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2011/8/22 1 食事介助の基礎 医療法人 天心堂 志田病院 言語聴覚士 津山亜紀子 内容 摂食嚥下障害とは こんな症状には要注意 経口摂取の5つのチェック 姿勢 食物④食器・食事環境 ⑤テクニック 経口摂取にあたってのチェックポイント 介助時の一般的留意点 摂食・嚥下障害とは 摂食障害 広義:食欲低下、体力低下、意識障害、 嚥下運動障害、心理的障害など様々な 原因により食事がとれないこと。 狭義:神経性食思不振症や過食症など心理的な 要因による食欲異常のこと。 嚥下障害 水や食べ物が上手く飲み込めなくなること。 嚥下運動の障害。 摂食・嚥下障害 摂食・嚥下障害 ものを食べることの障害。脳血管障害などで、 食物の認識ができなくなったり咀嚼や嚥下が できなくなることにより、口から食べられなく なること。 参考図書:藤島一郎著 脳卒中の摂食・嚥下障害第2版 嚥下障害で起こる問題点 1.栄養摂取不良:脱水症、栄養不良 2.誤嚥:呼吸器合併症(肺炎、無気肺)、窒息 3. 3.食べる楽しみの喪失 食べる楽しみの喪失 (人間の根元的欲求) 引用:嚥下障害ポケットマニュアル 口から食べることの意義 嚥下直接的訓練:「嚥下は嚥下により最も訓練される」 可能 な限り安全で負荷の大きな食物形態や体位を選択し施行す ることが最も効率のよい嚥下訓練となる。 口腔内清掃:経口摂取による唾液分泌の亢進、咀嚼と食塊 による物理的刺激などにより口腔内の湿潤性が保たれる。 廃用防止:嚥下をしなければ嚥下関連器官は廃用性に機能 が低下する。放置すれば唾液も誤嚥するレベルに悪化する 可能性がある。 胃食道逆流防止:経管栄養や胃瘻では、逆流のリスクが高 い。下食道括約筋の機能低下や食道蠕動運動不全が原因 であり、経口からの食事で食道蠕動を起こし、逆流物を洗い 流す作用もあり、逆流性食道炎のリスクを減らす。 口腔やのどの構造
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Jul 26, 2018

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2011/8/22

1

食事介助の基礎

医療法人 天心堂 志田病院

言語聴覚士 津山亜紀子

内容

• 摂食嚥下障害とは• こんな症状には要注意• 経口摂取の5つのチェック① 腔ケ ②姿勢 ③食物 態①口腔ケア ②姿勢 ③食物形態

④食器・食事環境 ⑤テクニック

• 経口摂取にあたってのチェックポイント• 介助時の一般的留意点

摂食・嚥下障害とは摂食障害 広義:食欲低下、体力低下、意識障害、

嚥下運動障害、心理的障害など様々な原因により食事がとれないこと。

狭義:神経性食思不振症や過食症など心理的な要因による食欲異常のこと。

嚥下障害 水や食べ物が上手く飲み込めなくなること。嚥下運動の障害。

摂食・嚥下障害摂食・嚥下障害 ものを食べることの障害。脳血管障害などで、食物の認識ができなくなったり咀嚼や嚥下ができなくなることにより、口から食べられなくなること。

参考図書:藤島一郎著 脳卒中の摂食・嚥下障害第2版

嚥下障害で起こる問題点

1.栄養摂取不良:脱水症、栄養不良

2.誤嚥:呼吸器合併症(肺炎、無気肺)、窒息

3.3.食べる楽しみの喪失食べる楽しみの喪失(人間の根元的欲求)

