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岩手県花き振興計画 平成 31 年3月 岩手県農林水産部
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岩手県花き振興計画5 全国における1世帯あたりの切り花購入金額は、平成9年の13,130円をピーク...

Jan 04, 2020

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Page 1: 岩手県花き振興計画5 全国における1世帯あたりの切り花購入金額は、平成9年の13,130円をピーク に減少傾向となっており、平成29年では8,757円と、ピーク時に比べ4,000円以

岩手県花き振興計画

平成 31年3月 岩手県農林水産部

Page 2: 岩手県花き振興計画5 全国における1世帯あたりの切り花購入金額は、平成9年の13,130円をピーク に減少傾向となっており、平成29年では8,757円と、ピーク時に比べ4,000円以

目 次

はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

第1 現状と課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

1 全国の情勢

⑴ 生産の動向

⑵ 流通及び販売の状況

⑶ 輸出入の状況

⑷ 消費の状況

2 本県の現状と課題

⑴ 県産花きの生産状況と課題

⑵ 花き作経営体の状況と課題

⑶ 産地の状況と課題

⑷ 需要の動向と課題

第2 目指す姿と目標指標 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9

第3 基本方針と推進方策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10

1 産地の中核を担う花き作経営体の育成

2 生産部会等を核とした花き産地の再強化

3 県産花きの生産拡大

4 県産花きの利用拡大

第4 品目別振興方策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17

1 推進品目

2 実需ニーズに対応した新たな品目

第5 計画の推進体制及び評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20

資料№3

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はじめに

策定の趣旨

広大な県土を有する本県では、夏期冷涼な気候や水田等を活用しながら、露地栽培では

生産量日本一を誇るりんどうをはじめ、小ぎくや一輪ぎく、施設栽培では、ゆりやトルコ

ギキョウ、鉢物りんどうなど、多様な花きが生産されています。

また、国では、「花きの振興に関する法律」(平成 26 年 12 月施行)に基づき、「花き産

業及び花き文化の振興に関する基本方針」を策定し、都道府県はこれに即した「振興計画」

の策定に努めることとされ、これらを踏まえながら、県では、平成 27 年3月に「岩手県花

き振興計画」を策定し、花きの生産振興や需要拡大に取り組んできました。

一方、本県の花き生産は、生産者の高齢化や生産コストの増加、ライフスタイルの多様

化による需要の減少などにより、生産力の弱体化が進行しており、今後、産地を維持・発

展をさせていくためには、需要期を中心に確実に供給できる生産体制の確立や、経営規模

の拡大や新規生産者の確保による産地を牽引する経営体の育成に取り組む必要があります。

さらに、花は、暮らしに潤いや安らぎなどをもたらすことから、心豊かな生活を実現し

ていく上で、日常生活の中での花きの活用を推進することによって、更なる花きの需要拡

大につながっていくものと考えています。

こうした現状や課題を踏まえ、関係機関・団体と連携し、本県の花き振興を図るための

目指す姿や基本方針、具体的取組の推進方策、品目別の推進方策等を示した「岩手県花き

振興計画」を策定しました。

計画の位置付け

「いわて県民計画(2019~2028)」及び「政策推進プラン」(計画期間:2019年~2022年)

に基づく、花きの振興の具体的な取組計画として、位置付けます。

計画の期間

計画の期間は、2019年度から 2022年度までの4年間とします。

なお、社会経済情勢や消費者ニーズの変化、計画の進捗状況などを踏まえ、必要に応じ

て、計画の内容を見直すなど、弾力的に対応していきます。

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第1 現状と課題

1 全国の情勢

⑴ 生産の動向

全国における花きの産出額は、平成 28年で 3,788億円となっています。そのうち、

切り花類は 2,152億円で 57%を占め、次いで鉢物類が 971億円で 26%、花壇苗もの

類、花木類、芝類、地被植物類、球根類の順となっています(表1)。

国内の花き生産は、平成に入ってから拡大し、作付面積は平成7年に 48,421ha、

産出額は平成 10年に 6,346億円まで伸びましたが、その後、減少傾向に転じ、近年

はほぼ横ばいで推移しています(図1)。

花き・花木類の販売農家数は、生産者の高齢化や後継者等担い手の不足により年々

減少し、平成 27年は 20年前の約半数となっています(図2)。

表1 全国の花き産出額の内訳(平成28年)

