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95 Copyright © 2011 JETRO. All rights reserved. 第六章 商品戦略のポイント ここでは、米国市場で販売する日本ホームテキスタイル企業の商品がどうあるべきかをま とめてみた。 1 商品の基本コンセプト 米国市場には、多くのホームテキスタイル企業が存在し、多くの米国の商品が流通してい る。その中に、日本の商品を提案するので、マーケットの中で「商品ポジション」を確保 することが大切である。そのために、米国市場に向けた「商品の基本コンセプト」が確立 していなければならない。 商品の対象 商品を米国的に再構成するとき、まず第一に、 その商品の対象は誰なのかという点がある。 買ってくれる人なら誰でも良いということに なると、対象があいまいになり、マーケット の中でぼやけてしまう。例えば、対象を「都 会的な生活を好み、仕事をしている独身消費 者」「伝統的なライフスタイルを好む典型的 なトラッド志向の家庭」というように特定で きれば、デザイン、色、サイズを決めやすく なる。具体的であればあるほど、モノづくり はやりやすいし営業的にも対象を絞りやすくなる。 消費者が新しくホームテキスタイルを買う時には、自分がすでに所有している家具、イン テリア製品、ホームテキスタイル製品とかけ離れたものを買うことはない。生活の中にす でにあるものに合わせて選ぶのが普通だ。または、全く新しい住居を作るにしても、既存 の家具、インテリアとテイストが大きく違うものを買う人はいない。したがって、日本企 業が、米国市場に向け商品を提案する時に、「米国の消費者は今どういうものに囲まれて 生活をしているか?」という観点は非常に重要である。むしろ、そこが「商品戦略の核心」 になる。雑誌や、小売店のウェブサイト、ブランドのウェブサイトからも米国のライフス タイルをトータルに理解することはできる。自社商品のテイストに合った米国のライフス タイルを見つけ、次にそれにあった具体的な家具、インテリア、ホームテキスタイルのリ ストを作成すると、自社製品の米国市場に向けた改良点が見えてくる。 【ご注意】この情報は2011年2月時点で調査したものです。その後、企業情報、URLなどの収録情報に変更が生じていることも考えられます。 ご利用にあたっては、各自でご確認いただくようお願いします。
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商品戦略のポイント - jetro.go.jp · 販売ツールのデザイン(刺、カタログ、受注書、ウェブサイトのデザイン)、展示会で...

Sep 14, 2019

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95 Copyright © 2011 JETRO. All rights reserved.

第六章 商品戦略のポイント

ここでは、米国市場で販売する日本ホームテキスタイル企業の商品がどうあるべきかをま

とめてみた。

1 商品の基本コンセプト

米国市場には、多くのホームテキスタイル企業が存在し、多くの米国の商品が流通してい

る。その中に、日本の商品を提案するので、マーケットの中で「商品ポジション」を確保

することが大切である。そのために、米国市場に向けた「商品の基本コンセプト」が確立

していなければならない。

①� 商品の対象

商品を米国的に再構成するとき、まず第一に、

その商品の対象は誰なのかという点がある。

買ってくれる人なら誰でも良いということに

なると、対象があいまいになり、マーケット

の中でぼやけてしまう。例えば、対象を「都

会的な生活を好み、仕事をしている独身消費

者」「伝統的なライフスタイルを好む典型的

なトラッド志向の家庭」というように特定で

きれば、デザイン、色、サイズを決めやすく

なる。具体的であればあるほど、モノづくり

はやりやすいし営業的にも対象を絞りやすくなる。

消費者が新しくホームテキスタイルを買う時には、自分がすでに所有している家具、イン

テリア製品、ホームテキスタイル製品とかけ離れたものを買うことはない。生活の中にす

でにあるものに合わせて選ぶのが普通だ。または、全く新しい住居を作るにしても、既存

の家具、インテリアとテイストが大きく違うものを買う人はいない。したがって、日本企

業が、米国市場に向け商品を提案する時に、「米国の消費者は今どういうものに囲まれて

生活をしているか?」という観点は非常に重要である。むしろ、そこが「商品戦略の核心」

になる。雑誌や、小売店のウェブサイト、ブランドのウェブサイトからも米国のライフス

タイルをトータルに理解することはできる。自社商品のテイストに合った米国のライフス

タイルを見つけ、次にそれにあった具体的な家具、インテリア、ホームテキスタイルのリ

ストを作成すると、自社製品の米国市場に向けた改良点が見えてくる。

【ご注意】この情報は2011年2月時点で調査したものです。その後、企業情報、URLなどの収録情報に変更が生じていることも考えられます。 ご利用にあたっては、各自でご確認いただくようお願いします。

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・ 当社の製品は、これらの米国人消費者の生活にあっているか?

・ デザイン、カラー、アイテムは、米国の家具、インテリアとコーディネイトできる

か?

・・・という観点で自社製品とマーケットの距離感を計ることが、商品戦略の軸である。

本レポートに、米国の代表的な製品を「商品リスト」としてまとめてあるが、自社製品を

軸にした「商品リスト」を作成する。さらに、カテゴリーによっては、米国の家具やイン

テリアも研究しなければならないが、それは、「米国の家具の市場調査レポート」および

「米国のインテリア市場調査レポート」として、すでに JETRO ウェブサイトに掲載されて

いる。

参照: JETRO ウェブサイト 「米国の家具市場調査レポート」

JETRO ウェブサイト 「米国のインテリア市場調査レポート」

参照: 資料 「商品リスト」

② 市場における商品価値

ただ、米国のトレンドのみを追いかけてデザイ

ン競争をしていては、日本企業には不利な競争

になってしまう。おそらく米国市場で成功する

可能性は小さくなるだろう。独特な持ち味、米

国商品にないメリットがあるからこそ、商品の

差別化が鮮明になり、市場性が生まれる。「当

社の商品はここが違う」「ここがユニークな点

だ」「これは米国には無い良さだ」という商品

価値が鮮明なほど市場に溶け込みやすい。それは、商品コンセプト、デザイン、素材、ブ

ランドイメージが構成されて商品価値となる。米国市場における「商品価値」が市場開拓

の武器となる。

③ 商品基本コンセプトのポイント

「差別化された商品かどうか」が米国での市場性を左右する。そのポイントは次のように

なる。

ⅰ デザイン、テイストに特徴があるか?

ⅱ 素材が米国には見られない独特なものか?

ⅲ アイテム自体がユニークで米国には無いものか?

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ⅳ ブランドとしてまとまっているか?

ⅴ 商品の価値が、カタログ、ウェブサイト、展示会ブースなどビジュアル的に表現でき

ているか?

ⅵ 米国のライフスタイルの変化、トレンドの流れに合っているか?

このようなポイントが全て満たされている必要はないものの、少なくとも一つは満たされ

ていないと、商品のインパクトは小さく、米国の市場性は考えにくい。繰り返しになるが、

米国には、多くの商品が存在するのだから、商品価値、市場性が明確な要素として持って

いなければ、米国のバイヤーが仕入れる可能性は小さい。

④ 内側の視点

消費者の需要を先見することがマーケティング

である。米国のマーケットは日本とは違うのだ

から、最初の二年間はシーズン別「商品調査」

が必要である。そうした地道な活動を通して、

米国市場に「外から売る」という感覚を捨て、

米国市場の「内側から売る」という感覚を身に

つけていくことが商品戦略上重要のポイントに

なる。「外から売る」のでは、どうしても「目

新しさ」だけで勝負するしかなく、それには限

界があり、ビジネスは平面的にしかならない。「内側の感覚」を持って、時代の流れ、ト

レンドの変化に沿った消費者の求めるものを先見し、的確に提案するということができれ

ば、ビジネスは確実に「立体的」になっていく。米国市場で大きなビジネスを展開する為

には、米国のマーケット、米国の消費者、米国の店舗、米国のトレンドの流れと「内側で」

一体とならなければ実現できない。

その「内側からの視点」を当初は外側から努力するしかないが、売り上げが上がってきて、

さらに発展を求めるならば、米国国内(ニューヨーク)に、販売拠点だけではなく、企画

拠点を持つことは日本企業でも可能である。ニューヨークに「企画室」を設けて、米国の

ライフスタイルに完璧に合った「内側からの商品企画」ができれば、米国市場におけるビ

ジネスはさらに大きく拡大していくだろう。

2. 品質

日本企業にとっての強い武器は、「品質の高さ」である。日本製および「日本企画の中国

製」も日本企業が作っているということから大きな「売り」になるだろう。さらに素材が日

本製ということも、大きなメリットなので、パッケージ、ラベルには強調したい。

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かつては、「日本製=高い」というイメージがあったが、最近の米国のブランド商品も品

質を追及して価格も上がってきた。そのため、日本製の価格はマーケットでそう目立つわ

けではない。むしろ価格の高さより、「日本製の素材は良い」というイメージが広まりつ

つある。これは、まさしく日本企業にとっては「追い風」である。品質の低いものにうん

ざりしている米国の消費者は多いのである。

3 ブランド

米国市場では、多くのカテゴリーにおいて、商品

のブランド化がよりいっそう進んでいる。マーケ

ットは、ブランド間の競争になっている。「この

ブランドの製品は安心」「ブランドでそろえたほ

うが、キッチンはきれいになる」「ブランドで、

ベッドをかっこよくしたい」・・・と、消費者が

ブランドを求めている。その「ブランド志向」は、

日本よりも一層強いと言えるのではないか。米国

企業も製品をブランドとして、トータルに売りた

い、そして消費者はブランドを買うという合理性を求める・・・両者の希望が合致してい

るのである。

①� 商標(Trade Mark)

日本企業の所有するブランドの商標は米国でも登録しなければならない。「商標」は、米

国ではトレード・マーク Trade Mark という。登録ができるかどうか簡易的に調べる方法

は、米国特許庁のウェブサイトから可能である。ただし、正確には申請して許可が下りる

まではわからない。

United States Patent and Trademark Office(米国特許庁)ウェブサイト

http://www.uspto.gov/trademarks →Basic Word Mark Search (New User)

→Search Terms →四角の中に商標を入力すると、すでに登録されている企業名が出る。

② ブランド戦略

米国市場で商品を定着させ幅広く販売するためには、「ブランド戦略」が効果的である。

ブランド戦略とは、「差別化された商品」のビジュアル的なプレゼンテーションである。

具体的には独特で統一したイメージ、ネーミング、ロゴ、カラー、パッケージ、ラベルな

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どのデザインである。特に、米国のメジャーストアでは、それが求められている。売り場

は、ブランド別に構成されていると言っていい。

ⅰ ブランドの営業的効果

知名度を市場に浸透させるために、妥協のない「徹底したブランド戦略」をとるべきであ

る。ブランド戦略は徹底しないと意味がない。米国市場では、「わかりやすさ」が重要な

要素ということである。ブランド戦略の徹底化によって、価格が通りやすくなるし、バイ

ヤー、消費者へのインパクトが強くなる。米国市場にブランドイメージが浸透していくに

つれて、商品の浸透度、売り場での回転率が上がっていく。同時に、取引を希望する店舗

が増えていく。ブランド戦略が確立できれば、知名度は広まりやすい。

ⅱ ブランドのテイスト

ブランド戦略の構成要素は、ネーミングとロゴ、ブランドカラー、パッケージ・デザイン、

販売ツールのデザイン(名刺、カタログ、受注書、ウェブサイトのデザイン)、展示会で

のブース・デザインなどである。これらを全て、統一感のあるデザインでまとめ、ライン

のブランド化を図る。ポイントは、「ブランドのテイスト」である。米国市場と日本市場

は「感覚の違い」がある。米国の感覚にあったブランド・デザインでなければ意味が無い。

そのためには、米国企業のブランドを研究し、参考にするのが近道である。

ⅲ ネーミング・ロゴ

ブランドの確立にとって、まず消費者にインパク

トを与えるのは、ネーミングである。米国市場で

「どの名前がよいか」というのは、これといった

基準がないが、ネーミングは「売れてくれば、よ

く聞こえる」のである。余程読みにくい、発音が

難しいのは問題があるが、シンプルなものであれ

ば後は「好み」の問題である。商標登録が可能な

ネーミングでなければ登録ができないので、事前

に調査する必要がある。

日本人にとっては、普通の名前であるが、米国人にとっては、それがスラングで(または

スラングに近いサウンドで)他の意味を表すというようなことが時々あるので、複数の米

国人によるネイティブ・チェックは必要である。

ロゴは、あらゆる印刷物、展示会ブースなどに使い、そのデザインの波及効果は大きいの

で慎重に決める。

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ⅳ ブランドカラー

スーパーの日用品売り場で、「黒のラベル」をみると、「Good Grip の製品だ」と多くの

人は思う。ブランドカラーは、ブランドロゴよりも消費者の印象に残りやすい。米国市場

に必要な「わかりやすさ」の為には重要な要素である。ブランドカラーはイメージを代表

するものなので、消費者に歓迎される「都会的な洗練された色」を選択したい。競合する

ホームテキスタイルの使っているブランドカラーの研究も必要である。ブランドカラーを

決めておくと、ビジュアル的にインパクトがある。長い期間、商品ラベル、書類、カタロ

グ、名刺など様々なものに使うので、色の選択には充分な検討が必要である。ブランドが

定着してくると、そのカラーを見ると、消費者は「あ、あの会社の商品だ」と分かるよう

になる。そうなると、当然売り場での商品回転は速くなり、全体のビジネスのボリューム

は大きくなっていく。

ⅴ パッケージ・ラベルのデザイン

ブランド・イメージに大きく貢献するのは、パッケージやラベルのデザインである。ギフ

トにできる商品では特にそうである。多くのブランドでは、無地のシンプルなパッケージ

を採用している。この場合、ブランド・カラーが重要なポイントになる。プリント(柄)を

使うのもよいアイデアではあるが飽きられやすい、トレンドの変わるというリスクはある。

長い期間、使うので慎重を期して作るべきである。途中で色々変えてはブランド効果は半

減してしまう。パッケージやラベルにつかう説明文はきちんと米国人(Native American)