引用:嚥下障害ポケットマニュアル

口から食べることの意義

• 嚥下直接的訓練:「嚥下は嚥下により最も訓練される」 可能な限り安全で負荷の大きな食物形態や体位を選択し施行することが最も効率のよい嚥下訓練となる。

• 口腔内清掃:経口摂取による唾液分泌の亢進、咀嚼と食塊による物理的刺激などにより口腔内の湿潤性が保たれる。

• 廃用防止:嚥下をしなければ嚥下関連器官は廃用性に機能が低下する。放置すれば唾液も誤嚥するレベルに悪化する可能性がある。

• 胃食道逆流防止:経管栄養や胃瘻では、逆流のリスクが高い。下食道括約筋の機能低下や食道蠕動運動不全が原因であり、経口からの食事で食道蠕動を起こし、逆流物を洗い流す作用もあり、逆流性食道炎のリスクを減らす。

口腔やのどの構造

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成人成人 高齢者高齢者

安静時安静時

嚥下時嚥下時

喉頭が後.下方に移動

老化による咽

老化による咽

安静時安静時

嚥下時嚥下時

喉頭が挙上し,食道入口部が拡張 食道入口部の拡張が少ない喉頭挙上不十分による気道閉鎖不良

咽頭部の変化

咽頭部の変化

誤嚥(aspiration)とは

食物や唾液などが

声門を超えて気道に入ることを誤嚥という入ることを誤嚥という。肺炎の原因になる。

嚥下の5期

何をどのように食べるか判断し、

食物を咀嚼し、食塊を形成する

食塊を口腔から咽頭に送り込む

食物を口へ運ぶ食塊を形成する 咽頭に送り込む

嚥下反射により食塊を食道へ移送する

蠕動運動により食塊を胃へ移送する

・注意散漫 ・口の中に入れたまま止まる・食べ物に無反応 ・次々と口に詰め込む・ボーッとしている

・義歯不適合 ・口の中に取り込めない・咀嚼不十分 ・食物や唾液が口からこぼれる・口渇

・飲み込みに時間がかかる

障害

障害

観察ポイント

飲み込みに時間がかかる・食物を口にため込む・上を向いて飲み込む

・むせ ・食後の咳 ・飲み込みにくさがある・咽頭違和感 ・痰が増えた ・喉がごろごろしている・嚥下後に声がかわる(ガラ声,かすれ声)

・胸に食物が残ったり,詰まった感じがする・食物や胃液の逆流・就寝中の咳

障害

障害

障害

こんな症状には要注意!

• 食事中、食後にがらがら声になる。• のどに食べ物がつまった感じがする。• 食事中や水分を摂るときにむせる、咳き込む。• パサパサした物、弾力のある物が食べにくい、嫌がる。• 昨日と今日で食べ方が異なる。• 飲み込むときに天井を見るように上を向く。• 体重が減っていく。• 食べるのに時間がかかる。• 口腔内の汚れ、食物残渣、口臭。

etc・・・

経口摂取の5つのチェック

①口腔ケア

②姿勢

③食物形態③食物形態

④食器・食事環境

⑤テクニック

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姿勢姿勢

姿勢

ギャッジアップ30°仰臥位で、頚部を軽く前屈(顎を少し前に出して下向きに降ろす)した姿勢が最も安全な姿勢とされている。

なぜ角度をつけるの?①嚥下反射が遅い場合、角度をつけることで誤嚥が起こりにくい

②気管が上、食道が下になり重力の関係で気管に

入りにくく誤嚥しにくくなる入りにくく誤嚥しにくくなる

③90度で食塊を送り込めなくても角度をつけることで、重力により食物を咽頭へ送り込むことができる

④口からこぼれ出る量も少なくなる

⑤食後のギャッジアップで、胃食道逆流による誤嚥を防ぐ

咽頭

食道

気管

頚部前屈とは

• 頚部前屈とは、誤嚥を予防する喉頭保護法。• 頚部前屈では、声門前庭の閉鎖がよく、喉頭蓋の動きもよくなる。

頚部を前屈する と ①食塊 通路が広が• 頚部を前屈することで、①食塊の通路が広がる、②喉頭蓋谷が広がり、食塊と粘膜の接触面積が大きくなるので嚥下反射が起こりやすくなる、③喉頭ひだのメカニズムで気道の保護が行われる、という3つの理由で誤嚥が起こりにくくなる。

なぜ頚部前屈? 顎は上がっていませんか?

