主催▶公益財団法人 SBS静岡健康増進センター、静岡新聞社・静岡放送 後援▶静岡県、 (一社)静岡県医師会、 (一社)静岡県歯科医師会、 (公社)静岡県薬剤師会、静岡市 公益財団法人 SBS 静岡健康増進センター 〒422-8033 静岡市駿河区登呂 3-1-1 電話▶054(282)1109 URL▶http://sbs-smc.or.jp 増える新型うつ病平成に入り、精神科に通院されている方は年々増加しており、中でもうつ病などの気分障害が著しく増加しています。うつ病になりやすい性格があるのかどうか。結論から申し上げますと、現在、うつ病になりやすい特異な性格傾向はないとされています。かつて、うつ病になりやすい性格として「責任感が強く、きちょうめんな性格」というイメージがありました。例えば、たんすや冷蔵庫の中身をきちんと整理整頓するなど、生活の諸事全般にわたり秩序愛に特徴付けられるような性格を「メランコリー親和型」と呼びます。こうした性格の人が、職場の異動や転居など、たとえ昇進や新居の建築のような一見すると不幸とは思えない出来事も契機にしてうつ病を発症します。私が研修医の頃は、このような発症をする方が多くいました。しかしながら近年、「新型うつ病」「現代型うつ病」「ディスチミア親和型うつ病」などと呼ばれる、従来とは異なったタイプのうつ病が増加してきました。例えば、「ディスチミア親和型」と呼ばれる病前性格は、「メランコリー親和型」とは異なり、社会的役割や規範へのこだわりは認められません。焦燥感や抑制、疲弊、罪悪感などの症状よりも、不全感と倦怠(けんたい)感、衝動的な自傷などが目立つとされています。治療においてうつ病には薬物療法が極めて有効で、休息と投薬により良好に職場復帰できたのですが、近年のうつ病は、いわゆる職場復帰訓練など職場復帰に向けた準備を入念に行うことが必要になるケースも多くなりました。なお、うつ状態にある患者さんは、常時憂うつな気分でいるわけではなく、短時間で気分が変わりやすいことには注意すべきです。職場環境の変化に要因近年のうつ病の増加の原因は、現代社会、特に職場における過重な心理的負荷に原因があるとされ、これを「職場結合性うつ病」と呼んでいます。長時間労働や職場規範の厳格化、あるいはICT(情報通信技術)の導入によってあらゆる事がスピーディーになったことや、インターネットや携帯電話の普及により仕事のオン・オフの切り替えができにくくなっていることがあります。また、職場での「われわれ」という仲間意識や人間関係の希薄化がハラスメントやいじめとなり、うつ病の発症につながりやすいこと、さらに家族関係の変化もその背景にあるとしています。本人の性格や素質に関わりのないところで、うつ病を発症してしまうのです。明治中期から大正初期にかけての「神経衰弱」の流行と現代のうつ病の増加との類似性について指摘する専門家もいます。明治維新と第二次大戦後の高度成長という日本の〝創業の時〞を過ぎて起きた現象なのかもしれません。うつ病に関連した現象として、「自殺」の問題があります。日本では戦後3 回、自殺者が増えた時期がありました。第一のピークは1953〜59 年で、欧米と比較して、青年や、特に女性と老人の自殺率が著しく高いことが特徴でした。第二のピークは83 〜86 年、第三のピークは98 〜2011年で、このときは中高年の男性の自殺が増加しました。日本やお隣の韓国は世界的にみて自殺の多い国として知られ、文化的、宗教的な要因があるとされます。わが国において自殺という現象は、国民のメンタルヘルスを映し出す鏡と言えましょう。ナーバスに生きる最後に、ターマン研究についてお話しします。これは、1921年から、当時10 歳前後の成績優秀な児童1528人を対象に、どのような人生を歩んでいくのか5 〜10 年おきにインタビューを行い80 年にわたり追跡調査したものです。この中で心身ともに健康で幸福な人生を歩まれた人は、どんな人だったのでしょう。少し意外な結果が得られています。すなわち、健康長寿を全うされた人の性格は、勤勉で良心的、誠実で真面目、慎重、思慮分別があり、粘り強い、準備万端怠りないというものでした。そこから浮かび上がってくる人物像は、細かいことを気にしない性格とは程遠い人であるといえます。現在、「神経過敏」などネガティブな意味で用いられる「ナーバス(nervous)」という言葉が、かつては「強い、元気な」というポジティブな意味で使用されていたことと、この研究は重なり合うところがあるように思われます。ナーバスな生き方こそ、幸福の秘訣と言えるかもしれません。全5回シリーズ▼第1回・上▲公益財団法人SBS静岡健康増進センター公開講座「聞いてなるほ ど! いきいきライフ」の 2016 年度シリーズ(全 5 回)の第 1 回が このほど、静岡市葵区のしずぎんホール「ユーフォニア」で行われ た。第 1 回の前半、県立こころの医療センター院長村上直人さんの 講演「中高年の病としての“うつ病”を考える」の内容を紹介する。 〈企画・制作/静岡新聞社事業部〉 中高年の病としての 〝 うつ 病 〟を 考える 誠実で真面目なほど幸福で長生きに村上直人さん県立こころの医療センター院長むらかみ・なおと 1983 年千葉大医学部卒。同年、浜松医大精神科 で精神療法、特に家族療法を中心とした精神医学を学ぶ。85年国立 療養所天竜病院で中学生の登校拒否を中心に児童思春期精神医学に従 事。89年好生会三方原病院。精神医学の本道である単科精神病院で の臨床に従事。92 ~ 2005年榛原総合病院精神科で榛南地区の地域 精神医学に従事。05年から現職。県内の重症例の診療のほか、精神科 救急や医療監察法を立ち上げる。 遠山所長 の 健 康 セミナー Dr.TOYAMA’ s eye 1941年生まれ。県立静岡高、京都大医学部卒。県立総合病院の外科医長、副院長を歴任し、2006年よりSBS静岡健康増進センター所長。遠山和成今年の健康講座は「カラダとココロに元気を」で す。登壇されたのはこころの医療センター村上院 長。テーマは中高年の病としてのうつ病で、香山 リカさん以来 6 年ぶりの心の病の講演でした。 その第一声、昔と今、日本と世界のうつ病の症状 は違いますが、共に心の病です。日本は自殺が多 く、今でも「日本人の健康脅威で堂々7位」。ちな みに第1 位腰痛、第9 位頭頸(けい)部痛(別名・ スマホ症候群)、共に弱筋日本の特徴です。またキ リスト教、イスラム教等は死んでも自殺は許さず 墓の中まで追いかけ厳しい罰を下します。 第二声、以前の躁(そう)うつ病と今のうつ病は 違い、全国で通院患者さんは 290 万人、内服薬多 く、薬品会社は大万歳ですが、病気とは思えない人 も多く、頭痛、不眠、めまい、肩こりが多発症状。 その原因の一つ(前にも書きましたが)、現在はス トレス社会。小家族主義、パソコン、メールの増 加で顔が見えない。人類の本能「群れる」を投げ捨 てた社会が生まれ、自分は自分、自分以外は他人の 世の中でいじめない苛(いじ)めが目立ち、声をか けても応答なし、誘っても何も言わずに昼飯1人 でコンビニ弁当、上司が善意で声掛けしてもパワ ハラ、嫌がらせと誤解され、仲間意識も職場で失 せ、家族、友人、なんだそれ世界となるでしょう。 ここで先生の一言。「いけません、職場で同僚は 必要でしょう。」救われました。私は職場の皆と golfのJ.I師匠、オノちゃんを大事にします。ハイ、 ジャジャジャン。