によるチェックを行ってミスのないものにしなければならない。米国の消費者は「おしゃ

れなもの」「かっこよいもの」が大好きなので、できるだけ感性の高いものにしたい。米

国で、「売れている商品」は、必ずと言ってよいほど、パッケージやラベルのデザインは

優れている。

ⅵ 販売ツールのデザイン(名刺、カタログ、受注書、ウェブサイトのデザイン)

日常的に使う販売ツールもブランドを統一するために必要である。顧客に渡すものは全て

ブランド・イメージにあわせる。特に、ウェブサイトは世界中のバイヤーが見る可能性が

あるので何よりも力を入れる。バイヤーとの通信に有効な「ニュースレター」ひとつとっ

ても、ブランド的なデザインにする。ブランド戦略は妥協してはその効果は発揮しない。

ⅶ 展示会でのブース・デザイン

展示会のブースのデザインは、ブランドのイ

メージをバイヤーに伝えるために大変有効で

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あり、新規顧客開拓のためには重要である。店舗のバイヤーは、ブースのイメージのよさ

で、ブースに入ってくることが多い。商品のデザインがどれほど良くても、ブースのデザ

インが「並」であるとバイヤーには敬遠される。

4 商品別の「商品戦略のポイント」

ここでは、ホームテキスタイル商品別に商品戦略のヒントを提案したい。日本企業の製品

は様々で、必ずしもこの提案があてはまらないかもしれないが、一つの目安にはなるだろ

う。

商品戦略を突き詰めていくと、米国市場に向けた商品の改良、新企画が必要になってくる。

それは、確かに大きな負担になるだろう。日本の商品をそのまま海外に売れたら楽だ

が・・・と感じるだろう。しかし、米国市場に向けて作成した商品は、そのまま米国以外

の海外市場に売れる可能性は高いし、新鮮な商品として日本市場でも売れるのである。し

たがって、海外市場に向けた「企画の見直し」は、自分の製品を客観的に見直す良い機会

になり、商品企画の質が向上するという大きなメリットがある。輸出に力を入れてきた日

本企業の多くは、海外の売り上げが上がるのと比例して国内の業績まで向上してきている。

① リビングルーム・テキスタイル (カーテン、ひざ掛け)

ⅰ サイズ (サイズ表記はインチ)

・ カーテン

50W x 84L, 50Wx96L, 50Wx108L がマーケッ

トに多いので、これらのサイズを中心にそろえ

る。

・ ひざ掛け

マーケットに多い 50Wx60L か 50Wx70L に

する。

ⅱ 素材

・ カーテン

価格帯によって、天然素材から合繊素材まで様々な素材が使われている。麻、コットンベ

ルベット、タイシルク、シルクタフタ、コットントゥリル、オーガニックコットン、ポリ

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エステル、コットン+ポリエステル、ポリエステル+麻など。特にハイエンド層を対象と

する場合は、天然素材が必要。合繊素材、混紡素材は大衆的な店舗向きになる。

・ ひざ掛け

シルク、綿、カシミア、ウールなどの天然素材。布帛、ニット、フェイクファー、タオル

地など。

ⅲ 色、プリント

・ カーテン

無地と、ジャガードが多い。プリントはカジュアルなもの、大衆的なものになる。色目は、

アイボリー、ベージュ系、グレイ系が多い。概してトラッドではダークな色目が多く、カ

ジュアルには明るい色目が多い。米国の色とトレンドカラーを参考に慎重に決める。カー

テンは部屋の内装や家具に合わせ、個性的な色目を求める消費者は少ないことから、日本

企業は色で差別化するよりも素材で特徴を出したほうがいいだろう。ベッドルームのカー

テンは、ベッドリネンとの色のマッチが大切なのでベッドリネンの色も参照すること。

・ ひざ掛け

白、ベージュ系、茶系、グレイ系、カーキ系のトラッドの色目が米国には多い。米国の色、

トレンドカラーを参考にして決める。ギフト製品ということもあり、トレンドカラーを強

く意識したり、ユニークな色を出しても良いのではないか。

ⅳ 価格

米国で流通している価格帯範囲と平均価格は次の通り。この数字とバランスの取れる価格

を設定する。

・ カーテン: 価格帯の範囲 19.99-219.00 ドル /42Wx84L のサイズの比較

平均価格 62.89 ドル

・ ひざ掛け: 価格帯の範囲 14.99-1195.00 ドル

平均価格 225.28 ドル

② ベッドルーム・テキスタイル (ベッド・リネン)

ⅰ サイズ (サイズ表記はインチ)

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米国製品のサイズを分析すると、次のサイズが適当と思われる。

・ 布団カバー(Comforter Cover/Duvet Cover)

ツインサイズ: 68W x 86L

フル/クイーンサイズ: 92W x 88L

キングサイズ: 108W x 92L

・ 枕カバー(Pillow Case / Pillow Sham)

スタンダード:26W x 20L

キング:36W x 20L

・ シーツ

ツインサイズ: 66W x 86L

フルサイズ: 90W x 96L

クイーンサイズ: 90W x 96L

キングサイズ: 108W x 102L

ⅱ 素材

いずれのアイテムも、コットン 100%である。概して、米国人は合繊素材、混紡素材を敬

遠する。

ⅲ 色、プリント

無地を打ち出している店舗、プリントを徹底して打ち出している店舗というように、店舗

によって大きく違う。特にデザイン重視の店舗は、プリント系が多い。ベッドルームが白

の壁の場合は、プリント柄がきれいに映える。プリント柄の選択はかなり難しい。日本と

米国の感覚の違いが大きい。日本企業は、無地の色の方が無難か?中途半端なプリントだ

けはやめたほうがいい。プリントでいく場合は、米国のプリントを十分研究して企画する

べきだ。無地で取り引き先を増やしていき、次第にプリントを開発していくと良いだろう。

ⅳ 価格

米国で流通している価格帯範囲と平均価格は次の通り。この数字とバランスの取れる価格

を設定する。

・ ベッドリネン(Full/Queen サイズ): 価格帯の範囲 34.00-740.00 ドル

平均価格 31.43 ドル

・ クッション型枕カバー(Sham): 価格帯の範囲 16.00-34.99 ドル

平均価格 27.25 ドル

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③ バスルーム・テキスタイル (タオ

ル)

タオルは、デザインで差別化する、品質

で差別化するということが難しいので、

日本企業が米国にあるタオルとどのよう

に差別化していくのかということが大き

な課題である。最初に、米国の標準の規

格に合わせて、そこから差別化戦略を検

討する。

ⅰ サイズ (サイズ表記はインチ)

日本のタオルは米国のものより小さめである。サイズは米国に合わせたほうが良い。日本

サイズでは難しい。

ウォッシュ・クロス: 13W x 13L

フィンガーティップ・タオル: 11W x 18L

ハンドタオル: 16W x 30L

バスタオル: 28W x 55L,30W x 56L

バスシート/ビーチタオル: 39W x 71L か 39W x 79L

バスマット: 19W x 31L か 21W x 31L

ⅱ 素材

コットン 100%である。合繊素材が混ざっていると難しい。素材のソフトさは価格帯によ

って様々である。最近は低価格品にもソフトなものがある。オーガニックコットンも次第

に増えてきた。米国のタオルは、「重さ」がかなり重要である。重いものが良いタオルと

考える米国人は多い。「乾きが早く軽くて使いやすいタオル」というコンセプトが日本に

はあるのだが、それを浸透させるには時間が

かかる。ラベルでうまく表現する必要がある。

ⅲ 色、プリント

マーケットには、圧倒的に無地が多い。プリ

ントは一部である。デザイナーズ商品として

のプリントは可能性があるが、中途半端なプ

リントは難しい。無地の色目は、白、アイボ

リー系、ピンク系、ベージュ系、グレイ系、

グリーン系、ブルー系、黒など幅は広い。パ

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ステル調もあれば、ダークな色目も多い。日本企業は、米国の色、トレンドの色を参考に

マーケットにあった色を選択する必要がある。刺繍ものもマーケットには見られるが主流

ではない。「刺繍糸が肌にあたるのでイヤだ」という人もいる。プレーンな製品が米国に

は多く、消費者もそのようなホテル感覚のタオルを買うようである。

ⅳ 価格

米国で流通している価格帯範囲と平均価格は次の通り。この数字とバランスの取れる価格

を設定する。

ウォッシュタオル: 価格帯の範囲 2.99-13.00 ドル

平均価格 8.54 ドル

ハンドタオル: 価格帯の範囲 4.99-19.00 ドル

平均価格 13.22 ドル

バスタオル: 価格帯の範囲 3.99-25.00 ドル

平均価格 18.51 ドル

バスラグ: 価格帯の範囲 9.99-258.00 ドル

平均価格 54.74 ドル

④ ダイニング・テキスタイル (ランチョン

マット、テーブルクロス、ランナー、ナプキ

ン)

ⅰ サイズ (サイズ表記はインチ)

・ テーブルクロス

テーブルにはいくつかの異なったサイズがあるので、数サイズは必要。

(長方形) 60W x 84L, 60W x 104L, 60W x 120L

(正方形) 52 Square, 70 Square

(円形) 70 Round, 90 Round, 106 Round

・ ランナー: 14W x 90L

・ ランチョンマット: 19W x 14L

・ ナプキン: 19W x 19L か 21W x 21L

ⅱ 素材

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ランチョンマットは、コットン 100%が多いが、麻などの異素材も少なからずある。素材

で差別化が可能なアイテムである。テーブルクロスはコットン 100%がよいだろう。

ⅲ 色、プリント

ランチョンマットでは、無地、プリントの両方と

も多い。汚れが目立ちにくいプリント、遊びのあ

るプリントもデザインの特徴が出しやすい。テー

ブルクロス、ランナーはプリントと無地がある。

ハイエンド店では無地が多い。プリント柄は日本

と米国の感覚の違いが大きい。中途半端なプリン

トはやめたほうがいい。プリントでいく場合は、

米国のプリントを十分研究して企画するべきだ。ナプキンも、無地、プリント双方の色々

なデザインがあり、店のテイスト、特徴にもなっている。かなりのデザイン力が求められ

る。

ⅳ 価格

米国で流通している価格帯範囲と平均価格は次の通り。この数字とバランスの取れる価格

を設定する。

テーブルクロス : 価格帯の範囲 14.99-130.00 ドル/サイズ 60Wx108L の比較

平均価格 50.36 ドル

テーブルランナー: 価格帯の範囲 19.00-100.00 ドル

平均価格 43.17 ドル

プレイスマット: 価格帯の範囲 1.99-16.25 ドル

平均価格 8.61 ドル

ナプキン: 価格帯の範囲 2.99-64.00 ドル

平均価格 16.52 ドル

⑤ キッチン・テキスタイル (キッチンタオル、エプロン、ミットなど)

ⅰ サイズ (サイズ表記はインチ)

米国で流通している同じ製品を十分に参考にして、違和感のないサイズにする。特に、エ

プロンは、日本人と米国人の体格の差があるので注意。

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・ キッチンタオル/ディッシュタオル: 12W x 12L, 18W x 28L, 20W x 30L

