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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー US ホワイトペーパー翻訳版 要約 EMC ® PowerPath ® Migration Enabler Host Copyは、システムを一切停止することなく、または停止 期間を最小限に抑えたうえで、ストレージ・システム間または 1 台のストレージ・システム内の 論理ユニット間でデータを移行するホスト・ベースの移行ツールです。Migration Enablerはホス トに常駐し、移行プロセスの進行中もアプリケーションが引き続きデータにアクセスできるよう に取り計らいます。このホワイト・ペーパーでは、Host Copyの機能と使用方法について詳しく 説明し、移行の例も取り上げます。 2010 7
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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy€¢ Solaris — SPARC、Opteron • Linux — Xen、RHEL、SLES • AIX — VIO • HP-UX — 11.11、11.23(11.31 はサポート対象外)

Mar 19, 2019

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy

詳細レビュー

US ホワイトペーパー翻訳版

要約

EMC® PowerPath® Migration Enabler Host Copyは、システムを一切停止することなく、または停止

期間を 小限に抑えたうえで、ストレージ・システム間または 1 台のストレージ・システム内の

論理ユニット間でデータを移行するホスト・ベースの移行ツールです。Migration Enablerはホス

トに常駐し、移行プロセスの進行中もアプリケーションが引き続きデータにアクセスできるよう

に取り計らいます。このホワイト・ペーパーでは、Host Copyの機能と使用方法について詳しく

説明し、移行の例も取り上げます。

2010 年 7 月

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 2

Copyright © 2010 EMC Corporation. 不許複製。

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この資料に記載されている情報は、「現状優先」の条件で提供されます。EMC Corporation は、

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新の EMC 製品名については、EMC.comで EMC Corporation の商標を参照してください。

他のすべての名称ならびに製品についての商標は、それぞれの所有者の商標または登録商標です。

パーツ番号 h6927-J

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 3

目次

エグゼクティブ・サマリー..............................................5

はじめに..............................................................5

対象読者.......................................................................... 6

PowerPath Migration Enabler...........................................6

サポートするプラットフォーム...................................................... 6

移行の種類........................................................................ 7

標準デバイスから標準デバイス.................................................... 7 仮想プロビジョニングされたデバイス.............................................. 7 暗号化されたデバイス............................................................ 7 疑似デバイスとネイティブ・デバイス.............................................. 8

疑似デバイスまたはネイティブ・デバイスの使用..........................8

PowerPathのフレームワーク......................................................... 9

PowerPath Migration EnablerおよびPowerPath Multipathing ......................... 9 PowerPath疑似デバイスの理解...................................................... 10

PowerPathをインストールした場合のネイティブ・デバイスの使用 ...................... 11

PowerPath Migration Enabler Host Copyの手順の概要....................12

PowerPath Migration Enablerの状態図.............................................. 13

PowerPath Migration Enablerのコマンド............................................ 13

移行プロセス.........................................................14

移行前........................................................................... 14

セットアップ..................................................................... 14

同期中........................................................................... 15

データの一括コピー操作......................................................... 16 同期中の移行セッション数の増減................................................. 16

ソース選択(SourceSelected)..................................................... 16

ターゲット選択(TargetSelected) ................................................. 16

コミット......................................................................... 17

クリーンアップ................................................................... 18

移行後........................................................................... 19

クラスタの移行................................................................... 19

ホストの正常な再起動.................................................19

ホストのクラッシュ...................................................19

報告されるその他の障害...............................................21

仮想プロビジョニングされたターゲットへの移行.........................21

移行の速度とホストへの影響...........................................23

スロットルの影響の理解........................................................... 24

Windows、Linux、AIX ............................................................ 24 SolarisとHP-UX................................................................. 26

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 4

シック・デバイスからシン・デバイスへの移行の例.......................26

環境............................................................................. 26

ログ.................................................................33

監査ログ......................................................................... 33

エラー・ログ..................................................................... 33

ログの保存場所................................................................... 34

移行の経過時間の測定.................................................34

暗号化を伴う移行.....................................................35

スロットルのスループットの例.........................................35

PowerPath Migration Enablerのインストール............................37

PowerPath Migration Enablerのライセンス..............................39

ライセンスの取得................................................................. 39

暗号化されたデバイスの移行に関するライセンス ..................................... 40

ライセンスの適用................................................................. 40

他のEMC移行製品との比較..............................................41

制限事項.............................................................41

結論.................................................................42

関連資料.............................................................42

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 5

エグゼクティブ・サマリー 移行に際して顧客が直面する課題は増加の一途をたどっています。情報はかつてないほどのス

ピードで肥大化し、インフラストラクチャも複雑を極め、依存関係も存在します。移行の実施時

間帯もその都度変わり、短時間化しています。ダウンタイムは極力短期間に収めなければなりま

せん。そのため、データ・センターにおける移行に際しては、運用上のオーバーヘッドに結びつ

く管理費、ハードウェア費用、人件費の削減が重要な鍵となってきています。EMC® PowerPath® Migration Enabler Host Copyは、多くの顧客が共通して抱えるこうした問題に対処するホスト・

ベースの移行ツールです。

ストレージ管理者は、アレイ・ベースの移行、仮想化製品、ホスト・ベースのツールなど、無数

の選択肢の中から移行方法を選出します。適切なソリューションの選択には、さまざまな要因が

からんできます。構成や管理のしやすさ、ハードウェアの機能性、データの移動速度を調整する

機能、アプリケーションへの影響の判断といった点が、重要な判断材料となります。今回の移行

に 適な方法が、次回の移行にも 善とは限りません。また、企業内でも、機能単位となるビジ

ネス・ユニットや組織の間で移行処理が異なる場合があります。1 つですべての状況に 適と言

える移行ツールを選択することは実質上不可能です。各ツールにそれぞれ長所、短所、課題、く

せがあります。 終的には、課題解決に必要な機能を備えたツールを選択するのは、データ・セ

ンター管理者の責任ということになります。

PowerPath は、SAN ベースのファイバ・チャネル、FCoE(Fibre Channel over Ethernet)、および

iSCSI ストレージ用の秀逸なマルチパス化ソリューションとして、データ・センター管理者に広

く認識されています。PowerPath Migration Enabler は PowerPath の高度な機能の 1 つです。EMCの複数の技術を駆使して、データの移行を一括で処理できます。PowerPath では、仮想 LUN によ

る抽象化を利用して疑似デバイスを作成します。疑似デバイスは、仮想デバイスを作成する形で

物理デバイスを抽象化します。PowerPath Migration Enabler では、この機能を使用して、ホスト・

アプリケーションに影響を与えることなく移行を実施します。

はじめに このホワイト・ペーパーでは、完全にホスト・ベースである PowerPath Migration Enabler Host Copy を主に取り上げていきます。PowerPath Migration Enabler の他のバージョンと同様、

PowerPath Migration Enabler Host Copy は、アプリケーションから書き込まれるデータを移行元と

移行先の双方にコピーしながら、アプリケーションを停止させることなく移行元から移行先に

データを移動します。このホワイト・ペーパーでは、インストール、使用、導入のシナリオを網

羅し、推奨事項も紹介します。

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy

図 1:PowerPath Migration Enabler Host Copy

対象読者 このホワイト・ペーパーは、EMC 製およびサード・パーティ製のディスク・アレイの利用

環境でデータの移行を実施する技術者を読者として想定しています。特に、PowerPath Migration Enabler Host Copy を使用して、新しいアレイ、シン LUN、暗号化された LUN に

システムを停止することなくデータを移行する必要がある、EMC の現場対応の技術スタッ

フおよび EMC の顧客を対象としています。

PowerPath Migration Enabler

サポートするプラットフォーム PowerPath Migration Enabler は、次のような多数のオペレーティング・システムに対応しています。 • Windows 2003 — x86、x64、IA64 • Windows 2008 — x86、x64、IA64、および Hyper-V 親パーティション • Solaris — SPARC、Opteron • Linux — Xen、RHEL、SLES • AIX — VIO • HP-UX — 11.11、11.23(11.31 はサポート対象外) 特定のOSやカーネルのバージョンについては、「PowerPath Migration Enabler Release Notes」また

は「PowerPath Migration Enabler Support Matrix」を参照してください。PowerPath関連のドキュメ

ントは、EMC Powerlink®(http://powerlink.emc.com)で入手できます。新しいバージョンでは、

機能、性能、および新しいオペレーティング・システムについて加筆しています。製品の 新情

報については、 新のドキュメントを参照してください。

注:PowerPath/VE for vSphere では、PowerPath Migration Enabler または PowerPath Encryption with RSA は

サポートされません。

詳細レビュー 6

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 7

移行の種類 PowerPath Migration Enabler Host Copy は、さまざまな移行シナリオに対応します。

標準デバイスから標準デバイス Host Copy を使用して、標準デバイスから標準デバイスにデータを移行できます。ソースとター

ゲットの RAID 保護タイプとデバイス・サイズが一致している必要はありません。

注:PowerPath Migration Enabler は、ターゲット・デバイスがソースよりも小さい場合には対応してい

ません。

仮想プロビジョニングされたデバイス ソースまたはターゲットが仮想プロビジョニングされたデバイス(シン・デバイス)であるケー

スでも Host Copy を使用できます。標準デバイス(シック・デバイス)の場合と同様、仮想プロ

ビジョニングされたデバイスを使用する場合も、RAID 保護タイプが一致している必要はありま

せん。

暗号化されたデバイス PowerPath Encryption with RSA は、PowerPath の管理下にあるユーザー指定のデバイスを RSA テ

クノロジーを活用して暗号化するソフトウェア・ベースの暗号化ツールです。ファイル・レベル

ではなく、LUN をベースとした暗号化ツールです。データは暗号化された LUN に暗号化して書

き込まれ、暗号化された LUN から読み出される際には復号化されます。既存のデータ(平文)

を暗号化するためには、暗号化されたターゲット・デバイスにそのデータを移行する必要があり

ます。PowerPath Migration Enabler Host Copy では、こうした移行をシステムを停止することなく

実施できます。

注:暗号化されたデバイスに移行する場合は、ターゲットがソース・デバイスよりも 65 KB 以上大き

くなくてはなりません。この容量は、メタデータを格納するために必要です。

PowerPath Encryption with RSA のメタデータは、オペレーティング・システムには公開されない、

デバイスの個別のセクションです。このメタデータによって、デバイスが暗号化された LUN と

して識別されます。鍵 ID 情報も含まれています。

PowerPath 管理者が powervt xcrypt コマンドを使用して LUN を暗号化すると、RKM(RSA Key Manager)サーバによって DEK(データ暗号鍵)が生成されます。PowerPath ではこの鍵を使用

してデータを暗号化します。RKM サーバは DEK の鍵 ID も同時に生成します。特定の状況下で

は、PowerPath ホストが RKM サーバに照会し、LUN の DEK を取得する場合もあります。その場

合は、メタデータを読み取った後、鍵 ID を使用して DEK を要求します。

注:鍵 ID を使用して DEK を取得できるのは、認定されたサーバに限られます。

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 8

疑似デバイスとネイティブ・デバイス PowerPath Migration Enablerは、PowerPathデバイス(疑似デバイス)またはネイティブOSデバイ

スを使用した移行に対応しています。移行に疑似デバイスを使用することには、大きな利点があ

ります。疑似デバイスを参照するようにアプリケーションが構成されている場合、移行はアプリ

ケーションの動作を妨げることなく実施されます。アプリケーションがネイティブ・デバイスを

参照する構成になっている場合は、ホストで新しいターゲット・デバイスが認識されるように、

管理者が移行後にアプリケーションを手動で再構成しなければなりません。表 1に、Host Copyがサポートしている移行の種類をすべて一覧で紹介します。PowerPathの疑似デバイスの詳細につ