品目産出額(億円)

合計 3,788 切り花類計 2,152  きく 680  ゆり 217  ばら 180  切り枝 167  トルコギキョウ 120  カーネーション 117  スターチス 55  ガーベラ 45  アルストロメリア 38  切り葉 38  かすみそう  36  洋らん類 36  りんどう 34  その他切り花類 389 鉢もの類計 971  洋ラン類  348  花木類 161  観葉植物 118  シクラメン 87 花壇用苗もの類(花き苗類)計 319 花木類計 215 球根類計 19 芝計 78 地被植物類計 34

資料:平成28年花木等生産状況調査

図1 全国の花き作付面積・産出額の推移

(農林水産省「花き類の生産状況等調査」「花木等生産状況調査」)

図2 全国の花き販売農家数の推移

(農林水産省「農林業センサス」)

作付面積(ha) 産出額(億円)

農家数(戸)

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⑵ 流通及び販売の状況

花きの流通量(金額ベース)は平成 10年をピークに減少する一方、市場経由率は

約8割と、青果物が約6割であるのに比べて高い状況を維持しています(図3)。

東京都中央卸売市場における、せりの割合は約2割で、野菜や果実に比べて高い

ものの、その割合は低下傾向にあり、相対取引などが増加していることが伺えます

(図4)。

花き等取扱業の事業者数は、花き専門小売業が事業者数で6割、販売額で7割と

高い割合を占めており、生花店等の専門店による販売が中心となっています(図5)。

花きの平均単価は、切り花では各品目とも横ばい傾向となっています。鉢物りんど

うでは、以前より単価が低下しているものの、鉢花全体と比較し、高単価となって

います(図6)。

図3 全国の花きの総流通量及び卸売市場経由率

(農林水産省「H29卸売市場データ集」)

図4 東京都中央卸売市場におけるせりの割合(金額ベース)

(農林水産省「H29卸売市場データ集」)

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28

野菜 果実 花き

図5 花き等取扱業の事業者数と販売額(H26 年)

(農林水産省「花きの現状について」)

単位:億円

図6 品目別平均単価の推移 ※左:切り花 右:鉢花

(東京都中央卸売市場「市場統計情報」)

トルコギキョウ

ゆり

切り花全体

りんどう

小ぎく

単位:円(一本あたり)

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⑶ 輸出入の状況

ア 輸入

切り花の国内出荷量は減少していますが、輸入量は増加傾向であり、流通量に

占める輸入割合は年々高まっており、平成 29年では数量ベースで 27%となってい

ます(表2)。

国内の作付規模が縮小傾向であることに加え、夏季の猛暑など、異常気象が多

い近年では、国内産地の供給が不安定となっており、輸入切り花への代替需要が

強まっています。

品目としては、カーネーション、バラ、キク類といった主力品目で輸入割合が

高く、主な輸入相手国は、コロンビア、マレーシア、中国等となっています。

表2 切り花の国内出荷量・輸入量の推移 (単位:億本)

H7 H12 H17 H22 H27 H28 H29

国内出荷量 55.8 55.9 50.2 43.5 38.7 37.8 37.0

輸入量 6.6 8.3 10.4 13.2 12.7 13.1 13.4

計 62.4 64.2 60.7 56.7 51.4 50.9 50.4

切り花輸入割合 11% 13% 17% 23% 25% 26% 27%

(農林水産省「花きの現状について」)

イ 輸出

平成 29年の花きの輸出額は約 135億円で、初めて 100億円を突破しました。輸

出額の大部分は植木・盆栽・鉢ものですが、切り花については着実に増加してお

り、平成 29年には 8.6億円となっています(図7)。

⑷ 消費の状況

ア 消費の現状

全国の消費規模は 1.1 兆円であり、うち

個人消費が 8,220億円、業務需要が 2,786

億円となっています。業務需要では葬儀需

要が 1,790 億円と業務需要の6割以上を

占めています(表3)。

国内の消費規模 1.1兆円

内訳 個人消費 8,220億円

業務用需要

葬儀用 1,790億円

婚礼用 368億円

稽古用 422億円

その他(リース等) 206億円

表3 国内の消費規模と内訳(平成 28年)