・ ミトン (Mitt): 7W x 14L

・ 鍋敷き/鍋つかみ(Pot Holder):7.5W x 9L, 8 Square

・ エプロン (Apron): 33W x 32L, 36W x 28L

ⅱ 素材

いずれのアイテムも、コットン 100%である。

概して、米国人は合繊素材、混紡素材を敬遠

する。

ⅲ 色、プリント

明るく華やかな色目、楽しいプリント、ナチュラル・グリーンなプリント

が多い。しかし、これはトレンドの流れもあるので、一概にその通りやれ

ば安全ということでもない。色、プリントでの差別化は大切な要素。

ⅳ 価格

米国で流通している価格帯範囲と平均価格は次の通り。この数字とバランスの取れる価格

を設定する。

キッチンタオル:価格帯の範囲 2.99-18.95 ドル

平均価格 8.56 ドル

エプロン: 価格帯の範囲 12.95-46.00 ドル

平均価格 20.82 ドル

ミット: 価格帯の範囲 3.95-24.99 ドル

平均価格 9.69 ドル

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5 商品の価格

① 米国国内卸価格の設定

米国国内で卸販売を行うためには、「米国国内卸価格」を算出してバイヤーに提案する。

時折、展示会で日本企業が FOB 価格1で価格を提示しているが、それでは注文をする小売

店は非常に限られてしまう。小売店バイヤーからしてみれば、「自分のお店にいくらで入

ってくるのか」を知りたい。それを基準にして小売価格を想定して、「売りやすいか、売

りにくいか」を判断して仕入れるのである。

米国国内卸価格を算出するには、日本 FOB+関税+送料を計算するために、「荷物の量」

が必要になるが、展示会前ではどのくらい売れるかが分からない。そこで、方法は、概算

計算(目安)として算出するしか方法はない。それに加えて、米国のエージェント経費+流

通、回収経費として 30%程度算入する必要がある。

その方法で、算出した「米国国内卸価格」に、

2.2 倍にして「予想小売価格」を算出する。こ

の金額が「米国の市場価格」とバランスが取れ

るかどうかが問題である。概して、その「予想

小売価格」は、「米国の市場価格」よりも高い

ことが多い。これは、日本製品であることと関

税と送料が加わるので、どうしても高くなって

しまうのである。これは、あらゆるカテゴリー

の日本の製造企業が直面する問題である。

最近の米国市場の消費動向は、「安ければ安いほど良い」という傾向が、「良いものはある

程度の価格になる。良いものほど長く使える」という品質を求める需要が高まってきてい

るので、「日本の価格」が受け入れられるようになって来た。しかし、それでも「量のビジ

ネス」を行うためには、できるだけ間接経費を減らして、消費者が手を出しやすい価格に

するべきである。

② 価格を下げる工夫

努力、工夫によって価格を下げられるのであれば、新市場を切り開機、「量のビジネス」

のために、努力、工夫はすべきである。

1 FOB とは、Free on Board の略称。

商品の荷積みまでを売主が、その先は買主が通関費・保険料等の費用を持つ。

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・デザインの簡素化でコストを下げられないか?

・送料は数量で変わるので、販売見込み数量を多めに設定したらどうか?

・少しでも安く送れる運送会社を探せないか?

・開発研究経費は日本市場販売でカバーできたと考え、その分価格が下げられないか?

・できるだけ中間経費をかけないように販売したらどうか?

・パッケージや部分を海外製作で行い、コストを下げられないか?

・円高傾向により米国国内価格は高いものになっているので、米国商品の日本市場への輸

入、自社店舗による販売を増やすことによって、為替バランスをとれないか?

米国市場ですでにビジネスを展開している日本

企業は、このようにして、価格を市場にあわせ

ていく努力を行っている。市場調査によって適

正な市場価格を明確にして、それにできるだけ

近づけていく工夫をする。

参照:第三章資料「商品価格分析」

6 商品戦略まとめ

米国市場に参入するためには、「商品戦略」

が最も重要である。商品自体が米国に合って

いて、さらに独自の商品価値が無ければ、ど

んなに経費をかけて市場開拓しようとしても

結果は小さい。米国で売れるためには、「商

品の工夫」が最大の鍵を握っている。下記の

5 点の要素が満たされていれば、米国市場で

売れる可能性は高い。

① 米国に合ったデザインで、かつ米国には

ない「差別化」された要素がある。

② 色、サイズが米国消費者のライフスタイルに合っている。

③ ブランドとして一貫性があり、バイヤー、消費者にわかりやすい。

④ 価格も、米国平均市場価格と大きく違わない。

⑤ 米国市場の「内側の視点」を持った企画である。

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これらの要素が整っていないとしたら、あわてて出展したり、商談したりせずに、まず商

品戦略を整理して「米国に適した商品」の準備をしっかりすることである。そのためには、

第一章で強調した「綿密な市場調査」が鍵である。

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第七章 組織戦略のポイント

1 米国における販売組織

① 米国国内に販売組織の必要性

米国市場を開拓するとき、「商品戦略」と同じ重みで、「組織戦略」が優先課題になる。

「商品さえ良ければ米国で売れる」という単純なことではない。「商品」と「組織」の両輪

が必要である。米国に、販売組織を持たなければ、実際小売店への販売・流通・回収は難

しい。小売店と常に連絡を取り、販売業務、流通業務、回収業務を管理する組織が米国国

内に必要である。分かりやすく整理すると次のような課題になる。

ⅰ 小売店への納品

展示会で注文を得られたとしても、各小売店に日

本から商品を送っていたのでは、送料倒れになっ

てしまうし、その分を価格に入れたとしてもそれ

では価格が米国の市場価格よりかなり高くなって

しまう。これでは、スムースなビジネスの流れが

できない。「米国国内の拠点」に商品をまとめて

送り、そこから全米の取引先である小売店に配送

すべきである。

ⅱ 代金の回収

小売店に日本の銀行口座まで代金を送金してもらうというのは無理がある。一度だけであ

れば可能だろうが、毎月のようにというのではその条件を受け入れる店舗はない。振り込

み手数料は高く、銀行の手続きにも時間がかかるのでバイヤーは敬遠する。米国の小売店

は通常、米国のサプライヤーに銀行振り込みではなく「小切手郵送」によって代金を決済

する。わざわざ海外送金をしなければならないとしたら、よほどのことがない限り仕入れ

ないだろう。米国国内で受け取った小切手を銀行に入金する為には、銀行口座を持たなく

てはならないが、それは日本企業では出来ない。米国国内に銀行口座を持つには、「米国

に登録された法人」でなければできない。

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ⅲ 日常的な営業

店舗は、一度だけ注文するのではなく、商品の動きがよければ日常的に注文する。それ以

外にも質問が寄せられたり、不良品処理の問題もある。そのためには、米国国内に「販売

拠点」が必要である。小売店に日常的にコンタクトし、営業フォローを緻密に行い、的確

な営業活動や顧客管理を行わなくてはビジネスは前進していかない。

これらの理由により、日本企業は、米国市場を開拓し、売り上げを大きくしていくために

は、米国国内に販売、流通そして管理の拠点(以降「販売拠点」という)が必要というこ

とになる。したがって、販売拠点を運営する組織戦略が無ければ、米国でのビジネスは単

発的になる。

② 販売拠点

米国国内に販売拠点を設ける方法は 2 つである。

ⅰ 米国に「エージェント」を設ける。

ⅱ 自社の「現地法人」を米国に設立する。

ということになる。この点を無視して、展示

会でいくら注文を得ても、米国市場でのビジ

ネスは前進していかない。組織的な前進のな

い売り上げは、いくら大きく売れても一時的

なものになってしまう。米国のインポーター

や卸問屋、チェーン店が商品を気に入ってく

れ、かなり大きな注文を得るということは現実的にありえない。彼らは、中国製、インド

製の低価格商品を工場から直接輸入しているからである。継続的にビジネスを行うという

観点で市場開拓方針を出さなくては、いくらこつこつと取り引き先を増やしていっても積

み上げたものが一気に崩れてしまう。そのようにならないように一歩づつ組織的な前進を

して、確実なビジネスの実体を構築すべきである。他の業種を見ても、米国でビジネスを

行っている日本企業の多くは、自社現地法人かエージェントが販売して成功している。そ

の方法の詳細を次に説明する。

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2 現地エージェントとの提携

米国のエージェントに、販売流通管理業務を委託する方法である。信頼できる会社をさが

し、その会社とともに米国市場戦略の検討、仕事の範囲、経費の分担、目標の設定などを

詳細に打ち合わせをする。現地法人を設立するのは、人材的に、資金的に無理がある場合

ふさわしい方法である。

ⅰ エージェントに委託する仕事

エージェントに委託する仕事の内容は次の通り。これらをきちんとこなせる会社でないと

意味が無い。

(商品の確立)

・ 商品戦略を共に検討する。

・ 米国市場にあった適正なデザイン、価格を検討する。

・ カタログ、ラインシートを作成し商品を確定する。

(販売業務)

・ 販売戦略、販売計画を検討する。

・ 展示会計画を検討する。

・ 展示会出展の申し込みを行なう。

・ 展示会ブースデザイン、レイアウト、什

器、備品申し込みをする。

・ 展示会での販売、受注業務を行なう。

・ 米国市場での見込み顧客リストを作成す

る。

・ 全米の販売ネットワーク(レップ、ショ

ールーム)構築を検討する。

・ 日常的な受注活動を行なう。

・ カスタマーサービス(店舗や一般顧客からの問い合わせ対応)を行なう。

・ 小売店への営業フォロー活動を行なう。

・ 営業報告を定期的に行なう。

・ 顧客管理を行う。

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(回収)

・ 顧客の信用調査を行い、リスクをミニマムにする。

・ ファクタリング手続き、事務処理を行なう。

・ クレジットカード回収の手続き、事務処理を行なう。

・ 売り掛け金管理を行う。

(流通)

・ 流通システムを構築する。

・ 商品の保管、出荷施設をもつ。

・ 出荷の手配を行なう。

・ インボイス(売上げ伝票)を作成する。

・ 商品管理を行う。

・ 受注商品を出荷する。

・ ウェアハウス会社を使う場合は、緻密な情報交換を行い、スムースな流通体制に

する。

・ EDI システムの管理を行う。

(会計)

・ 経費の管理を行う。

・ 会計報告を定期的に行う。

・ 送金業務を行う。

これだけ多くの内容をエージェントに委託するので、エージェントは「個人」ではなく、

実績のある企業を選ばなくてはならない。

ⅱ エージェント提携のメリットと限界

米国の現地エージェントを通してビジネスを行

うことにはメリットもあるがデメリットもある。

この点を考慮して、長期的で適正な組織戦略を

立てなければならない。

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(メリット)

・ 少ない先行投資でビジネスをスタートできる。

・ 準備期間を大幅に短縮できる。

・ 米国に長期間スタッフを派遣しないで済む。

・ エージェントの設備、情報、経験が生かせるので試行錯誤を防げる。

・ ファクタリングなどエージェントの持つビジネス・システムを使える。

・ エージェントがすでに持っている顧客に販売できる。

・ エージェントの持つ米国法人としての権利を共有できる。

(デメリット)

・ 直接的な販売、流通、回収の詳細のノウハウが会社に蓄積しない。

・ ワンクッションあるので重要な商談に時間がかかる。

・ セールス担当者の商品知識が不足する。

・ 企業の組織的前進ができない。

・ エージェントは専属でなく、他のラインも扱っている。

3 現地法人の設立

本格的な米国市場戦略において必要不可欠なのが、

「現地法人設立」を軸とした組織戦略である。米

国市場だけではなく、将来的にヨーロッパ、アジ

ア、ロシア、南米国など世界市場へ販路を拡大し

ていくには、ニューヨークにおける「米国現地法

人」は戦略上大変有効である。

現地法人設立のステップは次の通りである。

① 米国に法人登録する。

② 米国に事業開始スタッフ(マネージャー)を派遣する。または現地で採用する。

③ 米国にオフィスまたはショールームを借りる。

④ 什器、備品を揃える。

⑤ 営業、事務スタッフを雇用する。

⑥ 会社運営に必要な各種手続きを行なう。

⑦ 事業を開始する。

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上記ステップの詳細を解説する。

① 米国に法人登録する

会社設立は米国の弁護士が行う。取引先銀行、JETRO、取引先、知人などを介し適当な

弁護士を探し会社設立を依頼する。米国で法人を設立することは外国企業でも容易である。

設立手続きは弁護士が行い、州に登記を行い 1-2 週間ほどで設立できる。設立費用は内容

にもよるが、手続きに 2000 ドル程度の弁護士費用がかかる。その他に 500 ドル程度の法

人設立の費用がかかる。毎年、日本と同じように「決算」による税務署(IRS)への申告が

必要になる。法人登録自体は難しい問題ではない。準備するのは「米国での会社名」「代

表者の名前」「定款作成に必要な業務内容」程度である。

ⅰ 弁護士

弁護士は、会社設立の登録をやってくれるが、

それのみではなく、従業員を雇う際に必要な

「雇用ハンドブック」も作成してもらうとよ

い。米国において会社を法的に守るためには、

弁護士は重要な存在である。何か問題が出た

ときは、まず弁護士に相談するのが解決の近

道になる。

ⅱ 設立の方法

・ 代表者の登録

日本企業の代表者でかまわない。Directorとして1名、PresidentSecretary、Treasuryが1

名ずつ必要だが、全て日本の代表者にしてもかまわない。

・ 会社名

州の中に他社が同じ名前を持っていなければ、登録できるので、ABC Inc. ABC

Corporation, ABC Ltd.などにする。

・期間

1 カ月程度で充分可能であるが、急ぐ場合は 25 ドルの追加費用で翌日にも設立可能であ

る。

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ⅲ 設立に関わる費用

弁護士費用 1500-1700 ドル

州への費用 150 ドル程度

謄本(2 通) 20 ドル

翌日登記 25 ドル

計 1700-1900 ドル (14 万円-16 万円)