①前屈により誤嚥のリスクを減らす

②背中が曲がった方はまっすぐ前を向いているようでも顎が上がっている

③枕やタオルなどを利用してやや顎を引き気味にする③ 顎 気

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Chin down法

• Chin down:「顎を引く」ということ。• 頭頚部を屈曲させて嚥下することで誤嚥を防止する嚥下手技として広く用いられている方法。

• 頭頚部の屈曲は 主に軸椎ー環椎関節の上位頸椎頭頚部の屈曲は、主に軸椎 環椎関節の上位頸椎と、第3~第7頸椎までの下位頸椎の2カ所を中心に生じる。

• 上位頸椎の屈曲は頭部屈曲位、下位頸椎の屈曲は頚部屈曲位、両者の組み合わせは複合屈曲位。

頚部前屈突出位

咽頭腔は広がり

梨状窩も広がる(人によって差が大きい)

気道の入口は狭いまま

喉頭蓋谷も広がる

頚部前屈のつけ方

• 枕を使って頚部を前屈し、頚部全体がやや前方に突出するようにする。

• 「前屈+突出」が重要、「前屈=あご引き」では

かえって飲み込みにくいことが多い。

• 前屈をかけるときはややあごを突出させることがコツである。

• 顎から胸骨上端まで最低でも3~4横指はあける。

頚部前屈

ポジショニングギャッチアップ30°仰臥位、頚部前屈

30°

膝屈曲位、骨盤の安定

リクライニング位の工夫

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リクライニング位 良好姿勢への調整頭頚部を楽に動かせ、顎引き位がとれる様に

座位での良好肢位• 骨盤の安定

– 左右に傾かない– 足裏がしっかり床についている– 軽く下が向ける上肢が楽に動かせる

悪い姿勢 良い姿勢

– 上肢が楽に動かせる

良好肢位がとれても、誤嚥が多い場合→誤嚥のおそれの少ないリクライニング位をとることも多い。骨盤を安定させる軽い顎引き麻痺がある場合は患側を少し高くする

首・肩に緊張が高く

頸部伸展している

リラクセーション

座面の調整

頭頚部ストレッチを行った

→顎引き位がとれている

良好姿勢への調整姿勢不良の症例

【椅子座位】

骨盤の後傾(ずっこけ座り)