(農林水産省「花きの現状について」)

単位:億円

図7 花き輸出額の推移 (農林水産省「花きの現状について」)

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全国における1世帯あたりの切り花購入金額は、平成9年の 13,130円をピーク

に減少傾向となっており、平成 29年では 8,757円と、ピーク時に比べ 4,000円以

上減少しています(図8)。年齢別の年間切り花購入額は、29 歳以下の若年層の

購入金額が低くなっています(図9)。

イ 利用拡大の取組

花き文化の振興を図るため、児童等に対する花きを活用した教育(花育)や、

各地域における花きを活用したイベント等の開催、花きの新たな文化の創出に向

けたプロモーション活動等(表4)が展開されています。

また、近年では、花きのある空間ではストレスが軽減することや、花きを利用

した認知機能のリハビリテーション法が開発される等、心身にプラスの効果が認

められてきており、病院や社会福祉施設で花きを積極的に利用する事例もありま

す。

表4 新たな花文化の創出に向けたプロモーション事例

取組事例 提案内容 想定品目 実施主体

フラワー

バレンタイン

バレンタインデーに男

性から女性への花贈り

バラ等 (一社)花の国日本協

議会

母の日参り 母の日のお墓参り スターチス等 JA紀州母の日参り

プロジェクト会議

ウイークエンド

フラワー

「花と素敵な週末を」を

キャッチフレーズに、自

宅で旬の花を楽しむ

品目を特定しな

い(季節の花)

(一社)花の国日本協

議会

図8 切り花の一世帯あたり年間購入額の推移

(総務省「家計調査年報」二人以上の世帯)

図9 世帯主年齢別年間切り花購入額(平成 29 年)

(総務省「家計調査年報」二人以上の世帯)

Page 8: 岩手県花き振興計画5 全国における1世帯あたりの切り花購入金額は、平成9年の13,130円をピーク に減少傾向となっており、平成29年では8,757円と、ピーク時に比べ4,000円以

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2 本県の現状と課題

⑴ 県産花きの生産状況と課題

本県花きの産出額は、ピーク時の平成 14年対比で 53%、平成 25年対比で 77%と

減少しており、全国及び東北地方と比較して、高い減少率となっています(表5)。

表5 全国及び本県の花き産出額の推移 (単位:億円)

項 目 H14 H20 H25 H26 H27 H28 H29 H29/H14 H29/H25

全国 4,471 3,656 3,485 3,437 3,529 3,529 3,438 77% 99%

東北 318 283 267 266 280 265 251 79% 94%

岩手 68 62 47 44 44 39 36 53% 77%

(農林水産省「生産農業所得統計」)

品目ごと生産額の推移を見ると、主力のりんどうが平成 14年をピークに漸減して

いること、平成 20年前後の資材及び燃油の高騰により、ゆり等の施設切り花や鉢花

で大きく減少したこと、平成 25年以降小ぎくが減少傾向に転じたことが、花き全体

の産出額低下に影響しています(図 10)。

県ではこれまで、りんどうのオリジナル品種を 28 品開発しており、特に平成 26

年度以降は、盆、彼岸需要期向けの切り花品種を中心に、以下の7品種を開発しま

した(表6)。

表6 近年県が開発したりんどう品種(以下はすべて青色品種)

品種名(商標登録名称) 開花時期 開発年度

切り花

いわてVEB-7号(いわて夢ぎんが) 7月中旬 H26

いわてEB-1号(恋りんどう) 8月上旬 H26

いわてEB-2号 8月上中旬 H27

いわてMB-2号 8月中旬 H27

いわてLB-5号 9月中旬 H28

いわてLB-6号 9月下旬 H28

鉢花 Bzc-1 8月上旬~10月上旬 H30

図 10 主要品目の生産額の推移(農産園芸課調べ)

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りんどうでは、全国出荷量に占める本県のシェアは約6割と高い値ですが、将来