ⅳ 会計士

ビジネスの大小に関わらず、税金の支払い、税務署(IRS)への申告のために会計士は必

要となる。米国と日本の税制はさまざまな違いがあるので、会計士との密接な関係も必要

である。

会計事務所に関わる費用は、初期段階のコンサルテーションが、1 時間 60 ドルベースで

計算するという。後は、事業の内容、規模のもよるが給与計算を含む毎月の会計費用、毎

年の決算費用が発生する。

・失業保険、労災保険

上記保険は強制保険なので、会社設立、従業員業

務スタートと同時に加盟していないとならない。

加入が遅れるとペナルティになるので充分に会計

士、保険代理店との相談が必要である。日系の保

険代理店もいくつか存在しているので情報は得や

すい。

・健康保険

米国では、政府の健康保険制度が無く、民間の保険会社に加入することになるので、保険

料は非常に高い。多くの企業は、従業員が安心して働ける環境づくりを目指して、健康保

険を保障する。健康保険は一律ではなく、多くの種類があるので、早めに保険代理店との

交渉が必要である。

② 米国に事業開始スタッフを派遣する

ⅰ 営業責任者の日本からの派遣

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商品知識、生産背景、企業事情を十分に理解した責任者が、フルタイムで商品を米国市場

に紹介できることが現地法人設立の一番大きなメリットである。エージェントと比べれば、

商品知識の量、営業に費やす時間は、現地法人の担当者のほうがはるかに大きい。ただし、

派遣社員が合法的に渡航するためには、労働が可能なビザを取得しなければならない。

労働ビザについては、米国の移民専門の弁護士に相談する。L-1A ビザは日本の親会社か

らの役員(エグゼクティブ)か管理職(マネージャー)の派遣のためのビザである。3 年

間のビザであり、最長 7 年まで延長可能。ビザ申請には時間がかかるが、特別に追加費

用(1000 ドル)を支払えば、15 日以内に申請が受けられる Premium processing(特別

処理)というシステムもある。弁護士費用と合わせて 40 万円程度の費用がかかる。ビザ

に関する制度は頻繁に変化するので、最新情報は移民専門の弁護士に相談する。

ⅱ 現地雇用

米国に派遣する適当なスタッフがいない場合は、現地でマネージャー・クラスのスタッフ

を雇用することも考えられる。その雇用自体は決して難しくはないが、商品知識という面

ではゼロなので、日本に一定期間派遣し充分な教育が必要である。ニューヨークでは、ビ

ジネスの経験者で英会話が問題なく、新しいポジションを求めている有能な人材はかなり

いるので、募集をすれば良い人材にめぐり合うことは可能である。

ⅲ 現地雇用の方法

日系新聞に募集広告を出して一般募集するとい

う方法が最も簡単な方法である。また、レベル

の高い人材を得るためには、人材派遣会社に依

頼するのも良い方法である。登録している多く

の人材の中からポストに必要な候補者を選んで

くれる。費用は、成功報酬(採用が決まった場

合のみ請求される)で、年間給与の 20-25%な

ので、5 万ドルの場合は、1 万ドル程度となる

が、人材のレベルは高く、3 カ月以内の交代も

可能。

ⅳ 各種保険

労災保険、傷害保険には強制的に入らなくてはならない。また、企業の動産保険、賠償責

任保険、生産者賠償責任保険などの企業保険にも加入しておいたほうが安全である。そし

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て、従業員および家族のための健康保険は強制保険ではないものの良い人材を確保するた

めには必要である。保険料が優遇されるグループ保険は、2 名以上の社員が必要になる。

保険関係はすべて保険代理店に任せたほうがスムーズである。

③ 米国にオフィスを借りる

ⅰ オフィスの探し方

これは、概して難しくはない。不動産賃貸情報

をエージェントを通して集める。日系の不動産

企業も多い。ポイントは、賃貸契約を行う時は

必ず弁護士による契約書確認と交渉である。現

在のように、景気後退時期は賃料も下がってお

り、候補物件も多いので、容易に理想的なオフ

ィス、ショールームを探すことができる。

オフィス、ショールームの場所は、同業者が集

まっている場所を選ぶ方が、バイヤーにとっては便利である。マンハッタンであれば、で

きるだけミッドタウンに近い方が訪問しやすく、北や南に偏っているとバイヤーには不便

である。地下鉄の便利な場所が良いだろう。

ⅱ 賃料 (Rent)

オフィスの賃貸料は場所によっても違うが、月額 1 平方フィートあたり 2 ドル-5 ドルく

らいである。NY の良い場所でも、小さな事務所で、3000 ドルくらい、50 坪くらいで

5000 ドル程度になるだろう。日本の保証金にあたる Security Deposit(セキュリティ・デ

ポジット)は、2 カ月-6 カ月くらいである。契約期間は、3 年や 5 年と言われることが多

い。交渉によっては、最初の 1 カ月無料、内装費ビル側負担などが可能である。内装に

費用がある程度かかっても、毎月の賃料に組み込んでもらうこともできる。電気代、水道

代、ごみ処理代などが賃料に含まれている場合と、含まれていない場合があるので注意が

必要だ。

商品の発送を同じ場所で行う場合は、それが可能な物件を探す必要がある。中には、ショ

ールームのみで発送作業ができないところもある。荷物専用のサービス・エレベーターが

ないところでは難しい。ただ、サンプルを送ったり、受け取ったりする程度の発送はどの

ビルでも問題ない。多くのビルは、24 時間営業している。時間制限のあるところは避け

た方がいい。

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ⅲ 不動産契約

日本の場合は、「不動産契約の内容はみな同じようなもの」と考えがちであるが、米国で

はその内容はそれぞれ大きく異なっている。最初に出される契約書は、ビルのオーナーに

有利な内容になっている事が多いので、弁護士による契約書の内容チェックが必要である。

弁護士による交渉によって、細かい点まで納得できる内容にしなければならない。

④ 什器、備品を揃える

オフィス用什器、備品をそろえるのは難しくはな

い。店舗に行って、そのまま買ってきてもよいし、

簡単なのは、品番だけを調べておいて、オンライ

ンで注文すれば、1-2 日で配達される。コンピュ

ーター類も同じである。電話は、電話局

(Verizon)に電話して工事日程を決めればすぐ

に入る。いずれにしても、さほど難しいことでは

ない。

⑤ 営業、事務スタッフを雇用する

ⅰ 人事体制

一般スタッフの雇用は、難しいことはないが、人事における労務体制が必要である。つま

り、賃金、保険、休日などの雇用条件の明確化を合法的にしなければならない。一番良い

方法は、雇用専門の弁護士のバックアップのもとに労務体制を準備することである。

時折、日本企業の中で、労務のトラブルが発生したりするのはこの体制が整っていない企

業である。「うちは日本と同じやり方でやりたい」というのは法律や習慣が違う米国では

無理である。日本で問題のないことが米国では問題になることがあり、放置すると訴訟問

題に発展することもある。例えば、日本では珍しくない「サービス残業」である。米国の

法律では、残業をすれば、必ずその分の賃金を支払わなくてはならない。休日出勤は割り

増しの給与になる。それを日本的なやり方で行おうとすると、必ず問題が発生する。米国

の法律、商習慣にあった経営が望ましい。

ⅱ 雇用マニュアル

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雇用条件については、あいまいにしないために、最初にきちんと「雇用マニュアル」

(Employment Handbook)を作成しておき、全てのルールを文章化して、経営側も働く側

も全てそのルールに沿っていけば問題は起こらない。逆に言えば、慣習、通例というあい

まいなことがないので、双方やりやすいと言える。日本企業は、必ず雇用マニュアルを準

備したほうが良い。労務専門の弁護士が作成する。

従業員がルールに違反したり、充分な仕事をしなかった場合には、解雇することは無論可

能である。ニューヨーク州では、従業員の解雇には、経営者はその解雇の理由を説明する

義務はない。ただし、宗教や人種、家族のことなどを理由にした解雇は違法になる。

ⅲ 米国人の雇用

米国人を雇用するよりも、日本人のほうが意思

が疎通しやすいという意味においては確かにそ

う言える。しかし、日本人だからといって、米

国人と違う待遇をした場合には、問題になるの

で十分に注意するべきである。この問題が日本

企業で一番多く発生しやすい。責任の範囲、仕

事の内容、経験などで給与に違いが出るという

のは無論問題ないが、能力が同じレベルなのに

人種で待遇を差別すると問題となる。客観的に

見て公平であることが大切である。

⑥ 会社運営に必要な各種手続きを行なう

会社登録ばかりではなく、市(City)への登録、税金関係(IRS)などいくつか法的な手

続きが必要である。会計士がその業務を代行してくれたり、指示してくれるので、それに

したがって行う。登録、報告などが遅れたりすると、容赦なくペナルティが来るので充分

注意すべきである。そのためにも、中小企業と緊密な付き合いのできる会計士を選択すべ

きである。

⑦ 事業を開始する。

ⅰ ビジネスの開始

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オフィスができ、必要な法的手続きが整えば、現地法人としてビジネスを開始できる。米

国市場計画のもとに販売活動を開始する。販売体制が軸になるが、できるだけ早く流通体

制、回収体制を準備しなくてはならない。

ⅱ 流通体制の準備

・ 商品の流通

顧客から注文が入った場合は、インボイスを作成し、納品の準備を行う。商品の保管を自

社で行い、商品を梱包して、UPS 社のトラック便で送り届けるというのが基本である。

インボイスを作成するために PC にクイックブックなどの商品管理ソフトを入れる。商品

量が増えてくれば、ウェアハウス会社を使った流通体制も可能である。特に、デパートと

の取り引きには、EDI システム(電子データ交換設備)が必須となるので、あらかじめ EDI

システムを備えたウェアハウス会社を選択するとよいだろう。

・ UPS 口座の開設

米国の国内輸送は通常、UPS 社のトラック便

を使うので、UPS 社の口座をまず作らなくて

はならない。方法は、まず、UPS 社に電話ま

たはオンラインで連絡して、新規口座の開設を

依頼する。数日後にオンライン用のソフトが送

られてくるので、それを PC にインストールす

ると、オンラインで UPS 社へ荷物の配送を依

頼できるようになる。発送の段取りは次のよう

に行う。

・ 商品、インボイス、ダンボールを準備する。

・ 箱のサイズと総重量をはかる。

・ UPS オンラインで送料を計算する。

・ 同時に保険を付保する。(無保険の場合は一律 100 ドルの保障)

・ UPS 送料をインボイスに加える。

・ UPS オンラインで宛先シールをプリントアウトする。

・ 宛先シールを貼って箱を梱包し UPS ドライバーに渡す。

ⅲ 回収体制の準備

・ ファクタリング会社

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商品の流通の前に行わなくてはならないのは、顧客の信用調査である。その内容について

は、第五章「米国のビジネス」で説明した。信用調査は、ファクタリング会社が行う評価

がそのまま信用調査になるので、むしろファクタリング会社との契約が必要である。エー

ジェントがある場合は、エージェントの契約しているファクタリング会社を活用すること

になる。

参照: 第五章 「米国のビジネス」

・ 銀行口座

現地法人を設立すれば、TAX ID 番号が取得で

き、銀行口座を開設できる。米国の小売店から

の支払いは、通常小切手郵送であるから、現金

化するためには、銀行の預金口座 (Bank

Account)が必要である。銀行口座には、普通口座(Saving Account)と当座預金口座

(Checking Account)がある。後者の方が小切手による支払いも可能なので実用的であ

る。現地法人を設立した場合は、オフィスのレント(家賃)、人件費、各種支払いが発生す

るので、そのような経費を小切手で支払いことになる。

銀行で、当座預金口座を開設するためには、次の書類が必要となる。

・ 写真入 ID 二つ(パスポートと運転免許書などの身元確認証明書)