いては、次のセクションを参照してください。

注:疑似デバイスからネイティブ・デバイスへの移行には対応していません。

表 1:Host Copy がサポートしている移行の種類

移行の種類 デバイスの属性

標準デバイスから標準デバイス

RAIDx から RAIDx RAIDx から RAIDy RAIDx から RAIDx(ターゲットの方がサイズが大きい) RAIDx から RAIDy(ターゲットの方がサイズが大きい)

仮想プロビジョニングされたデバイス

シック・デバイスからシック・デバイス (標準デバイスから標準デバイスと同様) シック・デバイスからシン・デバイス シン・デバイスからシン・デバイス シン・デバイスからシック・デバイス

暗号化されたデバイス

平文から暗号文 暗号文から平文 暗号文から暗号文(鍵変更処理)

疑似デバイスとネイティブ・デバイス

疑似デバイスから疑似デバイス(システム無停止) ネイティブ・デバイスから疑似デバイス(システム停止) ネイティブ・デバイスからネイティブ・デバイス (システム停止)

疑似デバイスまたはネイティブ・デバイスの使用 PowerPath の疑似デバイスは、Host Copy でシステムを停止することなくデバイスを移行するうえ

で重要な役割を果たします。PowerPath Migration Enabler でソースからターゲットにデータを移行

する 中も、ホスト・アプリケーションからは継続的にデータにアクセスできます。このため、

アプリケーションの停止期間は 小限ですむか、まったく発生しません。停止の度合いは、ソー

スが疑似デバイスかネイティブ名デバイスかによって異なります。PowerPath Migration Enabler Host Copy について掘り下げていく前に、まず PowerPath のフレームワークについて簡単におさ

らいしましょう。

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy

PowerPath のフレームワーク PowerPath は、論理ボリューム・マネージャ、ファイル・システム、およびアプリケーションの

下位、SCSI ドライバの上位に位置するホスト・ベースのソフトウェアです。PowerPath がこの位

置に存在するということは、ホストからストレージ・システムへの I/O がすべて PowerPath を通

過することになります。このため、PowerPath はストレージ・システムと連係動作し、高度な I/Oパス管理を実施できます。この管理作業には、I/O 要求の動的なロード・バランシングや、ホス

トからストレージへのパスで発生した障害の自動検出と自動復旧などが該当します。

また、PowerPath には拡張機能があります。拡張機能はプラットフォームに依存しないカーネ

ル・モジュールであり、PowerPath フレームワークが提供する抽象化の中で動作します。

拡張機能は互いに重なり、層構造を成しています。つまり、発信された I/O 要求は各拡張機能を

一番上から順に通過し、必要に応じて 下層の拡張機能までたどるようにリダイレクトされます。

使用している機能(Multipathing、Migration Enabler、Encryption with RSA)によっては、すべて

の I/O が各拡張機能を経由するようにリダイレクトする必要はありません。

図 2から、拡張機能を使用するかどうかは、管理者がPowerPathをどのように使用するかによって

大きく左右されるというようすがわかります。PowerPathを使用する大半のSAN管理者は、

Multipathing拡張機能を使用しています。

図 2:PowerPath フレームワークの基本コンポーネント

PowerPath Migration Enabler および PowerPath Multipathing 前のセクションで説明したように、PowerPath には、ロード・バランシング、フェイルオーバー、

移行、暗号化の機能をデータ・センター管理者に提供する拡張機能が複数あります。 PowerPath Migration Enabler と PowerPath Encryption with RSA のいずれも、PowerPath Multipathingの使用は必須ではありません。このため、PowerPath は完全インストールする必要があります。

(ネイティブ MPIO などの別のマルチパス機能製品ではなく)PowerPath でデバイスを管理する必

要があります。Multipathing のライセンスは不要ですが、サーバを PowerPath の管理下に置く必

要があります。Multipathing ライセンスがないため、冗長パスが「ライセンスなし」状態になり

ますが、PowerPath Migration Enabler を単一のアクティブ・パスでサポートできます。 ベスト・プラクティスとしては、完全に冗長化した SAN 構成(デュアル HBA、SAN デュアル・

スイッチ、複数のストレージ・ポート)で Multipathing と連係運用し、可能な限り高い性能と可

用性を実現することを推奨します。

詳細レビュー 9

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 10

PowerPath 疑似デバイスの理解 PowerPath で検出される論理デバイスごとに、PowerPath デバイスが作成されます。PowerPath デ

バイスと論理デバイスとの間には 1 対 1 の関係が成り立ちます。PowerPath デバイスは、プラッ

トフォームによって異なる形で表されます。この相違点の大半は、ホスト・オペレーティング・

システムの設計に起因します。オペレーティング・システムに応じて、PowerPath デバイスはネ

イティブ・デバイスまたは疑似デバイスとして表されます。疑似デバイスは、PowerPath で作成

される特殊なデバイスです(デバイスへのアクセスに使用されるオペレーティング・システム・

オブジェクトとして定義できます)。PowerPath のインストール後、疑似デバイスはパスに依存

しなくなります。ネイティブ・デバイスも同様です。パス・セットごとに 1 つ(唯一)の疑似デ

バイスがあります。たとえば、PowerPath ではデバイスごとに 大 32 のパスがサポートされてい

ます。これら 32 のパスすべてを表す 1 つの疑似デバイスが生成されます。

注:PowerPath は、HP-UX を除く、サポート対象の全プラットフォームで疑似デバイスをサポートして

います。

同じストレージ LUN へのネイティブ・パスはすべてまとめて 1 つの疑似デバイスとして表され

ます。疑似デバイスにより、ロード・バランシングとフェイルオーバーがサポートされます。ま

た、一部のプラットフォームでは、同じ名前の重複使用を回避するために疑似デバイスが必要と

なります。

図 3は、RHEL5 サーバで実行したfdisk –lコマンドの出力を示しています。このホストには、 1 つのEMC CLARiX® CX4 デバイス(20 GB)が割り当てられています。このCX4 へのパスは 4 つ(SPAへのパスが 2 つ、SPBへのパスが 2 つ)あります。

出力には、4 つの異なるネイティブ・パス(/dev/sdb1、c1、d1、e1)が示されています。す

べての物理パスを表す PowerPath 疑似デバイス(/dev/emcpowera)も 1 つあります。これがパ

ス・セットとなります。

PowerPath Migration Enabler の使用時に疑似デバイスを使用する重要性を、ここで確認できます。

疑似デバイス名は/dev/emcpowera です。これは、デバイスそのものを表す単なる名前に過ぎませ

ん。アプリケーションは適切に構成すると、この名前を使用してデバイスをアドレス指定するよ

うになります。移行プロセスの 中、Migration Enabler はアプリケーションに対して同じ名前

(/dev/emcpowera)を提示し続けますが、デバイス自体はソースからターゲットに切り替わります。

このデバイスは、このホワイト・ペーパー後半で紹介するシック・デバイスからシン・デバイス

への移行例で再び登場します。 Disk /dev/sdb: 21.4 GB, 21474836480 bytes 255 heads, 63 sectors/track, 2610 cylinders Units = cylinders of 16065 * 512 = 8225280 bytes Device Boot Start End Blocks Id System /dev/sdb1 1 2611 20968448 7 HPFS/NTFS Disk /dev/sdc: 21.4 GB, 21474836480 bytes 255 heads, 63 sectors/track, 2610 cylinders Units = cylinders of 16065 * 512 = 8225280 bytes Device Boot Start End Blocks Id System /dev/sdc1 1 2611 20968448 7 HPFS/NTFS Disk /dev/sdd: 21.4 GB, 21474836480 bytes 255 heads, 63 sectors/track, 2610 cylinders Units = cylinders of 16065 * 512 = 8225280 bytes Device Boot Start End Blocks Id System /dev/sdd1 1 2611 20968448 7 HPFS/NTFS

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 11

Disk /dev/sde: 21.4 GB, 21474836480 bytes 255 heads, 63 sectors/track, 2610 cylinders Units = cylinders of 16065 * 512 = 8225280 bytes Device Boot Start End Blocks Id System /dev/sde1 1 2611 20968448 7 HPFS/NTFS Disk /dev/emcpowera: 21.4 GB, 21474836480 bytes 255 heads, 63 sectors/track, 2610 cylinders Units = cylinders of 16065 * 512 = 8225280 bytes Device Boot Start End Blocks Id System /dev/emcpowera1 1 2611 20968448 7 HPFS/NTFS

図 3:Red Hat 5 で実行した fdisk-l コマンドの出力

PowerPath CLIはpowermtコマンドです。PowerPathに対して構成され、PowerPathが管理するHBAとデバイスに関する情報を表示します。powermt display dev=allコマンドは、PowerPathが管理し

ているデバイスをすべて表示します。fdisk-lコマンドと同様に、ネイティブI/Oパスの情報が

EMCの疑似デバイスと同じように表示されます。図 4は、同じRHEL5 サーバ上でpowermt display dev=allコマンドを実行した場合の出力を示しています。疑似デバイスは、4 つのI/Oパス

すべてを表しています。 [root@lppa020 ~]# powermt display dev=all Pseudo name=emcpowera CLARiiON ID=FNM00092000177 [lppa020] Logical device ID=6006016038E02400E64F749233AADE11 [LUN 22] state=alive; policy=CLAROpt; priority=0; queued-IOs=0 Owner: default=SP A, current=SP A Array failover mode: 4 ======================================================================== ---------------- Host --------------- - Stor --- I/O Path - -- Stats --- ### HW Path I/O Paths Interf. Mode State Q-IOs Errors ========================================================================= 1 qla2xxx sdb SP A1 active alive 0 0 1 qla2xxx sdc SP B0 active alive 0 0 3 qla2xxx sdd SP A0 active alive 0 0 3 qla2xxx sde SP B1 active alive 0 0

図 4:powermt display コマンドの出力

PowerPath Migration Enabler Host Copy では、これらの疑似デバイスを利用して、アプリケーショ

ンに一切の影響を与えることなく、無停止でデータを移行します。

PowerPath をインストールした場合のネイティブ・デバイスの使用 PowerPath は、サポート対象のオペレーティング・システム上で疑似デバイスを自動的に作成し

ます。管理者は、ネイティブ・デバイスを使用するように選択できます。その場合、PowerPathのインストール後に、ネイティブ・デバイスを使用するようにアプリケーションを再構成する必

要はありません。オペレーティング・システムによって作成された既存のディスク・デバイスを

引き続き使用できます。このことは、PowerPath Migration Enabler にも PowerPath Multipathing に

もあてはまります。

ネイティブ・デバイスの使用時には、PowerPath はアプリケーションに対して透過的になります。

PowerPath は、個々のネイティブ・デバイスと、各デバイスが属するパス間の通信を管理します。

Solaris および Linux 上では、ネイティブ・デバイスを使用するか(アプリケーションの変換な

し)、アプリケーションを疑似デバイスを使用するように変換するかを管理者が選択できます。

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 12

たとえば、パス・セット(複数のパスを表す疑似デバイス)に 3 つのネイティブ・デバイスがあ

るとしましょう。PowerPath は、これらのパス間の関連づけを維持管理します。アプリケーショ

ンがいずれかのパスに書き込むと、ロード・バランシング・ポリシーの設定に基づいて 上のス

ループットを発揮すると見込まれる(パス・セット内の)ネイティブ・デバイスにその I/O がリ

ダイレクトされます(ロード・バランシング設定の詳細については、「PowerPath Family CLI and System Messages Reference Guide」を参照してください)。また、1 つのネイティブ・デバイスで