的には、全国の出荷量は増加する一方、本県シェアは低下することが予測されます

(図 11)。価格形成等の影響力を発揮するため、シェアを維持する必要があります。

⑵ 花き作経営体の状況と課題

花き作経営体数は減少傾向ですが、200a 以上の大規模経営体は増加傾向です(表

7)。一方、経営管理能力の向上、雇用労働力の確保や作業の省力化、新たな販売先

の確保、資材費や燃料費の低減が課題となっています。

表7 花き栽培面積規模別農家数の推移 (単位:戸)

面積 H17 H22 H27 H27/H17比

10a未満 930 828 713 77%

10~30a 883 842 618 70%

30~50a 384 378 283 74%

50~100a 262 283 256 98%

100~150a 55 91 73 55%

150~200a 77 14

200a以上 12 34 38 317%

合計 2,548 2,470 1,981 78%

(農林水産省「農林業センサス」)

りんどうでは、1経営体あたり栽培面積は拡大、生産額は増加傾向にあり(表8)、

更に規模拡大を促進するため、意欲ある農業者への支援を強化する必要があります。

表8 りんどうの1経営体あたり栽培面積及び生産額

H25 H29 H29/H25

栽培面積 37a 44a 119%

生産額 300万円 339万円 113%

(農産園芸課調べ)

図 11 りんどうの出荷本数の将来予測

農林水産省「花き生産出荷統計」より作成

※予測値は Excelの FORECAST関数により算出

西暦

出荷本数

(千本)

2022年予測値

全国

岩手県

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⑶ 産地の状況と課題

各産地とも、生産者の高齢化等により、産地規模は伸び悩み~縮小傾向であるた

め、産地を牽引する若手生産者の育成と、新規生産者の確保が必要です。

また、花束加工業者から要望の高い短茎出荷に取り組む産地では、安定した販路

の確保につながっており、今後もニーズに対応できる生産供給方式の導入が必要で

す。

⑷ 需要の動向と課題

花き全体の需要が伸び悩む中、冠婚葬祭や贈答用等の用途に応じて、販売ターゲ

ットを想定し、プロモーションを展開することが重要となっています。

また、りんどうでは仏花利用が中心ですが、八重咲等の新たな形質を有する品種

を起爆剤とし、更なる需要の創出が必要です。

さらに、若年層が花に親しむ機会が少ないため(表9)、花に触れる機会の創出や

活用の提案が必要です。

表9 年代別年間購入頻度 (単位:回)

年代 ~29 ~39 ~49 ~59 ~69 70~

回数 1.7 2.4 3.5 7.8 11.9 12.9

(総務省「家計調査年報」)

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第2 目指す姿と目標指標

本県の花きの現状と課題を踏まえ、以下の目指す姿の実現に向け、生産者と関係機関・

団体が一体となって、推進方策に取り組みます。

本計画における目標指標は、以下のとおりとします。

「いわての花応援企業」認定事業所数

2017年(現状) 2022年(目標)

花き産出額 36億円 39億円

2018年度(現状) 2022年度(目標)