・ 州の Certificate of Cooperation(会社登録証)

・ TAX ID 番号 (会計士または弁護士が取得する)

⑧ 現地法人設立に関わる費用概算

米国市場に自社の現地法人設立を決定し、オフィスを借り、責任者(マネージャー)を 1 名、

事務担当者、営業社員各一名は現地で雇用することにした場合の運営経費を概算計算した。

マンハッタンに 30 坪程度の事務所兼流通倉庫を借り、3 名にて販売体制を整えた例であ

る。

ⅰ 初期費用 (単位はドル)

・ 事務所+流通倉庫 賃貸費用 (5 年契約)

月賃貸費用 5,000 ドル

保証金(2 カ月) 10,000 ドル

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不動産会社手数料(1 ヶ月) 5,000 ドル

弁護士費用 2,000 ドル

内装費用 条件によってはビルの貸主が負担

(小計 約 22,000 ドル)

・什器備品の購入

家具 20,000 ドル

什器 20,000 ドル

コンピューター・Fax・コピー機 3,000 ド

文房具、雑貨 2,000 ドル

(小計 約 45,000 ドル)

・ その他

労務ハンドブック作成弁護士等費用 4,000 ドル

従業員雇用募集広告費用 2,000 ドル

その他費用 10,000 ドル

(小計 約 16,000 ドル)

合計 83,000 ドル (約 664 万円)

このような規模で、初期投資費用は約 80,000-100,000 ドル(640 万円-800 万円)程度に

なる。これに、毎月の運転資金が必要になる。

ⅱ 予想される年間経費 (単位はドル)

オフィスのレント 5,000x12=60,000 ドル

人件費 10,000x12=120,000 ドル

会社負担健康保険料 2,500x12=30,000 ドル

展示会出展費用(年 2 回として) 10,000x2=20,000 ドル

文房具、通信費、雑費 2,000x12=24,000 ドル

その他 10,000 ドル

合計 264,000 ドル (月間約 22,000 ドル=約 176 万

円)

ⅲ 費用のまとめ

初期費用 83,000 ドル=約 664 万円

毎月の経費 22,000 ドル(年間 264,000 ドル)=約 176 万円(年間 2,112 万円)

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利益率を 40%とすると、損益分岐点は、264,000÷40%=660,000 ドル

マイナスにならない最低限必要な年間売り上げは 660,000 ドル(5,280 万円)ということ

になる。年間売り上げが、1 億円が見込めれば、現地法人計画を現実化することができる。

前提として、米国開拓戦略が明確になっていない段階では時期尚早である。

4 段階的前進

米国市場を開拓して、将来世界市場に商品を販売するという計画を実現することは「米国

で売れる商品」を持っている企業にとっては充分可能なことである。しかしながら、こと

を急いで全体を壊してしまわないようにあくまでも慎重に計画的に行わねばならない。ビ

ジネスは土台作りが一番重要である。そのためには、段階的に前進していくことがベスト

な方法である。

① エージェントとの市場開拓と体制構築

現地法人を設立することを目指す企業であって

も、「米国で発展的に売れる」ということを証

明してから法人設立をしたほうが安全である。

初年度、2 年目場合によっては 3 年目まで、エ

ージェントとしっかり組んで市場開拓をしてい

くのが良いだろう。この 2-3 年間に売上げの見

込みを立てる、全体のビジネスの土台をしっかり形成する、また米国のビジネスに慣れる

ことが必要である。

② 現地法人の設立

ⅰ 本社海外事業部のサポート

米国進出 3 年目に現地法人設立を具体化していき、販売管理体制を完成させると良いだ

ろう。この 3 年目までに一番ポイントになることは、本社に海外事業部を設立して国際

ビジネスを担う人材を育成することである。本社海外事業部の恒常的サポートなしに米国

現地法人運営は成り立たない。海外現地法人にビジネスを「丸投げ」しては何もならず、

あくまでも本社海外事業部が中心に運営することである。

ⅱ ゆとりある事業計画

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現地法人設立を急いで行うことは逆にマイナスになる。オフィスの選択にも数カ月かけた

方が条件の良い物件が見つかる。日本から人の派遣するのにもビザを取得するので時間が

かかる。現地の人材を雇用する場合は、研修にある程度の時間をかけないと、生産背景、

商品知識、会社の長所、短所などあらゆる情報を身につけることが出来ない。中途半端な

形でスタートすると、人的摩擦が起きたり、生産が遅れたり、商品は売れずに挫折すると

いうこともありえる。現地法人設立は、2 年目の準備段階から完全稼動まで1年半-2 年は

かけるべきである。

③ 段階的前進

思いつきで海外現地法人を作ることなく、長期的な計画を立てて、段階的に前進していく

べきである。まとめると次のようになる。

ⅰ エージェントと共に米国市場に販売していく

初年度-3 年目はいきなり現地法人の方針で行くのではなく、エージェントと提携して市

場開拓を行なう。

ⅱ 米国市場の知識、経験を吸収する

エージェントに全てを丸投げにすることなく、展示会の時は出来るだけ日本からスタッフ、

オーナーが出張し、販売活動を一緒に行い、米国市場の知識を吸収し、ビジネスの経験を

積むようにする。

ⅲ 米国市場の売上げを形成する

エージェントを核に商品を米国に販売して行き、

売上げを形成する。その売り上げ目標は、あら

かじめ売り上げ計画の中で設定しておく。

ⅳ 本社に海外事業部を設ける

日本の社内に海外事業部を設けて、組織的な対

応が出来るようにする。

ⅴ 海外事業担当者を育成する

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英語が堪能なスタッフを中心に、海外ビジネスが出来る担当者を育成する。1-2 カ月の短

期間でもエージェントのオフィスに出向し、海外ビジネスを体験する。

ⅵ 米国に現地法人設立の準備をする(1 年間以上かける)

2 年目あたりから、現地法人設立の具体的な計画を作成し、準備を始める。

ⅶ 現地法人として営業開始

3 年目あたりから、エージェントと協力して、現地法人の体制を構築していく。

ⅷ 現地法人として本格的なスタート

スタッフの体制を作り、オフィスを決めて本格

的にスタートする。

このように、段階を追って「現地法人=安定的

な組織」を構築していく。会社の未来を握って

いる海外市場獲得のためには、時間をかけて慎

重に行うべきである。「組織的な前進」がまさ

しくビジネスの前進の核となるのである。「思

い付き的な現地法人設立」による急速な「前進」

は、むしろ危険である。

5 トラブルの回避

米国市場でのビジネス活動では、予想もしないトラブルが起きることもありえる。それは、

大部分が「米国に関する情報不足」が原因である。「発生しやすいトラブル」をはじめか

ら想定しておき、組織的に対策を立てておけば問題は大きくならない。避けられるトラブ

ルはたくさんある。ここでは、トラブルを回避する方法をまとめておく。特に、日本企業

が直面しやすい例を挙げて説明する。

① 商品運送上のトラブル

ⅰ 日本から米国への運送

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商品を日本から米国に送り、目的地に着いたら、商品にダメージがあった、商品が紛失し

たというトラブルは起こりうる。米国では、段ボール箱などはかなり乱暴に扱われるので

しっかりとした梱包が必要である。また、信用のある運送会社、倉庫業者を利用すること

で予防できる。運送費が安いというだけで運送会社を選択すべきではない。また、保険も

きちんとかけておくことが必要である。

ⅱ 米国国内運送

米国の国内拠点から運送会社で送る時も同じである。国内運送を請け負っている UPS 社

は、何も保険をかけないと、UPS 社が紛失した場合の賠償額は 100 ドルのみであるので

充分保険には注意が必要である。UPS を通して加入する国内の商品保険は安価であり、

送り先ラベル作成の時に簡単に加入できる。

ⅲ 展示会

展示会期間中、会場閉館後サンプルは会場のブースの中に置いてくるわけだが、盗まれる

ということも考えて対策を考えておく。次の方法が考えられる。

・ 高価格品は展示会終了後毎日、会場の常時セキュリティのいる保管施設に保管する。

・ 夜間、ブースにセキュリティ(警備員)をおく。

・ ブースの前面を鍵付きのカーテンで囲う。(会場で有料で借りられる場合がある)

・ ブースの前面を布製カバーで人が入りにくくする。(これが一般的)

・ 商品保険をかけておく。(展示会出展中が保険のてん補範囲ということを確認する)

② 取引先とのトラブル

ⅰ 売掛金回収の焦げ付き

回収体制をしっかり整えて、裏づけのない「信用

売り」を行わない。回収体制さえしっかり整えれ

ば問題ない。万が一、売掛金が焦げ付いた場合で

も、債権回収エージェント(Collection Agency)

が、約 25%の成功報酬で回収業務を代行してく

れる。債権回収エージェント( Collection

Agency)は、ファクタリング会社と提携してい

ることが多い。売掛金が回収できないといって、

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店舗オーナーの承諾なしに店舗から商品を引き上げるということは、米国では決してやっ

てはいけない。日本企業にとっては、ファクタリングによる回収が安全で容易である。回

収体制を整備しておけば、売掛金の焦げ付きは回避できる。

参照: 第五章 米国のビジネス 「回収」

ⅱ 注文のキャンセル

受注書に、「注文のキャンセルはできません」という文言を入れて署名してもらう。その

文言は、米国の弁護士に相談して法的に適正な文言にする。大きな金額になる場合は、弁

護士に「契約書」「合意書」を作成してもらう。米国では、こういうことを厳しく行って

も取り引きに影響はない。先方も自社の弁護士にその契約書を見せて弁護士同士が交渉す

る。小さい量のキャンセルは大きなダメージにはならないが、特注の大きな量のキャンセ

ルは販売計画自体に関わる大きな問題になる為に、取引先の信用調査および緻密な商談と

弁護士のサポートが必要である。

③ 現地法人運営上のトラブル

ⅰ 雇用上のトラブル

これは、現地法人を設立した時に起こりうることだが、法人を設立する時に、労働法専門

の弁護士に、「就業マニュアル」を作成してもらい、経営者、従業員ともに遵守するとい

うことでトラブルは回避できる。残業があるのにその分の給料を払わないとか、休日出勤

の代休を与えなかったり給料を払わないということなどは米国では許されない。セクハラ、

パワハラは言うまでもない。米国では、正社員も臨時社員も地位的には全く同じであるこ

とも覚えておく。これらは、雇用専門の弁護士とあらかじめよく相談して、米国の雇用に

かかわる認識を持つべきである。

米国に住む米国人でも日本人でも採用の時に

面接する時には、質問内容も「プライベート

な内容」を聞くことはできない。日本の常識

から考えると、違和感があるかもしれないが、

人種、性別、年齢、家族構成、宗教、趣味な

どは聞くことができない。受けた教育、過去

の仕事の経験などの質問はかまわない。応募

者が、日本人の時には「日本的な質問」で、

米国人の時には「米国的な質問」ということ

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も避けるべきである。人種で差別をすることは、あらゆる状況で避けなければならない。

日本人を優遇するということよりも、逆に身内の感覚で、「日本人に対して厳しく、米国

人に対して緩やかに」となりやすいので充分注意が必要である。

ⅱ 税務上のトラブル

これも、現地法人を設立した際の問題だが、米国と日本とでは税務上や事務手続き上の違

いがあるので、経験豊かな会計士とどんな細かい点も相談するようにすれば、無用なトラ

ブルは回避できる。市や州への書類提出、納税が遅れてペナルティ(罰金)ということもあ

るので注意。

上記のように、色々なケースが考えられるが、トラブルを回避する体制さえきちんとして

おけば問題はない。ただ、米国は日本のように、すべてがきちんと行われるということが

ないので、各種手配をしていても絶えず確認、再確認するという習慣がトラブルを避ける

一番賢い方法である。

「米国は訴訟社会なので恐い」という「うわさ」におびえる必要はない。ただ、日本では

習慣上 OK であったのが、米国ではダメということがあり、文章で決められていること

はきちんと守らないとならないということである。それは、むしろ、新しい市場に参入す

る企業(弱い立場)にとっては、法律に守られたやりやすい環境とも言えるので否定的に

捉える必要はない。

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第八章 販売戦略のポイント

1 販売戦略の前提

① 企業の強い意志

日本のホームテキスタイル企業が米国市場に大き

く販売できるかどうかの可能性は、これまで述べ

てきたように、マーケットに合った商品の確立、

組織的な段階的前進を行えば充分可能であるし、

大きな障壁はまったく見つからない。

しかし、鍵になる点はある。それは、企業として、

米国ビジネスを行う「強い意志」があるかどうか

である。海外志向の契機は、「日本では伸びない

から海外へ」ということも多いが、その場合すぐに充分な売り上げができないと早い時期

に挫折してしまうことがある。そうではなく、海外市場進出計画は、5 年先、10 年先を

見通した企業の歴史的な前進になるものにしなければならないだろう。そういう意味で、

まずはじめに企業の代表者と幹部社員を中心とした会社全体の「海外市場への強い意志」

が重要なのである。

特に、1 年目では大きく貢献するだけの売り上げになることは稀である。むしろ急激に大

きな売り上げになるよりも少しずつ上昇して行く方が良い。その方が、米国市場に合った

商品になって行くし、ビジネスの土台である「組織作り」と共に売り上げを伸ばしていけ

る。米国にとって目新しい日本商品は多くのバイヤーが「飛びつく」という現象が起きる

ことがあるが、そういう一時的な売り上げは落ちやすい。初期段階では、「企業が市場に

慣れる」という時期が必要である。そのように、企業として「長期的展望を持って市場を

開拓する」という姿勢を持つことが大切だ。

② ビジネスのイメージ

米国戦略を作成する時に、前提として誰でもが、「売り上げを作る」という「ビジネスの

イメージ」ばかりを先行させてしまいがちである。それは無理のないことではあるが、市

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場の状況がまだわからない時点では営業展開を急がないほうがいい。あまり先走ると、海