問題が発生しても、データへのアクセスが停止することはありません。代わりに、PowerPath が

I/O 処理をパス・セット内の別のネイティブ・デバイスに切り替えるため、アプリケーションは

同じパス・セット内のネイティブ・デバイスに対して継続的に読み書きできます。

PowerPath Migration Enablerでは、アプリケーション構成で疑似デバイスを指定する必要はありま

せんが、設定しておいた方が得策です。「PowerPath Migration Enabler Host Copyの手順の概要」

で、疑似デバイスおよびネイティブ・デバイスを使用した移行手順について説明しています。ネ

イティブ・デバイスを使用する場合は、ターゲット・デバイスを認識するようにアプリケーショ

ンを手動で再構成する際にダウンタイムが必然的に発生しますが、PowerPath疑似デバイスを使

用する場合は、手動の再構成が不要なため、ダウンタイムは発生しません。

注:PowerPath Encryption with RSA では、疑似デバイスを指定する必要があります。

PowerPath Migration Enabler Host Copy の手順の概要 PowerPath Migration Enablerのプロセスと手順は、サポートされているすべての種類の技術 (Host Copy、Open Replicator、TimeFinder®/Clone、Encapsulation)で共通しています。このホワイ

ト・ペーパーでは、Host Copyを中心に解説しています。他の種類の技術については、

「PowerPath Family CLI and System Messages Reference Guide」で手順を解説しています。次の一覧

では、ソース・デバイスにPowerPath疑似デバイス名を使用してアクセスする場合の移行のおお

まかな手順を紹介します。

1. PowerPath をインストールします。この操作はホスト上で一度実行されます。 2. PowerPath Migration Enabler のライセンスをインストールします。この操作はホスト上で

一度実行されます。 3. ソースとターゲットの LUN を指定します。 4. ホストに対して LUN をゾーニングおよびマスキングします。 5. 移行をセットアップします。powermig setup コマンドを使用します。 6. データの一括コピーと、アプリケーションからの書き込みのクローン作成を開始します。

powermig sync コマンドを使用します。 7. 移行のステータスを照会します。powermig query コマンドを使用します。 8. 移行を一時停止/再開します。powermig pause/resumeコマンドを使用します(一時停止

および再開は必須ではありません。これらの使用法については、「移行の速度とホスト

への影響」で説明しています)。 9. データの一括コピーの完了後、状態を SourceSelected(ソース選択)から 1 つ先に進めて、

ターゲット・デバイスからの読み取りを開始し、移行結果をテストします。powermig selectTarget コマンドを使用します。

10. 移行をコミットします。powermig commit コマンドを使用します。 11. 移行をクリーンアップします。powermig cleanup コマンドを使用します。 12. ソース・デバイスを削除します。 13. 必要に応じて、ターゲット・デバイスを参照するようにレプリケーション・テクノロ

ジーを再構成します(SRDF®またはMirrorView™など)。 14. 必要に応じて、ストレージ・リソース管理ソフトウェアを更新します(Solutions Enabler

またはEMC Ionix™など)。

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy

PowerPath Migration Enabler の状態図 図 5は、PowerPath Migration Enablerの状態の遷移を示しています。色の付いた領域が、移行の状

態を表します。他のテキストはpowermig CLIコマンドを表しています。

図 5:PowerPath Migration Enabler の状態図

PowerPath Migration Enabler のコマンド PowerPath Migration Enabler では、Host Copy、Open Replicator、TimeFinder/Clone、Encapsulationなど、サポート対象のすべての種類の技術に対して一連のコマンドを使用します。これらのコマ

ンドの使用法や意味は、使用する技術の種類に応じて若干異なります。次の表では、Host Copyで使用する場合の PowerPath Migration Enabler のコマンドとその説明を一覧にまとめています。

表 2:PowerPath Migration Enabler のコマンド

powermig <operation> 説明 setup ソースとターゲットのデバイス、および移行に使用する技術の種類を指定し

ます。 データの一括コピーと、書き込みのクローン作成プロセスを開始します。 アプリケーションは停止することなく動作を継続します。

sync

1 つまたはすべての移行セッションに関する情報を表示します。 info 1 つの移行セッションに関する情報を表示します。 query Synching(同期)状態の移行を一時停止します。 pause 一時停止した移行を再開します。 resume データの一括移行速度を変更します。 throttle 移行を中止し、移行セッションを Setup(セットアップ)状態に戻します。 abort すべての I/O 要求の受信先として、移行元の論理ユニットを指定します。 selectSource すべての I/O要求の受信先として、ターゲットの論理ユニットを指定します。 selectTarget ターゲットをすべての I/O要求の受信先として確定することで、移行をコミットします。ソース・デバイスは、ターゲットとは同期されなくなります。

commit

ソースからターゲットへの I/O のリダイレクトを停止します。このコマンドは、ソースの論理ユニットがネイティブ・デバイスであり、アプリケーション I/O が停止している場合にのみ使用してください。

undoRedirect

cleanup ソースまたはターゲットの論理ユニット上の一部のデータを削除し、使用されなくなった該当デバイスが安全な状態になるようにします。 進行中の移行セッションのハンドルを取得します。 getHandle

version ホストで実行中の PowerPath Migration Enabler のバージョンを表示します。

詳細レビュー 13

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 14

これらのコマンドを他の種類の技術で使用する方法については、「PowerPath Family CLI and System Messages Reference Guide」で解説しています。

移行プロセス PowerPath Migration Enabler には、ユーザー・スペース・モジュールとカーネル・スペース・モ

ジュールという 2 つの主要コンポーネントがあります。PowerPath Migration Enabler CLI コマンド

(powermig)はユーザー・スペースで実行されます。データの移動はカーネル・スペースによっ

て実行されますが、ユーザー・スペースによって制御されます。カーネルは、書き込みのクロー

ン作成、データの一括コピー、LUN へのアクセス制御、必要に応じた I/O のリダイレクトなど、

いくつかの主要機能を実行します。以降のセクションでは、移行の 初から 後までを検討し、

Host Copy の機能を紹介します。

移行前 ここで説明する内容は、「PowerPath Migration Enabler Host Copyの手順の概要」セクションの手

順 1~4 に該当します。移行前に、管理者はオペレーティング・システムに 1 つまたは複数の追

加のLUNをプロビジョニングする必要があります。これらが、移行時のターゲット・デバイスに

なります。新しいデバイスは、他のLUNと同様にオペレーティング・システムに対してマスキン

グされます。既存のアレイまたは新しいアレイは、SAN上でホストからアクセスできなくてはな

りません。PowerPath Migration Enabler Host Copyでは、EMC Symmetrix®やCLARiX、または

PowerPathでサポートされているサード・パーティ製アレイかどうかに関係なく、同種または異

種のアレイ上のソースLUNからターゲットLUNにデータを移行できます。ただし、LUNは

PowerPathの管理対象デバイスであることが必要です。デバイスをフォーマットする必要や、デ

バイス上にファイル・システムが存在する必要はありません。移行の終了時には、ターゲット・

デバイスがソース・デバイスの属性を引き継ぎます。

注:特定の状況では、Setup(セットアップ)状態になる前に Solaris のターゲット・デバイスにラベル

付けしておく必要があります。詳細については、「PowerPath Migration Enabler User Guide」を参照して

ください。

セットアップ ここで説明する内容は、「PowerPath Migration Enabler Host Copyの手順の概要」セクションの手

順 5 に該当します。Setup(セットアップ)状態にするために、管理者は移行に使用するソース

とターゲットのペアを指定します。PowerPath Migration Enablerでは、移行に固有の「ハンドル」

が発行されます。ハンドルの範囲は 1~30,000 です。ハンドルは「1」から開始し、新しい移行

セッションごとに 1 ずつ増加します。 この段階で、管理者は次の作業を行います。 • ソースとターゲットのデバイスを指定します。 • 技術の種類を指定します(例:techType=hostcopy)。 • throttle(スロットル)値と suspend time(一時停止時間)値を設定し、移行の速度を構成します。 • 移行をクリーンアップします。データを移動する前に、移行を完全に終了できます。ハンド

ル番号が削除され、移行セッションは存在しなくなります。別の移行セッションで同じソー

スとターゲットのペアを使用する場合でも、同じハンドル番号が再利用されることはありま

せん。

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 15

PowerPath Migration Enabler はこの段階でチェックを実行するか、デバイスの属性を確認します。

• デバイスにアクセスできるかどうかが確認されます。たとえば、Windows では、デバイスが

オフライン状態でないかどうかが確認されます。ターゲット・デバイスは Host Copy から使

用できる必要があります。また、オンライン状態の場合に限り使用できます。 • デバイスが他の移行セッションで使用されていないかどうかが確認されます。1 つのター

ゲット・デバイスと組み合わせられるソース・デバイスは 1 つだけです。 • ターゲット・デバイスが少なくともソースと同サイズであることが確認されます。ソースと

同サイズまたはソースよりも大きくてもかまいませんが、ソースよりも小さくてはいけませ

ん。PowerPath Encryption with RSA を使用する場合、ソース・デバイスが平文を扱い、ター

ゲット・デバイスが暗号化されているときは、追加のメタデータを格納できるように、ター

ゲット・デバイスがソースよりも少なくとも 65 KB 大きくなくてはなりません。 • デバイスが仮想プロビジョニングされたデバイスかどうかが確認されます。

注:デフォルトでは、throttle値は 2 に設定され、suspend time値は 5 に設定されています。これらの値

については、「移行の速度とホストへの影響」セクションで詳しく説明します。

この時点で、移行が初期化され、次の段階に進む準備が完了します。

同期中 ここで説明する内容は、「PowerPath Migration Enabler Host Copyの手順の概要」セクションの手

順 6 に該当します。管理者がpowermig syncコマンドを実行した時点で、移行するデータの一括

コピーが開始されます。移行はハンドル単位で開始します。この段階に移ると、ユーザー・ス

ペース・モジュールがカーネル・スペース・モジュールに次の 2 つのプロセスを開始するように

通知します。 • アプリケーションからの書き込みのクローン作成の開始。ソース・デバイスへの新しい I/O

書き込みは自動的に複製されて、ターゲット・デバイスに書き込まれます。 • データの一括コピーの開始。ソース・デバイスからデータが読み取られ、ターゲット・デバ

イスに書き込まれます。Host Copy には、データの一括コピーを管理するデーモン(UNIX)

とサービス(Windows)があります。これらがカーネルへの定期的な呼び出しを開始してコ

ピー操作を実行し、独自のログを維持し、データの一括コピーの進捗度を示すチェックポイ

ントを定期的に作成します。 この段階では、I/O 読み取りはすべてソース・デバイスを対象に行われ、I/O 書き込みはソースと

ターゲットに複製されます。ターゲット・デバイスには、別のアプリケーションからはアクセス

できません。 同期段階の 中、管理者は複数の処理を行い、パラメータを変更したり、ステータス情報を取得

したり、移行操作を停止したりすることができます。管理者が実行できる操作は次のとおりです。 • 1 つまたは複数の移行について達成率と throttle(スロットル)値を照会します。 • 移行を一時停止します。Host Copy では Open Replicator や TimeFinder/Clone といった基盤とな

る技術を使用しないため、データの一括コピーはホスト・ベースで行われます。管理者は

I/O のピーク時間帯には移行を一時的に停止できます。その間、アプリケーションからの新

規の I/O 書き込みは引き続きターゲットに複製されます。ただし、データの一括コピーは停

止します。 • 移行を再開します。再開すると、移行は中断した箇所から継続されます。

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 16

• データの一括コピーの速度を変更します。Synching(同期中)状態の間は throttle 値と

suspend time(一時停止時間)値を随時更新し、データの一括コピーの実行速度を増減できま

す。この操作は、ハンドル番号に基づいて移行セッション単位で実行されます。 • 移行を中止します。移行は Setup(セットアップ)状態に戻ります。アプリケーションから