下肢屈曲

足底がつかずつま先のみ

頭部伸展

【車椅子座位】

左方向への傾き

骨盤非対称

足フットレストに乗ったまま

上体の前傾

頭部過伸展

【車椅子座位】

骨盤の後傾・非対称

頭部過伸展

頚部過伸展

体幹過緊張・後屈

上肢・下肢過緊張

車椅子座位のポイントすべり座り

姿勢調整

良肢位

・車椅子の調整

・座面、背もたれ、ヘッドレストの調整

姿勢調整

坐骨支持、体幹伸展、頭部の正中位保持

頚部過伸展、下顎突出のため嚥下を阻害する

・クッションの利用

座位の注意点 介助者と患者の位置

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一側嚥下

健側下

頚部患側回旋

30度

のどの麻痺側から介助

①食物が健側の咽頭を通過するようにする。

②顔だけを麻痺のある側に向ける。

③手足の麻痺側を上にして少し高くし、健側を低くする低くする。

④のどの麻痺が手足の麻痺と異なることもあるので必ず確認する。

⑤麻痺側からの呼びかけに気がつきにくい。

“無視”のある方は健側から介助するとよい。

のどの麻痺側の確認方法

軟口蓋・咽頭の観察

一側に麻痺があると、舌 のどに左右差が生じる舌、のどに左右差が生じる。健側の軟口蓋が挙上し、

咽頭後壁も健側に引かれて「カーテン」をひいたようにしわが寄る⇒カーテン徴候

食器・食事環境食器 食事環境

食器・食具の選択

• 特に重度の嚥下障害患者にとっては、スプーンの選択は重要。

• 一口量が多くなりすぎず、口唇で取り込みやすく 奥舌に入れたり奥舌でひっくり返したりすく、奥舌に入れたり奥舌でひっくり返したり出来るもの。

• 小さく、薄く、平たい(浅い)スプーン。

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適切なスプーンの形状

×× ××

深い深い

○○○○

深い深い

浅い浅い

広い広い

狭い狭い

口唇で取り込みやすく、奥舌に入れやすく、一口量が多くならないようにするためにスプーンの選択は重要。

スプーンの種類と選択

頚部前屈のまま飲むことが可能 食事環境①視聴覚刺激・テレビ等からの視聴覚刺激や配膳、下膳の音や人の動き、不意に話しかけること等は極力避ける。・患者に話しかけるタイミングを慎重にする。・ゆったりとした雰囲気づくり。②食堂内の位置②食堂内の位置・病棟や食堂で食事をする場合は、本人や周囲の状況によって席の位置を配慮。・食行動に専念できるように工夫。③下膳のタイミング・摂食スピードが遅いことによって自分が迷惑をかけていると感じている患者もいる。・言葉かけでは「ゆっくり食べてください」と言いながら、せわしなく周囲の下膳をする等、行動でせき立てることのないように気をつける。

香り香り

香りは美味しさの60%を占める。嚥下障害食でいくつかの食材を混ぜ合わせた場合などは特に味がぼやけやすいため、シーズニングなどで表面に香りをつけ、食欲増進に繋げる。

香りと温度について

温度温度

食事の温度は体温と20℃違う温度帯が最も適している。温かいものは温かく、冷たいものは冷たくすることで、食事を美味しくする。体温との温度差が大きい方が、その分刺激が強く伝わり、嚥下反射が誘発されやすくなる。