外市場における組織体制が追いついていかず、トラブルになることがよくある。

例えば、生産体制が海外市場用に整っていないため、初回出荷が大幅な「納期遅れ」にな

ったということがよく起きる。一朝一夕に新しい市場に向けた生産体制はできないだろう。

新しい市場に会社が慣れる、体制が整うためには、売り上げを造りながら最低一年はかか

る。そしてビジネスの土台作りには二年はかかる。全体の体制が整うまでには、全部で三

年は見なければならない。このくらいの時間をかけると、「売り上げを伸ばす」と「組織

体制を作る」という二つの要素がバランス良く前進していく。

③ 販売計画の土台

販売計画の土台を形成するものは、生産体制と組織体制である。

ⅰ 生産体制

海外市場で受注を受けた場合には、どの会社で

も受注後に原料を手配し、生産を開始するであ

ろう。まだ経験のない段階で、海外市場用に生

産体制は組みにくいからである。海外市場の商

品を日本とは違うデザインで作成したり、日本

とは違うブランドを作るということもある。し

たがって、それらの準備を行うのはどうしても

受注が確実に入った後からの準備になるので、

素材の手配、パターンの修正、工場の手配など

何かと生産に時間や手間がかかる。初回展示会で、「大きな注文」をとったりすると、生

産体制が間に合わないことが起きやすい。その結果、納期遅れで会社の信用も失われてし

まう。したがって、初年度は、注文は細かい「専門店の注文」をこなしていき、海外市場

向けの生産体制を整えていく方が安全である。

ⅱ 組織管理体制

販売計画ができ、生産体制も何とか整ったとしても、組織の管理体制が不十分になると、

混乱することもよくある。商品の流通が行われれば、販売先の信用調査など顧客管理、売

掛金管理、海外倉庫における商品管理、スタッフ管理、エージェント管理など新しい仕事

がたくさん増えてくる。これらの組織的な運営上の管理体制は海外という場所が離れてい

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るためにミスや混乱が起きやすい。販売計画の実行前に、あらゆる管理体制を入念に準備

することが販売計画を支えることになる。

以上のように、初回出展を初めとした「初期段階」には、小さな注文をこなしていき、新

しい市場に対する新体制を整えていく方が安全な道である。

2 営業計画

内容のある市場調査を行い、一定期間のテスト販売を行なって、米国市場戦略が確立した

後に、具体的な年度別の営業計画を作成する。おおよそ次のような内容になるだろう。ポ

イントは、長期的展望を持ったストーリーを組み立てることである。

① 初年度の営業計画のポイント

ⅰ 初年度は米国戦略の内容はまだ不十分である。

ⅱ 専門店市場を形成する。

ⅲ 展示会に出展し、取り引件数を増やしていく。

(年間目標 50-100 店)

ⅳ 米国市場に合った商品をそろえていく。

1 年を通じて「ビジネスの土台」を作ることをテーマとする。

② 2 年目の営業計画のポイント

ⅰ ビジネス体制(販売体制、組織体制、商品体制)を確立する。

ⅱ 専門店の取引をさらに増やす。(100-200 店)

ⅲ 中小チェーン店を開拓する。

ⅳ メジャー市場の調査を行う。

ⅴ 商品体制、生産体制を完成させる。

1 年を通じて「ビジネス体制の充実」をテーマとする。

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③ 3 年目の営業計画のポイント

ⅰ ビジネスの前進、売り上げを拡大していく。

ⅱ 専門店、中小チェーン店の取引をさらに増やす。(200-300 店)

ⅲ メジャー企業との取引準備 (EDI システム、ウェアハウス)

ⅳ 現地法人設立検討

ⅴ 商品をさらに充実させる。

商品体制、販売体制、管理体制を完成させ、大きな売り上げを作る体制を作る。

(3 年間のポイント)

初年度、2 年目は米国のビジネスの基礎、商品内容を固めることが重要である。会社自体

も米国とのビジネスに慣れていく。特に、ブランド・イメージの定着、企画、生産体制を

整えていかなくてはならない。その点が不十分なまま、安易にデパート市場に挑戦したり

すると、取り返しのつかない評価をされてしまう危険がある。一度、納品ミスや納期遅れ、

欠品などをしてしまうと、取引が停止されてしまい。Bad クレジットがつけられてしま

う。3 年間で黒字体制にして、売り上げ拡大が可能な体制を形成し、大手市場において大

きな売り上げを獲得する。これが、3 年間の流れになるだろう。

3 販売方法「展示会販売」

ここでは、小売店に向けた販売戦略を提案す

る。製品をどのように市場に販売するべきか

である。米国市場では「展示会販売」が一番

効率的である。専門店バイヤーも仕入れが効

率的にできるので、展示会発注を中心に考え

る。メジャー企業も展示会で、新しい有力な

サプライヤーを探す努力をする。

① 米国の展示会(Trade Show)

ⅰ どの展示会が良いか?

米国には、多くの展示会があるが、展示会に参加する時は次の点を考慮した方がよい。

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・商品が展示会にあっていること。

・出展する前に、必ずその展示会を視察すること。

・競合する米国企業がその展示会に出ているかの調査。(出展しているほうが良い)

「どの展示会が良いか?」という命題に対しては、「商品に合った展示会がよい」という

答えになるだろう。

カテゴリー別にはおおよそ次のとおりになる。

・ リビングルーム・テキスタイル (カーテン、ひざ掛け)

カーテンは、家具系の展示会がふさわしい。多くの設計事務所デザイナー、インテリアコ

ーディネイターが来るからである。

ICFF 展(International Contemporary Furniture Fair)

http://www.icff.com

ハイポイント家具展 (The High Point Market)

http://www.highpointmarket.org

ひざ掛けは、ギフト商品の定番であるのでギフト系の展示会がふさわしい。

NY ギフト展(New York International Gift Fair )

http://www.nyigf.com

・ ベッドルーム・テキスタイル (ベッド・リネン)

ベッドリネンの米国企業は NY ギフト展に出展しているが、多くは自社ショールームで

行っている。

NY ギフト展(New York International Gift Fair )

http://www.nyigf.com

・ バスルーム・テキスタイル (タオル)

多くの米国タオル企業が一つの展示会に出

展しているという事はないようである。数

社は、NY ギフト展に出展している。

NY ギフト展(New York International

Gift Fair )

http://www.nyigf.com

・ ダイニング・テキスタイル (ランチョ

ンマット、テーブルクロス、ランナー、ナプキン)

NY ギフト展とシカゴのホーム展が有力な展示会である。

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NY ギフト展(New York International Gift Fair )

http://www.nyigf.com

The International Home + Housewares Show

http://www.housewares.org/show/info

・ キッチン・テキスタイル (キッチンタオル、エプロン、ミットなど)

NY ギフト展とシカゴのホーム展が有力な展示会である。

NY ギフト展(New York International Gift Fair )

http://www.nyigf.com

The International Home + Housewares Show

http://www.housewares.org/show/info

上記展示会は、いずれも日本企業も現在出展している有力な展示会である。それら以外に

も、米国には多くの展示会があるので、視察してみると良いだろう。下記のウェブサイト

で自社にふさわしい展示会が探せる。

Trade Show News Network

http://www.tsnn.com/

② 展示会の位置づけ

展示会出展の位置づけは、「注文を得る」ことである。決して「商品の反応を見るための

市場調査」と位置づけない方が良い。今まで少なくない日本企業が米国の展示会に出展し

て失敗している。それは、「うちの商品のありのままの姿を米国のバイヤーに見てもらお

う。その結果を見て、その後にいろいろと準備しよう」という姿勢で出展する企業である。

これではまずうまく行かない。米国市場における「ビジネスの準備」が不足しているから

である。バイヤーは商品だけを見て注文するわけではない。会社の流通体制、販売体制を

見て、信頼できる会社から商品を仕入れたいのである。さらに、市場調査無し商品の工夫

無しに出展しても、バイヤーから良い反応は得られず、多くのバイヤーは素通りしてしま

い「展示会で市場調査」の意味も成さない。

多くの日本企業は、バイヤーからの反応が小

さく結果が悪いと、次回に工夫して再度挑戦

という気にはならないようである。

市場調査のために展示会に出展する意味はな

く、展示会出展は、商品の準備、販売体制の

準備が完全と行かないまでもある程度整った

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時点で、「注文をとるために」出展すべきである。

展示会出展は、体制を整えて、受注を得てこそ意味がある。バイヤーが真剣に商品に向か

ってくれるからである。最初は多くの注文が入らなかったとしても、ラインの中でよく売

れる商品グループは出る。その比率をたくみに増やしていくことは、競争の激しい日本市

場を戦ってきた日本企業には困難ではない。展示会で売れていけば、必ず次の方向が見え

てきて、ビジネスは前進していく。「売る」という目標をしっかり立てて、市場調査、商

品の工夫、販売体制の準備を整えた展示会出展にしなければならない。

「売れるもの」が出てくれば、売れないもの、商品の問題点が分ってくる。「やる気」も

出てきて、「次はもっと良い商品を提案して、もっとバイヤーを集めよう」と前進してい

く。

③ 展示会準備のプロセス

ⅰ 市場調査実施

市場調査が米国市場進出の成否を握っている。十分な市場調査をすればするほど展示会の

成果も大きくなる。方法は、第一章「市場調査と米国戦略」を参照。

ⅱ 商品戦略準備

米国のライフ・スタイル、ホームテキスタイルの流れに合う商品が売れるのである。市場

にあったデザイン、色、価格などのバランスが受注に結びつく。卸価格(米国国内価格)

の算出も重要である。

第六章「商品戦略のポイント」を参照。

ⅲ 組織戦略準備

販売組織体制を作ることは米国のビジネスの土台を形成する。ブースで販売するための通

訳だけではまったく不十分である。米国市場で商品の販売、流通業務をしてくれるエージ

ェントが前もって準備できれば完璧である。それができなくとも、商品の市場性が高けれ

ば、先方から声をかけてくることもあるし、前もって案内状を出しておき、ブースで商品

を見てもらうということもできる。第 7 章「組織戦略のポイント」を参照。

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ⅳ カスタマー・リストの作成

米国に販売する時、営業的に最初に行うことは、

「見込み客リスト」(Potential Customer List)