の新しい I/O 書き込みは複製されなくなり、データの一括コピーも停止します。データの一

括コピーは 初からやり直す必要があります。

データの一括コピー操作 同期段階では、PowerPath Migration Enabler Host Copy はソース・デバイスからデータを読み取り、

ターゲット・デバイスに 256 KB 単位で書き込みます。

同期中の移行セッション数の増減 管理者は Host Copy を使用して、LUN を必要な数だけ移行できます。ユーザーは必要数の移行

セッションを Synching(同期中)状態にすることができます。8 個の移行セッションがデータの

一括コピーを同時に実行します。Synching 状態の移行セッションが 8 個以上ある場合、すべての

セッションについてコピーが進行することになります。

ホストの CPU サイクルと I/O 帯域幅がこのコピー処理に消費されてしまいますが、ホストがそれ

らのリソースをアプリケーション用に必要とする状況も考えられます。

注:複数の移行セッションで同期を行う場合は、ホストのパフォーマンスに影響しないように慎重を期

してください。移行セッションの開始後にアプリケーションが影響を受けているように思える場合は、

1つまたは複数の移行セッションを一時停止にするか、throttle(スロットル)値を変更して対処できます。

ソース選択(SourceSelected) ソース・デバイスからターゲット・デバイスへのデータの一括コピー操作が終了すると、自動的

に SourceSelected(ソース選択)状態になります。この段階では、移行はまだコミットされてい

ません。この状態には次の特徴があります。

• データの一括コピーは完了しています。 • I/O 読み取りはソースに対して行われます。 • I/O 書き込みはソースに書き込まれ、ターゲットに複製されます。 • ソースとターゲットは同期された状態です。

管理者は次のいずれかの操作を実行できます。

• TargetSelected(ターゲット選択)状態に移します(「ターゲット選択(TargetSelected)」セ

クションを参照してください)。 • 長期間この状態のままにしておきます。 • 1 つまたは複数の移行について照会します。 • 移行を中止します。移行は Setup(セットアップ)状態に戻ります。ターゲット・デバイス

にはアプリケーションからアクセスできません。

ターゲット選択(TargetSelected) ここで説明する内容は、「PowerPath Migration Enabler Host Copyの手順の概要」セクションの手

順 9 に該当します。管理者は移行の状態をSourceSelected(ソース選択)からTargetSelected(ター

ゲット選択)に移すことができます。この状態には次の特徴があります。

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 17

• データの一括コピーは完了しています。 • I/O 読み取りはターゲットに対して行われます。 • I/O 書き込みはターゲットに書き込まれ、ソースに複製されます。 • ソースとターゲットは同期された状態です。

管理者は次のいずれかの操作を実行できます。

• SourceSelected 状態に戻します。管理者は SourceSelected 状態と TargetSelected 状態を前後に

切り替えることができます。 • 移行のコミット前に新しい LUN からの読み取りを「実際に試す」ことができます。管理者

はこの機能を利用して、新しいデバイス上のデータが損なわれておらず、サービス・レベル

がアプリケーションの要件に合致していることを自由に確認できます。 • 長期間この状態のままにしておきます。 • 1 つまたは複数の移行について照会します。 • 移行を中止します。移行は Setup(セットアップ)状態に戻ります。ターゲット・デバイス

にはアプリケーションからアクセスできません。 • 移行をコミットします。 コミット ここで説明する内容は、「PowerPath Migration Enabler Host Copyの手順の概要」セクションの手

順 10 に該当します。commitコマンドを実行した結果、ソースが疑似デバイスかネイティブ・デ

バイスかに応じて、2 つの異なる状態になります。一度Committed(コミット)状態になったら、

ソース・デバイスには戻れません。管理者は、ターゲット・デバイスへの移行が望ましいかどう

かを判断しなければなりません。 ソースとして疑似デバイスを使用している場合、commit コマンドを実行すると、移行の状態は

Committed になります。 • I/O 読み取りと書き込みはターゲットに対して行われます。 • 書き込みはソースにはコピーされません。つまり、ソース・デバイスとターゲット・デバイ

スは同期しなくなります。 • ソース・デバイスにはアプリケーションからアクセスできません。 • デバイスの特性は交換されます。疑似デバイスを移行で使用している場合は、基盤となる

ハードウェアのパスが変更されます。つまり、アプリケーションは引き続き元の PowerPath疑似デバイス名を参照しますが、基盤となるハードウェアのパスはターゲット・デバイスに

変更されます。アプリケーションのダウンタイムが生じないため、この点は PowerPath 疑似

デバイスを移行で使用する場合の大きなメリットといえます。 ソースとしてネイティブ・オペレーティング・システム・デバイスを使用する場合は、commitコマンドを実行すると、移行の状態が CommittedAndRedirected になります。この状態には次の特

徴があります。 • I/O 読み取りと書き込みはターゲットにリダイレクトされます。 • 書き込みはソースにはコピーされません。つまり、ソース・デバイスとターゲット・デバイ

スは同期しなくなります。 • ターゲット・デバイスにはアプリケーションからアクセスできません。

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 18

• 次の手順に進むには、管理者が手動でアプリケーションを停止し、新しいターゲット・デバイス名を参照するように再構成する必要があります。ソース・デバイスがネイティブ・デバイスの場合は、この手順が必須となります。管理者は、undoRedirect コマンドを発行した後で処理を続行できます。アプリケーションを停止し、undoRedirect コマンドを実行し、新しいデバイスを参照するようにアプリケーションを再構成し、アプリケーションを再起動する必要があります。このコマンドを実行すると、移行セッションが Committed 状態になります。名前が交換されない点を除けば、疑似デバイス名を使用した移行と同じです。

クリーンアップ ここで説明する内容は、「PowerPath Migration Enabler Host Copyの手順の概要」セクションの手

順 11 に該当します。cleanupコマンドは、移行プロセスの 終部分となります。このコマンドを

実行すると、次の処理が行われます。

• 移行ハンドルが削除されます。 • ホストに公開されている 2 つの LUN 間で移行が完了すると、これらの LUN はほぼ同じデー

タを所有することになります。これがホスト OS やアプリケーションにとっては混乱の種と

なり得ます。混乱を解消するため、ソース・デバイスの一部のデータが消去されます。消去

されるデータの位置と量は、ホストの OS によって異なります。 各オペレーティング・システムでは、クリーンアップ・プロセス中に異なる処理が行われます。

表 3:ソース・デバイスでのクリーンアップ・プロセス

オペレー

ティング・

システム ソース・デバイスでのクリーンアップ処理

Windows 物理ディスクが空のディスクとして認識されるように、ディスクのシグネチャを変更し、

MBR パーティション・テーブルを変更します。 Solaris ブロック 1~34 にゼロを書き込み、EFI/GPT プライマリ・ラベルを削除します。 後のシ

リンダの 終トラックにゼロが書き込まれ、VTOC および EFI バックアップ・ラベルが削

除されます。powerformat を使用して新しいラベルがインストールされます。 ソース・デバイスが VxVMボリュームの一部である場合は、vxdisk destroyも実行されます。 powermig cleanupコマンドの-formatオプションにより、ディスク全体がゼロ消去されます。

Linux LVM ディスク・デバイスのラベルを消去し、LVM がそのラベルを物理ボリュームとして

認識しないようにします。 VxVM については、ディスクが初期化解除されます。セクタ 0 はゼロ消去されます(ゼロ

が埋め込まれたバッファが書き込まれます)。 AIX LVM セクタと VxVM セクタをゼロ消去します。ブロック 0/セクタ 0 の PVID/VIID がゼロ

消去され、AIX ODM の PVID のコピーがソースからターゲットに転送されます。 HP-UX LVM セクタと VxVM セクタをゼロ消去します。

注:-format オプションは、暗号化されたデバイスに対してはサポートされません。

注:クリーンアップ状態の間に実行される操作を完全なデータ・スクラビングとみなすことはできませ

ん。EMC 認定データ消去機能は、物理ストレージ上のデータを読み取れなくなるように、ランダムな

データ・パターンで 1 回以上上書きします。EMC はこの作業を、顧客施設のストレージ・プラット

フォームに応じて独自に開発したツールを使用して、オンサイトで実施します。この消去機能は、磁気

メディアの消去に関する米国国防総省(DoD)規格 5220.22-M に従って、ランダム・パターンの組み合

わせで既存のデータを 3~7 回上書きします。

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 19

移行後 移行の完了後、管理者はソース・ディスクをホストから取り外すことができます。

ソース・デバイスのミラーリングに使用されたレプリケーション技術は、新しいターゲット・デ

バイスをレプリケーションするように構成する必要があります。

Solutions Enabler や Ionix などのストレージ・リソース管理ツールも更新が必要です。

注:ホストに対してターゲット・デバイスを構成する前に、アレイ・ベースのレプリケーションを設定

できます。

クラスタの移行 クラスタ構成内のデバイスを移行する場合、管理者は移行中にアクティブな状態にしておくノー

ドを 1 つ選択する必要があります。ソースとターゲットにアクセスできる 1 つのノードだけが、

アクティブ状態になります。フェイルオーバー・グループはすべて、このアクティブ・ノードに

移動する必要があります。

PowerPath Migration Enabler Host Copy を使用する際は、ソースからターゲットへのデータの一括

コピーと、アプリケーションからの書き込みのクローン作成にホストのリソースが使用される点

を覚えておくことが重要です。管理者は、Host Copy 内のスロットル・オプションに基づいて移

行の実行速度を決定する必要があります。スタンバイ・ノードは使用できなくなるため、クラス

タの可用性を通常どおり維持することはできません。このため、移行を実施する適切な時間帯を

判断する必要があります。

クラスタ内のデバイスの詳しい移行手順については、「PowerPath Migration Enabler User Guide」を参照してください。

ホストの正常な再起動 PowerPath Migration Enabler Host Copy には、ホストが正常にシャットダウンされたことを示すフ

ラグがあります。また、移行ペアと現在の状態に関するすべてのレコードを記録する Migration Enabler データベース内に、チェックポイントも記録されます。移行の進行状況を示すチェック

ポイントは、ブート・ディスクの配置に応じて、ローカル・ディスクまたは SAN ディスク上で

約 30 秒ごとに 1 回記録されます。Host Copy のメタデータはソースまたはターゲットのデバイス

には格納されません。ホストが正常にシャットダウンした場合は、ホストの起動時に 後の

チェックポイントから移行を再開できます。この動作は、移行が同期中の場合または一時停止中

の場合に行われます。ホストが正常にシャットダウンされた場合は、移行への影響はありません。

ホストのクラッシュ PowerPath Migration Enabler の設計で も重視されている点は、少なくとも移行が実施されていな

いときと同程度のデータの安全性を確保することです。ホストがクラッシュしてしまった場合は

アプリケーションからの書き込みが成功したかどうかがわからないため、PowerPath Migration Enabler では、そうしたクラッシュの後でソースとターゲットのデバイスのデータが同一である

ことを保証できません。powermig info コマンドの出力には、障害発生状態(TargetLUfault また

は SourceLUfault)が示されます。PowerPath Migration Enabler は、クラッシュ時の移行状態に応

じて対応します。障害は、Synching(同期中)、SourceSelected(ソース選択)、TargetSelected(ターゲット選択)の各状態で記録されます。

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 20

表 4に、論理ユニット障害(LUfault)が記録される可能性がある 3 つの状態を示します。

クラッシュ後にホストを再起動した結果は、状態(Synching、SourceSelected、TargetSelected)に

よって異なります。

• Synching 状態だった場合は、同期が停止しています。PowerPath Migration Enabler はTargetLUfault を報告します。移行は Setup(セットアップ)状態に戻ります。アプリケー

ションからの読み取りと書き込みは引き続きソース・デバイスに対して行われます。 powermig sync コマンドで移行を再開できます。

• SourceSelected 状態では、移行が完了しています。ソースとターゲットの両デバイスが完全

に同期されています。ただし、ホストがクラッシュすると、PowerPath Migration Enabler はTargetLUfault を報告します。クラッシュ時に I/O 書き込みが処理中だった場合が考えられま