食物の温度食物の温度

• 咽頭粘膜に触れたとき、嚥下反射を誘発しやすい温度

→少し冷たいもの

10~15℃が適当

→少し温かいもの

※体温と同じ「人肌」程度のものは味もよくなく、

刺激が少なすぎて不適当、熱傷に注意。

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テクニックテクニック

一口量“一口量”は、多すぎても少なすぎてもダメ。“一口量”は、多すぎても少なすぎてもダメ。

⇒一度に飲み込む量が多くなると咽頭通過が困難になる場合が多い。少ない場合は、咽頭に送り込んだときに刺激が少なくて、有効に嚥下反射が誘発できない。い。

少なくてもティースプーン1杯(約3~4ml)の量

ゼリーの最適一口量は4~5g

【経口摂取開始時の目安】

固形・半固形物の場合、ティースプーン半分から。

液体の場合、2~3mlから。

食べるペース

• 摂食のペーシング ※ペーシング:食べる速さ

切迫摂食・偏った摂食などを防ぐ

一皿の盛りつけを少なめにする

声かけでペース配分

介助で安全なペースを作る介助で安全なペースを作る

• 「一口、一嚥下」のペース①スプーンを舌の中程まで入れ

②口唇を閉鎖させ

③上唇に触れながらすばやく抜く

④顎が上がっていないかを確認

⑤飲み込んでもらう

ペース

・次々と食べ物を口に入れ、一口量が多くなる

・咽頭残留をクリアする間もなく食べ物が入る

誤嚥

十分な咀嚼、一口飲み込んで次の一口を入れる

嚥下の意識化

口腔内に食物を含んでいるとき

これから「飲み込むぞ」と無意識の嚥下を意識化することで誤嚥が少なくなる

なんとなく飲み込んだり、注意が他にそれたときに飲み込むと誤嚥する危険が高くなる

水分だけでも低頻度にむせる場合や咀嚼不十分であわてて飲み込もうとする場合などに有効

空嚥下

嚥下運動が弱い場合、食塊を1回で飲み込むことができず、口腔や咽頭に残る。

次々と食物を口に運ぶと、残留量が増え、誤嚥の危険が高くなるが高くなる。

※空嚥下は必要に応じて2回、3回、4回と行う。

一口食べたら、“空嚥下”食物なしでゴクンと嚥下してもらうことを行い、食塊を完全にクリアする。

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交互嚥下

食物と、ゼリーや少量の水を交互に嚥下してもらう。

嚥下反射を誘発し、咽頭に貯留した食物を減らすことができる。

一口毎、数口毎、食事の最後に行うなど症状に応じて

選択する

複数回嚥下

一口の飲食に対して複数回の飲み込みを行うこと。

咽頭部残留の有無~ベッドサイドでの所見~

①嚥下のあとに声が変わる。

②聴診器で咽頭の音を聴くと呼吸に合わせてゴロゴロ音がするゴロゴロ音がする。

③1口目はむせないのに2口目、3口目になるとむせる。

④のどに食物が残ったような感じがする。

横向き嚥下

• 咽頭で食塊が残りやすい場所「梨状窩(梨状陥凹)」• 首を回旋させて嚥下することで梨状窩の残留をクリアする。

• 頚部の回旋では、対側の咽頭の粘膜や筋肉が緊張して咽頭の蠕動が伝わりやすいとともに、食道入口部が開きやすくなるため。

• 右や左を向いて嚥下してもらうこと。はじめから首を回旋させる場合と、嚥下後に左右に回旋させて嚥下を行う場合がある。

• はじめから回旋させておくと喉頭蓋谷に入らず残留しにくいという効果もある。

口腔やのどの構造 うなずき嚥下

• もう1カ所食塊が残留しやすい場所「喉頭蓋谷」

• リクライニング位で頭部を後屈すると喉頭蓋谷が広がり残留物が重力で咽頭後壁に落ちる。次に前屈してうな、残留物が重力で咽頭後壁に落ちる。次に前屈してうなずくようにして嚥下すると残留した食塊をクリアできる。

• 座位で顎が胸骨につくくらいうなずき=前屈(喉頭蓋谷が狭くなり、食塊が押し出される)しながら嚥下すると残留物が除去できる。

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口腔やのどの構造 息こらえ嚥下

• 意識的に呼吸と嚥下のタイミングを取りながら飲み込む方法。

• 「飲み込む前に大きく息を吸い込んで、しっかり息を止めて飲み込み 飲み込んだら息を吐り息を止めて飲み込み、飲み込んだら息を吐き出す」

• 飲み込みながらのむせが起こりやすい場合に用いる。

随意的な咳と発声

食事途中にときどき咳をさせたり、声を出してもらうと気道に入りかかった食塊を喀出することができる

①数口飲み込んだ後に①数口飲み込んだ後に、「あー」「えー」などと声を出す。

②湿性嗄声が聞こえたら、咳払いをする。

③唾液をゴクンと飲み込む。

経口摂取にあたってのチェックポイント★食事前の準備はできましたか?

・口腔内をきれいにしましょう。

・姿勢を整えましょう。

・飲み込みやすい食品を用意しましょう

・食べることに集中できる環境をつくりましょう。

★正しい食べ方の再確認を!

・最初の一口は慎重に食べましょう。

・一口量は少なめにしましょう。

・あせらずにゆっくり食べましょう。

・食べ物が残りやすい方は、ゼリーなどと交互に食べましょう。

・疲れたら1~2分休憩しましょう。

・むせた時は、我慢せず、しっかり咳をして誤嚥物を出しましょう。

★食後の注意も忘れずに!

・食後1~2時間は横にならず、頭を起こしておきましょう。

・食後は口の中をきれいにしましょう。

摂食中の安全確認★誤嚥していませんか?