を作ることである。対象をしっかり絞って、集

中的に営業を行うことが効率的である。本レポ

ートに、全米の対象となる店舗を添付した。

参照: 第四章資料

「ホームテキスタイルを扱う店舗一覧」

ⅴ 展示会出展申し込み

一度、展示会の視察は必要である。視察をして、ふさわしい展示会と判断したら、主催者

と連絡を取る。

・ JETRO の展示会

NY ギフト展、ICFF 展には、JETRO が準備する日本パビリオンがある。そこに参加す

るためには、JETRO オフィスに申請を行う。

展示会情報は、http://www.jetro.go.jp/events/tradefair に掲載している。

・ それ以外の展示会

主催者に E メールを出して、出展に関心のあることを伝え、色々な質問をする。そして、

納得できたら申請を出す。多くは、オンラインで可能である。出展費用は、クレジットカ

ードで支払う。

ⅵ ブースのデザイン準備

ブースのデザインは、バイヤーをひきつける重要な要素である。むろん、センスの良いデ

ザインほど効果は高い。「ブースにお金をかける」と、それだけの効果はあるかどうかと

いうと、売れるかどうかは商品や価格もあるので一概に言えないが、「集客が増える」こ

とは間違いない。必要以上に豪華にする必要はないが、ある程度よいものにすると、レベ

ルの高いバイヤーが訪れる。「うちは商品で勝負だ」と言っても、バイヤーが素通りして

は意味がない。センスの良いブースには、「良い商品がありそうだ」とバイヤーは考える

のである。

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多くの展示会主催者は、出展準備が簡単にで

きるように、ブース・パッケージを備えてい

る。これに含まれるのは、ブースパネル、じ

ゅうたん、照明、商談テーブルといす、ごみ

箱程度である。このパッケージは経済的なの

で申し込む出展社は多いが、あまりお勧めで

きない。安っぽいからである。それでは、バ

イヤーをひきつけることはできないので、そ

のパッケージをベースにして、できるだけ家

具や備品で工夫して魅力あるブースにすべき

だ。そのためには、展示会開催日前に会場の都市に来て、演出するものを選ぶとよいだろ

う。

展示会にもよるが、米国のコンテンポラリー系の会社は、普通のブース・パネルにシーム

レスペーパー(難燃紙素材)を貼り、ブランドロゴを紙の上に貼付する方法をとっている。

紙の色は選べる。こうすると、パネルのサンが隠れ雰囲気が作りやすくなる。経済的な方

法である。

ⅶ ディスプレイ

ブース・デザインも大切であるが、バイヤーの目をひきつける感度の良いディスプレイも

重要である。日本には米国よりも優秀なデコレーターがいるのでデザイン・プランを依頼

することもよいのではないか。インパクトがあり、センスの良いディスプレイは多くのバ

イヤーを引き付ける。

ⅷ 販売員の準備

ブースが 3mx3mであれば、ブースの中にいるスタッフは 2 人で充分で、それ以上は多

すぎる。商品をブロックしてしまうだけでなく、威圧感があってバイヤーが入りにくい。

バイヤーが入りやすく、明るく応対できる雰囲気作りをすると良い。展示会の種類による

が、米国ではダーク・スーツをきちんと着て、ネクタイを締めているという販売員はいな

いので、ある程度カジュアルのほうが良い。最近ではジーンズを着ている販売員が普通で

ある。

米国のスタッフ派遣エージェントを通じて、米国人販売員をあらかじめ準備することも可

能である。ブースに米国人がいると、バイヤーはグンと入りやすくなる。その場合は、展

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示会前日に、しっかり時間をとってスタッフに、商品説明、受注方法の説明を行わなくて

はならない。

ⅸ ブースの広さ

ブースは普通 3mx3mが 1 コマである。できれば、3mx4.5m あると、ゆとりができて商

品構成はしやすく、見た目もきれいである。回を重ねていき、3mx6m あったほうが、

「有力ライン」というインパクトがでる。問題は、デザイン数とのバランスである。ブー

スが広くてもデザイン数がついてこないのでは逆効果である。3mx3m のブースは、空間

がないためバイヤーから見ると、どうしても「小規模の会社」「頼りにならない」という

印象を与えてしまう。

ⅹ サンプルを米国に送る

サンプルを展示会会場に、郵便、運送会社を利用して直接送るのは大変危険である。荷物

が到着しない、紛失してしまうことが頻繁に起こる。サンプルが紛失して展示会ができな

くなったというようなことは米国では良く見かける。サンプル搬入は細心の注意が必要で

ある。会場には、手持ちで運び込むか、エージェントに前もって送っておく方法が一番よ

い。

ⅹⅰ 展示会搬入

通常、展示会前日が搬入日(Move In ムー

ブイン)である。会場の裏の荷受口(Dock

ドック)から、搬入される荷物が運び込まれ

る。ニューヨークのジャビッツ・コンベンシ

ョン・センターでは、ユニオンの人々が荷物

をブースまで運び込むことになっている。手

荷物は自分で運んでもかまわない。ピア

94,92 が会場の場合には、表から搬入し、大

きな荷物は出展社側のスタッフが台車で運ん

でくれる。

荷物がブースに届くと、梱包をといてディスプレイ準備にかかる。時間は 5-6 時間ほどあ

るが、ラベルをつける等日本でできることは前もってやってきたほうが良い。搬入日には、

できるだけディスプレイ+打ち合わせに時間をかけたい。ディスプレイが完了すると、盗

難防止用に商品にカバーをかけて帰ったほうが安心である。

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ⅹⅱ 展示会当日

展示会当日は言うまでもなく、ビジネスに集中して、あらゆるビジネスチャンスを見逃さ

ないようにすべきである。熱心に質問するバイヤー、さらっと見るだけのバイヤー、商品

をじっと見詰めるバイヤーなど反応は色々である。しかし、できるだけ、フレンドリーに、

「Hi ! How are you?」と声をかけて、リラックスして商品を見てもらう。

会話をしたバイヤーには必ず名刺をもらい、「リアクション・メモ」(別添)にとめて会話

の内容を書いておくと後日の営業に大いに役に立つ。積み重ねの市場情報は大変貴重であ

る。「どんな店ですか?」とお店の内容まで踏み込んでいくとよりよい。リアクション・

メモによって、デザイン、価格に対する「米国市場の反応」が分り、会社への報告書も作

りやすくなる。

初日が終わったら、「注文の入った商品」の傾向を見て、ディスプレイを変えるべきかそ

のままで行くべきか、商品が多すぎる場合はカットするかなどの検討を行う。この手順は

二日目、三日目のビジネスに大きく影響を与える。

ⅹⅲ 展示会でのコンタクト

展示会では様々ビジネス関連の人々と出会う。

小売店バイヤーばかりに目を奪われて、貴重な

ビジネスチャンスを逃さないようにしたい。

・ 専門店バイヤー

バイヤーの 70-80%は、専門店バイヤーで、

通常その場で注文する。メモ(Note)をと

って、後から Fax や E メールで注文書が

送られてくることもある。商品の意見も言

ってくれるので、「リアクション・メモ」を作成し、バイヤーの反応を全て記入して

おく。展示会後の営業フォローに活用する。

参照: 第五章資料 「Reaction Memo サンプル」

・ チェーン店バイヤー

チェーン店バイヤーが来る可能性はある。その場では注文しない。展示会後にアポを

とりショールームまたはバイヤーオフィスでミーティングになる。名刺は確保して、

今後の営業に備えたい。電話では中々連絡がつかないので、E メールアドレスを必ず

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確保する。

・ デパート・バイヤー

頻繁ではないがバイヤーアシスタントが来る可能性はある。名刺は確保して、今後の

営業に備えたい。電話では中々連絡がつかないので、E メールアドレスを必ず確保す

る。展示会後にアポをとりショールームでミーティングになる。

・ カタログ・オンライン販売会社のバイヤー

カタログ・オンライン販売は米国では強い。注文数量がまとまる場合もある。展示会

後にサンプルと数量別価格表(見積もり書)を送って話を進める。

・ 米国以外の海外バイヤー

ニューヨーク展には、カナダ、ヨーロッパ、南米、アジア、日本からのバイヤーも多

い。その場では、あまり注文しないので、後日、E メールで商談する。米国で注文し

ても、流通は日本から直送ということになるので、FOB 価格を提案することになる。

・ メディアのレポーター

日本と同じように、米国でのメディアの

影響力は大きい。できるだけ掲載しても

らうように、展示会に資料の準備を整え

ておくと良い。その資料セットを、「プ

レス・キット」(Press Kit)と呼ぶ。プ

レスばかりでなく有力小売店にも配布す

るとよい。サンプルを一定期間貸与して

写真撮影を行い返却してくるという流れ

になる。ただし、大部分の雑誌社は、商

品の取り扱い店舗情報も掲載するので、その情報が必要になる。

・ レップ

セールス・レップが、「貴社の商品をうちで扱いたい」というオファーがくる場合があ

る。彼らは、ビジネスになる商品を見抜く力は持っているので、レップが来るというこ

とは大変良い「市場性のサイン」である。販売先、取り扱いブランドなどを聞いておく。

連絡先を聞いておき、展示会後に検討する。

・ その他、売り込み等…信用調査会社や、原料会社、PR 会社など多くの売り込みが来

る。

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このように展示会ブースには多くの人が訪れる可能性がある。特に、魅力的な商品を持っ

ていると様々な分野の人が来る。その数は、「商品の市場性」に比例しているといって間

違いない。

ⅹⅳ 受注時の注意

注文を受ける時には、注文書(PO)に記入していく。PO には、注文内容のほか、支払

方法、納品時期を必ず書く。先方がお店専用の PO を持っている場合もあり、キャンセ

ル・デイト(この日を過ぎたら自動的にキャンセル Cancellation date)を書く場合もあ

る。PO には必ずサインしてもらう。「うちの近くの店に売らないで」というリクエスト

をするお店もあるが、注文量にもよるのでその場で確定的な答えは出しにくい。また、支

払方法についてその場では信用状況を確認できないので、先方の希望を PO に書いておき、

後日問題があれば連絡するということでよいだろう。ディスカウントを求めるバイヤーは

それほど多くない。その他、他の質問が出た場合、何かを依頼された場合も、全て PO の

記入しておくと良い。展示会が終わって一つ一つ処理する。

④ 展示会後の営業

展示会出展は展示会で終わるのではなく、「展示会後」が重要である。むしろ米国市場で

のビジネスは、展示会後から本格的に始まるといっても過言ではない。

ⅰ バイヤーの名刺

展示会で集まった有力バイヤーの名刺を

「 見 込 み 客 リ ス ト 」 ( Potential

Customer List)にきちんと整理しておく。

これが後々の大きな営業の武器になる。

ⅱ ニュース・レターの発行

各店舗は、業界のニュース、商品のニュー

ス、売れ筋のニュース、トレンドのニュー

スをほしがっている。自社商品の宣伝も必要だが、それらのニュースを載せた「ニュース

レター」(News Letter)の発行はビジネスに効果的である。今年の重点デザイン、傾向

や写真などを掲載すれば注文の促進になる。広大な米国市場では、この方法は大いに活躍

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する。このような日本式のキメの細かい営業は、米国ではあまり一般的でないだけにその

効果は大きい。

参照: 第五章資料 「News Letter サンプル」

ⅲ プレス対策

展示会では、プレス(Press 雑誌社)との出会いの場でもある。展示会後に商品を貸し出

して、雑誌に掲載してもらう。これは、新規のお店からの問い合わせにつながるので重要

である。雑誌とのコンタクトを日常的に行っておくことは、商品の宣伝になるという意味

では大いに価値がある。ただ、名刺を保管しておくだけではなく、きちんとしたプレス・

リスト(Press List)を作成して、時折商品情報をプレスリリースで送ると良いだろう。

4 販売方法「ショールーム販売」

展示会が専門店とのビジネスの中心になるが、有力店、チェーン店、デパートとの商談は

ショールームになる。

① ショールーム

ⅰ コーポレイト・ショールーム

米国では、各企業が自社のブランドの為に、

ショールームをシカゴやニューヨークに持っ

ている場合が多い。そのため、展示会中にバ

イヤーから、「ショールームはどこにありま

すか?」という質問がよく来る。これは、展

示会ではブース全てを回って情報を集めてお

き、展示会後に気に入ったラインのショール

ームに行き商品全体をじっくり見るという店

舗からの質問である。メジャー企業のバイヤ

ーは展示会後にショールームで商談する。有

力なショールームは、ショールーム・ビルの中に集まっている。ショールームでは、雰囲

気よく商品をディスプレイしておき、常時バイヤーの訪問に備えている。

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ⅱ ショールーム・ビジネス

米国では、各企業が自社のショールームを持っている場合が多いが、中小の企業は、ショ

ールーム・ビジネスを行っているショールーム会社に販売を委託している。委託する業務

は「受注」のみである。ショールーム会社も展示会に出展している。

ショールームに支払う報酬は、ショールーム・フィーと、販売コミッションである。その

額は、様々であろうが、1 ラインについて、ショールーム・フィー1000 ドル-3000 ドル

程度と 10-15%程度のコミッションである。

日本企業が、米国のショールーム会社と契約してビジネスを行うことがプラスかどうかは、

相手によるが、一つの市場開拓の方法ではある。しかし、ショールームに入れば注文がド

ンドン来ると考えることは難しい。彼らも、やはり展示会が集客の柱になっている。ショ

ールーム・ビルが常にバイヤーで賑わっているということはあまりない。新規小売店を確

保するのは展示会のほうが効果的である。

普通、ショールーム会社は、受注のみを業務として、商品の流通、代金の回収までは行わ

ないことから、米国に法人を持つ米国企業には良いが、現地法人を持たない日本企業にと

っては、受注、流通、回収までを全面的に行ってくれる「エージェント」の方が取り組み

やすいだろう。

② 追加注文、商品の問い合わせ

多くのお店は、初回取引から追加注文分までの数量を見込んで注文はしない。特に新しい

取引先の場合は、商品の品質も見たいだろうし商品の動きも見極めたい。動きのよい商品

は追加注文をする。追加注文を促すためのサプライヤー側からの営業活動が必要である。

それは、アポをとってバイヤーのオフィスに訪問したり、ショールームに来てもらったり、

E メール、電話で追加注文を促していく。そのためには、店舗も訪問して商品の動きをチ

ェックするというきめの細かい営業活動を

行う。

③ 営業企画

商品を流通していると、米国の店舗からさ

まざまなフィードバック(意見)が寄せられ

る。市場からの要望を本社に速やかに伝達

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し、商品を米国市場にふさわしいものにしていくことは、売り上げ向上、顧客網の拡大に

とって欠かせない営業企画的活動である。商品がより米国市場に適合していけばいくほど、

売上げは拡大していく。

④ 新規顧客開拓

展示会で集まった多くの見込み顧客の営業を継続していく。見込み客リストを使ってショ

ールームに新規顧客をひきつけていく。この場合も、先に述べたニュース・レターは効果

を発揮する。

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資料 展示会英会話-1 Copyright © 2011 JETRO. All rights reserved.