す。このため、Host Copy では、ソースとターゲットのデータが同一であることを保証でき

ません。移行は Setup 状態に戻り、powermig sync コマンドで再開できます。 • TargetSelected 状態では、移行が完了しています。ソースとターゲットの両デバイスが完全

に同期されています。ただし、ホストがクラッシュすると、PowerPath Migration Enabler はSourceLUfault を報告します。クラッシュ時に I/O 書き込みが処理中だった場合が考えられま

す。このため、Host Copy では、ソースとターゲットのデータが同一であることを保証でき

ません。移行は Committed(コミット)状態に進みます。

表 4:ホストのクラッシュ後に報告される障害

ホストの クラッシュ時

の状態

ホストの

クラッシュ

報告される

障害発生 状態

クラッシュ後の状態

アクション (powermigコマンド)

データ

消失

Synching TargetLUfault Setup 状態に戻る sync またはcleanup なし

SourceSelected TargetLUfault Setup 状態に戻る sync またはcleanup なし

TargetSelected SourceLUfault 疑似 Committed状態に移る

cleanup なし

TargetSelected SourceLUfault ネイ

ティブ

Committed And

Redirected状態に移る

undoRedirect なし

ホストがクラッシュすると、PowerPath Migration Enabler のスタートアップ回復が実行されるまで

の間、ソースとターゲットが同期されている移行セッションのすべてのデバイスに対する読み書

き双方についてエラーが返されます。これは、クラッシュ前に記録され、処理されていないデバ

イスの障害発生状態が処理されるまでの間、データの整合性を保護する目的で実施されます。ス

タートアップ回復が実行されると、これらのデバイスに対して読み書きを行っても安全です。

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 21

報告されるその他の障害 ホストのクラッシュのほかに、ストレージ、ホスト、またはSANの変更に伴いエラーや障害が発

生する可能性があります。表 5に、論理ユニット障害(LUfault)が記録される 3 つの状態を示し

ます。書き込みI/O操作の過程でI/O障害が発生し、Migration Enablerで書き込みI/Oの複製中だっ

た場合は、Migration Enablerが論理ユニット障害を報告し、その障害発生状態(TargetLUfaultまたはSourceLUfault)がpowermig infoの出力に示されます。Migration Enablerが報告する障害の種

類は、I/O障害の発生時の移行状態に応じて異なります。障害は、Synching(同期中)、

SourceSelected(ソース選択)、TargetSelected(ターゲット選択)の各状態で記録されます。

表 5:報告されるその他の障害

現在の状態 ソース・

デバイス

の障害

ターゲット・

デバイスの

障害

報告される 障害発生状態

原因 アクション

(powermigコマンド)

データ

消失

SourceLUfaultソースへの

I/O 書き込み

失敗 abort1 なし

Synching

TargetLUfaultターゲットへ

の I/O 書き込

み失敗 abort なし

SourceLUfaultソースへの

I/O 書き込み

失敗 selectTarget1 なし

SourceSelected

TargetLUfaultターゲットへ

の I/O 書き込

み失敗 abort なし

SourceLUfaultソースへの

I/O 書き込み

失敗 commit なし

TargetSelected

TargetLUfaultターゲットへ

の I/O 書き込

み失敗 abort1 なし

1. 該当する障害がこれらの状況下で発生した場合、所定の状態遷移を管理者が行うまで、すべての

I/O に対してエラーが返されます。

仮想プロビジョニングされたターゲットへの移行 EMC Virtual Provisioning™は、容量使用率、管理業務の合理化、アプリケーションの停止、未使

用のストレージに関してストレージ管理者が抱える課題に対処します。「シン・プロビジョニン

グ」機能を基に構築されており、必要な場合にのみ共有プールから物理ストレージを消費して、

ホストに構成および接続された大容量の「シン」デバイス(ボリューム)を保持できる機能です。

SymmetrixおよびCLARiX仮想プロビジョニングは、アプリケーションに十分な容量を長時間提供

することによって、新しいストレージを頻繁にプロビジョニングする必要をなくし、ストレージ

を割り当てたのにもかかわらず使用しないことによるコストの無駄を減らして、ストレージ容量

使用率を向上させ、ストレージ管理の簡素化を可能にします。この技術はほとんどのストレージ

階層に適しています。 Symmetrix の場合、シン・デバイスのエクステントのサイズは 768 KB(12 トラック)で、これが

ストレージのデフォルトの割り当て単位となります。したがって、領域を再利用するには、アラ

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy

イメントされた 768 KB のチャンクがすべてゼロであることが必要です。CLARiX では、Host Copy を使用して領域を回収する場合、アライメントされた 256 KB のチャンクがすべてゼロであ

ることが必要になります(CLARiXの割り当て単位は 8 KBです)。 PowerPath Migration Enabler Host Copy は、アプリケーションを停止させることなく、仮想プロビ

ジョニングされたデバイスへの移動を円滑に進めます。シック・デバイスからシン・デバイスへ

の移行は、標準の移行と比べて若干の相違点があります。 Host Copyによる移行では、Setup(セットアップ)状態で、ターゲット・デバイスをシック・デ

バイスまたはシン・デバイスとして認識します。ターゲットのシン・デバイスについては、コ

ピー操作の開始時、PowerPath Migration Enablerはデータがあるブロックだけをコピーします (図 6)。ゼロだけを含み、アライメントされたチャンク(すべての構成ブロックがすべてゼ

ロ)の一部であるブロックは書き込まれません(ターゲット・デバイスでもそのチャンクがすべ

てゼロである場合)。チャンク内のいずれかのブロックの 1 バイトでもゼロ以外である場合は、

そのチャンクのすべてのブロックがコピーされます。 Host Copy がこのシン・コピー・モードで動作するのは、ターゲット・デバイスが仮想プロビ

ジョニングされたデバイスとして認識された場合に限られます。この判断は、アレイ固有の

SCSI モード・ページ値を確認する形で行われます。この値は、標準には基づいていません。ア

レイ固有の SCSI モード・ページ値により、Host Copy は Symmetrix または CLARiX の仮想 LUNを認識できます。Host Copy では、LUN がサード・パーティ製アレイ上のシンかどうかは判定で

きません。

注:ターゲットがシン・デバイスの場合でも管理者が通常のコピー操作を希望する場合に備えて、Host Copy には「no thin オプション」があります。このオプションを選択すると、シン・デバイスの確認に

伴うオーバーヘッドが排除されます。CLI コマンドでは-nothin 演算子を使用します。

図 6:仮想プロビジョニングされたターゲットへの移行

すべてのバージョンの PowerPath Migration Enabler Host Copy が、仮想プロビジョニングされたデ

バイスをサポートしているわけではありません。シン・デバイスをサポートする場合に 低限必

要なバージョンは PowerPath Migration Enabler 5.3 です(HP-UX の場合を除きます。HP-UX では

5.1 SP2 が 低限必要となります)。

詳細レビュー 22

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 23

注:シック・デバイスからシン・デバイスへの移行時に領域を効率利用できるかどうかは、シックLUNの隣接したゼロ・ブロックの量によって決まります。このため、場合によっては、すべてゼロのブロッ

クを 大限確保するために外部ツールが必要となります。ベスト・プラクティスとしては、新しく作成

されたターゲット・デバイスの使用を推奨します。すでに領域を割り当てられたデバイスをターゲット

として再利用する場合、シック・デバイスからシン・デバイスへの移行の実行時にストレージの回収率

が下がることがあります。 新のSymmetrix Enginuity™サービス・リリースでは、管理者が、ホストが未

書き込みのエクステント/チャンクおよびファイル・システムやデータベースのフォーマット方式に起因

してゼロだけを含むチャンクの両方を含む、ゼロのみの領域を回収できるようになりました。領域の回

収プロセスは、システムを停止することなく実施され、ターゲットのシン・デバイスの準備が整い、オ

ペレーティング・システムやアプリケーションに対して読み書き可能な状態のときに実行できます。

移行の速度とホストへの影響 PowerPath Migration Enabler Host Copy は完全にホスト・ベースです。移行が Synching(同期中)

状態になると、アプリケーションからの書き込みのクローンがソースとターゲットのデバイスに

作成されます。同時に、データがソース・デバイスから読み取られ、ターゲットに書き込まれま

す。アプリケーションからの書き込みのクローン作成によって、ホスト上でオーバーヘッドが認

められた事例はこれまでにありません。ただし、データの一括コピーは、ホストにマイナスの影

響を生じる可能性があります。Host Copy の使用時には、ホストのパフォーマンスに複数の要因

が影響します。 • ホストのハードウェア・リソース • ホスト・リソース上の負荷競合 • SAN 構成 • HBA 速度 • ストレージ・アレイの構成 • 同時移行セッションの数 • throttle(スロットル)の設定 • suspend time(一時停止時間)の設定 各ホストの動作は、これらすべての要因に応じて異なります。Host Copy には、移行中に発生す

る可能性があるパフォーマンス上の問題を軽減するオプションがいくつか用意されています。 • powermig pause および resume 機能を使用します。

移行の開始後、アプリケーションのユーザーがパフォーマンスへの影響を実感することは稀

です(アプリケーションへの影響の可能性の詳細については、「スロットルの影響の理解」

セクションを参照してください)。ただし、Host Copyの複数の移行セッションが 小限のリ

ソースしかないサーバで同時に実行されている場合は、ホストのパフォーマンスの低下を

ユーザーが感じる場合があります(必ずしも感じるとは限りません)。管理者は、1 つまた

は複数の移行セッションを無期限に一時停止できます。Host Copyにはチェックポイント機能

があるため、管理者がリスタートさせたときに、一時停止した箇所から移行を再開できます。

注:チェックポイントは pause の実行時に必ず記録されます。

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 24

• powermig throttle – throttlevalue コマンドを使用します。 移行の状態が Setup(セットアップ)および Synching(同期中)のときは、管理者は throttle(スロットル)値を変更して、データの一括コピーの進行速度を増減できます。throttle 値は、

使用する PowerPath Migration Enabler 技術によって意味が異なってきます。ここでは、Host Copy を使用する場合の throttle 値に限定して説明します。

• powermig throttle – suspendtime コマンドを使用します。 移行の状態が Setup および Synching のときは、管理者は suspend time(一時停止時間)値を

変更して、データの一括コピーの実行中にアプリケーションからの書き込み I/O を保留する

時間の長さを増減できます。

注:suspend time 設定は、 終的には Host Copy をサポートするすべてのプラットフォーム上で徐々に

廃止される予定です。

スロットルの影響の理解 PowerPath Migration Enabler Host Copy では、各 OS プラットフォームで PowerPath がリリースさ

れた時期に応じてコピー特性が異なります。現時点では、PowerPath for Windows、PowerPath for Linux、PowerPath for AIX は従来の方式を採用しています。PowerPath for Solaris と PowerPath for HP-UX は新しい方式を採用しています。 終的には PowerPath のすべてのバージョンが新方式に

移行する予定です。

Windows、Linux、AIX Host Copy はソースからターゲットに周期的にデータをコピーします。移行のペアごとに throttle(スロットル)と suspend time(一時停止時間)を設定します。これらの設定は、互いに独立して