事業所数 0ヶ所(制度未創設) 50ヶ所

〔本県花きの目指す姿〕

〇 産地の中核を担う花き作経営体が育成されています。

〇 生産部会や多様な生産者等のグループ活動が活発に展開され、産地が活

性化するとともに、新たな担い手が確保されています。

〇 日本一のりんどう産地として地位が強固になるとともに、多様な花き品

目を有する産地として発展しています。

〇 花のある生活が浸透し、消費者の心豊かな暮らしが実現しています。

➢ 花きの産出額の増加

➢ 県産花きの認知度向上

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第3 基本方針と推進方策

【推進方策】

⑴ 露地花き作経営体の育成

・ りんどう及び小ぎく生産に取り組む集落営農組織の収益向上に向け、優良事例研

修等を通じ、効率的な作業体制の整備等を支援します。

・ 防除や収穫調製作業の効率化を図るため、作業機械等の導入を支援するとともに、

作業の共同化を促進します。

・ 農作業アルバイト説明会の開催や農福連携等による雇用労働力の確保と、先進事

例の研修等を通した雇用管理能力の向上を支援します。

・ 販売価格の低下や収量減少に伴う収入減少への対策として、収入保険制度等への

加入を促進します。

・ 花き作経営者の経営能力の向上を図るため、いわてアグリフロンティアスクール

の受講を誘導します。

⑵ 施設型花き作経営体の育成

・ 県内に点在している経営体を対象にした情報交換会等の開催を通し、広域的な

ネットワーク化を支援します。

・ 燃油価格の高騰や気象災害、販売価格の低下や収量減少に伴う収入減少等への

対策として、燃油高騰時の価格補填制度や、園芸施設共済、収入保険制度等への

加入を促進します。

・ 生産性や品質の向上に向けた、環境制御技術に関する情報収集と実証を行うと

ともに、導入を支援します。

・ 花き作経営者の経営能力の向上を図るため、いわてアグリフロンティアスクー

ルの受講を誘導します。

【基本方針1】産地の中核を担う花き作経営体の育成

規模拡大を促し、産地の中核を担う経営体を育成します。

集落営農組織におけるりんどう栽培

【農事組合法人A】

○組合員:36 名(うち女性 16 名)

○経営概要:りんどう 3.7ha(出荷本数

995 千本)、水稲 30ha

○販売額:約 7,000 万円

うち、りんどう約 4,000 万円

○特徴

・りんどう生産の中心を担う女性も出

資し組合員となっている。

・収穫、調製、防除等の作業ごとに班

を編成することで、計画的に作業を行

い収益を上げている。

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【推進方策】

【推進方策】

⑴ 生産・流通の改善に自ら取組む生産部会等の育成

・ 産地ごとに、「生産構造分析」や「産地診断」等による現状分析を踏まえた「花

き産地改革実践プラン」の策定を推進します。

・ 関係機関・団体が連携し、プランの実践に対する産地行動計画を作成し、新技

術の普及や、実需者とのマッチング、労力管理の能力の向上等を支援します。

・ 女性農業者のグループ活動を通した、生産及び収穫調製作業の効率化や、生産

物の付加価値化の取組を支援します。

【基本方針2】生産部会等を核とした花き産地の再強化

⑴ 産地が策定する「花き産地改革実践プラン」に基づく取組を支援します。

⑵ 花き産地の新たな担い手を確保・育成します。

⑶ 実需ニーズに対応する生産・供給方式を導入します。

女性農業者グループによる、りんどう等を用いた

キャンドルの商品化

高規格施設でのゆり栽培

【有限会社B】

○経営概要:ゆり 1.2ha(出荷本数 524 千本)

○販売額:約 6,000 万円

○特徴

ゆりの単作経営で周年出荷を行う。大型

の鉄骨ハウスとヒートポンプ式エアコン

を導入し、生産効率を高めている。

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⑵ 花き産地の新たな担い手の確保・育成

・ 産地ごとに若手生産者をリストアップし、関係機関が連携して重点的に支援し

ます。

・ 新規栽培希望者向けの説明会の開催や、地域のベテラン生産者が新規生産者の

指南役として活動する取組を支援します。

⑶ 実需ニーズに対応する生産・供給方式の導入

・ 切花加工業者から要望が高く、安定した単価での販売が見込める短茎出荷の取

組を促進します。

・ 消費者ニーズの高い日持ち保証付き出荷や、スーパー向けの花束加工出荷の取

組を促進します。

【推進方策】

⑴ りんどうの生産拡大

ア りんどう産地計画による計画的な新改植の推進

・ 産地において、需要に応じた品種選定や更新時期等を踏まえた計画的な新改

植を行うため、生産部会等が主体的に取り組む「りんどう産地計画」の策定を

推進します。

・ 苗代や資材代等に対する補助事業を通し、「りんどう産地計画」に基づいて行

う、盆・彼岸向けの需要に対応した優良品種の新改植を支援します。

・ 集落営農組織等への複合品目として導入を図るため、優良事例を紹介する研

修会等を通じ、普及拡大に取り組みます。

小ぎくの若手生産者を対象とした研修会

(中央農業改良普及センター地域普及グループ)