Conversation in the Booth (展示会英会話)

○ ブースを見ているバイヤーに. 販売スタッフ どうぞ中にお入り下さい。 Sales person Come on in, please.

中には、日本の製品がたくさんあります。 We have a lot of Japanese products in our

booth.

どうぞ、ご覧下さい。 Please take a look.

はーい、こんにちは。いかがですか? Hi ! How are you ?

いらっしゃいませ。 May I help you?

何かご質問はありますか? Do you have any questions?

ご質問があれば私に聞いてください。 If you have any questions, please let us know.

どちらからいらっしゃいましたか? Where are you from?

○ 自己紹介 販売スタッフ 私は、太郎といいます。 Sales person My name is TARO.

はじめまして、お会いできて光栄です。 Nice to meet you.

私たちは日本から来ました。 We are from Japan.

私たちの会社は日本の ABC といいまして、もう 10 年営

業をしています。

Our company is ABC. We have been in

existence for 10 years.

私たちの商品のポリシーは、品質の高さを維持すること

です。

Our production policy is that we maintain high

quality.

○ 生産地について 販売スタッフ これらの商品は、日本で作られたものです。 Sales person The merchandise is manufactured in Japan.

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資料 展示会英会話-2 Copyright © 2011 JETRO. All rights reserved.

○ 価格の質問

バイヤー これはいくらですか? Buyer How much is this?

価格は? What is the cost of this item? What is the price

point?

どのくらいの価格帯ですか? Where are the prices located?

価格は、どうやって見るのですか? How can I find prices?

販売スタッフ 150 ドルです。 Sales person It is $150.

アメリカでの価格です。 It's the landed price in the US.

全ての価格は、ラインシートに書いてあります。 All prices are in the linesheet..

○納期について バイヤー この商品の納期はいつですか? Buyer When do you deliver ?

10月 1日に納品してくれますか? Could you ship on Oct.1st ?

何処から送るのですか? Where do you ship from?

販売スタッフ この商品の納期は、8月 30日です。 Sales person The delivery is eight-thirty.

この商品は、いつでも納品できます。 This item is immediate.

10月 1日に商品を送ります。 For you , we can ship these items by Oct. 1 st.

当社の配送システムは素晴らしいですよ。 Our company has an excellent shipping record.

納期どおりに送ります。 We ship on time.

ブルックリンから送ります。 We ship from Brooklyn NY.

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資料 展示会英会話-3 Copyright © 2011 JETRO. All rights reserved.

○ 素材について

バイヤー この素材は何ですか? Buyer What is this material ?

販売スタッフ コットンを使っています。 Sales person It is a Cotton.

日本製の大変質の高い素材です。 This is a high quality Japanese material.

この素材の品質は大変高いのです。 This material is well known and high quality.

○ 色について バイヤー このデザインで、黒はありますか? Buyer Does this design come in black?

他の色はなにがありますか? Do you have any other colors?

販売スタッフ 残念ながら、黒はありません。 グレーならあります。 Sales person I'm sorry we don't have black. Instead we have

grey.

他の色は、白とグレイ色です。 We have white and grey as well.

○ ラインシートについて バイヤー ラインシートはありますか? Buyer Do you have a line sheet?

販売スタッフ はい、あります。 Sales person Yes,we do.

どうぞお持ちください。 Please take one.

注文をつけた方にしか差し上げていません。 We give it to buyers who have ordered.

ラインシートは、ありませんので、展示会後送ります。 Right now we don't have any more line sheets .

We will be more than happy to mail one to you.

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資料 展示会英会話-4 Copyright © 2011 JETRO. All rights reserved.

○ デザインについて

バイヤー 素晴らしいデザインですね。 Buyer This is wonderful.

販売スタッフ このデザインは、大変人気があります。 Sales person Everybody loves this item.

○ 注文 バイヤー それでは、つけましょう。 Buyer Now I will order.

注文します。 I want to write.

今日は、メモをとります。 I will only take notes today.

あとで、FAXで注文して良いですか? Can I order by fax after the show?

注文書を下さい。 May I have a P.O. please ?

販売スタッフ わかりました。 Sales person OK. Good.

それでは、品番をいってください。 Please tell me the style number.

私が注文書を書きましょう。 I will write it for you.

あとで、FAXで注文を送ってください。 You can order by fax.

できるだけ早く注文してください。 We would like for you to order as soon as

possible

すぐに生産を開始します。 because we will start to manufacture soon.

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資料 展示会英会話-5 Copyright © 2011 JETRO. All rights reserved.

○ 取引条件

バイヤー 最低取引枚数(ミニマムオーダー)はありますか? Buyer Do you have a minimum purchase ?

この商品は、いくつから注文できますか? How many pieces are required for your

company's minimum ?

初めは、わからないので、少しだけ注文したいのですが

…。

I want to order a small amount the first time,

because

we will need to see how well the items sell.

追加注文は出来ますか? Can we reorder?

販売スタッフ ミニマム・オーダーは、全部で、1000 ドルからです。 Sales person Minimum is $1000.

○ 支払条件 バイヤー うちは全て、NET30 でやってもらっています.それでいい

ですか?

Buyer With all manufacturers, we only accept NET30.

Is that OK with you?

現金交換でも構いません。 We accept COD .

ファクターは使っていないのですか? Does your company work with a factor ?

販売スタッフ うちは、全ての取引をファクターを通しています。 Sales person We work with a factoring company ..

COD取引でお願いできますか? Do you accept COD?

うちはお店の小切手は受け取りません。銀行保証小切手

が必要です。

We don't accept company checks. We will need

a certified check .

会社で検討してから、お返事したいのですが、良いです

か?

Is it OK with you to respond later because I

must

first speak to my boss ?

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第九章 米国市場開拓戦略まとめ

本レポートの最後に「まとめ」として次のポイントを再度強調しておきたい。

1 市場開拓のための行動

① 市場調査レポートの作成

本市場調査レポートをベースとして、日本企業のそれぞれの商品ジャンル、カテゴリーに

あった調査を行う。ポイントになるのは、米国の商品、米国の競争相手(Competitor)

である。数社選び、その商品を徹底して研究し「米国のホームテキスタイル製品」を理解

する。調査内容をレポートとしてまとめることが重要。

② 商品企画

・ 米国のホームテキスタイル製品を理解した上で、米国市場に向けた商品 戦略を作成

する。自社のデザインをベースに、アイテムの調整、サイズの修正、デザイン・色の調

整を行う。

・ 米国市場に向けた商品コンセプト (商品の市場価値) をまとめる。

③ サンプル作成

米国市場に向けたサンプルを作成する。できたら、米国市場に詳しい人に意見をもらった

り、米国在住の人に使用してもらい、各種の改良を行う。

④ 展示会申し込み

商品的にあう展示会を探し視察する。その結果、その展示会がよければ、出展の申し込み

を主催者に対して行う。

・ 申込書(Application Form)の作成

⑤ ニューヨーク・ギフト展

New York International Gift Fair

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148 Copyright © 2011 JETRO. All rights reserved.

http://www.nyigf.com/

毎月 2 回ある展示会の予定を確認する。基本的なスケジュールは下記の通りになる。お

およそ、半年前から行動を開始することになる。

・ 8 月展出展の場合

1 月-2 月: 市場調査を行う

2 月 : NY ギフト展視察

3 月-7 月: 展示会サンプル作成

4 月-5 月: JETRO に出展申し込み

6 月-7 月: ブースデザインと什器手配

8 月 : 出展

他の展示会においても、おおよそこの程度の準備期間が必要である。

2 米国市場開拓戦略の構築

① 商品戦略

・ 市場調査の根本である「米国のホームテキスタイル製品」を充分に理解する。

・ 米国市場へ「外側から売る」という感覚ではなく、「内側から売る」という感覚で、

自社商品を改良していく。

・ 米国のライフスタイルに合致するホームテキスタイル製品を作成する。

② 組織戦略

・ できれば、展示会前に情報を集め、ふさわしいエージェントを探し、ミーティングを

行う。2-3 年の間 エージェントと共同で市場を開拓していく。

・ 企業によっては、現地法人開設が可能であろう。米国市場の経験を充分につむ 3 年目

程度に、現地法人設立を検討する。

③ 販売戦略

・ 展示会販売と、日常的な営業活動によって顧客を増やしていく。

・ ニュースレターを発行し、営業フォローを緻密に行う。

・ 商品にあった展示会を選択する。

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・ 展示会を中心に新規取引先を開拓していく。専門店を中心に販売網を形成していき、

将来的には、メジャー企業との取引を軸にする。

・ 将来的に、単独のショールームを開設し、ブランド・イメージを強めたビジネスを展

開する。

3 全体のストーリー

日本企業の米国市場におけるビジネスのストーリーは次のようなものになるであろう。

①市場調査を行う。

②米国におけるビジネスのパートナー=エージェントを決定する。

③最適な展示会を決定する。

④展示会出展で専門店、中小チェーン店の取引を増やしていく。

⑤企業全体として米国のビジネスに慣れていく。

⑥3 年後くらいに、米国ビジネスが安定する。

⑦本格的に前進を目指し、現地法人設立、スタッフ(管理者)を派遣、または現地採用する。

⑧ニューヨークにショールームをオープンする。

⑨メジャー企業とのビジネスを開始する。

⑩米国企画室を設け、米国市場向けの商品をニューヨークにて企画する。

⑪ 売り上げを伸ばしていく。

この過程の中で、一番のポイントは、「米国市場にあった商品企画」である。スタート時

点では、商品は、日本で企画された商品をサイズ、色修正して、又は多少アレンジして米

国市場に販売していく。

しかし、販売額をある程度(1 億円以上)大きくするためには、米国市場に合致した商品

が不可欠である。店の中でも、大きな売り場を確保するためには、デザイン数も増やし、

色もサイズも完全に米国市場に合わせなければならない。日本市場と米国市場では消費者

のテイストが違うので、「日本的な商品」だけで、大きな売上げをしていくことは無理な

のである。日本の自動車、カメラ、エレクトロニクス類、食品、すべて米国市場に合わせ

た「ものづくり」をして、大きく売り上げを伸ばしている。

4 世界市場に向けて

米国市場はオープンな市場である。米国企業が日本市場でビジネスを作り上げるよりも容

易にビジネスを展開できる環境である。そのアドバンテージを生かしビジネスのテリトリ

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ーを米国市場に拡大すれば、多くの刺激を受けて企業はより一層成長していく。グローバ

ルスタンダードも自然と社内に吹き込んでくる。その結果、日本市場の売り上げも上昇し

ていく。

米国の人々に製品を買ってもらうのである。米国の人々が本当に「欲しい!」という商品

を提供しなければ、チョロチョロと売れただけで終わってしまう。それでは何もならない。

米国の消費者を引き付けるためには、米国における「商品価値」をしっかり持っていなく

てならない。その「商品力」は、米国の感覚無しには生まれない。米国の「内側の感覚」

を磨いていくことが必要だ。それ自体はそれほど難しくない。インターネットによって、

あらゆる資料が手に入るのである。その視点さえしっかり持って、自社製品を改良してい

けば、米国の人々が求める製品を作ることはできる。日本企業の企画センス、技術、仕事

の緻密さを米国企業と比較すると、明らかに日本企業のほうが上であると確信する。米国

市場は必ず開拓できる。

米国市場で国際ビジネスの土台を構築し販売実績ができれば、さらに広い世界市場へ飛躍

することも充分可能である。