動作します。片方または両方を変更すると、移行の所要時間が変化します。

suspend time(一時停止時間) suspend time は、I/O 書き込みが再開されるまでの間、一定単位の各コピー処理を継続できる期間

の長さです。Host Copy では、I/O が一時停止されている間に、可能な限り多くのデータをコピー

します。個々の移行セッションでコピーが行われるのは、I/O 書き込みが一時停止している間だ

けです。suspend time 値を変更する際は、書き込みを保留することによるアプリケーションへの

影響を考慮してください。suspend time を 60 秒より大きい値に設定することは推奨されません。

注:アプリケーションが実行中でない場合は、suspend time 値を 60 秒より大きい値に設定してもかまい

ません。

throttle(スロットル) throttle 値では、一時停止時間の間の待機時間を設定します。(一時停止時間の終了後に)I/O 書

き込みが再開すると、コピーは停止し、throttle 値で指定された時間だけ移行が待機します。

throttle 値で指定した時間の経過後、I/O 書き込みが再び一時停止になり、suspend time 値で指定さ

れた期間だけコピーが再開します。このサイクルは、データの一括コピーが完了するまで継続的

に繰り返されます。パフォーマンスを 大限に引き出すために、suspend time の変更前に throttle値を変更することを推奨します。

注:Synching(同期中)状態の移行セッションが 8 個以上ある場合は、コピーの再開に時間がかかるこ

とがあります。

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy

図 7は、throttle値とsuspend time値の関係を示しています。

図 7:throttle 値と suspend time 値の相関関係

図 7の例では、Aがsuspend time値が 5 秒間(デフォルト値)の場合を示しています。Bは、

suspend time値を 2 倍にした場合の影響を示しています。この場合、throttle値を変更しなくても、

コピー・セッション間の待機時間も 2 倍になります。基本的に、だいたい同じ量のデータがコ

ピーされます。suspend time値の変更は、書き込みのレーテンシーによるアプリケーションへの

影響を考慮してください。

C は、待機時間だけを変更した場合を示しています。throttle 値を増やすと、コピー・セッション

間の時間が長くなるため、移行の完了までの所要時間も長くなります。1 つまたは複数の移行

セッションが同期中の場合にアプリケーションのパフォーマンスに影響が生じる場合は、

suspend time 値を変更する前に、まず throttle 値を変更してみます。

throttle値によって指定されるコピー時間の全体に占める割合は、おおむね図 8の値に換算できま

す。Host Copyのデフォルトのthrottle値は 2 です。

図 8:移行セッション単位の Host Copy の throttle 値

終的には、suspend time 値と throttle 値の設定の組み合わせ、ホストのリソース、競合作業負荷、

移行の所要時間を左右するアレイ特性によって、コピー速度が決まります。環境はそれぞれに異

なるため、PowerPath Migration Enabler Host Copy には、各移行を管理および監視するための管理

者向けのツールが用意されています。

注:Windows、Linux、AIX でも、今後のリリースでは、Solaris および HP-UX のデータの一括コピー設

計を採用する予定です。

詳細レビュー 25

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy

Solaris と HP-UX 新バージョンのPowerPath for Solaris(5.3)およびPowerPath for HP-UX(5.1 SP2)のPowerPath

Migration Enabler Host Copyでは、suspend time値が使用されなくなりました。Windows、Linux、およびAIXでも、今後のリリースではsuspend time値を使用しなくなる予定です。つまり、図 7に

示している関係は、これらのプラットフォームでは成り立ちません。ただし、図 8で説明した

throttle値は、これらのプラットフォームでも変化していません。 新しいバージョンでは、データの一括コピー操作は、アプリケーションからの I/O 書き込みと同

時に行われます。ただし、コピー対象の 256 KB の領域に書き込みが行われる場合は例外です。

この稀な状況では、その 256 KB 領域のコピーが完了するまで、アプリケーションによる書き込

みが一時的に停止します。 新しいバージョンでは、throttle値の設定が、管理者がコピー速度を変更する唯一の手段となりま

す。図 7に示されているようなコピー・サイクル間の待機時間は使用されなくなりました。

throttle値を増減すると、単純に、Host Copyの各コピー・サイクル内で行われるデータのコピー時

間が、図 8に示されている割合に従って延長または短縮されます。この新方式では、ホスト上の

I/O負荷に対して移行による影響があまり出ないように改善されています。図 9は、アプリケー

ションからの書き込みI/Oと同時に実行される個々のコピー・サイクルを示しています。下側の

ストライプの白い部分(コピー)を見ると、throttle値によって待機期間を以前より細かく設定で

きるようになったことがわかります。throttle値を高くすると、ストライプの縞部分の幅が太くな

り、コピーに費やす時間の割合が大きくなります。

.

図 9:新設計における suspend time 値を使用しないコピー・サイクル

シック・デバイスからシン・デバイスへの移行の例 次のセクションでは、Host Copyを使用してCLARiX CX4 デバイスから仮想プロビジョニングさ

れたSymmetrix VMAX™デバイスへの移行を実施する場合の手順とコマンド出力について詳しく

紹介します。この例では、Red Hat 5 サーバ上のシック・デバイスのソースからシン・デバイス

のターゲットへの移行を実行します。

環境 ホスト: RHEL5 U3 PowerPath: 5.3 SP1(5.3.1) ソース・アレイ: CLARiX CX4(FLARE® 29) ソース・デバイス: 20 GB のシック LUN(LUN22) ターゲット・アレイ: Symmetrix VMAX(5774 ucode) ターゲット・デバイス: 20 GB のシン LUN(01FA)

詳細レビュー 26

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy

PowerPath CLIでは、PowerPathで管理されているデバイスの一覧と、PowerPathで割り当てられた

疑似デバイス、アレイのシリアル番号、論理デバイスIDなどのデバイス固有の情報が出力されま

す。このホストはCLARiX CX4 とSymmetrix VMAX LUNの 2 つのデバイスを認識しています。

powermt display dev=allコマンドはデバイスの一覧を表示します。図 10のグレー表示されている

箇所には、この移行に関するデバイス固有の情報が表示されています。emcpowerdとemcpoweraは、ソースとターゲット・デバイスのPowerPath名を表し、デバイス自体を表しているわけでは

ありません。

[root@lppa020 ~]# powermt display dev=all Pseudo name=emcpowerd

詳細レビュー 27

Symmetrix ID=000194900335 Logical device ID=01FA state=alive; policy=SymmOpt; priority=0; queued-IOs=0

Thin Target Device

======================================================================== ---------------- Host ------- - Stor - -- I/O Path - -- Stats --- ### HW Path I/O Paths Interf. Mode State Q-IOs Errors ========================================================================= 1 qla2xxx sdf FA 7gA active alive 0 0 3 qla2xxx sdk FA 8eA active alive 0 0  Pseudo name=emcpowera CLARiiON ID=FNM00092000177 [lppa020] Logical device ID=6006016038E02400E64F749233AADE11 [LUN 22] state=alive; policy=CLAROpt; priority=0; queued-IOs=0

Thick Source Device

Owner: default=SP A, current=SP A Array failover mode: 4 ===================================================================== ---------------- Host ----- - Stor - -- I/O Path - -- Stats --- ### HW Path I/O Paths Interf. Mode State Q-IOs Errors ======================================================================== 1 qla2xxx sdb SP A1 active alive 0 0 1 qla2xxx sdc SP B0 active alive 0 0 3 qla2xxx sdh SP A0 active alive 0 0 3 qla2xxx sdi SP B1 active alive 0 0

図 10:powermt display コマンドの出力

powermt display の出力には、HBA とデバイスの監視状況が示されます。パスの状態、ロード・

バランシング・ポリシー、デバイスの優先度などが表示されています。管理者がオペレーティン

グ・システム管理ツールまたは PowerPath の GUI や CLI を使用している場合、デバイスが仮想プ

ロビジョニングされたデバイスかどうかは確認できません(Host Copy による移行が Setup(セッ

トアップ)状態の間、PowerPath は仮想プロビジョニングされたデバイスを認識しますが、その

情報はユーザーには表示されません)。確認するには、Symmetrix Management Console を使用し

てデバイスのプロパティを表示できます。

図 11には、「lppa020_thin」という名前のシン・プールが表示されています。このプールには、

データ・デバイスが 1 つとシン・デバイスが 2 つあります。

注:Solutions Enabler CLI のコマンドでも同じデータを表示できます。詳細については、 「EMC Solutions Enabler Symmetrix Array Management CLI Product Guide」を参照してください。

注:ここでは、説明をわかりやすくするために、1 つのデータ・デバイスと 2 つのシン・デバイスだけ

を表示しています。Symmetrix 使用時のベスト・プラクティスとしては、シン・プールに複数のデー

タ・デバイスを含めることを推奨します。

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy

図 11:Symmetrix Management Console でのシン・プールの表示

図 12には、Bound Thin Devices(バインドされたシン・デバイス)とDATA Devices(データ・デ

バイス)のプロパティが表示されています。20 GBのシン・デバイスが 2 つバインドされていま

す。新しく作成されたデバイスを使用する移行に先だって、これらのデバイスへの割り当ては

0%です(シン・デバイス上のメタデータ要件を除く)。また、図 12には、20 GBのデータ・デ

バイスが 1 つ示されています。20 GBのシン・デバイス 2 つと 20 GBのデータ・デバイス 1 つに

よって、このシン・プールは 200%のオーバーサブスクライブとなっています。

図 12:シン・デバイスのプロパティ

詳細レビュー 28

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 29

図 10ですでに確認したように、ソースとターゲットの両デバイスにはEMC疑似デバイスが割り

当てられています。CX4 デバイスはemcpowera、VMAXデバイスはemcpowerdです。前述のとお

り、これらはデバイスを表す単なる名前に過ぎず、実際の物理デバイスを表してはいません。

CX4 デバイスを使用して、このデバイス上にファイル・システムが作成され、/temp1 サブディレ

クトリにマウントされています(これが移行のソース・デバイスです)。このサブディレクトリ

には 2 GBのファイルが 1 つあります。結果として、ファイル・システムの利用率はわずか 10%となっています。RHEL5 サーバ上でdf -kコマンドとls -lコマンドを実行すると、現在マウントさ

れているファイル・システムとディレクトリ・ファイルがそれぞれ表示されます(図 13)。  [root@lppa020 ~]# df -k Filesystem 1K-blocks Used Available Use% Mounted on /dev/mapper/VolGroup00-LogVol 62785344 4478528 55066064 8% / /dev/sda1 101086 16461 79406 18% /boot tmpfs 1958372 0 1958372 0% /dev/shm /dev/emcpowera 20642428 1916704 17677148 10% /temp1 [root@lppa020 temp1]# ls -l total 1871728 -rw-r--r-- 1 root root 1914756751 Dec 18 11:22 testfile.zip drwx------ 2 root root 16384 Dec 17 17:53 lost+found

図 13:ソース・デバイスのファイル・システム情報

ソース・デバイスとターゲット・デバイスが認識されているので、PowerPath Migration Enabler CLI のコマンドを使用して移行をセットアップできます。powermig setup コマンドでは、ソー

ス・デバイスとターゲット・デバイス、そして技術の種類を指定します。この移行セッションに

はハンドル 3 が割り当てられています。

[root@lppa020 ~]# powermig setup -src emcpowera -tgt emcpowerd -techtype hostcopy Setup migration? [yes]/no: y Migration Handle = 3  

powermig info コマンドは、状態に関係なく、すべての移行セッションの情報を表示します。 以下の出力では、ハンドルが 3、状態が Setup(セットアップ)と表示されています。

[root@lppa020 ~]# powermig info -all ========================================== Hnd Source Target Tech State === ========= ========= ======== ===== 3 emcpowera emcpowerd HostCopy setup   

powermig query コマンドは、「info」コマンドと似たような情報を表示します。ただし、queryでは、特定の移行セッションに関する情報が表示されます。

[root@lppa020 ~]# powermig query -handle 3 Handle: 3 Source: emcpowera Target: emcpowerd Technology: HostCopy Migration state: setup