【基本方針3】県産花きの生産拡大

⑴ りんどうの生産拡大を図ります。

⑵ 新品種の開発と新品目の導入に取り組みます。

⑶ 小ぎくや地域特産品目の生産拡大を図ります。

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イ 選別作業の省力化の推進

・ 多くの手間を要する選別作業の省力化を図るため、実需者からの情報に基づ

く出荷規格の見直しを促進します。

・ 産学連携により、AI技術等を活用した、りんどうの自動選別機の開発に取

り組みます。

ウ 輸出に対応する生産供給方法の開発・導入

・ 出荷時期や品種の見直しに向けた輸出先のニーズ調査や、日持ち性向上のた

めの鮮度保持資材等の導入に向けた取組を支援します。

⑵ 新品種の開発と新品目の導入

ア 八重咲等、りんどう県オリジナル品種の開発と普及

・ 高い日持ちや新たな需要の喚起が期待される八重咲品種や、スプレー咲、鉢花

品種等の開発に取り組みます。

・ 需要期向けを中心とした切り花品種の、早期開発を進めます。

・ 開発品種の早期普及を図るため、各地域に展示圃を設置し、現地見学会等の

開催により特性を広く周知するとともに、各品種に適した栽培法(仕立て法等)

を普及します。

イ 新たなりんどう品種の導入に向けた民間育種家等との連携

・ 県、農業団体、民間等で組織される岩

手県園芸育種研究会の活動を通じ、品種開

発に関する技術の共有に取り組みます。

りんどう新品種現地見学会の開催

八重咲りんどうの有望系統の一例 (農研機構生研支援センター「イノベーション創出強化

研究推進事業」の支援を受け県農業研究センターで育成

中)

岩手県園芸育種研究会りんどう部会の活動

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ウ 実需ニーズに対応した新たな品目の導入

・ 実需ニーズが高く、近年導入されているしゃくやく(二戸地域)やセネシオ

(八幡平市)等の新たな品目について、現地実証や県立花きセンターでの栽培

展示を通し、生産者が栽培方法について理解を深める機会を提供します。

⑶ 小ぎくや地域特産品目の生産拡大

ア 小ぎくの作付推進と新たな技術等の導入

・ 集落営農組織等への複合品目として導入を図るため、優良事例を紹介する研

修会等を通じ、普及拡大に取り組みます。

・ 新たな防除技術の導入や病害の検定体制の整備等により、優良種苗の確保や、

出荷ロスの低減に取り組みます。

イ 特色ある地域特産品目の生産推進

・ トルコギキョウ等の地域特産品目について、農業改良普及センターが主体と

なり、関係機関や農業団体と連携の上、新品種の栽培実証や説明会の開催等に

より、普及を図ります。

表 10 主な特産花き品目と生産地

品目 主な生産地

トルコギキョウ 遠野市

グラジオラス 西和賀町

カンパニュラ 花巻市

一輪ぎく 九戸村

(鉢花)クレマチス 花巻市 トルコギキョウ新品種の栽培実証(左)と

新品種説明会の開催(右)

実需ニーズに対応した新たな品目(左:しゃくやく、右:セネシオ)

Page 17: 岩手県花き振興計画5 全国における1世帯あたりの切り花購入金額は、平成9年の13,130円をピーク に減少傾向となっており、平成29年では8,757円と、ピーク時に比べ4,000円以

