48.00 12.00 12.00 0.34 0.24 0.01

FLMS05003 315 45 143.88 84.50 94.00 9.50 9.50 0.57 0.45 0.02

incl. 89.80 94.00 4.20 4.20 0.94 0.79 0.02

FLMS05004 315 75 146.44 88.65 89.15 0.50 0.50 3.37 0.40 0.09

FLMS05005 315 45 145.78 18.00 50.00 32.00 32.00 0.39 0.20 0.01

incl. 40.00 45.65 5.65 5.65 0.61 0.09 0.02

FLMS05007 315 45 101.11 45.92 59.30 13.38 13.38 0.83 0.20 0.03

incl. 45.92 51.55 5.63 5.63 1.63 0.29 0.02

CRMS07008 315 45 120 51.20 60.65 9.45 9.45 1.17 0.28 0.03

CRMS07010 315 45 118.94 36.00 68.50 32.50 32.50 0.44 0.22 0.02

CRMS07012 315 45 143.1 81.10 95.00 13.90 13.90 0.49 0.20 0.02

incl. 81.10 85.25 4.15 4.15 1.03 0.34 0.03

CRMS07013 318 45 150.05 104.90 125.00 20.10 20.10 1.08 0.43 0.04

incl. 113.00 123.00 10.00 10.00 1.56 0.57 0.05

CRMS07015 318.5 45 110.15 45.50 66.00 20.50 20.50 0.33 0.13 0.01

CRMS07016 315 45 180.2 136.00 150.50 14.50 14.50 0.29 0.19 0.01

CRMS07017 360 90 100 37.00 50.00 13.00 7.80 0.67 0.13 0.02

incl. 37.00 40.30 3.30 1.98 1.38 0.14 0.04

CRMS07018 360 90 138.4 53.50 80.40 26.90 16.14 0.65 0.37 0.02

incl. 69.90 80.40 10.50 6.30 1.01 0.43 0.04

CRMS07021 315 45 190 103.75 149.00 45.25 45.25 0.85 0.43 0.03

incl. 128.30 148.55 20.25 20.25 1.24 0.46 0.04

incl. 136.30 148.55 12.25 12.25 1.42 0.47 0.04

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2010.1 金属資源レポート 49

海外レポート

ブラジルのレアメタル資源(第一回)

• Jacaré プロジェクト当プロジェクトは Pará 州 Carajás 地区 São Félix do

Xingu市の北方60kmの地点に位置する。この地域は、Onça Puma(VALE)プロジェクトも所在し、今では世界クラスのラテライト・ニッケル鉱床分布域として知られる鉱業地帯である。Jacaré プロジェクトはAnglo American が管理しており、今までに総延長50,000m を超えるボーリング探鉱が実施された。現在、精査が進められニッケル埋蔵量の確認が行われて

いる。これらの調査は 2009 年末に完了する予定である。最初の評価では資源量 430 百万 t、品位 Ni 1.33%と推定され、Barro Alto 鉱山と同等規模であることが予測される。プレ FS は 2010 年第 1 四半期に提出される予定。初期段階の評価によると当プロジェクトで必要となる投資額は 15 億 US $で、乾式製錬所及び湿式製錬所の 2 つの処理設備を要する。

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図 1-20.Mangabal プロジェクト:広域磁気図と VTEM 調査ブロック位置図

(出典:Castillian)

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ブラジルのレアメタル資源(第一回)

2010.1 金属資源レポート(830)

• São João do Piauí 鉱床São João do Piauí 鉱床は Sao Joao do Piauí 市から約

50km 離 れ た、Piauí 州 Capitão Gervásio de Oliveira市、南緯 08°28′、西経 41°57′に位置する。同鉱床は20km2 以上の範囲で基盤を構成する片麻岩、珪岩及び千枚岩に貫入した Brejo Seco 塩基性・超塩基性コンプレックス内に位置する。貫入岩体は塩基性岩(斑れい岩、かんらん石斑れい岩、及び閃緑岩)に囲まれた

蛇紋岩を核とする。ラテライト・ニッケル鉱床は、蛇紋岩が風化して形成した珪ニッケル鉱タイプの珪酸鉱物としてニッケルが濃集したもので、その産出は蛇紋岩分布域に限られる。São João do Piauí 鉱床及び選鉱試験用のパイロット・プラントは Vale 社が所有する。探鉱活動は順調に進展しており、ニッケル資源量はおよそ 150 万 t と見積もられる。

(2009.7.22)