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 30

powermig sync コマンドは、ハンドルに基づいて、1 つの移行ペアに対してデータの一括コピー

とアプリケーションからの書き込みのクローン作成を開始します。

[root@lppa020 ~]# powermig sync -handle 3 Start sync? [yes]/no: y

powermig query コマンドは移行の 中に随時実行して、移行の状態を確認できます(これは

powermig info についても同様です)。以下の出力では、新しい情報が示されています。throttle(スロットル)値と suspend time(一時停止時間)値が新たに表示されています。デフォルトでは、

throttle 値は 2、suspend time 値は 5 に設定されます。

[root@lppa020 ~]# powermig query -handle 3 Handle: 3 Source: emcpowera Target: emcpowerd Technology: HostCopy Migration state: syncing Percent InSync: 10% Throttle Value: 2 Suspend time: 5

powermig throttle コマンドを使用して、データのコピー速度を増減できます。次の例では、

throttle 値が 2 から 9 に変更されています。throttle 値(および suspend time 値)はホスト・ベース

ではなく、移行セッション単位で設定されます。

[root@lppa020 ~]# powermig throttle -throttlevalue 9 -handle 3 Set throttle option(s)? [yes]/no: y

powermig pause コマンドを使用すると、移行を一時停止できます。query コマンドで新しい状態

を表示します。

[root@lppa020 ~]# powermig pause -handle 3 Pause migration? [yes]/no: y [root@lppa020 ~]# powermig query -handle 3 Handle: 3 Source: emcpowera Target: emcpowerd Technology: HostCopy Migration state: syncing Percent InSync: 21% [PAUSED] Throttle Value: 9 Suspend time: 5

powermig resume コマンドを使用すると、一時停止した箇所から移行を再開できます。

[root@lppa020 ~]# powermig resume -handle 3 Resume migration? [yes]/no: y

データの一括コピーが完了すると、移行の状態が自動的に SourceSelected(ソース選択)になり

ます。

[root@lppa020 ~]# powermig query -handle 3 Handle: 3 Source: emcpowera

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy

Target: emcpowerd Technology: HostCopy Migration state: sourceSelected

powermig selectTarget コマンドを使用して、SourceSelected 状態から TargetSelected(ターゲット

選択)モードに移すことができます。管理者は SourceSelected 状態と TargetSelected 状態の間を前

後に切り替えることが可能です。powermig query で新しい状態を表示します。

[root@lppa020 ~]# powermig selectTarget -handle 3 Transition to targetSelected state? [yes]/no: y [root@lppa020 ~]# powermig query -handle 3 Handle: 3 Source: emcpowera Target: emcpowerd Technology: HostCopy Migration state: targetSelected

powermig commit コマンドは移行を終了し、アプリケーションからの書き込みのソース・デバイ

スへのクローン作成を停止します。powermig query で新しい状態を表示します。

[root@lppa020 ~]# powermig commit -handle 3 Commit migration? [yes]/no: y [root@lppa020 ~]# powermig query -handle 3 Handle: 3 Source: emcpowera Target: emcpowerd Technology: HostCopy Migration state: committed

powermt display dev=all コマンドを実行すると、commit コマンドの実行後の疑似デバイス番号の

変化がわかります。 移行前 • emcpowera が CX4 デバイス • emcpowerd が仮想プロビジョニングされた VMAX デバイス 移行後 • emcpowera が仮想プロビジョニングされた VMAX デバイス • emcpowerd が CX4 デバイス  [root@lppa020 ~]# powermt display dev=all Pseudo name=emcpowera Symmetrix ID=000194900335 Logical device ID=01FA state=alive; policy=SymmOpt; priority=0; queued-IOs=0 ============================================================================== ---------------- Host --------------- - Stor - -- I/O Path - -- Stats --- ### HW Path I/O Paths Interf. Mode State Q-IOs Errors ============================================================================== 1 qla2xxx sdf FA 7gA active alive 0 0 3 qla2xxx sdk FA 8eA active alive 0 0 Pseudo name=emcpowerd CLARiiON ID=FNM00092000177 [lppa020] Logical device ID=6006016038E02400E64F749233AADE11 [LUN 22]

Thin Device

詳細レビュー 31

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 32

state=alive; policy=CLAROpt; priority=0; queued-IOs=0 Owner: default=SP A, current=SP A Array failover mode: 4 ============================================================================== ---------------- Host --------------- - Stor - -- I/O Path - -- Stats --- ### HW Path I/O Paths Interf. Mode State Q-IOs Errors ============================================================================== 1 qla2xxx sdb SP A1 active alive 0 0 1 qla2xxx sdc SP B0 active alive 0 0 3 qla2xxx sdh SP A0 active alive 0 0 3 qla2xxx sdi SP B1 active alive 0 0

図 14:powermt display dev=all コマンドの出力

powermig cleanup コマンドを実行すると、移行ハンドルが削除され、オペレーティング・システ

ムやアプリケーションが混乱しないように、元のソース・デバイスから適宜情報が削除されます。

powermig query を実行すると、ハンドル 3 が存在しなくなっていることがわかります。

[root@lppa020 ~]# powermig cleanup -handle 3 Cleanup migration? [yes]/no: y [root@lppa020 ~]# powermig query -handle 3 PPME error(6): Handle not found

オペレーティング・システム側からは、疑似デバイス、アプリケーション、マウント・ポイント、

またはファイルに関して一切変更されていないことになります。予想どおり、df -k と ls -l を実

行すると、移行前と同じ情報が表示されます。  

[root@lppa020 ~]# df -k Filesystem 1K-blocks Used Available Use% Mounted on /dev/mapper/VolGroup00-LogVol 62785344 4478528 55066064 8% / /dev/sda1 101086 16461 79406 18% /boot tmpfs 1958372 0 1958372 0% /dev/shm /dev/emcpowera 20642428 1916704 17677148 10% /temp1 [root@lppa020 temp1]# ls -l total 1871728 -rw-r--r-- 1 root root 1914756751 Dec 18 11:22 testfile.zip drwx------ 2 root root 16384 Dec 17 17:53 lost+found

Symmetrix Management Console には、デバイスの新しい使用率とシン・プールの割り当てが表示

されます。新しいシン・デバイスはまだ完全には割り当てられていません。使用済みブロックだ

けが、仮想プロビジョニングされた VMAX デバイスにコピーされています。

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy

図 15:Symmetrix Management Console

ログ PowerPath Migration Enabler には、監査ログとエラー・ログの 2 種類のログがあります。監査メッ

セージには、移行状態の遷移と論理ユニットの障害発生状態が表示され、一般には移行のワーク

フローが記録されます。予期しないイベントが発生した場合は、エラー・メッセージと警告メッ

セージが記録されます。ログはデフォルトで有効になっています。

監査ログ 監査ログには、移行状態の変化につながる次のようなイベントがすべて記録されます。 • コマンドの実行 • データの一括コピー完了時の SourceSelected(ソース選択)状態への遷移 • 論理ユニット障害の検出 監査ログのメッセージ例を次に示します。

Dec 21 15:00:23 lppa020 emcpAudit: PPME: Info: handle=3, event=stateChanged, state=syncing, cmd=sync

このログ・エントリーは、移行ハンドル番号 3 に対して 12 月 21 日午後 3 時過ぎに powermig sync コマンドが実行されたことを示しています。移行の状態は syncing(同期中)です。つまり、

データの一括コピーとアプリケーションからの書き込みのクローン作成がすでに始まっています。

エラー・ログ エラー・ログ・メッセージには、移行の 中に発生した予期しないイベントが記録されます。一

部のエラー・ログ・メッセージは、powermig コマンドが失敗したときに画面上にも表示される

情報を報告します。

詳細レビュー 33

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 34

エラー・ログ・メッセージの例を次に示します。

Dec 21 14:49:16 lppa020 PPME: API: Error: Setup failed: PPME error(14): Devices already involved in a migration

このログ・エントリーは、ソースまたはターゲット・デバイスがすでに別の Migration Enabler 移行セッションで使用されているために、powermig setup コマンドが失敗したことを示しています。

ログの保存場所 PowerPath では、エラー、診断メッセージ、フェイルオーバー復旧メッセージが syslog ファイル

またはイベント・ビューア(Windows)のいずれか管理者が指定した方に記録されます。

表 6:ログのデフォルトの保存場所

プラットフォーム デフォルトの保存場所 Windows アプリケーション・イベント・ログ Linux /var/log/messages AIX /usr/safe.log Solaris /var/adm/messages HP-UX /var/adm/syslog/syslog.log

ログの詳細については、「PowerPath Family CLI and Systems Messages Reference Guide」を参照し

てください。

移行の経過時間の測定 移行時間を特定するには、監査ログのエントリーを活用できます。ただし、Host Copy には、 移行の進行状況を記録するログ・ファイルが別途あります。UNIX では、

/etc/emc/ppme/emcpmigd.log ファイルを参照できます。このファイルには、移行の開始時刻と終了

時刻を示すタイムスタンプが記録されています。 たとえば、ソースが emcpower29a、ターゲットが emcpower30a のハンドル 8 に関するメッセージ

をすべて取得するには、このファイルに対して次のコマンドを実行できます。 “grep "8:emcpower29a_emcpower30a" /etc/emc/ppme/emcpmigd.log”

開始メッセージを探します。

“2009/12/01 10:01:40 [8:emcpower29a_emcpower30a] STARTING HostCopy at block 0”

次に、コピーの完了メッセージを探します。

“2009/12/01 10:13:39 [8:emcpower29a_emcpower30a] copy complete.” Windows では、「hostcopy.log」ファイルを開きます。このファイルは、<インストール・ディレ

クトリ>\PowerCommon\Logs サブディレクトリにあります。前記と同様の開始メッセージと完了

メッセージが記録されています。

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy

暗号化を伴う移行 PowerPath Migration Enabler Host Copyには、PowerPath Encryption with RSA向けのデータ移行機能

があります。データをその場で暗号化することはできないため、Host Copyでは、アプリケー

ションをオンラインで維持したまま停止することなく、平文データを暗号化されたLUNに移行し

ます(図 16)。

平文を格納するデバイスから暗号化されたデバイスに移行する場合は、PowerPath暗号化メタ

データを格納できるように、ターゲット・デバイスがソースよりも少なくとも 65 KB大きくなく

てはなりません。Host Copyはソース・デバイスから平文データを読み取ります。PowerPath Encryption with RSAがこのデータを暗号化します。Host Copyがそのデータをターゲット・デバイ

スに暗号文として書き込むことで、一連の処理が完了します。PowerPath拡張機能の順序につい

ては、8ページの図 2を参照してください。

図 16:Host Copy による暗号化されたデバイスへの移行

スロットルのスループットの例 移行速度に影響する要因はいくつかあります。Host Copy のパフォーマンスをたった 1 つの指標

で測ることはできません。前述したように、移行速度は suspend time(一時停止時間)値と

throttle(スロットル)値の設定の組み合わせ、ホストのリソース、競合作業負荷、移行の所要時

間を左右するアレイ特性によって決まります。throttle 値の調整が、移行速度を増減する主な手段

となります。 次に示す構成はテスト環境です。この構成では、PowerPath 5.3 を実行する 1 台のサーバで、

Synching(同期中)状態の Host Copy セッションが 20 個同時に実行されています。各セッション

が 4 GB の LUN を Symmetrix VMAX から VMAX に移行しています。シック・デバイスからシッ

ク・デバイスへの移行です。仮想プロビジョニングや暗号化はここでは関与していません。合計

20 回の繰り返しを伴うテスト・セットを 2 つ実施します。各テスト・セットの唯一の違いは、

HBA ポートの数です。図 22 は、各テスト・セットで導き出されたコピー速度を示しています。

テスト・セット 1: • 2 つの HBA ポートと 2 つの FA ポート • 4 GB の VMAX LUN を使用した 20 個の移行セッション • throttle 値を 0~9 に設定した 10 個のテスト • 図 17(四角形を結んだ線)

詳細レビュー 35

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テスト・セット 2: • 4 つの HBA ポートと 4 つの FA ポート • 4 GB の VMAX LUN を使用した 20 個の移行セッション • throttle 値を 0~9 に設定した 10 個のテスト • 図 17(菱形を結んだ線)