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【推進方策】

⑴ りんどう等の新たな需要の創出

ア 八重咲等、新たな形質の品種について、需要喚起に向けた実需・消費者向けプ

ロモーションの展開

・ 新たな需要の喚起を目的に、「八重咲りんどうプロモーション検討チーム(仮)」

を設置し、効果的なプロモーション方法を検討します。

・ 新品種の全国的な品評会(ジャパンフラワーセレクション等)や商談会(各

市場のトレードフェア等)等に出品し、品種の評価を高めます。

イ 生産者が参加するプロモーション活動への支援

・ 品目や品種の特徴を踏まえ、年齢層等の販売ターゲットを想定した、生産者

が参加するプロモーション活動を支援します。

⑵ 県産花きの利用拡大

ア 「(仮)いわての花応援企業」認定制度の創設と推進

・ 県産花きを積極的に利用、PRする事業所を県が認定し、新たな販路開拓と

利用拡大に取り組みます。

〔認定する事業所(想定)〕県内生花店、葬祭業社、ホテルや旅館等

イ 県産花きの新たな利用機会の創出

・ いわてフラワーウィークの開催や、県内外の各種イベント等にて、花が心身

にもたらすプラスの効果を踏まえた消費者向けの利用提案やPRを行います。

・ 海の日やハロウィン等の記念日にちなんだ利用提案や、年祝いでの花贈りの

推進など、新たな利用機会を創出します。

・ 県立花きセンターにおいて、花きの展示を通し、消費者が花に親しむ機会を

創出します。

【基本方針4】県産花きの利用拡大

⑴ りんどう等の新たな需要を創造し、ブランドの強化に取り組みます。

⑵ 県産花きを中心とした花きの利用拡大を図ります。

「いわてフラワーウィーク 2018」による県産花きのPR(会場:県立花きセンター)

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ウ 花育活動等の推進

・ 園児や児童等を対象に、花や緑に親しみ育てる場の提供を通し、やさしさや

美しさを感じる気持ちを育む取組を推進します。

・ 福祉施設等を対象に、リハビリテーション及び健康回復の一環として、花や

緑を利用した園芸体験の取組を推進します。

花育活動の様子(左:フラワーアレンジメント、右:寄せ植え)

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第4 品目別生産推進方策

1 推進品目(※H29年時点の販売額が1千万円以上の品目)

品目

現状と目標

(2017年→

2022年)

地域

推進方策

りんどう

栽培面積

251ha→251ha

出荷量

48,619千本

→51,700千本

県央・県南・沿岸・県北

1 地域に合った品種導入と品種・作型の組み合せによる長

期出荷

2 栽培ほ場の土壌診断と排水対策の確実な実施

3 適期定植と適切な初期管理による充実した株の養成

4 株仕立ての適正化による株の維持と切り花品質の確保

5 病害虫の早期発見と診断、適切な防除

6 産地間の品質較差をなくすための出荷規格の厳守

小ぎく

栽培面積

96ha→96ha

出荷量

15,774千本

→19,200千本

県央・県南・沿岸・県北

1 育苗(親株)管理の徹底による良質な苗づくり

2 栽植方法の検討や出荷ロス低減による単収向上

3 品種の組み合わせや開花調節技術の活用による物日での

安定生産

4 品種特性に応じた作型の組み合わせによる長期継続出荷

体制の確立

一輪ぎく

栽培面積

3.2ha→3.2ha

出荷量

652千本

→652千本

県央・県南・県北

1 優良品種の選定と品種特性に応じた肥培管理の徹底(露

地)

2 開花調節技術の活用による計画出荷の実践(施設)

3 病害虫防除の徹底

スプレーギク

栽培面積

4.0ha→4.0ha

出荷量

787千本

→787千本

県央・県北

1 作型や市場性、営利性を考慮した品種選定

2 優良親株の選抜~親株管理の徹底による優良種苗の確保

3 病害虫防除(白さび病等)の徹底

4 作型の組み合わせによる長期継続出荷と施設利用率の向

ゆり

栽培面積

10ha→10ha

出荷量

1,038千本

→1,038千本

県央・県南

1 需要動向、地域の栽培環境にあった品種の選定

2 病害虫防除の徹底

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品目

現状と目標

(2017年→

2022年)

地域

推進方策

トルコギキョウ

栽培面積

6.3ha→6.3ha

出荷量

589千本

→707千本

県央・県南

1 市場性が高く、作型に適した品種の導入

2 良苗の育成

3 ていねいな水管理の実践

4 作型の組み合わせによる長期出荷

5 土づくりの徹底

カンパニュラ

栽培面積

1.7ha→1.8ha

出荷量

533千本

→560千本

県南

1 品種選定と電照利用による作期拡大

2 育苗技術の向上

3 簡易雨よけの利用による切り花品質の向上(露地栽培)