・むせ、せき、がらがら声はありませんか。

・意識に変化はありませんか。

・呼吸は安定していますか。

・SpO2が大きく低下していませんか。

★危険な行動はありませんか?

・首を後ろへ倒して上を向いて飲む(コップの水分など)。

・お喋りしながら食べている。

・飲み込む前にどんどん口に詰め込んでいる。

・口にたまった物をお茶で流し込んでいる。

・むせながら口に食物を運んでいる。

★普段の生活にも気を配りましょう

・発熱、痰の増加、炎症反応はありませんか。

・食欲低下はありませんか。

・栄養、水分摂取量は足りていますか。

介助時の一般的留意点• 食前のウオーミングアップ(ことば・嚥下体操、アイスマッサージ、空嚥下など)

• 立ったままでなく視線は患者さんと同じ高さにして、頚部が伸展しないよう配慮

• 姿勢を調整し、食事中も崩れないよう配慮が• 健側からの介助が原則

• 何を食べるかまず見てもらう。匂いも大事。時々、次に何を食べるか選択してもらう

• 口唇の中央部からスプーンを差し入れ、引き抜く• 上歯で食物をこそがない• スプーンは適切な大きさのもの(小さめで、浅いもの)• 交互嚥下となるよう配慮

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介助時の一般的留意点

• 介助ペースを速めない• 時々、声を出してもらい、残留のチェックと、必要に応じて咳を促す

• 時々、口腔残留の有無を観察し、複数回嚥下を促す話 な 介 者性 嚥 防• 必要以上に話しかけない(介助者性誤嚥の防止)

• せかさない。45分以上は疲労や食欲低下の原因になるので適当に切り上げる(補助栄養など)

• 食事終了後、必要に応じてトロミ茶やお茶、ゼリーなどをとり、咽頭残留物を減少させる

• 食後の口腔ケア、咽頭ケアを徹底し、誤嚥性肺炎の防止• 食後は最低でも1時間程度は横にならない

高齢者における食事の意義

★食べることにより生きる意欲が生まれる

★食べることにより栄養を補給する

★食べる動作により筋肉を動かす

★食を介 ケ シ そ 他 活動★食を介してコミュニケーションその他の活動

を広げる

「食べる人」と「食べ物」、「食べさせる人」、「食事の「食べる人」と「食べ物」、「食べさせる人」、「食事の場」とがふれあうことにより、場」とがふれあうことにより、55感を通して脳に刺激を与え、感を通して脳に刺激を与え、人に生きる喜びと楽しみを与え、人間としての尊厳を保ち、人に生きる喜びと楽しみを与え、人間としての尊厳を保ち、QOLQOLを高める。を高める。

(手嶋登志子:臨床栄養,Vol.96,No.1 より引用)

「食べる人」と「食べ物」、「食べさせる人」、「食事の「食べる人」と「食べ物」、「食べさせる人」、「食事の場」とがふれあうことにより、場」とがふれあうことにより、55感を通して脳に刺激を与え、感を通して脳に刺激を与え、人に生きる喜びと楽しみを与え、人間としての尊厳を保ち、人に生きる喜びと楽しみを与え、人間としての尊厳を保ち、QOLQOLを高める。を高める。

(手嶋登志子:臨床栄養,Vol.96,No.1 より引用)

食べる楽しみ

1位 2位 3位

特別養護老人ホーム

(9施設 n=773) 食事 44.8%行事参加

28 0%家族訪問

25 3%

要介護高齢者の日常生活における関心事要介護高齢者の日常生活における関心事(施設で楽しいこと)について(施設で楽しいこと)について

(9施設 n=773) 食 28.0% 25.3%

老人保健施設

(13施設n=1324) 食事 48.4%家族訪問

40.0%行事参加

35.2%

老人病院

(9病棟 n=362) 食事 40.0%家族訪問

39.4%テレビ

28.3%

療養型病院

(1施設 n=50) 食事 55.1%家族訪問

55.1%テレビ

30.0%