顧客構成には可変要素があり、結果はそれぞれに異なります。次のテスト結果は一例に過ぎません。

環境を次に示します。

Solaris 10(SPARC) オペレーティング・

システム: PowerPath 5.3 for Solaris

Sun Fire T200 サーバ HBA Emulex LP11002 SAN Brocade 5300 ソース・ストレージ VMAX、4 GB LUN

ターゲット・ ストレージ

VMAX、4 GB LUN

図 17:各 throttle 値を使用した 20 の Host Copy スループット・テスト

図 17から、throttle値を高くするほど、データの一括コピーの速度が遅くなるようすがわかります。

throttle値が高いほど、データの一括コピーの所要時間が全体時間に占める割合が少なくなります

(図 8)。2 つのHBAを使用したテスト・セットと 4 つのHBAを使用したテスト・セットの結果の

コピー速度は、throttle値が増加するに従い、収束していきます。

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy

この例では、個々のテストの 中には throttle 値を変更していません。しかし、管理者は移行状

態が Synching の間に throttle 値を変更して、コピー速度を増減できます。

注:図 17は、データが移行される速度を表しています。データ・ブロックの移行には読み取り操作と

書き込み操作の両方が必要になるため、移行時の実際のI/O速度は 2 倍になります。この図は、データ

の一括コピーに的を絞っています。これらのテストでは、アプリケーションからの書き込みI/Oは対象

としていません。移行中にホストでI/O集中型のアプリケーションが実行されている場合は、Host Copyのスループットが低下する可能性があります。低下の程度は、環境によって異なります。

PowerPath Migration Enabler のインストール PowerPath Migration Enabler のバイナリは、PowerPath のインストール・コンポーネントです。

UNIX オペレーティング・システムでは、新規インストール時およびアップグレード時に、

PowerPath Multipathing と高度な機能が完全にインストールされます。 Windows オペレーティング・システムでは、InstallShield ウィザードに[Typical Install]、

[Custom Install]、[Complete Install]の 3 つのオプションがあります。

図 18:PowerPath InstallShield ウィザード

Windows 2003 および Windows 2008(Hyper-V を含む)では、[Typical Install]がデフォルトで

選択されています。このセットアップの種類では、PowerPath Migration Enabler のコードはインス

トールされません。PowerPath Migration Enabler がインストールされているかどうかは簡単に確認

できます。コマンド・プロンプトで「powermig」と入力し、Enter キーを押します。 PowerPath Migration Enabler のコマンドが表示されない場合、PowerPath Migration Enabler はイン

ストールされていません。出力には次のように表示されます。

C:\>powermig 'powermig' is not recognized as an internal or external command, operable program or batch file.

この場合は、InstallShield ウィザードを再度実行し、[Modify]を選択する必要があります。

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy

図 19:インストールされている既存の PowerPath の変更

[Next]をクリックした後、インストールするコンポーネントを選択できます。[PowerPath Migration Enabler]、[PowerPath Encryption with RSA]、[Array Support]の 3 つの機能があり

ます。[Migration Enabler]をクリックした後、図 20のいずれかのオプションを選択します。

[Next]をクリックします。いずれのオプションを選択した場合も、同じバイナリ・セットがイン

ストールされます。

図 20:Migration Enabler ファイルの選択

注:Windows 上にインストールされている PowerPath を変更した後、変更内容を有効にするには、ホス

トを再起動する必要があります。UNIX ベースのオペレーティング・システム上では、完全な

PowerPath パッケージがデフォルトでインストールされるため、変更は不要です。

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 39

PowerPath Migration Enabler のライセンス

PowerPath Multipathingの価格は、サーバごとのCPUソケット数に応じて階層的に設定され、x86サーバおよび非x86 サーバ用のライセンスがあります。ボリューム・ライセンスも用意されてい

ます。PowerPath Multipathingは、引き続きCelerra® NX4 およびNS-120、CLARiX AX4、CX3-10、およびCX4-120 アレイにバンドル提供されます。 PowerPath Migration Enablerは、PowerPath Multipathingライセンスの新規顧客および既存顧客に無

償で提供されます。現時点でEMCとのソフトウェア保守契約を締結している顧客は、PowerPath Migration Enablerのライセンス・キーを取得できます。取得申請は、サポートされているどの技

術(Host Copy、Open Replicator、TimeFinder/Clone、Encapsulation)についても可能です。Host Copyは完全にホスト・ベースとなっています。システムを停止することなく移行を実施するため

に、外部の支援ハードウェアやソフトウェアは不要です。つまり、Host Copyには、基盤となる

移行アプリケーションは不要です。この点は、PowerPath Migration Enabler(EMC Open Replicator for Symmetrix用)、EMC TimeFinder/Clone(Symmetrix用)、またはPowerPath Migration Enabler(EMC Invista®用)とは異なります。これらの製品には、個別のライセンスが必要です。 ベスト・プラクティスとして、可能な限り 新バージョンの PowerPath の使用を推奨します。

ライセンスの取得 PowerPath Migration Enabler ライセンス(無償)の取得に際しては、顧客が有効な保守契約を締結

していることを EMC 担当営業が確認します。その後、EMC 担当営業はメールで EMC License Keys グループに連絡し、適切なライセンスを取得します。 サーバごとに個別のライセンスは必要ありません。お客様の移行ニーズに対応するには、1 顧客

につき各テクノロジーごとに 1 つずつライセンスを取得すれば十分です(複数の技術を使用する

場合)。移行の要件に応じて、PowerPath Migration Enabler の複数のライセンスを同一ホスト上で

同時に使用できます。 PowerPath Migration Enabler ライセンスは、保守契約の対象となる PowerPath の利用環境のどの

サーバにも適用できます。 ライセンスの取得に関しては、EMC担当者にメール([email protected])でお問い合わせく

ださい。 PowerPath ライセンス・キーの例:

PowerPath Multipathing: C:\> powermt check_registration Key xxxx-xxxx-xxxx-xxxx-xxxx-xxxx Product: PowerPath Capabilities: All

  PowerPath Migration Enabler:

C:\> powermt check_registration Key xxxx-xxxx-xxxx-xxxx-xxxx-xxxx Product: PowerPath Migration Enabler Capabilities: HOSTCOPY Key xxxx-xxxx-xxxx-xxxx-xxxx-xxxx Product: PowerPath Migration Enabler

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 40

Capabilities: Open_Replicator Key xxxx-xxxx-xxxx-xxxx-xxxx-xxxx Product: PowerPath Migration Enabler Capabilities: Invista_Encapsulation Key xxxx-xxxx-xxxx-xxxx-xxxx-xxxx Product: PowerPath Migration Enabler Capabilities: SymClone (a.k.a. TimeFinder/Clone)

PowerPath Encryption with RSA:

C:\> powermt check_registration Key xxxx-xxxx-xxxx-xxxx-xxxx-xxxx Product: PowerPath Encryption with RSA

暗号化されたデバイスの移行に関するライセンス PowerPath Encryption with RSA は、PowerPath Migration Enabler Host Copy を利用して、暗号化され

た(暗号文)デバイスを移行します。PowerPath Encryption with RSA のライセンスは、暗号化さ

れたデバイスをソースまたはターゲットとしたデータ移行に対応しています。PowerPath Migration Enabler Host Copy のライセンスをインストールする必要はありません。 平文を格納するデバイスだけを移行する予定の場合(ソースまたはターゲットとして暗号化され

たデバイスを使用しない場合)は、PowerPath Migration Enabler Host Copy のライセンスが必要です。 ライセンスの適用 PowerPath のインストール中、管理者は PowerPath をアクティブ化する前に、1 つまたは複数のラ

イセンス・キーを追加できます。必ずしもインストール時にライセンス・キーを追加しなくても

かまいません。PowerPath Migration Enabler のバイナリが読み込まれている場合は、アプリケー

ションやオペレーティング・システムを停止することなく随時新しいライセンスを追加できます。

前のセクションで述べたとおり、PowerPath for UNIX はデフォルトで PowerPath の高度な機能を

すべて読み込みます。Windows では、インストール時に[Custom Install]または[Complete Install]を選択するか、既存のインストールの変更時に[Modify]を選択する必要があります。 PowerPath for UNIXまたは 新版のPowerPath for Windowsでは、emcpregコマンドを使用できます。

Windowsでは、PowerPath Licensing Toolを使用できます。このツールには、[スタート]>[す

べてのプログラム]>[EMC]>[PowerPath Licensing Tool]からアクセスできます (図 21および図 22を参照)。

[root@lppa020 temp]# emcpreg -install =========== EMC PowerPath Registration =========== Do you have a new registration key or keys to enter?[n] y Enter the registration keys(s) for your product(s), one per line, pressing Enter after each key. After typing all keys, press Enter again. Key (Enter if done): xxxx-xxxx-xxxx-xxxx-xxxx-xxxx

図 21:UNIX 上での PowerPath ライセンスの登録

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy

図 22:Windows 用の PowerPath Licensing Tool の GUI

他の EMC 移行製品との比較 PowerPath Migration Enabler は、疑似デバイスを使用して、システムを停止することなく移行を実

施する多用途の移行ツールです。EMC には、この他にも数々の移行製品があります。これらの

製品を主な相違点とともに次に紹介します。 • Open Migrator — 種類の異なるボリューム間で移行できます。ネイティブ・ファイル・シス

テムを VxVM ボリュームに移動できます。PowerPath Migration Enabler は、この種の移行に

は対応していません。ただし、Open Migrator では、移行の完了後にアプリケーションを再構

成する際にダウンタイムが必須となります。

• CLARiX SAN Copy™ — データの移動中はアプリケーションが必ず停止します。

• Symmetrix Open Replicator — いくつかのモードがありますが、一般には、移行が開始して新

しい LUN に切り替わるまでの間、アプリケーションを停止する必要があります。

• Symmetrix TimeFinder/Clone — 「同一アレイ」上の移行に過ぎず、Open Replicator と同様のア

プリケーションのダウンタイムが生じます。

注:PowerPath Migration Enabler と併用した場合、Open Replicator と TimeFinder/Clone もシステムを停止

することなくデータを移行できます。

制限事項 PowerPath Migration Enablerは次の処理をサポートしていません。 • ページング・デバイスやスワッピング・デバイスの移行 • ブート・デバイスの移行 • 移行中の PowerPath のアンインストールまたはアップグレード ターゲットの論理ユニットには次の条件が適用されます。

• ソースの LUN よりサイズが大きくなければなりません。平文を格納するソース・デバイス

から暗号化されたターゲット・デバイスに Host Copy を使用してデータを移行する場合は、

ターゲット・デバイスがソースよりも 65 KB 大きいことが必要です。 • ボリューム・マネージャの管理下に置くことはできません。 • I/O の対象となっていてはいけません。

詳細レビュー 41

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EMC PowerPath Migration Enabler Host Copy 詳細レビュー 42

結論 EMC PowerPath Migration Enabler は、システムを一切停止することなく、または停止期間を 小

限に抑えたうえで、ストレージ・システム間または 1 台のストレージ・システム内の論理ユニッ

ト間でデータを移行するツールです。Migration Enabler はホストに常駐し、移行プロセスの進行

中もアプリケーションが引き続きデータにアクセスできるように取り計らいます。疑似デバイス

名を使用する場合は、システムを停止することなく移行を実施できます。ネイティブ・デバイス

名を使用する場合は、移行時に 小限のシステム停止を伴います。これは、移行済みデータを格

納したターゲット・デバイスに新しいデバイス名を使用してアクセスするようにアプリケーショ

ンを再構成する必要があるためです。 Host Copy は、サポートされている 4 種類の技術の 1 つです。仮想プロビジョニングされたデバ

イスへの移行、暗号化されたデバイスへの移行、EMC 製およびサード・パーティ製のアレイの

移行に対応しているため、 も柔軟度の高い技術といえます。

関連資料 PowerPath Migration Enabler の詳細については、次の資料を参照してください。 • 「PowerPath Migration Enabler User Guide」 • 「PowerPath Migration Enabler Release Notes」 • 「PowerPath Migration Enabler Support Matrix」