アルストロメリア

栽培面積

0.7ha→0.7ha

出荷量

372千本

→372千本

県南

1 市場性、生産性に優れた品種の選定

2 品種特性に応じた栽培管理の実施

3 適切な茎葉管理と肥培、かん水管理による収量・品質の

向上

グラジオラス

栽培面積

1.8ha→2.0ha

出荷量

254千本

→280千本

県南

1 安定生産性品種の選定

2 良質球根の確保

3 省力型品目としての導入推進

ストック

栽培面積

2.0ha→2.0ha

出荷量

221千本

→221千本

県央・県南

1 圃場の土壌消毒の実施(萎ちょう病、立枯病)

2 八重鑑別技術の向上による出荷率の向上

3 育苗期からの病害虫防除の徹底

鉢物りんどう

栽培面積

3.9ha→4.1ha

出荷量

277千鉢

→291千鉢

県央・県南

1 適切な管理による優良苗生産

2 適正な肥培管理による品質確保

3 病害虫防除(葉枯病、ハダニ類、アザミウマ類等)の徹

シクラメン

栽培面積

1.6ha→1.6ha

出荷量

90千鉢

→90千鉢

県央・県南

1 適切な環境制御による生産安定

2 適切な肥培管理、水管理による品質向上

3 予防対策の徹底による病害虫防除

2017年数値:農産園芸課調べ

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2 実需ニーズに対応した新たな品目

品目等 品目等の特徴

しゃくやく

1 露地栽培で、定植後5年程度の据え置きが見

込める省力的な品目

2 りんどうと出荷時期が競合しない5~6月

の出荷が見込めるため、りんどう生産者の補完

品目として有望

セネシオ

1 白い産毛で覆われ、フェルト生地のような質

感が特徴的な観葉植物

2 周年で出荷できるため、主力品目(鉢物りん

どう等)の補完品目として有望

ヒペリカム

1 露地で据え置き栽培できる省力的な品目

2 ギフト及びホームユース向けの需要が見込

まれる

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第5 計画の推進体制及び評価

「岩手県園芸産地改革戦略推進会議」の各構成機関及びその他の関係機関・団体が、

それぞれの役割分担に応じて施策を展開し、総合的な推進を図ります。

また、各産地においては、産地分析に基づき、自ら産地の現状分析や課題の抽出を

行い、産地の目標や取組方策、重点支援対象等を定めた「花き産地改革実践プラン」

を策定し、その取組について、毎年成果の検証による評価と改善を行い、産地の強化

に向けた取組を支援します。

岩手県園芸産地改革戦略推進会議

【農産園芸課】 ・園芸産地改革戦略推進会

議の総括

・花き振興計画の策定、

検証

・生産振興施策に係る事業

の推進

【全農岩手県本部】 ・生産部会活動への支援

・流通販売対策の実施

【農業普及技術課】 ・広域的な技術及び経営

課題の対応、調整 ・技術対策部会の企画運営

【農業研究センター】 ・新品種、新技術の開発 ・経営的な課題への助言

【各農業改良普及センター】 ・地域の技術及び経営

課題の対応

【各農業協同組合】 ・生産部会としての活動

・産地拡大実践プランの策

定、実践

技術対策部会

【広域振興局農政担当部及び農林振興センター】 ・地方推進会議の総括 ・産地支援行動計画の

策定、進行管理

【市町村】

・産地の後継者の確保、育成 ・生産技術の普及、指導 ・施設・機械整備の支援 ・経営管理能力向上の支援 ・新規栽培や面積拡大に係る種苗 や資材等への支援

・農地の利用調整による規模拡大 支援

地方推進会議

【流通課】 ・流通情報の収集、分析、

提供

・流通販売施策・事業の推

推進会議委員

【生産者・実需

者・有識者等】

・推進会議の所掌事

項に係る提言

専門委員

せn

【農業大学校(県立花きセンター)】 ・生産者向けに有望品目の栽培展示 ・消費者向けに花きの展示

上記以外の関係機関、団体

【いわて花と緑の普及協議会】 ※本県における花きの生産・供給体制の強化、輸出の拡大、需要の

拡大を図り、花き産業と花き文化の発展に資することを目的に、 目的達成のための事業を行う。 構成機関:県、県内の農業団体、花き流通関係団体、花き文化に関する団体